中国リスクはコントロール可能だしコントロールすべき

経済制裁手段を持っているのは中国の側ではなく日本の側

今回の中国関連騒動、数字を丁寧に眺めていくと、日本にとって中国との関係は極めて重要であるものの、現時点において何とかコントロール可能であるとともに、日中断交という事態に陥った場合のマイナス影響は中国の方が遥かに大きいことがわかります(あるいは制裁手段を握っているのはむしろ日本の側だ、ということでもあります)。こうした数値的事実を無視し、「中国を怒らせたら大変なことになる」などと口走っていたメディアや政党がどこだったのか、しっかりと覚えておくべきではないでしょうか。そのことを、改めて強調したいと思う次第です。

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目次

数字を読まない人たち

安全保障は経済に優先する

人的往来、在留者、与信統計、直接投資統計、貿易統計―――。

これらの数字を集め、丁寧に眺めていくと、日本にとって中国との関係は極めて重要であるものの、現時点において何とかコントロール可能であるとともに、コントロールすべきである、と思えてなりません。

ここ数日、中国の日本に対する理不尽ともいえる経済制裁(もどき)の動きと、それに対するネット上で一部の「リベラル」(?)を自称する人たちなどの反応を見ていて思ったのですが、この世の中には数字を見ないで「ああだ」「こうだ」と大騒ぎする人が結構たくさんいるようです。

日中関係について主張する人たち、なかでも中国にやたらと親和的な人たちは、「数字」をすっ飛ばし、こんな反応を条件反射的に示したりするのです。

  • 中国がここまで激怒したのは高市(早苗総理大臣)の国会答弁が稚拙だったからだ
  • 中国人観光客が日本に来なくなれば日本経済にマイナス影響が生じる
  • 中国を怒らせた以上は怒りを鎮めるために日本も何らかの譲歩を示す必要がある
  • 最低でも高市(総理)の国会答弁は取り消さなければならない

…。

当たり前の話ですが、安全保障は常に経済的利益に優先します。

中国が日本に対し、経済制裁(あるいは経済的な嫌がらせ)を仕掛けてきた場合、何らかの損害が生じる可能性があるという点については注意が必要ですが、だからといって、そうした損害を回避するために日本の内閣総理大臣が発言した答弁を撤回しなければならないのだとしたら、それは本末転倒です。

なぜ「数字」が出て来ないのか

ただ、彼らに対して抱く違和感は、それだけではありません。

多くの場合、「経済的損失」を論じているはずなのに、具体的にその金額がいくらなのかという「数字」が伴っていないのです。

そして、両国関係を経済面から論じるなら、最低でも「ヒト、モノ、カネ」という要素は網羅すべきでしょうし、可能ならば両国の国民感情(両国のデータが手に入らない場合であっても、最低でも片方の国のデータ)があることが望ましいといえます。

いちおう繰り返しておきますが、現在の日本経済にとって、中国との関係は不可欠なほどに重要であり、もしも中国との関係が途絶えようものなら、日本経済にも決して少なくない悪影響が生じます。

ただ、日中間の「ヒト、モノ、カネ」の往来を丹念に分解していくと、日中断交による損害は明らかに、日本よりも中国の方により多く出ると断じざるを得ないのです。

ヒト・モノ・カネで見た日中関係

データの欠落は中国の側の問題

ここでは図表1が、ヒト、モノ、カネの関係を論じるうえでの基本的な総括表ですが、少し長くなるので、ヒト、モノ、カネに分けて、のちほど図表1を「図表1-1」「図表1-2」「図表1-3」として再掲します。

