【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は窒化ガリウム(Ga
N)単結晶基板を用いた発光ダイオードや半導体レ−ザ
などの発光デバイスに関する。GaN系素子は青色発光
素子としてすでに実用化されている。大型のGaN基板
が存在しないから現在は他の材料を基板としてその上に
GaNをヘテロエピタキシャル成長させている。GaN
「系」というのは発光素子とする場合、InGaN、A
lGaNなどの混晶もエピタキシャル成長させるのでこ
れらを纏めてGaN系と表現したものである。
【0002】
【従来の技術】従来、窒化物系半導体を用いた発光デバ
イスはほとんどが基板としてサファイヤを用いている。
サファイヤ基板の上にGaN薄膜をエピタキシャル成長
させてLD、LEDなどを作製している。サファイヤは
堅牢であって高温に耐えるので高温でのエピタキシャル
成長に向いている。格子不整合は16%あるもののAl
Nバッファ及び低温GaNバッファ技術の進展により、
GaN単結晶成長が可能となった。薄いGaN結晶を成
長させるだけであるから、サファイヤ基板が付いたまま
発光素子に加工する。発光ダイオードやレ−ザダイオー
ドといっても基礎部分はサファイヤである。サファイヤ
の上に極極薄くGaNの発光部分が載っているだけであ
る。サファイヤ/GaNの複合体素子であるから大きく
二つの欠点がある。
【0003】一つは結晶欠陥が多いということである。
16%の格子不整合を有する異質の結晶の上にヘテロエ
ピタキシャル成長するのであるから欠陥密度がどうして
も高くなる。市販されているGaN発光ダイオードの場
合109cm−2もの高密度の転位がある。しかしそれ
でも発光ダイオード(LED)、レ−ザ(LD)は光
る。LEDの寿命は1万時間と言われる。このような高
密度の転位を内包しつつなお発光し長寿命だというのは
半導体の常識に反する。しかしそれが現実である。さり
ながらレ−ザダイオードの場合は、電流密度が高いか
ら、高密度欠陥が寿命を抑えていると推測される。より
欠陥の少ないレ−ザダイオードができればより高効率、
長寿命である。
【0004】サファイヤ基板の難点はもうひとつある。
劈開しないということである。Si基板でもGaAs基
板でも互いに90゜をなす方向に自然劈開面をもってい
るから、ウエハを直交する平行線群によって自然劈開す
ることによって簡単にチップに分離する事ができる。劈
開面は平坦で鏡面である。劈開にそって分割するからダ
イシングが簡単になる。
【0005】サファイヤには劈開面がないので、ウエハ
プロセスによって素子を作ったあと、回転刃によって強
制的に縦横に切断している。ところが硬い材料であるか
ら一筋一筋切断するのは時間が掛かる。また切断面は平
坦でない。この欠点を切断の困難とよぶ。
【0006】切断の困難の他に、レ−ザダイオードの場
合は共振器作製の困難がある。サファイヤの上にGaN
を載せたものは劈開できないから、刃物で強制的に切る
のであるが研磨してもなお自然劈開面とちがって平坦で
なく鏡面でなく反射率も低い。やはり自然劈開面をレ−
ザの共振器面としたいものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する問題は、サファイヤ基板に劈開性がないこと、サフ
ァイヤ基板上のGaNには高密度に転位がある、という
ことである。無劈開、高密度転位という二つの難点はサ
ファイヤを基板として使っている限り永遠につきまと
う。サファイヤから離れるべきである。
【0008】基板としてSiCを使おうという提案もな
されている。これは劈開性があるし堅牢である。耐熱性
もある。しかしSiCは高価であり、供給の問題があ
る。SiCを基板とすると一層コスト高になろう。実験
段階でSiC基板が試みられることがあるが量産には使
えない。
【0009】それに異種基板は劈開性があるといっても
それは基板結晶の劈開性にすぎない。その上に載ってい
