以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態の半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、酸化物半導体からなる活性層を有する薄膜トランジスタ(酸化物半導体TFT)を備える。なお、本実施形態の半導体装置は、酸化物半導体TFTを備えていればよく、アクティブマトリクス基板、各種表示装置、電子機器などを広く含む。
 ここでは、液晶表示装置に用いられる酸化物半導体TFTを例に本発明による実施形態の半導体装置を説明する。
 図1(a)は本実施形態によるTFT基板100Aの模式的な平面図であり、図1(b)は図1(a)のA1-A1’線に沿った半導体装置(TFT基板)100Aの模式的な断面図である。図1(c)は、TFT基板100Aを有する液晶表示装置500の模式的な断面図である。図1(c)の破線矢印は電界方向を表している。
 TFT基板100Aは、基板2と、基板2の上に形成されたゲート電極3と、ゲート電極3の上に形成されたゲート絶縁層4と、ゲート絶縁層4の上に形成された酸化物半導体層5と、酸化物半導体層5に電気的に接続されたソース電極6sおよびドレイン電極6dと、ドレイン電極6dと電気的に接続された第1透明電極7と、ソース電極6sおよびドレイン電極6dの上に形成された誘電体層8aを含む層間絶縁層8と、層間絶縁層8の上に形成された第2透明電極9とを有する。第2透明電極9の少なくとも一部は誘電体層8aを介して第1透明電極7と重なっており、酸化物半導体層5および第1透明電極7は、同一の酸化物膜から形成されている。
 TFT基板100Aでは、第2透明電極9の少なくとも一部が誘電体層8aを介して第1透明電極7と重なっていることにより補助容量を形成している。従って、TFT基板100Aが有する補助容量は透明なので(可視光を透過するので)、開口率を低下させることがない。従って、TFT基板100Aは、従来のように金属膜(ゲートメタル層またはソースメタル層)を用いて形成された不透明な電極を有する補助容量を備えるTFT基板よりも、高い開口率を有し得る。また、補助容量によって開口率が低下することがないので、補助容量の容量値(補助容量の面積)を必要に応じて、大きくできるという利点も得られる。
 さらに、第1透明電極7の上にドレイン電極6dが形成され、第1透明電極7はドレイン電極6dに直接接していることが好ましい。このような構造を採用すると、第1透明電極7をドレイン電極6dの略端部まで形成することができるので、TFT基板100Aは、特許文献1に記載されているTFT基板よりも高い開口率を有し得る。
 次に、TFT基板100Aの各構成要素を詳細に説明する。
 基板2は、典型的には透明基板であり、例えばガラス基板である。ガラス基板の他、プラスチック基板を用いることもできる。プラスチック基板は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂で形成された基板、さらには、これらの樹脂と無機繊維(例えば、ガラス繊維、ガラス繊維の不織布)との複合基板を含む。耐熱性を有する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂を例示することがきる。また、反射型液晶表示装置に用いる場合には、基板2として、シリコン基板を用いることもできる。
 ゲート電極3は、ゲート配線3’に電気的に接続されている。ゲート電極3およびゲート配線3’は、例えば、上層がW(タングステン)層であり、下層がTaN(窒化タンタル)層である積層構造を有する。このほか、ゲート電極3およびゲート配線3’は、Mo(モリブデン)/Al(アルミニウム)/Moから形成された積層構造を有してもよく、単層構造、2層構造、4層以上の積層構造を有してもよい。さらに、ゲート電極3aは、Cu(銅)、Al、Cr(クロム)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、MoおよびWから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金もしくは金属窒化物などから形成されてもよい。ゲート電極3の厚さは約50nm以上600nm以下(本実施形態において、ゲート電極3の厚さは約420nm)である。
