【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示装置に関し、特
に、液晶とフィルムの複合多層膜を用いた液晶装置およ
び、この液晶装置により反射/透過を制御する表示装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、反射型液晶表示装置は、微小電力
で動作する表示装置として、ウォッチ、電卓、セルラ
ー、小型携帯機器、各種家庭電器製品等の情報伝達媒体
として大きな発展、普及を遂げてきた。表示モードもT
N(ツイスティド・ネマチック)型、STN(スーパー
ツイスティド・ネマチック)型、強誘電型等、多種発明
されてきた。しかし、これらは全て偏光板を使用するも
のであり、現実的には、液晶素子への入射光の約60%
は該偏光板により、吸収されてしまうため暗い画面とな
り、理想的な反射型表示、例えば白色背景に黒表示とい
った見易さからは遠いものであった。
【0003】特に反射型カラー液晶表示装置では、偏光
板とカラーフィルター双方による光吸収のため、最大で
も表示装置に入射する入射外光の10%以下の光を反射
して表示することになり、非常に暗く、印刷物表示のよ
うな、明るい鮮やかなカラー表示には、遠く及ばないも
のであった。
【0004】最近、上述した欠点を解消し、偏光板を使
わず明るいカラーディスプレイを実現する方法として、
従来例1(特開平6ー294952号公報)が提案さ
れ、注目されている。この提案では、液晶材料と光硬化
性樹脂からなる高分子材料とを混合したものを、一対の
基板間に挿入し、上、下2方向よりレーザー光を照射
し、該2本のレーザー光の干渉パターンにより、液晶と
高分子材料の混合層中に光の強弱縞を得る。そして、こ
の強弱縞パターンに応じ、層状に高分子光硬化樹脂を光
硬化させ、高分子光硬化性樹脂層/液晶層/高分子光硬
化性樹脂層/液晶層/・・・の多層膜を実現し、複合多
層膜干渉反射の原理に従い、特定波長域の光を干渉反射
させる。そして上記一対の基板内面の電極により多層膜
に電圧を印加すると液晶層に於いては、液晶分子の分子
軸方向が変わり、それに伴い、液晶層の屈折率も変化す
る。従って、上記干渉反射の条件から外れ、反射光強度
も変わる。このようにして電圧による光変調が可能とな
り、表示装置として機能する。
【0005】上述した表示装置では、偏光板を全く用い
ないため、明るい色を出す事ができるとともに、照射レ
ーザー光の波長、又は照射角度を変える事により、干渉
ピッチを自由に選択でき、光の干渉ピッチを自由に選択
できるため、任意の色の表示色を実現でき、特に反射型
カラー表示装置としては、従来のTN型、STN型の反
射型カラー表示装置に比べ優れたものであった。
【0006】しかし、上述した表示装置の欠点として、
例えば従来例2(ASIA DISPLAY ’95
P603〜606)に示されるように、2本のレーザー
光の干渉により、光硬化性樹脂の層を作るため、その干
渉ピッチは極めて精度の高いものとなり、干渉反射光の
波長幅が非常に狭く、従って色は鮮やかであるが、反射
型表示としては明るさに欠けるものであった。通常、反
射型表示の背景色としては、白色が最も望ましく、この
ためには可視光の広い波長域にわたって、干渉反射の条
件を充たすようにする必要があるが、上記従来例1、2
では、その構造から、層の上下で干渉ピッチを連続的に
変える事は、極めて困難で、明るい白色表示を得る事に
問題があった。第2の問題としては、光硬化樹脂と液晶
層との境界面は、干渉反射の強度を上げるためにフラッ
ト(平面的)が望ましいが、従来例2に示されるように
細かい凹凸を持った形で接している。従って、全ての入
射光が干渉反射をおこすという事ではなく、一部の光が
透過してしまい、より明るい反射型表示装置を実現する
上で問題となっていた。
【0007】次にもう一つの従来例として従来例3(特
楷平4−178623号公報)が、やはり偏光板を使わ
ず、干渉反射を利用した明るい反射型カラー表示装置の
例として挙げられる。本従来例に於いては、液晶層とS
iO2層を重ね合わせ、各層の厚みと屈折率とを、干渉
反射の条件に適合するように設定し、特定波長の選択反
射を生じさせる。ここに上下電極間に電圧を印加する
と、前述と同様に液晶層の屈折率が変わり、上記干渉反
射条件から離脱して、反射光強度が変わるため、表示機
能が具現化できるものである。本実施例の問題点は、ま
ず、干渉反射をおこさせる層がSiO2膜/液晶層/S
iO2膜のわずか3層からなり、これでは充分な干渉反
射光強度が得られず、ほとんどの入射光が透過して、下
部の光吸収層に吸収されてしまうため、充分な明るさを
もった反射型表示装置は実現できない。反射光強度を上
げるには、SiO2膜/液晶層/SiO2膜/液晶層/
SiO2膜・・・と少なくとも10層以上の複合多層膜
が好ましいが、本実施例では、その複合多層膜の形成は
極めて困難である。つまり液晶層の上に、直接SiO2
膜を形成する事ができず、本従来例にも図示されている
通り、一旦スペーサー層を全面に形成し、その上にSi
O2膜を形成した後、該スペーサーを周辺部のみを残し
て、それ以外の部分をエッチング除去し、その除去され
た空泡部に液晶を注入し、液晶層を形成している。これ
らは液晶層の上に、直接SiO2膜を形成する事ができ
ない理由から生ずる困難さで、この構造で10層以上の
複合多層膜を製造する事は現実的ではない事は明らかで
