本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
 吸収性物品に係る伸縮性シートと、前記伸縮性シートよりも伸長性の低い低伸長性シートと、を有する複合シートを製造する複合シート製造方法であって、前記低伸長性シートに向けて水性インクの液滴を吐出して、前記低伸長性シートの表面に画像を印刷する印刷工程と、前記画像が印刷された前記低伸長性シートに加熱されたエアを接触させる接触工程と、前記接触工程の後で、前記低伸長性シートに伸長状態の前記伸縮性シートを接合する接合工程と、を有する、ことを特徴とする複合シート製造方法。
 このような複合シート製造方法によれば、低伸長性シートに画像を印刷し、印刷面を加熱エアによって乾燥させてから伸縮性シートと接合することにより、低伸長性シートにしっかりとインクが定着した良好な画像を形成することができる。また、乾燥工程において伸縮性シートが加熱されないため、低伸長性シートと接合された後の複合シートは、伸縮性を発現可能である。したがって、良好な画像が印刷された伸縮性を有するシート部材を効率的に製造することができる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記接触工程において、前記加熱されたエアは前記低伸長性シートを厚さ方向に貫通して流れる、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、低伸長性シートの繊維間の空隙を加熱エアが通過するように流れることにより、当該加熱エアが内部の繊維と接触しやすくなる。これにより、低伸長性シートの内部に浸透したインクを効率的に乾燥させることができる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記加熱されたエアは、前記低伸長性シートの前記厚さ方向について、前記画像が印刷された側の面から他方側の面に向かって流れる、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、画像が印刷された印刷面に近いほど繊維に付着しているインク量が多いため、低伸長性シートの印刷面側から反対面側に加熱エアを流すことにより、低伸長性シートの内部に浸透したインクをより乾燥させやすくすることができる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記接触工程において、ドラムの外周面に前記低伸長性シートを保持しつつ、前記ドラムが回転することによって前記シートが搬送されるとともに、前記外周面に形成された通気孔に前記加熱されたエアを通過させる、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、低伸長性シートをドラムの外周面に保持させた状態で搬送させつつ、低伸長性シートの厚さ方向に加熱エアを通過させることができる。これにより、乾燥用エアを通過させる際に低伸長性連続シート9Aが撓みにくくなり、搬送中のずれ等を生じさせることなくインクの乾燥を促進することができる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記接触工程と前記接合工程との間に、前記低伸長性シートを冷却する冷却工程を有する、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、加熱ガスと接触することで乾燥されたインクを冷却することにより、低伸長性シートの内部にインクをしっかりと定着させることができる。また、伸縮性シートと接合する前に低伸長性シートを冷却し、伸縮性シートのエラストマー等に熱が伝わらないようにすることで、複合シートの伸縮性が損なわれることを抑制することができる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記接触工程と前記接合工程との間に、前記低伸長性シートに印刷された画像の画質を検査する検査工程を有する、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、インクを乾燥させてから画像の検査を行うことにより、印刷画像の画質を正確に判定しやすくなる。また、低伸長性シートの製造ライン上に検査工程を設けておけば、検査の負担や検査時間を低減させ、不具合が発生した場合には迅速に対応することができるようになる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記低伸長性シートの前記画像が印刷された面と反対側の面に前記伸縮性シートが接合される、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、シート部材同士を接合する際に、画像の印刷面と反対側の面で接合することによりインクによる溶着不良を抑制でき、複合シート部材の接合強度を強く保つことができる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記低伸長性シートと前記伸縮性シートとの接合は、超音波振動する振動面を有するホーン部と、前記振動面の振動を受ける外周面を有した回転可能なローラー部とを用いて、前記ローラー部の外周面上に互いに重ね合わされた前記低伸長性シートと前記伸縮性シートとに対して、前記ホーン部から超音波振動を投入することにより行われ、前記ローラー部側に前記低伸長性シートが配置され、前記ホーン部側に前記伸縮性シートが配置される、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、ホーン部(超音波ホーン)が低伸長性シートの印刷面に触れないため、インク汚染や溶着不良が発生することを抑制することができる。また、低伸長性シートの印刷面側がローラー部(アンビルローラー)の外周面に接触したとしても、印刷後の乾燥工程(接触工程)や冷却工程によってインクが乾燥され、シート部材に定着しているため、ローラー部でもインクによる汚染等は生じにくい。
