うにうに @ シンガポールウォッチャーです。
日本人コミュニティが大騒ぎです。被扶養者ビザDPの所持者が、就労許可のLOCで働けなくなると、政府発表が出たためです。私のブログはもとはビザブログとして始まりました。2012年です。ビザが徐々に難化し、正しいビザ知識に基づいて居住戦略をもってもらうこと、ビザのデマを駆逐することが目的でした。
DP (Dependant's Pass) は駐妻など配偶者や、子どもが持っている長期滞在ビザの1つです。就労ビザのEPかSパス所持者の基本月給が、$6千(約50万円)以上であれば、DPを申請できます。
・労働省 (MOM):Dependant's Pass
DP特典の1つが、ビザスポンサーがSパス以外のEPなどであれば、LOC (Letter of Consent) というゆるい審査で就労許可が出ることです。DPでのLOCの特徴は、
というものです。最低給与基準がないことから、パートでの利用も可能です。EPなどと違って、審査で落とされるのは、自営での申請ぐらいでした。
・労働省 (MOM):Letter of Consent
帯同ビザでの就労可能な国は少数派であり、「配偶者がシンガポールへの移住に同意しやすいように、シンガポールがエキスパットを優遇している」例として、これまで挙げられてきました。
政府発表の内容は以下です。
・労働省 (MOM):FACTSHEET ON WORK ARRANGEMENTS OF DEPENDANT’S PASS HOLDERS
労働大臣は「通常の就労ビザ要件を満たせないDP所持者は、シンガポールで働けなくなる (Those that do not will have to cease working in Singapore.) 」と国会で明言しています。
・Today:From May 1, dependant’s pass holders will need to obtain work passes if they want to work in S’pore
日本人コミュニティでは「DP LOCを止めたところで、それで働いている絶対数が多くないし、シンガポール人と取り合ってる種類の仕事でもないのに、なぜ」という怨嗟の声が上がっています。
労働大臣は、DP LOCの数は、全外国人就労許可数の1%と明かしています。これは1万4千人前後になります。確かに少ないです。
(編注: 労働大臣が発言した時には「about 1 per cent of all work pass holders」であったため、140万人の1%と私は解釈しました。ところが、その後、ST紙などではメイドを抜いて、110万人の1%で1万1千人という解釈をだしています)
変更の意図としては、MOMは「就労ビザ全体との枠組みでの一貫性をとるため」と簡単に説明しています。
ここ10年での、EP/Sパスは厳格化の一途をたどっています。2011年6月には必要な固定給は、EPは$2,500、Sパスは$1,800以上でした。それが今では、$4,500に$2,500と、特にEPは倍近くに上がっています。
にもかかわらず、LOCへの制度変更はほぼありませんでした。あった変更は、「DP取得自体の難化」と「従来は認められていた、DPでの自営・フリーランスへのLOC却下」という運用のみです。最低給与がないのが継続し、ほぼ無審査のDP LOCは、MOMが言うようにバランスを欠いているため、制度停止になったとの理解でよいでしょう。
今回のニュースは、日本人には大騒ぎですが、シンガポール全体では微風にすぎません。理由は、DPでのLOC取得者が1万4千人しかいないと推測されるように、絶対数が少なく影響が小さいためです。
当地の日本語フリーペーパーを見ると、半数程度(以上かも)の求人がDPなど「ビザスポンサーが不要な求人」で占められています。大半は日系企業です。EPの給与水準は出せず、Sパスは外国人雇用枠を使い切っているし、日本語ができない人は雇用したくないので、DPに頼るのです。歪んだ労働市場です。就労ビザ取得に必要な給与額を回避する意図だからです。
シンガポール在住日本人は3万7千人です。LOC就労の日本人が数千人はいると推定できます。1万4千人のLOCのかなりの割合を日本人が占めているとみていいでしょう。就労ビザ取得に切り替えられる人は、多くはないでしょう。
採用企業にとっても、当地DPに頼った経営から脱却し、日本からのリモートワークで対応する、周辺国に業務を移すなどの対応をとるところが出てくるでしょう。
日本人はLOCの「変わった使い方」をしている可能性があります。労働大臣は「DPで働いている者の大半は、一般の就労ビザ基準を満たす」と発言しています。
つまり、LOCで働くDPの大半は、自力で就労ビザ習得が可能だが、取得にかかる時間などの都合で、LOCを選んでいるとMOMは判断しています。ただしこれが、「"Sパスの外国人比率なども含めて"自力で就労ビザ取得が可能」と判断したかどうかまでは、書かれていません。Sパスの最低給与基準($2,500 = 約20万円)だけなら、日本人DPで働いている人も、大半は就労ビザ取得基準を満たすでしょうが、Sパス枠が残っている勤務先は、DP求人企業にはほとんどないでしょう。
※LOC申請が4月30日までであればよいのか、LOC承認回答を4月30日までにMOMから得る必要があるのか、どちらの解釈も可能です。続報を待つ必要があります。MOM原文は下記です。
From 1 May 2021, all DP holders who wish to work during their stay in Singapore will need an applicable work pass
・労働省 (MOM):Employment / S Pass Self-Assessment Tool (SAT)
シンガポールでの雇用より、日本などシンガポール国外とのリモート勤務を選ぶ方は、下記を参考にして下さい。国外勤務先との雇用(つまり、フリーランス不可)など、ハードルがありますが、一般非公開でも問い合わせるとMOMが個別に開示するので、どうすればよいかは分かります。
uniunichan.hatenablog.com
今回のMOMの発表は、DPのLOCのみです。LOCにはLTVP (Long Term Visit Pass) からも発行がありますが、そちらは言及されていません。そのため、今後のLTVPからのLOCは利用可能なはずです。
という違いがあります。特に国民の配偶者でLTVPは、PRがとれない低所得層が多く、同情を得やすいです。医療費補助がつくなど、PRでなくても、社会保障を受けられる優遇が近年強まっています。
「就労外国人には厳しく、国民外国人家族には優しく」という傾向です。
反政府系のネットニュースサイトでは、これまでのDP優遇への怒りの投稿が続いています。
・The Online Citizen (TOC):MOM says Dependant’s Pass holders will need work passes to work from May onwards; Netizens claim such changes are “long overdue”
今回のMOMの開示で、「LOCでの就労不可」に目が奪われながらも、ビザウォッチャーを驚かせたのが
です。今まで、本ブログで繰り返し言ってきたように、DPが自営やフリーランスでLOCを申請すると却下されてきました。ここ7,8年ぐらいでの出来事です。それ以前は、DPでも自営・フリーランスにLOCが降りていました。今回、LOC更新だけでなく、新規発行として提示された基準は、国民か永住者を$1400以上(Local Qualifying Salary)の給与で3ヶ月以上雇用し、CPFを払うと、LOCが出るというものです。今まで、DP LOCの自営では色んな人がMOMに問い合わせを行ってきていますが、こういう内容の回答をもらった人を聞いたことはありません。
長くなり、またテーマも別なので、LOC自営は、次回の記事で書きます。(編注: 下記で書きました)
uniunichan.hatenablog.com
※2021年8月11日追記
MOMが規制緩和をしました。DPでの雇われ就労が可能になります。方法は
「Work Permitの出身国制限を撤廃したこと」
です。そして、WP特有の健康診断などは、DPからのWP取得者は撤廃です。詳細は下記でどうぞ。
uniunichan.hatenablog.com
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