ブロックコボリマ一のモーフォロジ一の変化方法
技術分野
本発明は、 高圧処理に付されたことを特徴とする親水性セグメン 卜と疎水性セグメン トとから成るブロックコボリマ一から形成され 明
た薬物封入ポリマーミセルを含有する医薬製剤、 そのような医薬製 剤の製造のためのブロックコポリマ一の高圧処理方法に関する。
書 背景技術
親水性セグメン トと疎水性セグメン トを有するブロックコポリマ 一を薬物担体として用いること、 ならびに該コポリマーが形成する ポリマ一ミセルに一定の薬物を封入する方法は知られている (特開 平 6 — 1 0. 7 5 6 5号公報または米国特許第 5, 4 4 9 , 5 1 3号明 細書) 。 また、 水難溶性薬物を封入した均質なポリマーミセルを含 有する組成物およびその調製方法も知られている (特開平 1 1 一 3 3 5 2 6 7公報号) 。 特に、 ポリエチレングリコールの親水性セグ メ ン トとポリ アミ ノ酸の疎水性セグメン トから成るブロックコポリ マーは水中でミセルを自動形成する能力が備わっており、 ドラッグ デリノ リーへの使用に適している。
ミセル形成に用いるブロックコポリマーは、 水中で集合し、 疎水 性セグメン トの先端部を内側に.した球状ミセルを形成する。 ミセル の大きさは数ナノメータ一から数百ナノメーターに至る。 その際の ブロックコポリマーの三次元構造は、 分子的には均質な構造を有し ている方が、 粒径の揃った均一の単分散のミセルが形成できるため 、 有利である。 しかしながら、 通常のプロックコポリマーの合成、 及び精製工程 を経たものには、 殊更にポリアミ ノ酸セグメン トに起因する種々の 三次元構造を含み、 均質な構造をとつていないものが包含される。 そのため、 このようなブロックコポリマーを用いてミセルを形成し た場合、 分散性の広い、 あるいは大きさに基づき 2以上のピークに 分かれたミセルが形成され、 またその濾過性が極めて劣るといった 欠点を有する場合がある。 このようなミセルは、 ドラッグデリバリ 一には適さないことがある。 発明の開示
本発明は、 ドラッグデリバリーに適したミセル形成可能なモーフ ォロジ一の状態のブロックコポリマーの提供にある。
本発明者は、 親水性セグメン トと疎水性セグメン トとから成るブ ロックコポリマーを高圧処理に付することで、 概ね粒径の揃った均 一な単分散のミセルが形成され、 またその濾過性が極めて良好であ ることを見出し、 本発明を完成するに至った。
本発明に従い、 ドラッグデリバリーシステムに適したポリマーナ ノ ミセルの提供及びその量産化が可能となる。
本願は以下の発明を包含する。
( 1 ) 高圧処理に付した親水性セグメン トと疎水性セグメン トとか ら成るブロックコポリマーから形成された薬物封入ポリマーミセル を含有する医薬製剤。
( 2 ) 前記高圧処理が、 前記ブロックコポリマー含有溶液を超高圧 分散乳化させるステップを含んで成る工程により達成される、 ( 1 ) の医薬製剤。
( 3 ) 前記超高圧分散乳化が超高圧ホモジナイザーで実施される、 ( 2 ) の医薬製剤。 ( 4) 前記高圧処理の圧力が 3 , 0 0 OMPa以上である、 ( 1 ) 〜 ( 3 ) のいずれか医薬製剤。
( 5 ) 前記高圧処理の圧力が 2 0, 0 0 O MPa以上である、 ( 4 ) の医薬製剤。
( 6 ) 高次構造をとっている前記ブロックコポリマーを、 高圧処理 することで、 ポリマーの高次構造がくずれた状態のポリマーにする ことを特徴とする、 ( 1 ) 〜 ( 5 ) の医薬製剤。
( 7 ) 高次構造をとっている生体適合性の前記ブロックコポリマ一 を、 高圧処理することで、 ポリマーの高次構造がくずれた状態のポ リマ一にすることを特徴とする、 ( 1 ) 〜 ( 5 ) のいずれかの医薬 製剤。
( 8 ) 前記疎水性セグメン トがポリ アミノ酸誘導体である、 ( 1 ) 〜 ( 7 ) のいずれかの医薬製剤。
( 9 ) 前記ポリアミノ酸誘導体がポリ (ァスパラギン酸) 誘導体で ある、 ( 8 ) の医薬製剤。
( 1 0 ) 前記ポリ アミノ酸誘導体がポリ (グルタミ ン酸) 誘導体で ある、 ( 9 ) の医薬製剤。
( 1 1 ) 前記疎水性セグメン 卜が生体適合性ポリマ一又は生体分解 ポリマーである、 ( 1 ) 〜 ( 7 ) のいずれかの医薬製剤。
( 1 2 ) 前記親水性セグメン トがポリエチレングリコール又はその 誘導体 ら成る、 ( 1 ) 〜 ( 1 1 ) のいずれかの医薬製剤。
( 1 3 ) 前記親水性セグメン 卜の繰り返し単位が 3 0〜 1 0 0 0 に あり、 前記疎水性セグメン 卜の繰り返し単位が 1 0〜 1 0 0にある 、 ( 1 ) 〜 ( 1 2 ) のいずれかの医薬製剤。 .