るGaNと劈開が一致するとは限らない。切断はたしか
に楽になろうがレ−ザの共振器としての適格性はない。
【0010】やはりGaN発光素子の基板はGaN単結
晶が最も良い。GaNには劈開性があるし、GaNの上
へのホモエピタキシャルなら転位密度もより少なくなる
はずである。GaN基板上に作ったGaNレ−ザダイオ
ードはより高効率長寿命であろう。
【0011】なるほど理想的にはGaN基板を使うべき
である。しかしながら基板として使用できる程度の大き
いGaN単結晶をつくることができなかった。大型結晶
を作るに適した結晶成長法はチョコラルスキー法、ブリ
ッジマン法などである。いずれも融液から出発する。融
液に種結晶をつけ固体部分を次第に広げて大型の単結晶
を生成する。ところがGaNは加熱しても融液にならな
い。融液ができないから液相から固相を得る結晶成長法
を用いる事ができない。Gaを溶媒としてGaNを少量
溶かし込んで、Ga−GaN溶液を得ることができる
が、数万気圧もの超高圧装置が必要となり大がかりにな
る。また超高圧にできる空間は極極狭いので大きい結晶
はできない。だから液相から固相を得る結晶成長方法で
基板にできる程度の大きい結晶を作製するのは不可能で
ある。GaNの固体を加熱すると直接に気体になるから
昇華法が可能である。しかし昇華法では方位形状ともに
整った大型の単結晶をつくることはできない。つまり通
常の単結晶成長方法はすべてGaNには適用できない。
【0012】そこで本発明者は薄膜成長法を基板結晶製
造に転用することを思いついた。GaAs基板の上に気
相成長法によって広いGaN薄膜をヘテロエピタキシャ
ル成長させる。GaN厚みを増やしてゆき、かなりの厚
みのGaNを得る。これは特別なマスクをGaAs基板
の上に作りマスクの開口部(窓)からGaNを別々に成
長させマスクを越えて成長させて合一させ単結晶をつく
るというものである。マスクのために独立の核が孤立し
て発生し面積に広いGaNの単結晶を生成できる。これ
をラテラル成長と呼んでいる。このマスクの窓の形状は
色々なものが可能である。ストライプ形の窓形状を繰り
返したものや、ドット形の窓形状を繰り返したものなど
が可能である。ここでは特にドット形の場合について詳
述する。
【0013】この手法は本出願人の、特願平9−298
300号、特願平10−9008号に明らかにされてい
る。GaNのラテラル成長についてまず説明する。これ
は実施例の項においても繰り返し述べられる。GaAs
(111)A面を基板とする。これは3回対称性のある
面である。(111)A面というのはGa原子が表面に
並んでいる面である。Asが並ぶ面は(111)B面と
いう。SiO2などのマスクを付ける。これはGaNが
成長を開始しないような成長抑制作用がある材料とす
る。[11−2]の方向にならぶ窓群をマスクに設け
る。窓はその方向に1辺をもつ正三角形の頂点の位置に
設ける。
【0014】図1はマスクと窓の配置を示す。一定ピッ
チdで窓群が[11−2]方向に並んでいる。隣接窓群
との[−110]方向の距離は31/2d/2である。最
近接窓は6つあるが全て距離はdである。窓自体の形状
寸法は任意である。配列が重要である。マスクにはGa
N核が発生しない。GaAs下地だけにGaN核が生ず
る。GaAs結晶と適合する方位の核発生をする。つま
りGaN面が六回対称性をもつ(0001)面となる。
【0015】図1の状態の断面図が、図4(1)であ
る。ここで方位について約束ごとを述べる。結晶学にお
いて、面方位を集合的に表現する記号は中括弧で面指数
をはさみ{kmn}と表現する。集合表現はその結晶系
が持つ全ての対称要素に対する操作Oによって個別面
(klm)が変換される全ての面を含む。個別の面方位
を表現するには小括弧で面指数を囲み(klm)と書
く。
【0016】これらと直交する方向を表現するには同じ
面指数を使う。個別の方向は大括弧で面指数を囲み[k
lm]と表す。方位を集合的に表現する場合は鍵括弧で
面指数を囲み、<klm>と書く。集合方向<klm>
