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記憶は「思い出す」で強化される。忙しい人でもできる、短時間リトリーバルトレーニング

参考書を見て記憶できていない自分にガックリするビジネスパーソン

忙しい日々のなかで、
「勉強してもすぐに忘れてしまう」
「何度読んでも知識が定着しない」

そんな風に困ったご経験はありませんか?

たとえば、通勤電車のなかで参考書を開きながら、「昨日覚えたはずなのに……」と首をかしげる。カフェでコーヒーを待ちながらノートを開くも、ページをめくる手が止まる。

そんな瞬間、誰にでも覚えがあるはずです。

じつは、記憶に残らない原因のひとつは、「覚える」ための行動に工夫が足りなかったことにあります。ほんの少しだけやり方を変えるだけで、記憶力は驚くほど高めることができるのです。

今回ご紹介するのは、100年以上にわたる研究で効果が裏づけられてきた学習法「リトリーバル」。

「覚えたのに忘れる」悩みを乗り越え、学びの成果を確実に積み上げるためのヒントを、この記事で手に入れてください。

100年の研究が裏づけたリトリーバル効果 

まずは、リトリーバルの効果を、具体的に裏づける話をご紹介しましょう。

「脳回路の機能拡張に関する探索的研究」で、2025年度の薬学会賞を受賞した脳研究者の池谷裕二氏は、過去の対談記事(2017年)でこう話しています。*1

 これまでにいかなる勉強法よりもリトリーバルトレーニングが一番点数が高いというのが証明されています。

リトリーバル(retrieval)とは、一度インプットした情報を、何も見ずに自分の頭だけで思い出すこと。

スタンフォード・オンラインハイスクール校長の星友啓氏によれば、リトリーバルは「100年以上もの研究の積み重ねの中で、高い学習効果が確認されてきたインプット方法」です。シンプルな読み返しよりも、記憶の定着率が50%もアップすることなどが確認されているといいます。*2

脳のメカニズムに適った方法なので、年齢や能力にかかわらず、記憶の定着・応用や整理にも効果を発揮するそうです。*2

つまり、リトリーバルは、誰にとっても脳に負担をかけずに続けられる学習法なのです。

記憶の定着に役立つリトリーバル

3つのリトリーバル復習法【星氏版】

前出の星氏は、3つのリトリーバル復習法を紹介しています。その説明をもとに手順をまとめました。*2

【ワード・リトリーバル】:初心者におすすめ

  1. 学習時に大事なキーワードをハイライト
  2. 復習時にハイライト箇所で目を閉じ、定義や説明を思い出す
  3. そのあと正誤をチェック
  4. 思い出せなかったら再読して繰り返す
    ┗思い出せたら先に進む

【前リトリーバル】:内容が頭に入ってから

  1. 見出しや小見出しを選ぶ
  2. その章の何でもいいので思い出してみる
  3. そのあと読み進めていく

【後リトリーバル】:学びを脳に叩き込む段階

  1. ある程度の分量を読み込む
  2. 目を閉じて書かれていた内容をまとめ、心のなかで説明
  3. 説明できなければ再度読み直す

星氏いわく、効果的な順番は【ワード・リトリーバル】&【後リトリーバル】➡【前リトリーバル】*2。この手順のおかげで、一見難しそうな名前の勉強法が、グッと身近になった印象です。

しかしながら――

日々忙しいビジネスパーソンは、たとえ簡単でも複数の工程があったり、時間を要したりすると、少し億劫になってしまうかもしれません。

忙しそうなチームのミーティング風景

実践! リトリーバル復習法

そこで、まずは実践可能なリトリーバル学習に取り組んでみました。さっそく説明しましょう。

「5秒リトリーバル」

一日のなかに無数にある「スキマ時間」。この時間を、ちょっとした勉強にあてることができれば、少しずつでも確実に成果が積み上がっていくはずです。

たとえば5秒程度で完結する「5秒リトリーバル」5秒間だけ思い出してみて、思い出せなければ読み直す。これなら、数回繰り返してもトータルで数分程度。気軽に続けられそうです。

