名前は知っているけれど、作品(または作風)となると思い浮かばないという画家は、いるようでいない気がする。その意味で、モーリス・ユトリロは例外的なのかもしれない。というよりも、「近代フランスの画家」ということぐらいは当然知識としては頭に入っ…
平日午後の中途半端な時間だというのに、建物の外で入場まで10分待ちということに驚く。今週末で会期終了だからだろうか。しかし、中に入ってやっと気がついたのだけれど、この「特別展」の会場は本館の一室だけで、展示品は7体の仏像のみ。すべてが国宝指定…
フィンセント・ファン・ゴッホといえば、みずから耳を切り落とし、ピストル自殺した狂気の画家というのがステレオタイプ的な理解だと思っていたけれど、もしかすると、そのイメージはもう古いのかもしれない。 この展覧会でクローズアップされるのは、まさに…
円山応挙という名前はもちろん知っているけれど、代表作を挙げろと言われたら困ってしまうところだ。書き散らしたような素描から、素人仕事の蒔絵まで、精密な写生から、ジャンル的なクリシェまで、かわいらしい動物から、凛とした自然まで、応挙の仕事を幅…
民藝はコンテンツとして強い。ということを如実に感じさせられた展覧会だった。この美術館(というか、ギャラリー?)に来るのは2回目でしかないけれど、客層の違いは目に見えてわかるし、ギャラショップの混み方も桁違い。特別展のほうの人出とは裏腹に、常…
渋い展覧会だが、布地を見る目が変わる。ヨーロッパ起源の草花模様だと思っていたものが実はインド更紗職人によるデザインに端を発するものであったことが見えてくる。ウィリアム・モリスのデザインにしてもそうだ。まさに更紗は史上初の「グローバル・プロ…
「私は書を書くのではなくて鷹を書くのであります」井上有一は大岡昇平の短編「鷹」によせた字についてそのように述べているけれど、たしかに、彼が生涯試みたのは、シニフィアン(記号表現)を書くことではなく、シニフィエ(意味内容)を表象することだっ…
せっかくみなとみらいまで来たのだからと、すこし周りをぶらついてみる。みなとみらいに来たのは初めてではないけれど、駅直結で複数のオフィスビル、ホテル、ショッピングモール、コンサートホールががシームレスにつながっていることをここまで意識したの…
先日、ヒルマ・アフ・クリント展を見にいった東京国立近代美術館の常設展だったか企画展だったか忘れたけれど、そこで難波田龍起の絵を初めてみて、その澄み切った抽象性に感銘を受けていたので、この展覧会のビラを近所の図書館で見かけてから、ずっと行こ…
20250913 「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」@国立西洋美術館 上野の美術館は学生のころよく行っていたし、国立西洋美術館の常設展(松方コレクション)は高階秀爾や若桑みどりなどの西洋美術の概説書で学んだこと…
とくに佐倉市に所縁があるわけでもなさそうなのになぜここでと思ったが、通勤経路の途中にある美術館なので行ってみた。金沢21世紀美術館がスタートで、その次がこうの史代が在住の福知山市佐藤太清記念美術館、そして3番目の巡回地となるのがここ佐倉市美術…
展覧会を見終わっても芸術家の正体がまるでつかめないというのは、めずらしい体験だった。 shizubi.jp クレーといえばふたつのことが自動的に思い浮かぶ。ひとつはヴァルター・ベンヤミンのいわゆる「歴史哲学テーゼ」で言及される「新しい天使」。それから…
岡崎乾二郎は、名前こそ何となく幾度となく耳にしながら、実際の作品は見たことがない作家のひとりだった。というわけで、微妙にアクセスの悪い東京都現代美術館に会期終了直前に足を運ぶ。 会場に置かれてた図録の文章によれば、造形作家の岡崎乾二郎は、文…
20250702 ミロ展@東京都美術館 ジョアン・ミロの絵はわりと思い浮かべることができる。単色の背景に、象形文字のような記号が細い線を広げている。くぐもった暗いカラーと、鮮やだがくすみのあるカラーがコントラストをなしている。線が空間に広がっていく。…
20250611@「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」@東京ステーションギャラリー 「北欧デザイン」というくらいの雑な情報で立ち寄ったのだけれど、タピオ・ヴィルカラが長年にわたってイッタラのデザイナーを務めていたことは知らなかったし(イッタラというブラ…
20250610 ヒルマ・アフ・クリント展@東京国立近代美術館 アフ・クリントの絵はニューヨークのグッゲンハイム美術館で見たことがある。学会でアメリカ東海岸に行ったさい、せっかくだからとさしたる目的もなくNYに行き、時間があまりなかったので、MoMAやメ…