は個別方向[klm]から出発して対称操作Oによって
変換される全ての個別方向の集合である。面、方位の個
別、集合表記は以上のようである。これが決まりであ
る。しかし誤用されることが多い。
【0017】面指数klmは正又は負の整数である。負
整数の場合は数字の上に横棒を引いて表す。図面ではそ
のように表現する。見やすい表記法である。しかし明細
書では上横棒を付けることができない。かわりに前にマ
イナス符号をつける。面指数の間にコンマを打たないの
で直観的に分かりにくいがやむをえない。[11−2]
の−2は負の方向に2ということであり、2の上に短い
横棒を付けて示すべきであるものである。
【0018】GaAsは立方晶である。3軸a、b、c
が直交し等長である。面は単純に3つの面指数(kl
m)によって表現できる。これはその平行面群の1枚目
が、それぞれの軸をa/k、b/l、c/mの点で横切
るということを表す。
【0019】GaNは六方晶系である。4軸a、b、
d、cを使う。a、b、dは一平面で120゜の角度を
なす主軸である。互いに独立ではない。c軸はこれら三
軸に直交する。c軸廻りに6回対称性がある。4指数に
よる表現と3指数による表現法がある。ここでは4指数
法を用いる。面(klnm)と言うのは、第1枚目が
a、b、d、cを横切る点がa/k、b/l、d/n、
c/mだということである。c軸は独立であるが、a、
b、d軸は独立でない。3つの指数自体にはk+l+n
=0というゼロサムルールが常に掛かっている。(00
01)面は法線廻りに6回対称性のある面である。
【0020】図1、図4(1)のマスク掛けの状態か
ら、比較的低温で、GaNのバッファ層を気相成長す
る。これはMOC(有機金属塩化物法)、HVPE(ハ
ライド気相成長法)、MOCVD法(有機金属CVD
法)などを用いる。図4(2)に示すようになる。さら
に高温でGaNを成長させると、マスク厚みを越えて肥
厚する。この場合は、MOC、HVPE、MOCVDな
どのほか昇華法も使える。マスク厚みを越えるとマスク
の上にも結晶が広がる。これが図2に示す状態である。
窓から正六角形に結晶が広がる。さらに成長を持続する
と隣接窓から成長してきたものと境を接するようにな
る。これが図3に表した状態である。
【0021】さらにGaN成長を続けると図4(3)の
ように厚いGaN結晶ができていく。ついでGaAs基
板をエッチングによって除去する。さらに研磨してマス
クなども除く。こうしてエピタキシャル成長によって厚
い自立膜GaNを製造できる。自立性があるので基板結
晶として利用できる。
【0022】GaN製造法について述べる。何れも気相
エピタキシ−である。原料と中間生成物に違いがある。 1.HVPE法(Halide Vapor Phase Epitaxy)…溶融
GaとHClを反応させGaClを作り、これとアンモ
ニアを反応させて、GaNを合成する。Ga+HCl→
GaCl、GaCl+NH3→GaNというようにな
る。Ga金属を原料とする、一旦GaClを作るという
特徴がある。GaClを経由するから”ハライド”とい
う言葉が付く。 2.MOC法(有機金属塩化物法metallorganic chlori
de)…Ga有機金属をHClを反応させGaClを生成
し、これとアンモニアを反応させ、GaNを作る。Ga
(CH3)3+HCl→GaCl、GaCl+NH3→
GaNというようになる。 3.MOCVD法(有機金属化学的気相成長法metallor
ganic chemical vapor phase deposition)…Ga有機
金属を直接にアンモニアに反応させGaNを合成する。
Ga(CH3)3+NH3→GaNと簡単に表現され
る。
【0023】MOC法とMOCVD法の違いを理解すべ
きである。サファイヤ基板上のGaN成長のためにはM
OCVD法が最も盛んに行われているようである。
【0024】図5はHVPE装置の概略を示す。縦長の
反応炉1の廻りに円筒状のヒ−タ2が設けられる。実際
