Movatterモバイル変換

連れ連れなるままに大切な人や物・・・出来事について

by usa

カテゴリ

以前の記事

最新のコメント

お気に入りブログ

最新の記事

リンク

検索

記事ランキング

ファン

ブログジャンル

画像一覧

2006年 03月 31日

今日で、終わるはずだったんだ。
レインとの仕事は、何も問題はなく至極順調に進み、もう、僕の出る幕はなかった。
あとは、レイに任せていればよかった。
だから、あいつとはもう関わらなくていいはずだったのに・・・
なのに・・・どうしてあんなことに・・・
その日は、J姫は、大学で講義をいつものように受け、帰宅途中で、Mr.Leeの好きなチョコレートムースのデザートの材料を買い求めに食材店に立ち寄ったのだった。
もちろん、専属のシェフは常駐しているけれど、愛するMr.Leeのために、J姫は、よくキッチンに立ち、その腕前を振るう事があったのだ。
そして、材料を買い揃え、少し咽喉が乾いたので、隣接しているカフェに立ち寄り、カプチーノを頼んだところだった。
大きなガラス張りの窓際の席に座り、何とはなく、人の流れる様を見ていた。
突然、視界に飛び込んで来たその人は、ガラス越しににっこりと微笑んで、手を振った。
（えっ・・・何故、彼がここに？）
考える間もなく、レインがJ姫の側にやって来た。
「Mrs.ヴィクトリー、ごきげんよう！」
「お一人ですか？」
そう、あの屈託の無い微笑みで、レインがJ姫を見つめていた。
しかし、その視線は痛いほど、熱く・・・
それは、J姫が、思わず瞳を逸らしてしまうほどだった。




J姫は、気を取り直して、静かに、「Mr.レイン、どうなさったのですか？」
「こんなお時間にお一人で、もう、お仕事は終わられたのですか？」
「ええ、何といっても貴方のだんな様は、お仕事が速いですからね。」
「大変な切れ者ですよ、彼は！」
J姫は、思わぬ所でMr.レインに会い、Mr.Leeの事を聞きながら、鼓動が早くなるのを感じていた。
自分の知らない夫の話しを聞くことが、こんなにドキドキするなんて・・・
（逢いたい・・・無償にLeeに逢いたくなってしまった。）
知らず知らずに頬が淡いピンク色に染まっていた。
そんな、J姫を見ながら、レインは、少し、意地悪がしたくなってしまった。
それ程、J姫が可愛らしく、ほんの少し困らせてみたくなってしまったのだ。
実は、あのパーティーの夜、抱きしめた彼女が忘れられなくて・・・
まさか、人妻に恋するなんて思ってもみなかった。
もちろん、想像だけで終わってしまう事は、百も承知のはずだったのに・・・
Mr.Leeがどれだけ彼女を愛し、大切に思っているかは誰が見たって、明白な事で・・・
そして、Mr.Leeを追いかけるMrs.ヴィクトリーの眼差しも愛に溢れ、これ以上ない幸せに満ちている。
けれど、奪えるものならば奪って見たかった。
何て、無謀な罪な事を・・・この胸に宿ってしまったどうにもならない思いをレインは、持て余す日々を送っていたのだった。
あの日、彼女に出会ってしまった日から・・・
そして、突然、その千載一遇の日は訪れたのだ。
まさか、Mrs.ヴィクトリーが一人でいる所に出くわすなんて！
これは、神様が僕に与えて下さったチャンスに違いない・・・
恋は、盲目とはよく言ったもので、レインには、そう思えてしまったのだから、仕方がない。
何て、身勝手な能天気な話だろう。
そんな事とは露知らず、J姫は、大切なMr.Leeの仕事上のパートーナーだと思い、粗相のないようにと気を遣い、精一杯の笑顔で対応するのだった。
「今日が最後のミーティングだったのです。」と、レインが唐突に切り出し、「だから、たまには、ブラブラするのも悪くないと思って、そうしたら、貴方にMrs.ヴィクトリーにお会いするなんて・・・」
「今日は、最高についているしい。そうは、思いませんか？」
「・・・」
「はは・・冗談ですよ。僕に会ってもしょうがないですよね。」
「いいえ、そんな事は・・・」
「では、せっかくお会い出来たのですから、もし、お時間がありましたら、少しだけ僕に付き合って下さいませんか？」
「えっ？」
「いえいえ、そんなに驚かれなくても、ただ、少し、のんびりとしたいだけなのです。」
（あぁ、きっと、この人もLeeと同じなのだわ。忙しくて・・・）
「ええ、では、少しだけなら。」
「本当に！！やったぁ～」
まるで、子供のようなレインにつられて、J姫も思わず微笑んでしまった。
「そう、その笑顔が見たかったんですよ。」
「えっ！」
その時、J姫の頭にあの日のMr.Leeの尋常ではなかった所業が思い出された。
そして、もう、二度とあんな気持ちにさせたりしないと誓ったことを思い出していた。
（いけないっ、決して、忘れていたわけではないけれど、つい、大切な方だと思って、一生懸命だったわ・・・）
（どうしよう・・・今更・・・）
（でも、Leeとの約束は絶対に守らなきゃ！）
「あの、Mr.レイン、申し訳ないのですが、ちょっと、用事を思い出しましたので、今日はこれで失礼させて頂きます。」
「では、ごきげんよう。」
レインの返事も聞かず、振り返りもせずに、慌しく席を立ち、小走りで去ってゆこうとするJ姫の腕をレインは咄嗟に掴んでいた。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　To be　continued.