株式と債券の相関が高まる時代に、金(ゴールド)保有を考えてみる

(画像著作者:freepik)
ゴールドオンラインに「安全資産→レジェンド資産へ…目まぐるしく変わる投資環境下でも、〈金〉が“変わらぬ強さ”を保つワケ」という記事が掲載されています。
またもや株式と債券の相関が高まっている
資産運用において「株式60%、債券40%」という配分は、長年にわたって定番とされてきました。株式と債券は異なる値動きをすることが多く、株式市場が下落する局面では債券が下支えとなり、ポートフォリオ全体のリスクを抑える効果が期待されてきたからです。ただし、株式と債券の相関関係は固定的なものではありません。過去のデータを見ると、時期によってプラスの相関(同じ方向に動く)になったり、マイナスの相関(逆方向に動く)になったりと、昔からかなり変動してきました(15年前の過去記事参照)。そして注目すべきは、近年この相関が再び高まっているという点です。2021年以降のインフレ急騰により、米国株式と米国債券の相関関係は約27年ぶりの高水準に達しています。つまり現在は、株式が下がる時に債券も一緒に下がる、という分散効果が働きにくい局面になっています。
歴史を振り返れば、株式と債券の相関がプラスになる時期は過去にも存在しました。しかし、いつまでこの状態が続くかは誰にもわかりません。そんな中で、株式と債券だけに頼るのではなく、これらとは異なる値動きをする資産にも目を向けてみるのは、一つの考え方かもしれません。
金と株式・債券の相関は歴史的に低い
最近、私が興味を持って調べているのが金(ゴールド)です。金は株式や債券といった伝統的な資産と相関性が歴史的に低いという特徴があります。データを見ると、金とS&P500指数の過去50年間の月次相関係数はわずか0.02、ブルームバーグ米国総合債券指数との相関係数も0.09に留まっています。つまり、株式や債券とはほぼ独立した値動きをするということです。特に興味深いのは、金の需要が持つ多様性です。金は宝飾品、工業用途、投資、そして中央銀行の準備資産という4つの異なるセクターで需要があります。それぞれのセクターは異なる経済的要因に影響されるため、例えば金価格が上昇している時期でも、中央銀行は戦略的な観点から買い増しを続けたりします。このような幅広い需要基盤が、金と伝統的な金融資産との低い相関性を生み出している要因といえます。
金の保有比率はどのくらいが適切か
では仮にポートフォリオに金を組み入れるとしたら、どのくらいの比率が考えられるのでしょうか。専門機関や研究によって様々な見解がありすが、ワールド・ゴールド・カウンシルの分析では、投資家のリスク許容度やポートフォリオに含まれる資産の種類によって異なるものの、2.1%~9.4%という数値が示されています(出所)。また、田中貴金属工業は全資産の10~15%程度(出所)、楽天証券のアナリストも10%程度を目安としています(出所)。過去20年のシミュレーションでは、金の配分を10%まで増やすとポートフォリオのリスクが低減する傾向が見られたという報告もあります(出所)。
まとめると、金をポートフォリオに組み入れる場合、全資産の5~15%程度とごく一部にとどめておくのが一般的なようです。金は配当や利息を生まない資産ですから、株式や債券のようなインカムゲインは期待できません。しかし、その代わりに「価値の毀損リスクが比較的低い」「市場が混乱した際の保険的役割を果たす」という特性があるとされているので、リターンをあげる資産というよりはリスクを下げる資産としての活用になるのだという理解です。
検討に値するかも…
現在、私の運用資産額が億を超えて大きくなってきている中で、株式と債券の相関が高まっている近年の環境を考えると、相関性の低い金を資産の一部として保有するのもありかもしれない、と思うようになってきました。金は「市場の保険」として機能すると言われる資産ですから、株価が好調な時に考えておく価値はあると思います。
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