( 1 ) 抗がん剤、 免疫抑制剤、 抗生物質、 抗リ ュウマチ剤、 抗菌 剤、 降血圧薬、 中枢作用薬、 ホルモン剤、 糖尿病薬、 抗炎症薬、 鎮 痛薬、 抗ウィルス薬、 抗マラリア薬、 生物製剤、 D NAや R NA等 の遺伝子治療薬、 抗体薬、 タンパク質及びペプチ ドからなる医薬品 群より選ばれる薬物を含有する、 ( 1 ) 〜 ( 1 3 ) のいずれかの医 薬製剤。
( 1 5 ) 口キスシロマイシン、 ノ\°ク リタキセル、 トポテカン、 カン プトテシン、 シスブラチン、 塩酸ダウノルビシン、 メ ト トレキサー ト、 マイ トマイ シン C、 ドセタキセル、 硫酸ビンク レスチン、 ポリ ェン系抗生物質、 アンホテリ シン ] 3、 ナイス夕チン及びプロスタグ ランジン類からなる群より選ばれる薬物を含有する、 ( 1 ) 〜 ( 1 3 ) のいずれかの医薬製剤。
( 1 6 ) 薬物封入ポリマ一ミセルの形成のための親水性セグメン ト と疎水性セグメ ン トとから成るブロックコポリマーの処理方法であ つて、 当該ブロックコポリマーを高圧処理に付するステップを含む ことを特徴とする、 処理方法。
( 1 7 ) 前記高圧処理が、 前記ブロックコポリマー含有溶液を超高 圧分散乳化させるステップを含んで成る工程により達成される、 ( 1 6 ) の方法。
( 1 8 ) 前記超高圧分散乳化が超高圧ホモジナイザーで実施される 、 ( 1 7 ) の方法。
( 1 9 ) 前記高圧処理の圧力が 3 , 0 0 O MPa以上である、 ( 1 6 ) 〜 ( 1 8 ) のいずれかの方法。
( 2 0 ) 前記高圧処理の圧力が 2 0 , 0 0 O MPa以上である、 ( 1 9 ) の方法。
( 2 1 ) 高次構造をとっている前記ブロックコポリマ一を、 高圧処 理することで、 ポリマーの高次構造がくずれた状態のポリマーにす ることを特徴とする、 ( 1 6 ) 〜 ( 2 0 ) のいずれかの方法。
( 2 2 ) 高次構造をとっている生体適合性の前記ブロックコポリマ 一を、 高圧処理することで、 ポリマーの高次構造がくずれた状態の ポリマーにすることを特徴とする、 ( 1 6 ) 〜 ( 2 0 ) のいずれか の方法。
( 2 3 ) 前記疎水性セグメン 卜がボリアミ ノ酸誘導体である、 ( 1
6 ) 〜 ( 2 2 ) のいずれかの方法。
( 2 4 ) 前記ポリアミノ酸誘導体がポリ (ァスパラギン酸) 誘導体 である、 ( 2 3 ) の方法。
( 2 5 ) 前記ポリアミ ノ酸誘導体がポリ (ダル夕 ン酸) 誘導体で ある、 ( 2 4 ) の方法。
( 2 6 ) 前記疎水性セグメン トが生体適合性ポリマ一又は生体分解 ポリマーである、 ( 1 6 ) 〜 ( 2 2 ) のいずれかの方法。
( 2 7 ) 前記親水性セグメン トがポリェチレング Uコール又はその 誘導体から成る、 ( 1 6 ) 〜 ( 2 6 ) のいずれかの方法。
( 2 8 ) 前記親水性セグメン トの繰り返し単位が 3 0〜: L 0 0 0 に あり、 前記疎水性セグメン トの繰り返し単位が 1 0 〜 1 0 0 にある
、 ( 1 6 ) 〜 ( 2 7 ) のいずれかの方法。
( 2 9 ) 杭がん剤、 免疫抑制剤、 抗生物質、 抗リュゥマチ剤、 抗菌 剤、 降血圧薬、 中枢作用薬、 ホルモン剤、 糖尿病薬 、 抗炎症薬、 鎮 痛薬、 抗ウィルス薬、 抗マラ リア薬、 生物製剤、 D N Aや R N A等 の遺伝子治療薬、 抗体薬、 タンパク質及びべプチド、からなる群より 選ばれる薬物を含有する、 ( 1 6 ) 〜 ( 2 8 ) のいずれかの方法。