手順は以下のとおり。

「5秒リトリーバル」のやり方
  1. 参考書やノートの内容を5秒間だけ思い出してみる
  2. 思い出せたら次 / 思い出せなければ再読
  3. そのスキマ時間内で繰り返すか、また次のスキマ時間で実践

移動中の電車や、カフェで注文したコーヒーを待ちながらなど、ちょっとしたスキマ時間で実践できました。

「備忘通知リトリーバル」

「あー、もったいないなぁ。この時間に○○ができたのに……」

このように悔しい思いをしたことはありませんか? 忙しいビジネスパーソンは、考えることがたくさんあるので、スキマ時間の活用を忘れてしまうことがあります。

そこで、リマインダー機能とリトリーバルを組み合わせ、「備忘通知リトリーバル」にしてみようと考えました。

リマインダー機能は、Google カレンダー、slackなどチャット系ツール、ほかアプリでも、なんでもOKです。

手順は次のとおり。

「備忘通知リトリーバル」のやり方
  1. 想定可能なスキマ時間に向けリマインダー設定(通勤時間など)
    ┗参考書やノートに書かれていた内容についてひとつだけ質問する

  2. リマインダーが来たら、その内容を思い出してみる

  3. 答え合わせを行なう
    ┗合っていたら次の質問を、また未来の自分に向けリマインダー設定
    ┗間違っていたら同じ質問を、再度未来の自分に向けリマインダー設定

忘れていたころに、たびたびリマインダー通知が届くと、より効果的な反復学習になりそうです。

「3Dリトリーバル」

公立諏訪東京理科大学教授で脳科学が専門の篠原菊紀氏は、「強い感情と結びついて記憶されたことは記憶し続けるようにできている」といいます。*3

この事実も、時短リトリーバル復習法で活かそうです。やり方は簡単。学習時に状況や感情も簡単にメモしておくのです。

そうなれば、復習時には「情報(知識)・情景(空間)・感情(気持ち)」の3つの軸で記憶を立体的に再現できるはず。言うなれば、体験ごと記憶をよみがえらせる「3Dリトリーバル」です。

手順は次のとおり。

「3Dリトリーバル」のやり方
  1. 学習時にその場の状況や感情も簡単にメモ
  2. 復習時には、その「シチュエーションと学習内容」を思い出そうとする
  3. 思い出せなければ、いまの状況や感情に更新して再度インプット
  4. 思い出せたら次に進む

筆者もさっそく、この「3Dリトリーバル」に挑戦してみました。

(※ノートの中身参考:千葉雅也著(2022),『現代思想入門』,講談社.)

「3Dリトリーバル」の実践(上部)

本からの学びを書き出す際に、そのときの状況や感情を、深く考えず書き入れていきます。たとえば聞こえてくる音楽、その日の天気、学びながら心に浮かんだ素直な気持ちなどです。

「3

そうして後日、リトリーバル復習してみたところ、音楽や天気、自分の心に湧き上がってきた気持ちから手繰り寄せるような感覚で、覚えたいキーワードのイメージや意味がふわっと呼び起こされてきました。

まるで連想ゲームをするかのように、音や風景、心の動きが記憶を呼び覚ましていく。「情報・情景・感情」を手がかりにしたこの方法なら、知識が単なる暗記ではなく、自分自身の体験として深く根づいていくはずです。

学びをもっと立体的に、もっと自分ごとにするために。「3Dリトリーバル」は、そんな新しい記憶スタイルを支えてくれるでしょう。

***
学びとは、知識をただ積み上げることではなく、自分自身の記憶と対話しながら、育てていくものなのかもしれません。リトリーバル学習法は、その力を引き出してくれる頼もしい味方です。

そして、忙しい日々のなかでも無理なく続けられる工夫さえあれば、誰でも、確かな学びを積み重ねることができます。

小さな思い出し、小さな積み重ねが、やがて大きな成果につながる――今日から、あなた自身のリトリーバル体験を始めてみませんか?

【ライタープロフィール】
上川万葉

法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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