には上下方向にいくつかに分割され温度分布を形成でき
るようになっている。反応炉1の上方には原料ガス導入
管3、4が差し込まれている。原料ガス導入管3から、
NH3+H2ガスが導入される。原料ガス導入管4から
HCl+H2ガスが導入される。反応炉1の上部には、
Ga溜5がありここに金属Gaが収容される。ヒ−タ2
によって加熱されるとGa融液6になる。反応炉1の下
部には、サセプタ7とシャフト8がある。これは回転昇
降できる。サセプタ7の上にGaAs基板9が載せてあ
る。反応炉1にはガス排出口10があって真空排気装置
(図示しない)につながっている。HClがGa液と反
応してGaClができる。これが下方へ流れアンモニア
と反応しGaAsウエハ9上にGaN薄膜として成長す
る。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は劈開性賦与のた
めGaN基板を用いてGaN発光素子をつくり劈開面に
そって発光素子チップに分割する。より具体的には、G
aN(0001)基板の上に、GaN系薄膜をエピタキ
シャル成長法によって積層し、n側電極、p側電極を付
け発光素子構造を縦横に複数個作製し、自然劈開面にそ
って切断してチップとする。全周を劈開面で切るのが望
ましい。チップ分離に自然の劈開を利用するからダイシ
ング工程が簡略化される。LEDの場合は全周を劈開面
にそって切断する。つまり本発明のLEDは側面が全て
劈開面である。LDの場合は共振器面を劈開面とする。
だから共振器面以外の面は別段劈開面でなくても良い。
【0026】
【発明の実施の形態】GaNの劈開面は{1−100}
である。個別面になおすと[1−100]、[01−1
0]、[−1010]、[−1100]、[0−11
0]、[10−10]である。GaN基板は(000
1)を表面に持つ。このGaN基板上でこれらは互いに
60度の角度をなす面である。しかもこれら劈開面は基
板面に直交する。劈開面で切断すると側面が表面と直角
になる。本発明のLEDは全周が劈開面であるとするか
ら、内角は60度か120度か何れかである。90度と
いうことはない。
【0027】正三角形LEDチップ(図7)、菱型LE
Dチップ(図8)、平行四辺形チップ(図9)、台形チ
ップ(図10)、正六角形チップ(図11)のような劈
開切断したLEDチップが可能である。LDの場合は、
少なくとも共振器面は劈開することによって形成する。
その他の辺も劈開によってつくるとすると、平行四辺形
か台形になる。その他の辺は非劈開面でよいとすると矩
形チップにできる。共振器が劈開面であるなら面は平坦
で反射率が高い。
【0028】
【実施例】[実施例1(GaN基板の作製)]図4にG
aN基板の作製法を示す。2インチ径のGaAs(11
1)A面を基板として用いた。GaAs基板の上にSi
O2からなる絶縁薄膜を形成後、フォトリソグラフィに
より点状の窓群を形成した。図1と図4(1)に示す状
態である。点状窓の形状は、2μm角である。点状の窓
の配置は、GaAs基板の[11−2]の方向に4μm
ピッチで点状窓を一列にならべ、その列から[−11
0]方向に3.5μm離れた位置に同じピッチで別の点
状窓が存在するように全面に窓群を形成したものであ
る。但し隣あう列においては、互いに列の方向に1/2
ピッチだけずらせた配置とする。
【0029】その後HVPE(ハライドVPE)法によ
り、約490℃で、窓から露呈するGaAs基板の上に
バッファ層を約80nmの厚さで形成した。図4(2)
の状態になる。ついでGaAs基板を昇温し、約970
℃の温度で、約120μmの厚さのGaNエピタキシャ
ル層を成長させた。図2、図3の状態を経て、図4
(3)のような状態になる。
【0030】その後下地のGaAs基板を王水によって
除去した。図4(4)に示す。こうして自立できる単体
のGaN基板を得た。自立膜とするために120μm程
度の厚みが必要である。
【0031】このGaN基板はn型の導電性を示した。
