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「虎に翼」第13週〜梅子の乱〜花江のお願い宣言〜寅子はラジオで本領発揮

 第13週のハイライトは梅子さんの毅然とした態度に尽きますね。Marvelous!

 

脚本/吉田恵里香

出演/伊藤沙莉 森田望智三山凌輝 土居志央梨 戸塚純貴 平岩紙 ハ・ヨンス 平埜生成

   滝藤賢一 松山ケンイチ 沢村一樹 名村辰  松川尚瑠輝 和田庵 菊地凛子 鷲尾真知子

語り/尾野真千子

 

「女房は掃きだめから拾え?」

「女房は灰小屋から貰え」

妻を迎えるなら、自分より格下の家からもらうのがよいということ。
身分の高い家から妻をもらうと、親戚付き合いに苦労したり夫の権威が下がったりする恐れがあるとの意から。
「女房は台所から貰え」「女房は掃き溜めから拾え」「女房は庭から取れ」などともいう。

(ことわざ辞典オンライン)

 これは、誰のこと、何のことを言っているのでしょう。

 

===目次

〜梅子の乱

〜〜花江

〜〜〜寅子のラジオ出演

〜〜〜〜「ブギウギ」とのコラボ

=====

 

〜梅子の乱

 そういえば、梅子さんの生い立ちってどこかで描写されてましたっけ?弁護士と結婚しているのだから、それなりの(って言い方よくないですけど)家庭で育った人なんですよね、きっと。このことわざにあるような「身分の高い家」の出だったのでしょうか。それであの夫は、あんなに横柄な態度だったのでしょうか。今でいうところのモラハラ夫。すなわち、妻にバカにされないように虚勢を張る?

 いずれにせよ、梅子は誠実で優しい人間なので、あんなおそろしい封建主義のお手本みたいな大庭家にいることが不似合いなのだが。新しい価値観を持っている女性、という意味なのかもしれない。ゆえに、梅子は「掃き溜め」の人ではなかった、ということになるのかな。

 

 家庭裁判所への相談は子どもたちのことだけではない。就籍、養子縁組、離婚、親権、相続の問題も、現在同様たくさんある。

 寅子(伊藤沙莉)のところへ回ってきた案件に、知っている名前を発見した。大庭徹男(飯田基祐)、梅子(平岩紙)の夫である。

 家庭裁判所へやってきた大庭家の面々。次男・徹次(堀谷一希)は足を引きずって、ボサボサ頭。戦地で怪我を負い、その後の生活が乱れてしまったようだ。

 そこになぜか梅子がいる。あれ?離婚して出て行ったはずでは?

 徹男の妾・すみれ(武田梨奈)が持っていた遺言書を、開封して検認する特例判事補の寅子。財産は全部すみれに、とあった。

 そのあと、梅子が寅子を訪ねてきてくれた。喜びの再会。うれしいね。香淑(ハ・ヨンス)のときは、よそよそしくて、喜びあえなかったもんね。

 寅子は梅子を轟法律事務所へ連れていく。

 よね(土居志央梨)は、どうしていまだに梅子が大庭の家にいるのか尋ねる。

 梅子は、あの司法試験の日、三男の光三郎(本田響矢)を連れて家を出たが、すぐに発見されて連れ戻された。その直後、徹男が倒れ、身体に麻痺が残った。離婚届はまだ提出されておらず、徹男の世話をする人間として大庭家に留まらされることとなった梅子。光三郎のそばにいることを許されて。

 轟(戸塚純貴)とよねが、遺言書についての調査結果を伝えに大庭家へ来る。遺言書は偽造であることが判明。法律上の相続人のみとなる。が、長男の徹太(見津賢)がすべての財産を相続する、と言い出す。民法改定前のとおりにしようとする徹太(弁護士なんだけどね)。次男の徹次が言う「母さんだけ放棄すればいい」と。梅子は放棄しない、と宣言。

 長男が相続を独り占めしようとする案件は多くある。この国に染み付いた家制度の名残りはそう簡単に消えない。調停委員はそう言っていた。だろうね。 

 寅子も出席した調停では、梅子の姑の常(鷲尾真知子)が徹太に世話をされるのは嫌だと言いはじめる。冷酷な嫁が気に入らない。光三郎の扶養に入りたい、そうすれば梅子がついてきて面倒みてもらえるから、と。すごいな、この根性。