ある。更に本実施例では、オーバーエッチング除去され
た空泡部に液晶を注入しているため、液晶分子軸方向を
揃えるための配向処理ができず、注入された液晶の分子
軸方向は、バラバラのドメイン状になっていると考えら
れる。通常、干渉反射光の強度を上げるためには、液晶
層の厚みと屈折率を精度よくコントロールする事が重要
であり、本実施例では上述した様に、屈折率の精密なコ
ントロールが困難で、充分な干渉反射光の強度が得られ
ず、均一で明るい反射型の表示装置の実現には問題があ
った。
【0008】更に、上述の従来例1、2に於いては、垂
直入射だけしか考慮されていない。実際には、表示装置
で垂直方向に反射されて目に到達した反射光と、表示装
置で斜方向に反射されて目に到達した反射光とは、光路
長/反射条件が異なるから、反射条件を満足して垂直方
向に反射されて目に到達した反射光と、反射条件を満足
して斜方向に反射されて目に到達した反射光とでは波長
が異なる。従って、カラー表示では、表示体の中央部か
ら周辺部にかけて、反射条件を満たす反射光が短波長側
にずれて色が変化してしまい、画面全体で均一な色表現
は不可能であるという問題があった。
【0009】また、白黒表示でも問題がある。反射光で
白色を表示しようとすると、可視光全域(もしくは赤、
緑、青色波長帯)で高反射率を確保して多層膜を設計す
る事が必要である。上述の従来例1、2に於いては、斜
入射光で反射条件が短波長側にずれる事を予め見込んで
多層膜を形成しなければならないが、可視光全域で高反
射率を確保する設計の場合には、可視光よりも短波長域
をも高反射率でカバーする必要があり、また赤、緑、青
色波長帯で高反射率を確保する設計の場合には、ほとん
ど可視光全域で高反射率を確保する必要がある。従っ
て、斜入射を考慮に入れると、多層膜の層数が数倍に多
くなってしまうという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
技術においては、反射型液晶表示装置として、可視光波
長域の広い波長帯で干渉反射の条件を充たすことが困難
な事、そして、全ての入射光が干渉反射をおこすという
事ではなく、一部の光が透過してしまい、より明るい反
射型表示装置を実現する上で問題があり、また、照射率
の精密なコントロールが困難で、充分な干渉反射光の強
度が得られず、均一で明るい反射型の表示装置の実現に
は問題があった。
【0011】本発明は上述の課題を解決するためになさ
れたもので、反射光強度の高い均一で明るい表示装置、
更には背景が白色で黒色表示となるモノクロ表示、また
はコントラストの高いカラー表示が可能なより見易い表
示装置を実現可能な表示装置を提供する事を目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1によれば、フィ
ルムと液晶層とが交互に積層された複合多層膜を備え、
前記複合多層膜に電圧を印加して前記複合多層膜におけ
る光反射率を制御する表示装置であって、前記複合多層
膜の前記フィルムと液晶層のうちの少なくとも隣り合う
一組のフィルムと液晶層との間において、前記液晶層に
使用される液晶の所定の波長(λn)の光に対する長軸
方向の屈折率nLC1(λn)および短軸方向の屈折率nL
C2(λn)と、前記フィルムの前記所定の波長(λn)
の光に対するフィルム面内の互いに直交するX軸方向と
Y軸方向のそれぞれの屈折率nF1(λn)およびnF2
(λn)とを、下記[1]および[2]の条件 [1] nLC1(λn)≧nF1(λn)またはnLC1
(λn)≒nF1(λn)、 [2] nLC2(λn)≒nF2(λn)であって、nLC
1(λn)>nLC2(λn)、nF1(λn)>nF2(λ
n) を満たすようにし、前記表示装置の表示領域中心部にお
ける前記液晶層の厚みdLCCと前記フィルム層の厚みdF
Cとを、下記[3]及び[4]の条件 [3] nF1(λn)・dFC≒(1/4+k/2)・λ
n、 [4] nLC2(λn)・dLCC≦(1/4+m/2)・
λnまたは nLC2(λn)・dLCC≒(1/4+m/
2)・λn (ここで、k、mは0または整数である。)の少なくと
も一方の条件を満たすようにし、前記表示装置の表示領
域周辺部における前記液晶層の厚みdLCHと前記フィル
ム層の厚みdFHとを、下記[5]ないし[6]の条件 [5] dLCC≦dLCH、 [6] dFC≦dFH を満たすようにしたことを特徴とする表示装置が提供さ
れる。
【0013】また、請求項2によれば、前記表示装置の
前記液晶層の厚みdLCHと前記フィルム層の厚みdFHと
を、前期表示装置の表示領域の中心位置からの距離に依
存して単調増加させたことを特徴とした請求項1に記載
の表示装置が提供される。
【0014】また、請求項3によれば、前記表示装置の
表示領域中心点から距離LHの点における前記液晶層の厚
みdLCHと前記フィルム層の厚みdFHとを、下記[7]
ないし[8]の条件 [7] dLCH≒dLCC/cos(θi) [8] dFH≒dFC/cos(θi) (ただしここで、θi=arctan(LH/LE)、LE
は定数とする。)を満たすようにしたことを特徴とする
請求項1に記載の表示装置が提供される。
【0015】また、請求項4によれば、前記液晶層に使
用される液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、少なくと
も前記フィルム近傍において前記フィルムに対しほぼ水
