
「いつも締め切りに追われている」
「消化できないTODOリストが溜まっていく」
「こんなに頑張っているのに、前進している感じがしない……」
このような状況では、今年のうちに収めたい仕事も収まる気がしないでしょう。
リーダーシップコーチのルシアナ・パウリス氏は、仕事を終わらせるためには
「未完了のタスクを完了してから次のタスクにとりかかる
――進行中のタスク・未着手のタスクを可視化する」
ことが重要だと述べています。*1
「次から次へと仕事が舞い込むのに、タスクを完了させてから次にとりかかるなんて無理だ」
「タスクはチェックリストで可視化している」
そう思うのなら、曖昧な計画のまま仕事を進めている可能性があります。
本記事では、着実にタスクを完了させていくための方法を、筆者の実践を交えながらご紹介いたします。
「直前のタスクのことが頭から離れず、目の前の作業に集中できない……」
このように「未完了の仕事が次の仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼす」現象を
注意残余と言います。*2
日々多くのタスクをこなすなかで、このような経験はありませんか?
これはマルチタスクによる注意残余が影響している可能性があります。
カーネギーメロン大学の研究では、複数の作業を同時にこなすことで
注意力が37%も低下することが明らかになっています。
そこで大切なのが、「完了の定義」を明確にもつこと。
なにをどこまでやったのかが曖昧なままでは、常に未完了感がつきまといます。
そうすれば未完了の仕事が気になり、注意残余が生じてしまうでしょう。
これは年末年始にも言えることです。
「今年中に収めたい仕事が山ほどあるけど、できるところまででよしとしよう」と、未完了の仕事を放置したままでは、年明けのパフォーマンスにも悪影響を及ぼしかねません。
それを避けるために、「具体的な計画」を立て「完了の定義」を明確にしておく必要があるのです。
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役の伊達洋駆氏も、「未完了のものについて具体的な計画を立てることで、認知的な負担を軽減し、目の前のタスクに集中できるようになる」と述べています。*2
「そんなこともうやっているよ」と思いましたか? しかし本当にそうでしょうか。
💡 こんな計画になっていませんか?
もし上記に思い当たる節があるのなら、立てた計画をさらに具体的にできる余地があるはずです。
伊達氏は、具体的な計画を立てるには「それぞれのタスクに『中間目標』や『小さな完了ポイント』を設ける」ことで完了の定義を明確にする必要があると説きます。それは「心理的な完結感」にもつながるのだそう。*2
次の項で、筆者の実践を交えながら詳しく説明していきます。

ちょうど筆者は、今週中にやりたいタスクを多く抱えていてパンク寸前な状況です……。毎日仕事をしていても、未完了感からくる焦りに追い立てられることも。
そんな状況から脱するため、具体的な計画を立ててみることにしました。
まずは頭のなかにある、気になっている仕事をすべて書き出しましょう。
こちらは筆者がいま気になっている仕事を書き出した様子です。

作業を細分化したものを「小さな完了ポイント」とするため、細分化をメモできるように余白を残しながら書き出しました。
筆者は紙に書き出しながら整理したほうが考えがまとまるので紙面に書き出しましたが、デジタルツールでもかまいません。
紙に書いたりアプリを使ってみたり、自分に合ったスタイルをいろいろ試してみるといいでしょう。
書き出したタスクを整理し、優先順位をつけていきます。まずはステップ1で書き出した仕事を細分化します。

次に、重要度「( ) < 〇 < ☆」の順にしるしをつけて、優先順位をつけてみました。

細分化されたタスクそれぞれを「小さな完了ポイント」とします。優先順位の低い( )はいったん保留にして、後日整理することにしました。
優先順位の高い☆マークをつけたタスクのなかから、今日やるべき作業を青枠で囲み、そのなかでの優先順位をメモした様子がこちら。いつ着手するかも簡単にメモしました。

