現場第一を実現するためには、現場の実情を知らなければならない。
千葉支社では、私が着任する前から、毎月支社の幹部が現場に出て、現場社員との懇談などを行い要望や問題の吸い上げを行っていた。
私も、それをより強化する形で承継した。
私と各部長を班長にして各系統の課長を班員にした六班が計画に基づいて毎月二カ所の現場を見に行く。
現場を見て回って危険個所の発見などに努めると共に、一般社員を中心に、支社に対する要望を訊いてくる。
それを支社の部長会議で発表し、その場で解決できるものは解決し、時間のかかるものは、解決するまでフォローし続ける。
一カ所でだいたい20項目くらいの要望や問題点が上がり、支社全体で240項目を毎月フォローし続ける支社の担当者は大変だが、部長会議で結論を出すから、解決は早く確実だ。
半年ごとに、出された問題数と解決した問題数、検討中の問題数などを円グラフにして、壁新聞に載せて現場に配布した。
だいたい半分くらいは、すぐに解決した。
積み残した問題は色をかえて、それが解決した場合も違う色で判別できるようにした。
私の千葉在任の4年間、ひと月も休まず続けた。
それでもつぎつぎに要望や問題は減ることなく出された。
現場は動いている、のだ。
毎月続けるから、現場社員と支社幹部が顔なじみにもなる。
各系統の課長が一緒に行くから、縦割りの壁をなくして支社一体となって現場の問題解決にあたれた。
支社の担当者が、自分たちに都合の悪いことをいわないように前もって規制をかけることもあったと思うが、何度も続けているうちにホントの姿は見えてくるようになる。
A駅で出された問題がB駅で出ないのはなぜか?
そういう目が支社の幹部に育ってくるということもあった。
壁新聞で明らかになった問題解決の進捗状況は、現場の人たちの発言意欲を刺激した。
そして私は暇さえあれば、こういう「公式」の現場巡視の他に、予告なしにふらっと一人で現場に行って、現場の生の姿を見ることをやっていた。
そうすると「公式」の場における現場の人たちの発言が、いっそう正直な飾らないものとなって、実りの多い会議になるのだった。