平方向かつ前記X軸方向に配向するようにし、前記複合
多層膜が電圧無印加時に光透過状態となり電圧印加時に
光反射状態となるようにしたことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれかに記載の表示装置が提供される。
【0016】また、請求項5によれば、前記nLC1(λ
n)、nLC2(λn)、nF1(λn)およびnF2(λ)
を、前記少なくとも隣り合う一組のフィルムと液晶層と
の間において、下記[9]および[10]の条件 [9] nLC1(λn)≒nF1(λn)、 [10] nLC2(λn)≒nF2(λn) を満たすようにしたことを特徴とする請求項4に記載の
表示装置が提供される。
【0017】また、請求項6によれば、前記液晶が電圧
無印加時に前記フィルムに対してプレチルト角をほとん
ど有さないで配向していることを特徴とする請求項4ま
たは5記載の表示装置が提供される。
【0018】また、請求項7によれば、前記液晶が電圧
無印加時に前記フィルムに対して所定のプレチルト角を
もって配向していることを特徴とする請求項4または5
に記載の表示装置が提供される。
【0019】また、請求項8によれば、前記nF1(λ
n)を、電圧無印加時における前記液晶層の前記所定の
波長(λn)の光に対する前記X軸方向の平均的な屈折
率とほぼ等しくし、且つ前記nF2(λn)を、電圧無印
加時における前記液晶層の前記所定の波長(λn)の光
に対する前記Y軸方向の平均的な屈折率とほぼ等しくし
たことを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の
表示装置が提供される。
【0020】また、請求項9によれば、前記液晶層に使
用される液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、少なくと
も前記液晶層の前記積層方向での中央部付近において、
前記フィルムに対しほぼ垂直方向に配向するようにし、
前記複合多層膜が電圧印加時に光透過状態となり電圧無
印加時に光反射状態となるようにしたことを特徴とする
請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置が提供され
る。
【0021】また、請求項10によれば、前記nLC1
(λn)、nLC2(λn)、nF1(λn)およびnF2
(λn)を、前記少なくとも隣り合う一組のフィルムと
液晶層との間において、下記[11]および[12]の
条件 [11] nLC1(λn)≒nF1(λn)、 [12] nLC2(λn)≒nF2(λn) を満たすようにしたことを特徴とする請求項9に記載の
表示装置が提供される。
【0022】また、請求項11によれば、前記液晶層に
使用される液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、前記フ
ィルム近傍において、前記フィルムに対してほぼ垂直方
向に配向していることを特徴とする請求項9または10
に記載の表示装置が提供される。
【0023】また、請求項12によれば、前記液晶層に
使用される液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、前記フ
ィルム近傍において、前記フィルムに対して垂直方向か
ら所定の角度傾いて配項していることを特徴とする請求
項 9または10に記載の表示装置が提供される。
【0024】また、請求項13によれば、前記nF1(λ
n)を、電圧印加時における前記液晶層の前記所定の波
長の光に対する前記X軸方向の平均的な屈折率とほぼ等
しくし、且つ前記nF2(λn)を、電圧無印加時におけ
る前記液晶層の前記所定の波長(λn)の光に対する前
記Y軸方向の平均的な屈折率とほぼ等しくしたことを特
徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の表示装置
が提供される。
【0025】また、請求項14によれば、フィルムと液
晶層とが交互に積層された複合多層膜を備え、前記複合
多層膜に電圧を印加して前記複合多層膜における光反射
率を制御する表示装置であって、前記複合多層膜の前記
フィルムと液晶層のうちの少なくとも隣り合う一組のフ
ィルムと液晶層との間において、前記液晶層に使用され
る液晶の所定の波長(λn)の光に対する長軸方向の屈
折率nLC1(λn)および短軸方向の屈折率nLC2(λ
n)と、前記フィルムの前記所定の波長(λn)の光に
対するフィルム面内の互いに直交するX軸方向とY軸方
向のそれぞれの屈折率nF1(λn)およびnF2(λn)
とを、下記[13]および[14]の条件 [13] nLC2(λn)≦nF1(λn)またはnF1
(λn)≒nLC2(λn)、 [14] nLC2(λn)≒nF2(λn)であって、n
LC1(λn)>nLC2(λn) を満たすようにし、前記表示装置の表示領域中心部にお
ける前記液晶層の厚みdLCCと前記フィルム層の厚みdF
Cとを、下記[15]及び[16]の条件 [15] nF1(λn)・dFC≒(1/4+k/2)・
λn、 [16] nLC1(λn)・dLCC≧(1/4+m/2)
・λn または nLC1(λn)・dLCC≒(1/4+m
/2)・λn (ここで、k、mは0または整数である。)の少なくと
も一方の条件を満たすようにし、前記表示装置の表示領
域周辺部における前記液晶層の厚みdLCHと前記フィル
