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【映画】パリタクシー

フランス語の原題は"La belle course"なので、主人公マドレーヌの人生とかけた「美しい道」という意味。英語版の"driving madeleine"は"Driving Miss Daisy"にかけているのだろう。そんな中での「パリタクシー」という邦題には何のこだわりも感じられず、作品の魅力も伝わってこないものだった。

93歳のマドレーヌが施設に入所するために呼んだタクシーを運転するシャルルは、時間を気にしながらも徐々にマドレーヌのペースに巻き込まれ、結果的には「小旅行」のような形でディナーまで共にしてしまう。波乱に満ちたマドレーヌの人生を辿りながら巡るパリの街並みは美しく、凄惨な思い出もマドレーヌの意識の中では昇華されているようにも見受けられた。

それはつまり、シャルルという相方を得たことで人生を振り返り、相手に伝わるように言葉を選ぶ中で新たな意味と解釈が生まれたということなのだろう。夫婦とかパートナーというものは、単に遺伝子をつなぐことが目的ではなく、セックスという快楽のためでもなく、お互いの人生を振り返りながら見つめ直すための鏡なのかもしれない。僕の職場では、自分の考えを整理するために誰かに話を聞いてもらうことを「壁打ち」と呼ぶことがあるが、まさに人生において「壁打ち相手」がいることは、とても重要なことなのだろうと感じた。

シャルルのおかげで自らの93年の生涯を前向きに再評価し、そして寿命を迎えて天に召されたマドレーヌ。その気持ちが、シャルルに対する遺産の贈与という形で表現される。これはある意味「ペイ・フォワード」の概念でもあり、喜捨や善行の持つ本来の意味ではないか。つながれた思いは、遺伝子の承継と同じように、この世の中を満たしているのかもしれない。

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