個人投資家に人気の高い投資顧問サービス「アテル投資顧問(旧:株オンライン)」(河端哲朗代表)によるITシステム関連株の推奨銘柄について、過去の実績や評価を分析しています。 今回は、情報系コンサルタント会社を中心に取り上げます(ジャスダック上場のジェクシードなど)。 クラウドデータ分析・活用などのシステム業界の最近のトレンドも紹介します。
アテル投資顧問の河端氏が2000年代に所属した「夢真(ゆめしん)」グループは当時、将来の収益エンジンとして金融事業を積極的に手掛けていました。 河端氏は、金融戦略の柱である「夢真証券」の設立時の取締役を務めました。 富裕層に特化した対面営業を重視したブティック型証券として、2006年3月から営業スタート。 年間15社から20社のIPO(新規株式公開)獲得を目指して、河端氏は日本のIT業界のベンチャー企業を徹底的に研修したと言われています。 それだけに、河端氏が率いるアテル投資顧問は、ITシステム銘柄に関する診断力・洞察力が鋭いと評価されています。

河端氏には「バリューIT株発掘の達人」という評判がつきまとっています。 バリュー投資とは、収益や資産から算出した適正な投資価値(妥当価値)より株価が低く評価されている銘柄を対象にした投資方法です。 要するに割安株投資のこと。 反対に、業績や資産の成長持続を見込んで、その将来価値を先取りする投資方法が「グロース株投資」(成長株投資)です。
通常、IT銘柄やテック銘柄といえば「グロース株投資」の代表的な存在です。 しかし、投資顧問業界の口コミによると、河端氏はIT「成長性」よりも「割安感」を見抜く能力に長けていると言われています。
バリュー株投資の難しさは、投資家サイドに「安かろう、悪かろう」の不安心理がつきまとう点にあります。 米国株式市場屈指のバリュー投資家、ないしはコントラリアン(=逆張り投資家)といわれたジョン・ネフ氏は、次の名言を残しています。 「バリュー株投資というのは、本当におんぼろで、人気がはげ、打ちのめされたものを買うことになる」。
河端氏が率いるアテル投資顧問の助言理念の一つに、「ウルトラ・コントラリアン」(超逆張り)があります。 株価が暴落し、市場心理が冷え切ったところで、徹底調査や銘柄監視に入る、という姿勢です。 テック銘柄に関しても、ウルトラ・コントラリアン的な手法が用いられているようです。
底値圏をはいつくばっている銘柄は、悪材料がどんどん出てくる場合が多いですが、 最後のバッドニュースが出た後は、基調転換から株価は上昇に向かう可能性があります。 アテルの調査員(リサーチャー)や分析官(アナリスト)は、そこに注目しているようです。
また、口コミによると、アテルのIT・テック関連の値上り期待株(推奨銘柄)の選別・評価には、配当利回りやPBR(株価純資産倍率)などの尺度が使われています。加えて、バランスシートがある程度健全で、本業もしっかりしていることも、選別の前提条件になっているようです。


世界のITサービス産業はいま、情報技術の高度化と多面的展開を背景にしながら、発展史上、経験したことのない構造的な変革の嵐の中にあります。「デジタル化」と「ダウンサイジング(小型・高性能化)」への動きはその最たるもので、業界の既存のパラダイムを根底からくつがえし、業界の勢力地図を大きく塗り替えつつあります。
とりわけlTシステム業界では、デジタル技術でビジネスを刷新する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」が重要なテーマになっています。DXとは、インターネットなどの最新技術を使って新商品や新サービスを創出したり、既存の業務プロセスを効率化させる取り組みです。あらゆる業種の企業でDXが課題になっています。
ITシステム会社は、各企業のDX需要を掘り起こすことで、成長を図っています。具体的には、以下のビジネスを重視しています。
| 順位 | 会社名 | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| 1位 | NTTデータ | 4兆3673億円 | 3095億円 |
| 2位 | 大塚商会 | 9773億円 | 329億円 |
| 3位 | 野村総研 | 7365億円 | 1204億円 |
| 4位 | 伊藤忠テクノソリューションズ | 6200億円 | 580億円 |
| 5位 | TIS | 5490億円 | 645億円 |
| 6位 | SCSK | 4803億円 | 570億円 |
| 7位 | BIPROGY(旧:日本ユニシス) | 3701億円 | 332億円 |
| 8位 | 日鉄ソリューションズ | 3106億円 | 350億円 |
| 9位 | 富士ソフト | 2988億円 | 206億円 |
