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インプレス ビジネスメディア

 この連載では、ワイヤレス・ブロードバンドや放送にとって生命線といわれる「電波/周波数の割り当て」問題についてレポートします。携帯電話サービスへのニーズは今日、ますます高度化・多様化し、第4世代(4G)に向けた新しい携帯電話用周波数の確保が求められています。
 今回は、2008年3月に、IEEE 802.11nとして標準規格策定が予定されている高速無線LANの国内における現状について、解説します。

1 無線LANの利用シーンの拡大

 無線LAN(Local Area Network)は、もともと、屋内や構内において、ケーブル等を敷設しないで簡易にLAN環境を構築するためのシステムとして出現したものです。近年では、そのような用途に加えて、喫茶店や駅、ホテル等において、一般ユーザー向けに無線LANによるインターネット接続回線を提供する、いわゆる公衆無線LAN等のサービスが新たな用途として普及してきています。

 さらに、最近では、テレビやビデオ間などの映像伝送を無線LANで行い、煩雑なケーブル配線をなくしたいという要求や、山間地や人口の少ない地域における加入者向けインターネット接続回線として無線LANを活用したいという要求が、高まってきています。

 このような無線LANの利用シーンの拡大に伴って、新しい周波数帯の追加のニーズや無線LANの高速化のニーズが、高まっているところです。このような状況を踏まえて、総務省では、無線LANの周波数追加と高速化について、検討を行ってきました。

2 無線LANに使用可能な周波数帯の拡大

 我が国では、平成5年(1993年)に2.4GHz帯(2400~2483.5MHz)に無線LANを導入して以降、平成12年(2000年)に5.2GHz帯(5150~5250MHz)、平成17年(2005年)に5.3GHz帯(5250~5350MHz)で無線LANを導入してきました(5.2GHz帯および5.3GHz帯は、屋内での使用に限定)。また、我が国独自のものとして、通常の無線LANに比べて高出力で送信が可能な高出力無線LANを、平成17年(2005年)に4.9GHz帯(4900~5000MHz)および5.03GHz帯(5030~5091MHz)に、導入しました。

 このうち、2,4GHz帯、5.2GHz帯および5.3GHz帯は無線局免許が不要、4.9GHz帯および5.03GHz帯は、登録制となっています。

 このように、我が国では無線LANに使用可能な周波数帯の拡大を図ってきたところですが、無線LANの利用シーンの拡大に伴って、屋外においても免許不要で使用できる無線LANの需要がこれまで以上に高まってきました。

 このため、総務省では、無線LANが5.6GHz帯の各種レーダーと共用するための機能(DFS:Dynamic Frequency Selection、動的周波数選択機能)に関する試験方法が確立したことを踏まえ、2007年1月から5.6GHz帯(5470~5725MHz)における無線LANの使用を可能としました。

3 高速無線LANの導入について

 ここまで述べたように、さまざまな場面で普及が進む無線LANについては、ADSLの高速化やFTTHの進展といった有線系システムのブロードバンド化を背景に、光ファイバ等の有線系ブロードバンドと遜色のない、100Mbps以上の伝送速度を実現する高速な無線LANの早期実現が求められているところです。

 また、平成17年(2005年)12月に公表された「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」の報告書において提案されているとおり、次世代情報家電のホームリンクを実現するための手段としても、高速化に対応した無線LANの導入が期待されております。

 こうした状況の中、平成18年(2006年)3月から、情報通信審議会(以下「審議会」)において、「5GHz帯の無線アクセスシステムの技術的条件」のうち「高速無線LANの技術的条件」の検討が開始され、同年12月に答申を得ました。

(1)高速無線LANの国際的な検討状況

 高速無線LANについては、米国のIEEE(米国電気電子技術者協会)において、IEEE 802.11n(以下、11n)として標準化の検討が行われています。現段階でのIEEE公式スケジュールでは、11nについては2008年3月に標準規格策定予定となっていますが、

  1. 総務省令等に反映すべき技術基準の大枠はほぼ合意されていること
  2. 米国等を中心に、すでにドラフト規格に準拠した製品が出荷されつつあり、2008年春頃から出荷が本格化しそうであること

などから、我が国においても、できるだけ早期の導入を目指してきました。

(2)高速無線LANの技術的条件

 審議会においては、11nのドラフト規格をベースに検討を行ってきました、その技術的な特徴は、図1のとおりです。

図1 高速無線LAN(IEEE 802.11n)の技術的特長
図1 高速無線LAN(IEEE 802.11n)の技術的特長(クリックで拡大)

 ここで、高速無線LAN(IEEE 802.11n)は、40MHzのチャネル幅を可能としていますが、既存の20MHz帯域幅のシステムである「IEEE 802.11a/b/g」と互換性をもっているため、両システムの共存は可能となっています。

 審議会においては、主に、チャネル帯域幅の拡大について検討を行ってきました。MIMO(Multiple Input Multiple Output)については、現行の制度でも導入可能となっていますが、送信部が複数ある場合の空中線電力等の測定方法を明確化するため検討を行いました。また、変調方式はOFDM変調としており、符号化方式については上位レイヤの事項であること、現行制度上も規定されていないことなどから、審議会では特に検討は行いませんでした。

 その結果、我が国における高速無線LANのチャネル配置は、図2のとおりとしました。

図2 高速無線LANの導入周波数およびチャネル配置
図2 高速無線LANの導入周波数およびチャネル配置(クリックで拡大)

(3)高速無線LANの導入に向けた今後のスケジュール

 2007年6月には、我が国において40MHzのチャネル幅をサポートしたフル規格の高速無線LAN(IEEE 802.11n)の導入が可能となる予定です。今回の高速化により、無線LANの可能性がさらに高まることが期待されます。

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