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本稿では『FGO』、オルガマリークエスト4(ステラマリー戦)の結末で示された、とある衝撃的な事象について取り上げます。以後内容を明かしますので各自ご対応ください。
FGO:空にあいた穴の謎(本当の地球はどこにあるのか)
筆者-Townmemory 初稿-2025年10月4日
[奏章4およびオルガマリークエスト4までの情報を元にしています]
オルガマリークエスト4のラストで、空がガラスみたいにぱりっと割れ、その向こうには虚無しかなかった(宇宙がなかった)という事象がありました。
それについて、「え?」とか「ほぉ」とか「は?」とか「ムムム」とか、まあいろんな想念が去来したのですが、私はたまたま同時期にミステリ関連の書物を読んでおり、
「あ、これを『後期クイーン的問題』で説明したら、他のことも説明できて面白い感じになりそう」
という気づきを得ました。以下それについて語ります。
「後期クイーン的問題」(後期クイーン問題)という問題意識が、ミステリ業界にはあります。法月綸太郎先生が初めて指摘して、笠井潔先生が賛同して、ここ30年の国内ミステリにおける重要なトピックになりました。
(以下お二方は敬称略します。法月綸太郎を呼び捨てにするのはすごく抵抗がありますが)
後期クイーン的問題とは何なのか。私が理解した範囲内でつづめて言うと、
「作品の中に、必要な証拠が過不足なくそろっていて、そのすべての証拠を総合すると、ひとつの真相を指し示すことができ、別の真相などは決して指し示さない、そういう破綻のない完結した探偵小説世界を作ろうとしてみたが、そんなことは不可能だとわかった」
法月綸太郎がエラリー・クイーンを研究していたら突き当たった問題なので後期クイーン的問題と呼ばれます。「後期」という言葉には、正直あんまり意味はないと思います。
エラリー・クイーンは、「必要な証拠が過不足なくそろっていて、そのすべての証拠を総合すると、ひとつの真相を指し示すことができ、別の真相などは決して指し示さない」探偵小説を書こうとしました。それ以外の多くの作家もそこを目指してきました。
その意識のあらわれが、クイーンの初期作品に見られる「読者への挑戦」であったりするわけです。
読者への挑戦
(略)
技術的には、かくされた棒杭などはひとつもない。ジョン・マーコの死の物語のこの段階において、事実はすべて出つくしている。読者は、その事実をよせ集めて、ただひとりしかない、唯一可能の犯人を指さすことが、論理的にできるはずである。エラリー・クイーン
エラリー・クイーン『スペイン岬の謎』東京創元社 井上勇訳
読者への挑戦
(略)
いまや、物語のすべての細目は、諸君の眼前にある。手がかりはふんだんにある、私は、そのことを諸君に保証する。適当な順序に配列し、そこから出る必然の推理をたぐれば、それらの手がかりは、ひとりの、可能な、唯一の犯人を、絶対にまちがいなく指向している。
《掟》を遵守するのは、私にとっては、面目の問題である。読者にすべての手がかりを提供し 、なにひとつ秘匿することがなく 、フェアにプレイする掟 。私は、すべての手がかりは、いまや、諸君の手中にある、という。私はさらにくりかえしていう、それらの手がかりは、不可避的に、犯人の型を決定するものであることを。
(略)エラリー・クイーン
エラリー・クイーン『アメリカ銃の謎』東京創元社 井上勇訳(傍点は原文ママ)
探偵小説にはパズル要素がありますから、「ここまでがパズルの出題で、ここからは解答です。ここまでの情報で、パズルは解けますよ」ということを宣言するわけですね。
パズルは条件内で解けなければならないし、答えは原則一つでなければなりません。クイーンは、そして多くの探偵小説家は、そこを目指してきました。それは言い換えれば、閉じた空間のなかに、矛盾や過不足のない、ひとつの完結した世界を作ろうというようなことでした。
法月綸太郎もそれを目指した探偵小説作家のひとりです。が、かれは、数学において「ゲーデル問題」(ゲーデルの不完全性定理)というのがあることを知ります。
私は数学が苦手なので、正直手に負えないのですが(だから多少おかしくても見逃してくださいよ)、私がギリ理解した範囲でいうと「ゲーデルの不完全性定理」とは、
「《数学》という、ひとつの閉じた世界があると仮定しよう。この世界においては、すべてのものごとが必ず数学によって証明もしくは反証できるにちがいない。でも、確かめてみたら、そんなことは無理だとわかった」
具体的には、「数学という閉じた系の中の情報だけでは証明できない命題を見つけてしまった」。
これを証明するためには数学の「外側」にあるものを持ち込まないとダメだ、ということがわかった。
これを見た法月綸太郎は、「これって探偵小説みたいじゃないか」「クイーンの作品が、年を追うごとに破綻スレスレになっていくのを見るようじゃないか」と思われたのですね。
「数学という閉じた世界が宿命的に《不完全》であるしかないのなら、探偵小説の世界もまたそうなんじゃないか」
「作品の中に、完全性をそなえた閉じた世界を作るなんて不可能なんじゃないか」
そこでまず疑問が呈されたのは例の「読者への挑戦」です。
エラリー・クイーンの探偵小説は、探偵エラリーが挑戦して解決した事件を、エラリー自身が文章にまとめて出版したという建て付けになっています。
(だから、探偵の名前がエラリー・クイーン、本の著者名もエラリー・クイーン)
前掲の引用の通り、読者への挑戦は、
「手がかりはすべて示された。これで解けるはずである」
と宣言しており、エラリー・クイーンの署名が入っている。
が。
「手がかりはすべて示された」という保証など、探偵エラリーにはできないはずである。
なぜなら、探偵エラリーがほんとうに全ての手がかりを見つけたかどうかは、探偵エラリーにはわからないからだ。
探偵エラリーが得意げに披露する真相とは、探偵エラリーが見つけることのできた手がかりの範囲内において到達できる真相にすぎない。
もし、別の真相を指し示す未知の手がかりが存在し、それを探偵エラリーが発見できなかったとすれば、それは即座に、探偵エラリーの見つけた真相は間違いだったということになる。
そして、未知の手がかりが決して存在しないことを、探偵エラリーは知ることが出来ない。なぜなら、探偵エラリーは作中の人物であり、作中の人物には、どこまでが作中なのかがわからないからだ。
クイーンの小説に書かれた事件が、もし現実に起こった事件だったとしたらどうだろう。それはすなわち、作品の周辺にも世界があるということだ。
作品の周辺とは、探偵クイーンが足を踏み入れていないすべての空間のことを指す。
そこに探偵クイーンは足を踏み入れていないのだから、そこにあるかもしれない情報を探偵クイーンは手に入れることができない。そこにあるかもしれない情報を手に入れていないし、そこに情報がないことを確かめてもいない探偵エラリーは、なぜ「手がかりはすべて示された」などと言えるのか。
別の言い方をするなら、「手がかりはすべて示された」と保証する能力のある、エラリー・クイーンと書かれた署名における、「エラリー・クイーン」とは誰なのか。
それは、探偵エラリーではないことはすでに示した通り。
そして、「探偵エラリーが経験した事件を手記にまとめた著者エラリー」でもない。なぜなら、入手できる情報が探偵エラリーと同じだから。同一人物だからです。
「読者への挑戦」において、手がかりはすべて示されたと保証できる署名者エラリー・クイーンの正体とは、
「この事件を実際には経験しておらず、この本に書かれたすべてのことを自分の頭からひねりだして創作した、作者エラリー・クイーン」
でしかありえません。
なぜなら、作者エラリー・クイーンは、この作品内世界が創作された架空のものであることを知っています。
言い換えれば、「この作品の周りに周辺空間というものは存在しない」ということを知っている/決められる立場です。
そして、未知の手がかりは周辺空間に存在するものなので、彼は、
「未知の手がかりというものは一切落ちていない」
ということを知っている/決められる立場だからです。
ようは、この世界は創作されたものであり、この世界は書かれた範囲内しかなく、虚無の中にぽっかり浮かんだものであることを知ることのできるメタ視点にしか、「手がかりはすべて示された」と保証することはできない。
つまるところ、作者からの「手がかりはこれで全部ですよ」というメタ的な保証がないかぎり、
「必要な証拠が過不足なくそろっていて、そのすべての証拠を総合すると、ひとつの真相を指し示すことができ、別の真相などは決して指し示さない」
という作品世界など成立しようがない。
これは「数学の外側から何か持ってこないと数学って完全にならないよね」というゲーデル問題とそっくりだ、と法月綸太郎は思ったのだと思います。
さて、「後期クイーン的問題」にはもうひとつ重要なトピックがあって、これも同様の結論を導きます。
クイーンの作品は、書き継がれるにつれ、奇妙な方向にややこしくなっていきます。具体的には、
「真犯人が、ニセの手がかりとニセの真相とニセの犯人を用意し、それを探偵エラリーに暴かせる。それは、ニセ犯人をエラリーに断罪させることで、ニセ犯人を破滅させるためだった」
といった方向性でした。じっさい探偵エラリーは、いったんニセ犯人を犯人として指名してしまい、その後、「いかん、あれは間違ってた」と慌てることになります。
これは言い換えれば、
「探偵エラリーは、《この事件はここからここまでの輪っかの範囲内で起こっている》と思い込んだが、実際は、輪っかの外側に外周部分があり、真相はその外周にあった」
ということです。
じゃあ、探偵エラリーがこれまで解決してきた事件も、同様だったかもしれないではないか。
これまで探偵エラリーが告発してきた犯人は、実はメタ真犯人によって陥れられた被害者かもしれない。そうでないことを探偵エラリーは知ることができない。
そうでないことを探偵エラリーは知りようがないのだから(実際その方法でだまされているのだから)、これまで解決してきた事件は、このことひとつで、すべて真実性があやしいものになってしまう。
そして、ここでいう「真犯人」もまた、メタ真犯人に陥れられたニセ犯人かもしれないのです。そのメタ真犯人も、メタメタ真犯人に陥れられているのかもしれず……。けっきょく、「閉じた探偵小説世界」は、閉じたような気がしていたが、実は無限に外周を想定できる以上、真相を固定することは不可能なのです。それをクイーンは自らの作品であきらかにしてしまった。
そうやって、メタメタメタ真犯人、メタメタメタメタ真犯人……と話をたぐっていくと、最終的にたどりつくのはやっぱり作者。探偵を操って、自分に都合のいい真相を導いているのは究極のメタレベルにいる作者であるし、「メタメタ真犯人なんて存在しないですよ、この本の最後に書かれているのが本当の真相ですよ」と言えるのも作者しかない。
結局のところ、「必要な証拠が過不足なくそろっていて、そのすべての証拠を総合すると、ひとつの真相を指し示すことができ、別の真相などは決して指し示さない」という状態を作るためには、この世界すべてを俯瞰し、「この世界はこれだけで全てです」ということを認知できるメタ視点が絶対的に必要だよね、それなしには、探偵小説の世界は完結性をもちえないよね。
この世界を外部から保証する神か作者の視点がないかぎり、探偵小説の世界が完結性を持ち得ないとするのなら、それってつまり、探偵小説の世界はそれ自体では完結しえないってことだよね。
探偵小説の作者たちは、作品内の世界がそれ自体で完結性を持つという世界をつくりあげようとして、これまで努力を重ねてきたわけだけど、それって構造的に不可能だよねってことが明らかになってしまいましたね、どうしましょう……というのが、「後期クイーン的問題」ということになります。少なくとも私はそういう理解です。
(このへんで『うみねこのなく頃に』の読者の皆さんは、ハタと、「うみねこって後期クイーン的問題が示唆するさまざまな現象を読者に実体験させる物語だったのかも」と思いついていただいても、私としてはさしつかえありません)
余談ですが、後期クイーン的問題のことを、「後期のクイーン作品には問題が(瑕疵が)ある」という意味として捉えている人がたまにいるようです。そうではなくて、
「クイーンの作品を読み込んでいくと、探偵小説が不可避的に持つことになる限界につきあたる。その限界に対して、我々作者はどう対応するのか」
という、「実作者側に」つきつけられた問題だと思います。余談ここまで。
さて、奈須きのこさんはこの話を絶対に知っているわけです。
奈須きのこさんは探偵小説の熱心な読者です(とご自分で言っています)。ことに「新本格」と呼ばれる世代の探偵小説に造詣が深い。
そして、新本格以降、さまざまな探偵小説において、「後期クイーン的問題にどう対応するのか」ということがさかんに試みられてきました。
それを読んできた奈須きのこさんが後期クイーン的問題を知らないなんてことはありえない。
さて、ここからは私の推測。
後期クイーン問題を知り、「探偵小説は、この世界はこれで全てですと保証するメタ視点なしには成立しえないジャンルである」ということを認知した奈須きのこさんは、
「これって、伝奇小説においても同じことが言えるとしたら、どうなる?」
ということを考えたはずだ、と私は考えるのです。
自分の書いているような伝奇小説においても、世界を保証するメタ視点がなければ、伝奇世界としての完結性を持ち得ないんじゃないかと考えた(だろう)奈須きのこさんは、
「根源というメタ視点があって、それで初めて世界は実在しうる。もしそれがなければ世界は存在しない」
という設定を思いつき、これを自作の世界観の中心にすえた。
根源はメタレベルに位置する作者だし、魔法使いは作者にアクセスできるメタ探偵だ、というような見立ては可能だろう。ちなみに法月綸太郎が後期クイーン問題を論じ始めたのが95年で、『魔法使いの夜』が書かれたのが96年なのでめちゃめちゃに敏感だ。
そういう設定を中心に置いた上で、時は流れて『FGO』では、
「《閉じた小さな世界を作って、その中を完結的にしよう》と画策する中ボスのところに、俯瞰視点をもつ主人公がやってくる」
ということがくりかえし描かれる。
特異点のいくつかがそうだし、異聞帯のほぼ全てがそれだ。
(オシリスの砂が画策したこともそういえるかもしれない)
このあたりは、「後期クイーン的問題と伝奇」というテーマが頭の中にしみこんでいる奈須さんから自然に出てきたものと解してもかまわないんじゃないか。
『FGO』には、カルデアスという、地球の素敵なミニチュアがある。その中には、自然があって、文明があって、人間がいるそうです。つまり閉じた完結的な世界だ。
そしてそれを一人の人物が作った。
「メタレベルの作者が、下位の閉鎖的完結的世界をつくりだし、世界とその外側との境界線がはっきりしている」
これは後期クイーン的問題が(ふんわり)示した「破綻なく完結する世界」の成立条件そのものだ。
オルガマリークエスト4のストーリー末尾において、空で大爆発が起きました。その際、星空がひび割れ、めくれたように穴が空き、その向こうにはまったく何もないという事象が観測されました。
(ネモ)
ソラが……割れてる……?(ダ・ヴィンチ)
いや。プラズマ球の爆発で、
空想樹の天幕に穴が空いたんだ。でも―――(ゴルドルフ)
天幕は地球を覆っていた壁であり、
青空は天幕に表示された作り物の映像だった……。それはとうに知っている。
その天幕が開いたのなら本当の宇宙が見える……はず、なのだが……
(選択肢)
宇宙が、無い
(選択肢)
地球の外には、何も無い―――
『Fate/Grand Order』オルガマリークエスト4
空に穴があいた。空の天幕の向こうには、あるはずの宇宙が無かった。
これはいったいどういうことか、について、作中に解はありません(現状では)。
私は最初、これを、
「我々が地球だと思っていた場所は、実はカルデアスだった」
という真相解明かなと認識しました。
まあそんな感じでいいかなとは思ってはいたんですが、「でもちょっと違うような」という感覚もありました。
そういう感覚を持っていたところに、たまたま後期クイーン問題のことを勉強しなおして、ちょっと認識が変わりました。ということでここからが本論です。
後期クイーン問題は、
「探偵小説世界はメタ視点の保証なしに完結性をもつことはない」
ということを示唆します。
これは、探偵小説世界のみならず、すべての物語世界においてもいえるのではあるまいか。
おそらく奈須きのこさんはそう考え、自分が主宰する伝奇世界に、この仕掛けを持ち込みました(推定)。この稿の前段までで、そういったことを(私は)語りました。
で、さらなる推定となりますが、奈須きのこさんはさらに思考を進めて、このようなことも考えたかもしれない。
これは、すべての物語世界のみならず、我々が住んでいるこの現実世界においてもいえるのではあるまいか。
ぐだや私たちは、地球のことを「矛盾や過不足がない、完結したひとつの世界」だと思っています。
でも、今ここに、
「矛盾や過不足なく完結した世界を成立させるには、メタレベルからの保証が必要だ」
という条件が存在するならば?
なら、地球が完結したひとつの世界であるためには、メタ世界からそれを保証するメタ視点が必要となるのではないか。
今、作中に「カルデアス」というミニチュア地球があります。
カルデアスには地球とまったく同等の環境と文明と人類があって、完結したひとつの世界として成立している。
カルデアスは、オリジナルの地球というメタ視点があって初めて、完結性を持ちうるものとする。
(だって、カルデアスは地球上の個人が製造したものですからね。いわば、作者が作品世界を見下ろしているようなもの)
これをさらに、以下のように言い換えていく。
・地球人は、下位世界としてカルデアスを作った。
・カルデアスはひとつの完結した世界であり、地球との置換が可能なほど、地球同等である。
・ならば、カルデアス人類は、下位世界として、下位カルデアスを作ることが可能なはずである。
・下位カルデアスは、カルデアスや地球と同等であるはずだから、さらに下位の、下々位カルデアスを作ることができるはずである。
このように、地球の下には、無限に下位カルデアスが連なっているはずだと想定できます。
そして、
・地球は完結性のある世界である。
・完結性のある世界を成立させるためには、メタ(上位)世界の保証がないといけない。
という仮定がいまここにありますから、
・地球が完結性のある世界だとしたら、それはメタ地球からの保証があるからだ。
つまり、
「我々がオリジナルの地球だと思っているものは、実はメタ地球から見たカルデアスなのではないか」
と考えることができます。
このメタ地球についても、下位世界の例と同じようなことがいえる。メタ地球は、メタメタ地球から見たカルデアスかもしれない。
メタメタ地球は、メタメタメタ地球から見たカルデアスかもしれない。
メタメタメタ地球はメタメタメタメタ地球から見たカルデアス。
そういうのが無限に続くので、想定可能なすべての地球はカルデアスであることになる。
オリジナル地球は、メタメタメタのつながりのいちばんメタ部分にある。
ただし、いちばんメタ部分のオリジナル地球は、メタオリジナル地球の産物なので、即座にオリジナル地球ではなくなる。
このメタメタメタメタメタ地球の連なりですが。
後期クイーン問題問題における、犯人を陥れるメタ犯人、メタ犯人を陥れるメタメタ犯人、メタメタ犯人を陥れるメタメタメタ犯人……というように際限なく外側にふくらんでいって、真相の位置(真犯人の位置)が無限に後退していってしまう、例のあの構造と同一です。
後期クイーン問題を考えるときに、真相の位置が無限に後退してしまうのと同様に、オリジナルの地球の位置は無限に後退していってしまう。
とまあ、このような感じで、地球とカルデアスの関係は、無限マトリョーシカのようなものとして理解が可能そうだ。
(注:あとで別のモデルを提唱します)

このモデルを想定する場合、地球というのは無限の入れ子構造になっていて、そこに連なっている地球のほとんど全部がカルデアスなのである。
カルデアスの外側には宇宙はないので(たぶん)、無限に連なるほとんどの地球の外に、宇宙はないことになる。
とまあ、ひとまずこのように考えると、地球の外に宇宙がなかったという事実は、そんなに衝撃的ではなくなります。だって、ほとんどの地球に宇宙はないんだから。
(そしてこの部分もまた、「世界の周囲に周辺空間などないことを、メタ世界からの視点で保証することにより初めて成り立つ探偵小説世界」という話と奇妙に一致する)
ただしそのかわり、私たちが守りたいと思っている地球に、「特権性は一切ない」ことになります。だって無限につらなる地球コピーのひとつにすぎないのですからね。
そうなると、当然のようにひとつ疑問が出てきます。
「本当のオリジナルの地球はどこにあるの?」
通常で考えれば、マトリョーシカの一番外側に、オリジナル地球があるはずです。
でも、このモデルの場合、無限にメタ地球を想定可能なので、マトリョーシカの一番外側にあるはずのオリジナル地球はどんどん外側に向けて遠ざかっていき、果てがない。
このモデルだと、オリジナル地球は「絶対に捉えることのできない仮想上の存在」だ。
コピー地球(カルデアス、下位地球)はここに無限にあるのに、オリジナル地球は誰も見たことのないものとなる。だって、オリジナル地球は、発生した瞬間にオリジナルであるという属性を失って、コピー地球になるのですから。
これだと考えようによっては、「オリジナル地球など存在しえない」というのとほぼ同じ。
本当にそれでいいのか? 宇宙はオリジナル地球の周囲にしか存在しないから、「宇宙など存在しない」というのと同じ意味になっちまう。
そこで、こういうふうに考え直したいと思います。
「カルデアスが地球を生成したのだ」と。
話の流れをものすごく雑に要約して、もっぺんおさらいしますが、
・地球が下位地球としてカルデアスを作った。
・てことは地球はメタ地球が作ったカルデアスのはずだ。
・だからメタ地球が存在する。
これをさらに恣意的にシュリンクすると、
・カルデアスを作れたってことは、メタ地球があるってことだ。
これって、もはや、こういうことでしょう。
「メタ地球を生成したのは地球だ」
メタ地球が地球を生成したのではなく、地球がメタ地球を生成したのである。話の流れからいって、そうでしょう。
だって地球がカルデアスを作らなかったら、地球がメタ地球のカルデアスである可能性がそもそも発生しないんですもの。「メタ地球が地球を作ったのだが、地球を作った者という設定があるメタ地球なる存在は地球が生成した」のです。
(まったくの余談だけど、これ、神が人間を作ったのではなく、人間が神を作ったのだ、みたいな話で個人的にエモい)
こう考える場合、オリジナル地球の位置は、マトリョーシカの一番外側でなくてもよくなるのです。
オリジナル地球は、無限マトリョーシカの「どこかの位置」にある。一つずつたぐっていけば、どこかで引き当てられる。たどり着こうとすると永久に遠ざかるような始末ではなくなる。
宇宙の位置も、無限マトリョーシカのどこかの位置に必ずある。必ずあるので、「宇宙なんてもはやないのと同然になっちまった」という話は無効となる。
しかしそうなると、以下のような疑問が出てくる。
「地球がカルデアスを作り、地球がメタ地球を生成したのなら、カルデアスとメタ地球の違いはいったいどこにあるのか」
地球がカルデアスを作り、カルデアスは地球上にあるので、カルデアスは下位地球である。これは(ひとまず)いいでしょう。でもその次は?
