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映画「秋が来るとき」〜これはいったい…?〜良かれと思ったことが裏目に出ても…

 美しい映像だけど…

 

「秋が来るとき」2024年フランス

監督・脚本/フランソワ・オゾン
出演/エレーヌ・ヴァンサン ジョジアーヌ・バラスコ

   リュディヴィーヌ・サニエ ピエール・ロタン

 

 フランス映画は、昔ほど評判にならない。音楽もそうだ。

 ゆえに、いや、私の勉強不足で、この監督のことも全く知らない。

 

自然豊かな仏・ブルゴーニュ地方を舞台に、ある秘密を抱えて生きる老婦人の晩年の日々を綴る。

 と映画紹介にあった。「ブルゴーニュ」と「老婦人の晩年の日々」に惹かれて観た。

 自然の豊かさのなかで、すなわち都会ではなく、いわゆる田舎で、のんびりと過ごす老婦人の余生、みたいなのかな。で、「秘密」とあるから、若い頃のちょっとした隠し事、出来事と向き合うことになるのかな。そんな風に想像していた。

 そうしたら、ちょっと違った。

 上記の紹介文の前に

フランスの名匠フランソワ・オゾン監督によるミステリー仕立てのヒューマンドラマ。

 とあった。確かに「ミステリー」と書いてある。

 なるほど、ミステリーとはそのことか。

 でも、だからといって、ものすごくミステリーでもサスペンスでもない。謎解きやトリックや犯人探し、あるいは悪人に追い詰められる(騙される)善人、というはらはらドキドキなシーンも、結局はない。途中でそうなるかな、と思ったりはしたが。

 

 ただ、私、なんとなく解せないのです。この終わり方。

 私の鑑賞能力が低いのだろうか。

 これもひとつの愛の形、ということなのでしょうか。

 

 以下は、ネタバレ含みます。

 80歳のミシェルは、ひとりで田舎の大きな家に暮らしている。娘のヴァレリーとは不仲。なぜなら、ミシェルがパリにいるとき娼婦をしていたから。

 そんななかでも、娘が孫のルカを連れてやってくるというので、食事を作って楽しみに待つミシェル。娘は夫と離婚手続き中。

 ミシェルとルカが散歩に出ている間に、ヴァレリーが気を失い、救急車で病院へ運ばれる。食中毒。ミシェルが採ってきたきのこが原因。ゆえに、ヴァレリーは自分を殺そうとしたのかと、ミシェルを責める。

 ヴァレリーはルカを連れてパリへ帰ってしまう。1週間の休暇を切り上げて。

 そのことを親友のマリー=クロードに嘆くミシェル。その話を聞いていたマリーの息子ヴァンサン。ヴァンサンは刑期を終えて出所してきたばかり。

 ヴァンサンはパリのヴァレリーを訪ねる。二人は幼なじみ。ヴァンサンの母親も娼婦だった。ヴァンサンは、ルカをミシェルに会わせてあげてほしいと頼む。

 そして、興奮して帰宅するヴァンサン。ヴァレリーが死んだとマリーに話す。落ちた、と。

 マリーは、落としたのか?と尋ねると、つかみかかってきたから…とヴァンサン。押したの?と尋ねるマリー。

 もう刑務所には戻りたくない、と言うヴァンサン。

 結局、マリーもヴァンサンもこの出来事については誰にも話さない。

 警察とヴァレリーのアパートへ行くミシェル。事故と処理される。

 ルカは父親とドバイへ行くのを拒み、ミシェルと暮らすことに。

 ヴァンサンがレストランを開店したいというので、その初期費用をミシェルが出してあげた。その話を聞いたマリーが驚愕から倒れてしまう。そのままマリーは、ガンが発覚して、亡くなる。

 ミシェルは、ヴァンサンを頼っており、ルカの送迎や、いじめっ子への懲らしめなども頼んでいた。ルカもヴァンサンに心を開いている。

 ある日、刑事がやってくる。ヴァレリーの死因に他殺の疑いが出てきた、匿名のタレコミがあった、と。

 刑事はミシェルに訊く。あの日、ヴァンサンはどこにいたか?パリ?ミシェルは、ヴァンサンはここにいた、と話す。

 防犯カメラの映像を見せて、ルカにも尋ねる。そこにはアパートの入口にいるルカとヴァンサン。ヴァンサンの顔は見えない。刑事は尋ねる。この男はヴァンサンではないか?と。違う、と言うルカ。

 これも不思議で、ルカはこのとき、この男の顔をじっと見上げている、そういうシーンがあったんですよね。だから、記憶にあるはずだと思うのだけれど…。

 ゆえに、私は、ルカがミシェルの家で暮らすことになったとき、あのときの男の顔を思い出して恐怖するとか、そういったミステリーというかサスペンスが起こるのかな、と想像しながら観ていたのだが、その様子は全く無し。

 3人は、仲良しのまま。

 そして、大学生になったルカがパリから帰省したとき、3人は森へ散歩に出かける。そこで、ヴァレリーの亡霊がミシェルを連れていく。

 ミシェルの死を悲しむルカ。

 実はこのヴァレリー、何度か幽霊としてミシェルの前に姿を現す。私はてっきり「私は事故じゃない、殺されたの、真犯人は…」と言いに来ているのかな、と思って観ていたのだが、結局そんな様子も展開もありませんでした。

 

 ヴァンサンは、孫のルカに会えないミシェルの嘆きを聞いていた。だから、パリへ行った。ただひたすら、ミシェルにルカを会わせてあげたかっただけなんだろう。そんななかで不幸な出来事が起きた。

 ミシェルが刑事に言った言葉「良かれと思ったことが裏目に出る」「良かれと思うことが大切」が、すべてを物語っているのかな。

 

 きっと、ミシェルもルカもヴァンサンがヴァレリーの死に関わっていることを知っているのだろう。その不幸な出来事が、偶然なのか故意なのかはあやふやだ。

 おそらく、この3人の望みが同じで、ヴァンサンがつくってくれた状況が良い状況だったのにちがいない。

 3人は秘密を抱えて生きてきた。そして、ミシェル亡きあと、ルカとヴァンサンの二人が秘密を抱え込んだまま生きていくのだろう。

 

 すごく複雑に絡み合った「愛」の姿。

 けれども、腑に落ちない感覚は拭えない。

「映画館」で映画を鑑賞するツトム 
©2024kinirobotti

 

 

 

ボンジュール
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