※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
前編はこちら
生成AIに聞けば何でも答えてくれるのだったら、自分の脳を鍛える必要はないと思うかもしれません。コツコツ覚える勉強はもういらないのかというと、それは違う。毎日少しずつ練習する学びはこれからも必要です。生成AIがあるから漢字を覚えなくていいよ、英単語を知らなくてもいいよ、ということにはなりません。
自分の頭のなかに知識があることと、インターネット上に知識があることとはまったく別です。勉強や仕事を生成AIにやらせて頭を使わなくなったら、AIに使われる側になってしまうでしょう。生成AIを利用しつつも基礎的なスキルの学習を怠らないことが肝心です。
うちの研究室では、論文を書くときに、海外の論文を生成AIに翻訳させて読むことも許しています。一方で、毎日1本、原著論文を英語で読むことを義務付けています。論文の書き方を身につけたり、原著論文ではどんなことが書いてあるのかを学ぶには、自分の頭を使って苦労して読み込むことが欠かせないのです。
毎日の学習効果は比例の直線状ではなく、指数関数的に上がっていきます。最初はゆっくりでも、勉強を続けて「勘」をつかむと長足の進歩を遂げます。学生たちも、毎日続けるうちに読むスピードも速くなり、英語力も上がっていくのです。
生成AIで論文を出力させても、内容や表現が正しいか判断できないのでは通用しません。同時通訳してくれるAIができても、その表現が自分の意図通りかわからなければまずいでしょう。だから、学び続けることが変わらず大事なのです。
むしろ、これからは、楽をしようと思えばできるようになるので、学ぶ人とズルをする人とで学力の差が拡大するでしょう。
うちの研究室の学生は、従来は原著論文を1日1本読むだけで精いっぱいだったのが、今は生成AIの力を借りて周辺論文についても調べるようになり、学びの幅が広がっています。