地球がメタ地球を生成した。地球はメタ地球上にある。
でも、地球がメタ地球を生成したんだからメタ地球は下位地球なんじゃないの?
そして、
地球がカルデアスを作った。でも、地球が作ったメタ地球が上位地球であるのなら、カルデアスだって上位地球の資格があるんじゃないの?
このように考えていくと、カルデアスとメタ地球の差はなくなってしまう。もはや同等のものとしか思えない。
これ、「地球を作ったメタ地球は地球が作った」というすごいパラドックスなんです。そしてパラドックスはTYPE-MOON世界観の独自性の源泉だ。なにしろ「マトに当たってから槍を投げる」世界なんですからね。
このパラドックスな事態が成立してしまうなら、自動的にこうなるのです。
「カルデアスを作った地球はカルデアスが作った」
この話の着地点は、
「カルデアスが地球上にあるからといって、カルデアスが下位地球だとはかぎらない」
ということだ。
カルデアスは地球上にあるが、地球を生成したのはカルデアスかもしれないのだ。
ここにおいて、カルデアスと地球とメタ地球のあいだに、上下の差は見いだされないという新たなモデルが発生しました。
これまでは、カルデアスと地球とメタ地球は、マトリョーシカモデルで説明できました。でもこの三者に上下がないのなら、もはやマトリョーシカではなくなります。
例えるならば、カルデアスと地球とメタ地球が一本の串にささってる串団子みたいな構造となる。

そして、カルデアスがカルデアスを作り、メタ地球がメタメタ地球を生成することは以前と同様なので、この串団子は無限の長さがあり、今も無限に長さを伸ばし続けている。
さて、作中において、カルデアスと地球は置換可能だということが示されています。
置換魔術というのがあって、構成と情報量が同じものは入れ替えが可能だそうです。これをもって、カルデアスと地球の地表が入れ替えられたことになっています。
それはそれでいいんですが、入れ替え可能なのは表面だけではないんじゃない?
地球とカルデアスとメタ地球はおそらく構成と情報量が同じだ。この三者は相互にまるごと入れ替えが可能なはずだし、もし入れ替わっていたとしてもこの三者およびそこに住んでいる人類は、入れ替わったことがわからない。
「構成と情報量が同じものは入れ替えが可能」ってことは、質量が無視できるということなので(でないと地表が入れ替えられない)、ますます、「この三者は同じ大きさのお団子」ってことになるわけですがそれだけではない。
カルデアスのカルデアスと、カルデアスと、地球と、メタ地球と、メタメタ地球が同値であり常に入れ替えが可能ということは、
地球の無限串団子の中で、「オリジナル地球」の位置は、常に移動が可能だということになる。
オリジナル地球の位置は一定ではない。どこかの位置に固定されているわけではなく、串団子の無限直線のなかで、いったりきたりできる。
ここで、こういう仮定を導入したらどうなるでしょう。
「表面やそこに住む人間などはそのままに、《オリジナル地球である》という属性だけを置換可能であったら?」
これは、中身をごっそり置換するよりも簡単そうな魔術だ。だってラベルを貼り替えるだけですものね。
ここにゴルドルフくんとコピーゴルドルフくんがいる。二人は組成も情報量もまったく同じなので置換魔術で入れ替えが可能。
でも見分けがつかないから、おでこに「元祖」「コピー」っていうシールを貼って見分けている。
このシールを最大級の勢いでベリッと剥がして、コピーのほうに「元祖」、オリジナルのほうに「コピー」のシールを貼りなおす。それで何が困るかというと、何も困らない。ゴルドルフくんとコピーゴルドルフくんに差はないので、コピーゴルドルフくんを今日からオリジナルとして扱ってもカルデアにはいっさい支障がでない。せいぜい、「来月からの給料はどっちに支払われるのかね……」と本人がぼやく程度。
そんな感じで、《オリジナル地球》というシールだけを、地球串団子のなかで自由に貼り替えられるとしよう。そうすると、ものすごく変わることがひとつだけある。
「宇宙はオリジナル地球の周りにしかない」という条件があるからだ。
オリジナル地球という属性を、無限串団子のどこにでも貼り替え可能なら、それは「宇宙が存在する位置」を、地球の連なりの中から自由に決められるということだ。
(ゴルドルフくんとコピーゴルドルフAくんとコピーゴルドルフBくんのうち、誰に給料を払うかを自由に決められるようなもの)
そして、宇宙人は宇宙からやってくる。
オルガマリークエスト4の冒頭で、ぐだの夢枕に立ったシャーロック・ホームズは、こんなことを述べました。
(解明者)
そう。宇宙人は実在する。
これはもう確定事項だ。残念ながらね。
『Fate/Grand Order』オルガマリークエスト4
これを「本当に地球外生命体は飛来しており、地球白紙化は彼らが起こした」と理解する場合。
「オリジナル地球という属性を、地球串団子のどこにでも貼り替え可能」というのは、とりもなおさず、「どの地球に宇宙人を飛来させ、地球白紙化を起こさせるのかを自由に決められる」ということである。
例えばですよ……。
宇宙人を捕まえたので、地球人が、宇宙人を人体実験する。
復讐のために、宇宙人の軍勢が、地球を滅ぼしにやってくる。
そこでヒョイと、「オリジナル地球の属性」を、カルデアスに移す。
すると宇宙人の軍勢はカルデアスにやってきて、カルデアスを滅ぼす。
こんなことができるので、たいへん便利なのです。
こんな事例がもしほんとに起こったとしたら、地球人の罪に対して、罰はカルデアスに与えられたこととなるので、カルデアス人類は激怒のあまり、ブルーブックを旗印にして、トラオム事変を起こしたくなるよね。
というのが、「空にあいた穴」の問題に対して、私が思ったことです。以上です。
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特集記事です。
●FGO:空にあいた穴の謎(本当の地球はどこにあるのか)
投稿日:2025年10月4日(オルガマリークエスト4までの情報に基づく)
オルガマリークエスト4の末尾に出てきた例の「穴」。あれなに? についての記事です。
ミステリ業界の重要トピック「後期クイーン的問題」を使って、なぜ地球の空に穴があき、その先に何もないのかを考えます。
●FGO:Dr.ロマン殺しの選択/終局特異点アバン読解
投稿日:2025年5月8日(奏章4までの情報に基づく)
終局特異点冒頭のマリスビリーとソロモンの密談。そのまま読むと消化できない部分を消化してみました。
この会話の中に「歴史改変を行った形跡」がある。
FGOの冬木聖杯は、stay nightのそれとは機能が異なる可能性がある。
マリスビリーとぐだは、ロマニを通じて共感しあえるはずという話。
ロマニを殺すか生かすかという選択を迫られる話など。
●FGO:レイシフトとは何か(現状のまとめ)
投稿日:2025年5月24日
投稿日の段階での、「レイシフトって、多分こういうもの」という考えです。
他の記事に書いた内容も再検討のうえ書き直しました。
レイシフトと英霊召喚とカルデアス製造はまったく同じ技術なのでは、という話から、「この技術で死の克服が可能なのでは?」という話へ。
●FGO:カリオストロとシトナイとカルデアの者に関する着想
投稿日:2025年2月23日(奏章3までの情報に基づく)
話題三つ。
・カリオストロ伯爵は「カルデアを誘導」する役目を果たしていたのか?
・シトナイは何の目的で誰に召喚されたのか
・カルデアの者(ロマニもどき)の中身は本当にゲーティアなのか
の三本です。
●FGO:アルトリアはなぜ特異点Fで踏み止まっているのか
投稿日:2025年2月11日
特異点Fで発生していた物語ってこういう全体像じゃない? というお話。
「アルトリアがとある状況に陥っていたとしたら、すべてが一つに繋がらないか?」
特異点Fをプロデュースしたのは誰か。アルトリアオルタは何を求めていたのか。キャスター・クーフーリンの目的は何か。
人理の防人。キャスニキの特殊な思惑。二部ラストで特異点Fにどう戻るかについて。
その他、グリムのついたウソについて。
●FGO:ブルーブックと地球白紙化に関するわりと壮大な話(置換魔術4)
投稿日:2025年2月1日
投稿日までの情報をもとに、「FGOの物語の裏側では何が起こっていそうか」を大づかみ再構成してみました。
ブルーブックの見たものを検討していったら、もう、話が広がる広がる……。
エリア51は魔法の箱みたいになっているし、マリスビリーとオルガマリーは陰でバトルをしているし、要約は不可能なので読んでご確認下さい。
●FGO:マリスビリーの目的と事象収納(置換魔術その3)
投稿日:2024年12月26日
現状の情報から推測するマリスビリーの計画について。
事象収納をつきつめると根源に到達できる話。
仮にこの通りだとすると、クライマックスの物語はどういうものになっていくだろうという想像。私だったらこの話、こう書くけど。
■「FGO」シリーズ■
『Fate/Grand Order』(FGO)に関する記事です。
●FGO:カリオストロとシトナイとカルデアの者に関する着想
投稿日:2025年2月23日(奏章3までの情報に基づく)
話題三つ。
・カリオストロ伯爵は「カルデアを誘導」する役目を果たしていたのか?
・シトナイは何の目的で誰に召喚されたのか
・カルデアの者(ロマニもどき)の中身は本当にゲーティアなのか
の三本です。
●FGO:アルトリアはなぜ特異点Fで踏み止まっているのか
投稿日:2025年2月11日
特異点Fで発生していた物語ってこういう全体像じゃない? というお話。
「アルトリアがとある状況に陥っていたとしたら、すべてが一つに繋がらないか?」
特異点Fをプロデュースしたのは誰か。アルトリアオルタは何を求めていたのか。キャスター・クーフーリンの目的は何か。
人理の防人。キャスニキの特殊な思惑。二部ラストで特異点Fにどう戻るかについて。
その他、グリムのついたウソについて。
●[FGO]物語の力(1)サーヴァントユニヴァースって何やねん
投稿日:2024年10月2日
FGOには蒼輝銀河サーヴァントユニヴァースという別世界があり、そこから正体不明のサーヴァントが来訪しています。
この世界の正体って、ひょっとしてこういうことでは?
こういう成り立ち方になっていたら私は腑に落ちるけど、というお話。
聖闘士星矢とドラゴンボールを例として。
●魔術理論“世界卵”はどういう理論なのか
投稿日:2023年7月15日
固有結界を実現している魔術理論“世界卵”というものがあるとされています。
それはいったいどういう理論なのか、どうして内と外の入れ替えが可能なのかについて、森博嗣を例として考えを説明します。
●FGO:置換魔術で置換されうるもの(私たちとは何か)
投稿日:2023年10月15日
「置換魔術」という理論が作中にあります。
この理論でいちばん容易に置換可能なものは「主人公」と「プレイヤー」ではないか。
作中でそれが意図されている場合、なぜこの二者を置換したいのか。
そこから導かれる「私たちとは何か」。
●FGO:続・置換魔術(確率化する私たち)
投稿日:2023年12月24日
前回の「無限残機・無限コンティニュー説」をちょっと修正・別案。
レイシフトとコフィンに関する私の理解(解釈)。
無数の「ぐだスペア」を量子論的重なり状態と解釈することで得られるもの。
なぜぐだはレイシフト適性が100%なのか。
「フレンドのサーヴァントを借りられる」という現象は作中の理屈ではどうなっているのか。
●FGO:マリスビリーの目的と事象収納(置換魔術その3)
投稿日:2024年12月26日
現状の情報から推測するマリスビリーの計画について。
事象収納をつきつめると根源に到達できる話。
仮にこの通りだとすると、クライマックスの物語はどういうものになっていくだろうという想像。私だったらこの話、こう書くけど。
●FGO:ブルーブックと地球白紙化に関するわりと壮大な話(置換魔術4)
投稿日:2025年2月1日
投稿日までの情報をもとに、「FGOの物語の裏側では何が起こっていそうか」を大づかみ再構成してみました。
ブルーブックの見たものを検討していったら、もう、話が広がる広がる……。
エリア51は魔法の箱みたいになっているし、マリスビリーとオルガマリーは陰でバトルをしているし、要約は不可能なので読んでご確認下さい。
●FGO:レイシフトとは何か(現状のまとめ)
投稿日:2025年5月24日
投稿日の段階での、「レイシフトって、多分こういうもの」という考えです。
他の記事に書いた内容も再検討のうえ書き直しました。
レイシフトと英霊召喚とカルデアス製造はまったく同じ技術なのでは、という話から、「この技術で死の克服が可能なのでは?」という話へ。
●FGO:Dr.ロマン殺しの選択/終局特異点アバン読解
投稿日:2025年5月8日(奏章4までの情報に基づく)
終局特異点冒頭のマリスビリーとソロモンの密談。そのまま読むと消化できない部分を消化してみました。
この会話の中に「歴史改変を行った形跡」がある。
FGOの冬木聖杯は、stay nightのそれとは機能が異なる可能性がある。
マリスビリーとぐだは、ロマニを通じて共感しあえるはずという話。
ロマニを殺すか生かすかという選択を迫られる話など。
●FGO:空にあいた穴の謎(本当の地球はどこにあるのか)
投稿日:2025年10月4日(オルガマリークエスト4までの情報に基づく)
オルガマリークエスト4の末尾に出てきた例の「穴」。あれなに? についての記事です。
ミステリ業界の重要トピック「後期クイーン的問題」を使って、なぜ地球の空に穴があき、その先に何もないのかを考えます。
■「月姫リメイク」シリーズ■
『月姫リメイク』についての考えをまとめた記事です。
こちらも原則として、番号順にお読み下さい。
●月姫リメイク(1)原理血戒と大規定・上
投稿日:2023年5月28日
「原理」と「原理血戒」は違うもの、というところから話がスタートします。
原理血戒は何をどうするものか、それを地上にばらまいた者はだれか。
それは何のためか、というところまで。
●月姫リメイク(2)原理血戒と大規定・下
投稿日:2023年6月3日
ロアがこっそり握っている裏テーマについて。
この物語は何であるのか、それは、「この世界が何であるのかを私が決める」と思っている者たちの闘争の物語である、という話。
奈須きのこさんが敷いた「大規定」とそれをめぐる闘争について。
●月姫リメイク(3)ロアの転生回数とヴローヴに与えた術式
投稿日:2023年6月10日
ロアの「800年/十五世紀」問題と転生回数について現状でのまとめ。
また、ロアがヴローヴに与えた術式は祖の能力を奪う「ではない」んじゃないのという話。その場合想定されるバックグラウンドストーリー。
●月姫リメイク(4)ロアのイデア論・イデアブラッドって何よ
投稿日:2023年6月17日
「原理血戒」はどうしてイデアブラッドって読むの? イデアって何?
ロアの行動は「人間」や「世界」のイデアを見ること、という構図でだいたい説明できるのではないか。
イデアがらみで説明する「フランス事変」の別解。
●月姫リメイク(5)マーリオゥ/ラウレンティス同一人物問題・逆行運河したいロア
投稿日:2023年6月24日
(5)と(6)は前後編です。
『メルブラタイプルミナ』でロアが自白しているパンティオンの機能と計画について。
ラウレンティスは本当に死にたくないのか。
ロアとマーリオゥは何と何を取引する気なのか。
ロアはパンティオンを使って何を見に行くのか。
●月姫リメイク(6)天体の卵の正体・古い宇宙・続マリ/ラウ問題
投稿日:2023年7月1日
(5)からの続き。後編です。
ロアは宇宙誕生の「そのまた前」に行きたいんじゃないか。
前回論じた「地球創生ビッグバン仮説」に基づく「天体の卵」の正体。
タイプルミナの謎の人物「???」とは何者か。
●月姫リメイク(7)すべてが阿良句博士のしわざ・ロアの転生回数再び
投稿日:2023年7月8日
「阿良句博士を、犯人です」。総耶市の状況全部が彼女のプロデュース説。
フランス事変の祖、どれが誰なのか。
諸星大二郎との関連。
ロア転生17回問題の新説。
■TYPE-MOONの「魔法」シリーズ■
TYPE-MOON世界観における六つの「魔法」の解析です。
おおむねこういう方向性でいいだろうと考えています。
!注意! このシリーズは(1)から順番に読まないと意味をなしません。
●TYPE-MOONの「魔法」(1):無の否定の正体
投稿日:2022年02月14日
「第一魔法=根源観測説」です。第一魔法は特殊スキル的なものではなく、「あるかどうかわからなかった根源を、確かにあると確かめた」一連の事象につけられた名だとしています。
「第三魔法は第一魔法より先に存在していた」という条件から始める解き方です。
●TYPE-MOONの「魔法」(2):初期三魔法は循環する
投稿日:2022年02月14日
「初期三魔法循環説」です。第一から第三の魔法は、3→1→2→3→1というふうに循環構造になっていそうだという話です。
また「ユミナとは何者か」「第三魔法の魔法使いの名前は」といった話につながります。
●TYPE-MOONの「魔法」(3):第四魔法はなぜ消失するのか
投稿日:2022年02月21日
「第四魔法とその使い手はなぜ消失したのか」です。第一から第三までの流れからいって、第四魔法はこういう内容だと推定可能なはずだ、というお話。
●TYPE-MOONの「魔法」(4):第五の継承者はなぜ青子なのか
投稿日:2022年03月16日
「歴代の魔法使いが、魔法を獲得するために何をしてきたか」ということを蒼崎青子にあてはめると第五魔法の内容がわかるはずだという試み。第五が橙子に継承されなかった理由もこれなら(私は)納得。
●TYPE-MOONの「魔法」(5):第六法という人類滅亡プログラム
投稿日:2022年03月26日
「第六魔法」と「第六法」と「第六」をいっしょくた同じものと考えるから解けないのでは? と考えました。「ズェピアが挑んで破れたという第六法」とは何かについて論じます。
ほか、「第一~第三魔法」と「第四~第六魔法」の対応関係について。
●TYPE-MOONの「魔法」(6):「第六法」と「第六魔法」という双子
投稿日:2022年03月27日
引き続きズェピアの苦闘のお話。彼が本当に目指していたものとその具体的な計画について。そこから導き出される「第六法」と「第六魔法」の関係について。
●TYPE-MOONの「魔法」(7):蒼崎青子は何を求めてどこへ行くのか
投稿日:2022年04月02日
第五魔法の内容に関して多少の修正。TYPE-MOON世界観と笠井潔「大量死理論」との類似点。そこから展開して久遠寺有珠は何を求めているのか。蒼崎青子はあちこちに出現して、いったい何をしているのか。
●TYPE-MOONとマイケル・ムアコック、そしてジーザス(TYPE-MOONの「魔法」(8))
投稿日:2023年9月17日
『Fate/stay night』と『FGO』における、マイクル・ムアコックの影響を指摘します。
ムアコック作品(特に『この人を見よ』)からの影響を前提とすると、「なぜ第三魔法は第一に先行するのか」がスマートに理解できるのではないか。
また、『Fate/stay night』の結末にはこういうボツ案があったのではないか、など。
■TYPE-MOON関連記事・もくじ■
■うみねこのなく頃に もくじ■
FGO:Dr.ロマン殺しの選択/終局特異点アバン読解
筆者-Townmemory 初稿-2025年6月8日
[奏章4までの情報を元にしています]
最終的には「我々はロマニ・アーキマンを殺す? それとも殺さない?」という話をします。
本稿で取り上げるのは、FGO第一部の終章、終局特異点のアバンタイトルです。ようするに冒頭です。
このシーンは、「2004年の聖杯戦争に勝利したマリスビリーとソロモン」の回想を描いています。マリスビリーは聖杯戦争に勝利して、聖杯に巨万の富を望むことで、カルデアスを完成させるので、重要な会話です。
カルデアスが完成することで、地球白紙化が実現できるようになりますし、その地球白紙化を阻止しようとして、ゲーティアが人理焼却を開始しますから、物語の大部分の起点となってます。
いっぽうソロモンにとっては、ここで「人間になりたい」という願望を表明し、ロマニ・アーキマン(Dr.ロマン)という人に変化し、物語の中心人物となっていきますから、これもターニングポイント。
とても重要なことが描かれていることはひしひしとわかるのですが、読んでも読んでも、なんか腑に落ちないというか、消化しきれない部分があって、ずっと気になってました。
今回はそのことについての個人的なまとめです。当該シーンをあらかじめ読んでおくと、すっごいわかりやすくなると思います。
終局特異点のアバンタイトル。マリスビリーとソロモンが二人っきりで話をしています。
他のサーヴァントを全部始末して、「このあとどうする? いっちょ願望いっとく?」みたいな会話をするシーンです。
(マリスビリー)
聖杯戦争は我々の勝利に終わった。
後は君を令呪で自害させれば、儀式は完成だ。
この大聖杯に七騎のサーヴァントの魂が満ち、
根源に至るための魔術炉心に灯が灯る。
それによって第三魔法はカタチになるだろう。
第三魔法は魂の物質化。
肉体の枷から逃れた人類は、『有限』が生み出す全ての
苦しみから解放され、新たなステージに向かう。
君はそのための犠牲だ。
了解してくれるだろう、キャスター?
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル(下線は引用者)
しんでくれる? と頼まれたソロモンは何の抵抗もなく承諾するのですけど(承諾するのかよ)、その直後、マリスビリーは「冗談だよ」と発言をひるがえします。
(マリスビリー)
―――いや。冗談だ。冗談だよ、キャスター。
すまない、私も浮かれていたようだ。
協力者であり、功労者である君を大聖杯に捧げる気はない。
令呪も使わない。そもそも君には通じない。
私は大聖杯を起動させない 。
第三魔法など、どうでもいい。
(略)
魂の物質化、人類の成長なんて夢物語には、
はじめから付き合う気はなかったのさ。
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル(傍点は原文ママ)
私、このへんの会話にずっとひっかかりを覚えていまして、折に触れて読み返しておりました。
何にひっかかるかというと、
「第三魔法、このままいっとく? やめとく?」
という相談が、重要なこととして扱われている点です。
引用部を要約すると、こうなるでしょう。
・ソロモンを令呪で自害させたら、英霊七騎の魂が大聖杯に貯まることになるね。
・そうしたら第三魔法が実現しちゃうね。
・人類は次のステージに向かうことになるね。
・だからソロモン死んでくれるよね?
・ごめん、ウソウソ。
冬木の聖杯戦争のメインシステムを担っているのは第三魔法を部分的に使用できるユスティーツァなんですから、第三魔法が関係あるか、ないかの二択でいえば、関係はあるのでしょう。
でも、
「冬木の聖杯戦争の儀式が完遂されたら、第三魔法が成就するけど、どうする?」
という議論は、これまでの関連作品の中にはないものです。
英霊の魂が七体ぶん、貯まったら、第三魔法が自動的に成就……しちゃうんですか?