図表1 日中「ヒト、モノ、カネの流れ」
比較項目具体的な数値全体の割合
訪日中国人(2025年1月~10月)8,203,051人訪日外国人全体(35,547,199人)の23.08%
訪中日本人データなし不明
中国に在住する日本人(2024年10月)97,538人在外日本人全体(1,293,097人)の7.54%
日本に在住する中国人(2024年12月)873,286人在留外国人全体(3,768,977人)の23.17%
対中輸出額(2025年1月~9月)13兆6381億円日本の輸出額全体(80兆5608億円)の16.93%
対中輸入額(2025年1月~9月)19兆3520億円日本の輸入額全体(83兆3967億円)の23.20%
対中貿易額(2025年1月~9月)32兆9901億円日本の貿易額全体(163兆9575億円)の20.12%
対中貿易収支(2025年1月~9月)5兆7139億円の赤字日本の貿易収支全体は2兆8359億円の赤字
邦銀の対中国際与信(2024年12月)828億ドル邦銀の対外与信総額(5兆1334億ドル)の1.61%
中国の銀行の対日国際与信(2024年12月)データなし外銀の対日与信総額は1兆1896億ドル
日本企業の対中直接投資残高(円建て)(2024年12月)19兆9881億円日本の対外直接投資全体(331兆0137億円)の6.04%
日本企業の対中直接投資残高(ドル建て)(2024年12月)1323億ドル日本の対外直接投資全体(2兆2282億ドル)の5.94%
中国企業の対日直接投資残高(2024年12月)84億ドル日本の対内直接投資全体(3376億ドル)の2.49%

(【出所】後述)

これらについては基本的にデータなどが読めれば誰にでも比較的簡単に手に入れられるものではないかと思います。もちろん、ところどころに欠落がありますが、これは中国がデータを公表していない項目が存在するためであり、これらについては正直、お手上げです。

ただ、総じていえるのは、「日本との関係を深めようとしているのは中国の側である」、「日中関係がおかしくなったら、よりいっそう困るのが中国の側である」、「日本の側はむしろ近年、中国との関係をコントロールしつつある」、といった傾向でしょう。

ヒトの流れは「中国>日本」

まずは、ヒトの流れについて確認してみます。

図表1-1 日中間の「ヒト」の流れ
比較項目具体的な数値全体の割合
訪日中国人(2025年1月~10月)8,203,051人訪日外国人全体(35,547,199人)の23.08%
訪中日本人データなし不明
中国に在住する日本人(2024年10月)97,538人在外日本人全体(1,293,097人)の7.54%
日本に在住する中国人(2024年12月)873,286人在留外国人全体(3,768,977人)の23.17%

(【出所】訪日中国人は日本政府観光局『訪日外客統計』、在中日本人は外務省『海外在留邦人数調査統計』、在日中国人は出入国在留管理庁『出入国在留管理庁』をもとに作成)

まず、人的つながりでいうと、中国人が日本に大挙してやって来ていることは間違いなく、現実に2025年1月から10月までの期間で訪日中国人は8,203,051人に達しており、これは訪日外国人全体(35,547,199人)の23.08%に相当します。

これに対し、中国を訪問した日本人の人数については定かではありませんが(中国政府側が公表していないため)、ただ、近年、日本を出国する日本人が毎月100万人前後であること(つまり年間1200万人前後であること)などを踏まえると、訪日中国人数がこれより少ないことは間違いありません。

まさか、出国する日本人のほとんどが中国を訪れているとも考え辛いことから、年間の訪中日本人は多くても200~300万人程度(かそれよりも少ない)と考えられ、やはり「中国人が日本に来たがるほどに日本人が中国に行っているわけではない」、という傾向は、全体として指摘できるでしょう。

日本に在留する中国人は増える傾向に

さらに、日本に在留する中国人が昨年12月時点で873,286人に達しているのに対し、中国に在留する日本人は昨年10月時点で97,538人、つまり10万人を割り込んでいるという事実は重要です。

そして、日本に在留する中国人はコロナ禍の一時期に減少する傾向がみられたものの、2022年以降は増加基調にあり、2024年は過去最多を記録しています(図表2)。

図表2 在日中国人

(【出所】『在留外国人統計(旧登録外国人統計)』データをもとに作成)

また、在留資格でいえば「永住権者」が最も多く、これに「留学」、「技術・人文知識・国際業務」などが続きます(図表3)。

図表3 国籍別在留者数(中国、2024年12月末時点)
国籍在留者数割合
1位:永住者計343,81639.37%
2位:留学計141,49616.20%
3位:技術・人文知識・国際業務計103,62211.87%
4位:家族滞在計83,2189.53%
5位:定住者計31,1223.56%
6位:日本人の配偶者等計26,5833.04%
7位:経営・管理計21,7402.49%
8位:永住者の配偶者等計20,6502.36%
9位:特定技能1号計17,6452.02%
10位:技能計14,1231.62%
その他69,2717.93%
合計873,286100.00%

(【出所】『在留外国人統計(旧登録外国人統計)』データをもとに作成)