ム層の厚みdFHとを、下記[17]ないし[18]の条
件 [17] dLCC≦dLCH、 [18] dFC≦dFH を満たすようにしたことを特徴とする表示装置が提供さ
れる。
【0026】また、請求項15によれば、前記表示装置
の前記液晶層の厚みdLCHと前記フィルム層の厚みdFH
とを、前期表示装置の表示領域の中心位置からの距離に
依存して単調増加させたことを特徴とした請求項14に
記載の表示装置が提供される。
【0027】また、請求項16によれば、前記表示装置
の表示領域中心点から距離LHの点における前記液晶層の
厚みdLCHと前記フィルム層の厚みdFHとを、下記[1
9]ないし[20]の条件 [19] dLCH≒dLCC/cos(θi) [20] dFH≒dFC/cos(θi) (ただしここで、θi=arctan(LH/LE)、LE
は定数とする。)を満たすようにしたことを特徴とする
請求項14に記載の表示装置が提供される。
【0028】また、請求項17によれば、前記液晶層に
使用される液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、少なく
とも前記フィルム近傍において前記フィルムに対しほぼ
水平方向かつ前記X軸方向に配向するようにし、前記複
合多層膜が電圧印加時に光透過状態となり電圧無印加時
に光反射状態となるようにしたことを特徴とする請求項
14乃至16のいずれかに記載の表示装置が提供され
る。
【0029】また、請求項18によれば、前記nLC1
(λn)、nLC2(λn)、nF1(λn)およびnF2
(λn)を、前記少なくとも隣り合う一組のフィルムと
液晶層との間において、下記[21]の条件 [21] nF1(λn)≒nLC2(λn)≒nF2(λ
n) であって、nLC1(λn)>nLC2(λn) を満たすようにしたことを特徴とする請求項17に記載
の表示装置が提供される。
【0030】また、請求項19によれば、前記液晶が電
圧無印加時に前記フィルムに対してプレチルト角をほと
んど有さないで配向していることを特徴とする請求項1
7または18に記載の表示装置が提供される。
【0031】また、請求項20によれば、前記液晶が電
圧無印加時に前記フィルムに対して所定のプレチルト角
をもって配向していることを特徴とする請求項17また
は18に記載の表示装置が提供される。
【0032】また、請求項21によれば、前記nF1(λ
n)を、電圧印加時における前記液晶層の前記所定の波
長の光に対する前記X軸方向の平均的な屈折率とほぼ等
しくしたことを特徴とする請求項17乃至20のいずれ
かに記載の表示装置が提供される。
【0033】また、請求項22によれば、前記nF2(λ
n)を、電圧印加時における前記液晶層の前記所定の波
長の光に対する前記X軸方向の平均的な屈折率とほぼ等
しくしたことを特徴とする請求項17乃至20のいずれ
かに記載の表示装置が提供される。
【0034】また、請求項23によれば、前記液晶層に
使用される液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、少なく
とも前記液晶層の前記積層方向での中央部付近におい
て、前記フィルムに対しほぼ垂直方向に配向するように
し、前記複合多層膜が電圧無印加時に光透過状態となり
電圧印加時に光反射状態となるようにしたことを特徴と
する請求項14に記載の表示装置が提供される。
【0035】また、請求項24によれば、前記nLC1
(λn)、nLC2(λn)、nF1(λn)およびnF2
(λn)を、前記少なくとも隣り合う一組のフィルムと
液晶層との間において、下記[27]の条件 [27] nF1(λn)≒nLC2(λn)≒nF2(λ
n) であって、nLC1(λn)>nLC2(λn) を満たすようにしたことを特徴とする請求項23に記載
の表示装置が提供される。
【0036】また、請求項25によれば、前記液晶層に
使用される液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、前記フ
ィルム近傍において前記フィルムに対してほぼ垂直方向
に配向していることを特徴とする請求項23または24
に記載の表示装置が提供される。
【0037】請求項26によれば、前記液晶層に使用さ
れる液晶分子の長軸が、電圧無印加時に、前記フィルム
近傍において、前記フィルムに対して垂直方向から所定
の角度傾いて配向していることを特徴とする請求項23
または24に記載の表示装置が提供される。
【0038】また、請求項27によれば、前記nF1(λ
0)を、電圧無印加時における前記液晶層の前記所定の
波長(λn)の光に対する前記X軸方向の平均的な屈折
率とほぼ等しくししたことを特徴とする請求項23また
は24のいずれかに記載の表示装置が提供される。
【0039】また、請求項28によれば、前記nF2(λ
n)を、電圧無印加時における前記液晶層の前記所定の
波長(λn)の光に対する前記Y軸方向の平均的な屈折
率とほぼ斉しくしたことを特徴とする請求項23または
24のいずれかに記載の表示装置が提供される。
【0040】また、請求項29によれば、前記複合多層
膜の複数のフィルムと複数の液晶層との間で請求項1乃
至28のいずれかの要件を満たすようにしたことを特徴
とする請求項1乃至28のいずれかに記載の表示装置が
提供される。
【0041】また、請求項30によれば、前記所定の波
長(λn)の光のP波およびS波に対して、請求項1乃