( 3 0 ) 口キスシロマイシン、 パクリ 夕キセル、 トポテカン、 カン プトテシン、 シスブラチン、 塩酸ダウノルビシン、 メ ト トレキサー ト、 マイ トマイシン C、 ドセタキセル、 硫酸ビンク レスチン、 ポリ ェン系抗生物質、 アンホテリ シン B、 ナイス夕チン及びプロスタグ ランジン類からなる群より選ばれる薬物を含有する、 ( 1 6 ) 〜 ( 2 8 ) のいずれかの方法。 図面の簡単な説明
図 1 は薬剤封入加圧処理ミセル ( a ) 及び薬剤封入未処理ミセル ( b ) の Z電位測定図 ( P O W E R S P E C T R U M ) 。
図 2 は加圧処理ブロックコポリマー及び未処理ブロックコポリマ —の溶液の性状を示す写真図。 発明を実施するための最良の形態
本発明で使用できるブロックコポリマーとしては、 親水性セグメ ン ト (以下、 Aセグメン トともいう) および疎水性セグメン ト (以 下、 Bセグメン トともいう) からなる、 所謂、 A B型または A B A 型のブロックコポリマーであることができる。 親水性セグメン トを 構成するポリマ一としては、 限定されるものでないが、 例えばポリ エチレングリコール、 ポリ リ ン酸、 ポリオキシエチレン、 ポリサッ カライ ド、 ポリアク リルアミ ド、 ポリアク リル酸、 ポリ メ夕ク リル アミ ド、 ポリメ夕ク リル酸、 ポリ ビニルピロリ ドン、 ポリ ビ ίルァ ルコール、 ポリメタク リル酸エステル、 ポリアク リル酸エステル、 ポリ アミノ酸あるいはこれらの誘導体由来のセグメン トが挙げられ る。 これらの中、 好ましいものとしてはポリエチレングリコ一ルか ら構成されるものをあげることができる。 親水性セグメン トは、 疎 水性セグメントとの結合端と反対側の末端に、 高分子ミセルを形成 する上で悪影響を及ぼさない限り、 低分子官能基を有していてもよ い。
他方、 疎水性セグメン トとしては、 限定されるものでないが、 ポ リペプチド、 特にポリホモアミノ酸のポリペプチド、 例えば L一又 は D—アミノ酸、 又はそのラセミ体、 特に L—アミノ酸、 例えばポ リ (ァスパラギン酸) 、 ポリ (グルタミ ン酸) 、 ポリアスパラギン 酸エステル、 ポリ グルタミ ン酸エステル、 またこれらの部分加水分 解物、 ポリ リ シン、 ポリアク リル酸、 ポリメ夕ク リル酸、 ポリ リ ン ゴ酸、 ポリ乳酸、 ポリ アルキレンォキシ ド、 長鎖アルコール、 その 他周知の生体適合性ポリマー、 生体分解性ボリマ一等をあげること ができる。 疎水性セグメントも、 親水性セグメン トとの結合端との 反対の末端に、 高分子ミセルを形成する際に薬物と疎水性セグメン トとの相互作用に悪影響を及ぼさない範囲で、 親水性セグメントに ついて説明したのと同様に低分子官能基を有することができる。
以上のような親水性セグメン ト と疎水性セグメン トは、 水難溶性 薬物の共存下の水性溶液 (または水性媒体) 中でポリマーミセルを 形成しうるものであれば、 それぞれのセグメントの大きさに制限が ないが、 一般的には、 上記のような親水性セグメン トは、 その繰り 返し単位が好ましく は 3 0〜 1 0 0 0、 より好ましく は 5 0〜 6 0 0 にあり、 他方、 疎水性セグメン トは、 その繰り返し単位が好まし く は 1 0〜 1 0 0、 より好ましく は 1 5〜 8 0にある。