 審判で決定を下すことができないという寅子(梅子を贔屓してしまうかもしれないから)。「弁護士を信じろ」という多岐川(滝藤賢一)。このセリフ、いいね。なるほど、弁護士を信じる、か。裁判官は、弁護士や検事の調査内容や弁論を聞いて、熟考して審判を下すのが仕事だから。

 3人の息子たちを心配している梅子。

 徹次は「おれを置いて逃げた」と梅子のことを非難する。「兄さんは自分で母さんといっしょに行きたくないと言った」と言い返す光三郎(そうか、梅子さんはあのとき、長男と次男はもうだめだと言ってたけど、次男への一縷の望みはまだ持っていたんだね)。だとしても子供を置いて逃げるなんて……、と反論する徹次。

 この徹次という人は、なんなんだろう。自分を捨てた母親をひたすら恨んでいるのか(自分から行かないと言ったのに)、本当は一緒に連れて行ってほしかったのか(だったら行けばよかったのに)。「おれを置いて逃げた」というセリフからはそうも取れる。しかし「母さんだけ(財産を)放棄すればいい」という極めて親不孝な物言いは、それを覆すものだ。いや、そうか、なるほど、この「母さんだけ放棄すればいい」は、光三郎だけ連れて逃げた母親への復讐…か。

 なんともややこしいことになっている大庭家。

 

 そんなとき光三郎が父・徹男の妾だったすみれと付き合っていることが判明。ショックを受ける寅子。よねも「どいつもこいつもクソだな、男ってやつは」と吐き捨てる。

 大庭家で、弁護士立ち会いのもと話し合いがはじまる。

 光三郎は、すみれは父に束縛されたかわいそうな人だと言って、梅子に理解を求める。えー、なんと、いちばん大事に、決して夫のような人間にならないようにと願って育てた光三郎が、夫を奪った女にほだされてしまって、結局、夫と同じになってしまった。このドラマには皮肉がいっぱい出てくるけど、これも皮肉ですね。

 ごたごたと言い争う家族たち。

 さぁここから、超かっこいい「梅子の乱」、人生決断宣言がはじまりますよ。

 涙を流しながら大爆笑する梅子。おどろく家族たち。

もう駄目、降参。白旗を振るわ。

だから負けを認めると言ってるの。

私はぜんぶ失敗した。結婚も、家族の作り方も、息子たちの育て方も、妻や嫁としての生き方も全部!

いいのよ、光三郎、あなたは自分が選んだ道を進めばいい。

(略)

私はすべてを放棄します。相続分の遺産も、大庭家の嫁も、あなたたちの母としての務めも!ぜ〜んぶ捨てて、私はここから出ていきます。

民法第730条。直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。

お母さんのことは、兄弟3人で話し合いなさい。

育ててあげられなくて、ごめんね。でも、お互い誰かのせいにしないで、自分の人生を生きていきましょう。

ご機嫌よう!

 そう言い捨てて部屋を出ていく梅子。

 よねは、嬉しそうに小さく微笑む。

 なんとこのあと、息子たちは、財産を三等分することに合意したそうだ。

 

 まず、この宣言は本当にかっこいい。10年間も夫の世話をしたのだから正当な相続をするべきなのに、そうでなくてもその権利がしっかりあるのに。財産どころか、こんなことになってしまった家族をも放棄するという。そこには、悔しさもあるだろうし、もちろん悲しみも、寂しさも、情けなさすらあるだろう。

「結婚も、家族の作り方も、息子たちの育て方も、妻や嫁としての生き方も全部」失敗した、というのは、夫と姑そして息子たちへ非難であると同時に、自己反省である。でも、こんな大庭家という環境下では、これが精一杯だったんじゃない?あの時代、このような家庭はたくさんあったのだろうが、常と徹男がどのように育って生きてきたのかを知りたくなった。こんな非情な人間になるということは、そうなるだけの環境があったに違いないのであるから。

「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」という民法を、こんな風に使うなんて、すごい!この家を出てすべてを放棄すると宣言した梅子は、大庭家と縁を切って、家族で助け合うことを彼らに譲ったわけだ。さもなければ、この民法によって、再び自分が姑や息子たちの世話を押し付けられてしまうから。

「だから、息子たちに押し付け返してやったの」とのちに梅子は語っている。

 この民法は、ある意味「当たり前のこと」なのだが、これを盾にとって理不尽なことを要求する家族や親族やその他大勢がいたりする、けっこう微妙な法律ではあるような気がしてならない。そういう意味でも、花江が言うように「わざわざ法律にするようなことなの?」である。