私は、このひっかかりを、
「たとえばマリスビリーは、アインツベルンのコネを使って聖杯戦争の参加資格を手に入れ(衛宮切嗣のように)、コネの代償として、勝利したあかつきには第三魔法の再現を聖杯に願うこと、という条件を与えられていた」
みたいな想像でおぎなっていたのですが、それもだいぶおかしい。
なぜなら、この場面で話されているのは、
「(そういう願望を願ったら、ではなく)七騎のサーヴァントの魂が大聖杯に満ちたら第三魔法が形になる」
という条件付けだからです。
冬木の聖杯戦争にはそもそもそういう設定があるのでしょうか。あるのだったら私は初耳です。
『Fate/Apocrypha』ではそれに近いことが行われていましたけれど、でもあれって、天草四郎の特殊な魔術刻印を使って大聖杯の機能をむりやり曲げる、という手続きが必要だったでしょう。大聖杯がもともとそういう機械なら、天草四郎は危険を冒して大聖杯の中に飛び込まずに済んだはずです。
『Fate/stay night』で説明されていた聖杯戦争の真意は、
「英霊七人ぶんの魂が座に戻るときのエネルギーを利用して世界の外殻に穴を開ける。その穴を通じて根源へ到達する」
というものでした。
FGOのこの場面(引用部)にも、「根源に至る」という表現はありますが、世界の外殻に穴を開けて云々、という説明は一切出てこず、そのかわり、「第三魔法が形になって」という説明があるのです。
なんだろうなあこれは、と思いながら読み返してみたところ、今まで見逃していた重要なポイントを見つけました。
上述の引用部にこうある。
「この大聖杯に七騎のサーヴァントの魂が満ち」
「君を大聖杯に捧げる気はない」
サーヴァントの魂を貯めておく場所を「大聖杯」だというんですね。
大聖杯に貯める?
『Fate/stay night』では、サーヴァントの魂を貯めておく場所は一貫して「小聖杯」でした。『Fate/Zero』もそうですし、『Fate/Apocrypha』でも同様です。
大聖杯の役割は、英霊の座へのアクセス、サーヴァントの召喚、令呪の付与といったシステム担当で、サーヴァントの魂を保存するストレージ役は小聖杯が担っていたはず……と記憶しているんですがどうだったろう?
この齟齬を、「たまたま筆がすべってそう書かれた」あるいは「最終的には小聖杯は大聖杯にアクセスするのでそのことを言っている」のであれば問題はありませんが、もしそうでないならば。
「FGOの冬木の聖杯は、(小聖杯ではなく)大聖杯に英霊の魂を保存する」
ということになる。
そうなるとすでにして、
「FGOの冬木の聖杯と、その他Fate関連作品の冬木の聖杯は、構造からして大きく異なる」
ことになる。
すでにして構造が異なるならば、聖杯がつくられた大目的が異なっていても、あまり違和感は生じない。
そんなに違和感がないのなら、語られていることをそのまま鵜呑みにしやすくなる。つまり、
「七体のサーヴァントが大聖杯に貯まると、そのとたん第三魔法が成就して、人類は全員まるごと不死になる」
FGOの冬木の聖杯は、「そういう機能を持ったもの」。stay night系の各作品とは設定が異なり、「サーヴァント七体の魔力で第三魔法をむりやり成就するもの」ということになる。
ちょっと話が余談にずれますがご免下さい。ご面倒な方は次の項に飛んで下さい。
私は「第三魔法の魔法使いは聖母マリア。マリアが生んだジーザス・クライストは魂が物質化された存在だった」という説です。
その件に関しては以下のリンクから始まる一連の記事をどうぞ。
●TYPE-MOONの「魔法」(1):無の否定の正体
アインツベルンは、再現不可能になった第三魔法を再現したがっている一族で、これは言うなれば「聖母マリアの完全コピーを作成しようとしている」と言い換えられる。
(だからユスティーツァやアイリといった女性型ホムンクルスばっかり作ってる)
で、冬木の大聖杯というやつは、「第三魔法を限定使用できる例外的なホムンクルス・ユスティーツァをドロドロに溶かして地下空洞の内側にベッタリ塗りたくった」ようなものだと説明されるわけです(私の意訳ですが)。
ようは、「魂の物質化は、出産のイメージにおいてなされるもの」というフィーリングがあり、ユスティーツァを内側にベッタリ塗りたくった地下空洞は、「ユスティーツァの子宮」であるという見立てができる。
ジーザス・クライストは、人類史における、初めての「汎世界的な英雄」と言い換えることができます。なにしろイスラム圏ですら、ジーザスを「重要な預言者のひとり」として認めていますものね。
それと比較したら、聖杯戦争で召喚される英雄は、汎世界的とはいえない。各地方の英雄だ。アーサーはブリテン土着、広めに見積もっても西欧まで。ヘラクレスはギリシャとその影響下にあった諸地方どまり。クー・フーリンはケルト語圏にとどまるでしょう。
でも、世界というものは、各地方を集めてひとまとまりにしたものだ。
各地方をひとまとまりにしたのが世界なら、各地方の英雄を集めてひとまとまりの固まりにしたものはどうなるだろう?
それは「汎世界的な英雄」と同一視しうるものではないか。
そこで、本稿の話につながる。各地方の英雄を七人、呼び集めて、その魂をまるめて「大聖杯に」蓄積する。
それは、「世界英雄」に等しいものが、ユスティーツァの子宮に収まっているという見立てになる。
そして聖母マリアの子宮にはかつて、世界英雄ジーザスが収まっていたのです。
じゃあ今、世界英雄(に等しいもの)が子宮に収まっているユスティーツァは何だろう?
それは、「聖母マリアに等しいもの」と見立てられるのではないでしょうか。
かりに、聖母マリアの正体が、第三魔法をフルスペックで扱える「第三魔法の魔法使い」であったとしたら。
いま聖母マリアと魔術的に同等のものになったユスティーツァは、第三魔法をフルスペックで扱えるはずである……。
だから「英霊の魂を大聖杯に貯める」という構造のFGOの聖杯は、小聖杯に貯めるstay nightの聖杯とは異なり、第三魔法の直接的な成就を可能とするのである。
ということを考えたという余談。
ということでこの話、
「FGOの冬木においては、サーヴァント七人が大聖杯に蓄積されると、自動的に全人類の魂が物質化され、その後いっさい死ななくなる」
というもの凄い仮定をとるわけですが。
自分で論じておいて何ですが、そうじゃなくても事象は説明できるよね、という話もしておきます。
最初に挙げた引用部において、マリスビリーは、「七騎の魂が貯まったら根源に至れるよね」という話も出しています。
(マリスビリー)
この大聖杯に七騎のサーヴァントの魂が満ち、
根源に至るための魔術炉心に灯が灯る。
それによって第三魔法はカタチになるだろう。
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル(下線は引用者)
この部分、「根源に至ったら第三魔法は成立するよね」という話をしているように読めるから、やっぱり、英霊の魂を弾丸として撃ちだして、世界に穴を開ける計画はあるんじゃないのと思えます。
世界に穴をあけて、根源へのパス(経路)を通したら、第三魔法はそれで成就しそうです。なぜって、第三魔法が実現できない理由は、オリジナルの第三魔法使いが持っていた根源へのパスを見失ったからだと推定できるからです。
ユスティーツァが根源へのパスを通すということは、切れた第三魔法のパスをつなげ直すという意味になるから、第三魔法はふたたび実現できるようになるでしょう。
stay night系統のアインツベルンが、冬木の聖杯戦争を主催している理由もそれかもしれませんね。最後に勝者となるのが誰であろうとも、儀式さえ完成すれば、第三魔法は再獲得されるという条件付けになっている。
こっちの考え方でいいんじゃない? と思う方は、こっちの考え方に深くうなずいて下さい。
だけど、私の好みの話をするなら、「FGOの冬木の聖杯は第三魔法をダイレクトに実現する」というアイデアのほうに、魅力を感じます。
理由はいくつかありますが、そのひとつに、「マリスビリーが引用部で語っている根源接続の話は、「第三魔法ダイレクト実現説」のほうでも説明がつくってことがあります。
「根源へのパスを通せば(原因)、第三魔法は実現できる(結果)」って話をしました。
その逆もいえそうです。
大聖杯に蓄積された英霊の魔力をぶんまわし、「ユスティーツァは構造的に聖母そのもの」という見立ての魔術を使って、第三魔法を力わざで実現する。
魔法は根源とのパスを通すことで獲得されるものなので、第三魔法が実現したということは、根源とのパスが通ってないとおかしい。
だから、第三魔法が実現すると(原因)、根源とのパスが通る(結果)。
根源へのパスが通ったということは、根源へ至ったということだ。
いっけん全く同じに見えるふたつの聖杯戦争だけど、『FGO』と『stay night』では、手段と目的がまるっきり転倒している。
まるっきり転倒しているが、最終的に得られるものはまったく同一である。
こういう転倒に、魅力を感じるのです。この手のひっくりかえしの理屈、TYPE-MOON作品には頻出するよね。大好き。
ただし、こっちの話を採用するのなら、「なんでわざわざ転倒させたの?」という検討が必要となってきます。
その理由は、
「(1)ソロモンを大聖杯に捧げると(2)世界の外殻に穴が開いて(3)根源へのパスが通って(4)魂の物質化が実現する」
ではなくて、
「(1)ソロモンを大聖杯に捧げると(2)魂の物質化が実現する」
というふうに、原因と結果を近づけたかった。語りの側からの要請だと思います。
なんでこのような話をえんえんしてきたかというと、「ソロモンの死」と「全人類の救済」がバーターになってることが美しいと思うからです。
このシーンは、二択の歴史分岐点です。
ソロモンを令呪で自害させると、ソロモンの魂は大聖杯に回収され、大聖杯は人類の魂を物質化します。自害させなければ、そうなりません。
1)ソロモンを殺せば、人類は死を克服する。
2)ソロモンを生かせば、人類は死を克服しないので、ゲーティアが人理焼却を起こす。
(ゲーティアが人理焼却を起こした理由は、何千年たっても死を克服しない人類に見切りをつけて、死なない人類を一から再創造しようと思い立ったからでした)
ソロモンの生死と、人類の興亡が直結しているところが美しい。
このシーンの語りが目指していたことは、この二択の構造をくっきりさせることでした(でしょう)。「ソロモンを殺せば魂が大聖杯に送られ世界の殻に穴があいて根源のパスが通って人類は死を克服する」ではなく「ソロモンを殺せば人類は死を克服する」。
マリスビリーは、上述の二択において、後者を選んだ。「ソロモンを自害させない。人類は死を克服しなくてよい。なぜなら私は自分の方法で根源に到達したいし、私なりの方法で人類を救済するからだ」。
(マリスビリー)
私は、我ら天体科を司るアニムスフィアは、
独自のアプローチで根源に至らなくてはならない。
魂の物質化、人類の成長なんて夢物語には、
はじめから付き合う気はなかったのさ。
(略)
私は何を犠牲にしても、カルデアスを真に起動させる。
人理を維持するためには、どうしてもアレが必要だからだ。
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル
マリスビリーが、ゲーティアの人理焼却計画を知っていたかどうかは不明です(知らなかったと思う)。
この直後、マリスビリーとソロモンはそれぞれ個人的な願いを聖杯で叶えますが、叶えた直後、ソロモンは人理焼却の光景を未来視してしまいます。おかげで、せっかく人としての生を手に入れた彼は、その人生のすべてを人理焼却の克服に費やすことになります。
ソロモンが千里眼で人理焼却を見てしまうのは、従来の考えでは、
1)カルデアス完成と地球白紙化が確定したので、その前に人理焼却しようとゲーティアが決断するから
でした。それに加えて、
2)人類が死を克服しないことが確定したから
これも考慮に入れてよさそうです。
地球白紙化が確定するのは、マリスビリーが巨万の富を望んでカルデアスが完成するからです。「巨万の富を望んだ」が分岐ポイントです。
一方、「人類が死を克服しない」が確定する分岐ポイントは、「マリスビリーがソロモンの自害を命じない」です。
マリスビリーが「ソロモンの生存」と「巨万の富」の両方を同時に選択しないかぎり、人理焼却は起こらないっぽいです(少なくとも2016年には起こらない可能性が高い)。
この「終局特異点アバンタイトル」の場面には、重要な歴史的選択がふたつある、ということになりますね。
終局特異点のアバンタイトル(ここで扱っているシーン)において、マリスビリーが、
「自害しろ、キャスター。……あっ、ウソウソ。冗談だってば」
と述べたことに、ソロモンは驚いています。
それは私にも意外な展開だった。
マリスビリー本人は意識していないが、彼の人生において、
彼が冗談を口にしたのはこれが最初で最後であり、
彼の思惑が、私の見たものと解釈が違っていた事も、
予想外の出来事と言えただろう。
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル(下線は引用者)
ソロモンは千里眼を持っていて、過去のことは視ようとすればわかっちゃうし、未来のこともわりと分かる。
そのソロモンが、「マリスビリーは今まで冗談を言ったことがないし、今後も言うことがない」とする。そして、「今、冗談を言ったという事実にビックリした」。
ソロモンが「マリスビリーは冗談を言わない」と強く保証する中で、「今、マリスビリーが冗談を言った」という事実がある。となるとこれは、
「マリスビリーにとって、これは、絶対に言わなければならない必然的発言である」
と考えなければならない。
その「マリスビリーが絶対に言うしかなかった必然的発言=冗談」はこうです。
(マリスビリー)
後は君を令呪で自害させれば、儀式は完成だ。
(略)
それによって第三魔法はカタチになるだろう。
(略)
君はそのための犠牲だ。
了解してくれるだろう、キャスター?
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル
一言につづめれば、「第三魔法を成就させるために自害してくれキャスター」という発言を、マリスビリーは絶対に言う必要があった。
なんでさ。
ソロモンは引用部でこう言っている。
「彼の思惑が、私の見たものと解釈が違っていた」
これ、何のことか意味をつかみかねていたのですが、こういう意味じゃないでしょうか。
ソロモンは千里眼で、マリスビリーが何を言うか知っていた。
「第三魔法を成就させるために自害してくれキャスター」と言い出すことを知っていた。
そこまでのことが、千里眼で見えていた。
なのでソロモンは、「ああ、マリスビリーは、第三魔法のために私に自害して欲しいのだな」と解釈していた。
ところが、直後にマリスビリーが「いや、冗談だよ、キャスター」と前言を撤回したので驚いた。
・ソロモンは「自害しろキャスター」という未来を視たので、マリスビリーは自分を自害させたがっていると解釈した。
・でもそうではなかった。
・「自害しろキャスター」という発言は、事実として存在するが、
・「自害させたがっている」という解釈は解釈違いだった。
ここで「解釈」という、FGOでは注意深く見なければならないワードが登場しました。「解釈の変更」は、歴史改変の可能性を問う議論のときにほぼ必ず出てくる言葉です。起きたことは変えられないが、解釈は変えられる、とFGOは言うのです。
「人物Aが死ぬという事実は変えられないが、どういう理由で死んだかは解釈変更が可能である」
誰かに殺された、という物語を、人知れず行方不明になったと変更することはできますよとFGOは言う。なぜなら当該人物がこの世から消えるという大筋のストーリーは変わらないからだ。
マリスビリーがまさにそのことをこの場面で言ってます。
(マリスビリー)
私は巨万の富を願う。
では君は? 君は何を願う?
過去の改ざんは不可能だが、解釈替えくらいはできる。
それとも受肉して第二の生を望むのか?
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル(下線は引用者)
・事実は変えられないが、事実の解釈変えはできる。
・ソロモンは、解釈の齟齬を自覚した。
なら、まさにこのポイントで、
「解釈変えによる過去改変があった」
と疑わなければならない。
でも誰がどうやって? 何のために?
ソロモンが自覚した解釈の齟齬は、
・マリスビリーはソロモンの自害を要求した(a)。
・マリスビリーはソロモンの自害を要求したが、それは冗談だった(b)。
(a)から(b)への変更だから、自然と以下のようになる。
・マリスビリーはソロモンを自害させ、全人類の魂が物質化する未来を選んだ(歴史a発生)
・選んだ未来を見た結果、幻滅して、「こりゃダメだ、やり直そう」と思った。
・モルガン式レイシフトでタイムスリップ。自害ポイントに戻ってきた。
・こんどは「ソロモンを自害させない」を選択した(歴史bに分岐)。
マリスビリーはレイシフト技術の第一人者です。そして、魂が物質化された世界にはあまるほどエネルギーが満ちあふれているので、巨万の富を願わなくともカルデアスは完成する。カルデアスがあればレイシフトは容易だし、この場合レイシフト先にはマリスビリー本人がいる。
魂が物質化されていたら人類はすでに救済されているので、地球白紙化を起こす必要はないが、「なんかこの世界、ダッセぇ」かなんか思って戻ってやりなおした。
ソロモンは「自害しろキャスター」発言を千里眼で見ているので、マリスビリーが「自害しろキャスター」と発言するところまでは事象が確定してしまっている。
なのでこの発言は、絶対に言う必要があった。
言わなかったらその時点で歴史改変が察知され、修正力が働きますものね。
「自害しろキャスター」と発言したうえで、ソロモンを自害させないためには、冗談だとごまかすほかなかった。
そして、歴史aでも歴史bでも、大づかみな事象は変わらないのです。
●歴史a
「自害してくれ」「いいよ」という会話がなされる。
(ソロモンは自害して)ソロモンは消滅する。
●歴史b
「自害してくれ」「いいよ」という会話がなされる。
(ソロモンは死なないがロマニという人間になるので)ソロモンは消滅する。
ソロモンがこの世から消える、という事象に対して、「自害した」のか「人間になった」のか、という解釈変更をする。
これで、世界は歴史改変を認知しないので、改変された歴史が改変されたまま続くことになる(よね?)。
ここまでしてきた話が、もしOKだとすると、ひとつ問題がでてくる。それは、
「Dr.ロマン=ロマニ・アーキマンが存在すること」と「人理焼却を発生させないこと」が、トレードオフの関係になってしまうことです。
トレードオフというのは、「一方をとったら、もう一方はとれない」という関係のこと。
我々の大好きなDr.ロマンがこの世に存在するということは、ソロモンが自害しなかったということなので、全人類魂物質化が起こらなかったということであり、人類が死を克服しないのでゲーティアが人理焼却を起こす。人理焼却が起こった原因はDr.ロマンが存在したことだ。
もしこの世にDr.ロマンが最初から存在しなかったら?
それはソロモンが自害したという意味なので、全人類の魂が物質化して、死が克服され、ゲーティアは人理焼却を起こさない。人類はすでにして救済された状態にあるので、マリスビリーもここからいちいち地球白紙化を起こさない。
どっちか片方選べるならば、後者のほうが利がはるかに多いのでは……。
後者のほうのデメリットは、みんな大好きDr.ロマンが、最初からいなかったものになるという、我々の感情面のものだけだ。言い換えれば、Dr.ロマンひとりを人柱に捧げることで、全人類のすべての問題がまるくおさまる。
もし仮に、この物語が、
「ソロモンを自害させるかさせないか、あなたに選ばせてあげるけど、どうする?」
という選択肢を選ばせにきたらどうしよう?
本人が、「人類のためなら、よろこんで生け贄になろう」と言いそうな人格なのが、また……。
もちろん、私たちは、ドラマツルギー的にいって、「Dr.ロマンがいたほうがいいに決まってる! 人類の問題はこれからなんとかする!」と啖呵をきることになる。当然そうですね。
我々は「ソロモンを決して自害させない」を選ぶわけです。
それと同じ選択肢をつきつけられて、我々とおんなじ選択をした人が、物語上にすでにいた。
マリスビリー・アニムスフィアは、「ソロモンを自害させる?」「させない?」という選択肢が画面に出てきたなかで、「させない」を選んだ人だ。
(まあ、「とりあえずCG回収」とか言って、「自害させる」のほうを選んだ後かもしれないが)
それは本人が言ってるとおり、「自分の力で根源に到達したい」「他人の計画で人類が救済されるなんてしゃくだ」という理由が大なのかもしれないけど。
「ソロモンは友達だから自害させるなんて選べないよ」という素朴な理由もあったんじゃないかなあという気がする。本人もそれに類することを言っているし、あれはわりと本心かもしれない。
見るからに孤独そうなマリスビリーにとって、ソロモンは、人生で初めてくらい「コイツと友達になってもいいな」と思う相手だったんじゃなかろうか。
マリスビリーに弟子はいたでしょう。慕う人も少なくなかっただろう。でも、友はいなかったんじゃないかと思う。
友がいる人間は、全人類を消去して地表を更地にするなんてこと実行しない。もし実行するとしても、友人を残すか、同志にすることを考えるでしょう。
実の娘はどうなんだ、という話については、魔術師の世界では子供は家の所有物だそうです。
いまのところ、マリスビリーに同志はいなかったと推定される。彼はたったひとりで全てを計画して実行したはずだ。
そんな彼のところに、ソロモンが現れる。同じ目的のために、共に戦ってくれた。
マリスビリーは自分の計画をソロモンに明かしていたわけではもちろんないけど、「裏も打算もない味方が隣にいてくれる」という体験が、孤独なマリスビリーをゆさぶった可能性はあると思う。
ひょっとしたら、友の死とひきかえてまで人類を救済したくなどない、というありきたりの美しい感情があったかもしれない。
とはいっても地球を白紙化したらソロモンは消滅するじゃないか。という点についてはこう思う。
「友を殺すとしたら、それは他人の仕掛けによるものであってはならない。自分の手でだ」
(マリスビリー)
我が契約者にして唯一の友、キャスター。
いや、魔術の王ソロモンよ。
『Fate/Grand Order』第一部 終局特異点 アバンタイトル(下線は引用者)
こういった想像をするならば、「ソロモン=ロマンをだいじに思う」という点で、マリスビリーとぐだの思いは合流する。
「裏も打算もない味方が隣にいてくれるって、なんてすばらしいことだろう。彼らは私の心からの友だ」
というのは、ぐだがサーヴァントに思っていることそのものではないか。
いちミリも共感できない強大な敵をボコボコにして倒したとして、それは怪獣退治に成功したようなもので、胸はすくけど心は揺れない。
「気持ちはわかるよ、気持ちはちょっとくらいは分かるけど、でもそんなのダメだろ!」
というのが、心をゆさぶる物語なのだと思うのです。私はそういう物語をよしとするので、私がぐだとマリスビリーとの間に交錯ポイントをつくるとしたらここです。そんな感じでした。この話は以上です。
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FGO:レイシフトとは何か(現状のまとめ)
筆者-Townmemory 初稿-2025年5月24日
[奏章4までの情報を元にしています]
FGOには「レイシフト」という謎技術があります。一言でつづめていうと、「過去ないし未来の特定の場所に人間を一瞬で送り込む」という技術。ほぼタイムマシン。
どういう理屈でそんなことが可能になってるのか、という問題について、個人的な考えが、あるていど腹落ちするところまでいきましたのでまとめておきます。
なおこの件に関する過去の記事がこちら。読んでおくとひょっとしたら理解が早いかもしれないです。
FGO:続・置換魔術(確率化する私たち)
物語の描写からみえるレイシフトの手続きは、こんな感じになっています。
1)ぐだちゃんをコフィンに放り込む。
2)ぐだちゃんを霊子変換する(よくわかってない)。
3)なんかズバァアアンというトンネルくぐるようなエフェクトがあって、特定の時点・地点にぐだちゃん出現する。
なんかこう、描写だけみると、
「コフィンの中にいる人物を、別の時空への送り出し可能な状態に変化させて、送り出す」
ということをやってるように見えます。『スタートレック』の転送装置のような。あるいは『ハエ男の恐怖』における物質電送機のような(という例えはいまやどれだけの人に伝わるのだろう)。
けど、作中のこまかい情報を整理していくと、上述のSF映画みたいな、「人間を細かい粒にして、出張先までストローでフーっと吹き出して、現地で肉体を再構成する」というようなことはやってないみたいです。というのも、モルガンが「レイシフトで送れるものは情報のみ」っておっしゃってるんですね。
(モルガン)
レイシフトで送れるものは情報のみ。
実体のある人間を棺(コフィン)で情報体……疑似霊子化し、
『特異点』に転移させる。
『特異点』が正常な時空間ではないからこそ
可能となる、よく出来た魔術理論だ。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 21節
情報のみって言うくらいですから、ぐだの身体のような「物理的実体」は、レイシフトにおいて、一切移動していないとみることができます。
モルガンは、2部6章アヴァロン・ル・フェで、レイシフトによって過去の異聞帯ブリテンに飛ぶということをしていました。
モルガンは自分の情報を過去に飛ばした。
その結果、異聞帯における過去のモルガン自身に、現在のモルガンの記憶や情報、情緒がまるごと転写されるという現象が発生しました。
(現在のモルガンは霧散した、消えてなくなったとのことです)
レイシフトは、個人の「情報」しか移動できない。個人の肉体(実体)をそのままレイシフト先に運ぶことはできない。
ただし、行き先に過去の自分自身がいるならば、過去の自分を「実体」とすることで、そこにレイシフトする(情報を送り出して転写する)ことができる。
じゃあぐだの場合は?