本発明は、 親水性セグメン トと疎水性セグメン トとから成るミセ ル形成用ブロックコポリマーを高圧処理に付することで、 当該ミセ ルの分散性、 さ らにはその濾過性を高める効果を示す。 何ら特定の 理論に拘束されるわけではないが、 かかる高圧処理は当該ブロック コポリマーの高次構造を変化させる、 例えばくずれた状態にさせる ことでミセルの分散性、 濾過性を改善せしめるものと考えられる。 かかる高圧処理は、 好ましく は、 ブロックコポリマ一を超高圧分散 , 乳化処理に付することで達成される。 超高圧分散 · 乳化処理は例 えば超高圧ホモジナイザーを用いて行う ことができる。 超高圧ホモ ジナイザ一としては、 例えばマイク ロフルイディ ックス社のマイク 口フルイダイザ一 (M i c r o f l u i d i c s (登録商標) M— 1 1 0 — E H) を使用するのが好ましい。 超高圧分散、 乳化処理の 圧力は、 例えば圧力 3 , O O O M P a以上、 又は 5, 0 0 0 M P a 以上、 好ましく は 1 0 , O O O M P a以上、 より好ましくは 2 0 , O O O M P a以上とする。 圧力の上限は特にないが、 装置への負荷 などを考慮すると、 1 0 0, O O O M P a以下が好ましい。 超高圧 分散 · 乳化処理を実施する際の温度は特に限定されるものではない が、 好ましく は 0 °C以上、 より好ましく は 4 °C以上、 さ らにより好 ましくは 1 0 °C以上、 特に 2 0 °C以上、 特に好ましく は 2 5 °C以上 、 最も好ましく は 3 0 °C以上、 1 2 0 °C以下、 より好ましくは 1 0 0 °C以下、 さ らにより好ましく は 8 0 °C以下、 特に 7 0 °C以下、 特 に好ましく は 6 0 °C以下、 最も好ま しく は 5 0 °C以下である。
加圧処理時間は特に限定されないが、 例えば 1〜 3 0分程度が適 当であろう。
かように処理したブロックコポリマーと、 任意的に糖類、 無機塩 類およびポリエチレングリ コ'ールからなる群より選ばれる 1種また は 2種以上の助剤とを含む水分散液を調製する。 かような助剤と し て使用できる糖類としては、 特に制限されるものでないが、 好まし いものとしては、 マルトース、 トレハロース、 キシリ トール、 グル コース、 スクロース、 フルク 卜ース、 ラク 卜一ス、 マンニトール、 デキス ト リ ン等の単糖もしく はオリ ゴ糖または糖アルコールがあげ られる。 一方、 無機塩類も、 製剤学的に許容されるものであれば^ ずれも使用できるが、 好ましいものとしては、 塩化ナ トリウム、 塩 化カ リウム、 塩化マグネシウム、 塩化カルシウム等の塩化物があげ られる。 他方、 ポリエチレングリ コールとしてはォキシエチレン ( _ (〇 C H2 C H2)— ) 単位が 2 0〜 8 0 0、 好ましく は 2 0〜 2 0 0個のポリエチレングリコールがあげられる。 このようなポリェチ レンダリコールとしては、 例えば、 医薬品添加物事典に記載のマク 口ゴール 1 0 0 0、 1 5 4 0、 4 0 0 0、 6 0 0 0、 2 0 0 0 0お よび 3 5 0 0 0 を使用するのが好都合である。 前記分散液は、 プロックコポリマーおよび各助剤を同時に水に加 えて撹拌するか、 予め助剤の水溶液を用意し、 それにブロックコポ リマーを加える力 あるいはその逆の順序で混合物を作成し、 そし て撹拌混合することにより調製できる。 撹拌には、 通常の撹拌機の 他、 超音波を利用してもよい。 かような分散液は、 限定されるもの でない力 S、 一般に、 ブロックコポリマーが、 0 . 1 〜 4 0質量%濃 度で、 そして任意的にそれぞれ、 糖類が 0 . 5〜 8 0質量%の濃度 で、 ポリエチレングリコールが 0 . 5〜 4 0質量%の濃度で、 そし て無機塩類が 0 . 5〜 1 0質量%となるように含めることができる また、 本発明で使用することのできる薬物は、 上記ブロックコポ リマーによって形成される高分子ミセルに封入できるものであれば 、 いかなる薬物であってもよく、 あらゆる抗がん剤、 免疫抑制剤、 抗生物質、 抗リ ュウマチ剤、 抗菌剤、 降血圧薬、 中枢作用薬、 ホル モン剤、 糖尿病薬、 抗炎症薬、 鎮痛薬、 抗ウィルス薬、 抗マラリア 薬、 生物製剤、 D N Aや R N A等の遺伝子治療薬、 抗体薬、 タンパ ク質及びペプチ ドから選ばれる。 