前回の記事で、14日に重大発表、と予告をしていた通り、重大発表が出ました。
広島大学
令和7年度一般選抜(前期日程)等における出題誤りについて
令和7年3月14日
www.hiroshima-u.ac.jp
このブログでも数回にわたって疑義を呈してきた「グラフ」の誤りを公式に認めたものです。
大学の合格発表は10:00だったり、正午だったりするものですが、この「ミスの発表」は15:00の段階でも発表されず、私はこんなボヤキをFBでしていました。
正午の段階でも、15:00の段階でも発表がないですね。
オフィスの営業時間の終了ぎりぎりで発表して、週末はお休み。週明けにはホトボリガサメルとでも思っているのでしょうか?
私が発表に気がついた時には、既に17:00は大きく回っていたと思います。
その中身はこうなっています。
にはこう書いてあります。
ここで「外部」と二文字にまとめられていますが、これは私 (松井孝志) のことです。
本当に、正確に書いてほしいのは私の氏名ではなく、
3月4日から都合3回の照会があったが、2回目の照会まではミスではないという回答で、3回目の照会(3月7日)に対する3月13日の回答で初めてミスを認めた
という事実です。
この3月7日(金曜日) の3回目の照会に対する回答は3月10日以降になる、という返事を7日のうちにいただいていました。ですから、この7日以降、前期の合格発表を経て、13日の回答までに「ミス」を認め対処をしたことになるのでしょう。
今日の発表にあった「別紙」というのは、例のグラフです。
https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/254891/bessi_r7zenki_eigo.pdf
大学の公式サイトで問題用紙にあったグラフが公表されました。
ソーシャルメディアで親しい人との間で、私は次のように言っていたのですね。
どういう対応を決めたのか、明日の発表待ちです。
グラフ作成のミスを公表するのだから、7日に公開した問題での「著作権保護の観点」で白塗りになっていたグラフを示した上で、どの部分にミスがあったのかを明かさないとおかしいと思うけど、おかしいんだろうなぁ、きっと。
流石に、ここは出さざるを得なかったのでしょう。おかげで「おかしさ」は少し減りました。公式の問題発表では、「著作権」の絡みで白塗りだった部分が公式に明らかにされたのは少しは意味を持ちますかね。
広島大学に対する、私の3回目の照会に対する回答は、13日の段階で届いていました。
こちらにpdfの写しをそのまま出します。
このように、ミスを認め、お侘びと、今後の対応を約束して、その通りに本日14日、発表となったわけですが、ここまでのやりとりはほぼ全て、ツイッターとブログで記録に残していますので振り返ってみましょう。
2025年3月1日時点でグラフの異様さを指摘したツイート。
この広大のグラフ、2013-14辺りでCDのシェアが5%近く増えているのが解せない。その頃何か事件があったか?
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing)2025年2月28日
グラフ作成の元になる資料ではシェアの推移のグラフはフラッシュメディアでの提供なので、2013,2014,2015,2016年其々のスクショを。
これを見る限りCDは右肩下がり。https://t.co/IR2bwviXcahttps://t.co/7JhAibXK4Mpic.twitter.com/HxiRJGlpmx
その元ツイhttps://t.co/IR2bwviXca
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing)2025年2月28日
そして2025年の広島大の出題がこちら。
示されていた出典(上記リンク先)にこのグラフがあるわけではないので、数値を拾っての独自作成なんでしょうかね?
量的変数は4つで期間は1990-2022の32年間。
求められているのはtrendsをdescribeすることとanalyzeすることの2点。pic.twitter.com/ZaStElqvfu
それをまとめた3月1日のブログ記事。
3月4日に広島大学に第1回目の照会をして、その回答(3月5日)をもとに更なる疑義を示したブログが3月7日。合格発表前日。
公式解答例の発表を受けてのブログ記事が3月11日。
ブログ更新。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing)2025年3月10日
広島大から公式の出題の意図と解答例が公表されました。懸案のグラフの説明はどうなっているか?私の解答例と比較検討を!さらに出典に基づく「適切なグラフ」とその説明の英文も拵えましたので是非。
「つまらない推測なら…」
- 英語教育の明日はどっちだ!https://t.co/LQnzOy2MMh
この日のブログでは、結果として「誤りを認めた、その誤ったグラフに忠実に説明しようとすると、いかに大変であるか」を再現しています。なぜなら、広島大学の公式解答例自体が、当該の2014年のCDのシェアの「外れ値」を完全に無視しているからです。
そもそもの第1回目の照会に対する回答を思い出して下さい。
この私の最初の照会が3月4日でしたから、少し遅かったのが惜しまれるのですが、それでも3月5日の時点で先方は1回目の確認の作業をするチャンスがあったわけです。
この第1回目の回答では、あくまでも「ミスではない」という前提で「採点に影響なし」という見解でしたから、この時点では受験生の答案の見直しはしていないのではないかと推測します。
本日14日の広島大の発表では次のように書かれています。
