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まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「エヴリシング・マスト・チェンジ(Everything Must Change)」べナード・アイグナー(Benard Ighner)(1974)

 おはようございます。今日はべナード・アイグナーの「エヴリシング・マスト・チェンジ(Everything Must Change)」です。

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Everything must change
Nothing stays the same
Everyone will change
No one stays the same

The young become the old
And mysteries do unfold
‘Cause that’s the way of time
Nothing and no one goes unchanged

There are not many things in life
You can be sure of, except
Rain comes from the clouds
Sun lights up the sky
And hummingbirds do fly

Winter turns to spring
A wounded heart will heal
But never much too soon
Yes, everything must change

The young become the old
And mysteries do unfold
‘Cause that’s the way of time
Nothing and no one goes unchanged

There are not many things in life
You can be sure of, except...

Except
Rain comes from the clouds
Sun lights up the sky
And hummingbirds do fly

Rain comes from the clouds 
Sun lights up the sky
And hummingbirds do fly 
Rain comes from the clouds
And sun lights up the sky 
And hummingbirds do fly
Rain comes from the clouds
Sun lights up the sky
And music makes me cry

*************************************

すべては変わらなければならない
同じままでいるものはない
誰もが変わっていく
変わらずにいられる人はいない

若者はやがて老人になる
謎は明らかになってゆく
それが時間というもの
どんなものも、誰だって、変わらないものはない

人生で確かだといえることは多くはない
このことを除けば
雨は雲から落ちてきて
太陽は空を照らし
ハチドリは飛んでゆく

冬はやがて春に変わり
傷ついた心は癒えていく
だけど、それはすぐにではない
そう、すべては変わらなければならない

若者は老いていき
謎は解き明かされていく
それが時間というもの
どんなものも、誰だって、変わらずにはいられない

人生で確かだといえることは多くない
これを除けば
雨は雲から降り
太陽は空を照らし
ハチドリは飛んでゆく

雨は雲から降り
太陽は空を照らし
ハチドリは飛んでゆく
雨は雲から降り
太陽は空を照らし
ハチドリは飛んでゆく
雨は雲から降り
太陽は空を照らし
そして音楽は私を泣かせる (拙訳)

*********************************

 この曲は1974年に発売されたクインシー・ジョーンズのアルバム「ボディ・ヒート(Body Heat)」に収録されていたもので、シングルにはなっていませんが素晴らしい曲だと評判になったようで、さまざまなアーティストがカバーしています。
 真っ先に取り上げたのがフィラデルフィア・ソウルの大定番「ミー・アンド・ミセス・ジョーンズ」で知られるビリー・ポール(1975年のアルバム「Got My Head on Straight」に収録)でした。
 翌1976年には、まだ無名だったジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」を取り上げるなど素晴らしい”選曲耳”を持った女性シンガー・ソングライターの草分けジュディ・コリンズ、そしてこの曲のカバーの中でも有名なものの一つでもある、ランディ・クロフォードのカバーがリリースされています。ランディのカバーは1976年リリースのデビューアルバムのタイトル曲としてアルバムの1曲目に収録されていて、ロサンゼルスのシュライン・オーディトリアムでライブ録音されたものでした。

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 その後もジョージ・ベンソン、ニーナ・シモーン、ナンシー・ウィルソン、カーメン・マクレーバーブラ・ストライサンド、オリータ・アダムス、ジェームス・イングラムなどすごい力量のシンガーたちが競うように取り上げています。

 ちなみに僕個人が一番繰り返し聴いたのは、オリジナルでもランディでもなく、吉田美奈子のカバーでした。吉田美奈子本人が訳詞をつけ「移りゆくすべてに(Everything Must Change)」というタイトルで、1975年発売の彼女のセカンド・アルバム「MINAKO」の1曲目に収録されていました。リリースのタイミングとしてはビリー・ポールの次、ランディ・クロフォードよりも早く、世界で2番目にリリースされたカバーだったんですね。

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 さて、この名曲を作詞、作曲し歌ったべナード・アイグナーですが、あまり知られている人ではないですよね。僕も彼のプロフィールはほとんど知りませんでした。今回、少し調べましたのでご紹介します。