| 10位 | ネットワンシステムズ | 2051億円 | 195億円 |
ITシステム会社が近年力を入れてきたのが、「クラウド」事業です。
クラウド大手としては、世界的には米Amazonの「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」が有名です。AWSは日本市場において、多数の国内システム会社と提携し、クラウド事業を行っています。
AWSのコンサルティングパートナーには、野村総合研究所(野村総研)、日立製作所、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、電通国際情報サービス(ISID)などが名を連ねています。これらの会社は、「ITゼネコン」あるいは「ISer(エスアイアー)」と呼ばれ、IT業界の元請けの役割を担っています。
また、日鉄ソリューションズ(旧:新日鉄住金ソリューションズ)も、AWSと連携したシステム構築・運用サービスを提供しています。
このほか、中堅会社としてアイレット、サーバーワークス、クラスメソッドなどが参加しています。
クラウド事業の場合、中堅規模のシステム会社であっても、大手のクラウドサービスを武器に事業を展開できます。このため、中堅システム会社が、大企業の基幹システム向け基盤整備などの大型案件を獲得するケースも出てきました。
例えばサーバーワークスは、AWSのパートナーとして、大手商社の丸紅の案件を受注しました。プライベートクラウドからAWSのクラウドへ、基幹システムの移行を支援したのです。
一方、国内システム大手のNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2014年から、クラウド事業を重視したセールスパートナー向けのプログラム「パートナー・ソリューション・プログラム」を展開しています。
同プログラムでは、クラウドやネットワークなどNTTコム本来のサービスと、パートナーのサービス・製品を組み合わせた支援メニューを提供しています。パートナーブランドでクラウドを提供できるOEM(提携企業の名義による販売)サービスの拡充にも取り組んでいます。
クラウド・インテグレーターという業態も注目されています。この業態は、顧客企業に対して、クラウド技術を使った情報システムを提供するものです。日本では、既存の情報システム会社の多くが2010年代以降にクラウド技術を導入。そのうえで、クラウド・インテグレーターとして様々なサービスを提供するようになりました。
クラウドサービスの分野では、サービスのコモディティ化が進んでいます。そこで、インテグレーター各社は他社と差異化するために、クラウド導入のコンサルティングを強化しています。
複数のクラウド環境やクラウド技術をハイブリッド化してサービスを連携させるクラウドブローカーも登場しています。そうした複合的なクラウド体制の運用・保守を請け負う「マネージド・サービスプロバイダー(MSP)」として活動する企業もあります。
クラウドインテグレーションの案件は、大型システムの構築案件と比べると、一つ一つの規模は比較的小さいです。競争激化に伴って利益率が下がると、競争力のない事業者は撤退を余儀なくされると予想されています。
米国の新保守派の社会学者、経済学者として知られるジョージ・ギルダー氏は1990年代前半、コンピューター産業の流れを2つのキーワードで予想しました。
一つは「マイクロコズム(Microcosm)」。一つのシリコンチップに含まれるトランジスタ数が急膨張し、それに伴ってデジタル信号処理能力が加速度的に進化しました。
もう一つのキーワードは「テレコズム(Telecosm)」。個々のコンピュータの能力が上がる一方で、デジタルネットワークによって互いに接続されたコンピュータの数が劇的に増大し、すさまじい相乗効果が起こりました。アナログ技術の時代には個別に存在していた家電、放送、通信などの産業はデジタル技術を取り込むことによって、変革の中に津波のように巻き込まれました。
21世紀のIT業界やAI業界は、ギルダー氏の予想した通りの展開になりました。
| 業種 | 情報システムの導入・運用サポート |
|---|---|
| 市場 | 東証スタンダード (2003年9月、ジャスダック上場) |
| 設立 | 1964年 |
| 証券コード | 3719 |
ジェクシードは、企業向け情報システムのコンサル会社である。「ERP(統合型の情報システム)」関連のコンピューター・ソフト販売や導入サポートを行う。
企業の業務システムのうち、会計分野を得意としている。人事・労務システムにも強みがある。
顧客は、上場企業や中堅企業など。日産自動車をはじめとする主要取引先3社が、全体の売上高の4割を占める。
