JPH11183264A - 熱電対をもつ温度測定器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】【課題】 特に高温域の温度測定を繰り返し行うことに
より発生する熱電対の断線がおさえられた熱電対をもつ
温度測定器を提供すること。【解決手段】 本発明の温度測定器は、軸長方向に二本
の挿通孔３１を持つ絶縁管３と、この挿通孔３１に挿入
され挿通孔３１の先端から突出した測温接点４３を持つ
熱電対４とを有し、この絶縁管３にはその先端部の端面
の中心を通り二本の挿通孔３１が底に開口する溝３０を
有し熱電対４の測温接点４３が溝３０内に収納されてい
ることを特徴とする。本発明の熱電対をもつ温度測定器
は、熱電対の断線がおこりにくくなっているため、断線
が原因となる熱電対の寿命の短縮が起こらなくなり、長
寿命化の効果も有するようになる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば溶融金属等
の温度を熱電対を用いて測温する温度測定器に関する。

【０００２】

【従来の技術】熱電対温度計には図４の断面図に示され
る測温部を用いた温度測定器がある。この測温部は溶融
金属等の測温というような高温域での温度測定に用いら
れるものであり、先端を閉じた筒形状のサーメットより
なる外周保護管１と、この外周保護管１の内部に挿入さ
れ先端が閉じた筒形状のアルミナよりなる内周保護管２
と、この内周保護管２の内部に挿入され軸長方向に二本
の挿通孔３１を持つアルミナよりなる絶縁管３と、挿通
孔３１に挿入され挿通孔３１の先端から突出した測温接
点４３を持つ熱電対４と、からなる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このような従来の温度
測定器での温度の測定は、測温部内で熱電対の先端が絶
縁管に押しつぶされたり、熱電対の先端が内筒保護管と
絶縁管との間で機械的な応力を繰り返し受けることで、
熱電対の断線が発生し測温部の寿命が短くなる問題があ
った。

【０００４】また、温度測定の繰り返し、特に高温域で
の温度測定を繰り返すと、熱電対と絶縁管がそれぞれ熱
膨張により伸び縮みする。このとき、熱電対と絶縁管の
熱膨張率が異なるため、両者の伸び縮みが異なり、場合
によっては熱電対が断線するという問題もあった。熱膨
張率の具体的な値として２０℃の熱膨張係数（×１０^-6
℃^-1）が、熱電対では７．９、絶縁管では８．９であっ
た。

【０００５】本発明は上記実状に鑑みてなされたもので
あり、特に高温域の温度測定を繰り返し行うことにより
発生する熱電対の断線がおさえられた熱電対をもつ温度
測定器を提供することを課題とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明者らは、絶縁管の先端の端面に溝をもうけ、そ
の溝内に測温接点を収納することで、熱電対の断線を防
止できることを見出した。すなわち、本発明の熱電対を
もつ温度測定器は、軸長方向に二本の挿通孔を持つ絶縁
管と、この挿通孔に挿入され挿通孔の先端から突出した
測温接点を持つ熱電対とを有し、この絶縁管にはその先
端部の端面の中心を通り二本の挿通孔が底に開口する溝
を有し熱電対の接合端部が溝内に収納されていることを
特徴とする。

【０００７】

【発明の実施の形態】熱電対は、二種類の金属線を接合
しその熱起電力により温度を求めるものであり、二種類
の金属線は測定される温度域等により選択することがで
きる。具体的には、ＪＩＳで規定されている熱電対など
が用いられる。絶縁管は、測温に用いられる熱電対の測
温接点が測温部の先端部にくるように熱電対を固定する
ものである。この絶縁管の材質としては熱電対を絶縁す
る材料で、かつ耐熱衝撃性および耐物理的衝撃性にすぐ
れた材料が用いられる。例えばアルミナが用いられる。

【０００８】絶縁管は、その先端部の端面の中心を通り
かつ二本の挿通孔が底に開口する溝を有する。またこの
溝内には熱電対の測温接点が収納されている。なお、絶
縁管は長い一本からなるものでも、軸方向に積み上げら
れた複数個のもので構成してもよい。絶縁管はその先端
の端面に溝をもつ。そしてこの溝内に熱電対の先端が収
納されている。この熱電対の先端が溝内に収納されてい
るため熱電対の先端が絶縁管に押しつぶされることや、
熱電対の先端がそれを被覆保護する保護管と絶縁管との
間で機械的な応力を繰り返し受けることによる熱電対の
断線を防止することができる。