 ゲート絶縁層4は、下層ゲート絶縁層4aと上層ゲート絶縁層4bとを有する。上層ゲート絶縁層4bは酸化物絶縁層を含むことが好ましく、酸化物絶縁層は酸化物半導体層5と直接接触していることが好ましい。酸化物絶縁層が酸化物半導体層5と直接接触すると、酸化物絶縁層に含まれる酸素が酸化物半導体層5に供給され、酸化物半導体層5の酸素欠損による半導体特性の劣化を防ぐことができる。上層ゲート絶縁層4bは例えばSiO2(酸化シリコン)層である。下層ゲート絶縁層4aは例えばSiNx(窒化シリコン)層である。本実施形態において、下層ゲート絶縁層4aの厚さは約325nmであり、上層ゲート絶縁層4bの厚さは約50nmであり、ゲート絶縁層4の厚さは約375nmである。このほかゲート絶縁層4としては、例えばSiO2(酸化シリコン)、SiNx(窒化シリコン)、SiOxNy(酸化窒化シリコン、x>y)、SiNxOy(窒化酸化シリコン、x>y)、Al2O3(酸化アルミニウム)または酸化タンタル(Ta2O5)から形成された単層または積層を用いることができる。ゲート絶縁層4の厚さは、例えば約50nm以上600nm以下である。なお、基板2からの不純物などの拡散防止のため、下層ゲート絶縁層4aはSiNx、またはSiNxOy(窒化酸化シリコン、x>y)から形成されることが好ましい。上層ゲート絶縁層4bは酸化物半導体層5の半導体特性の劣化防止の観点から、SiO2またはSiOxNy(酸化窒化シリコン、x>y)から形成されることが好ましい。さらに、低い温度でゲートリーク電流の少ない緻密なゲート絶縁層4を形成させるには、Ar(アルゴン)などの希ガスを用いながらゲート絶縁層4を形成するとよい。
 酸化物半導体層5は、例えばIn-Ga-Zn-O系の半導体(以下、「IGZO系半導体」と略する。)を含む。ここで、IGZO系半導体は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)の三元系酸化物であって、In、GaおよびZnの割合(組成比)は特に限定されず、例えばIn:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:2等を含む。IGZO系半導体は、アモルファスでもよいし、結晶質でもよい。結晶質IGZO系半導体としては、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質IGZO系半導体が好ましい。このようなIGZO系半導体の結晶構造は、例えば、特開2012-134475号公報に開示されている。参考のために、特開2012-134475号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
 酸化物半導体層5を構成する酸化物半導体材料は、IGZO系半導体に限定されず、例えばZn-O系半導体(ZnO)、In-Zn-O系半導体(IZO(登録商標))、Zn-Ti-O系半導体(ZTO)、Cd-Ge-O系半導体、Cd-Pb-O系半導体、CdO(酸化カドニウム)、Mg-Zn-O系半導体、In―Sn―Zn―O系半導体(例えばIn2O3-SnO2-ZnO)、In-Ga-Sn-O系半導体などであってもよい。さらに、酸化物半導体層5は、1族元素、13族元素、14族元素、15族元素および17族元素等のうち一種、又は複数種の不純物元素が添加されたZnOの非晶質(アモルファス)状態、多結晶状態又は非晶質状態と多結晶状態が混在する微結晶状態のもの、又は何も不純物元素が添加されていないものを含んでもよい。酸化物半導体層5として、アモルファス酸化物半導体層を用いると、低温で製造でき、かつ、高い移動度を実現できる。酸化物半導体層5の厚さは例えば約50nmである。酸化物半導体層5の厚さは、例えば約30nm以上約100nm以下であってもよい。
