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夏秋取りトマト特集2024
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2年連続“最も暑い夏”
対策徹底し環境改善を

2024.12.04
日本農業新聞 編集局 報道部 営農グループ

 気象庁によると、2024年の夏(6~8月)は平均気温が平年より1.76度高く、23年の夏と並んで1898年の統計開始から“最も暑い夏” となった。トマトにとっても作業者にとっても、厳しい環境が続いている。農水省が地球温暖化の影響をまとめた資料などから、トマトの生理障害や対策を紹介する。

全国の4割で着果不良 遮光・遮熱など対策進む

 農水省は毎年、その年の気象の影響を農作物ごとにまとめた「地球温暖化影響調査レポート」を公開している。最新の23年のレポートによると、トマトの生理障害で最も多かったのは「着花・着果不良」。全国の4割ほどの面積で確認された。次に裂果などの「不良果」と、着色不良である「日焼け果」が、それぞれ全国の2割ほどで見られた。この他、尻腐れ、生育不良、病虫害の発生などが報告された。


 レポートでは都道府県に聞き取った、実施している対策も一覧にまとめている。最も多く挙がったのは「遮光・遮熱」で、遮光ネットを展張したり、液体の遮熱剤をハウス屋根に塗布したりして強過ぎる日射を遮り、地温やハウス内温度の上昇を防ぐ。
 遮熱剤は、屋根に登って動力噴霧機でまいていくのが主流だったが、近年はドローンを活用する農家もいる。早く安全に塗布することができる。遮光ネットは、熱を生じやすい波長の光を反射させて遮熱効果を高めた高機能製品も出てきた。費用対効果を考慮し、従来の黒色寒冷しゃから徐々に切り替えている例もある。

トマトハウスへのドローンでの遮熱剤散布
遮熱効果の高い遮光ネットをかけたハウス

耐暑性品種へ転換進む 安定出荷続ける産地も

 レポートで次いで多く挙がった対策は「品種転換・新品種の導入」だ。種苗メーカー各社が、高温にさらされても着果しやすい品種、軟化せずに棚持ち性に優れる品種などを開発している。主産地も試験栽培の結果を受けて一気に大面積で転換を進める。23、24年と猛暑の中、安定出荷を続けている産地もある。
 この他に挙がった対策は「細霧冷房・ミスト・循環扇」「換気・かん水・葉面散水」など。まだ実証段階であったり、ごく一部で導入されていたりする対策として、「植物成長調節剤散布」、「ヒートポンプによる夜温管理」、「穂木・台木品種の選定、摘花房処理」などもあった。
 農水省は今年4月と8月に相次いで、農作物の高温対策のための技術指導通知を出した。これは厳しい高温が続くと予想される時に発出するもので、トマトを含めて露地・施設野菜全般の基本対策をまとめている。
 特に果菜類の栽培管理としては、摘果・若取りによる着果負担軽減と、適切な施肥による樹勢維持、摘葉による水分の蒸発抑制、葉面散布によるカルシウム欠乏や鉄欠乏などの生理障害対策の三つが重要だと紹介している。

熱中症で毎年30人死亡 人にも快適な環境を

 遮光・遮熱や細霧冷房は、作業環境の改善にもつながる。農水省の統計では、毎年およそ30人が農作業中に熱中症で死亡している。暑さが本格化する7、8月の死亡が8割超を占める。特にハウス内の作業は、外気よりも温度・湿度ともに高くなるため、熱中症対策は必須だ。
 消防庁が取りまとめている今年5~9月の熱中症の救急搬送人数は、屋外(田畑など)での農林水産漁業関係の作業中によるものは2332人だった。昨年よりも300人以上多い。月別では7月が最も多く912人で、次いで8月が719人となった。
 農水省の熱中症対策リーフレットでは、熱中症予防には、ファン付き作業服やネッククーラーの着用、小まめな休憩と水分・塩分補給、単独作業は避けて複数人での作業などを挙げている。それに加えて「作業環境の改善」として、作業する場所自体を涼しくすることも重要としている。トマトと作業者の両方に、快適な環境を考えることが求められている。

ファン付き作業服

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