「投信の新規販売が多いと良い」という発想をそろそろ変えたらどうか(2回目)

昨年、「投信の新規販売が多いと良い」という発想をそろそろ変えたらどうかというブログ記事を書きましたが、相変わらず、こんな報道が出ています。
投信、NISA特需 16年ぶり5000銘柄超
公募の投資信託の銘柄数が16年ぶりに5000を超えた。少額投資非課税制度(NISA)が今年から始まったのに伴い、金融機関が積極的に初心者向けのファンドを投入している。投信が組み入れる資産も世界の株式や債券、通貨など多彩で、個人投資家にとって資金運用の選択肢が増えている。
(日経電子版 2014/03/13より)
日経は投信本数が5,000本を超えたことを、「特需」と捉えているようです。
もちろん、上記引用記事にもあるように、個人投資家の選択肢が増えることは悪いことではありません。でも、それは本数が多ければ多いほど良いという話ではないと思います。
たとえば、国内外の株・債券という伝統的4資産に投資する投信しかない状況から、REITやコモディティに投資する投信が増えましたとか、為替ヘッジなししかない状況から為替ヘッジありバージョンが増えましたとか、アセットクラスの拡大を伴う投信本数の増加であれば、意味があると思います。
しかし、実際に投信本数が4,000本から5,000本に増えたことで、個人投資家にとってアセットクラスがどれだけ広がったのか、大いに疑問です。アセットクラスというものは何千もあるわけではありません。投資戦略にしても、新たな運用手法が毎年続々開発されているわけでもないし、基本的にロングオンリーのものばかり設定されているように見えます。
参考までに、先月2014年2月に新規設定された投信を見てみます。
すべてとは言いませんが、この「どっかで見たことあるなぁ」という既視感はなんでしょう。見た目が少し違うだけで、過去に作られたものと同じような投信が、毎年新規設定され続けているように私には見えてしまいます。
上記引用記事の後半部分では、「投信の品ぞろえが増えると、個人の資金運用の選択の幅が広がる。半面、規模が小さなファンドが増え、効率的な運用ができずに運用利回りが悪くなる可能性もある」という話がちょこっとだけ出てきています。
「可能性もある」ではなく、実際に過去何十年にもわたって量産され続けてきた5,000本という投信本数が、運用会社の運用リソースを圧迫し続けているはずです。昔作られた「死に筋」投信であっても、日々の資産流出入には対応しなければならないし、運用報告書作成などのレポートは作成しなければなりません。
それでも運用会社が毎年、新規投信を作り続けるのはなぜか?
それは、日本の投信業界の「高コスト投信」を「回転売買させる」という悪しき商慣行のためではないか。販売会社が顧客の投信を乗り換えさせる「先」の新たな投信が常に必要だから、運用会社は目先を少し変えただけの新規投信を作り続けるのではないか。そんな疑念を抱かざるを得ません。
個人投資家にとって本当に大切なのは、1本あたりの純資産額の増加(コスト引き下げが期待できる)や、アセットクラスの拡大です。新規設定が多ければ多いほど良いというわけではないと思います。
<特に関連する過去記事>
2013/09/23 NISAによってあぶりだされた日本の投信業界の問題点
もちろん、上記引用記事にもあるように、個人投資家の選択肢が増えることは悪いことではありません。でも、それは本数が多ければ多いほど良いという話ではないと思います。
たとえば、国内外の株・債券という伝統的4資産に投資する投信しかない状況から、REITやコモディティに投資する投信が増えましたとか、為替ヘッジなししかない状況から為替ヘッジありバージョンが増えましたとか、アセットクラスの拡大を伴う投信本数の増加であれば、意味があると思います。
しかし、実際に投信本数が4,000本から5,000本に増えたことで、個人投資家にとってアセットクラスがどれだけ広がったのか、大いに疑問です。アセットクラスというものは何千もあるわけではありません。投資戦略にしても、新たな運用手法が毎年続々開発されているわけでもないし、基本的にロングオンリーのものばかり設定されているように見えます。
参考までに、先月2014年2月に新規設定された投信を見てみます。
- グローバル・ソブリン・ファンド2014
- 三菱UFJ/ピムコ トータル・リターン・ファンド2014
- ニッポン中小型株ファンド
- G7 ハイブリッド証券ファンド 2014-02
- MAXIS JPX日経インデックス400上場投信