中国在住日本人は昨年10万人を割り込んだ

これに対し、中国在住日本人は2012年の約15万人をピークに減り続け、2024年10月時点では10万人を割り込んでいます。

図表4 中国に在留する日本人

(【出所】外務省『海外在留邦人数調査統計』データをもとに作成)

これに加えて中国在住日本人の多くが「永住者」ではなく「長期在留者」、つまり「いずれ本国(=日本)に帰国する日本人」である、という点も興味深いところです。想像するに、中国に暮らしている日本人の多くは企業関係者であり、勤務先企業の辞令で赴任しているのではないでしょうか。

カネの関係は「日本>中国」だが…

そうなって来ると、日本企業の対外投融資がどうなっているかは気になるところです。

図表1-2 日中間の「カネ」の流れ
比較項目具体的な数値全体の割合
邦銀の対中国際与信(2024年12月)828億ドル邦銀の対外与信総額(5兆1334億ドル)の1.61%
中国の銀行の対日国際与信(2024年12月)データなし外銀の対日与信総額は1兆1896億ドル
日本企業の対中直接投資残高(円建て)(2024年12月)19兆9881億円日本の対外直接投資全体(331兆0137億円)の6.04%
日本企業の対中直接投資残高(ドル建て)(2024年12月)1323億ドル日本の対外直接投資全体(2兆2282億ドル)の5.94%
中国企業の対日直接投資残高(2024年12月)84億ドル日本の対内直接投資全体(3376億ドル)の2.49%

(【出所】対外与信は Bank for International Settlements,Consolidated Banking Statsitics 、対外・対内直接投資は日本銀行『直接投資残高』およびJETRO『直接投資統計』を参考に作成)

対中与信は減る一方

表中に記載している国際与信統計のデータは国際決済銀行(BIS)のものですが、日本銀行の最新データによれば、邦銀の対外与信は5兆4886億ドルであり、トップは米国(48.02%)で、中国は11番目の813億ドル、対外与信全体の1.48%に過ぎません(図表5)。

図表5 日本の対外与信相手国一覧(上位20件、2025年6月末時点、最終リスクベース)

(【出所】日銀『物価、資金循環、短観、国際収支、BIS関連統計データの一括ダウンロード』サイトのデータをもとに作成)

しかも、対外与信統計上も対中与信、対香港与信は減少の一途をたどっています(図表6)。

図表6-1 中国に対する与信(最終リスクベース)

図表6-2 香港に対する与信(最終リスクベース)

(【出所】日銀『物価、資金循環、短観、国際収支、BIS関連統計データの一括ダウンロード』サイトのデータをもとに作成)

いわば、邦銀が資金(投融資)を中国(や香港)から動かしている格好であり、とりわけ国際的な金融センターだったはずの香港を邦銀がかつてほど重視していないというのは興味深い現象です。

企業の対外直接投資は増えているが…「シェア」は下がっている

さらに、中国向けの対外直接投資については徐々に増えているものの、その「増え方」のペースは鈍く、日本全体の対外直接投資がこの10年で2.2倍以上に増えているのに、中国向けは1.5倍程度の伸びにとどまっています(図表7)。

図表7-1 対外直接投資(合計)

図表7-2 対外直接投資(中国向け)

(【出所】日本銀行『直接投資(業種別・地域別、目的別)』データをもとに作成)

ちなみに日本にとって中国は依然として重要な直接投資相手国ですが(図表8)、これが今後、どう推移していくかは気になるところだといえるでしょう。

図表8 対外直接投資・相手国別内訳(2024年末)
相手国金額構成割合
1位:米国121兆9244億円36.83%
2位:オランダ23兆7411億円7.17%
3位:中国19兆9881億円6.04%
4位:英国19兆9560億円6.03%
5位:シンガポール18兆1504億円5.48%
6位:豪州15兆7124億円4.75%
7位:タイ11兆8119億円3.57%
8位:ドイツ6兆9503億円2.10%
9位:インドネシア6兆1296億円1.85%
10位:インド5兆8179億円1.76%
その他80兆8317億円24.42%
合計331兆0137億円100.00%

(【出所】日本銀行『直接投資(業種別・地域別、目的別)』データをもとに作成)