ぐだのレイシフト先である特異点には、たとえば古代ローマや古代メソポタミアには、実体となる過去のぐだはいません。
なら、特異点で実体を持って活躍しているぐだちゃんの身体はいったいどこから現れたの? って話になる。
・レイシフトは情報しか送ることができない(事実)
・人物をレイシフトする場合、送り先にその人物本人がいないとレイシフト不能(推定)
・過去の世界に過去の自分がいる場合、その過去の自分を情報の受け皿として、レイシフトすることができる(事実)
・古代ローマにぐだはいないはずだが、ぐだは古代ローマにレイシフトできる(事実)
前段3つと最後の1つが矛盾しています。
話の流れからすれば、古代ローマにぐだをレイシフトするためには、
a)実はレイシフトは情報だけでなく実体も送り出し可能
であるか、
b)実は古代ローマにもぐだ本人が存在する
であるか。このどっちかの条件がなければならない。
どっちが面白そうか、でいえば、「古代ローマにもぐだが存在する」のほうが、面白そうだ。
常識で考えれば、現代人のぐだの身体が古代ローマに存在してはいけないわけですが、FGOの世界観には、常識をまるっとくつがえす「魔術」や「魔法」があります。
そういうあやしげな邪術の中に、
「古代ローマにぐだの身体をむりやり存在させる」
というものがあればよい。
その、存在「させる」のための機材が、いわゆる「コフィン」じゃないかという考えです。
コフィンは直訳すればかんおけ。ようするに箱。人間がそこに入って、コフィンを稼働させると、コフィンの中身は外部からまったく観測不可能な状態になる。
外部からまったく観測不可能な箱といえばこれはもう「シュレディンガーの猫」を入れた箱を連想するしかない。
外部からは中身がまったく観測不可能な箱に猫を入れる。箱には、50%の確率で致死性の毒ガスが充満するスイッチがついている。
そのスイッチを押す。
箱のフタは閉じたまま。
この観測不可能な箱の中には、50%の確率で生存中の猫がおり、50%の確率で死亡した猫がいる。
一般的な常識では、
「この箱の中には、生きている猫か、死んだ猫か、そのどちらかが片方がいる。外からはそれが判別できないだけだ」
という考えになる。
しかし、量子力学の分野では、「そうではない」と言う。
「猫の状態はいまだ確率的であり、どっちなのかはまだ定まっていない」
「この箱の中には、生きた猫と死んだ猫が重なり合って両方いるのである」
ということを言うわけです。凄いよね。
でも猫は1匹しかいない。猫が2匹になって出てくるわけじゃない。箱を開けたら1匹の生きた猫か、1匹の死んだ猫かのどちらかだ。それはいつ決定するの?
それは「箱を開けて、誰かが猫の状態を見た瞬間に確定する」のだそうです。「見るという行為によってそれが確定する」。
ちょっと学問の分野から相当離れた曲解的な言い方をしますが、極論するなら、猫を殺したのは毒ガスじゃないのです。猫殺しの犯人は「見た人」で、死因は「観測」。
猫が生きてた。生きてた理由は毒ガスが出なかったからじゃなく、「生きた猫を観測した」という行為があったから。
さて、コフィンは外部から観測不可能な箱であり、ぐだは生きた猫である(かわいい)。
コフィンにぐだを放り込む。
コフィンには毒ガス装置は設置されていないので、ぐだの生死を問う必要はありません。ですが、こう捉え直してみてはどうでしょう。
「コフィンは外部から観測不可能なので、コフィンの中に、本当にぐだがいるのか、それともいないのかはわからない」
だって、箱に人間を入れてみた、開けてみたら誰もいませんでした、なんて、手品やミステリー小説の世界ではありきたりに起こってることじゃありませんか。マジックの世界で当然発生しうることが、魔術(magic)や魔法(true magic)で起こせないことなんてあります?
となると、コフィンの中には、「ぐだがいない」という可能性が50%ぶん入っていて、「ぐだがいます」という可能性が50%入ってることになる。ふたつの可能性がかさなりあってコフィンの中に入っている。
どっちなのかはまだ決定していない……というか、「両方入っている」ので、どっちなのかという問いは無効です。
いま、ぐだをコフィンに入れたはずなのに、論理と魔術の詐術によって、「この中にぐだはいません」という可能性を50%発生させることができました。凄いな。
コフィンの中にぐだがいないとするならば、ぐだはどこにいるのか。
箱の中に人を入れたら人が消える手品。人はどこにいったのか。もっとも間違いのない答えは「箱以外の全世界のどこか」。
なら、コフィンの中にいないぐだはどこにいったのか。「コフィン以外の全世界のどこか」である。
コフィンの中に50%の確率でぐだがいないなら、コフィン以外の全世界のどこかに50%の確率でぐだがいる計算になる。
はい、そこで。
我々はぐだちゃんを、全世界のどこかではなく「特定の特異点で」見つけたいのです。
たとえば古代ローマにぐだをレイシフトしたいなら、まずコフィンにぐだを放り込んで、
「この中にぐだはいないかもです」
という状態をつくる。
ついで、
「コフィン以外の全世界のどこか、なかんずく古代ローマにぐだはいるかもです」
という現実を発生させればいい。
「猫が生きている理由は生きた猫を観測したせいだ」という話がありました。
これを敷衍すると、
「古代ローマにぐだがいるとすれば、その理由は古代ローマでぐだを観測したせいだ」
カルデアには、カルデアスとシバという、地球上の特定の場所をめちゃめちゃ精密にサーチする便利な機械がある。
これを使って、さらにあやしげな魔術をそえて、
「古代ローマにおいて、ぐだを絶対に見つける」
ものとする。
すると「古代ローマにぐだの身体が存在する」という現実が発生する。
コフィンからぐだは消えたので、世界のどこかにぐだは絶対にいる。世界のどこかにぐだはいるなら、その中の古代ローマにぐだがいる可能性はある。その小さな可能性を魔術か魔法で100まで引き上げる。
本稿のお話では、「観測が現実を決定する」ので、観測が可能だったものは絶対にそこに存在するのです。
常識で考えれば、
「ぐだがそこにいるから(原因)、そこにいるぐだを観測することができる(結果)」
のです。
だけど、量子力学的アイデアを暴論でぶんまわせば、
「望んだものをそこに魔術で観測してしまえば(原因)、望んだものがそこに存在しはじめる(結果)」
という形に転倒させられるのです。
別の稿でも言いましたが、「当たるという結果を発生させてから槍を投げる」ゲイボルグにすごく似ている。
ぐだの身体が古代ローマに存在することになりました。なら、もう何も難しくない。情報の受け皿となる身体が存在する場所にはレイシフトが可能です。
ぐだの情報を、古代ローマのぐだの身体に向けて送信する。すると、古代ローマに存在するぐだの身体は、現在のぐだの記憶・知識・情緒などが宿った状態になり、ぐだは実体を持った存在として古代ローマで活動可能になる。
ところでこの話、
「コフィンからいなくなったぐだが古代ローマで見つかるのだから、情報の送り出しって必要なくない? だっていなくなった人がそこに現れるんでしょう?」
とも思うのですが、たぶん必要なんでしょう。
たとえば、
「いま古代ローマで観測できたぐだちゃんが、いまコフィンに入ったぐだちゃんとは限らない」
ぐだは何十回もコフィンに入っている。いま古代ローマでみつけたぐだは、ひょっとして過去のレイシフトでコフィンに入ったぐだかもしれないし、未来のレイシフトでコフィンに入ることになるぐだかもしれない。
けど、古代ローマに存在してほしいのは、いまコフィンに入ったぐだなので、現在のぐだの情報を送り出しして転写する。
古代ローマにいるぐだがいつの時制のぐだであろうとも、転写によって、そこにいるのは現在のぐだになる。
公式から来た資料では、以下のようなことが書いてあります。
レイシフトによってマスターを様々な時代に送っているが、実際には霊子データになって「投射・観測」しているという考え。
『MOONLIGHT/LOSTROOM material』p11
(Fate/Grand Order MOONLIGHT/LOSTROOM 付録)
観測、という語が出てきている。本稿の案は「観測によってぐだを存在させ、そこに現在のぐだのデータを投射する」というものなので、公式の説明との間に、とりあえず齟齬はきたさない。
ところで、作中のレイシフト時にオペレーターが(わりとマシュが)「存在証明を確立、維持に集中します」みたいなことを述べているのが印象的です。
本案におけるレイシフトは、いるかいないかわからない(確率的にしか把握できない)ぐだを、観測という行為によって「むりやり存在させている」。
生きてそこにいるぐだを観測しているかぎり、ぐだはそこに居続けることができるが、観測をやめたらその瞬間に、ぐだは「いるかいないか確率的にしかとらえられないもの」に戻り、つまり存在を維持できなくなって、消滅してしまうのだろうと思います。
だってそもそも、コフィンの中からぐだが消えた可能性は50%しかないので、特異点の特定位置にぐだがいる可能性も最大50%しかない。
それを100に引き上げているのは「観測するという行為」なので、観測行為が何らかの事故で中断されたら大変なことになる。
だからぐだをレイシフトさせたら最後、観測行為によって「ぐだが現地に存在する」という事実を断固として維持しないといけない。
そのことを「存在証明」と呼んでいるとしたら、わりあい整合しそうです。
ただ、別案としては、「ぐだが現代から消滅したことを世界から隠蔽する」という作業を存在証明と呼んでいる、という考え方もあります。
「MOONLIGHT/LOSTROOM 用語辞典」のレイシフトの項には、
マスターが不在になるコトで起こる歴史やら因果関係やらの狂いを計算し、仮の数式をあてて歴史をきちんと補正する。
『MOONLIGHT/LOSTROOM material』p11
と書いてあります。これを「存在証明」と呼んでも違和感はありません。
しかしながら、本稿の案には大きな問題点があります。
ぐだは現代人なので、古代ローマの時代には絶対に生まれていない。
だから、古代ローマでぐだが観測される確率はゼロパーセントである。どんなに探そうとも絶対に見つかるはずがないです。
この問題を解決しそうなのが、「レイシフトは原則的に特異点に対してのみ可能」という設定です。
(あれ、そういう設定があったと思うのだけど出典が出てこない。ぐだは原則、特異点にしかレイシフトしませんよね)
特異点は、歴史の流れから切り離された浮島のようなもので、前後の時代との整合性がまったく無視されており、その時代のその地域では絶対に起こらないことが平然と起こります。独立戦争時代の北アメリカに古代ケルト軍!
前後の歴史的整合性をまったく無視してよいというルールがある古代ローマには、現代人のぐだが存在してもよいので、現代人のぐだをシバで観測できてしまう……。
同じ引用をもう一回しますけど、モルガンはレイシフトをこう評価している。
(モルガン)
『特異点』が正常な時空間ではないからこそ
可能となる、よく出来た魔術理論だ。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 21節
特異点みたいなあやふやな場所には、何でも存在していいので何でも送り込めるよね、くらいを言っているように見えます。その時空に本来存在しないぐだちゃんでも平然と存在していいってことになりそうですね。
特異点で仕事を終えたぐだは、カルデアに帰ってきます。
帰り道はどうするか。逆の手順でいい。
コフィンの中に、ぐだはいるかいないか半々だ。ボリュームつまみ(か何か)をジワーとひねって、「コフィンの中にぐだはいます」のほうをアクティブにする。
同時に、特異点のぐだから、ぐだの情報を回収する。
その情報をコフィン内のぐだの身体に再転写しておしまい。
これって、特異点にいるぐだ視点では、
「カルデアにある自分の身体に向かってモルガン式レイシフトをする」
行為になる。
なので、コフィンに入ってない特異点のぐだの身体は、モルガンがそうであったように霧散(消滅)する。
対象物をレイシフト先に存在させるためには、元の場所において不存在にならないといけない。なので元の場所の対象物は強制的に不存在になる=霧散消滅する。
元のモルガンはレイシフトしたら消滅し、特異点のぐだはカルデアにレイシフトしたら消滅する。
といった理解です。
つまるところコフィンの役目は、中に入ったぐだちゃんの身体を、「消滅したかなぁ~? それともこの中にまだあるかなぁ~? どっちかなぁ~?」というあやふや状態にすること。
ぐだちゃんが特異点に出張してるときは、
「コフィンの中のぐだちゃんは消滅してるかもしれない。じゃあ消滅ってことで、レイシフト先の特異点にいてもヨシ!」
という判定になっている。
ぐだちゃんが特異点からカルデアに帰ってくるときは、
「消滅してると思ったぐだちゃんは実は消滅してなかったから、ぐだちゃんはコフィンの中の身体に帰ってこられます。帰還成功。ヨシ!」
という都合のいい処理をする。
コフィンの目的は、
「(現在のぐだを疑似的に消滅させることで)レイシフト先でぐだの身体を発見できるようにする」
ことと、
「ぐだの身体を保存し、ぐだが特異点から帰ってこられるようにする」
ことの二つです(本稿の説では)。
なので、レイシフト先に自分の身体が確実に存在しているとわかる場合にはコフィンはいらない。
現実時間・現実場所に帰ってこられなくてかまわない場合にもコフィンはいらない。
だから、レイシフト先に自分自身がいることがわかっていて、6000年生きたら現代に戻ってくるモルガンは、コフィンを必要としなかった。
ぐだはレイシフト成功率100%の逸材だ、という話がありますね。
本稿の序盤に挙げた以前の記事でも述べたんだけれど、なぜぐだが逸材かというと、ぐだという人は、私たち大量のFGOプレイヤーが一人の身体に詰め込まれた重なり状態の存在だからかもしれません。
1~2年前のデータですが、FGOは推定で約100万人の月間アクティブユーザーがいるそうです。現在ではちょっと人数が落ちてるかもしれませんが、この世にはだいたい100万人のぐだがいると考えてよい。
ぐだは1人しかいないのだけど、しかしこの1人のぐだは、100万人ものぐだが重ね合わされた多重存在だといえます。
猫を箱に入れてボタンを押したら、生きた猫と死んだ猫の二種類が重なりあった多重存在になりました。
それと同様に、ぐだはプレイヤー0000001番からプレイヤー1000000番までの100万種類が重なり合った多重存在です。
ぐだをコフィンに放り込んでフタをしめると、ぐだがコフィンの中にいる確率は50%です(文章にしてみると凄いこと言ってるな)。
しかし、ぐだを100万通りの重なり状態だとするなら、この50%はただの50%ではなく、
「50%÷1000000×1000000」
という式で表せるのです。
つまり、50%÷1000000=0.00005%の確率で「ぐだ0000001番」がいる。
0.00005%の確率で「ぐだ0000002番」がいる。
0.00005%の確率で「ぐだ0000003番」がいる。
これが100万回続いて0.00005%の確率で「ぐだ1000000番」がいる。
そして、コフィンの中にぐだが「いない」確率も50%なので、言い換えれば「(コフィンを除いた)どこかの特異点にぐだがいる確率」も50%。だから、
どこかの特異点に0.00005%の確率で「ぐだ0000001番」がいて、
(中略)
どこかの特異点に0.00005%の確率で「ぐだ1000000番」がいる。
すなわちぐだは、コフィンに閉じ込めて「存在・不存在」を検証不能状態にしてやると、世界中にうっすら散らばって全時空に遍在する人物になりうる。
この世の全時空に遍在しうる人物は、特定の特異点で存在を観測することがたぶんめちゃくちゃたやすい。
これが通常の人間だったら、
「人類史の長大なスパンの中で、大小いくつも存在しただろう無数の特異点のうちのどれかに、50%の確率で、たった一人存在する」
となるので、観測は困難をきわめる。この場合おそらくレイシフト成功率はゼロにひとしいだろう。
と、いうのが、ぐだのレイシフト成功率100%の正体なんじゃないかという話。
レイシフトの実行シークエンスで、システムアナウンスが、
「アンサモンプログラム・スタート。霊子変換を開始します」
みたいなことを言ってるのを目にします。
アンサモン。
サモン(summon)は召喚するという意味。それに否定の接頭辞のunがついていますから、直訳的には「非・召喚」くらい。たぶん「逆召喚」くらいのつもりで使われてるんじゃないかな。
unsummonで検索してみると、マジック・ザ・ギャザリングの「送還/Unsummon」というカードが出てきます。伝統的な英語ではないようで、ウィクショナリーには現代ファンタジー用語として紹介されています。「(召喚されたクリーチャーを)もとの場所に送り返すこと」と書いてありますね。
FGOは、レイシフトでぐだを特異点に送り込むという行為を「逆召喚」または「送還」と表現する。
言われてみると、英霊の座から英霊を取り寄せることが「サモン(召喚)」なのですから、ぐだをどこかに送りだすことは「アンサモン(逆召喚)」ですわね。
カルデアから特異点にぐだを送り出すのが「逆召喚」であるのなら、ぐだを特異点からカルデアに呼び戻す行為は「順召喚」、つまり「召喚」ってことになります。
いま特異点に立っているぐだを情報のみに変換し、その情報をカルデアに取り寄せて、コフィンの中のぐだの身体に転写する行為(レイシフト)は「召喚」である。
あ、と思ったのですが。
英霊の情報を英霊の座から取り寄せて、魔力で作ったマネキン(身体・霊基)にその情報を転写して、活動可能状態にする……というのが、カルデア式英霊召喚でした。
おんなじことをやってる。
つまりレイシフトとカルデア式英霊召喚は同じものだ。
カルデアが、レイシフトと英霊召喚というすごい技術を二つも持っているのは当然のことだ。なぜならこの二つは同じものだからだ。
両方とも、
「何らかの物理的な身体を用意しておいて、そこに記憶やスキルや情緒(情報)を憑依させる」
ものであって、ほぼ何も違わない。
それでふと思い出したのが、モルガンの話。
ブリテン異聞帯でベリル・ガットに召喚されたモルガンは、その日のうちにレイシフトを完全解析し、その夜のうちに過去の自分にレイシフトしました。
召喚されたその日、モルガンは、ベリルと挨拶しかしていない。彼女はレイシフトを見てもいないし体験もしていないのです。見たこともないレイシフトをなんで解析できるのか。
でも、モルガンはカルデア式英霊召喚でついさっき召喚され、それを自分の身で体験しました。レイシフトとカルデア式英霊召喚がほとんど同一のものなら、英霊召喚を解析してレイシフトを会得できます。
また余談のような話になりますが、『型月稿本』によれば、ゼルレッチの並行世界移動法も、レイシフトとほとんど同じアイデアになってます。
たとえばA世界からB世界に移動するのなら、B世界にある宝石がザザーッとゼルレッチのカタチになるまで集まって、そこにゼルレッチの魂が転移する。瞬間、宝石ゴーレムはゼルレッチに変身する。この時点でA世界にいたゼルレッチは元の宝石の山に戻る。
竹箒『型月稿本』p34
レイシフトは魂を扱っているから、第三魔法がらみの技術なんじゃないかと思えるけれど、じつは第二魔法から派生した技術がそうとう使われていそうな感じ。歴史上のどっかの段階でゼルレッチがアニムスフィア家に技術提供したとか、そんな裏事情はあってもおかしくない感じだ。
さらに余談で話を発散させますが。
カルデアスは地球の模型に地球の魂をコピーしたものだとされていますね。
これ、ちょっと言い方をいじれば、レイシフトみたいに言えそうだ。
「地球の模型という物理的実体をあらかじめ用意しておいて、そこに魂の情報を憑依させる」
カルデアスを作ったエンジニアリングの基礎も、実はレイシフトなんじゃないか……。ただ、コピー元のオリジナル地球が霧散消滅してないのがちょっと変かもですね。
たとえば、「オリジナルが爆散する理由は、まったく同一のものが二つ存在してはならないというルールで世界が修正力をかけているから」くらいに想定し、「地球は世界そのものだから世界の修正力は働かない」くらいに言えばいいのかもしれない。
カルデアスのコアエンジニアリングもレイシフトなら、
「英霊召喚」
「レイシフト」
「カルデアス」
というカルデア三大超技術が、全部ひとつの基礎理論から作られていることになる。アニムスフィア家が基礎理論を持っていたら、三つの超技術は全部作れてしまう。
いいね。こういうタイプの「一点に収束する真相」って、私、大好きなんです。
(このブログは基本、「私、こういうの好み」を書くところ)
関連書籍等でレイシフトについて書かれたものを見ていると、コフィンの機能を、
「魔術的に作成した、生きているが死んでいる箱」
「マスターの生命活動を不明状態にする」
といったように説明しているのを見かけます。
直近のところでは『ますますマンガで分かる!Fate/Grand Order』でも同様の説明がありました。
(ガレス)
つまり 情報を遮断した 密閉空間に
生死不明の 重ね合わせ状態
を作り出して おいて
別の時空に 自分の情報を
投影するのが
レイシフトの しくみ なのですね
リヨ『ますますマンガで分かる!Fate/Grand Order』第405話
本稿で「存在・不存在」と呼んでいる状態と、「生きているが死んでいる」「生死不明の重ね合わせ状態」は、同一のものとみてよさそうです。
私個人には「存在・不存在」という言い方がわかりやすいのですが、これを「生か/死か」で表現していることには強い意味があると思います。以下それについて。
ひとつめとして、「生死不明の重ね合わせ状態」という言い方は、きわめて強力に「シュレディンガーの猫」を連想させます。レイシフトのコアアイデアはシュレディンガーの猫ですよ、という真相に導く(これが真相だとするならですが)重大なヒントになる。
ふたつめ。英霊召喚は、「情報だけになった死者に魔力の肉体を与えて憑依させる」ものです。英霊とは死者である、という念押し表現はあちこちに出てきます。
そして本稿では英霊召喚とレイシフトは同一のものです。
英霊召喚の説明にも、レイシフトの説明にも「生死」の表現をちりばめることで、「英霊召喚とレイシフトは同一のもの」という仮説に到達しやすく(仮説を構成しやすく)もなっている。
英霊召喚は死者の情報を取り寄せる技術で、レイシフトは対象を疑似的に死者にして情報を送り出す技術、という言い換えができますね。
これひょっとして「死者の情報を扱う技術」なのかな。
みっつめ。Aチームはコフィンに保存されていたとき、謎の光に呼ばれて「生きるか死ぬか選べ」と言われていました。コフィンの中で「生きてるが死んでる重なり状態」にある人物が、「生きるか死ぬか選べ」と言われるのはきれいに整っている。
奈須きのこさんがレイシフトの設定を作ったとき、すでに「Aチームが生死の選択をせまられる」というプランは握られていたでしょう。設定とストーリーがうまく合わせてある。
(こう考えると、生きたり死んだり自在な虞美人パイセンにレイシフト適性があるのはめちゃめちゃ納得だ)
よっつめ。
「生/死」と「存在/非存在」が同じものとするならば。
「死んだ人間はその場において不存在と判定されるので別の場所に存在していい(レイシフト可能)」
ということになる。(くどいですが本稿における仮説)
この話が示唆する最大の極論は、
「死んだ人間は、どこか別の場所で生きてることにできる」
これを使ってカドックを蘇生できたら御の字なんだけどたぶんそう都合よくはいかなくて、これで生き返るのはデイビットに詰められて拳銃自殺したマリスビリーだろう。
拳銃自殺したマリスビリーはその時点で「不存在」という判定になるのでレイシフト可能条件を満たす。
マリスビリーはレイシフトによって、死んだ瞬間どこか別の場所に生きた状態で出現することができる。死んでさえいれば不存在判定を満たすので、死体がそこに転がっていても問題はない。
(モルガン)
異聞帯という隔絶世界において、
これだけの力を発揮する術式は、異常だ。
……この先、機会を得る時があるのなら、
もう一度、原初の因果に立ち返るがいい。
カルデアとは何なのか。
レイシフトとは、何のために用意されたものなのかを。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 24節
「レイシフトは何の目的で作られたのか考えてみろ」という宿題を出してモルガンは去って行きました。
出題者のモルガンは、レイシフトで過去に飛び、歴史改変を行った人です。それよりキッツイことは多分やってない。モルガンは「レイシフトで実現しうる究極の事象は歴史改変だ」と思っていそうです。
じゃあ、素直に考えて、宿題の模範解答はこうでしょう。「レイシフトは過去を改変するために作られた」。
レイシフトを実用化したのはマリスビリーなので、マリスビリーは過去改変のためにレイシフトを開発した。
おそらくすでに過去は改変されており、登場人物はそれを知らないだけでしょう。
ここで詳しく書いたのだけど、マリスビリーは聖杯戦争というものが2004年に行われていたことを事後に知った。どこかの誰かが勝利して願いを叶えたとのことだ。オルガマリーによれば、カルデアがそれを知ったのは2010年。
(オルガマリー)
そのラプラスによる観測で、2004年のこの街で
特殊な聖杯戦争が確認されているのよ。
(略)
カルデアがこの事実を知ったのは2010年。お父さ……
いえ、前所長はこのデータを元に召喚式を作った。
『Fate/GrandOrder』序章 4節
もし2004年の聖杯戦争に参加していたら、カルデアスを稼働させるための燃料代を稼げていたのに……と2010年のマリスビリーは考える。
そこで、この聖杯戦争に登場するサーヴァントの弱点を調べておき、2004年以前の自分自身にレイシフトする(自分の自然死の瞬間に実行すればいい)。自分が死ぬ瞬間までのすべての経験を持った若い自分が過去に発生する。
ソロモンの指輪を入手して2004年の聖杯戦争で無双する。手にした資金でカルデアスを完成させる(歴史改変成立)。カルデアスで地球白紙化を決行する。
この想定の場合、マリスビリーが改変した歴史は「2004年聖杯戦争」の勝者。これにより、本来なかったはずの「カルデアスが完成」というイベントが発生するので、地球白紙化が起きる。つまりFGOにおける2004年以降の歴史は、本来の歴史から分岐した枝。
このへんのことは、以下の動画に教えられて書いているものなので、ご覧になって下さいね。
【FGO考察】特異点Fに関する現状の論理的考察(れもんまい)
この話の流れで言うと、「マリスビリーが聖杯戦争に参加しなかったのでカルデアスも完成しなかった歴史」が本当の正史なのであって、ダ・ヴィンチちゃんやぐだが正史だと思っているものは、少なくとも2004年以降に関しては「正史とはいえない」のではと疑える。
ところでモルガンは正史ではありえなかった「空想樹を枯死させる」というイベントを発生させ、正史ではありえなかった妖精國を建国し、正史には存在しない女王歴を2000年間積み上げました。空想樹の枯死以降はブリテンは異聞帯ではなくなったので、それ以降は「特異点」と呼ばれている。
じゃあ、マリスビリーの過去改変で生まれた、正史とはいえない2004年以降の世界は、なんと呼べばいい?
