
お通夜の夜は従姉が泊まってくれたが、ご主人の朝食づくりのために早朝に一度帰宅。
再び斎場へ戻ってきたとき、手作りの味噌汁を持ってきてくれた。
一緒に食べたその味噌汁の温かさが、心に染みた。
11時30分から葬儀がスタート。
忙しい合間をぬって来てくれた人たちもいて、本当にありがたい。
豪華な花に囲まれた遺影のさくらさん。にっこり笑顔は、その花にぜんぜん負けてなかった。
法要は、2年程前にデビューした若い息子さん。
「大丈夫かな?」と、ちょっとハラハラしつつ(上から目線かい!)、朗々としたいい声でお経を読み上げる姿に、思わずほっとした。(失礼!)
私はといえば、お経そっちのけで、家族代表の挨拶の予行練習を頭の中で反芻。
まあ、なんとかなるでしょ、と腹をくくって後半はちゃんと集中。
そういえば、父の命日にお寺へ行くと、さくらさんはお経そっちのけで、キラキラした法堂の内装をキョロキョロ見回し、私の肘をつついては「ねぇ、あれさ~」と話しかけてたっけ。
「しーっ」と私が必死に制止していたのを懐かしく思い出す。
居眠りしてたこともあったなあ。子どもですか!?
なんだかんだ、似た者親子かも。
お坊さんが帰られ、いよいよ挨拶へ。
皆様への感謝と御礼、そしてさくらさんのエピソードとして
“みかんのお願いポーズ”を紹介した。
話せず、動けなくなってから20日ほど経ったのに、みかんの話をすると、なんと胸の前で手を合わせて「お願いします(食べさせてね)」と言ったこと。
実は今、さくらさん、お棺にこっそりみかんを隠し持ってるんですよ。
みんながみかんを食べるたび、ふっとさくらさんを思い出してくれたらありがたいし、嬉しい、と伝えた。
ちょっと上ずってしまったから、もう少し落ち着いて、
間をうまくとれたらよかったなあ、というのが反省点。
ま、しょうがない。
皆で棺を花で埋める。
果物好きのさくらさんのために、祭壇の果物を「全部入れちゃいましょう」と葬儀社さんがすすめてくれ、結果、予想以上のフルーツ盛りに。
「こんなに入れて…火葬、大丈夫!?」
と、一瞬不安がよぎったが、渡してくれた葬儀社さんがOKならまあ大丈夫だろう。
まるでセレブが乗るリムジンのような、白黒のスタイリッシュな霊柩車に乗り火葬場へ。
所定の場所に棺が運ばれると、担当者が突然、
「喪主のかた、ボタンを押してください」
ええっ!?私!?聞いてないよ。心の準備ゼロなんですけど!!
肉体との本当の最後の別れだというのに、舞い上がってしまい、焦ってすぐにボタンを押してしまった。
あれっ?赤いボタンはカチッという手応えもなく、ちゃんと押されたが不安になった。
担当者が、「これでスイッチが入りました」とすぐに言ってくれなければ、慌ててもう一度押すとこだった。危ない危ない。
控室でお弁当を食べながら待つ。
1時間半~2時間程度ということだったが、さくらさんは小柄で痩せてたので、早いだろうというのが皆の予想。
しかし、結局は2時間近くかかった。
その理由は、お骨拾いのとき、明かされた。
果物が入っていたので(なぜばれたのか?)、念のために時間をかけたそうだ。
やっぱりね。皆さん、長い時間待たせてごめんなさい……(汗)
案の定、さくらさんの足下に一つ、丸い形をとどめた黒い物体があった。
あちこちから「みかんだよ」「みかんじゃない?」と声が聞こえる。
御礼の言葉の効果は絶大なり。
「何なのか、箸で触ってください」と担当者にいわれ、割ってみると梨だった。
水分が多いせいなのか、最後まで形を残すとは、梨、恐るべしである。
担当の方が、私たちを呼び入れる前に、きちんと体の形を作ってくれていたのだろう。
説明を聞きながら、皆で拾っていく。
小さな骨壺に、静かにきれいに収められた。
この日は斎場で解散。
飾り花は葬儀社さんが花束にしてくれ、皆に持ち帰ってもらえた。
久しぶりに会う親戚、仕事の合間に駆けつけてくれた友人、ご近所の人。
葬儀に来られなかった人にもお礼の電話をし、久々に声を聞くこともできた。
亡くなった人が縁をつないでくれるとは、こういうことなんだろう。
帰宅後、遺影や胡蝶蘭、香典返しの予備などを葬儀社さんが届けてくれる。
支払いも済ませる。大きな追加料金もなく、明朗会計。
最後まで細やかに誠実に対応してくれた。
お盆や法要など、今後も必要に応じて無料で相談にのってくれるとのこと。
ここにお願いして本当によかった。
きっと、さくらさんも満足しているはずだ。
手作りの味噌汁が心を支えてくれた
若いお坊さんの力強いお経にほっとした
みかんでさくらさんを思い出すことがあったら嬉しい
果物入り棺は想定外の“長時間”につながる
久しぶりの人ともつながる時間になった
葬儀社の誠実さにも感謝
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