「育ててあげられなくてごめんね」は、その前に「ちゃんと」とか「立派な人間に」とかいう形容が伏せられているのですよね。

「お互い誰かのせいにしないで、自分の人生を生きていきましょう」という梅子からの最後のメッセージ。そういえば、この家、必ず誰かのせいにしてる。特に、梅子はそのターゲットになっていたようだ。財産を兄弟で三等分することにしたってことは、この梅子の心持ちが少しは伝わったのでしょうかね。

 そして梅子劇場の幕引き、「ご機嫌よう!」。そう叫ぶと、ふすまを開け放って豪快に退場。よねも轟も痛快だっただろうな。私もである。

 

「人生を振り返ったときに、女子部で学んでいたときがいちばん幸せだったと言って死んでいくのはいや、そう思っただけ」と、このときのことを振り返って梅子は語っている。そうだよね、これからこれから。

 あのときは良かったなぁ、という思い出も大事だが、人生最後の最後まで、楽しんで良い経験を重ねていきたいものだ。そのための、誰かの、何かの犠牲にならないための、選択であり決断なのだろう、と思う。見習いたい。

 梅子は今、轟法律事務所に身を寄せている。

 

 産後の香淑(香子)に寅子からの届け物。梅子のおにぎり。

 感慨深くおにぎりを食べる香淑。梅子のおにぎりは学生時代のみんなの良き思い出。

「虎に翼」 梅子の乱とご機嫌よう ©2024kinirobotti

〜〜花江

 第13週の花江(森田望智)はちょっと心配だった。なんか悩んでいるようなシーンが複数回映し出された。

 まさかの道男(和田庵)と?と視聴者が思ったように、息子の直人(琉人)もそう思っていた。かあさんは道男が来ると嬉しそうだ、と。

 復活した甘味処「竹もと」で、花江、寅子、梅子の3人がおしるこをいただく。

 寅子が仕事で呼ばれて退席したあと、花江は梅子に相談する。みんなすごい。自分だけ変わってない。自分は義母・はる(石田ゆり子)のように家事を完璧にこなせない。梅子は言う「良い母になんてならなくていいと思う。自分が幸せじゃなきゃ、誰も幸せになんてできないのよ、きっと」と(そうか、そいういう意味では梅子も、あの家で幸せじゃなかったから…)。

 花江は「手抜きをさせてください」と家族に宣言する。

 そうかぁ、花江は完璧な家事を目指してがんばっていたんだね。っていうか、はるのようにできないってことは、はるは完璧だったってこと。今更ながら、はるさんてスーパー主婦だったんですね。

 花江の存在は、このドラマのなかで非情に良い、と私は思っている。森田望智もたいへん良い役をもらったのではないだろうか(NHK夜ドラ「作りたい女と食べたい女」の主人公の同僚役も良かったけど)。

 寅子は女性の解放、女性の人権を体現し、訴えかけていく人間像だが、それとは対象的に、花江はいわゆる専業主婦。主婦の仕事、すなわち家事によって家を守っていくというひとりの女性の姿が丁寧に描写されている。これはとても良い。寅子と花江は、すばらしいバランスとなっている。

 女学校の頃からの友人である二人。二人共、当初の思いを叶えている。

 さて、花江はなぜ道男が猪爪家へ来るとうれしそうなのか?道男が来ると、その日の夢に直道が現れるから。きっと嫉妬してるのね、と。いまだ初々しさの残る可憐な少女のような女性なのですね、花江さんは。

 

〜〜〜寅子のラジオ出演

 家裁広報月間の一環で、多岐川(滝藤賢一)と寅子がラジオ出演することなった。代議士の立花(伊勢志摩)とMCの男性の4人の番組。

 多岐川は「愛の裁判所」を強調する。

 MCの男性が「佐田さんのもとにも連日か弱いご婦人が相談に来られていると…」と、寅子に話を振ると、寅子はちょっと躊躇してからこう語った。

ただ私は、ご婦人方をか弱いとは思っておりません。裁判所を訪れるご婦人は、世の中の不条理なこと、辛いこと、悲しいことと、戦ってきた、戦おうとしてきた、戦いたかった方たちです。

(立花 でも術がなかった。)