それって、「特異点」と呼べるのでは……。
マリスビリーが歴史を改変しようとしたために、2004年の冬木市はおそらく特異点化した。それが修正されることなく継続したらどうなる? 全世界に広がる。特異点が正史を乗っ取る。
FGOの登場人物は、特異点Fのことを特異点だと思ってる。なぜなら自分が属する世界を正史だと思っているからだ。
でも、FGOの基準平面がじつはぜんぶ特異点なんだとしたら?
特異点からみて特異点に見えるもの。
もし仮に、FGOの冬木市に正史がコリジョンしてきたら、それは特異点に見えるだろう……。
特異点Fは、この世全てが特異点となった世界に一点だけポワッと浮かび上がった正史の空間なのである……。
なんていうアイデアは、世界がひっくり返った感じがして私の大好物です。
だから特異点Fには、正史の聖杯戦争の本来の勝者であるセイバーが仁王立ちしている。セイバーはこの「特異点に見える実は正史」の時空で全世界を再上書きし、「正しい歴史を取り戻す戦い」に勝とうとしている。特異点修正をしているのはセイバーのほうだったんだ……。
なんて展開になっていったら、それはそれで大問題が発生しますね。セイバーに肩入れしたくなるけれど、セイバーに勝たせたら白紙化の問題は消えてなくなるかわり、これまでのぐだの旅路もぜんぶなかったことになる。なかったことになってもいいのか? 私は絶対いやですよ。
でも、「ぐだの世界は存続してもらったら困るので、ぐだの世界には消えてもらいます」は、異聞帯の物語をまるごとひっくり返したものなので、これを主人公につきつけるのは魅力ある展開だよなあ……とも思います。以上レイシフトに関する考えのまとめでした。
本稿を書いたあと、
「そういや、モルガンがマシュを過去にレイシフトできたのはなぜなんだ?」
という疑問につきあたりました。
モルガンは「水鏡」という魔術で、厄災を妖精歴の時代に投げ込もうとして、うっかりマシュを放り込んでしまいましたが、妖精歴にマシュの身体はありません。
レイシフトで送れるのが本当に情報のみであり、過去世界に肉体がない場合に消滅してしまうのであれば、妖精歴400年に肉体を持ったマシュが出現したのはすじが通らないことになる。その時代にマシュはいませんからね。
と思ったのですがアヴァロン・ル・フェを読み直したら自己解決しました。モルガンは物体を物体のまま移動させる転移魔術を持っている。
(ベリル)
さすがモルガンの『合わせ鏡』、
ほとんど魔法だぜ!
汎人類史じゃあこんなお手軽な『転移』は
お目にかかれない。
使えるとしたら時代に置いて行かれた『魔女』くらいだ。
それだけで敬愛に値する。
(略)
親基(おやもと)の鏡といくつもの子鏡を繋いで行う、
次元接続そのものといえる転移(シフト)。
(略)
おまけに、カルデアでも為しえていない、
『棺』なしでのレイシフト!
まさか『厄災』を大昔にスッ飛ばして、
負債を“過去”に押しつけていたとはなぁ!
『Fate/Grand Order』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 14節
バーヴァン・シーがワープで出現したのを見たベリル・ガットは、引用のような長い説明ゼリフをのべます。
モルガンは「合わせ鏡」というワープの魔術を持っていて、空間の二点をつないで、即座に別の場所に移動できる。そのしくみは次元接続であると言っている。
次元接続ってなんなんだと思いますが、TYPE-MOON作品では「合わせ鏡」という語は、平行世界を扱うときにわりと使われがちですので(stay nightの宝石剣のシーンで使われてた記憶がある)、第二魔法に類似したもの、たぶんいったん別の世界に移動し、元の世界の別の場所に戻ってくるようなイメージだと思います。
ベリルはここで同時に、「水鏡」の正体はレイシフトだとも述べている。このベリルの長ゼリフは、「レイシフトで送れるものは情報のみ」という設定と、「マシュを過去世界に送る」というストーリーとの齟齬を解消する目的で置かれているのでしょう。
モルガンは「別の場所に物体を移動する」魔術と、「物体の情報を過去に送信する」魔術を持っていることになりますから、それを組み合わせれば「物体を物体のまま過去に送り込む」ことはできそうな感じです。
「水鏡」に、「合わせ鏡」の技術が使われていることは、以下のシーンでわかります。
(トネリコ)
うーん……『合わせ鏡』と同系統の大魔術を
察知して、東の海岸までやってきたのですが……
あ。もしかして北の妖精ですか?
転移に失敗して、こんな何もないところに
はじき出されてしまったとか?
『Fate/Grand Order』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 断章/5
トネリコは「合わせ鏡」とソックリな魔術が使われたのを察知して、その場所に駆けつけてみた。そこには「水鏡」で送り込まれてきたマシュがいた。ひょっとして転移魔術に失敗した北の妖精ですか? という内容です。
トネリコは「水鏡」の形跡を見て「これって合わせ鏡じゃん」と思うのですから、水鏡がレイシフトと合わせ鏡の合体技なのはほぼ間違いないと思います。
ぐだは100万人のプレイヤーが重なり合った存在だ、という話をしたんだけども、それに関連して。
我々プレイヤーは、一人一人が別人でありながら、同時にぐだという一個の人物である。
いってみれば、我々は、ぐだを通じて同一人物なのであるという言い方ができます。
ときに。
別のプレイヤー(フレンド)の所持サーヴァントを1人レンタルできるというゲーム上の機能がありますね。
他人のサーヴァントを借りられるという機能の正体はレイシフトじゃないかという話はどうでしょう。
我々は全員がぐだなのですから、全員がぐだの身体を持っている。ということは、自分から情報をひっこ抜いて、別のぐだに宿らせることができるし、他人から情報をひっこ抜いて、自分の身体に宿らせることができる。
我々プレイヤーは、全員がぐだだけど、ストーリーの進行状況はまちまちで、他人が召喚しているサーヴァントを自分が持っていなかったりするし、その逆もある。だけども全員がぐだなので情報の送受信は自在である。
誰かからサーヴァントを借りているときは、その誰かの、ぐだとしての情報の一部を自分の身にレイシフトさせている。誰かにサーヴァントを貸しているときは、自分の情報を誰かめがけてレイシフトしている。
自分の身体に別のぐだの情報をレイシフトさせているとき、自分は自分であると同時に「別のぐだ」でもある。だから、「別のぐだ」のサーヴァントを自分のもののように呼び出すことができる。
という想像は面白いと思ったので、ここに置いておきますね。「元のぐだが消滅してない」という事象は面白さ優先でいったん忘れましょう。
『月姫』にはロアという登場人物がいます。
この人(吸血鬼)は、死んだら転生して、ずっとこの世に存在しつづけることができるという特殊能力を持っています。
彼は、生きているうちに次の転生先を決めておきます。
彼が死ぬと、転生先となる胎児もしくは幼児を魂ごと乗っ取ります。その胎児か幼児はロアの記憶や能力を転写され、成長するとロア本人になります。
・元の自分の死亡(不存在になること)を条件とする。
・別の肉体めがけて、自分の全情報を送信する。
ということで、ロアが転生と呼んでいるものは、めっちゃレイシフトっぽい。というか、ほぼレイシフトなんじゃないか、と疑えます。
この考えにおいて問題となるのは、「ロアのレイシフト先がロアの身体ではない」ことです。
モルガンのレイシフトの例では、過去にモルガン本人がいて、そこめがけて情報を送信することができました。
ぐだちゃんのレイシフトにおいては、本稿の案では、「レイシフト先にぐだの身体がある」可能性をむりやり100%に引き上げる魔術によって、それを可能としています。
どっちの例でも、「行き先に本人の身体がある」ことを大前提としています。
しかるにロアの転生先は、まったくの別人なのですから、ここに向かってレイシフトできるのはおかしい。だからロアの転生はレイシフトではない、と考えることができます。
が。
「私と、あの胎児は、同一人物であると定義する」
という魔術かそれに類する方法が存在すれば話は別だ。
何しろTYPE-MOON世界観では、「概念のレイヤーを操作する」という超自然の方法が大々的に取り上げられているのです。不死の怪物の概念レイヤーに「おまえはもう死んでいる」と書き込めば、絶対に死なない怪物は死ぬのです。
「おまえは私だ」
とでも書き込めば、おまえと私は同一人物となり、私はおまえにレイシフトできてしまうでしょう。
ところで、ちょいと話はズレますが。
「オルガマリー所長はレイシフト適性0%である」
という設定がありました。これって何のためにある設定なんだろうなあ、とモヤモヤ揉んでいたところ、ちょっとした思い付きがありました。一言で述べると、こういうことです。
「マリスビリーは、娘オルガマリーの身体にレイシフトする計画を持っていた」
マリスビリーは、自分が死ぬことはわかっていた。死ぬとき、自分の全情報をトリスメギストスなりカルデアスなりの「サーバー的なもの」にアップロードしておくことにした。レイシフトの技術は、人間ひとりをまるごと情報に変換することを可能にするから、当然そういうこともできそうだ。
で、サーバー内でいろいろ悪だくみを進行し、さて、現実世界に肉体を持った状態で帰還しなければならないとき、オルガマリーの身体に向かってレイシフトする。するとオルガマリーはマリスビリーの魂で上書きされてマリスビリーになっちまう。
「オルガマリーの身体に向かってレイシフトすることは可能なのか」という点については、ロアの転生の例を参照すればよい。なんらかの方法を使って、「マリスビリーとオルガマリーは同一人物だと定義する」ことができればよい。
オルガマリーは、死んだマリスビリーの魔術刻印を移植されているはずです。オルガマリーはマリスビリーの魔術刻印を持っている。
「マリスビリーの魔術刻印を持っているのだから、オルガマリーはマリスビリーである」
と定義するのは、魔術論的に、そんなに違和感を覚えません。
そんなわけで、「マリスビリーはオルガマリーの身体にレイシフトするつもりです」という仮定を置くことにしましょう。
この仮定において、マリスビリーは、オルガマリーがあっちこっちホイホイとレイシフトしてもらっちゃ困る立場かもしれません。
本稿の案におけるレイシフトは、「人間ひとりの実在性をあやふやにする」ことで成立しているものです。
本案のカルデア式レイシフトは、言い換えるならば、
「ぐだという人を実在しないかもしれない架空の存在に変え、《特異点上にいるという空想上のぐだ》を実在のものとして扱う」
ってなシロモノです。
オルガマリーがもしどこかにレイシフトしたら、その間、オルガマリーは現実から剥がれて、いるようないないような、どっちつかずのものになる。
本案のマリスビリーにとって、オルガマリーは、現実に帰還するためのアンカーなので、現実にしばりつけられた存在であってもらわねば絶対に困る。
だからマリスビリーは、あらかじめオルガマリーからレイシフト適性を「奪う」。
魔術的な操作で適性を奪うことができればそれが最上だけれども、カルデアのシステムにあらかじめ「オルガマリーのレイシフト適性がゼロだという結果を出力すること」「コフィンにオルガマリーが入った場合はレイシフトを停止すること」というプロンプトを入力しておくだけでも事足りる。
上記のようなマリスビリーのたくらみを想定する場合、始皇帝がレイシフトについて「邪法の匂いがする」と述べるのは納得だ。なぜならこれは他人の存在をまるごと奪うことを想定した術だからだ。
(始皇帝)
中華全土の隅々から、ありとあらゆる外法、
禁術をかき集めていただけに……
今にして思えば、
そりゃ徐福も逃げだそうというものさ。
『Fate/Grand Order』幕間の物語 裁定者の憂鬱
不老不死になるために、世界中から「外法」「禁術」を集めていたという始皇帝が、
(始皇帝)
まずそもそもレイシフトなる仕組みが、どうにもなぁ……
いまひとつ気に食わん。そこはかとなく匂う邪法の気配がな。
『Fate/Grand Order』幕間の物語 裁定者の憂鬱
レイシフトを「邪法」っぽいと述べる。
レイシフトが、「ロアのように他人の身体を奪って不老不死を実現する」ことにフォーカスしたものならば、不老不死の外法に一家言ある始皇帝はこれを邪法と呼ぶだろう。
そういえば『ロード・エルメロイ2世の事件簿』を私はアニメで見たのですが、「マリスビリーは冬木の大聖杯が使い物にならないと知ったときからオルガマリーへの興味をなくした」といった話がありました(うろ覚えですけど、ありましたよね?)。
冬木の大聖杯が願いをまともに叶えないのならば、資金が手に入らないので、カルデアスは起動しない。カルデアスが動かないなら地球白紙化から始まる陰謀は実現不可能なので、自分をサーバーに保管したり、オルガマリーの身体にダウンロードすることがそもそも無意味となる。
マリスビリーにとってのオルガマリーの用途は現実に帰還するためのレイシフト先ということ(のみ)だったので、陰謀がご破算になったとたんに用途がなくなったオルガマリーに興味をなくした……なんてのはそれなりに帳尻が合います。
(過去改変のプランを思いつき、つまり並行世界に行く気になったので、この世界のオルガマリーに興味をなくした、なんてのでもいいかなとも思います)
そういえばデイビットが、「レフがオルガマリーをカルデアスに放り込んでくれたおかげで逆転ホームランだ」みたいなことを言っていました。
(デイビット)
あの時点でゲーティアの手管は、
魔神柱の企みは完璧だったが……
その中でも、さらに奇跡の一手と言えるものが
レフ・ライノールが君に向けた感情だ。あれがなければオレたちに逆転の道はなかった 。
魔術王ソロモン。いや、魔神王ゲーティア。
彼はあの時、人理を焼却しながら、
同時に人理の防人(さきもり)を生みだした。
『Fate/Grand Order』黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン 第19節(傍点原文ママ)
レフのおかげで、オルガマリーの肉体は現世から消滅した。そのおかげで、マリスビリーは肉体を持って現実に帰還することが不可能になった。ハッハハ!ざまぁ。みたいな意味として受け取ることは可能かもしれません。
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FGO:カリオストロとシトナイとカルデアの者に関する着想
筆者-Townmemory 初稿-2025年2月23日
[奏章3までの情報を元にしています]
FGOに関する記事です。
一記事としてまとめるほどでもない雑多なトピックを三題取り上げます。
そろそろFGOのさまざまな謎にも種明かしがくる頃合い。種明かしされる前に、自分が考えたことをきちんと書き留めておこうというフェイズです。
なぜなら、作中で解明があったら、作中の説明に自分の考えが上書きされて、何を考えていたのか思い出せなくなってしまうから。
お題は、
・カリオストロ伯爵は「カルデアを誘導」する役目だったのか?