残ったタスクも右下の余白に書き出して整理します。今日の進捗によって明日以降の優先順位に変動があるかもしれないので、ここでの計画はざっくりしたものにしました。

儀式1 : 伝える
報告のない作業は、他者からは宙ぶらりんな状態に見えてしまいます。
関係者に報告するまでがタスクのうちです。
関連業務を担当している同僚や上司、クライアントに進捗を伝えましょう。
「なにをどこまでやっていて、どのくらいで終わるのか」を共有する誠実な姿勢は信頼構築にもつながります。
儀式2 : 「完了アクション」を決めておく
自分自身で完結する仕事もあるでしょう。
筆者で言えば、自身のホームページの修正やレッスン準備などは誰かに進捗を伝えるものではありません。そのような場合は、「完了アクション」を決めておくのがおすすめです。
🖋 完了アクションの例
筆者は完了できたものには斜線を引き、完了できなかったものは忘れないようにピンクのラインマーカーを引きました。

さらに明日用にステップ1〜3を実施。ラインマーカーを引いた、今日完了できなかったタスクも組み込んであります。ざっくりとしたスケジュールもメモ書きしました。

このように完了の儀式までを終えることで、先述の伊達氏が言っていた「心理的な完結感」を得られ、注意残余を防ぐことができるのです。
細かすぎるスケジュールは計画倒れにつながる
「〇時〜このタスクに着手」のように細かく決めすぎると、スケジュールのバッファがなくなってしまいます。
そうすると急な仕事が舞い込んだときにリカバリーがきかなくなるので、「午前中はこの3つを終わらせる」くらいにゆるく考えるほうがいいかもしれません。
優先順位は日々調整する
当たり前ですが、優先順位は日々変動します。
最初に書き出した優先順位に固執せず、その日ごとに柔軟性をもって優先順位をつけなおす必要があると感じました。
✨ 書き出すことで得られる変化
大きな塊としてのタスクは終えられていなくても、細分化されたタスクを完了させていく過程で「心理的完結感」を得られました。
どこまでできていてなにができていないのが明確になるので、完了の目処もつけやすかったです。
事前に段取りが明確になっているので、着手スピードが上がりました。
今回大変だったのが、「いつやるか」を決めること。
時間が決まった仕事を考慮する必要があるので、計画を立てるのに少し時間がかかりました。
今回筆者は1週間でやるべきことの計画を立てましたが、これが年末年始となるともっと期間が長くなります。スケジュールに柔軟性をもたせるためにも、まずは「ステップ1. 抱えている作業をすべて書き出す」と「ステップ2. 優先順位をつける」を行なうのがいいと感じました。
「いつやるか」はその日ごとに整理したほうが、イレギュラーが発生しても計画倒れせず、着実にタスクを完了していけるはずです。

***
今年の仕事は今年のうちに――
「終わらせる力」を味方につけ、年明けはスタートダッシュで差をつけていきましょう。
※引用の太字は編集部が施した
A1. 注意残余とは、未完了の仕事が次の仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼす現象のことです。
直前のタスクが頭から離れず、目の前の作業に集中できなくなります。
「完了の定義」を明確にし、心理的な完結感を得ることで防ぐことができます。
A2. タスクを細分化することで、進捗が明確になり「小さな完了ポイント」ごとに達成感を得られます。
大きなタスクを完了できなくても、細分化されたタスクを終えるごとに「心理的完結感」を感じられるため、モチベーション維持にも効果的です。
A3. 細かすぎるスケジュールは計画倒れにつながります。
「〇時〜このタスク」ではなく「午前中はこの3つを終わらせる」程度にゆるく設定し、バッファを設けることで急な仕事にも対応できます。
また、優先順位は日々変動するため、柔軟に調整することが大切です。
A4. 完了の儀式には2種類あります。
ひとつは関係者への報告。もうひとつは自分で完結する仕事の場合の「完了アクション」です。
完了したタスクに斜線を引く、明日の予定を整理する、自分専用のチャットに進捗を送信するなど、自分に合った方法を決めておきましょう。
*1 フォーブス ジャパン|タスクを「とにかく終わらせる」仕事術
*2 ビジネスリサーチラボ|未完了のリスク:心の中を漂う終わりなきタスクの影
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。
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