 かかる複合シート製造方法であって、前記低伸長性シートの前記画像が印刷された面が、前記吸収性物品の最も外側の面に配置される、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、吸収性物品(おむつ)の最外面に画像が形成されるため、当該画像が視認しやすくなる。また、当該画像ではシート部材にインクがしっかりと定着し印刷面が良好な耐摩擦性を有するため、吸収性物品の最外面に形成された場合であっても、画質が劣化しにくい。
 かかる複合シート製造方法であって、前記接合工程の後には、前記低伸長性シート及び前記伸縮性シートを加熱する工程を有さない、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、複合シートの製造工程を通して伸縮性シートに対して過剰に熱が加えられることは無いため、該伸縮性シートを構成する熱可塑性エラストマーの伸縮性が失われることが抑制される。これにより、複合シート(おむつ)は良好な伸縮性を維持することができる。
 かかる複合シート製造方法であって、前記伸縮性シートが延伸されながら搬送される距離よりも、前記低伸長性シートが前記接触工程の後前記伸縮性シートと接合されるまでの間に搬送される距離の方が長い、ことが望ましい。
 このような複合シート製造方法によれば、加熱ガスと接触して温度が高くなっている低伸長性シートを十分な長さの搬送経路で搬送することにより、伸縮性シートと接合する前に、低伸長性シートの温度を低下させやすくすることができる。これにより、伸縮性シートの伸縮性が失われることをより抑制しやすくなる。
 また、吸収性物品に係る伸縮性シートと、前記伸縮性シートよりも伸長性の低い低伸長性シートと、を有する複合シートを製造する複合シート製造装置であって、前記低伸長性シートに向けて水性インクの液滴を吐出して、前記低伸長性シートの表面に画像を印刷する印刷部と、前記画像が印刷された前記低伸長性シートに加熱されたエアを接触させる接触部と、加熱されたエアを接触させた後の前記低伸長性シートに伸長状態の前記伸縮性シートを接合するシート部材接合部と、を有する、ことを特徴とする複合シート製造装置が明らかとなる。
 このような複合シート製造装置によれば、低伸長性シートに画像を印刷し、印刷面を加熱エアによって乾燥させてから伸縮性シートと接合することにより、伸縮性を有しつつ、良好な画質の画像が印刷されたシート部材を効率的に製造することができる。
 ===実施形態===
 まず、本実施形態に係るシート部材によって形成される吸収性物品の一例としてパンツ型おむつ1(以下、単に「おむつ1」とも呼ぶ)の基本構造について説明し、次に、シート部材の製造ラインLMについて説明する。
 <おむつ1の基本構造>
 図1は、パンツ型のおむつ1の概略斜視図である。図2は、展開状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図である。図3は、展開状態のおむつ1を分解して示す概略斜視図である。以下の説明では、おむつ1が着用者に装着された際に、当該着用者の肌側に位置すべき側のことを単に「肌側」と言い、他方、着用者の非肌側に位置すべき側のことを単に「非肌側」と言う。
 おむつ1は、所謂2ピースタイプのおむつである。すなわち、同おむつ1は、尿などの排泄液を吸収する吸収性本体3を第1部品として有する。そして、吸収性本体3の非肌側面を覆って設けられ、おむつ1の外装をなす平面視略砂時計形状の外装シート7を第2部品として有する。
 吸収性本体3は、排泄液を吸収する吸収性コア3cを有する。吸収性コア3cは、パルプ繊維等の液体吸収性繊維や高吸収性ポリマー等の液体吸収性粒状物を、所定形状(例えば長方形形状)に成形したものである。吸収性コア3cの肌側面には、当該面を覆うように不織布等の液透過性のトップシート4が設けられており、同様に、同吸収性コア3cの非肌側面には、当該面を全面に亘って覆うようにフィルム等の液不透過性の防漏シート5が設けられている。
 外装シート7は、図2の展開状態においては、平面視略砂時計形状の柔軟なシートであり、同シート7は、互いに直交する三方向として、厚さ方向と長手方向と幅方向とを有している。また、当該外装シート7は、長手方向に関して三つの部分7f,7b,7cに区分される。すなわち、外装シート7は、着用者の腹側に配される腹側部7fと、着用者の背側に配される背側部7bと、着用者の股間に配される股下部7cとに区分される。
 図3に示すように、外装シート7には、二層構造の所謂ラミネートシートが使用されている。すなわち、当該外装シート7は、おむつ1の着用時に着用者の肌側を向いて内層をなす内層シート8と、同着用時に非肌側を向いて外層をなす外層シート9とを有する複合シートである。かかる内層シート8と外層シート9とは、厚さ方向に重ね合わせられつつ接着又は溶着等で接合される。なお、この例では、内層シート8と外層シート9との接合部が非連続に分散してなる所定の接合パターン(不図示)で溶着されている。
 内層シート8の材料には、おむつ1の幅方向に伸縮性を有した伸縮性シート8が使用されており、他方、外層シート9の材料には、おむつ1の幅方向に低い伸長性の低伸長性シート9が使用されている。そして、伸縮性の内層シート8が幅方向に自然長の2.5倍等の所定の伸長倍率まで伸長された状態(以下、伸長状態とも言う)で、同じく幅方向に張った状態の低伸長性の外層シート9に重ね合わせられて、これら両シート8,9同士は上記の接合パターンで一体的に固定されている。
 そのため、かかる伸長状態が解除されると、内層シート8は自身の伸縮性に基づいておむつ1の幅方向に収縮するが、このとき、低伸長性の外層シート9については、複数の皺状におむつ1の幅方向に折れ曲がり、これにより、外層シート9は、内層シート8の収縮に速やかに追従して、幅方向の全長を短くする。そして、その結果、おむつ1に外力が作用しない無負荷状態においては、外装シート7は全体として幅方向に短縮しているとともに、同外装シート7の外面は、外層シート9の折れ曲がりに起因して複数の皺が寄った状態となっている。但し、かかる外装シート7に幅方向の引っ張りの外力を付与すると、上記皺が伸びきるまで当該外装シート7は略弾性的に伸長し得て、これにより、おむつ1の外装シート7は、幅方向に伸縮性を有した仕様となっている。
 ちなみに、ここで言う「伸縮性」とは、引っ張りの外力が作用すると、外力の作用方向に略弾性的に伸長するとともに、当該外力が解除されると、略弾性的に収縮する性質のことである。