・シトナイは誰に呼ばれたのか
・カルデアの者(ロマニもどき)の中身は何か
の三本です。
■カリオストロ伯爵とカルデア誘導
そもそもカリオストロというキャラクターは、存在自体が後付けじゃないかと思っている私です。最初から「こういうキャラがいて、ここで出す」と設定されていたわけじゃなくて、書き進めていったら「ここで悪役がもう一人必要ね」となったために用意されたような感じがしている。
異星の使徒にカリオストロを足したら、ちょうど具合良く7人になったので、「異星の使徒は7人だったか」みたいなセリフが足された、ような。
その「異星の使徒は7人だったか」発言をしたロマニもどき、「カルデアの者」氏。こんなことも言っていました。
(ロマニ・アーキマン)
……やはり、異星の使徒も7騎 だったか。
異聞帯側を監視、先導するための3騎。
司祭。アトラス殺し。悪性化身。
カルデアを監視、誘導するための3騎。
探偵。教授。伯爵。
そして、リーダーである『神』。
『Fate/GrandOrder』黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン 24節
カルデアの者は、カリオストロ伯爵の名前を、「カルデアを監視誘導する役目」として挙げている。
我々は、イドでカリオストロが滅ぶところまで見たわけですけど、彼がカルデアを監視したり誘導したりしていた形跡ってありましたっけ。ないような。
これについて、ちょっと思いついたことがあります。
カリオストロ伯爵の名前が初めて出たのは「平安京特異点/亜種異聞帯」でした。天覧聖杯戦争で呼ばれた7人のキャスターの一人でした。これは早々に脱落したことになっており、セリフ等はありません。
蘆屋道満(リンボ)に敗れて、霊基をいじくられ、悪性情報(というもの)を詰め込まれて改造されまくり、いわば道満の式神のようなものになった、ということがプロフィールに書かれています。
○偽装工作:EX
カリオストロ伯爵は自らの存在を鮮やかに偽装する。
己のクラス及び能力を偽装することができる。
『Fate/GrandOrder』アレッサンドロ・ディ・カリオストロ プロフィール3
奏章IIにおける彼は、
平安京特異点/亜種異聞帯にて天覧聖杯戦争の一騎として(キャスターであると偽って)リンボに招かれた際、リンボの手で霊基及び霊核を改竄されることで、更に死ににくい&増えやすい悪性情報と化していたのである。
(略)
悪性情報としてのカリオストロは、平安京でのリンボとの接触時、および『遺分體』との初遭遇時に、一部ずつがカルデアのマスターの精神に潜り込んだものと予想される。
『Fate/GrandOrder』アレッサンドロ・ディ・カリオストロ プロフィール3
まず、カリオストロは「自分のクラスを偽れる」と書いてある。つまり、プリテンダーであることを隠してキャスターのふりができる。
天覧聖杯戦争は「キャスターしか召喚されない」という特殊なバトルロイヤルです。
キャスターしか参加できない戦いに、こっそりプリテンダーをまぎれこませる意図はなんだろう。
プリテンダーは、蘆屋道満(リンボ)のクラス・アルターエゴの天敵だ。
となるとこれは、道満に対する刺客じゃないか。
もっとはっきりいうと、道満(リンボ)のスタンドプレーが手に負えなくなってきたので、異星はここらで道満を盤からとりのぞこうと判断した。天覧聖杯戦争にプリテンダーを送り込んで始末することにした。
だが、天覧聖杯戦争はキャスターしか参加できない。
そこで、プリテンダーの中から、キャスターに偽装できるサーヴァントが選抜された。
この想定の場合、カリオストロが「なんかとってつけたように急に出てきたな」という感じで登場するのは当然です。なぜなら異星が、「今、急に必要になったから」取り出してきて盤上に置いたコマだからです。
で、平安京でカリオストロと相対した道満は、当然それを見抜いた。戦闘のすえ、撃破した。撃破したはいいが、「ンンン? 殺すのはちと惜しいですかな?」
自分の手駒として意のままに動いてくれるプリテンダーがいるというのは何かと便利だ。なぜなら今後、他の異星の使徒とのあいだで戦闘が発生するからだ。異星が自分を取り除こうとしているということは、村正やラスプーチンをけしかけられる可能性が高い。
でも彼らはアルターエゴなので、カリオストロがいれば有利に戦えますぞ。
そこで、自分の悪性情報をカリオストロにつっこんでぐちゃぐちゃに改造する。悪性情報というのは、よくわかりませんがたぶん、リンボのすげぇ悪そうな感じがするところをドロドロに煮詰めた汁みたいなものでしょう。そうしてカリオストロを自分の式神にしてしまう。
でも、それをやったら、異星に対して完全に敵対行動をとった、ということになってしまう。それはそれで、よろしくない。いざというとき、うまいこと言い逃れができるようにはしておきたい。
そこで、こんなことを画策したんじゃないか。
まず、カリオストロを、リンボの悪性情報に反応して悪事をなしはじめるという形にプログラムしておく(改造)。
つぎに、カルデアに、カリオストロ要素の混ざった悪性情報を送り込んでおく。
(上記の引用部に、「平安京でぐだに悪性情報をプリントしておいた」という趣旨が書いてある)
カルデアが、なんかのきっかけで「通常サーヴァントとしての」カリオストロの召喚に成功したとする。これはカルデア式召喚で召喚されたカリオストロなので、異星に支配されていない状態にある。
が、カルデアにはカリオストロの悪性情報が送り込んである。カルデア式で召喚されたきれいなカリオストロは、悪性情報が転写されて、異星の使徒として覚醒する……。
この想定の場合、カルデアは、自分がカルデア式で召喚したサーヴァントなので、カリオストロを疑わない。しかしカリオストロは、召喚後に異星の使徒と化すのである。
カリオストロは、「味方のふりをしてカルデアにまぎれこんだ敵」という役回りになる。
直接的にストームボーダーのエンジンを壊してもいいが、あくまでも味方のふりをしておいて、少しずつカルデアを追い詰め、窮地にもっていってもいい。
この場合、「カリオストロ伯爵はカルデアを監視・誘導する役目だ」が成立するのです。
そして道満にとっては、異星への言い訳になる。「これこのとおり、ちゃァんとお役に立っておりますぞ」と。
が、この悪だくみは(悪だくみが仮に存在したとして)実現しませんでした。それはなぜか。
「奏章2 イド」には、重要な役回りとして道満が登場します。ストームボーダーにいて、カリオストロ退治のための切り札を切ってくれるのです。
プレイヤー一人一人のサーヴァント保有状況はともかくとして、FGOのメインストーリーにおいては、「カルデアは蘆屋道満を召喚し、味方につけている」ことが確定したわけです。
カルデアにいる蘆屋道満は、昔の自分の悪事を、任意にキャンセルすることができます。これがひとつ。
もうひとつ想定したいのは、道満の計画では、イドの冒頭、「耀星のハサン」が自動召喚されたあのタイミングで、本当はカリオストロがカルデアに来るはずだったというのはどうだろう。
カルデアが全く意図していないのに、耀星のハサンが召喚機から勝手に飛び出てきた。そんなことは本来ありえない挙動だ、何が起こっているんだ、と、カルデアはちょっとしたパニックになっていました。あれは、カリオストロをむりやりカルデアにつっこむためのハッキングだったんじゃないかと考えるわけです。
ところが物語で描かれたとおり、カルデアとの縁は耀星のハサンのほうが強かった。カリオストロが召喚されそうなところ、ハサンがこれを押しのけて「俺が行くんだ!」と飛び出してきた。なのでカリオストロを獅子身中の虫としてカルデアに送り込む計画はおじゃんになった……。なんてのは、泣かせが入って私はすごく好みです。
で、計画はおじゃんになったけれど、ぐだの中には道満があらかじめつっこんでおいた悪性情報が入ってる。道満はそれをすっかり忘れてた。その悪性情報がカリオストロのかたちをとって、イドで大暴れするという流れになっていく。
■シトナイさんは異星の使徒なの?(シトナイの話1)
北欧異聞帯にシトナイというサーヴァントが現れました。イリヤの姿をしていました。女神三柱をブレンドしたハイ・サーヴァントだそうです。クラスはアルターエゴ。
黒いバーサーカーを連れていましたので、素体は「特異点Fにいたイリヤ」だと推定できます。特異点Fには、冬の城を守る黒いバーサーカーがいましたものね。お城で眠っていたか死んでいたかしたイリヤを北欧にもってきて、寒そうな地域の女神たちを闇鍋につっこんだ感じでしょうか。
複数の神格の複合サーヴァントで、クラスがアルターエゴというのは、異星の使徒のありかたと酷似しています。異星の使徒は、だいたい、てきとうなガワに神様と怪獣をつっこんでアルターエゴ仕立てにしてみましたという成り立ちになっています。
シトナイも、どっかから拾ってきたイリヤというガワを神様詰め合わせセットにしたアルターエゴなので、「実はシトナイは異星の使徒でした」とするなら、成り立ちに限ってはとてもしっくりきてしまいます。
じゃあ、シトナイは異星の使徒なのか?
そうにも見えない。シトナイのほうからぐだに接触してきて、ストーリー中、一貫して協力的だし、「後回しとかにしないでここで是が非でも空想樹を切ってくれ」と言ってくる。
これまで、「空想樹、切っときましょう」と言い出したり、画策したりした異星の使徒は、私の記憶のかぎりではいない。
ロマニもどきもシトナイを使徒の人数に数えていない。
異星の使徒じゃないとしたら、この人の立ち位置は何なんだ。
ついでに疑問に思うなら、シトナイは北欧異聞帯において、存在意義がいまひとつ薄いです。この人がいたからこの物語はなんとかなった、という感覚がいまひとつ持てない。
たとえば「このお話からシトナイを抜いて書き直せ」と言われたとして、それは、そんなに難しい作業じゃないよねと感じるのです。
こういう疑問がある場合、たぶん、まだ読者には開示されていない水面下で、何らかの押し引きが発生しているとみるのが良いのかなと思います。
読者がまだ知らない勢力だったりして、読者がまだ知らない思惑に従って動いている。で、あとになって全部明らかになったとき、あー、あの人はそういうことをしてたのね、とわかる。
■シトナイさんのもくろみは何なの?(シトナイの話2)
シトナイまわりの微妙な動きは、ざっと列挙してこんなところ。
・汎人類史のサーヴァントを自称している。
・フォウが体毛を触らせるが、妙に暴れている。
・ぐだのことを知っていて、自力で縁を結んだ。
・ペーパームーンの名称と役割を知っていた。
・シグルドの排除を強く要求。
・空想樹の切除も強く要求。
・退去や消滅の描写はなし。
ゲッテルデメルングの8節に、地下牢でシトナイと初めて出会うシーンがあります。「私はどういう人か」をシトナイが長ゼリフで説明します。ここんとこ、会話がじつにふわっとしており、次あたりで重要なことを言いそうかな、と思ったら別の話題に飛んだりして、じつにあやしいです。
アヴァロン・ル・フェでキャスタークーフーリンが長尺で喋っていたときの感じとすごく似ている。たぶん、シトナイは、虚実入り交じったことを言っているだろう……と直感的に思います。
このシーンのフォウは、シトナイに自分を撫でさせているものの、「妙に暴れている」ともマシュに言われています。
これは、アヴァロン・ル・フェにおけるアルトリア・キャスターの妖精眼と同じ役割をフォウが担っている可能性がありそうです。
つまり、フォウが自分をだっこさせているのだから、シトナイは敵ではない。味方だろう。けれど、言ってることはわりと正直ではなくて、「おまえ、ウソつきだなぁ」とフォウにつっこまれている……そのくらいに私には見えます。
「汎人類史のサーヴァントである」とか、「スカディがシトナイを殺さなかったのは義理の母子だからだろう」とかいったあたりは、どうもウソか、正鵠をずらした発言のように見えます。
シトナイは、構成要素だけ取り出せば、イリヤもフレイヤもロウヒもシトナイも汎人類史産だとは思います。でもそれらをガッチャンコしてひとつのものにするのは、人為的な操作があると考えざるを得ない。「汎人類史のサーヴァント」という言葉からふつうに想像される、座から直接でてきた、土地が召喚したサーヴァントといったものとは考えづらい。
異星の使徒のような、神性複合系のアルターエゴ・サーヴァントは、
「神霊クラスの能力がないと完遂できないオーダーを与えたいが、神霊クラスの自我を持った存在はそのようなオーダーを受諾してくれないので、受諾してくれそうな人格に神霊の能力を詰め込む」
みたいな意図で作成されているように見えます。
何らかの人為的な操作を加えないとこういうサーヴァントは存在しないだろうし、具体的に何らかのことをさせたいという意思がないとこういうのは作らないだろう。
「スカディがシトナイを殺さなかった理由」については、初読の時点から「今必死で考えて言ってますね」としか見えませんでした。「じゃあこういう理由はどう?」とか、もうね……。
仮にそこがウソだとすると、「スカディがシトナイを殺さなかった本当の理由」は、シトナイにとって、隠しておきたい事情だったことになります。それはなんだろう。
じゃあこういう理由はどう? と私が言いますが、
「カルデアと協力すれば、スルトを倒せるかもしれないわよ。貴女さえよければ、私がカルデアをそういう方向に誘導してあげるけど?」
と、スカサハ=スカディにもちかけて怒りを買ったから、とかね。
スカディにとっては、「愚弄するでない」という話。でも、のちのち状況がかわって、その誘いに乗らざるを得なくなる可能性もある。だから、殺さずに閉じ込めておく。
この場合、シトナイの中にフレイヤがいることが、話を聞いてもらうために重要だった。スカディの親戚ですからね。
しかし、フレイヤの人格がどんな人なのかは不明で、ひょっとして別のことを突然言い出す危険性がある。スカディに全面的に協力して空想樹を守り始めちゃう可能性だってある。フレイヤ本人を召喚するのは危ない。
だから、フレイヤ以外に二柱の女神を混ぜ込んで三すくみにし、スタンドプレーをしないような構造にしておいて、メイン人格をコントロール可能なイリヤにする。
そうすれば、計画通りにものごとを運んでくれるだろう。
というふうに考えると、なぜこういうややこしいシトナイというサーヴァントが必要だったのかが説明できる。
そして、このことはカルデアには秘密にしておきたい。なぜなら、言ってることが聞くだに怪しいし、「この異聞帯にはスルトっていう地球破壊巨人がいまして……」なんてことをこんな初期にばらしたら、
「この異聞帯、だいぶやばいので、準備を整えるためにいったん撤退しましょう」
ということになるでしょう。種子が飛ぶくらい空想樹が育っているこの異聞帯から、カルデアが撤退してしまったら、「是が非でも空想樹を切ってもらいたい」シトナイとしてははなはだ困ります。
(シトナイ)
でも、空想樹は切っておいたほうがいいと思う。
なるべく早く。
(略)
(マシュ)
こと今回に限るなら……
彷徨海への到達が優先されるかも……
(略)
(シトナイ)
それはダメ。
後回しにするのは危ないの。
時間が経てば、そのぶん空想樹は成長してしまう。
完全に根付いてしまったら、どうするの?
ダメだよ、切らなきゃ。
『Fate/GrandOrder』無間氷焔世紀ゲッテルデメルング 8節
シトナイは「シグルドを今すぐ倒せ」「空想樹をなるべく早く切れ」としつこく要求してきます。この2つの実現が、シトナイに与えられたオーダーなのだと理解できます。
シグルドの中にはスルトがいます。ですから、「スルトの排除」「空想樹の切除」が、シトナイの勝利条件なのでしょうね。
シグルドを倒し、スルトが出現し、スルトがオフェリアをさらって去り、全員が「やばいぞこの状況どうしよう」と会議している場面。そこにシトナイが現れてこう言います。
(シトナイ)
いよいよスルトを倒して
お義母さんと皆が戦うのかと思ったのにね。
『Fate/GrandOrder』無間氷焔世紀ゲッテルデメルング 13節
シトナイのプランは、
1)カルデアがシグルドを倒す。
2)シグルドの中から出てきたスルトをカルデアが倒す。
3)空想樹を守りたいスカディとカルデアが戦う。
4)カルデアが空想樹を切除する。
というものだったでしょう(実際、ほぼそうなった)。
シトナイというコマを盤上に置いた何者かは、「複合サーヴァントを作る能力があり」「スルトを排除したくて」「空想樹も切除したい」人だったことになります。それは誰なの。
■シトナイさんは誰に作られたの?(シトナイの話3)
最初に思いつくのは我らがオーディン大兄です。
ゲッテルデメルングでは、何か意味ありげに二羽のカラスが舞います。カルデアを見守ったり誘導したりします。
ぐだが夢の中で、初めてシトナイと出会う場面で、カラスの鳴き声と羽音がします。
そして最後に、スカサハ=スカディが、「あの鳥はオーディンの使い魔である」という真相を明かすのです。
(スカサハ=スカディ)
ああ、見よ、空を。
そうだ、おまえたちには教えてやろう。
あれこそは、北欧の大神オーディンの遣いたる比翼である。
(略)
(スカサハ=スカディ)
オーディンめ……
私に最後まで機会を与えたが……
おまえたちをも、あの二羽で導いていたとはな。
ふふ。なんとも……奴らしい……
私だけを……
導いてはくれぬのだからな……―――
『Fate/GrandOrder』無間氷焔世紀ゲッテルデメルング 18節
これらのことから、オーディンは「シトナイとぐだが出会うようにしむけた」「スカサハ=スカディにも協力していた」となります。
スルトの撃破は、スカディとカルデアが協力しあってやっとできるかできないかというクエストなので、オーディンがスカディにも協力していたというのは納得できる話です。
前述の「シトナイがカルデアとの協力をスカディにもちかけた」というアイデアともぴったり合います。シトナイはオーディンの遣いとして「カルデアと協力してスルトを倒せ」と申し出た。そうでもしなければ無理だと。
オーディンは今のところ、(どうも怪しげなそぶりはあるものの)一貫してカルデアに協力しています。スルトを放置すると全地球が火あぶりになって人類史の奪還どころではなくなりますから、ここでなんとかしてくれというのはカルデアのためにもなります。
空想樹を切れ、のほうはどうでしょう。それはもう、空想樹を切らないと汎人類史は消え去ったままですから、切らなければいけませんが、それはすべての異聞帯でそうでしょう。「絶対に後回しにするな、今すぐ切れ」という誘導をかけるほどかしら。種子をまき散らせるほど空想樹が育ってるから? うーん。
北欧異聞帯に限って、今すぐ、どうしても空想樹を切ってほしい何らかの理由があると座り心地がいいんだけどなあ……と私個人は感じます。
ひとつ、思いつくには思いついたんですが……。
地球白紙化に始まる第二部のクライシスは、「異星」という謎の存在がいて、「汎人類史、ダメだから抹消しましょう」「そのかわりに、剪定事象(異聞帯)の中から見込みがありそうなのを復活させて、こっちを人類史として存続させましょう」と言い出した動きに見えます。
異星の中でいろいろ起こっていそうというのはさておいて、外形的には、そういう計画が遂行中だと受け取れます。
採用された異聞帯の空想樹には、「神」が降りてくるとされます。物語上で実際に起こったのは、オルガマリーそっくりの人物が、地球元首とか地球大統領とか名乗って出現したという事象なわけですが。
オルガマリーが出現するというイレギュラーが発生しなかった場合、「採用された異聞帯の土着の神」が降臨する予定だったんじゃないかと仮定したいのです。
たとえばインドなら、ブラフマーとかヴィシュヌといった主神クラスがおりてくる。もちろん、ここに降りてきた神は、異星の影響と支配を受けていて、異星の代理人になっている。
異聞帯の土着の民は、異聞帯の土着の神の言うことをきくだろう。新たな人類史として格上げとなった異聞帯は、「地球元首ブラフマー(例えば)」の指導のもと、まちがった方向にいかないよう監督されながら人類史を継続させていく。神に導かれる時代からやり直せってことですね。たぶんペペロンチーノあたりは、こうなるのがよいと思ってクリプターをやっていそうな感じ。
さてこういう想定が可能だとしたら、北欧異聞帯の空想樹からは、「異星の支配を受けた地球大統領オーディン」が降臨してしまう可能性がある。
この事態は、オリジナルのオーディンからしてみたら避けたい事態じゃないか。北欧異聞帯の空想樹だけは、なんとしても切除してくれといいだしてもおかしくなさそうだ。
こういう想定の場合、神への信仰が根強い異聞帯であればあるほど、異星にとって都合がよくなる。オリュンポスと北欧が、有望な異聞帯だとされたのはそういうことかもしれない。
オリュンポスの空想樹にアトラスを降ろすことができたのは、空想樹がもともとそういう機能を持った機械だからとするわけですね。キリシュタリアは、降りてくる神をコントロールするだけでよかった。
そして平安京特異点/亜種異聞帯の蘆屋道満(リンボ)は、自分が作った亜種空想樹が、まがいものゆえに神が降りてこないことを知っていた。
で、
「神が降りてこないゆえにまがいものだと言うのなら、神を入れたら本物になる道理ですかな?」
そういう意図をもって、伊吹童子という神を、外から空想樹の中へ放り込もうとした……なんてのはおもしろい話かもしれません。
ただ、最初の疑問に戻るのだけど、オーディンの意図が仮にそうだとしても、オーディンに神性複合サーヴァントを作る能力ってあるんだろうか?
■オーディンはどこにいるの?(シトナイの話4)
あるでしょ? だってキャスタークーフーリンがそれっぽいじゃん、と言われれば、それはそう。
でも、そうじゃなかったらちょっと話は不穏になります。
複合サーヴァントを作れるのは異星だけなので、シトナイを作ったのは異星だ、シトナイを操ってるのも異星だ、としても話は通ります。そして、それは実は、不穏ではないと思うのです。
北欧異聞帯にはスルトがいる。スルトに空想樹を食われて異聞帯の外に出られたら、異星の計画はだいなしになる。地球そのものがなくなるような事態ですからね。
なのでこの異聞帯はあきらめよう、空想樹は切って、スルトを倒しにかかろう。ちょうどよくカルデアがいるから利用しよう。首尾よくそうなった。カルデアも異星もwin-winだ。
不穏なのは、「カルデアにシトナイが助力したのはオーディンの意思だが、シトナイを作れるのは異星だけ」という場合です。
あの、「オーディンはいったいどこにいるの?」という問題があります。英霊の座でしょうか。グリムは、オーディンの意思=抑止力の意思だと言ってます。でもスカディは、カルデアは抑止力の助力を得ていないとも言ってます。星の内海?