 ソース電極6sおよびドレイン電極6dは、例えば、Ti/Al/Tiから形成された積層構造を有する。このほか、ソース電極6sおよびドレイン電極6dは、Mo/Al/Moから形成された積層構造を有してもよく、単層構造、2層構造または4層以上の積層構造を有してもよい。さらに、ソース電極6sおよびドレイン電極6dは、Al、Cr、Ta、Ti、MoおよびWから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金もしくは金属窒化物などから形成されてもよい。ソース電極6sおよびドレイン電極6dの厚さは、それぞれ約50nm以上600nm以下(本実施形態において、ソース電極6sおよびドレイン電極の厚さは約350nm)である。
 層間絶縁層8は、誘電体層8aと絶縁保護層8bとを有する。後述するが、絶縁保護層8bは形成されない場合もある。誘電体層8aは、例えばSiNxから形成されている。誘電体層8aは第1透明電極7と第2透明電極9との間に形成され、補助容量を形成している。このように、透明電極7および9ならびに透明な誘電体層8aから補助容量を形成すると、TFT基板100Aを表示パネルに用いたとき、高い開口率を有する表示パネルを製造できる。誘電体層8aの厚さは、例えば約100nm以上500nm以下(本実施形態において、誘電体層8aの厚さは約200nm)である。このほか誘電体層8aは、例えばSiOxNy(酸化窒化シリコン、x>y)、SiNxOy(窒化酸化シリコン、x>y)、Al2O3(酸化アルミニウム)またはTa2O5(酸化タンタル)から形成され得る。
 絶縁保護層8bは、酸化物半導体層5のチャネル領域と接するように形成されている。絶縁保護層8bは絶縁酸化物(例えばSiO2)から形成されることが好ましい。絶縁保護層8bが絶縁酸化物から形成されると、上述したように酸化物半導体層5の酸素欠損による半導体特性の劣化を防ぐことができる。このほか絶縁保護層8bは、例えばSiON(酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン)、Al2O3またはTa2O5から形成され得る。絶縁保護層8bの厚さは、例えば約50nm以上300nm以下(本実施形態において、絶縁保護層8bの厚さは約150nm)である。
 第1透明電極7は、例えばIn-Ga-Zn-O系の酸化物(IGZO系酸化物)を含む導電体層である。第1透明電極7の厚さは例えば約50nmである。第1透明電極7の厚さは、例えば約20nm以上約200nm以下であってもよい。詳細は後述するが、第1透明電極7と酸化物半導体層5とは同じ透明な酸化物膜から形成されている。第1透明電極7と酸化物半導体層5とを同一の酸化物膜から形成すると、製造プロセスが簡略化でき製造コストを削減し得る。酸化物膜としては、例えば、IGZO系半導体膜などのIGZO系酸化物を含む膜を用いることができる。なお、前述のように、本明細書では、IGZO系酸化物のうち半導体特性を示すものをIGZO系半導体と略する。
 詳細は後述するが、第1透明電極7は、酸化物半導体層5よりも高い濃度でp型不純物(例えば、B(ボロン))またはn型不純物(例えば、P(リン))を含み、層間絶縁層8のうち第1透明電極7上に位置する部分は、他の部分よりも高い濃度でp型不純物またはn型不純物を含んでいる場合もある。
 第2透明電極9は、透明導電膜(例えばITO(Indium Tin Oxide)、またはIZO膜)から形成されている。第2透明電極9の厚さは、例えば20nm以上200nm以下(本実施形態において第2透明電極9の厚さは約100nm)である。