【０００９】絶縁管の先端部に開口する溝は、二本の挿
通孔を結ぶ方向と直交する方向にのびていることが好ま
しい。溝が二本の挿通孔を結ぶ方向と直交する方向にの
びることで、溝内に収納された熱電対が等しく加熱され
る。絶縁管の先端部に開口する溝の大きさ（深さおよび
幅）は、用いられる絶縁管および熱電対の性質により適
宜決定される。すなわち、熱電対と絶縁管の熱膨張率に
より決定される。

【００１０】溝の深さが浅い場合には、熱膨張率の差の
ため冷却時には熱電対が絶縁管に対して相対的に縮むこ
とになる。熱電対が相対的に縮むことで、熱電対が突っ
張って断線を生じる。溝の深さが深い場合には、溝内に
収納された熱電対が溝の底に近い部分で短絡し、この短
絡した箇所が新たな測温接点となる。また、この新たな
測温接点を生じることは、前記した溝の深さが浅い場合
と同様のことが発生し熱電対の寿命が短くなる。

【００１１】溝の幅について、幅が狭い場合には、熱電
対の測温接点を溝内にもうけられなくなり、絶縁管の先
端面に溝をもうける意味が無くなる。また、幅が広い場
合には、絶縁管の溝の外側の部分の強度が弱くなり、絶
縁管先端が折損しやすくなる。折損が生じると、熱電対
が絶縁管から突出するとともに、前記した溝の深さが浅
い場合と等しくなり熱電対の寿命が短くなる。

【００１２】実用的な溝の深さは絶縁管の外径がφ３ｍ
ｍの場合で２〜１２ｍｍ、溝の幅は１．６〜２．２ｍｍ
程度である。なお、本発明の熱電対を持つ温度測定器は
保護管内に収納して使用できる。特に溶鋼等の高温の測
温に用いられる場合には、保護管は外周保護管および内
周保護管とからなる。

【００１３】外周保護管は、熱電対の測温接点を保護す
るために用いられる。この外周保護管には高い熱伝導率
を持ち、かつ耐熱衝撃性および耐物理的衝撃性にすぐれ
た材料が用いられる。例えばＭｏＺｒＯ₂等のサーメッ
トを用いることができる。内周保護管は、外周保護管の
内部に挿入される。この内周保護管も、熱電対の測温接
点を保護するために用いられ、高い熱伝導率を持ち、か
つ耐熱衝撃性および耐物理的衝撃性にすぐれた材料が用
いられる。例えばアルミナを用いることができる。

【００１４】

【実施例】以下、本発明を実施例を用いて説明する。 （実施例）本発明の実施例は、図１に示されるように、
外周保護管１と、内周保護管２と、先端部の端面に溝３
０が開口した絶縁管３と、熱電対４とを有する熱電対を
持つ温度測定器である。

【００１５】外周保護管１はＭｏＺｒＯ₂で形成され
る。また、その形状は先端がなめらかな曲面を描くよう
に閉じられた円筒形状をしており、円筒部分の外径はφ
２０ｍｍ、内径はφ１０ｍｍであった。内周保護管２は
アルミナで形成され、外周保護管１内に挿入される。ま
た、その形状は先端がなめらかな曲面を描くように閉じ
られた円筒形状をしており、円筒部分の外径はφ６ｍｍ
で、内径はφ４ｍｍであった。

【００１６】絶縁管３は長い一本からなるアルミナで形
成され、内周保護管２内に挿入される。この絶縁管３の
先端部の軸方向断面図を図２に、図２のＩＩ線での断面
図を図３に示す。ここで、絶縁管３はφ３ｍｍの円柱に
軸直方向にのびる二本のφ０．８ｍｍの挿通孔３１を有
し、かつ先端部の端面に溝３０を有する形状をしてい
る。この二つの挿通孔３１は中心軸の間隔が１．６ｍｍ
で、絶縁管３の中心で対称となるようにもうけられてい
る。また、溝３０は絶縁管３の端面の中心を通り、かつ
二つの挿通孔３１を結ぶ方向と直交する方向にのび、こ
の溝３０により絶縁管３の端面は二つに分けられてい
る。溝３０は凹状の断面形状をしており、この凹状部は
幅が２ｍｍで、深さが８ｍｍであった。

【００１７】絶縁管３の挿通行３１に挿入された熱電対
４は、ＪＩＳ規定のＲタイプの熱電対が用いられた。こ
の熱電対４は太さがφ０．５ｍｍの線材であった。ＪＩ
ＳのＲタイプの熱電対は、＋極が１３％Ｒｈ−Ｐｔであ
り、−極がＰｔである。この熱電対の＋極と−極の接合
する部分が熱電対４の測温接点４３となっている。この
熱電対４の測温接点４３は絶縁管３の先端にもうけられ
た溝３０内に収納されている。