至28のいずれかの要件をそれぞれ満たす少なくとも2
つの前記複合多層膜を積層して設け、前記積層された複
合多層膜に電圧を印加して前記積層された複合多層膜の
光反射率を制御することを特徴とする表示装置が提供さ
れる。
【0042】また、請求項31によれば、複数の異なる
所定の波長(λn=λ1、λ2、λ3、・・・、λL)
に対して、請求項1ないし28のいずれかに記載の条件
をそれぞれ満たす複数の前記複合多層膜を積層して設
け、前記積層された複数の複合多層膜に電圧を印加して
前記積層された複数の複合多層膜の光反射率を制御する
ことを特徴とする表示装置が提供される。
【0043】また、請求項32によれば、複数の異なる
所定の波長(λn=λ1、λ2、λ3、・・・、λL)
の光のそれぞれのP波とS波に対して請求項1ないし2
8のいずれかに記載の条件をそれぞれ満たす複数の前記
複合多層膜を積層して設け、前記積層された複数の複合
多層膜に電圧を印加して前記積層された複数の複合多層
膜の光反射率を制御することを特徴とする表示装置が提
供される。
【0044】また、請求項33によれば、前記複合多層
膜における前記フィルムの層数と前記液晶層の層数との
合計層数または前記積層された複数の複合多層膜におけ
る前記フィルムの層数と前記液晶層の層数との合計層数
を100以上としたことを特徴とする請求項1乃至28
のいずれかに記載の表示装置が提供される。
【0045】また、請求項34によれば、前記複数の異
なる所定の波長(λn=λ1、λ2、λ3、・・・、λ
L)の光が、可視光であることを特徴とする請求項1乃
至28のいずれかに記載の表示装置が提供される。
【0046】また、本発明において、上記各請求項記載
の発明は、好ましくは、前記複合多層膜または前記積層
された複数の複合多層膜が一対の基板間に狭持される。
【0047】そして、好ましくは、前記一対の基板の一
方の外側に光散乱手段を配置し、前記一対の基板の他方
の外側に光吸収手段を具備する。
【0048】前記液晶層は、好ましくは、ネマチック液
晶、もしくはスメクチック液晶、もしくはネマチック液
晶型高分子液晶、もしくはスメクチック型高分子液晶、
もしくはそれらの混合物からなる。
【0049】また、前記液晶層はディスコティック液
晶、もしくはディスコティック液晶とネマチック液晶と
の混合物からなることも好ましい。
【0050】また、前記液晶層はネマチック液晶分子か
らなり、且つ該液晶分子の長軸は、電圧無印加時に前記
基板又は前記フィルムに対しほぼ水平方向に配列させて
なるようにすることができる。
【0051】また、前記液晶層はネマチック液晶分子か
らなり、且つ該液晶分子の長軸は、電圧無印加時に前記
基板又は前記フィルムに対しほぼ垂直方向に配列させて
なるようにしてもよい。
【0052】また、前記光吸収手段は、前記複合多層膜
を透過する任意の波長帯域もしくは可視光領域の波長帯
域の光を吸収するようにすることが好ましい。
【0053】また、前記積層された複数の複合多層膜を
一対の基板間に狭持する場合には、好ましくは、前記一
対の基板の内面または外面に電極をそれぞれ設け、前記
積層された複数の複合多層膜間の所定の部分に、少なく
とも片面、好ましくは両面に電極を有する中間層を一層
もしくは複数層介在させ、前記一対の基板の一方の外側
に光散乱手段、前記一対の基板の他方の外側に光吸収手
段を配置する。
【0054】また、好ましくは、前記各複合多層膜毎に
独立に電圧印加する電極を配置する。
【0055】また、好ましくは、前記液晶層はネマチッ
ク液晶分子からなり、前記表示装置は、該ネマチック液
晶分子の略長軸方向もしくは該長軸方向と略直交する方
向の偏光成分の光を反射するように設定された複合多層
膜を少なくとも含む。
【0056】また、好ましくは、前記フィルムは光学的
に略一軸性を持ったフィルム、又は延伸させたフィルム
である。
【0057】また、好ましくは、前記積層された複合多
層膜を2つのブロックに分割し、第1のブロックの液晶
層の液晶分子長軸方向と第2のブロックの液晶層の液晶
分子長軸方向とをほぼ直交させる。
【0058】この場合に、好ましくは、前記第1及び第
2のブロックに独立に電圧印加する電極を配置する。
【0059】また、好ましくは、前記フィルム面の少な
くとも一面に前記液晶層の材料を塗布し、前記液晶材料
が塗布されたフィルムを、複数層ローラーで重ね合わ
せ、一体化させて前記複合多層膜を形成する。
【0060】そして、好ましくは、前記ローラーで重ね
合わせる際に、定められた温度に加熱して、前記液晶層
の粘度を下げた状態で、一体化させる。
【0061】また、前記フィルムに予め一軸延伸処理を
施し、液晶分子を配向させる配向機能持たせておくこと
も好ましい。
【0062】また、前記フィルム面上に前記液晶層の材
料を塗布し、前記液晶材料が塗布されたフィルムを、複
数層ローラーで重ね合わせ、一体化させた後、更に圧延
ローラーで延伸処理を施し、フィルムの厚みと液晶層の
厚みを、所定の値に合わせ込むことにより前記複合多層
膜を形成することも好ましい。
【0063】また、前記フィルムに導電性を付与させて
もよい。
【0064】また、前記複合多層膜は、前記液晶層と前
記フィルムを少なくとも10層以上積層して構成するこ
とが望ましい。
【0065】さらに好ましくは、前記複合多層膜は、前
記液晶層と前記フィルムを少なくとも21層以上積層し
て構成する。