 図1(c)に示すように、TFT基板100Aは、例えば、Fringe Field Switching(FFS)モードの液晶表示装置500に用いられる。このとき、下層の第1透明電極7を画素電極(表示信号電圧が供給される)とし、上層の第2透明電極9を共通電極(共通電圧または対向電圧が供給される)として用いる。第2透明電極9には、少なくとも1以上のスリットが設けられる。このような構造のFFSモードの液晶表示装置500は、例えば、特開2011-53443号公報に開示されている。特開2011-53443号公報の開示内容の全てを参考のために本明細書に援用する。
 液晶表示装置500は、TFT基板100Aおよび対向基板200と、TFT基板100Aと対向基板200との間に形成された液晶層50とを有する。液晶表示装置500において、対向基板200の液晶層50側には、透明電極(例えばITO)などから形成され得た対向電極を備えていない。TFT基板100Aに形成された第1透明電極(画素電極)7と第2透明電極(共通電極)9とにより生じた横方向の電界により、液晶層50中の液晶分子の配向を制御して、表示させている。
 TFT基板100Aは、図2に示すTFT基板100A’に改変し得る。図2(a)は、改変例のTFT基板100A’の模式的な平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA2-A2’線に沿ったTFT基板100A’の模式的な断面図である。
 図2(a)および図2(b)に示すTFT基板100A’は、ゲート配線3’上に酸化物半導体層5を有し、基板2の法線方向から見たとき、ゲート配線3’とソース電極6sおよびドレイン電極6dとが重なる構造を有する点で、TFT基板100Aとは異なる。TFT基板100A’は、TFT基板100Aよりもさらに高い開口率を有し得る。
 なお、TFT基板100A’は、TFT基板100Aに比べて、ゲート・ドレイン間の寄生容量(Cgd)が大きいという欠点を有している。よく知られているように、ゲート・ドレイン間の寄生容量(Cgd)が大きいと、フィードスルー電圧が大きくなる。フィードスルー電圧は、画像の焼き付きや、フリッカーの原因となる。フィードスルー電圧を低下させるためには、画素の全容量(液晶容量Clc+補助容量Cs+ゲート・ドレイン間の寄生容量Cgd)に対するゲート・ドレイン間の寄生容量(Cgd)の比率を小さくすればよい。TFT基板100A’は、透明電極を備える透明な補助容量を有しているので、開口率を低下させることなく、補助容量の面積を大きくすることによって容量値を増大させることができる。すなわち、TFT基板100A’のように、ゲート・ドレイン間の寄生容量(Cgd)が大きくなる構造を採用しても、フィードスルー電圧を十分に小さくできる。
 また、画素の全容量が大きいということは、画素に所定の電圧を印加するために、多くの電荷を必要する。TFT基板100A’は、従来のアモルファスTFTよりも電流供給能力の高い、酸化物半導体TFTを備えているので、画素の容量の増大によって表示品位が低下することがない。
 次に、TFT基板100Aの製造方法を説明する。
 本発明の実施形態における半導体装置の製造方法は、基板2を用意する工程(a)と、基板2上にゲート電極3およびゲート絶縁層4を形成する工程(b)と、ゲート絶縁層4の上に酸化物半導体膜5’を形成する工程(c)と、酸化物半導体膜5’の上にソース電極6sおよびドレイン電極6dを形成する工程(d)と、酸化物半導体膜5’のチャネル領域を保護する保護層を形成した後、酸化物半導体膜5’の一部を低抵抗化させる低抵抗化処理を行って第1透明電極7を形成する工程(e)と、ソース電極6sおよびドレイン電極6dの上に誘電体層8aを形成する工程(f)と、誘電体層8aの上に第2透明電極9を形成する工程(g)とを包含し、第2透明電極9の少なくとも一部は誘電体層8aを介して第1透明電極7と重なる。