【００１８】また、挿通孔３１の中心軸の間隔が１．６
ｍｍであり、溝３０の幅が２ｍｍと挿通孔３１の中心軸
の間隔より大きいため、挿通孔３１の中心軸はともに溝
３０の凹部内に位置する。このため、溝３０と挿通孔３
１とが重なり、この重なった部分の挿通孔３１から突出
する熱電対４は溝３０内で露出している。 （比較例１）比較例１は、図４の断面図に示される測温
部を有する。この測温部は、長い一本からなり先端の端
面に溝がない絶縁管を有する従来の熱電対を持つ温度測
定器である。 （比較例２）比較例２は、測温部に用いられる絶縁管の
溝の深さが浅い以外は実施例と同様な熱電対を持つ温度
測定器である。すなわち、比較例２に用いられた絶縁管
は、その先端面に幅が２ｍｍで、深さが２ｍｍの溝を有
する。このとき絶縁管にもうけられた挿通孔からのびる
熱電対が接合する測温接点は溝に収納されていない。 （比較例３）比較例３は、測温部に用いられる絶縁管の
溝の深さが深い以外は実施例と同様な熱電対を持つ温度
測定器である。すなわち、比較例３に用いられた絶縁管
は、その先端面に幅が２ｍｍで、深さが３０ｍｍの溝を
有する。 （比較例４）比較例４は、測温部に用いられる絶縁管の
溝の幅が狭い以外は実施例と同様な熱電対を持つ温度測
定器である。すなわち、比較例４に用いられた絶縁管
は、その先端面に幅が１ｍｍで、深さが８ｍｍの溝を有
する。 （試験）実施例および比較例１〜４の熱電対を持つ温度
測定器の熱電対の寿命を求める試験を行った。この試験
は、１５５０℃の溶鋼に一時間つけた後、室温で一時間
のインターバルをとることを熱電対の寿命が来るまで繰
り返し、熱電対の寿命がきたときの繰り返しの回数を計
測した。実施例および比較例の寿命の計測をそれぞれ十
回繰り返し、熱電対の平均寿命およびその原因を調べ、
表１に示した。なお、比較例１は溝のない例であり、比
較例２は溝の深さの浅い例であり、比較例３は溝の深さ
の深い例であり、比較例４は溝の幅の広い例である。

【００１９】

【表１】表１より本実施例の熱電対をもつ温度測定器は熱電対の
寿命までの繰り返し回数が比較例１〜４と比べてかなり
大きくなっている。また、本実施例の熱電対を持つ温度
測定器は熱電対の寿命のきた原因が劣化であって断線で
ないことから、熱電対が外力の影響を受けていないこと
がわかる。対して、比較例１〜４の熱電対を持つ温度測
定器に用いられた熱電対では寿命の原因として断線が半
分以上を占めている。

【００２０】

【発明の効果】本発明の熱電対をもつ温度測定器は、測
温に用いられる熱電対にかかる応力がおさえられている
ため、断線がおこりにくくなっている。このため、断線
が原因となる熱電対の寿命の短縮が起こらなくなり、温
度測定器自身の長寿命化の効果も有するようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本実施例の熱電対をもつ温度測定器の測温部
の断面を示す図である。

【図２】 本実施例の絶縁管の先端部の軸方向の断面を
示す図である。

【図３】 図２のＩＩ線における断面を示す図である。

【図４】 従来の熱電対をもつ温度測定器の測温部の断
面を示す図である。

【符号の説明】

１…外周保護管 ２…内周保護管 ３…絶縁管 ３０…溝 ３１…挿通孔 ４…熱電
対 ４１…＋極側熱電対 ４２…−極側熱電対 ４３…測温
接点

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸長方向に二本の挿通孔を持つ絶縁管
   と、該挿通孔に挿入され該挿通孔の先端から突出した測
   温接点を持つ熱電対と、を有する温度測定器において、 該絶縁管はその先端部の端面の中心を通り二本の該挿通
   孔が底に開口する溝を有し、該熱電対の接合端部は該溝
   内に収納されていることを特徴とする熱電対をもつ温度
   測定器。
2. 【請求項２】 前記溝は二本の前記挿通孔を結ぶ方向と
   直交する方向にのびている請求項１記載の熱電対をもつ
   温度測定器。