
ToDoリストを使って、効率よくタスクを管理するつもりが、やることは終わるどころかどんどん増えていく。
完了したタスクを消せば達成感を得られるはずなのに、一向に減らないリストを見てうんざり。
結局、生産性が高まった実感もなく、毎日残業している……。
このようなお悩みを抱える人に必要なのは、やることリストではなく「やめることリスト」です。
膨大なタスクのなかには、やらなくても問題ないものや人に任せられるものが紛れていることが多々あります。こうした余分なタスクを「やめる」ことで、時間や気力などのゆとりが生まれます。
本記事では、実践を含めたやめることリストの書き方と、その効果についてご紹介しましょう。
早速、やめることリストを書いていきます。今回は、時間術や仕事術などの著書を多くもつ臼井由妃氏のすすめる方法にのっとりました。
準備するものは、紙とペンだけ。筆者はいつでも見返せるよう、普段持ち歩いている手帳を使いました。まずは、やめるべきことややめたいことを、ひたすら書き出します。
臼井氏によるポイント
「『いいと思って習慣化していることも、本当に必要なのか?』『これからも続けていいのか?』まずは疑ってみること」が重要だという臼井氏。*1
たとえば、日課にしているデスクの片づけの時間で簡単な仕事を片づけられるかもしれませんし、以前はストレス解消だったトレーニングが身体的な負担になっているかもしれません。
仕事だけでなく生活や趣味に関することも含めて、20分ほどかけて21個の「やめること」を書き出しました。

臼井氏は「ここでリスト化されたものに費やしている時間が、今のあなたにとっての『ムダな時間』」だと指摘します。*1
リスト化した事柄を日常から取り除くことで、勉強や趣味、睡眠などの本当に必要なことに時間を使えるはずです。

やめるべきだと思うことをひととおり書き終えたら、「絶対にやめるべき10のこと」を決めましょう。*1
選んだ10個の項目が「やめることリスト」決定版です。
選ぶときの基準はとくにないため、筆者は「時間のかかるもの」「精神的負担の大きいもの」に絞ってみました。完成したリストは、以下のとおりです。

リストの活用方法ですが、臼井氏は「朝、仕事を始める前と、夜、仕事を終えるときに声にして自分の考え方や行動にぶれがないか、確認」しているそうです。*1
毎日リストを確認して、やめるべきことをやってしまっていないかチェックします。

「やめることリスト」のメリットは、選択肢を減らせる点にあります。選択肢を減らすことで、「何をしよう」「どうしよう」と考える時間が削減できるのです。その結果、先延ばしの防止や時間の有効活用につながります。
コロンビア大学とスタンフォード大学の研究 *2
選択肢が多すぎると、逆に動機が下がり、行動しなくなる可能性がある。
| テーブル条件 | ジャムの種類 | 購入率 |
|---|---|---|
| Aテーブル | 6種類 | 約30% |
| Bテーブル | 24種類 | 約3% |
実験の結果から、選択肢の多さは魅力的に見えるものの、実際には行動を妨げる要因になってしまうことがわかります。
たとえば:
寝る前に「今日は勉強ができなかった」「もっと良い提案ができたかも」と後悔する──
それは、日々多すぎる選択肢にさらされているせいかもしれません。
「やめることリスト」に書いたことは、行動の選択肢からはずす。これだけで選択の負担が減り、時間・エネルギー・集中力のゆとりが生まれます。

「やめることリスト」を設けて感じた一番のメリットは、集中力の高まりと行動の早さです。
これまで筆者は、ついスマートフォンを開いたり重要でない長電話に時間をとられたりして、仕事を先延ばしにしがちでした。その結果、残業や休日出勤につながる悪循環に陥ることも。
しかし、リストに書いたことを「しない」ようにすることで、すぐにやるべき仕事に着手できるようになりました。余計なことに気を取られず、集中力もアップしたように感じます。
バーナビー・ラッシュブルック氏(Time etc CEO)曰く:
「脳が些細なタスクに縛られなくなれば、より良い意思決定ができ、戦略的に考え、あなたにしかできない仕事に集中することができる。」 *3
「やめることリスト」に書いた10項目は、定期的に見直しをするのがおすすめです。なぜなら、リストに書いたことのいくつかは、次第に習慣から消えていくからです。
筆者の場合、「5. 土日両方に予定をつめこむ」という項目は、日曜日を空けることで即クリア。心身の負担が軽くなったため、新しい項目に入れ替えることにしました。
このように、すでにクリアしたことや完全にやめた習慣は削除し、新しい「やめること候補」を追加していきましょう。
やめることを決めれば、やりたいこと/やるべきことに集中できる時間と心の余裕が生まれます。

***
常に「やること」に追われて疲れている。よく一人反省会をしてしまう。
そんな人こそ、ぜひ「やめることリスト」を取り入れてみてください。
頭も心も軽くなり、仕事の効率や日々の満足感がアップするはずです。
※引用の太字は編集部が施した
*1 日経BOOK PLUS|「やめるべきこと」をリスト化すれば、今必要なものが分かる
*2 Sheena S. Iyengar & Mark R. Lepper (2000),“When Choice Is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing?”,Journal of Personality and Social Psychology, Vol.76, No.6, pp.995-1006.
*3 Time etc|Why You Should Write A "Stop-Doing" List Instead Of A To-Do List
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