 このような半導体装置の製造方法は、簡略化された半導体装置の製造方法であるので、製造コストを削減し得る。
 次に、図3を参照しながら、TFT基板100Aの製造方法の一例を詳細に説明する。
 図3(a)~図3(f)は、TFT基板100Aの製造方法の一例を説明するための模式的な工程断面図である。
 まず、図3(a)に示すように、基板2上にゲート電極3を形成する。基板2としては、例えばガラス基板などの透明絶縁性の基板を用いることができる。ゲート電極3はスパッタ法で基板2上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により導電膜のパターニングを行うことによって形成できる。ここでは、導電膜として、基板2側からTaN膜(厚さ:約50nm)およびW膜(厚さ:約370nm)をこの順で有する2層構造の積層膜を用いる。なお、第1導電膜として、例えば、Ti、Mo、Ta、W、Cu、AlまたはCrなどの単層膜、それらを含む積層膜、合金膜またはこれらの窒化金属膜などを用いてもよい。
 続いて、図3(b)に示すように、CVD(Chemical Vapor deposition)法により、ゲート電極3を覆うように下層ゲート絶縁層4aおよび上層ゲート絶縁層4bを形成する。ここでは、下層ゲート絶縁層4aはSiNx膜(厚さ:約325nm)から形成され、上層ゲート絶縁層4bはSiO2膜(厚さ:約50nm)から形成される。上層および下層ゲート絶縁層4aおよび4bとしては、例えばSiO2、SiNx、SiOxNy(酸化窒化シリコン、x>y)、SiNxOy(窒化酸化シリコン、x>y)、Al2O3またはTa2O5から形成され得る。
 続いて、図3(c)に示すように、上層ゲート絶縁層4b上に酸化物半導体膜5’をスパッタ法にて形成する。酸化物半導体膜5’としてIGZO系半導体膜を用いた。酸化物半導体膜5’の厚さは約50nmである。
 この後、酸化物半導体5’の上に、スパッタ法によりソース電極6sおよびドレイン電極6dを形成する導電膜(不図示)を形成する。次に、ハーフトーンマスクを用いたフォトリソグラフィ法、ドライエッチング法およびアッシング法により上記の導電膜および酸化物半導体膜5’を同時にパターニングして、酸化物半導体膜5’を所望の形状にパターニングするとともにソース電極6sおよびドレイン電極6dを形成する。このように、1枚のフォトマスクで、ソース電極6sおよびドレイン電極6dの形成ならびに酸化物半導体膜5’のパターニングを行えるので、製造プロセスを簡略化でき、製造コストを削減し得る。ソース電極6sおよびドレイン電極6dは、例えばTi/Al/Tiの積層構造を有する。下層のTi層の厚さは約50nmであり、Al層の厚さは約200nmであり、上層のTi層の厚さは約100nmである。
 続いて、図3(d)に示すように、酸化物半導体層5のチャネル領域を覆うように絶縁保護層8bをスパッタ法およびフォトリソグラフィ法で形成する。絶縁保護層8bは例えば絶縁酸化物(例えばSiO2)から形成され、その厚さは約150nmである。また、基板2の法線方向から見たとき、絶縁保護層8bの端部はドレイン電極6dと重なることが好ましい。ドレイン電極6dの端部付近まで第1透明電極7を形成することができるからである。
 その後、酸化物半導体膜5’の一部に低抵抗化処理Lを施す。酸化物半導体5’のうちソース電極6s、ドレイン電極6dおよび絶縁保護層8bで覆われた部分は、低抵抗化処理Lは行われない。これにより、図3(e)に示すように、酸化物半導体膜5’のうち、低抵抗化処理Lが施された部分には第1透明電極7が形成され、低抵抗化処理Lが施されていない部分には酸化物半導体層5が形成される。当然ながら、低抵抗化処理Lが施された部分の電気抵抗は、低抵抗化処理Lが施されていない部分の電気抵抗よりも小さい。低抵抗化処理Lには、例えばプラズマ処理や、p型不純物またはn型不純物のドーピングなどが挙げられる。低抵抗化処理Lとして、p型不純物またはn型不純物のドーピングを用いた場合、第1透明電極7の不純物の濃度は酸化物半導体層5の不純物の濃度よりも大きい。また、不純物の拡散により、ドレイン電極6dの下にある酸化物半導体膜5’の一部も低抵抗化され、第1透明電極7の一部となる場合がある。後述するが、ドーピング装置を用いて不純物の注入する場合は、絶縁層越しに不純物を注入して低抵抗化処理を行えるので、柔軟に製造プロセスに対応できる。