ただ、カネの面から見たら、銀行等による投融資という観点からも、企業による直接投資という観点からも、中国の重要性はそこまで高くありません。

日中両国がアジア最大規模の経済大国であることを踏まえると、日本の対外投融資や対外直接投資のトップの相手国が中国であっても不思議ではないところですが、現実にはそうなっておらず、また、日本全体の対外投融資・対外直接投資の伸びに中国が追いついていないのです。

また、日本の対外投融資331兆円に占めるシェアは6%とはいえ、それでも日本は中国に20兆円近い資本を投資し、工場などを作り、現地人を雇用しているわけですから、日本がこれらの投資をすべて引き揚げれば、中国経済にもそれなりの打撃が生じるであろうことは想像に難くありません。

これに対し、図表1-2でもわかるとおり、中国から日本への直接投資は84億ドルほどであり、日本の経済規模からすれば誤差の範囲であり、とくに論じる必要もないでしょう。

中国は最大の貿易相手国だが…

さて、日中間の「モノの流れ」については、『貿易構造上「日中関係悪化」の打撃は中国の方が大きい』でも取り上げたとおり、たしかに日本にとって中国の重要性は大きいです。

図表1-3 日中間の「モノ」の流れ
比較項目具体的な数値全体の割合
対中輸出額(2025年1月~9月)13兆6381億円日本の輸出額全体(80兆5608億円)の16.93%
対中輸入額(2025年1月~9月)19兆3520億円日本の輸入額全体(83兆3967億円)の23.20%
対中貿易額(2025年1月~9月)32兆9901億円日本の貿易額全体(163兆9575億円)の20.12%
対中貿易収支(2025年1月~9月)5兆7139億円の赤字日本の貿易収支全体は2兆8359億円の赤字

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データをもとに作成)

川上工程・川下工程の垂直統合型

ところが、貿易品目を委細に眺めていくと、その構造がかなり特殊であることがわかります。

2024年実績ベースでは、日中貿易高は日本から中国への輸出が18兆8625億円、日本の中国からの輸入が25兆3132億円ですが(図表9)、日本の中国向け輸出品は製造装置・素材などの工業製品(しかも川上工程品)が中心です。

図表9-1 日中貿易高(日本から中国への輸出、2024年実績、主要品目)
品目金額割合
合計18兆8625億円100.00%
機械類及び輸送用機器9兆9185億円52.58%
 うち半導体等製造装置2兆1770億円11.54%
 うち半導体等電子部品1兆3130億円6.96%
 うち自動車9247億円4.90%
 うち電気回路等の機器5979億円3.17%
 うち電気計測機器4271億円2.26%
 うち自動車の部分品4198億円2.23%
 うち原動機3344億円1.77%
化学製品3兆3649億円17.84%
 うち有機化合物6463億円3.43%
原料別製品2兆2011億円11.67%
 うち銅及び同合金5110億円2.71%
雑製品1兆3399億円7.10%
 うち科学光学機器6763億円3.59%
特殊取扱品1兆1858億円6.29%
原材料5544億円2.94%
鉱物性燃料1806億円0.96%
食料品及び動物733億円0.39%
飲料及びたばこ418億円0.22%
動植物性油脂22億円0.01%
図表9-2 日中貿易高(日本の中国からの輸入、2024年実績、主要品目)
品目金額割合
合計25兆3132億円100.00%
機械類及び輸送用機器13兆1071億円51.78%
 うち通信機2兆9835億円11.79%
 うち事務用機器2兆4642億円9.73%
 うち音響・映像機器(含部品)1兆0341億円4.09%
 うち家庭用電気機器6388億円2.52%
 うち自動車の部分品5810億円2.30%
 うち重電機器5786億円2.29%
雑製品5兆2916億円20.90%
 うちメリヤス編み及びクロセ編み衣類9483億円3.75%
 うち衣類6414億円2.53%
 うちがん具及び遊戯用具6081億円2.40%
原料別製品2兆9707億円11.74%
化学製品1兆8744億円7.40%
 うち有機化合物5446億円2.15%
食料品及び動物1兆2770億円5.04%

(【出所】普通貿易統計データをもとに作成)

そして、日中の貿易構造は、日本は中国から最終製品(PC、スマホ、衣類、雑貨などの軽工業品)などを大量に仕入れる一方、中国が生産活動を行うために必要な生産財・中間素材などを販売するという、完全な垂直統合モデルにあるのです。