当該設問は、グラフの傾向を分析し、英語で記述することを出題の意図とするものです。誤りのあった部分に注目して解答した場合でも、出題の意図にしたがい公平に採点できると判断しました。念のため、すべての答案を再度点検し、適切に採点されていることを確認したため、採点上の特段の対応は行いません。したがって、今回の出題誤りによる合否への影響はありません。
この文面を読む限りでは、「ミスを認めた後での採点見直し」であると考えられますが、「ミスを踏まえて」の採点見直しではないのです。
と言うのですが、「その誤ったグラフ通りにご自分で英語で説明できますか?」と出題者/採点者を問い詰めたい気持ちです。
ここで広島大が言っているのは、あくまでも「答案として書かれた英語を適切に採点した」というだけのことであって、「グラフの異様な変化を考えあぐねた揚げ句、当該部分を英語として上手く説明ができなかった」答案だけでなく、「グラフの異様な変化をどう説明しようかと時間を取られてしまい、未完に終わった」答案にも何の配慮もできないわけです。
2025年3月15日追記;
広島大学は、まず「2014年のCDのシェアが増えている誤ったグラフの変化を説明しても解答が十分可能であること」が分かるような、英文例を公式解答例として示さなければならないでしょう。
先にこの問題の経緯を振り返るために紹介したこのブログの3月11日の記事では、私が作成した英文を載せていますし、広島大の公式解答例の英文のCEFRに基づく語彙分析との比較も行っていますのでお読みください。
受験生が対応できるような語彙や構文で、あの誤った部分のグラフの変化を英文で説明することがいかに難しいかを実感できると思います。
tmrowing.hatenablog.comもののついでなので、新たに、受験生目線で「その外れ値はうまく説明できない」と正直に書いた例も載せておきます。
これでちょうど100語だと思います。
TextInspectorの語彙分析も良い感じでは?
近年の国立大の個別試験での出題ミスの例として、大阪大学のグラフのミスを振り返っておきましょう。
令和4年度大阪大学一般選抜(前期日程)の地理歴史(地理)における出題の誤りについて
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2022/06/files/kohyo.pdf/@@download/file
広島大も、このくらい詳細な情報の公表が求められると思います。
大阪大の対応から、重要な部分を抜き出しておきます。
3.対応
この設問は、国際観光客流動の世界の諸地域における特徴を、国際観光客到着数とその伸び率、及び地域内・地域外観光客移動数の比率などのデータを手がかりにして推定することを求める設問であった。
当該問題については、問いに対する解答は不可能ではないとは言え、一部誤ったデータにより作成された図によって解答を求める形式となっていたことは、入学試験問題として不適切であり、全員を満点扱いとした。
この大阪大の地理の出題ミスでの対応と比較したときに、「誤ったグラフに基づいて英文の解答を求めている」広島大の問題は、入学試験問題として適切なのか?
この部分は、広島大だけではなく、英語教育関係者に(も)、本当によく考えてほしいのですね。
2025年3月15日追記:
大阪大でなぜこの対応ができたかといえば、対象者となる当該科目受験者が12人だったからでしょう。
それに対して、今回の広島大は前期試験の全学部受験者が対象です。
採点答案を全てチェックし直した、というときの「チェックの中身」も詳しく知りたいものです。
また、この大阪大学の出題ミスの公表時には大阪大学の総長のコメントもありました。
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2022/06/files/comment.pdf/@@download/file
もし、私が当該の受験生だったら、絶対にこのままでは終わらせませんよ。
受験対策が嫌いな私が、3月1日からずっと、ツイッターやブログでこの問題を訴え続けてきましたが、受験対策を専門とするような方たちからも、英語教育を専門とする方たちからも、反応・反響が薄かったのが本当に悩ましかったです。
このボヤキのツイートを自分で反芻しています。
数学でも統計が問われたり、共通テストにも教科として情報が入ってきました。さらに(話が大きくなってすみませんが)教育の分野でもエビデンスとか効果量が話題に上るようになっています。
そんなにデータを気にしているはずなのに、英語のテストのお題作文で使われるデータはそんな雑な扱いで平気?数学でも統計が問われたり、共通テストにも教科として情報が入ってきました。さらに(話が大きくなってすみませんが)教育の分野でもエビデンスとか効果量が話題に上るようになっています。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing)2025年3月7日
そんなにデータを気にしているはずなのに、英語のテストのお題作文で使われるデータはそんな雑な扱いで平気?https://t.co/x5msON4ikv
情報交換をさせていただいたり、ボヤキに耳を貸してくれた何人かの先生方には感謝しています。
3月4日の時点でのボヤキがこちら。
市井の一英語講師の問い合わせでは無視されるだろうと予想しています。
その節はありがとうございました。
しつこく食い下がって3回の照会を重ねた自分を褒めてやりたいとも思います。
本日はこんなところです。
本日のBGM: 街の少年 (佐野元春)
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