GaN基板は(0001)面が表面である単結晶であっ
た。つまり法線がc軸に平行である。GaNの劈開面
{1−100}で実際に容易に劈開できる事を確かめ
た。特に裏面にスクライブ線を入れておくと、極めて容
易に劈開できた。劈開面は直線状で、劈開破断面は平坦
である事を確認した。{1−100}の劈開を利用して
これを側面とするGaNチップをつくることができる。
特に{1−100}劈開破断面を側面とする発光素子
(LED、LD)を作る事ができる。
【0032】[実施例2]実施例1と同様の方法によっ
て作製したGaN単結晶基板(0001)を出発材料と
する。但しマスク窓形状は、実施例1とは異なり、[1
−100]方向に長く伸びた窓幅2μm、マスク幅3μ
mのストライプ形の窓形状を繰り返しならべた形状とし
た。実施例1の場合とほぼ同等のGaN基板が得られ
る。GaN(0001)面の上にMOCVD(有機金属
化学気相成長法)によりLEDのエピタキシャル構造を
形成した。現在市販されているLEDと同じ構造であ
る。図6に断面図を示す。GaN基板12の上に、n−
AlGaN薄膜13、Znドープn−InGaN14、
p−AlGaN16、p−GaN17と言うふうに順に
エピタキシャル成長させた。基板とエピタキシャル成長
層は全てGaN系の結晶である。異種物質を含まない。
さらにその上に導電性の透明電極20、p側電極21を
付けた。さらにGaN基板の裏面側にn側電極22を形
成した。
【0033】LEDチップの形状を図7〜図11に示
す。劈開線群は図12〜16に示す。GaN(000
1)方位の基板であるから、その上の{1−100}面
は表面には直交するが互いに60度の角度をなす。直交
すればよいのであるがそうでない。それで自然劈開だけ
でチップの稜線を形成しようとすると、チップ頂点の内
角は120゜または60゜に限定される。
【0034】図7に示すLEDは正三角形である。[1
−100]、[01−10]、[−1010]の3つの
劈開面を側面にもつチップである。三角形の半導体素子
チップというのは見慣れないがLEDであるから単独で
用いられる事が多くて別段差し支えないことである。G
aNウエハ裏面に切断線を引く場合3方向に平行な直線
群を引けば良いので簡単である。図12に劈開面に沿う
切断線群を表す。
【0035】図8に示すLEDは菱型である。[0−1
10]、[10−10]、[01−10]、[−101
0]の4つの劈開面を側面にもつチップである。ウエハ
裏面に切断線をけがく場合は互いに60゜をなす2組の
等間隔の平行線群を引けば良い。図13に切断線を示
す。菱型の半導体チップというは珍しいがハンドリング
においてさして不便はない。
【0036】図9に示すLEDは平行四辺形である。
[0−110]、[10−10]、[01−10]、
[−1010]の4つの劈開面を側面にもつチップであ
る。劈開面は図8のものと同じであるが辺の長さが不等
であるから平行四辺形になる。ウエハ裏面に切断線をけ
がく場合は互いに60゜をなす2組の平行線群を引けば
良い(図14)。ただし平行線群の間隔が異なる。平行
四辺形の半導体チップというのは例を見ないが発光素子
として異方性が要求される場合に好適である。
【0037】図10に示すのは、台形のLEDである。
[1−100]、[10−10]、[01−10]、
[−1010]の4つの劈開面を側面にもつチップであ
る。正三角形3つ分あるいは5つ分というような形状で
ある。半導体チップ形状としては未曾有のものである。
これは初め長辺方向に劈開してから、それと60゜の方
向に劈開する必要がある。図15に示す。一挙に劈開す
ることはできない。台形は並進対称性がないから一括切
断は難しい。これも異方性光源としてかえって有望であ
る。
【0038】図11に示すのは正六角形のLEDチップ
である。[1−100]、[10−10]、[01−1
0]、[−1100]、[−1010]、[0−11
0]の6つの劈開面を側面にもつチップである。正六角
