EUは、ESG規制の簡素化を検討している。対象企業を大幅に減らし、適用開始時期も先延ばしする見通しだが、予断を許さない。
ESGやサステナビリティで世界をリードしてきた欧州で揺り戻しが起きている。欧州連合(EU)のESG規制が相次いで簡素化される見通しだ。日本でも大企業を中心に対応準備を進めてきたが、改正の動向から目が離せなくなってきた。
2025年2月26日、EUの欧州委員会は企業持続可能性報告指令(CSRD)や企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)などを見直し、規制の一部を縮小または廃止する「簡素化」を打ち出した。方針をまとめたものは「オムニバス法案」と呼ばれる。

EUのESG規制は、企業に持続可能な経営を求め、投資家や消費者に透明性の高い情報を提供することを目的としている。ところが企業に膨大な量の報告を求めるこれらの規制が、実務やコストの負担になっていると指摘されてきた。
例えば、企業にサステナビリティ情報の報告を義務付けるCSRD。膨大な情報の収集・整理や保証コストによる負担増に企業から非難の声が上がっていた。オムニバス法案によって、EU域内の上場企業の一部などについてはCSRDの適用開始時期が2年間延期され、さらには対象企業の見直しも検討されている。
KPMGインターナショナルESG統轄グローバルヘッドのジョン・マカラリーシー氏は、「オムニバス法案によって規制の適用開始が一部延期になったとしても、対応を先送りにしている余裕はない」と警鐘を鳴らす。「世界では、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のサステナビリティ開示基準が36の国・地域で採用される見通しで、米カリフォルニア州大気資源局(CARB)は26年から、(温室効果ガス排出量などの気候関連の財務リスクの開示を義務付ける)規制を導入する。日本企業も報告を求められる」(同氏)からだ。
トランプ米政権の反ESG政策の影響も残る中、持続的成長を目指す企業はどこに向かうべきか。ESG経営は、大きな転換点を迎えている。
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