 アイグナーは1945年1月18日ヒューストン生まれ、17歳でサンディエゴに移っています。彼は独学で(!)ピアノ、ギター、ベース、ドラム、フリューゲルホルン、サックス、フルートなどをマスターしたそうで、1965年に”Benard Ito”という名義でディジー・ガレスピーの「コン・アルマ」を歌い、しばらくの間ガレスピーのコンサートでシンガーを務めていたそうです。その後、ラロ・シフリンとも仕事を始め、映画『ダーティハリー』のサウンドトラックで「No More Lies,Girl」という曲を、やはり”Benard Ito”の名義で歌っています(Itoというのは日本の姓からきていると思われるのですが、その理由はわかりませんでした、、)

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 この「エヴリシング・マスト・チェンジ(Everything Must Change)」をクインシー・ジョーンズが取り上げることになったのは、アイグナーが当時A&Mレコードの専属ソングライターだったからのようです。A&Mハーブ・アルパートが社長を務めるレコード会社で、クインシーは1969年からA&Mに在籍していたんですね。それで、1972年頃にアイグナーの「エヴリシング・マスト・チェンジ(Everything Must Change)」のデモを聞く機会があったクインシーが曲だけでなく、アイグナーのヴォーカルも気に入ったのでしょう、自身のアルバムに採用することになったのです。

 ちなみにこの曲のデモを作ったのが1972年頃だとすると、彼はまだ27歳くらいだったわけで、その年齢でよくぞこれほどまでに”達観”した曲を書けたものだと驚くばかりです。きっと若い頃から、内省的で今で言うスピリチュアルな精神性を持った人だったのかもしれません。

 

 さて、「エヴリシング・マスト・チェンジ(Everything Must Change)」と共にべナード・アイグナーの”重要な仕事”である名作が翌年、1975年にリリースされています。

 それがマリーナ・ショウの『フー・イズ・ジス・ビッチ、エニウェイ?(Who Is This Bitch, Anyway?)』。このアルバムをプロデュースしたのが、アイグナーなんですね。海外だけではなく、日本でも、松任谷正隆をはじめとして数々の著名なミュージシャンたちが”バイブル”とし、多くのアーティスト、DJたちがこぞって絶賛しているアルバムです。

 ロバータ・フラックのオリジナルよりも人気が高い(?)「Feelin' Making Love」

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アイグナーは鍵盤とフリューゲル・ホルン、アレンジも担当したほか、「Davy」「You Been Away Too Long」「Loving You Was Like A Party」「A Prelude For Rose Marie」の4曲を書いていますので興味のある方はぜひチェックしてみてください。

 と言うことで、アイグナーはシンガー・ソングライターとして、そしてプロデューサーとして”稀代の名作”を一つずつ世に残していった人なんですね。

 そして、彼について最も興味深いのは、アーティストとしての唯一のアルバムを日本のレコード会社が作っていることです。

 そのアルバム『LITTLE DREAMER』は1978年にアルファ・レコードから発売されています。アルファ・レコードの社長、村井邦彦吉田美奈子のカバーが収録されていたアルバム「MINAKO」のプロデューサーでした。このアルバムをアイグナーと共同をプロデュースした宮住俊介氏のブログによると、村井が彼の声と作品に惚れて契約し、日本で制作してアメリカで売る、という野望があったのだそうです。

 アルバムは全曲アイグナーの作品で、主に東京で録音され、渡辺香津美(g)、村上ポンタ秀一(ds)、深町純(syn)、浜口茂外也(kyd)らが参加。他にジェイムス・ギャドソン(ds)、ブルー・ミッチェル(tr)彼の弟のキース・アイグナーがベースを演奏しています。

 アルバム最後には自らあらためて歌い直した「エヴリシング・マスト・チェンジ」も収録されていて、精神性の高さが感じられる彼の音楽性や歌手としての魅力を十分に堪能できる素晴らしい作品ですが、残念なことに現在までCD化もされず、サブスクでも聴くことはできません。こういう商売っけこそないが耳に心地よく、音楽性と精神性の高い作品は1978年当時より、今の時代の方が聴かれるんじゃないかと個人的には思うのですが、、。しかし、YouTubeにアップされていましたので、ぜひ聴いてみてください。

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プロフィール
id:KatsumiHoriid:KatsumiHori

堀 克巳 音楽プロデューサー/作詞家
ソニー・ミュージックに15年勤務後、VOZ Records(ボズレコード)というレーベルを立ち上げ20年以上になります。
X    https:// X.com/horikatsumi

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