株式を買うと配当金を受取ることができます。普通の会社であれば、モノやサービスを提供して消費者に買ってもらい、その一連の経営活動の成果として利益を出します。そして、決算を迎えるごとに、会社の資本金を出してくれている株主に対して、利益を払出す…それが株式の配当金です。投資信託にもこれと同じようなシステムとして「分配金(収益分配金)」があります。投資信託でも、一定期間ごと決算を行い、その期間の運用によって得られた成果(利益)を投資家に分配金として支払います。
一般の企業(株式)であれば、本決算(正式な決算)と中間決算、四半期決算が配当の機会となり、1年に1回~4回を会社の方針で決めています。一方、投資信託では、その投資信託が発売される段階で決算の回数が決まっており、5つのパターンがあります。年に1回、2回(半年に1回)、4回(3ヵ月に1回)、6回(隔月)、12回(毎月)です。
したがって、投資家は自分のニーズに合った決算回数の投資信託を選ぶ必要があります。1回あたりの分配金額が小さくても頻繁に受取りたい人は決算回数の多いファンドを、1年に1回大きく受取りたい人は年に1回だけ決算をするファンドを選びましょう。
分配する金額についてもファンドごとに異なった方針がありますが、回数が厳格に決められ投資信託説明書(目論見書)に明記されるのに対して、金額は運用の成果によるため、あらかじめ記載されることはありません。ただ、「組入れた株式から受取る配当金を分配金として払う」など、分配するための方針が書かれています。また、債券に投資するファンドなどは、ファンドが受取る利子が概ね安定しているため、だいたいの金額を試算することができます。しかしながら、分配金額は、あくまでも運用成果によるものですので、買う前から明確に知ることはできないのが原則と考えましょう。
投資信託を購入する場合の参考として、過去に払出された分配金額を確認するとよいでしょう。利益が大きく出ていても分配金額が小さい場合がありますが、これは、利益をその都度、払出さずに運用に回すことで、積極的に財産を増やしていこうという方針によるものです。もし、その期ごとに上った利益を受取りたいのであれば、分配金を払出した後の基準価額(ファンドの時価)が10,000円程度になるまで払出しているようなファンドを選ぶとよいでしょう。
債券を買うと利子を受取ることができます。その利子を投資金額で割り算すると、利回りを計算することができます。投資信託でも、分配金額で基準価額を割ると利回りは計算できます。例えば、基準価額が1万口あたり9,500円、分配金額が300円のファンドであれば、「300円÷9,500円×100%」で、分配金利回りは3.15%となります。
分配金利回りを見る上での注意点は、それが投資利回りではないことです。債券であれば、満期まで持てば元本が返ってきますので、買った時の利回りはそのまま投資収益の率としての目安となります。一方、投資信託は元本の保証がなく、将来にわたって基準価額は変動し続けますので、受取った分配金の金額を超えて基準価額が値下がりすれば損失(マイナスの投資利回り)になります。購入する際に計算した分配金の利回りが、そのまま投資収益の目安にはならないので注意してください。
投資信託の分配金利回りを確認する意味合いは、購入するファンドを選ぶ際に、どの程度の分配金を出す方針になっているか確認するところにあります。運用方針がほぼ同じような、例えば「新興国の債券に投資します」といったファンドAとファンドBを比較検討する場合に、
ファンドA: 基準価額6,000円、分配金100円 → 分配金利回り1.7%
ファンドB: 基準価額9,800円、分配金140円 → 分配金利回り1.4%
分配金額だけを見ればファンドBの方が高いのですが、投資金額に対する割合ではファンドAの方が多くの分配金を出しているということが分かります。因みに、この場合、分配金利回りの高いファンドAが優秀な運用をしているかどうかは別の話で、基準価額の上昇具合も併せて見なければ分かりません。同様の運用方針を掲げるファンドでも分配方針が異なる場合がありますので、分配金利回りでは、そのファンドが受取りたい分配水準と合うかどうかの参考としてください。