債券投資と個人向け国債の話。金利上昇局面での私の選択

(画像著作者:freepik)
先日、「東証マネ部!」に「債券ってどういう投資対象?個人向け国債との違いは何?」という記事が公開されていました。債券投資の基本や国内債券ETFの活用方法がわかりやすくまとめられていて、これから債券投資を検討される方にはぜひ読んでいただきたい良記事だと感じました。
ただ、債券投資については日本の金利環境を考えると、少し慎重に判断すべき点もあるのではないかと考えています。今回は、私自身が国内債券投資についてどう考え、どう行動しているかを共有させていただきます。
日本の金利、まだまだ低い
東証マネ部!の記事でも触れられていましたが、日本の金利環境は大きく変わってきています。最近まで続いていたマイナス金利・超低金利政策から脱却し、現在は国内債券ETFの平均利回りも1%台後半程度となっています。
しかし、ここで冷静にデータを見てみると、日本の金利水準は依然として非常に低いことがわかります。現在の長期金利は1%台で推移していますが、これは海外の主要国と比較するとずっと低い水準です。たとえば、米国の長期金利(10年国債)は4%台で推移しており、日本の金利がいかに低いかが実感できるのではないでしょうか。
将来の金利動向を正確に予測することはできませんが、現在の日本の金利水準を考えると、金利が低下する余地よりも上昇する余地の方がはるかに大きいと言えます。日本銀行は物価上昇率2%の目標達成に向けて段階的な利上げを進めており、市場では長期金利も今後上昇していく可能性が意識されています。
金利が上がると債券価格は下がる、この基本を忘れずに
債券投資の基本的な性質として、金利が上昇すると債券価格は下落し、金利が下落すると債券価格は上昇するという関係があります。これは債券投資における最も重要な特性のひとつです。
たとえば、今1.5%程度の利回りで債券を保有していたとして、もし、将来金利が3%や4%に上昇した場合、保有している債券価値は下落します。しかも、債券の期間が長いほど債券価格の変動も大きくなります。現在、国内債券インデックスファンドやETFの平均残存期間は約8年です(2025年11月時点。出所:NEXT FUNDS 国内債券 月次レポート)。もし金利が1%上昇した場合、単純計算で基準価額は約8%下落、金利が2%上昇したら基準価額は約16%下落する圧力がかかる計算になります。
もちろん、長期的に保有すればクーポン収入が得られますし、株式と比べれば値動きは穏やかです。しかし、金利上昇局面においては、債券ファンドやETFの基準価額は下落する圧力がかかることは理解しておく必要があります。
なぜ私は「個人向け国債 変動10年」を選んだのか
こうした状況を踏まえて、私自身は国内債券投資における現実的な判断として、金利上昇で元本価格が下落しない「個人向け国債」を選択しています。
具体的には「個人向け国債 変動10年」を、国内債券インデックスファンドやETFの代替商品として積み立てています。
なぜ「変動10年」なのか。それは、将来の金利上昇にクーポン(利息)がある程度追随してくれるからです。固定金利タイプの場合、発行時の金利が満期まで続きますが、変動金利タイプなら市場金利の上昇に応じて受け取る利率も増えていきます。
東証マネ部!の記事では、個人向け国債には「発行後1年間は中途換金ができない」「募集期間と発行日にラグがある」「最低投資単位は1万円」といった制約があると指摘されていました。確かにその通りで、ETFの方が流動性や利便性の面では優れています。
しかし、私にとっては金利上昇局面における元本の安定性と、金利上昇時のクーポン上昇というメリットの方が大きいと判断しました。債券部分はポートフォリオのクッション役を担う役割だと私は考えているので、少々の不便さは許容範囲内だと考えています。
自分の考えにあった選択を
もちろん、この判断が絶対に正しいというわけではありません。
今後日本の金利が思ったより上昇しない、あるいは低下するというシナリオもあり得ます。その場合は債券ETFを保有していた方が債券価格の上昇によるキャピタルゲインを享受できるかもしれません。
正直に言えば、インデックス投資家としては、将来の金利動向を予測したり、債券クラスの投資商品をインデックスファンドやETFではなく生債券で代替することに、若干の引っかかりがないとは言えません。しかし、現在の日本が置かれた特殊事情、つまり超低金利から金利上昇局面への転換期という状況を考慮して、このような投資判断をしています。
日本での債券投資においては、世界標準の理屈は押さえつつも、現在の日本が置かれた特殊な状況も加味して、自分の考えにあった選択をしていく必要があるのではないでしょうか。
まとめ
東証マネ部!の記事は債券投資の基礎を学ぶのに最適な内容です。その上で、今回お伝えしたポイントをまとめます。
- 日本の長期金利は1%台と、米国の4%台と比べてまだまだ低い水準
- 金利上昇局面では、債券ファンドやETFの基準価額に下落圧力がかかる
- 私は「個人向け国債 変動10年」を選択(元本の安定性と金利追随性を重視)
- インデックス投資家として葛藤はあるが、現在の日本の特殊事情を考慮した判断
債券投資においても、世界標準の理屈を押さえつつ、日本の現状を加味して自分の考えにあった選択をしていく必要があると考えています。私の考えが、皆さんの投資判断のひとつの参考になれば幸いです。
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