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エヌビディア日本代表・大崎真孝氏 部下の求めから逃げない

エヌビディア日本代表 大崎真孝氏(上)

私のリーダー論
エヌビディア日本代表 大崎真孝氏

エヌビディア日本代表 大崎真孝氏

10月に史上初の時価総額5兆ドル(約780兆円)を達成し、株式市場で注目を集める米半導体大手エヌビディア。その日本法人で代表を務める大崎真孝氏(57)は、ジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)とは異なる、独自のリーダーシップで部下を率いてきた。前職時代や経営学修士号(MBA)取得の経験、読書などで得た知見を強みに「部下のために働く」重要性を説く。

――2014年、当時46歳でエヌビディアに移る前は、(アナログICを手掛ける)日本テキサス・インスツルメンツ(TI)でどのような経験をしていましたか。

「日本TIには新卒で入社し、大阪営業所でエンジニアからスタートしました。営業の経験を経て、米国本社に抜てきされたのが20代後半です。子どもの頃から洋画が好きだったので夢にまで見た海外生活でしたが、当時は英語がさほど得意でなく、うまく話せずに悔しい思いもしました。ただ、日本人コミュニティーにはあえて入らず、現地の生活にどっぷりつかったことで多様性が身についたと思います」

「例えば会議の場では、日本人は無駄なことを言わずに1つの解を求めていきますが、海外では色々な人が様々な意見を交わしながら方向性を決めていく。米国企業ならではのフェアネス(公平性)も目の当たりにしました」

――現在のリーダーとしての仕事に生きている部分はありますか。

「初めて部下を持ったのは帰国後の東京勤務で、30代の頃です。インド人やフランス人など様々な国籍の人をマネジメントする中、悩みも生まれました。マーカス・バッキンガム氏とドナルド・クリフトン氏の共著『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』と出合い、部下のために働くという考え方に共感しました」

「上司から『あれをやれ』と言われるのも大変ですが、実は部下に要望を突き上げられるほうがつらい。チームをまとめ成果をあげる責任があるからです。人間誰しも弱みは直らないものなので、いまの仕事でも部下に対しては、各人の強みを見つけて個性を生かせるよう努めています」

――部下への接し方で心がけていることは何ですか。

「職場で仕事の悩みは共有しますが、愚痴を言ったことは一度もありません。部下には仕事はアスリートがするのと同じと伝えています。心身を整えないと良い仕事はできません。酒席は1次会で必ず切り上げ、翌日に備えます」

「ストレスがたまった時は運動します。40歳手前まではサーフィン、今でも週に3回は体を動かしています。寝る前には自宅屋上で瞑想(めいそう)し、自身の心を客観的に見つめることにも努めます。読書も好きで、月3〜4冊は読みます。毎年、年末にはその年に感銘を受けた本から心に響いた文章を手帳に書き記し、瞑想前に読み返します。手帳は私の栄養剤です」

――40代に入り、経営学修士号(MBA)の取得にも挑戦しました。

「社会人で勉強の大切さに気づき、もっと新たな挑戦をしたいと考えました。MBA取得後の博士後期課程在学中にエヌビディアに転職すると決めるまで、平日の夜と週末に5年ほど通いました。様々な業界・年齢の人々が課題意識を持って集まってくるので、大学生より熱量が高い。自分のお金を使い40代で勉強できたのはよかったです」

40代で大学院に入り、MBAを取得した(東京都八王子市)

40代で大学院に入り、MBAを取得した(東京都八王子市)

現場重視、ファン氏に学ぶ

――ファン氏との出会いはその頃ですね。それまで他社からのヘッドハンティングを断っていたなかで、なぜエヌビディアへの転職を決めたのですか。

「40代半ば頃はキャリアに迷い出す人が多い時期です。私もそのうちの1人で、このまま日本TIで楽しく定年まで働こうか、他社で挑戦しようか迷っていた時にちょうどヘッドハンティングの話を受け、ジェンスンと出会いました。彼の魅力に引き込まれました」

「彼とは朝一番にグランドハイアット東京(東京・港)で会い、『君がやってきたことを当社で実践してほしい』と言われました。その時はすごく優しかったのですが、入社後に挨拶しに行くと『来たの。エヌビディアはこれから全然違うことをするから、この前言ったことを忘れて』と(笑)。機動性の高さを感じました。当時の売上高はおよそ40億ドルでした(25年1月期は1304億ドル)」

――ファン氏の経営哲学はどのようなものですか。

「彼は強烈なビジョンを持ち、非常にロジカルです。感覚で動くというより、彼自身がテクノロジーに深く精通している。みな彼を天才と呼びますが、努力の塊でもあります。資料は夜中まで読み込むし、土日も勉強を怠らない。その積み重ねがあるから彼の言葉には説得力もあるし、エヌビディアは大きく成長したのだと思います」

――ファン氏のリーダーシップをまねることはありますか。

「あれだけ強烈なビジョンを掲げてみんなを引っ張るのは難しい。だから私は、自分のやり方でリーダーシップを取りたいと思っています」

「ただ、1つ学びたいのは、現場を知る姿勢です。会社がどれだけ成長しても、ジェンスンは現場近くで真実を見極めることをやめません。私もオフィスに社長室などを置かず、部下と一緒の席で仕事することで息づかいを感じ、日々変わることや悩みを五感で察知します。できる限り顧客先にも足を運びます」

――日本にも尊敬する経営者がいるそうですね。

「GMOインターネットグループの熊谷正寿会長兼社長とKDDIの髙橋誠会長です。2人とも仕事で付き合いがあります」

「熊谷さんは決断が早く、7000人超のグループ社員をまとめ、1つの企業文化をつくりあげています。髙橋さんは大企業の社長・会長にありがちな上だけの付き合いではなく、スタートアップを含め現場の人たちと接点を持ち、現場も理解しています。2人とも、私自身が考える『現場を理解して現場でプレーする』『知見を生かして経営する』という理想に近いリーダーシップを発揮しています」

(井沢ひとみ)

エンジニアと現場を経験し渡米

1991年に日本テキサス・インスツルメンツに入社。大阪でエンジニアと営業を経験した後、米国本社に異動した。本社での勤務を含め20年以上、アナログ、DLP(デジタル光造形)製品など幅広い製品に携わりつつマネジメント職に従事。2014年にエヌビディアの日本代表に就任した。首都大学東京(当時)で経営学修士号(MBA)を取得した。

趣味は10代から始めたサーフィン。仕事が多忙になり、40代以降はオートバイに入れ込む。国内外の出張が多いなかでも週末は必ず家族と過ごし、子育てにも励む。毎朝パソコンを開く前に、仕事をする上で自身の性格の欠点を補うために重視すべき事柄3点、仕事で最も重要な事柄2点などを手帳に記すことが日課。20年間、毎日継続している。
[日本経済新聞夕刊 2025年12月11日付]

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