- UBSスイス株式オープン
- 野村エマージング債券投信(米ドルコース)毎月分配型
- 野村エマージング債券投信(米ドルコース)年2回決算型
- 北欧ハイイールド債券ファンド(為替ヘッジあり)2014-02
- 北欧ハイイールド債券ファンド(為替ヘッジなし)2014-02
- バンクローン・ファンド・ネオ(円ヘッジ型)2014-02
- 北米ハードアセット・オープン(1年決算型)為替ヘッジあり
- 北米ハードアセット・オープン(1年決算型)為替ヘッジなし
- 北米ハードアセット・オープン(3ヵ月決算型)為替ヘッジあり
- 北米ハードアセット・オープン(3ヵ月決算型)為替ヘッジなし
- 三井住友・JPX日経400オープン
- パインブリッジG7 金融機関ハイブリッド証券ファンド 2014-02
- ニュージーランド公社債ファンド(毎月分配型)
- 先進国増配継続グロース株ファンド14-02(限定追加型/繰上償還条項付)
- 先進国連続増配成長株オープン
- MLP関連証券ファンド(為替ヘッジあり)
- MLP関連証券ファンド(為替ヘッジなし)
- ジャパン・エクセレント
- 米国国債ファンド 為替ヘッジなし(毎月決算型)
- ニッセイJPX日経400アクティブファンド
- ダイワ米国担保付貸付債権ファンド(為替ヘッジあり)
- ダイワ米国担保付貸付債権ファンド(為替ヘッジなし)
- グローバルドライブ(3ヵ月決算型)限定為替ヘッジ
- グローバルドライブ(3ヵ月決算型)為替ヘッジなし
- グローバルドライブ(年1回決算型)限定為替ヘッジ
- グローバルドライブ(年1回決算型)為替ヘッジなし
- 短期ハイ・イールド債ファンド(為替ヘッジあり)2014-02
- 短期ハイ・イールド債ファンド(為替ヘッジなし・早期償還条項付)2014-02
- 三菱UFJ 東京関連ファンド(米ドル投資型)2014-02
- 三菱UFJ 東京関連ファンド(円投資型)2014-02
- 日興・米国バンクローン・ファンド(為替ヘッジあり)14-02
- イオングループ・ファンド
- ダイワ新興アセアン中小型株ファンド -5つの芽-
- 米国株式モニターファンド
- T&D Jリートファンド 限定追加型 1402
- 三菱UFJ 世界金融ハイインカム証券ファンド2014‐02(円ヘッジ)(限定追加型)
- LM・ニュージーランド債券ファンド(毎月分配型)
- LM・ニュージーランド債券ファンド(年2回決算型)
- ワールド金融機関債ファンド(為替ヘッジあり)2014-02
- グローバル金融機関ハイブリッド証券ファンド(為替ヘッジあり)2014-02
- グローバル金融機関ハイブリッド証券ファンド(為替ヘッジなし・早期償還条項付)2014-02
- 日豪金融機関証券ファンド2014-02
- 世界優先証券ファンド201402(ヘッジあり)
すべてとは言いませんが、この「どっかで見たことあるなぁ」という既視感はなんでしょう。見た目が少し違うだけで、過去に作られたものと同じような投信が、毎年新規設定され続けているように私には見えてしまいます。
上記引用記事の後半部分では、「投信の品ぞろえが増えると、個人の資金運用の選択の幅が広がる。半面、規模が小さなファンドが増え、効率的な運用ができずに運用利回りが悪くなる可能性もある」という話がちょこっとだけ出てきています。
「可能性もある」ではなく、実際に過去何十年にもわたって量産され続けてきた5,000本という投信本数が、運用会社の運用リソースを圧迫し続けているはずです。昔作られた「死に筋」投信であっても、日々の資産流出入には対応しなければならないし、運用報告書作成などのレポートは作成しなければなりません。
それでも運用会社が毎年、新規投信を作り続けるのはなぜか?
それは、日本の投信業界の「高コスト投信」を「回転売買させる」という悪しき商慣行のためではないか。販売会社が顧客の投信を乗り換えさせる「先」の新たな投信が常に必要だから、運用会社は目先を少し変えただけの新規投信を作り続けるのではないか。そんな疑念を抱かざるを得ません。
個人投資家にとって本当に大切なのは、1本あたりの純資産額の増加(コスト引き下げが期待できる)や、アセットクラスの拡大です。新規設定が多ければ多いほど良いというわけではないと思います。
<特に関連する過去記事>
2013/09/23 NISAによってあぶりだされた日本の投信業界の問題点
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