中国との関係を考え直すとき

中国は対日制裁カードが限られているが、日本の対中制裁カードは豊富

いずれにせよ、以上の議論から見えてくるのは、中国が日本に対して持っている経済制裁のカードは極めて限定的である、という状況であり、何なら経済制裁を議論するなら、日本の方がはるかに多くのカードを持っていることになります。

たとえば中国国民に対する入国ビザ、在留ビザの扱いを厳格化すれば、それだけ多くの中国人が困りますし、(外為法などが許す範囲で)中国に対する輸出管理を強化し、半導体製造装置などの対中輸出を制限するなどの手法で日本は中国を揺さぶることができます。

さらには日本側が「中国からの投資回収に関する優遇税制」(いわゆるリパトリ税制)などの措置を講じれば、多くの日本企業が中国からの撤退という動きを加速させる可能性もあります。

さらに、日本企業が中国から撤収すれば、(日本企業にもいくばくかの投資損失も生じるかもしれないにせよ)現地での雇用も輸出先も失われるなどの被害が生じるのは中国の側かもしれません。

中国側が日本に対して講じることができるのが(レアアースなどの禁輸措置などを除けば)「中国人の日本への団体旅行の自粛」であったり、「(すでに輸入制限を加えている)日本産の海産物の(再度の)輸入制限」であったり、と、ほとんど意味のない者に限られているのとは対照的です。

あるいはせいぜい、中国在住日本人に対して難癖をつけるくらいでしょうか(※それをやればやるほど日本企業が逃げていくことにつながりますが…)。

安全保障は経済に優先する:国民は賢明に行動を!

もっとも、くどいようですが、日中貿易が途絶えるようなことがあれば、日本経済にも極めて甚大な被害が及びます。

しかし、安全保障は経済に優先しますし、「経済的な利益が損なわれる(のがいやだ)から、中国との関係を重視すべきだ」、は通りません。

なにより、最近だと中国当局が「反スパイ法」などを盾に、中国在住邦人などに対する取り締まりを強化するのではないか、といった観測もあるようです。

防諜機関が対日威嚇 邦人摘発強化も 中国

―――2025/11/19 15:54付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】

「なにか気に入らないことがあると経済で他国を揺さぶる」、「国内で言論の自由や人権が十分に守られておらず、政府の一存で身柄を拘束されるリスクがある」。

正直、そんな国に10万人弱の日本人が在留していることも、日本企業が20兆円近く直接投資していることも、邦銀が800億ドル以上の投融資を抱えていることも、個人的には理解に苦しむところではありますが、私たちが考えておくべきは、それだけではありません。

現在だと日中断交の悪影響は日本にも及びますが、現在のところ、まだコントロール可能であり、かつ、コントロールすべき問題でもあり、そして引き返せるレベルでもあります。

日本政府には、日中関係がこれ以上悪化しないように努力することを求めたいと思いますが(※現在のところ、日本政府・高市早苗内閣はうまくマネージしています)、それだけでは足りません。

やはり、日本企業としてはこれ以上、経済を政治利用する国へのエクスポージャーを増やすべきではありませんし、私たち日本国民としても、冷静かつ沈着に、現在、何が起こっているのかを把握するとともに、適切な行動を取るべきです。

くどいようですが、次の3点は、少なくとも徹底すべきではないでしょうか。

  • 報道に納得できない新聞は解約する
  • 報道に納得できないテレビは見ない
  • 選挙では一番マシな候補に投票する

今回の中国関連騒動でも、数値的事実を無視し、「中国を怒らせたら大変なことになる」などと口走っていたメディアや政党がどこだったのか、しっかりと覚えておくべきではないでしょうか。

そのことを、改めて強調したいと思う次第です。

カテゴリー
金融

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。

— 新宿会計士 (@shinjukuacc)September 22, 2024

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読者コメント一覧

  1. クリリンより:

    HBC北海道放送ニュース
    ホタテ業者が嘆き「完全に逆戻り」【日本産水産物の事実上輸入停止】中国への依存度を見直す決断「同じように戻そうとは思わない」
    ttps://topics.smt.docomo.ne.jp/article/hbc/region/hbc-2299051

    1. JAより:

      豊洲市場のホタテガイ(帆立貝)の市況を確認すると、ここ2~3年(中国禁輸以降)価格は上昇傾向にあり、2025年は特に価格上昇が著しい(個人としては残念)です。
      ホタテ業者が「同じように戻そうとは思わない」というわけです。