限定されるものでないが、 かかる 薬剤としては、 口キスシロマイシン、 パク リタキセル、 トポテカン 、 カンプトテシン、 シスブラチン、 塩酸ダウノルビシン、 メ ト トレ キサ一 ト、 マイ トマイシン(:、 ドセタキセル、 硫酸ビンクレスチン などおよびそれらの誘導体からなる制癌剤、 ポリェン系抗生物質、 例えばアンホテリシン B、 ナイス夕チンなど、 その他、 プロスタグ ランジン類およびそれらの誘導体などの脂溶性薬物があげられる。 なかでも、 口キスシロマイシン、 パク リタキセル、 トポテカン、 ド セタキセルには本発明方法が都合よく使用できる。
本発明に従えば、 このような薬物を、 水非混和性の有機溶媒で溶 解した有機溶液を調製してよい。 このような溶媒としては、 限定さ れるものでないが、 ジクロロメタン、 クロ口ホルム、 ジェチルエー テル、 ジブチルエーテル、 酢酸ェチル、 酢酸ブチル、 およびこれら の混合溶媒があげられる。
溶液における薬物濃度は、 使用する溶媒および薬物の組み合わせ によって、 好適濃度が変動するが、 一般的に、 0 . 1〜 5 0質量% の濃度であることができる。 以上の混合操作は、 室温または低温下 で行う ことができる。
こう して調製された水分散液と有機溶液を混合し、 こう して形成 した混合液は薬物が高分子ミセルに封入されるのに十分な時間撹拌 (超音波処理を包含する) 処理にかけられる。 かかる処理は室温下 でまたはより低温下 (〜 5 °C ) で行うのがよい。 なお、 撹拌処理を 通して有機溶媒を揮散させてもよい。
以上の操作により、 薬物含有高分子ミセル分散液が得られるが、 さらに必要により、 上記で例示したような、 糖類およびポリェチレ ングリコールを該分散液に加えて、 例えば、 場合によって、 その後 行われる凍結乾燥処理における薬物含有高分子ミセルの安定化また はかかるミセル粒子間の凝集の抑制を図ることができる。 糖類およ び/またはポリエチレンダリコールは、 上述の高分子ミセル分散液 を調製する際にこれらが加えられたか否かを考慮して、 最終濃度が 、 それぞれ糖類が 0 . 1 〜 8 0質量%、 ポリエチレングリコールが 0 . 5〜 4 0質量%になるように加えることが好ましいが、 薬物含 有高分子ミセルの凍結乾燥物を調製し、 そして得られた凍結乾燥物 を水系媒体で再構成するのに悪影響がでない範囲内であれば、 かよ うな濃度を超えるように加えてもよい。 なお、 ここにいう水系媒体 とは、 純水、 脱イオン水、 緩衝化された水、 等張化された水等であ ることができる。 さらに本発明の製剤を調製する際の P Hは、 4 . 0〜 7 . 5が好ましく、 場合によっては p H調製剤及び抗酸化剤 ( ァスコルビン酸、 ァスコルピン酸ナ ト リ ウム、 チォ硫酸ナ ト リウム ) などを混合できる。
こう して提供される薬物含有ポリマーミセルを含んでなる組成物 は、 概ね粒径の揃った均一な単分散のミセルが形成される。 形成さ れるミセルの粒径はブロックコポリマーの大きさに依存するが、 好 ましく は 1 0〜 2 0 0 n m、 より好ましく は 2 0〜 1 8 O n mの範 囲にある。 かような薬物含有ミセルを含んでなる組成物は、 薬物に 応じて、 経口投与用製剤または非経口投与用製剤とすることができ るが、 非経口投与用製剤とする場合に、 特に有利である。 非経口投 与用製剤、 例えば注射剤とする場合には、 血液に対して等張性とな るように、 必要により、 塩および糖類その他の化合物を加えて、 医 薬製剤で常用されている液状希釈剤、 例えば、 水、 ェチルアルコー ルまたはプロピレングリコール中に上記薬物含有ポリマーミセルを 配合し、 さらに必要により、 沈殿防止剤、 例えば、 エ トキシル化ィ ソステアリルアルコール、 ポリオキシエチレンソルビ トール等を配 合して調製できる。