もし仮に、オーディンの居場所は異星であり、オーディンは異星の意志のうちのひとつである。だから複合サーヴァントを作れる。とした場合、話は不穏になってきます。
これは、「異星というのは一枚岩の意思ではない」と仮定する場合にのみ成り立つ話です。いちばん単純に言うなら、異星の中身は「マリスビリー」と「反マリスビリー」に分かれてる、みたいなモデルを想定する。
オーディンは異星の中の反マリスビリー派なので、マリスビリーと戦ってくれそうなカルデアに協力する(倒したら地球白紙化が確定するアルトリアオルタ退治に協力したのも納得だ)。
でもオーディンは異星側なので、最終的にはカルデアと対立しちゃう。キャスニキとグリムとシトナイと戦闘するような事態になる。
自分で書いといてなんですが、私は「こうならないほうが良い」という立場です。お話がこうなるの、あんま良くないかなって思います。
でも、「味方だと思っていたがそうではなかった」は、物語の古典的な構成要素ですし、奈須きのこさんがこういうのやりそうな人かやらない人かといえば、前者寄り。
シトナイの話はここまで。
■カルデア式召喚第一号は誰なの?(カルデアの者の話)
カルデア式召喚第一号は誰なの? 本当にソロモンなの? という問題があります。
カルデアは大聖杯によらない英霊召喚を実用化したわけですが、召喚例の第二号がマシュの中のギャラハッド、第三号がレオナルド・ダ・ヴィンチとされています。
成功例第一号については、ずっと伏せられていて、第一部の終局特異点でソロモンが「それは私だ」と述べます。
(Dr.ロマン)
だがその指輪をマリスビリーは発掘し、
聖杯戦争に勝利する為の英霊を召喚した。
それがソロモン。カルデアの召喚英霊第一号。
マリスビリーと共に聖杯を手に入れ、願いを叶えた英霊だ。
『Fate/GrandOrder』終局特異点 12節
しかし、カルデアの召喚技術は、冬木の大聖杯からリバースエンジニアリングしたものだったはずです。
冬木の聖杯戦争に勝利しなければ、カルデア式の召喚は実用化されないはず。
そして、冬木の聖杯戦争に勝利するためにはソロモンを召喚する必要があるのですから、冬木でのソロモン召喚は、カルデア式であったはずがない。冬木でのソロモン召喚は、冬木の大聖杯によるものでなければおかしいです。
上記の引用では、ロマン=ソロモンは、「カルデアの召喚英霊第一号」とは言っていますが、「カルデア式の」とは言っていません。
ソロモンはカルデア所長マリスビリーが召喚したので「カルデアの召喚英霊第一号」とは言えますが、「カルデア式の召喚例第一号」とは言えないことになります。
これは、「カルデア式で初めて成功したのはギャラハッドだが、号数はなぜかソロモンを1番としているので、ギャラハッドは2番になっている」とでもすれば、問題はありません。
でもそう受け取らない場合、「カルデア式召喚の成功例第一号は誰なのか」という問題は、依然として存在していることになります。
この問題についての私の答案はこうです。
●2004
冬木市。大聖杯でソロモン召喚(1回目)。人間ロマニ誕生
●2005~2010
ロマニと指輪を触媒にしてカルデア式でソロモン再召喚(カルデア式第一号・2回目)
再召喚されたソロモンは出奔orカルデアにて秘匿
●2016
終局特異点、座からソロモン消滅
●2017~
再召喚ソロモン、自由になる。カルデアの者として活動
つまり、マリスビリーはソロモンと一緒に聖杯戦争に勝ち、大聖杯から召喚技術を得て、カルデア式召喚を開発し、「最初にどの英霊を召喚しようか」となったとき、第一号としてソロモンを選んだ。冬木とカルデアで、計2回、ソロモンを召喚したっていうことです。
心情で考えても、マリスビリーは、絶対的にソロモンを呼びたいだろう。
気心が知れているし、信頼を置いている相手だ。なにより重要なのは、「召喚直後いきなりキレ散らかしてカルデアを全滅させたりはしない」と保証されている。
カネと時間をかけて触媒を用意する必要もない。だってカルデアには、ソロモン本人だった人間(ロマニ)と、ソロモンの指輪があるのですから。
この場合、ソロモンは「カルデアが初めて召喚した英霊」でありなおかつ「カルデア式で初めて召喚した英霊」となる。
ソロモンの「カルデアの召喚英霊第一号」発言は、どっちの意味だったとしても通る話になる。
仮にそうだとして、2回目に呼ばれたソロモンはどうなるか。
マリスビリーから、今後やろうとしていること、つまり地球白紙化から始まる陰謀を打ち明けられる。
そんな計画を知ったら、ソロモンは絶対協力しないだろう。「おまえごとこの基地を爆破する」くらい言うでしょう。
マリスビリーには令呪があるので(たぶん)、これでふんじばって動けなくする。カルデア基地の地下深くかどこかに念入りに監禁する。
で、第二部序章でカルデアの基地はぶっこわれる。このへんのタイミングで、ソロモンは自由になる。
自由になったソロモンはどうするか。
ロマニの姿を借りて、「カルデアの者」を名乗って、いろいろ活動しはじめるのである……。
といった感じになったら、面白いかなと思ったので、ここでご披露しています。
終局特異点で「ソロモンは今後、あらゆる記録、とくに英霊の座から消滅する」とされました。二度と召喚されることはありません、と。
だから我々は、ソロモンとは二度と会うことはできないんだと思いました。
でも、座から消滅したとしても、いま現在、サーヴァントとしてこの世に存在しているソロモンには関係ないかもしれないでしょう。
もう二度と会えないと思っていたが、こんな方法で再会できたか、というのはトリックとして魅力があります。
物語上で「このあと、ほにゃららの現象は一切起こらなくなる」みたいなことが書いてあったら、「なんかの抜け道を使ってもう一回起こす可能性が50パーくらいあるな」と疑ってかかる私。だって作中に「この人は犯人でない」と書いてあったら真っ先に犯人だと疑うでしょう。それが疑われないうみねこのなく頃には凄すぎるよね。
旧カルデアのしでかした悪事をだいたい知っていて、それに対して反感を持っていて、ノウムカルデアも似たようなもんだろうと思っていたが、そうでもないようだとちょっと見直して……そして異聞帯を見て回ってるうちに、現地で困っている人がいたらなんだかんだで助けちゃう。
という「カルデアの者」の人物像は、ゲーティアよりもソロモンのほうが近そうだなと思っています。ロマニの恰好しているのも納得だし。
あのう、公平な見方をするならば、「カルデアの者の正体はゲーティアだ」とするほうが、納得感は高いと思います。なにしろ、単独顕現しているし。
私の目にも、ロマニもどきの中身はものすごくゲーティアに見えます。ものすごくゲーティアに見えるからこそ、そうでない可能性があると言っています。「あからさまにこう見えるってことは、そうではないかもしれない」
カルデアの者に魔術の腕をほめられたモルガンは、「おまえに褒められても嫌味にしか聞こえない」と言っていた。ほめ言葉が嫌味に聞こえるほどの魔術の使い手は、ゲーティアも相当しそうですが、よりしっくりくるのはソロモンだと思います。ゲーティアが単一の人格として認知されたのって、作中の歴史上で考えると、2016年以降の1~2年。いっぽうソロモンは、数千年間、魔術の総元締めとしての名声をとどろかせています。
また同じシーンでカルデアの者は、「異星の神のやることに比べたら、モルガンのせいで地球が壊れて人類が滅びるほうがまし」と言っています。奈須きのこさんが「なんだかんだで人間が好き」と評したゲーティアは、そうは言わないでしょう。ゲーティアは現行の人類を滅ぼしましたが、それは、地球にもっといい人類を誕生させるためでした。地球が壊れたらいい人類どころではなくなります。
ゲーティアさんは、どこをどう取ってもカルデアから来た人ではないわけです。いっぽう、本案のソロモンさんは、カルデア成立のきっかけをつくり、カルデアで召喚されたサーヴァントです。「どうも。カルデアの者です」という自己認知は(皮肉も込みで)しっくりくる。
この案の大きな問題は、カルデアの者さんがあちこちを自由にほっつき歩いていて、単独顕現のスキルを持っているとしか思えない点です。サーヴァントは召喚者から離れてあんまり自由に出歩けないというルールがあって、そのためにぐだがいつも前線に出ています。
単独顕現を持っているサーヴァントは自由に出歩けるということになっており、ゲーティアはそれを持っています。これが、カルデアの者がゲーティアに見える大きな理由になっています。
そのへんはどうしましょうかね、と5分くらい考えたのですが、「そのへんに散らばっていたゲーティアの因子を取り込みました」ぐらいでいいことにしました。まあ、FGOさんは、わりと雑につじつま合わせてくること結構ありますから……。
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FGO:アルトリアはなぜ特異点Fで踏み止まっているのか
筆者-Townmemory 初稿-2025年2月11日
特異点Fとアルトリア・ペンドラゴン・オルタについて、ちょっと思いついたことがあるので書きます。
■第一部序章 炎上汚染都市冬木
特異点F、炎上汚染都市冬木というのが、FGOの最初のエピソードでした。カルデアスから文明の光が消えて、どうやら今年だか来年だか再来年だかに人類は滅亡するとわかった。
ほぼ同時期に、2004年の日本の冬木市に「特異点」(時間軸から切り離されたポイント。ここで起こった事件によっては、のちの歴史が大幅に改変されてしまう危険がある)が発見され、どうやらこれが人類滅亡のキーポイントだと判明する。
カルデアから48人のマスター候補生が特異点Fにレイシフトしようとしたところ、爆破テロが起こって47名が活動不能になる。
レイシフトに成功したのはぐだとマシュとオルガマリー所長のみ。
現地の助力者キャスター・クー・フーリンを得て、特異点のボス・アルトリアオルタを倒したところで、カルデアにいたはずのレフ教授が現れ、自分が爆弾魔だと自白し、オルガマリーをカルデアスに放り込んで殺害したあげく姿を消しました……というのが大まかな流れでした。
ボスは倒して、黒幕は取り逃がして、でもまあ、いったんタスクは完了ですね。
となるはずが、どうもきな臭さが続いている。
ひとつには、ボスを倒して、なぜか続いていた聖杯戦争を終わらせ、これで特異点は消えるはずなのに、なぜか今日にいたるまで、特異点Fはずっと存続している。
ふたつめ。第二部第6章アヴァロン・ル・フェで、キャスター・クーフーリンが再登場するのですが(賢人グリムと名乗っていた)、ぽろっとこういう思わせぶりなことを言う。
(賢人グリム)
ひとつめ。カルデアとの関係。
オレは、冬木でおまえが契約したアイツと同じだ。
いったん英霊の座に戻って初期化されてはいるが、
(藤丸立香)とオルガマリー、
今もあそこで踏み止まっている
アーサー王のコトは記録として持っている。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 19節(下線部引用者)
「アルトリアがあそこで(特異点Fで)踏み止まっている?」
みっつめは、特異点Fのメモリアルクエストで敵として登場したアルトリアオルタが、「人理の防人」というスキルを使用することです。
(私はこのクエスト通ってないので伝聞)
人理の防人というのは、語感だけで解すれば、「人類の世界を守るために瀬戸際で戦う人」くらいの意味合いでしょうか。
このスキルを持ってたり使ったりできるのは、彼女のほかにはUーオルガマリーと、終局特異点メモリアルクエストのカルデア勢だけです。「ゲーティアと戦うカルデアのような姿勢をアルトリアオルタも持っている。彼女は人類のために戦っている」という感じになりそうです。
まとめると、
・倒したように見えたアルトリアオルタは、まだ特異点Fに立っている。
・それは人類の世界を瀬戸際で守るためである。
・そのために特異点Fはいまだに消えずにあるのだ。
……そりゃまたいったいどういう事情で? と疑問が噴出するばかりです。はっきり「こうだ」といえるほどの意見はないのですが、その周辺におもしろそうなストーリーが見いだせたので、それについて。
お題としては、
・特異点Fをプロデュースしたのは誰か
・アルトリアオルタは何を求めていたのか
・キャスター・クーフーリンの目的は何か
・その後のストーリー展望
です。
■そもそも冬木市とは
冬木市は、Fate/stay night系統の世界線で、5回にわたって聖杯戦争が行われた場所です。人間とサーヴァントが2人で一組となり、七組でバトルロイヤルをし、勝った一組は聖杯になんでも願いを叶えてもらえる。
特異点Fが発生した2004年は、5回目の聖杯戦争が行われた年。この事件が『Fate/stay night』で語られました。
いっぽうFGO世界でも、2004年に冬木で聖杯戦争が開催されています。FGOでは、2004年の聖杯戦争が「第1回だ」という情報があるのですが、本稿ではあまり関係がないので深く取り上げません。
(第1回だというのはたぶんニセ情報だ、と考えていますが)
FGO世界における、2004年の(第一回)冬木聖杯戦争に、カルデアの元所長マリスビリーが参戦したそうです。
マリスビリーはサーヴァントとしてキャスター・ソロモンを召喚して、たぶん危なげなく他の6組を始末した。
ソロモンは人間になることを望み、凡人ロマニ・アーキマンになった。
マリスビリーは巨万の富を得ることを望み、その富を使って、カルデアスを完成させた。
さらにマリスビリーは、冬木の聖杯を解析したか何かして、英霊召喚や令呪システムを取得した。つまりはサーヴァントを自在に呼び出せる技術を開発した。
カルデアスと英霊召喚システムのおかげで、カルデアは人理焼却や地球白紙化と戦えるようになったという流れです。そうでしたよね?
■マリスビリー、レイシフター説
さてさて私の話をする前にひとつ。
最近、特異点Fを扱った記事や動画をまとめて読んでいたのですが、その中で私の心にぐっときた動画をひとつご紹介しておきます。
れもんまい(さん)
【FGO考察】特異点Fに関する現状の論理的考察
何がよいのかというと、(1)理屈に納得がいき、(2)その周辺で展開されるストーリーが魅力的っていうことです。
おもしろいことがたくさん語られているのですが、本稿に関係あるのは、「マリスビリーは過去の自分にレイシフトした」という部分です。その部分を要約しますと、
・マリスビリーはカルデアスの完成前に自分が死ぬことを知った(資金難)。
・マリスビリーは2004年に聖杯戦争が行われていたことを事後に知った。
・マリスビリーは2004年以前の自分にレイシフトした。
(過去世界に自分自身が存在する場合のみ、コフィンなしでもレイシフトできる。現在の自分は消滅するが、現在の知識を持ったまま過去に戻れる)
・マリスビリーは2004年の聖杯戦争に参加し、勝利した。
・それで得た資金でカルデアスを完成させた。
ようするにレイシフトを使えば現在の知識を持った上で過去に戻ってやり直しができる。
おそらく冬木に誰がどんなサーヴァントを連れてくるのかを調べ尽くして、敵の手の内を知った上で、キャスターのマスターをあらかじめ排除しておき、自分は最強のキャスター、ソロモンを連れて行く……という万全の体制をとったものと思います。
マリスビリーのレイシフトによって、2004年以降の歴史は大きく変わった、ことになりますね。本来の歴史では、カルデアスは完成せず、カルデアは組織として正式稼働することなく、そのままずるずると解体となっただろう。
しかしマリスビリーのレイシフトによって、カルデアスが完成するので、カルデアは我々が現在知るかたちとなった。つまり巨大な戦闘能力を持ち、歴史を操作することすら可能な組織となった。
以上のことは全部受け売りなのですが、私はこれがいいと思ったので、乗っかりました。以降、この前提で話を進めます。
■特異点Fをプロデュースした者
特異点Fを誰が作ったのかは知りません。
(マリスビリーによって歴史改変が行われているので、「マリスビリーの聖杯戦争勝利」が特異点を作った、とするのが整合感がありそうですが)
でも、特異点Fを「現在のかたち(序章の状況)」にしたのは、レフ・ライノール教授だと思います。これは普通の考え方ですね。
ぐだとマシュ(とオルガマリー)は、2004年の(FGO世界)聖杯戦争のまっただなかであるはずの冬木市にレイシフトします。
すると街は燃えていて、黒いドロドロがドロドロ湧き出しており(だったかな)、あたりには黒く染まったサーヴァントがウロウロしており、柳洞寺には黒く染まったアルトリアオルタが仁王立ちしているわけですね。マリスビリーとソロモンはいません。
記録上では、街が燃えたりドロドロしてたりはしなかったはずなので、これは異変が起こっている、と一発でわかるようになっていました。
……ところで、「コリジョン」という話がありますね。いろんなところで抜粋転載されているから、内容は知っているのですが、出典がわかりません。奈須きのこさんは読者との一問一答で、以下の要約のようなことをおっしゃっていたようです。
●問・特異点Fの聖杯戦争はすり替えが行われたとのこと。すり替え前はstay nightの面々で戦っていたのか?
●答・そう解釈して下さい。入り交じってデータのコリジョンが起きたのでサーヴァントの黒化やクラス変更が起きている。
コリジョンというのは衝突という意味だそうで、「本来の聖杯戦争に別次元かどっかの聖杯戦争がバーッと落ちてきてガーンとぶつかってごちゃまぜになったので、ああいうありさまです」くらいに理解されているようです。ですよね?
私の理解でもそうです。
ひとつの冬木市にふたつの聖杯戦争が重なり合っている、と。
ふたつの聖杯戦争のうち、ひとつは、マリスビリーが参加して勝利した聖杯戦争(だろう)。
もうひとつは、どっか知らない時空で行われたよく知らない聖杯戦争である。オルガマリーから見て「こんなの知らない」と思うような事象が特異点Fにあったら、それは「どっか知らない聖杯戦争のほう」に由来する可能性が高いだろう。
で、「どっかの知らない聖杯戦争」を見つけてきて、かつぎあげて、マリスビリーが参加したほうの聖杯戦争にドッセーイ! とぶつけた人が、レフ教授なんじゃないかというところから話が始まるわけです。やっと本題。
■歴史を正すレフ教授
マリスビリーがタイムスリップして参加する前の、本来の聖杯戦争。ようはマリスビリーが存在を知らなくて見過ごして、「あー! あれに参加できてりゃよかった!」と思うほうの聖杯戦争では、セイバーが勝利したとのことです。
といいますか、マリスビリーはソロモンと一緒に聖杯戦争に勝ったあと、「おもてむきはセイバーが勝ったことにしておこう」という密談をかわしています。
これは、マリスビリー・タイムスリップ以前の本来の聖杯戦争がセイバー勝利という結果だったからだと思われます。
もしマリスビリーが大々的に「我々が勝ったぞー」と言いふらしてしまうと、本来の歴史との間に重大な齟齬が発生してしまい、世界が歴史改変を知ってしまうため修正がかかり、マリスビリー勝利が消去されてしまいます。ハベトロットが「ボクはマシュのことを昔から知ってる」と表明した瞬間に存在を消されてしまったのと同一の現象が起こる。
だから、マリスビリーは「我々が勝利した」ということを全力で隠匿し、あくまで、セイバーが勝ったのだということにしておかなければならなかった。本来の歴史と「大筋は同じだった」という状況をつくらなければならないわけですね。
これも前述の動画でれもんまいさんがおっしゃっててなるほどと思った話。
ということは、本来の歴史ではセイバーが勝利したはずなのです。
ところが、タイムスリップしたマリスビリーが、キャスターのソロモンと一緒に勝利して、本来のセイバー勝利をくつがえしてしまった。
レフ教授からみるとこれはどうなるか。
レフ教授はゲーティアの使い魔です。ゲーティアは人類の歴史をまとめて焚書してやろうと画策している方です。具体的な方法は、人類史に特異点をいくつも作って、歴史をぐちゃぐちゃに改ざんし、人類史をあいまいなものにする。人類史が地面からはがれてペラペラした状態になるので、ライターで火をつけやすくなる。
そんなレフから見て、マリスビリーが聖杯戦争に勝つということは、マリスビリーが巨万の富を得てカルデアスを完成させ、組織としてのカルデアが機能しはじめることを意味する。
カルデアは、タイムスリップ能力と戦闘能力と特異点を見つける能力を同時にそなえた組織です。つまるところ、ゲーティアがぐちゃぐちゃにしようとした歴史を、きれいに整頓して元に戻す能力を持っている。ゲーティアを阻止しうる唯一の人類側組織がカルデアだ。これは脅威である。
順当にセイバーが勝利していたら、レフは何もしなくてよかったはずです。カルデアは特異点を見つけられないし、英霊召喚も実用化されない。マリスビリーの死後、カルデアはスポンサーを失って、ゆっくり解体されてったことでしょう。
さらに重要なことは、マリスビリーが勝たずカルデアスが完成しないということは、地球白紙化が起こらないということです。ゲーティアが2016年を境に人理焼却を起こすのは、2017年からマリスビリーが地球白紙化を起こすためです(よね?)。
地球白紙化が起きないのならば、なんならゲーティアは人理焼却の開始をあと1000年待てます。燃やす薪が増える。
でもセイバーの勝利が撤回されて、キャスター陣営(マリスビリー)が勝利したので、ご主人にとっての脅威が発生してしまった。ご主人の企みに対抗しうる唯一の組織が存在するタイミングで、人理焼却を始めなければならない状況になってしまった。
なんらかの対処をしなければならない。どうする?
キャスター陣営(マリスビリー)の勝利を撤回し、セイバーを再び勝利させればよい。
そうすればカルデアスも白紙化もなかったことに「戻る」。
どうやってそれをするか。
別の世界から別の聖杯戦争を持ってきて、現状の冬木聖杯戦争に重ねる。重ねた上で、セイバー勝利の結末を導く。すると結果が上書きされ、歴史は再改変され、キャスター陣営は勝たなかったことになる。聖杯を手に入れられず、カルデアスは完成しないことになる。
念には念を入れて、カルデアのマスター候補生をまとめて全員爆死させておく。カルデアのマスターたちが大勢で特異点Fに押しかけてきて、みんなでよってたかってセイバーを攻撃しだしたら迷惑だからだ。
ようするにこの案では、レフ教授は、マリスビリーによって改変されてしまった誤った歴史を元に戻そうとする人なわけです。
カルデアスの表面が真っ赤に染まって人理焼却の様相を呈するのは、ぐだたちによってアルトリアオルタが打倒された直後からです。
この事態は、ふつうの感覚で見たら、「アルトリアが倒れてくれたおかげで、人理焼却を始めることができた」と見えます。
しかし、これを本稿では「セイバー陣営の勝利を導けなくなった(カルデアとカルデアスの成立が確定した)ので、カルデアが存在するこの最悪のタイミングで人理焼却を開始せざるを得なかった」レフとゲーティアの苦渋の選択だとみるのです。
■アルトリアがレフに従う条件
ぐだとマシュとオルガマリーが放り込まれた冬木は、アルトリアが黒い王様になっており、大聖杯から黒いドロドロがドロドロしている状況でした。
これを、レフ教授がコリジョンさせた「どっか別次元の聖杯戦争」の様相だと考えることにします。
アルトリアが黒くなって大聖杯がドロドロしているということは、大聖杯にアンリマユが入り込んで悪意で汚染されている状態だと考えられます。第三回か第四回でアインツベルンがアンリマユを召喚したのちの第五回、くらいでしょう。
本案でのレフ教授は、この聖杯戦争をFGO世界の聖杯戦争にどっせーいとぶつけてぐちゃぐちゃにしたあげく、アルトリアに「すまないけど君にぜひ勝ってもらいたいんだ」と言わねばならない。そんな状況はどうしたら発生する?
