※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには変更や修正を加えている。
都心生まれ、都心育ちのごく普通のアラフォー女性の中には、「これまで一人暮らしをしたことがない」という方も少なくない。
ごく普通に自宅から学校に通い、就職してからも当然、自宅から通勤。よほど自立心が強いとか、自宅が狭いとか、親が異常な過干渉だとか、会社からの家賃補助が手厚いとか、所得が高いとか……相当な理由がなければ、実家をわざわざ出てまで一人暮らしを選ぶ選択肢はないのだ。
今回紹介するのは、40歳、専門卒、職業エステティシャンの女性。年収300万円弱で、実家住まい。兄と姉がいるが、それぞれ結婚して所帯を持ち、独立している。実家に残っているのは、末っ子の彼女だけだ。
彼女はずっと安全な実家で家族の愛情に包まれたままオトナになり、仕事から帰れば温かいご飯がある。外に洗濯物を干して出かけ、雨が降ってきたとしても慌てて帰る必要もない。友人との予定がない週末は親とショッピングや外食に出かけ、いくつになってもたまに親に洋服を買ってもらえる。外食の払いだって、当然親がかりだ。
ママとは仲良しだから、習い事のフラダンスやゴルフスクールにも一緒に通う。会社の飲み会で帰宅が遅くなれば、パパが車でお迎えに飛んでくる。こんな申し分のない実家暮らしは生まれたときからずっとそうだった。彼女本人も、ましてや親も「これでよいのか」などと、疑問に思うこともない。
少し前の昭和の価値観なら、いつまでも嫁に行かない娘が自宅にいるのは「世間体が悪い」と言われるところだが、今は令和だ。“適齢期になれば結婚すべき“という価値観は薄れ、自宅に家族仲良く暮らしていることが周囲からうらやましがられたりすることさえある。
娘がアラフォーともなると両親もそれなりに歳を取り健康面に問題が生じるが、結婚しない娘の将来を心配しつつも、心のどこかでありがたいと感じていたりする。
彼女の学生時代は、片思いで好きだった男の子がいたらしい。だが、恋愛と呼べるようなお付き合いはしたことはないし、好きな芸能人の「推し活」にハマり、それなりに楽しんでいる。
友人は地元にも職場にもいるし、推し活仲間もたくさんいる。恋人がいないことを寂しいと思ったこともない。アラサーのころは友人に誘われて「合コン」に出かけたことも何度かあったが、世界中を襲ったあのコロナ禍で、そんなお誘いもぱったりとなくなった。そこから数年が経ち、気が付けばアラフォーになっていた。こんな“子供部屋おばさん”が、私の結婚相談所を訪れた。