薬物含有高分子ミセル分散液は任意的に、 更に超音波処理にかけ られ、 そしてさ らに必要に応じて濾過処理にかけられる。 超音波処 理は限定されるものではないが、 例えば 1〜200W、 好ましく は 10 〜50Wで例えば 1秒〜 2時間、 好ましく は 1分〜 1時間行ってよい 。 濾過処理も特に限定されるものではなく、 例えば 0.45^m、 好ま しく は 0.22 mの親水性メンブランフィルタ一などが使用される。 実施例
実施例 1
高圧処理が分散性に及ぼす効果の検討
mP E G (ポリエチレングリコール) 一 P B L A (ポリ /3 ( L - ァスパラギン酸) ) (ポリエチレングリ コールの平均分子量 12, 000 、 アミノ酸残基数 50個 以下、 PEG- PBLA (12— 50) ) (日本油脂株 式会社 : Lot. M2N531) 0.21 gを 100m 1 バイアルに計り とり、 100 m 1 の超純水に溶解させた。 この溶液をマイクロフルイダィザ一 ( Microfluidics (登録商標) M- 110- EH) のセルに注ぎ入れ、 100m l の超純水でバイアルを洗い、 その洗液もマイクロフルイダィザ一の セルに加えた。 マイクロフルイダィザ一による超高圧分散乳化処理 の条件は表 1 に記載の通りに変え、 NIC0MP 380 ZLSにてミセルの粒 径測定を行い、 また分散性の指標となるカイ二乗を求めた。 その結 果を表 1 にまとめる。
表 1の結果から、 ブロックコポリマーの加圧処理により、 またそ の処理回数を増やすごとにカイ二乗分布の値は小さ くなり、 当該ブ ロックコポリマーの分散性が良好となることが明らかとなった。 ま た、 高圧処理は圧力を高くするほど良好な分散性の結果を与え、 ま た処理温度も低温よ り も室温に近い方が良好な結果をもたらすこと が見出された。
表 1
マイクロフリ I ^ダイザ一条件 平均粒径 標準偏差 カイ二乗分布 実験 No. セル温度 (°C) 圧力 (psi) 処理回数 (nm) (nm)
1 23-29 20, 000 10 106.5 29.8 1.180
2 30-31 20, 000 0 359.0 270.0 78.852
30-31 20, 000 2 120.0 28.0 1.990
30-31 20, 000 4 110.6 31.2 3.894
30-31 20, 000 6 103.9 23.6 0.599
30-31 20, 000 8 103.1 24.4 1.540
30-31 20, 000 10 102.1 31.4 1.818
3 3-5 20, 000 0 275.5 162.5 61.757
3-5 20, 000 2 124.2 31.6 1.810
3-5 20, 000 4 118.6 27.5 0.612
3-5 20, 000 6 114.9 31.0 0.837
3-5 20, 000 8 114.5 31.8 0.581
3-10 20, 000 10 113.8 31.5 0.444
4 3-5 5, 000 10 101.7 28.0 6.288
3-5 10, 000 10 92.8 31.6 4.129
3-5 20, 000 10 100.3 42.4 2.137 実施例 2
1 ) 薬剤 (口キスシロマイシン) 封入未処理ミセルの調製