 なお、かかる伸縮性シート8は、望ましくは、以下の条件を満たすと良い。すなわち、短手方向の寸法が25mmの帯状シートの長手方向の両端部をそれぞれ上記短手方向に25mmの全長で均等に把持した状態で、上記両端部をそれぞれ力点として1.0(N)の外力で長手方向に引っ張ったときの伸び率(%)が50%~300%の範囲の任意値になっているとともに、上記外力を解除して収縮した後に縮まずに残る残留伸び歪み(%)が、0%~40%の範囲の任意値になっていると良い。また、より望ましくは、上記伸び率が、70%~200%の範囲の任意値になっているとともに、残留伸び歪みが、0%~30%の範囲の任意値になっていると良い。ちなみに、上記の伸び率(%)というのは、1.0(N)の外力で引っ張ったときの帯状シートの長さL1から、引っ張る前の無負荷時における帯状シートの長さたる自然長L0を減算してなる減算値ΔL1(=L1-L0)を、上記自然長L0で除算してなる除算値(=ΔL1/L0)の百分率表記値のことである。また、上記の残留伸び歪み(%)というのは、上記の1.0(N)の外力を解除後の長さL2から上記引っ張る前の自然長L0を減算してなる減算値ΔL2(=L2-L0)を、上記の外力で引っ張ったときの長さL1から上記自然長L0を減算してなる減算値ΔL1(=L1-L0)で除算してなる除算値(=ΔL2/ΔL1)の百分率表記値のことである。
 また、「低伸長性シート9」とは、上記の伸縮性シート8よりも低い伸長性のシートのことである。すなわち、所定の大きさの引っ張りの外力が作用した際の伸び率(%)が、上記の伸縮性シート8の伸び率(%)よりも低いシートのことである。なお、かかる低伸長性シート9は、望ましくは、以下の条件を満たすと良い。すなわち、短手方向の寸法が25mmの帯状シートの長手方向の両端部をそれぞれ上記短手方向に25mmの全長で均等に把持した状態で、上記両端部をそれぞれ力点として1.0(N)の外力で長手方向に引っ張ったときの伸び率(%)が0%~20%の範囲の任意値になっていると良い。また、より望ましくは、上記伸び率が、0%~10%の範囲の任意値になっていると良い。
 本実施形態において、伸縮性シート8及び低伸長性シート9は不織布によって構成されているものとして説明を行う。但し、伸縮性シート8及び低伸長性シート9は織布等、他のシートによって構成されていても良い。
 伸縮性シート8に利用可能な不織布の具体例については、略弾性を示す熱可塑性エラストマー製繊維と、略非弾性を示す熱可塑性樹脂製繊維とを有した不織布に対してギア延伸処理等の適宜な延伸処理を施した不織布を例示できる。すなわち、かかる延伸処理を行うことによって、不織布に含まれる略非弾性の熱可塑性樹脂製繊維を塑性変形させたり、同繊維同士の接合点を破壊させたりすれば、熱可塑性エラストマー製繊維の略弾性的な伸縮変形を阻害しにくい構造に当該不織布を変化させることができて、これにより、当該不織布の伸縮性が発現されて、伸縮性シート8として使用可能な状態となる。
 このような伸縮性シート8は複数の繊維が無作為に絡み合った状態で構成されているため、微視的に見ると当該伸縮性シート8は繊維間に複数の空隙を有する構造となっている。そして、その表面には繊維が密に絡み合っている部分と、繊維が粗に絡み合っている部分とが存在する。すなわち、伸縮性シート8は粗密を有する構造である。そのため、伸縮性シート8の両端部をそれぞれ短手方向に均等に把持した状態で長手方向に引っ張った場合であっても、短手方向の全領域が均等に伸びるわけではなく、部分的に粗密が大きくなり、空隙が大きくなる部分が発生する。
 低伸長性シート9に利用可能な不織布の具体例については、PE、PP、ポリエステル、ポリアミドなどの繊維からなるスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とスパンボンド不織布とを積層してなる所謂SMS不織布、エアスルー不織布等を例示できる。なお、繊維の構造については、何等上述の如き単一の熱可塑性樹脂からなる単独繊維に限るものではない。また、低伸長性シート9も絡み合った繊維間に複数の空隙を有する構造である。
 図3に示すように、吸収性本体3は、外装シート7の肌側において接合部Jにて接合される。そして、吸収性本体3が取り付けられた外装シート7は、股下部7cにて二つ折りされて腹側部7fと背側部7bとが重ね合わせられる。そして、この重ね合わせられた状態において、腹側部7fと背側部7bとが幅方向の各端部7eWでそれぞれ接合されることにより、図1に示すような胴周り開口部HBと一対の脚周り開口部HL,HLとが形成されたパンツ型のおむつ1の形態にされる。
 なお、本実施形態のパンツ型のおむつ1では、外装シート7に所定の文字や模様、キャラクター等からなる画像Gが印刷されている(図1参照)。当該画像Gによって、おむつ1の外観上のデザインを向上させると共に、おむつ1に関する情報(例えば、商品名やおむつ1の前後を指示する情報)を使用者が視覚的に認識することを可能としている。
 <外装シート7の製造方法>
 図4は、おむつ1を構成する外装シート7を製造する製造ラインLMの概略側面図である。製造ラインLMは、伸縮性シート8の連続シート8A(以下、伸縮性連続シート8Aとも言う)及び低伸長性シート9の連続シート9A(以下、低伸長性連続シート9Aとも言う)を材料として用いて、外装シート7が幅方向に連続してなる連続シート7A(以下、外装連続シート7Aとも言う)を生成する。製造ラインLMは、搬送機構CVと、印刷部10と、乾燥部20と、冷却部30と、検査部40と、シート部材接合部50とを備えている。
 搬送機構CVは、伸縮性連続シート8A(内装シート8)または低伸長性連続シート9A(外装シート9)、若しくはその両方を所定の搬送経路に沿って連続して搬送する搬送部である。搬送機構CVとしては、例えば、搬送ローラーや、載置面たるベルト面に吸着保持機能を有したサクションベルトコンベア等が使用される。本実施形態の搬送機構CVにおいて、低伸長性連続シート9Aは、おむつ1の幅方向に相当する方向を搬送方向に揃えながら搬送方向に一列に並んだ状態で搬送される。同様に、伸縮性連続シート8Aも、おむつ1の幅方向に相当する方向を搬送方向に揃えながら搬送方向に一列に並んだ状態で搬送される。