20250501 「時代を映す錦絵ー浮世絵師が描いた幕末・明治ー」@国立歴史民俗博物館 勤務地から2駅のところにある国立歴史民俗博物館に行ってきた。とあるツテで招待券を入手した特別展の会期は6日まで。というわけで、仕事の合間をぬって、急ぎ足で見てきた…
20250404 異端の奇才ビアズリー展@三菱一号館美術館 ビアズリーの絵には歪みがある。しかし、それは技術不足によるものではなく、表現として意図的に導入されたものであるようだ。人物の身体は薄く引き伸ばされる。衣服は独自の存在であるかのように舞い広…
20250319@DIC川村記念美術館「DIC川村記念美術館 1990–2025ーー作品、建築、自然」 もうすぐ閉館してしまうというDIC川村記念美術館が引っ越し先からわりと近く、駅から無料バスも出ているというので、行ってきた。京成佐倉駅からバスに揺られること約30分。…
20250301「絢爛の花鳥画 生誕140年記念 石崎光瑤」@静岡県立美術館 石崎光瑤は登山家でもあったという。しかも、趣味の登山というレベルではなく、民間では初めて剣岳の登頂を成功させたばかりか、数年後にはインドに渡り、ヒマラヤ山脈のひとつを登頂した…
20250223「北欧の神秘ーーノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」@静岡市美術館 ざっと見てきたというか、ざっと見る以外の見方が見つからなかったというか。ノルウェー・スウェーデン・フィンランドという北欧三国の近代画家の作品からなる本展覧…
20250126 不在——トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル@三菱一号館美術館 久々に東京方面に出て、昼過ぎには所用が済んだので、国立西洋美術館のモネ展でも見に行くかと久々に上野に足を運ぶ。JR駅前の横断歩道がなくなっていることに気づくまで少しか…
20250118@静岡市美術館「キース・ヘリング展」 太い線で描かれる簡略化された形象。地下鉄の広告スペースに白いチョークで描き出したというキース・ヘリングのアートは、いわば複製不可能な線それ自体のニュアンスではなく、いくらでも反復可能な記号的デザ…
20241213 無言館と、かつてありし信濃デッサン館―窪島誠一郎の眼@静岡県立美術館 本展覧会は、窪島誠一郎が1979年に長野に作った信濃デッサン館——夭折した20世紀の画家たちの作品を集めた美術館——と、1997年に開館した無言館——出征し命を落とした画家たちの…
20241109@静岡市美術館「写真をめぐる100年のものがたり 100 Year Story of Photographyーー京都国立近代美術館コレクションを中心に」 説明的に見えるタイトルはその長さのわりには展覧会の内実を語っていない。というよりも、ここには、「写真をめぐる100…
20240921 「西洋絵画の400年」展@静岡市美術館 「西洋絵画の400年」というキャッチコピーが大写しになったポスターを街でよく見かけてはいたけれど、しっかり注意して見てはおらず、何となく「ヨーロッパのどこかの美術館からの貸出展か」と勝手に思ってい…
旧カトリック清水教会解体資材展@松坂屋北館3階 静岡駅北口側にある松坂屋は本館と北館に分かれており、北館は一階にはフェラガモ、ロレックス、ティファニーといったハイブランドが入っているため、基本的に近寄ることすらないのだが(場違いな気分にさせ…
20240726@静岡県立美術館「カナレットとヴェネツィアの輝き」 知り合いが知り合いからもらったという招待券を譲ってくれたので、明日から一般公開が始まる展覧会の内覧会に終了時間間際に滑りこんできた。「カナレット」という画家のことをまったく知らない…
20240713 平野富山展@静岡市美術館 正直に言えば「誰?」と思いながら足を運んだ。「平櫛󠄁田中と歩んだ彩色木彫、追求の軌跡」という副題も個人的には役に立たない。「彩色木彫」という言葉と、キービジュアルとして使われている能面をかぶった人形で、これ…
20240526@静岡市美術館 「京都 細見美術館の名品」 最終日に滑り込んで見てきたけれど、このような個人コレクションはそのために建てられたスペースで見るべきものであるような気もするし、それどころか、3代に渡って収集された日本美術は果たして、美術館…
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