その通りです。それが、法律が変わり、家庭裁判所ができて、やっと戦うことができる、報われることができる、誰かの犠牲にならずに済むようになった。

私は、女性たちが自ら自分の幸せをつかみ取ってほしいと祈っていますし、そのお手伝いができたらな、と常々思っております。

 この発言、very good ですね。

  まず、寅子は、「か弱い女性」という表現を否定する。

 そして、「世の中の不条理なこと、辛いこと、悲しいことと、戦ってきた、戦おうとしてきた、戦いたかった方たち」と話す。「戦ってきた」「戦おうとしてきた」「戦いたかった」と、さまざまな女性たちの背景に配慮しているところが寅子らしくて実に良い。寅子の学友たちのことも念頭にあるに違いない。

 さらに、改定された法律が「術」となってくれるから、ぜひ、犠牲にならずに、自分の幸せを生きてください、と世の女性たちに訴えかけている。

 

〜〜〜〜「ブギウギ」とのコラボ

 な、なんと、家裁広報月間「愛のコンサート」に、ライアン(沢村一樹)の「驚くべき交友関係」によって、茨田りつ子(菊地凛子)が出演してくれることになった。

 ちなみに、多岐川はライアンからタッキーと呼ばれてるんですね。

 茨田りつ子とは、「虎に翼」の前の朝ドラ「ブギウギ」の登場人物だ。茨田のモデルは淡谷のり子。「ブギウギ」は笠置シズ子をモデルとした福来スズ子(趣里)の物語。

 少し前に、「とう〜きょブギウギ……」と多岐川が口ずさんで、「福来スズ子が来てくれるわけない」と寅子が言うシーンがあった。ここでもすでに「笠置シズ子」ではなく「福来スズ子」と言っていた。まさかの、茨田りつ子が登場するなんて。コラボが実現するなんて。こういうのって、これまでの朝ドラにあったのでしょうか?戦前中後を描く朝ドラが多いなか、重なる部分はたくさんあるのですよね。

 上に書いた寅子のラジオ出演も、実際のMCは村岡花子だったそうで。村岡花子は「赤毛のアン」の翻訳で有名な翻訳者。朝ドラ「花子とアン」の主人公だ。花子を演じた吉高由里子も出てくれたら面白かったですね。

 それから、花岡悟(岩田剛典)が餓死したときの記事で書いたが、裁判所に卵を持って来た大橋鎭子、「とと姉ちゃん」の小橋常子(高畑充希)と、栄養補助食品ビセイクル(ダネイホン)を開発した安藤百福、すなわち「まんぷく」の立花萬平(長谷川博己)もちらっとでも登場してほしかった。

 そんな「朝ドラオンパレード」になったら、食傷気味になりますかね。

 でもね、私ときどき想像するんですよ。このときあの「朝ドラの主人公」は何してたかな、って。そうやって世界はつながっているので。特にこの時代は、すごくがんばって日本社会をつくっていった人たちが、日本のあちらこちらで、日本を良くしようと活躍奮闘していたわけですから。

 ちなみに、実際のラジオ出演は多岐川幸四郎のモデル宇田川潤四郎のみで、寅子のモデル三淵嘉子は出演していないようだ。家裁広報月間に協力したのは淡谷のり子ではなく水谷八重子らしい、ということをネットで知った。

 

 ところで茨田りつ子、寅子のことをとても気に入ったようで、コンサートのあと、

家庭裁判所の方とお話させてもらったんですけどね。佐田寅子さんっていったかしら。ずいぶんとお喋りな…。彼女、まっすぐな目で、人助けを最高の仕事、なんて言うの。本気でそう思ってなきゃ言えない言葉よ。

東京在住の困ったご婦人方は、ぜひ、佐田寅子さんをお訪ねになって。

 こんなことをラジオで言っちゃったから、さあ、大変。寅子は、超有名な裁判官になってしまった。家庭相談にも女性たちが大挙してやって来たのでした。

 

 

♢♧♡♤

おまけ(読まなくてもいいです)

 私も遺産のことで理不尽を経験している。私は実家と絶縁しているので(法的効力はないのですが)、実はこの梅子さんのエピソード、見るのやめようかと思っていたほど。トラウマなので。

(詳しいことは書きません)

 でも、見てよかった。梅子さんはかっこよかった。私のしたことは間違っていなかったと思わせてくれた。ひとつ人生の回収ができました。

 

ボンジュール
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最終更新:

よりみちねこサリーと申します
タロティストです

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