 また、以下の説明では、製造ラインLM上に設定された上記の搬送方向のことを「MD方向」とも言う場合がある。MD方向は、シートの種類によって異なる方向になり得るとともに、同じシートであっても搬送場所によって異なる方向になり得る。また、MD方向と直交する方向の2方向のうちの一方を「CD方向」と言う場合があり、他方を「Z方向」と言う場合がある。CD方向は、各シートの幅方向と平行な方向であり、図4の紙面に垂直な方向である。また、Z方向は、各シートの厚さ方向と平行な方向である。
 (印刷部10)
 搬送機構CVによって搬送される低伸長性連続シート9Aは、MD方向下流側へ搬送される過程で、印刷部10によって画像Gが印刷される(印刷工程)。本実施形態の印刷部10は、多数のノズルNzからインク滴を吐出し、低伸長性連続シート9Aに着弾したインク滴(ドット)によって画像Gを形成するインクジェット印刷装置である。
 図5は、印刷部10の構成を表す側面図である。図6は、印刷部10のヘッドユニット12の説明図である。印刷部10は、ヘッドユニット12と、搬送ローラー13と、印刷制御部14とを有する。なお、以下の説明では、低伸長性連続シート9Aのヘッドユニット12と対向する側の面、すなわち低伸長性連続シート9Aで画像が形成される側の面のことを「印刷面」と呼ぶことがある。
 ヘッドユニット12は、CD方向に並ぶ複数のノズルNzを有し、各ノズルNzからインク滴を吐出するインク吐出ユニットである。ヘッドユニット12は、インク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク)の色ごとに設けられる。複数(ここでは4つ)のヘッドユニット12は、MD方向に沿って並んで配置されている。各ヘッドユニット12は、CD方向に沿って千鳥列状に配置された複数(ここでは4つ)のヘッド121を有し、各ヘッド121は、CD方向に並ぶ複数のノズルNzを有している。これにより、各ヘッドユニット12は、被印刷媒体である低伸長性連続シート9Aの幅方向の全領域にインクを吐出可能である。なお、ヘッドユニット12が複数色のインクを吐出可能でも良い。また、ヘッドユニット12のヘッド121は、1つでも良いし、3つ以上でも良い。また、ヘッド121によるインク滴の吐出方式は、圧電素子を用いた圧電方式でも良いし、ヒーターを用いたサーマル方式でも良いし、他の方式でも良い。
 搬送ローラー13は、低伸長性連続シート9Aを搬送する回転ローラーである。搬送ローラー13が低伸長性連続シート9Aを厚さ方向に支持することによって、ヘッドユニット12のノズルNzと低伸長性連続シート9Aとの間隔が保たれる。この搬送ローラー13は、ヘッドユニット12のノズルNzとは対向しない位置に配置されている。これは、被印刷媒体である低伸長性連続シート9Aが不織布であるため、インク滴が不織布の繊維間を通過するおそれがあるためである。また、図5に示されるように、搬送ローラー13がMD方向におけるヘッドユニット12,12の間の位置に配置されていても良く、このようにMD方向に隣り合って並ぶ搬送ローラー13同士の間隔を短くすることによって、低伸長性連続シート9Aが搬送中に撓むのを抑制しやすくなる。
 印刷制御部14は、印刷部10の動作を制御する制御部である。例えば、印刷制御部14は、ヘッドユニット12を制御することによって、ヘッドユニット12の各ノズルNzから吐出されるインク滴の吐出タイミングや吐出量などを制御する。
 ところで、後述するシート部材接合部50において(図4参照)、MD方向に伸長状態の伸縮性連続シート8Aと低伸長性連続シート9Aとが張り合わされた後、伸長状態が解除されると、伸縮性連続シート8AがMD方向(おむつ1の幅方向:図3参照)に収縮するのに応じて、低伸長性連続シート9Aが、複数の皺を形成しながらMD方向に収縮することになる。この収縮分を考慮して、印刷部10は、低伸長性連続シート9Aに対して画像Gを印刷する。図7は、収縮前後の画像Gの説明図である。図7の上図は、収縮後の最終的な画像Gの説明図である。図7の下図は、低伸長性連続シート9Aに印刷される画像Gであり、収縮前の画像Gの説明図である。例えば、伸縮性連続シート8Aの伸長倍率が1.5倍である場合、印刷対象の画像G(上図参照)をMD方向に1.5倍に伸長させた画像G(下図参照)を生成するとともに、MD方向に伸長させた画像Gを低伸長性連続シート9Aにインクジェット印刷する。MD方向に伸長させた画像G(下図参照)は、印刷制御部14が生成しても良いし、外部の画像処理装置が生成して、そのデータを印刷制御部14に送信しても良い。
 印刷部10では、伸び率の小さい低伸長性連続シート9Aを被印刷媒体として印刷を行うため、良好な画像Gを形成しやすくなる。仮に伸縮性連続シート8Aを被印刷媒体としてインクジェット印刷を行うとすると、搬送時に伸縮性連続シート8Aが伸長することにより表面の繊維間の隙間(空隙)が広がりやすくなる。その結果、インク滴の着弾位置のずれが大きくなったり、インク滴が伸縮性連続シート8Aの裏側に通り抜けてしまったりして良好な画質の画像Gを印刷することが困難になる場合がある。これに対して、低伸長性連続シート9Aは伸縮性連続シート8Aと比べて繊維間の隙間が小さく、表面が均一な状態に保たれやすいため、伸縮性連続シート8Aと比べてインクジェット印刷された画像Gの画質を良好なものとすることができる。
 不織布である低伸長性連続シート9Aの表面には繊維間の隙間(空隙)があるため、印刷面側から着弾したインクは、表面の繊維間の空隙を通過して低伸長性連続シート9Aの内部にまで浸透する。すなわち、インクは、低伸長性連続シート9Aの表面の繊維に付着するだけでなく、低伸長性連続シート9Aの内部の繊維にも付着している。また、インクは印刷面側から塗布されるため、印刷面に近いほど繊維に付着しているインク量は多くなる。
 (乾燥部20)