形は半導体チップとしては珍奇なものである。これも劈
開にそって切断することは可能であるが、容易ではな
い。図16に切断線を表す。蜂の巣状の刃物で切断する
とか何らかの工夫が要求される。
【0039】このエピタキシャル成長膜付きのGaN単
結晶基板を{1−100}の劈開面を利用してチップに
分割した。自然劈開によるから容易かつきれいに分割で
きた。これらのデバイスはp側電極からn側電極に電流
を流したところ、明るい青色発光が見られた。LEDと
して正常に動作することが確認された。チップのダイシ
ングは自然劈開によるため的確簡単である。サファイヤ
基板上のGaNデバイスを分割するために行われるスク
ライブとブレーキングに比較して歩留まりが飛躍的に向
上した。歩留まりが高いので青色発光素子を低コストで
製造することができる。
【0040】GaNの劈開面は{1−100}であるが
これは(0001)面と直交するという利点があるが一
方互いに直交しないという欠点もある。LEDチップは
やはり辺が互いに直交する方がよいし便利であろう。劈
開面を直交させることは不可能ではない。図17にそれ
を示す。正六角形efghijは(0001)面での劈
開面である。互いに60゜の角をなす。劈開面は(00
01)面に直角であるから(0001)面に直交する正
六角柱の側面が劈開面だと言う事である。正六角柱を4
5゜の斜角で切断すると右下に書いたような不等六角形
になる。辺ijとejは直交するし、辺ghとgfも直
交する。すると互いに90゜の挟角をなす劈開面が現れ
ることになる。劈開面gh、ef、ji、hgだけを切
断線に採用することによって劈開した矩形状のLEDチ
ップを作製できる。ただ劈開面が表面と直交せず60゜
の角度をなし、多少気持ちが悪いということはある。と
ころがこれは現在のところ難しいことである。斜め切断
した面は(1001)面でありこのような面を成長させ
ることは難しい。GaAsの(111)面を元にエピタ
キシャル成長させるのであれば、ウエハの直径よりずっ
と長い結晶を成長させなければならない。現在のところ
そのようなことはできない。
【0041】[実施例3(LDの場合)]実施例1で作
製したGaN(0001)基板にGaNレ−ザを作製し
チップに分割する。レ−ザの活性層であるストライプ構
造は、MOCVD法によって、GaN基板の上にAlG
aN層、InGaN MQW層、AlGaN層、p型G
aN層を形成し、ストライプ状にパターンを形成したも
のである。
【0042】ストライプ構造は、その長手方向が劈開ミ
ラー面と垂直になるようにする。劈開面は先述の通り
{1−100}であるから、ストライプの方向を<1−
100>とすれば良い。図18のようにレ−ザ構造を作
り、ストライプ26を<1−100> に平行に作製す
る。それに垂直な切断線24、24、…と、これと12
0゜をなす切断線25、25、…によってスクライブす
る。いずれも劈開面であるから、ウエハ裏面に傷を付け
ておいて、衝撃を掛けてチップに分離する。図19のよ
うに平行四辺形のLDとなる。端面24、24が劈開面
であってストライプの両端になっている。端面は基板だ
けでなくエピタキシャル層の面も綺麗に劈開される。こ
れが共振器ミラーとなる。サファイヤ基板を切断してミ
ラーとしたサファイヤ基板GaNレ−ザに比べ極めて平
坦平滑な面が得られた。反射率が高くレ−ザの特性が向
上する。歩留まりが高い。
【0043】平行四辺形LDは四辺が劈開面である。本
発明の主張に忠実な構造である。しかしストライプ構造
にしなければならないので、上手くいってウエハ面積の
半分は無駄になる。図18において、ストライプの位置
をどのように決めても、斜め切断線25とストライプ2
6が交差するような列が発生する。そのようなチップ2
9、29…は使いものにはならない。
【0044】そこで図20のようにストライプ26に直
交する切断線24は劈開面に沿うが、もう一方の切断線
30は、非劈開面とする。つまり斜め劈開面25は使わ
ない。図21のようなチップになり、無駄がない。非劈