      1. 匿名より:

        大嘘ですね。

        影響を受ける事業者(加工施設)は1つだけ。この会社の話を針小棒大に報じているだけのようですね。

        https://news.yahoo.co.jp/articles/e28da6820d5d379b1f93706da97af2e8c5fd93e9

  2. 引きこもり中年より:

    素朴な疑問ですけど、高市総理の台湾有事答弁は(中国との関係は別にして)答弁の内容自体に、何か問題はあるのでしょうか。(私は「現実を言っただけ」と思うのですが。そのときのために、野党にあらかじめ言っておくことも、重要ではないでしょうか)
    蛇足ですが、台湾有事答弁は、朝日新聞と立憲に存立危機事態を引き起こしているのではないでしょうか。

  3. 自由な釣り人より:

    いつも有益な記事をありがとうございまいます。
    今回の記事も、なぜ中国がブチ切れながらも、米国に使ったレアアース輸出規制という切り札をすぐに切らないのか考えるうえで、とても参考になりました。

    なぜ中国が頭から湯気を出しているのかですが、高市総理の発言が習近平の戦略に痛撃を与えたからだと考えます。

    中国は、米国とガチで戦うのは避けたいはずです。

    では、どうするか。
    1.台湾を国際的に孤立に追い込む
    2.台湾の人々に国際社会から見捨てられるという印象をうえつけ、独立を維持したいという意欲をくじき、統一派を支援
    3.機が熟したら台湾を海上封鎖して現政権を崩壊させ、統一派の政権を樹立
    というのが現実的なシナリオです。

    そのための前提は、
    1.米国海軍が造船業の衰退によって弱体化する
    2.中国海軍を大増強する
    3.上記によって、損得勘定を重視するトランプ政権の介入を思いとどませる
    ことだと考えます。

    高市総理の答弁は、従来の政府方針を変えるものではないのですが、マスコミが大きく報じたことにより、日本が台湾を見捨てないという印象を与えています。

    また、トランプ政権は韓国を関税で脅し、1400億ドルも造船業に投資させることになり、米国海軍は弱体化どころか強化させる方向になりました。
    しかも、ファクトシートに
    The United States and the ROK will enhance U.S. conventional deterrence posture against all regional threats to the Alliance,(あらゆる地域的な脅威に対して)
    という文言を盛り込ませ、在韓米軍強化のために、580億ドルも支出させることになりました。

    シナリオの前提条件が崩れているところに、高市総理が台湾の人々を勇気づける発言をした。

    プーさんが真っ赤になって頭から湯気を出しているのが目に浮かびます。

  4. 時代遅れseより:

    高市政権の対中国外交はまともなもので、身も蓋もない言い方をするならそれをおかしいと言ってる方がおかしい。日中関係は今の状態で落ち着くところに落ち着くのが正常だと思うし、現状を異常だという人の正常の基準が異常(繰り返し)。台湾有事を可能な限り起こさせないように手を打ちながら、あまり極端なことをせず現状のまま推移を見守るのがいいと思う。
    さて、個人的な理解ではグローバリズムとは極論、安全保障より経済的利益を優先し国境や規制など企業のエゴを通すためには障壁でしかない、というもの。実際の利害関係はそれほど単純じゃないだろうが、日本の経済団体にもそんな傾向が見え隠れする。しかしビジネス優先という考えは今は批判の矢面に立たされていると言ってもいいかも知れない。
    身近で治安が悪化し生活環境が脅かされれば、それをまず何とかしろと主張するのは当たり前のこと。環境破壊や災害を誘発させておきながら地球環境ガーと言うことの異常さ。クマ被害が広がる中で動物愛護を唱えるおかしさ。
    今まで日本を覆っていたモヤモヤした何かはもしかしたらこの経済的利益を優先する人たちの有形無形のコントロールなのかもしれない。

  5. 農民より:

     周辺4カ国は「怖い」です。力ばかり強くて頭が弱いので、道理が通じず、何をするのかわかったもんじゃない。「中国を怒らせて日本を危険にさらすな!」という方、気持は良くわかります。要するに「中国なんかがマトモな判断できるわけないだろ!」てことですよね。非常に良くわかります。でもその論者(社)の一部の方は、飼い主をそんな扱いしちゃって大丈夫そ?