 不織布である低伸長性連続シート9Aにインクジェット印刷を行う場合、インク滴が小さいと、インク滴が低伸長性連続シート9Aの繊維間の空隙を通過してしまい、印刷濃度が不十分になってしまうことがある。このため、印刷部10は、比較的大きいインク滴を低伸長性連続シート9Aに吐出することになる。但し、大きなインク滴でインクジェット印刷を行うと、低伸長性連続シート9Aに付着するインク量が多くなるため、乾燥が不十分になりやすい。また、おむつ1の製造ラインLMにインクジェット印刷工程を組み込んだ場合には、インクジェット印刷後の乾燥が不十分だと、印刷部10のMD方向下流側に配置された各機器(例えば、シート部材接合部50)や、搬送機構CVの搬送ローラー等がインクで汚れるおそれがある。そこで、本実施形態の製造ラインLMでは、乾燥部20によって加熱エアを低伸長性連続シート9Aに接触させることでインクを乾燥させる工程(接触工程)を有する。すなわち、乾燥部20は低伸長性連続シート9Aに加熱エアを接触させる接触部である。加熱エアは、画像Gを形成するインクを乾燥させるための気体であり、例えば除湿されて80°程度に加熱された空気である。本実施形態の乾燥部20(接触部)は、直線搬送型乾燥装置21と、ドラム型乾燥装置25とを備えている。
・直線搬送型乾燥装置21
 図8は、直線搬送型乾燥装置21の構成説明図である。直線搬送型乾燥装置21は、印刷部10のMD方向下流側に配置され、インクジェット印刷された低伸長性連続シート9Aを直線状の搬送経路において乾燥させる装置である。直線搬送型乾燥装置21は、乾燥室211と、搬送支持ローラー212と、複数の吹出口213と、加圧チャンバー214とを有する。
 乾燥室211は、低伸長性連続シート9Aの搬送経路の周囲に乾燥領域を区画する部材である。乾燥室211内は高温に保たれており、低伸長性連続シート9Aはこの乾燥室211内で加熱される。搬送支持ローラー212は、低伸長性連続シート9Aを支持しつつ搬送する回転ローラーである。搬送支持ローラー212は、モーターの駆動力で回転しても良いし、低伸長性連続シート9Aと接触することによって受動的に回転しても良い。
 吹出口213は、加熱エアを吹き出す部位である。図8の直線搬送型乾燥装置21では、加熱エアを供給する加圧チャンバー214に対して複数の吹出口213が設けられており、低伸長性連続シート9Aに向けて吹出口213のそれぞれから均一な加熱エアを吹き出すことができる。図9は、吹出口213の断面図である。吹出口213は、MD方向の幅Wの開口がCD方向に延びたスリット状の開口部231を有している。また、吹出口213の内部には、加熱エアの流路となる絞り部232及び整流部233が形成されている。加圧チャンバー214から供給された加熱エアは、加熱エア供給孔23hから絞り部232へ流入して流路を絞られながら整流部233側へ移動して整流された後、開口部231から噴出される。これにより、吹出口213は、低伸長性連続シート9Aの幅方向(CD方向)の全領域に加熱エアを吹き付けることができる。
 本実施形態の乾燥部20では、低伸長性連続シート9Aに対して厚さ方向の下側から上側に向かって加熱エアが吹き付けられる。すなわち、低伸長性連続シート9Aで画像Gが印刷された面(印刷面)側に加熱エアが吹き付けられる(図4及び図8参照)。吹き付けられた加熱エアは、繊維間の空隙を流路として低伸長性連続シート9Aを厚さ方向に貫通するように流れ、低伸長性連続シート9Aの内部まで加熱する。本実施形態において、不織布である低伸長性連続シート9Aにインクジェット印刷を行った場合、不織布の表面の空隙を通過して内部にまでインクが浸透しているため、低伸長性連続シート9Aを高温雰囲気内(乾燥室211)に入れただけでは、シート部材内部の繊維に付着したインクを十分に乾燥させることは難しい。しかし、加熱エアを吹き付けて低伸長性連続シート9Aの繊維間の空隙を通過させることにより当該加熱エアが内部の繊維と接触しやすくなることから、低伸長性連続シート9Aの内部に浸透したインクを効率的に乾燥させることができるようになる。また、印刷面に近いほど繊維に付着したインク量が多いため、低伸長性連続シート9Aの印刷面側に吹出口213を配置することによって、インクをより乾燥させやすくすることができる。但し、図8で低伸長性連続シート9Aの厚さ方向の上側から下側に向かって加熱エアが噴き出すように乾燥部20が配置されるのであってもインクを乾燥させることは可能である。
 本実施形態の印刷工程では、乾燥室211内で低伸長性連続シート9Aを搬送する際に、塑性変形しない程度の所定の張力を低伸長性連続シート9Aに付与しておき、張力の付与された状態の低伸長性連続シート9Aの厚さ方向に乾燥用エアを通過させている。これにより、繊維間の空隙が広がるため、圧力損失を低減させた状態で乾燥用エアを通過させることができる。また、これにより、低伸長性連続シート9Aを通過する乾燥用エアの流量を増加させることができ、インクの乾燥を促進することができる。なお、低伸長性連続シート9Aに対して塑性変形しない程度(低伸長性シートが破損しない程度)の張力を付与することは許容される。塑性変形しない程度の張力の付与であっても、張力を付与しない場合と比べると繊維間の空隙は広くなり、圧力損失を低減することができる。
 また、乾燥部20の乾燥室211には、低伸長性連続シート9Aを貫通した加熱エアを吸引する吸引口(不図示)が設けられていても良い。低伸長性連続シート9Aを通過した加熱エアを吸引口から吸引することにより、加熱エアが低伸長性連続シート9Aを通過しやすくなる。
・ドラム型乾燥装置25
 図10は、ドラム型乾燥装置25の構成図である。ドラム型乾燥装置25は、第1ドラム乾燥装置25Aと、第2ドラム乾燥装置25Bとを備えている。第1ドラム乾燥装置25Aは、第1ドラム乾燥室251Aと、第1ドラム252Aと、複数の吹出口253と、加圧チャンバー254と、吸引口256とを有する。同様に、第2ドラム乾燥装置25Bは、第2ドラム乾燥室251Bと、第2ドラム252Bと、複数の吹出口253と、加圧チャンバー254と、吸引口256とを有する。第1ドラム乾燥装置25Aは、第2ドラム乾燥装置25Bに対してMD方向の上流側に配置されている。第1ドラム乾燥装置25A及び第2ドラム乾燥装置25Bの構成はほぼ同じなので、ここでは第1ドラム乾燥装置25Aについて説明し、第2ドラム乾燥装置25Bの説明を省略する。