【0066】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を添付の
図面を参照して説明する。
【0067】(第1の実施の形態)図1は、本発明に係
わる表示装置の基本構造及びその基本原理を示す図、す
なわち、反射/透過を制御する光変調素子の基本構造を
示す図である。1及び2は、透明プラスチック板、もし
くは透明プラスチックフィルム、もしくは透明ガラス板
からなる上、下基板、3および4は、該上、下基板1、
2上にそれぞれ形成された透明電極層で、酸化インジウ
ム、酸化スズ、またはそれらの混合物からなる。8、
9、10、11は液晶層5、6、7はプラスチックフィ
ルム(以下、単にフィルムと呼ぶ)で、該液晶層8、
9、10、11と該フィルム5、6、7は交互に重なり
合って複合多層膜18を構成している。液晶層8、9、
10、11およびフィルム5、6、7は後述するよう
に、表示装置の中心領域Cから周辺領域Aに向かって厚
さが除々に厚くなるように作製されていて、図(1)に
於いて、左右対称である。12は上下の基板1、2を接
着固定する周辺シール部で、以上より本発明の表示装置
は基本的に構成されている。本実施例の構成に於いて
は、液晶層8、9、10、11は誘電異方性が正のネマ
チック液晶を用い、その液晶分子長軸はフィルム5、
6、7の面にほぼ水平に配向させてある。
【0068】図1の13の領域は、上下の電極3、4間
に電圧が印加されていない領域(詳しくは液晶のしきい
値電圧以下の電圧印加状態の領域を示すと考えてもよ
い。以下、各実施の形態および各実施例に於ける電圧無
印加の状態とは同様の状態であると考えてもよい。)の
状態を示す。ここでは、液晶分子はフィルム面に対し、
ほぼ水平に配向した状態であり、液晶層の液晶分子長軸
方向の屈折率はnLC1である。図1の14の領域は、上
下の電極3、4間に電圧の印加されている領域(詳しく
は液晶の飽和電圧の印加状態の領域を示す。以下、各実
施の形態および各実施例に於ける電圧印加の状態とは同
様の状態であると考えてもよい。)の状態を示す図であ
る。ここでは液晶分子はフィルム面に対し略垂直に配向
した状態で、液晶層の屈折率は液晶分子短軸方向の屈折
率nLC2である。ネマチック液晶の一般的性質により、
電圧印加の有無により液晶層の屈折率は変化し、 nLC1>nLC2 ・・・(1) である。そこで、 nLC2=nF (nF はフィルムの屈折率) ・・・ (2) (2)式を充たすような液晶材料及びフィルム材を選定
し、上記液晶層8、9、10、11およびフィルム5、
6、7に使用すると図1に示すように電圧印加領域14
では、上記液晶層とフィルムとの境界では屈折率差がな
く、入射光16はそのまま透過する。
【0069】実際には、上述した様に、液晶分子は上記
液晶層の層内全てで、フィルム面に対して垂直に配列す
る事はなく、フィルム面に近接した液晶分子はフィルム
面に水平な方向成分を持つ配向を取る。従って、この時
の各液晶層の平均的な屈折率はnLC2とはならず、それ
よりも大きな屈折率《nLC2》(《nLC2》>nLC2)と
なる。この場合にはフィルムの屈折率nFを《nLC2》と
した場合、すなわち、 《nLC2》=nF ・・・(2)’ の場合に入射光16を最も強く透過する。
【0070】更に好ましくは、フィルムには若干の複屈
折性(X軸方向の屈折率をnF1、Y軸方向の屈折率をnF
2とする。なおここでX軸方向とはフィルムに隣接する
上記液晶分子の長軸方向であり、Y軸方向とは同短軸方
向である。)を持たせ、 《nLC2》=nF1 ・・・(2)’’ nLC2=nF2・・・(2)’’’ とすれば、入射光は、表面、裏面による反射損失を除き
殆ど透過する。この条件下では、入射角度には関係なく
全ての入射角度で一様に透過する事となる。
【0071】次に、電圧無印加領域13に於いては、文
献1(応用光学11、鶴田匡夫著、4ー3ー3(II)参
照)に示すような光学条件を充たしている。
【0072】先ず、表示装置の中心部C点では、垂直入
射光に対して、 nLC1・dLCC=(1/4+m/2)・λ0 (dLCCはC点での液晶層8、9 、10、11の厚み、λ0 は、入射光15、15’、16の波長、mは0又は 任意の整数)・・・(3) nF・dFC=(1/4+k/2)・λ0 (dFCはC点でのフィルム5、6、 7の表示装置の厚み、kは0又は任意の整数)・・・(4) を充たすように液晶層8、9、10、11の厚みと、フ
ィルム5、6、7の厚みを設定すれば、図1に示すよう
に、波長λ0の垂直入射光15を最も強く干渉反射す
る。
【0073】一方、周辺領域に於いては中心点Cより
も、液晶層8、9、10、11とフィルム5、6、7の
厚みが厚く設定されている。中心点CからLH離れた点
Hでは、 dLCH(θi)=dLCC/cos(θi)(dLCH(θi) はH点での液晶層 8、9、10、11の厚み、θi=arctan(LH/LE)・・・(5) dFH(θi)=dFC/cos(θi)(dFH(θi)はフィルム5、6、7 のH点での厚み、LEは定数)・・・(6) を充たすように液晶層8、9、10、11の厚みと、フ
ィルム5、6、7の厚みを設定すれば、図1に示すよう
に、H点に於いても波長λ0の斜入射光15’を最も強
く干渉反射する事となる。
【0074】LEは予め仮定された、目と液晶との間の
距離であって、液晶の画面の大きさと用途とから適当な
値に定めることが出来る。
【0075】図1に於いては、表示装置のある一方向の