 その他低抵抗化処理Lとして、例えば、CVD装置を用いた水素プラズマ処理、エッチング装置を用いたアルゴンプラズマ処理、還元雰囲気下でのアニール処理などがあげられる。
 続いて、図3(f)に示すように、第1透明電極7および絶縁保護層8bの上に、CVD法で誘電体層8aを形成して層間絶縁層8を形成する。誘電体層8aは、例えばSiNxから形成されている。誘電体層8aの厚さは約200nmである。なお、誘電体層8aには不図示のコンタクトホールが公知の方法で形成されている。
 続いて、図1(b)に示したように、誘電体層8aの上にスパッタ法などで第2透明電極9を形成する。第2透明電極9の少なくとも一部は、誘電体層8aを介して第1透明電極7と重なる。第2透明電極9は例えばITOから形成され、その厚さは約100nmである。
 また、図示していないが、この第2透明電極9を形成する透明導電膜は共通電極だけでなく、ソース配線(ソースバスライン)と同じ導電膜から形成されたソースメタル層、またはゲート配線(ゲートバスライン)と同じ導電膜から形成されたゲートメタル層と電気的な接続をさせる際に用いられる引き出し配線として活用できる。これにより、例えば駆動回路を一体的に形成したTFT基板を形成することができ、これにより高品位な表示装置を製造することが可能となる。
 次に、図4を参照しながら本発明による実施形態におけるTFT基板100Bを説明する。図4は、TFT基板100Bの模式的な断面図であり、図1(b)のTFT基板100Aの断面図に対応している。TFT基板100Aと共通する構成要素には同じ参照符号を付し、説明の重複を避ける。
 図4に示すTFT基板100Bは、TFT基板100Aの絶縁保護層8bが形成されていない半導体装置である。従って、TFT基板100Bにおいて、層間絶縁層8は誘電体層8aを有し、絶縁保護層8bを有していない。TFT基板100Bにおいて、誘電体層8aは絶縁酸化物(例えばSiO2)から形成されることが好ましい。上述したように、酸化物半導体層5の半導体特性の劣化を防ぐことができるからである。
 また、詳細は後述するが、TFT基板100Bにおいて、層間絶縁層8のうち第1透明電極7上に位置する部分は、他の部分よりも高い濃度でp型不純物またはn型不純物を含んでいる場合もある。
 次に、図5を参照しながらTFT基板100Bの製造方法の一例を説明する。図5(a)~図5(c)はTFT基板100Bの製造方法を説明する模式的な工程断面図である。
 上述したように、基板2上にゲート電極3、ゲート絶縁層4、酸化物半導体膜5’、ソース電極6sおよびドレイン電極6dを形成する(図3(a)~図3(c)を参照)。
 続いて、図5(a)に示すように、酸化物半導体膜5’のうちチャネル領域と接するように保護層(レジストマスク層という場合がある)Rを公知の方法で形成する。レジストマスク層Rは、例えば感光性の樹脂から形成される。また、基板2の法線方向から見たとき、レジストマスク層Rの端部はドレイン電極6dと重なることが好ましい。ドレイン電極6dの端部付近まで第1透明電極7を形成することができるからである。
 その後、上述した方法で酸化物半導体膜5’の一部に低抵抗化処理Lを施す。酸化物半導体膜5’のうちソース電極6s、ドレイン電極6dおよびレジストマスク層Rで覆われた部分は低抵抗化処理Lが施されない。上述したように、低抵抗化処理Lにより、第1透明電極7と酸化物半導体層5とが形成される(図5(b)参照)。この後、レジストマスク層Rは公知の方法で除去される。