 第1ドラム乾燥室251Aは、低伸長性連続シート9Aの搬送経路となる第1ドラム252Aの周囲に乾燥領域を区画する部材である。なお、第1ドラム乾燥室251Aと第2ドラム乾燥室251Bを分けずに、共通の乾燥室にしても良い。第1ドラム252Aは、外周面に低伸長性連続シート9Aを保持しつつ、回転することによって低伸長性連続シート9Aを搬送する回転ドラムである。第1ドラム252Aの外周面に低伸長性連続シート9Aが保持されるため、前述の直線搬送型乾燥装置21のように低伸長性連続シート9Aを搬送ローラーで支持した場合と比べると、厚さ方向に乾燥用エアを通過させる際に低伸長性連続シート9Aが撓みにくい。なお、第1ドラム252Aは不図示の駆動モーターによって回転し、これにより低伸長性連続シート9Aが搬送される。
 図11Aは、第1ドラム252Aの外周面の断面構造の説明図である。図11Bは、金属板271の説明図である。図11Cは、網状部材272の説明図である。図11Aに示すように、第1ドラム252Aの外周面は、金属板271と網状部材272とを重ね合わせて構成されている。金属板271は、通気穴となる多数の打ち抜き穴の形成された所謂パンチングメタルである(図11B参照)。金属板271には、例えば直径Dを5mmとする丸形状の打ち抜き穴が、ピッチPを8mmとして60度の千鳥列状に配置されている。網状部材272は、線材を平織りして網目を構成した網状の部材であり、網目が通気穴となる(図11C参照)。網状部材272は、例えば金属線材を平織りした金網でも良いし、プラスチックワイヤーを平織りしたプラスチック製の網でも良い。網状部材272の網目(線材と線材との間隔)は、金属板271の打ち抜き穴の直径よりも小さく設定されている。網状部材272の網目が小さいのでドラムの周面に低伸長性連続シート9Aを保持する際に通気穴の痕が残りにくく、また、網状部材272は金属板271に支持されるので網状部材272の変形も抑制できる。
 吹出口253は、乾燥用エアを吹き出す部位である(図10参照)。ドラム型乾燥装置25の吹出口253は、直線搬送型乾燥装置21の吹出口213と略同様の形状をしており(図9参照)、CD方向に細長いスリット状の開口から乾燥用エアを吹き出す。図10の第1ドラム乾燥装置25Aでは、加熱エアを供給する加圧チャンバー254に対して複数の吹出口253が設けられており、各吹出口253は第1ドラム252Aの外周面に対向するように配置されている。第1ドラム252Aの外周面に対して印刷面が外側を向くように低伸長性連続シート9Aを供給することによって、印刷面が吹出口253と対向し、吹出口253は、低伸長性連続シート9Aの印刷面に向かって乾燥用エアを吹き出すことになる。印刷面に近いほど繊維に付着したインク量が多いため、低伸長性連続シート9Aの印刷面が外側を向くように低伸長性連続シート9Aが第1ドラム252Aに供給されることによって、インクを乾燥させやすくなる。
 また、低伸長性連続シート9Aを第1ドラム252Aに供給する際に、塑性変形しない程度の所定の張力を低伸長性連続シート9Aに付与しておき、張力の付与された状態で第1ドラム252A(又は第2ドラム252B)の外周面に低伸長性連続シート9Aを保持させている。これにより、繊維間の空隙が広がるため、圧力損失を低減させた状態で乾燥用エアを通過させることができる。また、これにより、低伸長性連続シート9Aを通過する乾燥用エアの流量を増加させることができ、インクの乾燥を促進することができる。
 吸引口256は、低伸長性連続シート9Aを通過した乾燥用エアを第1ドラム252Aの内側から吸引する部位である。吸引口256が乾燥用エアを吸引することにより、第1ドラム252Aの内側が減圧雰囲気になる。これにより、低伸長性連続シート9Aが外周面に吸着されるため、第1ドラム252Aに保持された低伸長性連続シート9Aが搬送中にずれにくくなる。また、第1ドラム252Aの内側が減圧雰囲気になることにより、低伸長性連続シート9Aの表裏に圧力差を形成でき、低伸長性連続シート9Aの厚さ方向に乾燥用エアを通過させることができる。特に吹出口253に対向する領域では、低伸長性連続シート9Aの厚さ方向に乾燥用エアを通過させやすくなる。
 (冷却部30)
 乾燥部20によって加熱エアを吹き付けられた低伸長性連続シート9Aは、続いて冷却部30によって冷却される(冷却工程)。冷却部30は低伸長性連続シート9Aの温度を常温付近(例えば25℃程度)まで冷却する機構であり、乾燥部20の直線搬送型乾燥装置21と同等の構成を有する(図8参照)。すなわち、冷却部30は、冷却室と、搬送支持ローラーと、複数の吹出口と、加圧チャンバーとを有し(いずれも不図示)、加熱エアの替わりに冷却エアを低伸長性連続シート9Aに吹き付ける。冷却部30の構成や機能は直線搬送型乾燥装置21と略同様であるため、ここでは冷却部30の構成についての詳細な説明は省略する。
 冷却部30では、加圧チャンバーから冷却エアを供給し、当該冷却エアを複数の吹出口から低伸長性連続シート9Aの印刷面側に吹き付ける。冷却エアは室温よりも温度が低くなるように温度調整された空気でも良いし、室内の空気をそのまま使用するのであっても良い。吹き付けられた冷却エアは、直線搬送型乾燥装置21で説明したのと同様に不織布の繊維間の空隙部を通過することで低伸長性連続シート9Aを厚さ方向に貫通するように流れ、低伸長性連続シート9A内部の繊維及びインクを冷却する。これにより、低伸長性連続シート9Aの内部でインクをしっかりと定着させることができる。
 なお、冷却部30の構成は上述の例に限られず、低伸長性連続シート9Aを冷却することが可能であれば他の構成であっても良い。例えば、低伸長性連続シート9Aが冷却室の内部を通過するだけの構成であっても良いし、冷却ファンによって低伸長性連続シート9Aの表面に送風する構成であっても良い。また、冷却部30が設けられず、製造ラインLMにおいて乾燥部20とシート部材接合部50との間の搬送距離を長くとることで、低伸長性連続シート9Aを雰囲気温度(室温)によって自然冷却するのであっても良い。但し、冷却部30を設けることにより、低伸長性連続シート9Aを効率的に冷却することが可能となるのでインクをより定着させやすくなる。また、冷却に要する区間(搬送距離)を短くすることができるため、製造ラインLMをコンパクトに構成することが可能となる。
 (検査部40)
 続いて、検査部40によって低伸長性連続シート9Aに印刷された画像Gの画質が検査される(検査工程)。図12は、検査部40の構成を表す側面図である。検査部40は、撮像装置41と、照明装置42と、撮像制御部43と、表示部44とを有する。