断面図のみを示しているが、液晶層8、9、10、1
1、フィルム5、6、7の厚みは、任意の方向で、式
(5)、(6) を充たす事が必要である。
【0076】なお、ここまで厳密に式(5)、(6)を
充たす膜厚のフィルムを作製しなくても、おおよそ式
(5)、(6) に従って、表示装置中心領域から周辺
領域にかけて、液晶層8、9、10、11、フィルム
5、6、7の膜厚を単調に増加させた複合多層膜とする
事は、均一膜厚の複合多層膜と比較して、かなり良好な
表示が可能である。白色表示の場合でも、総膜層数を
削減する事が可能である。また、表示領域の縦横比が異
なる場合には、縦あるいは横方向のいずれか一方の長手
方向のみで(5)、(6)式を満たすように、液晶層
8、9、10、11、フィルム5、6、7の膜厚を設定
することも有効である。
【0077】反射光17、17’の強度は、上記液晶層
及びフィルムの枚数の多い程、言い換えれば上記複合多
層膜の層数の多い程、反射光の強度は増す。本実施の形
態の図面では、フィルムと液晶層との合計で7層しか描
かれていないが、好ましくは10層以上が良い。
【0078】以上の様に、正の誘電異方性を持つネマチ
ック液晶材料とフィルム材料とを(2)式、(2)’式
または(2)’’式および(2)’’’式を充たす様に
それぞれ選定し、(3)、(4)、(5)、(6)式を
充たす様に液晶層の厚みとフィルムの厚みとを合わせ込
み、上記液晶層とフィルムを交互に好ましくは10層以
上積み重ねれば、電圧印加時には入射光が透過し、電圧
無印加時には入射光が反射する光変調素子が出来、表示
装置として機能する事が判る。そして、上記表示装置で
は、光を吸収する偏光板を使用せず、光を有効に利用し
た明るい表示装置となる事も明らかである。更にフィル
ムと液晶層との境界面がフラットであるため、従来例1
に比べ、その干渉反射強度も明るさで優れている事も判
る。また斜入射にも対応していて、表示装置全領域で、
波長λ0の光の反射/透過を制御出来る事から、均一の
色表示を行う事が可能である。
【0079】上述した第1の実施の形態では、液晶層と
してネマチック液晶材料を用いたが、複屈折性を有し、
電界で液晶分子方向が変わり、それにより屈折率が変化
する条件を備えた材料ならば何でも良く、ネマチック液
晶の他、スメクチック液晶、カイラルスメクチック液
晶、ネマチック液晶分子又はスメクチック液晶分子をポ
リマー鎖に結合させた高分子液晶、更には上記液晶と高
分子液晶の混合物などの材料も液晶層として使用でき
る。
【0080】特に文献2(液晶、基礎編、岡野光治・小
林駿介共著、培風館、1.3参照)に示されるディスコ
ディック液晶を用いれば、光学的に負の一軸性を持った
複屈折性を有している事から、フィルム層に略水平に配
向させた時、入射光に対する屈折率が全ての偏光方向で
一様となり、より強い多層膜干渉反射が得られる。この
場合、上記ディスコティック液晶そのものだけを電界で
分子方向制御してもよいが、特にネマチック液晶とディ
スコティック液晶とを混合した液晶を用いれば、粘度も
下がり、より容易に電界に従って分子軸の向きを変える
事ができる。
【0081】尚、本実施の形態を反射型表示装置として
用いる場合、下基板2の外側に光吸収層を配置してもよ
く、電圧無印加領域で波長λ0光の表示、電圧印加領域
で透過光が吸収されて黒色表示となる。偏光板が不要で
コントラストの高い表示装置が実現できる。
【0082】また、図1においては、液晶分子が無印加
領域13において、一方向(紙面に水平な方向)のみに
配向させてあり、この時には、紙面に水平な偏光成分の
みが干渉反射され、その反射光強度は、入射光15、1
5’強度の50%以下に減ってしまい、暗い表示画面と
なる。従って、反射光強度を100%近くにして明るい
反射型表示を実現させるためには、図1に示す複合多層
膜を有する第1の液晶表示体に加え、第2の液晶表示体
を用意して、その第2の液晶表示体の電圧無印加時にお
ける液晶分子の長軸方向が第1の液晶表示体の同長軸方
向と直交するように、第1の液晶表示体に重ね合わせれ
ば、P偏光、S偏光とも干渉反射され、明るい反射型液
晶表示装置が実現できることは明らかである。本発明に
おける以下の実施例においては、説明を簡単にするため
に、直交する第2の液晶表示体を省略し、第1の液晶表
示体のみで説明しているが、実際には全て第2の液晶表
示体と重ね合わせて使用することを前提としている。
【0083】(第2の実施例)次に本発明に係わる表示
装置の第2の実施の形態を図3により説明する。31、
32は各々上、下基板であり互に対向する面上に透明電
極膜33、34をそれぞれ有する。23、24、25、
26は各々液晶層で、27、28、29は各々フィルム
で、各液晶層と各フィルムは図示する様に、交互に重な
り合った構造をとり、全体として複合多層膜30を形成
している。35はエポキシ樹脂等からなり上下基板を固
着する周辺シール部である。本実施の形態では、誘電異
方性が正のネマチック液晶材料を上記液晶層23、2
4、25、26に使用し、各フィルム層に対してほぼ水
平配向をさせている。液晶層23、24、25、26お
よびフィルム27、28、29は後述するように、表示
装置の中心領域Cから周辺領域に向かって厚さが除々に
厚くなるように作製されていて、図3に於いては、左右
対称である。
【0084】上記ネマチック液晶材料の複屈折率をnLC
1’(液晶分子の長軸方向)、nLC2’(液晶分子の短軸