 続いて、図5(c)に示すように、上述した方法で誘電体層8aを有する層間絶縁層8をソース電極6s、ドレイン電極6dおよび第1透明電極7の上に形成する。
 続いて、図4に示したように、上述した方法で第2透明電極9を誘電体層8aの上に形成する。
 次に、図6を参照しながらTFT基板100Bの製造方法の他の一例を説明する。図6(a)~図6(c)はTFT基板100Bの製造方法を説明する模式的な工程断面図である。
 上述したように、基板2上にゲート電極3、ゲート絶縁層4、酸化物半導体膜5’、ソース電極6sおよびドレイン電極6dを形成する(図3(a)~図3(c)を参照)。
 続いて、図6(a)に示すように、ソース電極6sおよび酸化物導電膜5’の上に、誘電体層8aを含む層間絶縁層8を形成する。
 続いて、図6(b)に示すように、酸化物導電膜5’のうちチャネル領域を保護するレジストマスク層Rを公知の方法で形成する。レジストマスク層Rは、誘電体層8aの上に形成される。基板2の法線方向から見たとき、酸化物半導体膜5’のうちのチャネル領域とレジストマスク層Rとは重なる。また、基板2の法線方向から見たとき、レジストマスク層Rの端部はドレイン電極6dと重なることが好ましい。ドレイン電極6dの端部付近まで第1透明電極7を形成することができるからである。
 その後、上述した方法で酸化物半導体膜5’の一部に低抵抗化処理Lを施す。酸化物半導体膜5’のうちソース電極6s、ドレイン電極6dおよびレジストマスク層Rで覆われた部分は低抵抗化処理Lが施されない。上述したように、低抵抗化処理Lにより、第1透明電極7と酸化物半導体層5とが形成される(図6(c)参照)。この後、レジストマスク層Rは公知の方法で除去される。
 続いて、図4に示したように、上述した方法で第2透明電極9を誘電体層8aの上に形成する。
 次に、図7を参照しながらTFT基板100Bの製造方法のさらに他の一例を説明する。図7(a)~図7(c)はTFT基板100Bの製造方法を説明する模式的な工程断面図である。
 上述したように、基板2上にゲート電極3、ゲート絶縁層4、酸化物半導体膜5’、ソース電極6sおよびドレイン電極6dを形成する(図3(a)~図3(c)を参照)。
 続いて、図7(a)に示すように、ソース電極6sおよび酸化物導電膜5’の上に、誘電体層8aを含む層間絶縁層8を形成する。
 続いて、図7(b)に示すように、上述した方法で、誘電体層8aの上に第2透明電極9を形成する。
 続いて、図7(c)に示すように、酸化物導電膜5’のうちチャネル領域を保護するレジストマスク層Rを公知の方法で形成する。レジストマスク層Rは、誘電体層8aの上に形成される。基板2の法線方向から見たとき、酸化物半導体膜5’のうちのチャネル領域とレジストマスク層Rとは重なる。また、基板2の法線方向から見たとき、レジストマスク層Rの端部はドレイン電極6dと重なることが好ましい。ドレイン電極6dの端部付近まで第1透明電極7を形成することができるからである。
 その後、上述した方法で酸化物半導体膜5’の一部に低抵抗化処理Lを施す。低抵抗化処理Lは、酸化物半導体膜5’のうちソース電極6s、ドレイン電極6dおよびレジストマスク層Rで覆われた部分は低抵抗化処理Lが施されない。上述したように、低抵抗化処理Lにより、第1透明電極7と酸化物半導体層5とが形成される(図4参照)。この後、レジストマスク層Rは公知の方法で除去される。
 上述したTFT基板100Bの製造方法のうち、少なくとも誘電体層8a越しにp型不純物またはn型不純物をドーピングして低抵抗化処理Lを行なってTFT基板100Bを製造する場合、層間絶縁層8のうち第1透明電極7上に位置する部分は、他の部分よりも高い濃度でp型不純物またはn型不純物を含んでいる。
 以上、本発明の実施形態によると、製造コストを抑えつつ、表示品位の高い表示パネルを製造し得る半導体装置およびその半導体装置の製造方法が提供される。