 撮像装置41は低伸長性連続シート9Aの印刷面と対向する位置に配置され、低伸長性連続シート9Aが搬送される過程で表面に印刷された画像Gを撮像(スキャン)する。撮像装置41としては、例えばCCDカメラやCMOSカメラが用いられる。照明装置42は、画像Gの撮像時に低伸長性連続シート9Aの印刷面に光を当てる光源である。なお、撮像装置41と照明装置42とが一体的に構成されていても良い。また、撮像装置41が複数設けられ、それぞれが画像Gの異なる領域若しくは重複する領域を撮像できるようにしても良い。撮像制御部43は、撮像装置41や照明装置42の動作を制御して画像Gの撮像を行わせると共に、撮像された画像(スキャン画像)を表示部44に表示させる。表示部44に表示されたスキャン画像は、検査担当者等が目視により適宜確認することができる。本実施形態では、低伸長性連続シート9Aが比較的速い速度で搬送されているが、撮像制御部43によって照明の明るさや撮像時の解像度を搬送速度に応じて適切に制御することにより、低伸長性連続シート9Aの搬送動作中であっても画像Gの状態を鮮明にスキャンすることができる。
 また、撮像制御部43は、撮像された画像Gの画質が所定の基準を満たしているか否かの判定を行い、必要に応じて警告(アラーム)を発したり低伸長性連続シート9Aの搬送動作を停止させたりする等の処理を行う。具体的には、スキャン画像の各画素について濃度や明度の情報を取得して解析することにより、画像Gにおける印刷ずれ、異物の混入、インクドットの抜け、汚れの有無等を検出する。そして検出結果を所定の基準(例えば、ドット抜けの発生割合や印刷位置のずれの程度)と比較して、当該基準に定められた画質よりも画像Gの画質が悪いと判定された場合は、搬送機構CVや印刷制御部14等と連動して低伸長性連続シート9Aの搬送速度を変更させたり印刷動作を停止させたりする。
 低伸長性連続シート9Aの搬送動作中に印刷画像の検査を自動的に行うことにより、検査担当者の負担や検査時間を低減させ、不具合が発生した場合には迅速に対応することができるようになる。また、製造ラインLMのインラインで画像Gの検査を行うことにより、良好な画質の画像が印刷されたシート部材を効率よく製造することができるようになる。特に、本実施形態では、低伸長性連続シート9Aに画像Gが印刷された後、接触工程(インクの乾燥工程)や冷却工程によって該低伸長性連続シート9Aにインクがしっかりと定着されているため、それ以降の工程ではインクの滲みや画像のかすれ等が発生しにくい。したがって、少なくとも乾燥部20よりも搬送方向(MD方向)の下流側で検査を行うことにより、画像Gの画質を正確に判定することが可能である。なお、インクの定着性の観点から、検査部40は冷却部30のMD方向下流側に設けられていること望ましいが(図4参照)、乾燥部20と冷却部30との間に検査部40が設けられるのであっても良い。
 (シート部材接合部50)
 画像Gが印刷され、インクが乾燥された低伸長性連続シート9Aは、シート部材接合部50において伸縮性連続シート8Aと厚さ方向に重ね合わせた状態で接合される(接合工程)。本実施形態のシート部材接合部50は、伸縮性連続シート8Aの搬送機構51と、低伸長性連続シート9Aの搬送機構52と、超音波溶着装置55とを有する(図4参照)。
 伸縮性連続シート8Aの搬送機構51(以下、単に「搬送機構51」とも呼ぶ)は、例えばCD方向に沿った回転軸回りに回転する一対のニップロール51R,51Rを有する。そして、上流側から連続して搬送される伸縮性連続シート8Aを、一対のニップロール51R,51Rが互いの外周面で挟み込みながら駆動回転することにより、伸縮性連続シート8Aを超音波溶着装置55へ送り出す。ここで、ニップロール51Rは周速値V51R(m/分)で回転し、伸縮性連続シート8Aを搬送するものとする。
 一方、低伸長性連続シート9Aの搬送機構52(以下、単に「搬送機構52」とも呼ぶ)は、例えば、CD方向に沿った回転軸回りに回転する搬送ローラー52Rを有する。そして、MD方向の上流側から連続して搬送される低伸長性連続シート9Aに搬送ローラー52Rが外周面で接触しながら駆動回転することによって、低伸長性連続シート9Aを超音波溶着装置55へ送り出す。ここで、搬送ローラー52Rは周速値V52R(m/分)で回転し、低伸長性連続シート9Aを搬送するものとする。搬送ローラー52Rの周速値V52Rは、ニップロール51R(搬送機構51)の周速値V51R(m/分)の伸長倍率倍の値に設定されている。
 超音波溶着装置55は、超音波振動する振動面を有したホーン部である超音波ホーン55hと、超音波ホーン55hの振動面の超音波振動を外周面で受けるローラー部であるアンビルローラー55aと、を有する。アンビルローラー55aは、CD方向に沿った回転軸回りに回転可能に支持されており、駆動源としてのサーボモーター(不図示)から駆動力を付与されて駆動回転する。アンビルローラー55aの外周面には、搬送機構51から送られる伸縮性連続シート8Aが、同外周面に対して概ね相対滑り無く所定の巻き付き角度(例えば45°以上)で巻き付いている。また、搬送機構52から送られる低伸長性連続シート9Aが、アンビルローラー55aの外周面上で、伸縮性連続シート8Aと厚さ方向に重ね合わせられた状態で巻き付いている。
 アンビルローラー55aは、搬送ローラー52Rの周速値V52Rとほぼ同じ周速度V55a(m/分)で回転する。したがって、低伸長性連続シート9Aは、伸長されていない状態、言い換えると塑性変形等しない程度に適度に張った状態で超音波ホーン55hの位置を通過する。一方、伸縮性連続シート8Aは、自然長の状態から上記の伸長倍率の長さにまで伸長された状態で超音波ホーン55hの位置を通過する。そして、このような状態で重ね合わされた伸縮性連続シート8A及び低伸長性連続シート9Aに対して超音波ホーン55hの振動面から超音波振動エネルギーが投入されることにより、投入部分が発熱して溶融し、所定の接合パターンで両シートが溶着され、外装連続シート7Aが生成される。
