【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吐出弁及び弁板装
置に属し、更に詳しくは、冷媒の脈動を防止することが
可能な吐出弁及び弁板装置に属する。
【0002】
【従来の技術】従来、圧縮機として、傾斜角が一定な斜
板を備えた固定容量型圧縮機や、傾斜角可変な斜板を備
えた可変容量型圧縮機等が知られている。これらの圧縮
機には、弁板装置が備えられている。この弁板装置1
は、図3及び図4に示すように、弁板11、吐出弁1
2、吸入弁13、バルブリテーナ14等から成り、複数
のシリンダボア21を有するシリンダブロック2と、こ
のシリンダブロック2の一端を閉塞するシリンダヘッド
3との間に挟持されている。弁板11は、各シリンダボ
ア21に対応させて形成された吐出孔11a及び吸入孔
11bを有している。吐出弁12は、弁板11のシリン
ダヘッド側面に装着され、吐出孔11aを開閉する。更
に詳しくは、吐出弁12は、弁板11に固定される部分
である固定部121と、この固定部121に連設された
リード片122とを有しており、リード片122は、弁
板11の吐出孔11aを実際に開閉する開閉部122a
と、この開閉部122aと上述の固定部121との間に
あって弾性的に揺動する揺動部122とを有している。
各揺動部122は、弁板11の径方向に沿って延在して
おり、従って、各揺動部122の揺動は、吐出弁12が
弁板11に取り付けられた状態において、弁板11の厚
さ方向と平行で且つ弁板11の径方向に平行な仮想平面
に沿って行われるように成っている。このため、揺動部
122の一端に連設されている開閉部122aの開閉動
作も、弁板11の厚さ方向と平行で且つ弁板11の径方
向に平行な仮想平面に沿って行われるように成ってい
る。一方、吸入弁13は、弁板11のシリンダブロック
側面に装着され、吸入孔11bを開閉する。
【0003】従って、各シリンダボア21に挿入された
ピストン5が往復動することにより、吐出弁12及び吸
入弁13が開閉動作をすることになる。この吐出弁12
の開閉動作は、ピストン5が上昇することによりシリン
ダボア21内のガス圧が昇圧し、吐出孔11aを塞ぐ吐
出弁12の面に作用する力が、吐出弁12の曲げ応力、
シリンダヘッド内圧力(凝縮圧力)、及び弁と弁板間の
オイルの粘性力の和を上回ることにより開弁し、下回る
と閉弁することになる。従って、吐出弁が開弁して吐出
されるガス圧力は、シリンダヘッド内圧力より弁剛性と
弁・弁板間オイル粘性の分だけ高い圧力(過圧縮)とな
るため、吐出脈動を引き起こしていた。
【0004】特に、従来では、吐出弁の開閉動作が、上
述のように、弁板の厚さ方向と平行で且つ弁板の径方向
に平行な仮想平面に沿って行われるので、弁板の吐出孔
から吐出した冷媒ガスは、吐出弁にあたり、弁板の外周
方向へ流れ、吐出室と吸入室との間を仕切る隔壁に直角
に突き当たって四散した後、シリンダヘッドに設けられ
吐出室に連通した吐出ポートを通じて圧縮機外部へと流
出するように成っている。このため、吐出室内の冷媒ガ
スの流れは乱れたものと成っており、しかも、弁板の各
吐出孔から吐出ポートまでの距離はそれぞれ異なってい
るため、冷媒ガスの脈動を増大させることになり、これ
が、振動・騒音の要因と成っていた。
【0005】勿論、これに起因する脈動を低減すべく幾
つかの技術が提案されている。例えば、弁板の吐出孔の
径を縮小することにより、吐出室内圧力の変動を低減す
る技術、或いは、吐出室の容積を拡大することにより、
吐出室内圧力の変動を低減する技術がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
技術は、圧力損失を招き、吐出ガス圧力を引き上げ、効
率を低下させる欠点があり、後者の技術は、シリンダヘ
ッドの寸法を大きくしてしまう欠点があり、現状の吐出
孔径、及び吐出室容積は、限界のレベルに達している。
【0007】それ故に、本発明の課題は、圧縮機の効率
を低下させたり、圧縮機を大型化させることなく、冷媒
ガスの脈動を低減させることが可能な吐出弁及びそれを
備えた弁板装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明によ
れば、弁板に固定される部分である固定部と、該固定部
に連設されたリード片とを含み、前記リード片は、前記
弁板に形成された吐出孔を開閉する開閉部と、該開閉部
と前記固定部との間にあって弾性的に揺動する揺動部と
を有している吐出弁において、前記揺動部の揺動が、前
記弁板の厚さ方向と平行で且つ前記弁板の径方向に対し
て傾斜している平面に沿って行われるように成っている
ことを特徴とする吐出弁が得られる。
【0009】請求項2記載の発明によれば、前記揺動部
が、前記固定部の外周縁から螺旋状に延在していること
を特徴とする請求項1記載の吐出弁が得られる。
【0010】請求項3記載の発明によれば、吐出孔を有
する弁板と、前記吐出孔を開閉する請求項1又は2記載
の吐出弁とを含むことを特徴とする弁板装置が得られ
る。
【0011】
【作用】圧縮機が駆動され、ピストンが往復動を開始す
ると、圧縮された冷媒ガスにより吐出弁が開閉動作を始
めるが、吐出弁の揺動部の揺動は、弁板の厚さ方向と平
行で且つ弁板の径方向に対して傾斜している平面に沿っ
て行われるように成っているので、吐出弁の開閉部もこ