mP E G - P B L A (PEG-PBLA (12-50) ) (日本油脂株式会社 : Lot. M2N531) 49.9mgを秤量し、 水 5 mlに溶解した。 そこへ、 あ らかじめ調製しておいた口キスシロマイシン (Sigma社製) /ジク ロロメタン (和光純薬 (株) 社製) (20mg/ml) 500 1 を少しずつ 添加し、 4 °Cにて一晩攪拌した。 攪拌終了後、 その試料を、 そのま まのもの、 10分間の超音波処理 ( 1 3 0 W) にかけたもの、 10分間 の超音波処理 ( 1 3 0 W) 及び 0.22^ mメンブランフィルタ一にて 濾過したものにわけ、 各々について NIC0MP 380 ZLSにて粒径測定を 行った。 また、 0.22 mメンブランフィルタ一にて濾過したものに ついては、 z電位測定を行い、 更に使用薬物量 (10mg) に対するミ セルへの薬物封入量 (封入率) を測定した。 封入率の測定は、 フィ ルター濾過したミセルを、 ァセトニトリル : メタノール : 0.2Mリ ン酸バッファー (pH6. 1) 35 : 35 : 30にて崩壊させ、 210Mの吸収を 指標に HPLCで測定し、 求めた。
2 ) 薬剤 (口キスシロマイシン) 封入加圧処理ミセルの調製
実施例 1 に記載のとおりにしてマイクロフルイダィザ一処理 (20 , OOOpsi, 30°C, 10回) し、. 凍結乾燥した P E G— P B L A (PEG-P BLA ( 12-50) ) 50.4mgを秤量し、 水 5 mlに溶解した。 そこへ、 あら かじめ調製しておいた口キスシロマイシン (Sigma社製) /ジクロ ロメタン (和光純薬 (株) 社製) (20mg/ml) 500 1 を少しずつ添 加し、 4 °Cにて一晩攪拌した。 攪拌終了後、 その試料を、 そのまま のもの、 10分間の超音波処理 ( 1 3 0 W) にかけたもの、 10分間の 超音波処理 ( 1 3 0 W) 及び 0.22 mメンブランフィル夕一にて濾 過したものにわけ、 各々について NIC0MP 380 ZLSにて粒径測定を行 つた。 また、 0.22 / mメンブランフィル夕一にて濾過したものにつ いては、 Z電位測定を行い、 前述の通り封入率を求めた。
上記薬剤封入ミセルについての粒径測定結果を表 2に示し、 Z電 位測定結果を図 1 に示す。 また、 薬物の封入率を表 3に示す。 表 2 に示す結果において、 薬剤を実際に封入した場合においても、 加圧 処理したミセルの方が未処理ミセルと比べ、 良好な分散性を示すこ とがわかる。 また、 図 1 の Z電位測定結果においては、 薬剤封入未 処理ミセルの場合、 ピークが二つあるのに対し (b ) 、 薬剤封入且 つ処理ミセルの場合、 ピークが一つしかないことが示めされている ( a ) 。 これは、 未処理ブロックコポリマーを用いて薬剤を封入し た場合、 概ね二種類の薬剤濃度を有するミセルが形成されることを 示唆する。 それに対し、 加圧処理したブロックコポリマ一を用いて 薬剤を封入した場合、 ピークは一つであるため、 単一の薬剤濃度の ミセルのみが形成されることが示唆された。 また、 薬剤封入加圧処 理ミセルの瀘過性は薬剤封入未処理ミセルと比べ、 著しく良好であ つた。 更に、 薬剤封入加圧処理ポリマーのミセルの薬物封入率は未 処理のものと比べ向上した
表 2
加圧処理ブロックコポリマ一の溶液の性状の検討
実施例 1 に記載のとおりにしてマイクロフルイダィザー処理 (13 7.8MPa (20, OOOpsi) , 30°C, Π回) した P E G— P B L A (PEG-PBL A (12, 50) ) 又は未処理の P E G— P B L Aそれぞれ 30mgを秤量し 、 水 3 mlに溶解し、 室温で 1時間撹拌後、 その溶液の性状を目視で 検討した。 図 2は加圧処理前後の溶液を示す写真図である。 図中の ( 1 ) 及び ( 2 ) はロッ トの相違を示す。 ごの図から、 当該ブロッ クコポリマーを加圧処理にかけることで、 溶液の濁度を著しく低下 できることが明らかとなった