 なお、本実施形態では、図4に示されるように、ニップロール51Rから超音波溶着装置55までの伸縮性連続シート8Aの搬送距離よりも、乾燥部20から超音波溶着装置55までの低伸長性連続シート9Aの搬送距離の方が長くなるように、製造ラインLMが構成されている。言い換えると、伸縮性連続シート8Aが延伸されながら搬送される距離よりも、乾燥されてから接合されるまでに低伸長性連続シート9Aが搬送される距離の方が長くなっている。乾燥部20において加熱ガスと接触することで温度が高くなっている低伸長性連続シート9Aは、十分な長さの搬送経路を搬送されることにより、超音波溶着装置55に達するまでに温度が低下する。これにより、アンビルローラー55aにおいて伸縮性連続シート8Aと低伸長性連続シート9Aとが重ね合わされる際に、低伸長性連続シート9Aの熱によって伸縮性連続シート8Aを構成する熱可塑性エラストマーの伸縮性が失われてしまうことが抑制される。さらに、本実施形態では冷却部30によって低伸長性連続シート9Aが冷却されているため、伸縮性連続シート8Aに対して熱が加えられることをより抑制しやすくなっている。
 また、本実施形態では低伸長性連続シート9Aの印刷面(インク滴が吐出される側の面)とは反対側の面に伸縮性連続シート8Aが接合される(図4参照)。これにより、インクによる溶着不良を抑制でき、伸縮性連続シート8Aと低伸長性連続シート9Aとの接合強度を強く保つことができる。なお、低伸長性連続シート9Aの印刷面が伸縮性連続シート8Aの反対側に配置されることによって、低伸長性連続シート9Aの印刷面は、おむつ1の外装シート7の非肌側、すなわち、おむつ1の最も外側の面(最外面)に配置される(図3参照)。これにより、おむつ1の外装シート7の画像Gが色鮮やかに視認できるようになる。なお、画像Gは、シート部材にインクがしっかりと定着し良好な耐摩擦性を有するため、おむつ1の最外面に形成された場合であっても画質の劣化等は生じにくい。
 
 また、図4に示すように、伸縮性連続シート8A及び低伸長性連続シート9Aをアンビルローラー55aの外周面上に重ね合わせる際に、低伸長性連続シート9Aを内側(アンビルローラー55a側)にし、伸縮性連続シート8Aを外側(超音波ホーン55h側)にしている。これにより、超音波ホーン55hが低伸長性連続シート9Aの印刷面と接触しないため、超音波ホーン55hのインク汚染や溶着不良が発生することを抑制できる。その際、低伸長性連続シート9Aで画像Gが形成された印刷面側がアンビルローラー55aの外周面に当接するが、本実施形態では、画像G印刷後の乾燥工程(接触工程)及び冷却工程によってインクが乾燥されシート部材にしっかりと定着しているため、アンビルローラー55aでもインクによる汚染等は生じにくい。
 図13は、外装連続シート7Aの生成後からおむつ1の完成までの工程説明図である。製造ラインLMは、脚周り開口部HL(図1参照)となる開口部を外装連続シート7Aに形成する。この開口部は、環状のカッター刃(不図示)によって外装連続シート7Aから打ち抜かれて形成される。次に、伸長状態で搬送されていた外装連続シート7AをMD方向に収縮させる。これにより、外装連続シート7Aの外面に皺が形成される。次に、吸収性本体3が外装連続シート7Aの脚周り開口部HLの間に取り付けられ、外装連続シート7Aが二つ折りされる。二つ折りされた外装連続シート7Aの脚周り開口部HLからCD方向に溶着によってエンドシール部(図1における端部7eW)が形成され、エンドシール部で外装連続シート7Aが分断され、切り離された部分がおむつ1となる。
 なお、製造ラインLMにおいて、シート部材接合部50よりも搬送下流側では外装連続シート7Aを加熱する工程が設けられていない。したがって、伸縮性シート8に対して過剰に熱が加えられることは無く、該伸縮性シート8を構成する熱可塑性エラストマーの伸縮性が失われることが抑制される。これにより、外装連続シート7A(おむつ1)は良好な伸縮性を維持することができる。
 ===その他の実施の形態===
 以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱すること無く、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでも無い。例えば、以下に示すような変形が可能である。
 上述の実施形態では、インクジェット印刷装置として、ヘッドユニットが固定された所謂ラインプリンタータイプが用いられていたが、MD方向に並ぶ複数のノズルを備えたヘッドがCD方向に往復移動するシリアルタイプのインクジェット印刷装置でも良い。
 上述の実施形態では、低伸長性連続シート9Aが被印刷媒体であったが、被印刷媒体は、これに限られるものではなく、不織布以外の被印刷媒体(例えば織布など)にインクジェット印刷が行われても良い。また、パンツ型のおむつ1を構成するシート(低伸長性連続シート9A)が被印刷媒体であったが、他の吸収性物品(例えば、生理用ナプキンや失禁パッド等)を構成するシートに対してインクジェット印刷が行われても良い。
 上述の実施形態で説明された製造ラインLMにおいて、印刷部10によって低伸長性連続シート9Aに印刷を行う前に、低伸長性連続シート9Aを加熱する工程を設けても良い。印刷前に低伸長性連続シート9Aを加熱することにより、低伸長性連続シート9Aの繊維間の空隙が拡張され、低伸長性連続シート9Aの表面に着弾したインク滴が当該空隙部を通過しやすくなり、低伸長性連続シート9Aの内部まで浸透しやすくなる。これにより、インクが低伸長性連続シート9Aの表面に残りにくくなるため、画像Gの耐摩擦性を向上させることができる。また、空隙が広がることにより、印刷後の乾燥工程において加熱エアが低伸長性連続シート9Aの厚さ方向を貫通して流れやすくなり、インクの乾燥を促進することができる。例えば、印刷部10の搬送方向上流側で、搬送機構CVを構成する搬送ローラー等にヒーターを設けることで、低伸長性連続シート9Aを効率的に加熱することが可能である。その際、低伸長性連続シート9Aの裏面側と表面側とが加熱されるようにすることで、低伸長性連続シート9Aの温度を均一にすることができる。
 さらに、印刷前の加熱を段階的に行うようにしても良い。言い換えると、印刷前加熱工程の前段階として予熱工程を設けても良い。段階的な加熱を行うことにより低伸長性連続シート9Aの急激な温度変化を抑制することができる。