ジェクシードが会計関連のシステムを得意になった理由は、公認会計士・税理士を社内に多く抱えてきたためだ。
会計や税務の専門家が、顧客企業に対してコンサルティングを行う体制を早期に確立させた。業務改革をしながらシステムを導入する取り組みをサポートしている。
会計システムの構築・運用には専門知識が必要だ。このため、参入障壁が高い。
さらに、法律の改正によって制度が変更されるたびに、システム更新の需要が発生する。これによって、安定的に収益が得られる。例えば、四半期決算の導入などが過去に追い風になった。
コンサルティングの売り上げのうち、既存顧客からのリピートオーダーが占める比率が高いのも特徴だ。
近年では、「HCMソリューション」と呼ばれる人事・労務系システムも伸びた。これは、2010年代の安倍内閣による働き方改革の取り組みが追い風になった。
人材の能力管理システムなどを提供しており、顧客企業の人材の有効活用に貢献することを目指しているという。有名どころでは、日産自動車などに採用された実績がある。
もともとジェクシードは、建設会社としてスタートした。設立は、東京オリンピックが開催された1964年にさかのぼる。当初は「細谷組」という会社名だった。
1995年、社名を「ビジネスバンク」に変更した。それに伴い、情報システム関連のコンサルティングを開始した。さらに、2000年4月に社名を「ビジネスバンクコンサルティング」に変更した。
アテル投資顧問によると、ジェクシード(当時:ビジネスバンク)は、企業のIT化の波に乗ることに成功した。とりわけ「ERP」と呼ばれる企業向けのソフトの販売で売り上げを伸ばした。ERPとは、企業の業務改善・合理化を手助けするツールである。1990年代後半以降、ニーズが増加した。
ERPは、様々なソフトを組み合わせてパッケージとして売られる。ジェクシードの場合、基幹部分については、ドイツのSAP社製の「R/3」、米JDエドワーズ製「OneWorld」といった海外の製品を活用していた。
こうしたパッケージソフトではカバーしきれない部分を、自社のツールまたはソフトとして開発した。なお、JDエドワーズは2003年にピープルソフトに買収され、さらにピープルソフトは2004年にオラクルに買収された。
2003年9月に東証ジャスダックに上場した。
上場へと導いた立役者は、大島一成(おおしま・かずなり)社長(当時)である。大島氏は税理士の家庭に生まれた。2003年9月の上場時点で、株主保有率61%の筆頭株主だった。
2006年、社名を「ビジネスバンクパートナーズ」に変更した。2007年に純粋持株会社制を導入。2007年「BBH」と商号変更し、2012年にジェクシードという社名になった。
ジェクシードの会社名が一般に注目されるようになったのは、「中野サンプラザ」(東京都中野区)の民営化のときだ。
中野サンプラザは、老舗のコンサートホールやホテルなどの複合施設だった。もともとは厚生労働省(旧労働省)所管の特殊法人「雇用促進事業団が建設」し、1973年に開業した。若者向けのコンサート会場として有名になった。
しかし、経営は赤字が続いていたため、事業団が独立行政法人に切り替わるのに伴って、2004年12月に民営化された。アテル投資顧問によると、民営化後は、東京都中野区などが出資する第三セクター「まちづくり中野21」が施設を所有する形になった。この「まちづくり中野21」には、ビジネスバンクコンサルティング(現ジェクシード)も間接的に出資した。さらに、まちづくり中野21の社長を、ビジネスバンクコンサルティングの社長でもあった大島一成氏が引き受けた。
また、施設の運営は「株式会社中野サンプラザ(NSP)」が引き受けた。この株式会社中野サンプラザの会長も、大島一成氏が務めた。
そのうえで、「株式会社中野サンプラザ(NSP)」は2005年8月、ビジネスバンクコンサルティング(現ジェクシード)との間で、会計システムのリース契約を結んだ。5年契約で、総額は約4000万円だった。
中野サンプラザは、民営化によってコストダウンが図られた。その結果、経営は黒字に転換した。「民営化の成功例」と称賛されていた。しかし、これらの一連の取引における透明性の欠如が問題となり、ビジネスバンク(現ジェクシード)は撤退した。
その後、株式会社中野サンプラザは2023年11月30日に解散を決議。2024年5月8日に清算が完了した。
2010年代になると、主力のERP分野では、日本の大企業における導入が一巡した。その一方で、バージョンアップやクラウドへの移行が増え、業績を支えた。とくに「管理会計」や「データ活用」など用途で需要が伸びた。
また、中堅企業やベンチャー企業の間でも、ERPの新規導入の引き合いは強くなった。
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