開面切断線30を切るのに時間が掛かりその面が多少粗
面であったとしてもミラーでないから差し支えない事で
ある。
【0045】
【発明の効果】(0001)GaN単結晶基板の上に、
GaN系の薄膜をエピタキシャル成長させてLED、L
Dなどの発光素子を作り、劈開面{1−100}によっ
て切断することによってチップとする。自然劈開を利用
するからダイシング工程が極めて容易になる。GaN発
光素子の低コスト化が可能になる。LEDの場合は異形
のチップとなるが異方性光源として有望である。LDの
場合は、劈開面をミラーとすることができる。特性向
上、歩留まり向上などの効果がある。
【図面の簡単な説明】【図1】GaAs(111)A面基板にマスクを付けリ
ソグラフィによって[11−2]方向に一辺が平行にな
る正三角形群の頂点の一に窓を設けた状態の平面図。
【図2】窓から露呈したGaAsの表面にGaNが成長
しマスクを越えて横方向に正六角形状に広がって行く有
り様を示す平面図。
【図3】それぞれの窓から成長した正六角形GaN結晶
が互いに接触しマスクを覆い尽くした状態の平面図。
【図4】GaN単結晶基板を製造する過程を示す断面
図。(1)はGaAs(111)A面にマスクを付け窓
をもうけた状態の断面図。(2)は窓の中の下地GaA
sの上にGaNバッファ層を形成した断面図。(3)は
更にマスクの厚みを越えてGaNエピタキシャル層を成
長させた状態の断面図。(4)はGaAs基板を除外す
ることによってGaN基板が自立膜として得られた状態
を示す断面図。
【図5】HVPE法によってGaAs基板の上にGaN
結晶を成長させる装置の概略断面図。
【図6】GaN基板の上に作製したGaN発光素子のエ
ピタキシャル構造の一例を示す断面図。
【図7】劈開面を外周にした本発明の実施例にかかる三
角形状のLEDチップの平面図。
【図8】劈開面を外周にした本発明の実施例にかかる菱
型形状のLEDチップの平面図。
【図9】劈開面を外周にした本発明の実施例にかかる平
行四辺形状のLEDチップの平面図。
【図10】劈開面を外周にした本発明の実施例にかかる
台形状のLEDチップの平面図。
【図11】劈開面を外周にした本発明の実施例にかかる
六角形状のLEDチップの平面図。
【図12】三角形状のチップを切り取るための劈開に沿
うGaNウエハ上の切断線群をしめす平面図。
【図13】菱型のチップを切りとるための劈開に沿うG
aNウエハ上の切断線群を示す平面図。
【図14】平行四辺形のチップを切りとるための劈開に
沿うGaNウエハ上の切断線群を示す平面図。
【図15】台形状チップを切りとるための劈開に沿うG
aNウエハ上の切断線を示す平面図。
【図16】正六角形チップを切りとるための劈開に沿う
GaNウエハ上の切断線群を示す平面図。
【図17】チップの表面を(0001)からある方向へ
45゜傾けると隣接劈開面が90゜をなすようにする事
ができる事を説明する線図。
【図18】ストライプ構造をもつLDにおいて、120
゜をなす劈開面群によって切断することによって平行四
辺形であって劈開面を共振器とするLDが製作されるこ
とを示すウエハ一部の平面図。
【図19】120゜をなす劈開面群によって切断するこ
とによって作られた劈開面を共振器面とするLDチップ
の平面図。
【図20】ストライプ構造を持つLDにおいて、ストラ
イプと直交する方向は劈開面で切断し、それと直交する
方向は非劈開面で切断することを示すウエハの一部の平
面図。
【図21】ストライプと直交する方向の劈開面と、スト
ライプに平行な非劈開面で切断したLDチップ平面図。
【符号の説明】 1 反応炉 2 ヒ−タ 3 原料ガス導入口 4 原料ガス導入口 5 Ga溜 6 Ga融液 7 サセプタ 8 シャフト 9 GaAsウエハ 10 ガス排出口 12 n−GaN基板 13 n−AlGaN層 14 n−InGaN層 16 p−AlGaN層 17 p−GaN層 19 GaN系単結晶層 20 透明電極 21 p側電極 22 n側電極