     冗談さておき、ウクライナが(中国の懸念通りに)世界中に影響を与えたのだろうなと思います。東側軍事大国は思いの外安易に暴発し、被侵略国は自己の価値をアピールし、同盟国は見捨てることを許されない、という構図。
     ウクライナ内にも親露派はあり散々プロパガンダが行われましたが、世論も戦力も未だに持ちこたえているどころか有効な反撃すら見せている。台湾にも親中派はありますがここしばらく反大陸が安定し、戦力は規模差はあれど悪くはなく、何より外交的にはウクライナとNATOの関係よりも遥かに厚い。
     共産党指導部にマトモな判断は期待できませんが(今回証明)、日米台がマトモな判断をすれば良い。こちらが中国をコントロールするのは至難ですが、自国の政府方針ならば選挙等でもってある程度コントロールできます。まずは火種を作った議員の席をどうにかするべきですね。

  6. 引っ掛かったオタクより:

    対外直接投資が円ベースなので為替変動を織り込むと日本の現地投資がどの程度先方の肝を握っとん?か判りにくかね??
    あー中共の比率が低いのとは関係ないオハナシですまんス

  7. どみそより:

    「日本企業の訪中団との会議延期」
    だそうです。
    この数年だけでの傾向を見ても まだ中国に投資する企業経営者がいるとは驚きです。
    こういう人たちが 中国からビジネス上の制裁が発動した時、日本政府の方針が悪いと、騒ぐのでしょう。
    中国との取引は すぐに切れる状態にしておくのが大事です。
    トカゲのしっぽのように切断点をつくり、決して本体まで のめり込んではいけません。 

    1. 引きこもり中年より:

      >中国との取引は すぐに切れる状態にしておくのが大事です。
      (全部ではないですが)下から(上から引っ張られて)上がってきた日本企業のサラリーマン社長に、そんなことが出来るでしょうか。

  8. ハニーフラッシュ!より:

    中国が持つ最大の対日制裁カードは、、、

    ハニートラップに引っかかった政治家! 知らんけど

    1. 引きこもり中年より:

      毎度、ばかばかしいお話を。
      某議員:「俺は、中国がハニートラップを仕掛けにくるくらい大物だ」
      ここまで、開き直ればよいのに。

    2. 裏縦貫線より:

      この頃流行っているんですかね、C国に対しては肝の小さな政治家。こっちみんな^^;

    3. 元雑用係より:

      候補者リストでしょうかね。

      駐日中国大使 吴江浩:
      https://x.com/AmbWuJianghao/status/1990748779797180718
      高市首相の台湾に関する誤った言動は、日本国内でも広く疑問視と批判の対象となっている。

  9. KNより:

    親方様のお気持ちを代弁している自称リベラル(特に政治家)は、アーカイブしておこう。
    例外なくスパイ防止法には反対しそう。

  10. 特捜班CI5より:

    長い目で見れば日本との経済的な関係が薄れていけば日本企業の中国脱出が始まり、中国の若者の失業率が高まるだけでは?
    損するのは中国駄?

  11. 名無しで結構より:

    中国のリスクなんて昨日今日の話ではないのに。それこそ(小川直也風に)いまだに中国を目指す経営者のみなさ〜ん、目を覚ましてください。」

  12. 攻撃型原潜より:

    高市首相答弁を初め聞いた時は勢い余って一線を越えてしまったのかとも思いましたが、よく考えると、御自分が右寄りタカ派と目されていることや国会で同内容の質問を受けることは事前に十分想定して準備していた筈です。
    陰謀論的に考えるならば、国会答弁は「思わず言ってしまった」との印象を与えながら、これにより中国に集団ヒステリーを起こさせ、対する日本側はヒステリック中国に「ハイ、ハイ」と冷静に受け答える情勢を日本国内および世界中に見せつける。これにより中国という国は気に入らなければ手段を択ばず圧力を掛けてくる危険な国であることを国内に改めて認識させて、防衛力の増強および経済的な中国とのデカップリングの機運を高めて、静かに進行させる作戦なのかいな、とも思いました。また、海外に対しては「おや、Ms.タカイチは右派急進派と聞いたが、意外にも現実的な政治家やんけ」との評価が高まる可能性があることを何処かで読みました。
    もし、そうなら大した役者やなの~

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