例えば。
聖杯戦争にアルトリアが勝利し、「大聖杯が汚染されているとは気づかずに」ブリテンの滅びの撤回という悲願を願った、と考える。
汚染された大聖杯は、願いを悪意で叶える呪いの願望機でした。汚染大聖杯は、アルトリアの願いを例えばこう叶える。
地球上の全人類を殺害する。
その上でアルトリアを不死にする。
アルトリアはブリテンそのものだ。ブリテンは今後、絶対に滅びることなく永遠である。
この案の根性の悪いところは、これがカムランの丘の再現になっているという点にある。
アルトリアは、自国の民と兵が死に尽くした戦場の丘で、たった一人の生者となり、膝をつき、時間を止めて、永遠に近い時間をただただ耐えているという境遇にあります。
この滅びの結末を書き換えるために、聖杯がこの世に現れるときを、たった一人で待っている。
聖杯がどこかに出現すれば、その場所に召喚され、手に入れるために争い、破れればまたカムランの丘に戻って、自国の滅びの景色を見続ける。
そういう拷問のような境遇にありました。
願いを叶えた結果、その拷問とまったく同じ境遇が発生するのだからこれはもう最悪だ。こんなの思いつく奴はよっぽど性格が悪い。これがおまえの求めたものだ! わはははは! わははじゃねえよ。
そこにレフ教授が現れる。君にリトライチャンスをあげよう。
今からべつの世界の冬木に君を案内する。ふたつの冬木市は重なってひとつになり、ひとつの冬木市でありながらもうひとつの冬木市でもあるという状態になる。
そこには汚染されていない大聖杯があるのだ。
そこでもう一度聖杯戦争を始めよう。君がそれに勝つことができたなら、この結末を撤回することができるだろう。
レフはおまけとばかりにアルトリアに聖杯を与える。これは、彼女の願いを叶えるほどの力はないが、魔力ブースターにはなる。アルトリアがこれを持てばバーサ-カーすら一騎打ちで倒せる。特異点に聖杯を放り込む、はゲーティア一味のお家芸だ。
この条件なら、アルトリアはレフの誘いに絶対に乗っかる。
以上の条件が成り立つ場合、特異点Fに人っ子一人いないのは、汚染大聖杯が人類をすべて死滅させたためである。
アルトリアがオルタ化しているのは、汚染大聖杯が願いを叶えたときに泥が吹き出したからである(例えば)。
龍洞寺に汚染大聖杯があるのは、アルトリアとともにそこに来たからだ。
アルトリアにとって絶対に負けられない戦いが始まる。全身全霊で戦うことになるだろう。アルトリアの勝利はレフの勝利でもある。レフはもう、手に汗握って旗を振って応援していたことでしょう。
ところがそんなアルトリアの耳元に、ふとささやきかけるロクデナシの声があるわけです……というふうに想像は続きます。
■勝っても負けても駄目
ささやきかける声は、ロクデナシマーリンでもいいし、クー・フーリンに助力しているオーディン(推定)でもいいし、他のだれでもよいです。
「君は勝っても負けても駄目だよ」
マーリン(仮定)は、勝った場合と負けた場合のそれぞれのビジョンをアルトリアに見せる……と考える。
アルトリアが勝てば、カルデアスのないカルデアはやがて解体される。ゲーティアは、カルデアがなくなったのを確かめて、悠々と人理焼却を始める。これを阻止できるすべを人類は持っていない。
アルトリアが負ければ、人類の歴史が正しい位置に修正されない。マリスビリーが勝利し、カルデアスを作るという「誤った歴史」が続いてしまう。すると2017年の地球白紙化が確定する。それを避けるために、ゲーティアが2016年に人理焼却を開始する。
どのみち人類は詰みに向かう。
では、どうすれば……。
サーヴァントが最後の一人にならない限り、この聖杯戦争は終わらない。終わらない限り、どちらの未来も確定しない。
君へのオーダーは、この聖杯戦争を永久に続けることだ。
アルトリアはそうせざるを得ない。時の止まった冬木で、千日手をくりかえす。
アルトリアの手が止まったのを見たレフは、舌打ちし、後になってこう述べることになる。
(レフ)
……セイバーめ、おとなしく従っていれば
生き残らせてやったものを。
聖杯を与えられながらこの時代を維持しようなどと、
余計な手間を取らせてくれた。
『Fate/GrandOrder』特異点F 炎上汚染都市 冬木 11節
アルトリアオルタは、勝利せよというレフの命令に従わず、「この時代を維持」しようとしていた。
■クー・フーリン(キャスター)登場
なぜ事態が膠着しているのかといえば、アルトリアオルタが龍洞寺から一歩も動かないからだ。
この時点で残っているサーヴァントは、アルトリアオルタとキャスター・クーフーリンのみ。
キャスター・クーフーリンは、聖杯を持ったアルトリアオルタに独力で勝てるほどの力はない。一対一なら絶対負けるというパワースケールだろう。
だからクーフーリンは自分からは絶対に仕掛けない。
もしアルトリアオルタが自分の足でズンズン出張っていって、かくれんぼのあげくクーフーリンを見つけて「発見! エクスカリバー!」すれば聖杯戦争はセイバー勝利ですぐ終わる。
でも、事態を膠着させたいアルトリアオルタは絶対にそれをしない。だから「この時代が維持」され続ける。
アルトリアオルタは、亡者しかいない街の丘の上で、たった一人、立ち続けることになる。
それはもうこういう意味だ。
ここもカムランの丘だ。
アルトリアの選択肢は、すべてがカムランの丘に通じている。
さて、ところでクー・フーリン氏。
彼はとある「神サン」から命令と助力を受けて、意図的に特異点Fに侵入したと述べています。
(賢人グリム=クー・フーリン)
カルデアの面倒を見てやれ、ってのが
オレに権能を譲渡した神サンの意向でね。
(略)
まずはX地点である冬木で神サンから権能を譲渡されて
キャスタークラスになって、カルデアと縁を作った。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 19節
ここでいう「神サン」は、おそらく通説の通り、北欧神話のオーディン神です(説明等は省きます)。
「権能を譲渡されてキャスタークラスになって」とおっしゃっていますので、元はランサーとして聖杯戦争の盤上に乗っていましたが、コリジョンのドサクサでオーディンパワーが注入されて、キャスターに変更されたという事情になります。
後述しますがたぶんキャスターであることがいくつかの意味で重要だった。「ソロモンが盤に乗る可能性を塞ぐ」ことも理由のひとつかな。
(彼の中身がどのくらいオーディンか、という議論があり、本論には関係ないのでざっと述べますが、特異点Fではオーディンの助力を得ただけで中身はほぼクー・フーリン、ブリテン異聞帯ではクー・フーリンなのはガワだけで中身はほぼオーディンだと思います)
オーディン先生は大局的な視点で地球の状況を見ており、要所要所でカルデアを手助けしてくれている、ということが語られます。
(賢人グリム)
この神サンは魔術の神であり智慧の神でな。
“ここでこうしておかないと詰む”と先読みしたらしい。
(略)
人理焼却(デッドエンド)を解決したところで、
その次は人理再編(バッドエンド)が装填されている。
これはもうどうあっても回避できない。
前提条件が出来上がっていたからだ。
なんで、せめてこの異聞帯の問題を請け負って、
カルデアを少しだけ楽にしてやろうと考えた。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 19節(下線は引用者)
オーディンは、人理焼却と人理再編(白紙化)の両方を視野に入れていた。どっちか、あるいは両方が人類を襲うことがわかってた。
それがわかったうえで特異点Fに介入してるってことは、アルトリアが勝とうと勝つまいと、聖杯戦争に終わりが来た段階で人類の危機が発生するっていう条件(本稿の仮定)を知っていたってことになります。
そんなオーディンがクー・フーリンに与えたオーダーはなぜか、「聖杯戦争を終わらせる」だったのです。
(キャスター)
アンタらの目的はこの異常の調査。
オレの目的は聖杯戦争の幕引き。
『Fate/GrandOrder』特異点F 炎上汚染都市 冬木 6節
(キャスター)
永遠に終わらないゲームなんざ退屈だろう?
良きにつけ悪しきにつけ、駒を先に進ませないとな?
『Fate/GrandOrder』特異点F 炎上汚染都市 冬木 9節
アルトリアオルタが、「このままダラダラ続けましょう」していた聖杯戦争に「幕を引く」。
永遠に終わらないゲームを終わらせる。
そのことによって、いい結果が出るか、悪い結果が出るか知らないが、ともかく話を先に進めろと、オーディン大兄はそうおっしゃるのです。それはなぜか。
■カルデアがあるからだ
本稿の仮定において、オーディンが最も避けたいシナリオは、「聖杯戦争にアルトリアオルタが勝つ」ことです。
なぜならカルデアが存在しなくなるからです。ゲーティアを止める可能性があるのはカルデアだけなので、カルデアがなくなれば人理焼却は誰にも阻止できなくなります。人類は終わります。
また同様の仮定において、オーディンにとっていちばんマシなシナリオは、「キャスター」クー・フーリンが勝つことです。
序章の段階での特異点Fは、単純化すれば、
・セイバーが勝利するという本来の歴史
と、
・キャスターが勝利するという曲げられた歴史
が、一対一で拮抗しているというようなモデルで説明できそうなものです。
ここに、新たな聖杯戦争をコリジョンさせる。その結果、新たに、「セイバーが勝利する」か「キャスターが勝利する」かの、どちらかの結末が得られるとする。
すると、セイバー2勝 対 キャスター1勝。
もしくは、キャスター2勝 対 セイバー1勝、
片方が優勢になる。そちらが正史として選ばれ、継続するようになる……。
いや、TYPE-MOONの魔術理論とか正直手に負えませんから、そういうことではないのかもしれませんけど、このモデルなら私の手に負えるのでとりあえずそんなふうに考えることに決める。
ここに、セイバーでもキャスターでもない第三陣営の勝利を導いてしまうと、一対一対一の三すくみになってもういっかいコリジョンだ! みたいな泥沼になりかねない。もう、勝たせるならセイバーかキャスターのどっちかだ!
セイバー勝利のルートは人類滅亡確定なのでありえない。
だから全然ベストではないがキャスター勝利に乗るしかない。
つまりは「キャスター」クー・フーリンに、「セイバー」アルトリアオルタを倒させるしかない。
すると「キャスター勝利」が正史化し、継続する。キャスターの中身がソロモンであろうとクー・フーリンであろうと、どんぶり勘定で「キャスターが勝ちました」だけが重視される。
キャスターが勝ったということは、FGOの2004年冬木聖杯戦争でソロモンが(マリスビリーが)勝ったことになるので、カルデアスが完成し、2016年に人理焼却が発生し、2017年に地球白紙化が発生する。それでいいのか?
それでいい、とオーディンは判断しそうだ。なぜなら、カルデアスが完成するということは、ぐだとカルデアがいるということだからだ。
ぐだとカルデアがいるということは、人理焼却を克服しうるということだし、地球白紙化を克服しうるということだ。
両方を首尾良く克服できる可能性は著しく低い。
しかしゼロではない。
それ以外のルートでは克服可能性はほぼゼロなので、このルートを選ぶしかない。キャスター・クーフーリンにはぜひとも勝ってもらわねばならない。
しかし、クーフーリンには聖杯アルトリアオルタを倒す実力がない。
■こんなものあるけど、いる?
そこで花の魔術師。
龍洞寺の洞穴に、アルトリアオルタを守るアーチャーがいました。ぐだとマシュに倒されました。
(アーチャー)
考えたな花の魔術師……! まさかその宝具に、
そんな使い途があったとは……!
『Fate/GrandOrder』特異点F 炎上汚染都市 冬木 9節
クーフーリンがアルトリアオルタを倒すためには、エクスカリバー・モルガンを防げる人類史最強クラスの盾が必要だ。そんなものいったいどこに……あ、あった。
アヴァロンで人間ウォッチングを決め込んでいたマーリン、そのへんに円卓の騎士の円卓が転がっているのに気づく。
こいつをカルデアに横流ししてあげよう。
これを触媒に召喚されるのは円卓の騎士ギャラハッド。盾の騎士。ギャラハッドがカルデアから特異点Fへレイシフトし、クーフーリンとともにアルトリアオルタを倒す。アルトリアは円卓の盾を見たら、絶対にそこに向けてエクスカリバーを撃ちたくなる。クーフーリンはノーマークになる。このシナリオは完璧だ。我ながらすごいんじゃない?
まさにそのようなことが起こった。予定外だったのは、マリスビリーが人間とサーヴァントの融合実験を行ったことだけどまあ結果オーライだ。オーライかなあ?
セイバー、アルトリアオルタは倒された。消えました。
最初の疑問に戻る。
アーサー王は、アルトリアは、「今もあそこで踏み止まっている」のか?
■王は今もカムランの丘に
本稿の仮定では、アルトリアは汚染大聖杯にブリテンの永遠を願った結果、人類が滅亡した世界に不死のアルトリアが生き続けるという結果が出力されました。
これは、しかばねの山に時間を止めたアルトリアが永遠に時を待っている、というカムランの丘の状況と同じだ。
この状況はカムランの丘だ。
特異点Fでは、亡者しかいない街で、アルトリアが永遠に立ち尽くすという状況がありました。
これはカムランの丘だ。
特異点Fは、魔術的に、すでにカムランの丘だ。
カムランの丘では、時を止めたアルトリアが永遠に近い時間を待ち続けるというルールがあるのだから、
アルトリアは、倒された今でも、姿はなくとも、特異点Fで待ち続けている。
アルトリアは、倒されたが、消えていない。見えないだけで今もそこにいる。聖杯戦争は、終わったが、終わっていない。終わっていないから特異点Fは消えない。
彼女は何を待つのか。
聖杯に呼ばれるときを。
勝利をつかむときを。
特異点Fでアルトリアオルタは倒され、マリスビリーとキャスターが勝利した。そのことで人類の滅亡が確定した。
でも、特異点Fのあの場所に、まだアルトリアオルタがいるのなら?
特異点Fでアルトリアが倒されることで始まったすべての悲劇を、アルトリアの帰還によってくつがえせる可能性がある。
特異点Fというカムランの丘で、アルトリアは立ち上がる時を待っている。アルトリアがあの場所にいるかぎり、すべてを一からくつがえせる目がある。
だから「アーサー王は今もあそこで踏み止まっている」。この場合なら人理の防人なのは納得だ。アルトリアがそこにいるということが、人類の最終防衛線だからだ。
けれども。
同じ条件で戦う限り、同じ末路になるだろう、とアルトリアは予感しています。
(セイバー)
聖杯を守り通す気でいたが、
己が執着に傾いたあげく敗北してしまった。
結局、どう運命が変わろうと、
私ひとりでは同じ末路を迎えるという事か。
『Fate/GrandOrder』特異点F 炎上汚染都市 冬木 11節
私ひとりではだめだ。
味方がほしい。仲間がほしい。頼れる誰かが。
その誰かとは、「ぐだ」しかいないだろう……と、ドラマツルギーとして、そう言うしかない。
おそらくこの物語の結末において、ぐだは再び特異点Fのアルトリアオルタの前に立つことになるでしょう。そしてアルトリアはおそらくこう言うのだと思います。
「問おう。あなたが私のマスターか」
勝ちましょう! 貴女と私で。
この記事、ここで終わりにしても良いのだけど、
いや、でもですね……。
■人理焼却は?
この物語のラスボスはおそらくマリスビリーだ。基本、ぜんぶあいつのせい。
だから、アルトリアとぐだが勝つ相手とは、マリスビリーでないといけない。
マリスビリーのいる聖杯戦争には、汚染されてない大聖杯がある。この条件ならアルトリアを呼べる。
ただし。
本稿の仮定では、セイバーがマリスビリーに勝利すると、カルデアが解体されるので、人理焼却を止められなくなり、人類は滅亡するのです。レフ教授が高笑いをする。
ぐだとアルトリアの共闘を、この物語のラストバウトだとするのなら、こういう条件を同時に満たさないといけない。
1)ゲーティアの人理焼却が克服され(カルデアスとカルデア必要)
2)マリスビリーが倒され(カルデアはなくなる)
3)宇宙人も襲ってこない世界を(どのみち起きる)
4)アルトリアに肩入れすることで実現したい
これは、基本的に不可能で……まあもちろん、本稿の仮定を取らなければ、これは問題でもなんでもなくなるんだけど……これは要するに私が書いてる私の物語なので、私が解決しないとバッドエンドなんですね。
やばいなあ。
■方向性だけは
全部の条件を満たすことはできないが、私は基本、こういう方向で考える人ですというのを示しておきます。
まず、なんかの仕掛けで(それがなんの仕掛けかは知らない)、冬木市にドーンと一発、空想樹を落っことせないかな。
(先達各氏の先行する論には、「もともと冬木には空想樹があった」という方向のものがいくつかあるようですね)
そうして、だいたい日本全土くらいを異聞帯にしてしまう。
異聞帯の中身は、「アルトリアが汚染大聖杯に願った結果、人類が絶滅した世界」だ。
人類が絶滅しているわけだから、これは当然、剪定事象となり、打ち切りエンドとなる。剪定事象となっているのなら、異聞帯として復活させることができる。
さて、日本全土は異聞帯となり、そこに人類はぐだとアルトリアしかいない。でも空想樹がある。ぐだとアルトリアは過去の自分にレイシフトする。モルガンが二部第六章でやったやつです。
ぐだは日本出身なので、当然、過去の日本に自分自身がいる。これまでのすべての事情を知り、すべての経験を積んだぐだが過去世界に誕生する。
アルトリアは第四、第五次聖杯戦争で日本にいた想定だから、日本異聞帯に過去のアルトリアがいる。すべての経験を持ったアルトリアが発生する。
そしてこの異聞帯の第五次聖杯戦争はFGOの2004年聖杯戦争とコリジョンを起こしている。ぐだとアルトリアが冬木で待ち構えているとマリスビリーとソロモンがやってくる。エクスカリバー! して焼き払う。
この異聞帯ではカルデアスが完成しないので白紙化は起こらない。
きれいな聖杯が手に入る。願いはぐだとアルトリアで一つずつ。「汚染大聖杯が叶えたアルトリアの願いを撤回して」「この異聞帯で、地球全部を上書きして!」
異聞帯の外には、マリスビリーがすべてを支配する新世界があるものと想定する。
いっきに異聞帯と空想樹が育って、地球全土を覆い尽くす。本来時間をかけて育てるものを聖杯で前倒しする。ついでにたぶん空想樹からオルガマリー所長が生えてくる。
これまでのぐだの物語は、「育ってくる異聞帯を、刈り取る」というものだった。それが逆転する。異聞帯を育てて、世界に逆襲する。
聖杯に「マリスビリーに地球白紙化をあきらめさせて」「でもカルデアスは完成させて」と願えばいいのかとも考えたけれど、それはアイデアが小さいのでやめました。
そうなると、カルデアが存在しなくなるので、ゲーティアの人理焼却を防げなくなる。でもここにはすべての知識と経験と戦闘技能を持った、怪しげなアンプルを一本も打ってない超健康で運命力MAXのぐだちゃんがいるんだから、もう、なんとかしてもらいます! キリシュタリアにもできたでしょ!(ぶん投げた!)
宇宙人については? この話は任意の場所に空想樹を落っことせる前提なのだから、それまでの物語のなかでうまく懐柔していただくことにする!
そういうご都合主義のてんこもりを勢いでごまかして、すべてが解決したとして。
ぐだの隣には、これまで苦難を分かち合ってきた友が一人もいないことになる。
寂しい。
過去の日本にマシュはいないので、この話にマシュを置くことができない。
寂しい。
まあ、奈須きのこさんは、こういう話を書かないと思う。
でも、奈須さんはたぶん、こういう感じで、いろんな要素がカチ合って共存できないような条件があるのに、それを常にかいくぐって、お話を作ってきているわけだよね。そういうのを実感したくて、こういうことを実践しているのでした。
■余談・賢人グリムのウソ
アヴァロン・ル・フェの19節。オークニーで賢人グリム(キャスタークーフーリン)と再会したところを読み返していて、ちょいと気づいたことを書いときますね。
ようとかなんとか言って気さくに現れた賢人グリム氏、ぐだとアルトリア・キャスターとダ・ヴィンチちゃんの前で、「自分は誰なのか」「今まで何をしてきたのか」「これからどうしたいのか」を長ゼリフで言う場面があります。
グリムがしゃべると、アルトリア・キャスターがなんとも言えない、悲しいようなそうでないような、ビミョーな顔をするカットインがちょくちょく入ってきます。
アルトリアキャスターは妖精眼を持っていて、他人のウソが見えるという難儀な体質を持っておられる。
つまるところ、「あ、ウソついた」「またウソついた」「この人ウソばっかり!」という反応なのだろうと思われました。
どうもグリムはいっぱいウソをついてるようなのですが、ちょっと見過ごせないウソがふたつありましたので、この場で指摘しておきます。
ひとつめ。
グリムはオーディンの命令を受けて(というかオーディン本人なのでしょうが)、カルデアに助力することを目的に、「6000年前」と「現在」の2回にわたってブリテン妖精國に滞在したと言っています。
6000年前の初代グリムは、「楽園の妖精」トネリコ(のちにモルガンになる人)の手助けをするために召喚されたんだと言っていますが。
(賢人グリム)
1度目の召喚は6000年前。
『楽園の妖精』を助けるため召喚に応じた。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 19節
初代グリムの目的が、トネリコを助けるためだったわけがない。その逆だ。
グリムはカルデアの手助けをしたいと言っている。特異点Fでも手助けしていたからそれはいいとしましょう。
カルデアにとって、いちばん必要なのは、妖精國で鍛造される聖剣を入手することだ。それができないとこの物語はここで詰んでしまう。
カルデアが聖剣を入手するためには、聖剣の鍛造者アルトリア・キャスターと縁をむすび、巡礼の旅をともにし、その果てに聖剣が鍛造されるところを目撃するしかない。これは絶対条件でしょう。
それが絶対条件なら、アルトリア・キャスターの先代であるトネリコの巡礼の旅を成功させては絶対にいけないはずです。
なぜなら、トネリコを助けて巡礼の旅が成功してしまえば、その果て、おそらくB.C.1年ごろ、聖剣が鍛造され「てしまう」。そして二代目楽園の妖精であるアルトリア・キャスターが妖精國にやってくることは絶対にない。初代トネリコが聖剣鍛造に失敗したからこそ、二代目が派遣されるのですからね。
アルトリア・キャスターが妖精國に現れないのなら、カルデアの手に聖剣は落ちてこない。
だから初代グリムの本当の目的は言っていることの逆だろう。トネリコの巡礼の旅を絶対に失敗させること。トネリコがモルガンになるよう仕向けることだ。
ウーサーの死について、裏で糸をひいてたのはグリムだ、までありうる話。
そして、こんな陰湿なことを、我らが槍ニキ、クー・フーリンは絶対に請け負わないだろうと断言できる。妖精國の賢人グリムが、姿かたちはクー・フーリンであっても中身はそうではないと私が考える理由はこれ。
もうひとつ。
(賢人グリム)
オレの役割はここでおまえたちを待つこと。
『巡礼の旅』を成功させ、
楽園の妖精を、楽園に帰す事だってな。
『Fate/GrandOrder』妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 19節
アルトリア・キャスターの正体は聖剣の材料だ。巡礼の旅が成功したら彼女は聖剣になっちまう。率直にいえば彼女は死ぬ。「楽園の妖精を、楽園に帰す」という言葉から通常連想されるようなやわらかい事態には決してならない。そしてたいていのことを俯瞰で見通しているグリムがそれを知らないはずがない。
カルデア、主にぐだが、アルトリア・キャスターと聖剣に関する真相を知った場合、聖剣鍛造を拒むか、躊躇する可能性がある。それは人類の危機につながるので、叙述的トリック的な言い回しでぐだを真相から遠ざけている。
以上です。
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