の方向に沿って弁板の吐出孔を開閉する。従って、弁板
の吐出孔を通じて吐出室内に吐出された冷媒ガスは、吐
出弁の開閉部に当って、実質的に、シリンダヘッドの隔
壁に沿った整然とした流れと成る。このため、冷媒ガス
が隔壁に強く突き当たることが無くなり、この結果、吐
出室容積を拡大したのと同様の作用効果が得られ、吐出
脈動を低減でき、しかも、弁板の吐出孔の径を縮小する
必要が無いので、圧縮機の効率が低下することもない。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施形態に
よる吐出弁の正面図、図2は図1に示す吐出弁を備えた
弁板装置の使用状態を示し、(a)は縦断面図、(b)
は(a)のA−A線での断面図である。
【0013】図1及び図2を参照して、本実施形態の吐
出弁を、これを備えた弁板装置と一緒に説明する。この
弁板装置1は、圧縮機のシリンダブロック2と、シリン
ダヘッド3との間に配置され、ボルト4により、シリン
ダヘッド3と共にシリンダブロック2に固定されてい
る。このにシリンダブロック2には、その中心線を取り
囲むように、等間隔に複数のシリンダボア21が形成さ
れている。各シリンダボア21内には、ピストン5が、
摺動自在に挿入されている。一方、シリンダヘッド3に
は、吐出室31と、吸入室32が形成されている。吐出
室31と吸入室32とは、隔壁33によって仕切られて
いる。
【0014】弁板装置1は、弁板11と、吐出弁12
と、吸入弁13と、バルブリテーナ14とを含んで構成
されている。
【0015】弁板11には、各シリンダボア21に対応
させて、シリンダボア21と吐出室31とを連通する吐
出孔11a、並びにシリンダボア21と吸入室32とを
連通する吸入孔11bが形成されている。弁板11のシ
リンダブロック側面の外周縁部には、リング状のガスケ
ット15が配置されている。
【0016】吐出弁12は、弁板11の中心部に固定さ
れる部分である略円形の固定部121と、弁板11の各
吐出孔11aに対応させて、固定部121に連設された
複数のリード片122とを有しており、全体の平面形状
は、略花弁状に成っている。更に詳しくは、各リード片
122は、実際に弁板11の吐出孔11aを塞ぐ部分で
ある開閉部122aと、この開閉部122aと固定部1
21との間にあって弾性的に揺動する揺動部122bと
を有している。各揺動部122bは、固定部121の外
周縁に連設され、螺旋状に延在している。このため、各
揺動部122bの揺動は、吐出弁12が弁板11に取り
付けられた状態において、弁板11の厚さ方向と平行で
且つ弁板11の径方向に対して傾斜している仮想平面に
沿って行われるように成っている。
【0017】吸入弁13は、略円板状であり、この吸入
弁13には、弁板11の各吸入孔11bに対応させて、
略U字状に切込みを入れることにより、各吸入孔11b
を開閉する舌片状のリード片131が形成されている。
各リード片131には、リード片131が吐出孔11a
を塞がないようにするための孔131aが形成されてい
る。
【0018】バルブリテーナ14の平面形状は、吐出弁
12と略同じであり、吐出弁12の開弁時、各リード片
122と当接することにより、リード片122のリフト
量を制限する。
【0019】上述の吐出弁12は、弁板11のシリンダ
ヘッド側面上に配置され、吸入弁13は、弁板11のシ
リンダブロック側面上に配置され、バルブリテーナ14
は吐出弁12のシリンダヘッド側面上に配置され、これ
ら吐出弁12、吸入弁13、及びバルブリテーナ14
は、ボルト16及びナット17により、弁板11に一体
的に固定されている。
【0020】尚、本実施形態の場合、吐出弁12の揺動
部122bは、固定部121の外周縁から螺旋状に延在
しているが、これに限らず、揺動部の揺動が、弁板の厚
さ方向と平行で且つ弁板の径方向に対して傾斜している
平面に沿って行われるように成っていれば、揺動部は、
直線状、円弧状、或いは屈曲状に延在していても良い。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、圧縮機の効率を低下さ
せたり、圧縮機を大型化させることなく、冷媒ガスの脈
動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】【図1】本発明の第1の実施形態による吐出弁の正面図
である。
【図2】図1に示す吐出弁を備えた弁板装置の使用状態
を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A線
での断面図である。
【図3】従来の吐出弁の一例を備えた弁板装置の使用状
態を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のB−B
線での断面図である。
【図4】図3に示す吐出弁の正面図である。
【符号の説明】 1 弁板装置 2 シリンダブロック 21 シリンダボア 3 シリンダヘッド 31 吐出室 32 吸入室 33 隔壁 4 ボルト 5 ピストン 11 弁板装置 11a 吐出孔 11b 吸入孔 11c 凹部 12 吐出弁 121 固定部 122 リード片 122a 開閉部 122b 揺動部 13 吸入弁 131 リード片 131a 孔 14 バルブリテーナ 15 ガスケット 16 ボルト 17 ナット