方向)とし、nLC1’>nLc2’となるように設定する。
一方、フィルム27、28、29は一軸性の複屈折性を
有するフィルムであり、その屈折率はX軸方向の屈折率
をnF1'、Y軸方向の屈折率をnF2'とし、nF1’>nF2’
となるように設定する。一般的にフィルムを延伸処理し
た場合、多くのフィルム材は延伸方向の光軸屈折率が大
きく、延伸方向と直交する方向の光軸屈折率が小さくな
る一軸性の複屈折率性を示す事が知られている。この場
合、延伸方向が上記X軸であり、該X軸と直交する方向
がY軸となる。そして、上記ネマチック液晶分子は各フ
ィルム27、28、29の各面に対し水平にかつその分
子長軸方向を上記フィルムのX軸方向に配列させてあ
る。
【0085】さらに本実施の形態では、電圧無印加領域
40で波長λ0の入射光36が透過するように条件を設
定してある。すなわち、波長λ0に対して、 nLC1’=nF1’・・・(7) nLC2’=nF2’・・・(7)’ を充たす様に、まず液晶材料、及びフィルム材料を選定
する。
【0086】次に電圧印加部で波長λ0の入射光37が
もっとも強く干渉反射を起こすように文献1に従って、
膜厚を設定している。
【0087】すなわち、表示装置の中心部C点では、垂
直入射光に対して、 nLC2’・dLC’=(1/4+m/2)・λ0・・・(8) nF1’・dFc’=(1/4+k/2)・λ0 ・・・(8)’ (ここで、dLCC’とdFC’ はそれぞれ、液晶層23、
24、25、26及びフィルム27、28、29のC点
での厚み、k、mは0又は任意の整数)の条件を充たす
ように設定されている。
【0088】一方、周辺領域に於いては中心点Cより
も、液晶層23、24、25、26及びフィルム27、
28、29のC点での厚みが厚く設定されている。中心
点CからLH離れた点Hでは、 dLCH’=dLCC’/cos(θi) ・・・(9) dFH’=dFC’/cos(θi) ・・・(9)’ (dLH’ は液晶層23、24、25、26のH点での
厚み、θi=arctan(LH/LE)、dFH/’はフ
ィルム27、28、29のH点での厚み)を充たす。
【0089】このように各液晶層の厚み(dLc’)と各
フィルムの厚み(dF’)を設定すれば、電圧無印加領
域40では波長λ0の入射光36は透過し、電圧印加領
域39では波長λ0の入射光37、37’は反射し、反
射光38、38’となる。従って、入射光の角度にかか
わらず、全ての反射角度で良好な反射が得られる。
【0090】なお、ここまで厳密に式(8)、
(8)’、(9)、(9)’を充たす膜厚のフィルムを
作製しなくても、おおよそこれらの式に従って、表示装
置中心領域から周辺領域にかけて、液晶層23、24、
25、26、フィルム27、28、29の膜厚を単調に
増加させた複合多層膜とする事は、均一膜厚の複合多層
膜と比較して、かなり良好な表示が可能である。白色表
示の場合でも、総膜層数を 削減する事が可能である。
また、表示領域の縦横比が異なる場合には、縦あるいは
横方向のいずれか一方の長手方向のみで(8)、
(8)’、(9)、(9)’式を満たすように、液晶
層、フィルムの膜厚を設定することも有効である。
【0091】前述した様に、本実施の形態に於いても反
射光強度を上げて、明るい表示装置を得るためには、複
合多層膜30の液晶層及びフィルムの層数を少なくとも
10層以上にする事が好ましい。以上の様に、本実施の
形態では電圧印加時に入射光を反射し、電圧無印加時に
入射光を透過する表示装置で、第1の実施の形態とは、
逆転したパターン表示が可能となる。
【0092】尚、本実施例の形態を反射型表示装置とし
て用いる場合、下基板32の外側に光吸収層を配置して
もよく、電圧無印加領域は透過光が吸収されて黒色表示
となり、電圧印加領域では波長λ0光の表示となる、偏
光板が不要でコントラストの高い表示装置が実現でき
る。
【0093】(第3の実施の形態)図2は本発明の第3
の実施の形態で、41、42はそれぞれ上、下基板、4
3、44はそれぞれ該上、下基板41、42の互いに対
向する面上にそれぞれ形成された透明電極、45はエポ
キシ樹脂等からなり上下基板を固着する周辺シール部で
ある。46、47、48、49は液晶層で、フィルム5
0、51、52とそれぞれ交互に積層され、複合多層膜
57を形成している。本実施の形態に於いては、液晶層
46、47、48、49にはネマチック液晶材料を用
い、該ネマチック液晶材の分子配向は、電圧無印加時に
於いて、上、下基板41、42、及びフィルム50、5
1、52の各面に対して液晶分子の長軸を略垂直(ホメ
オトロピック配列)に配向させておく。そして、上記ネ
マチック液晶として誘電異方性が負の液晶材を選択すれ
ば、上記上下電極43、44間にほぼ飽和電圧が印加さ
れた電圧印加領域54では、上記液晶分子は上、下基板
41、42及びフィルム50、51、52の各面にほぼ
水平に配向する。上記ネマチック液晶材のその分子長軸
方向の屈折率をnLC1’’、その分子短軸方向の屈折率
をnLC2’’(nLC1’’>nLC2’’)となるように設
定し、入射光55、56、56’の波長λ0に対して、 nLC2’’=nF1’’=nF2’’(nF1’’、nF2’’はそれぞれフィルム 50、51、52のX軸及びY軸方向の屈折率)・・・(10) (10)式を充たすように上記液晶層46、47、4
8、49と上記フィルム50、51、52の材料を選択
すれば、電圧無印加領域(詳しくは液晶のしきい値電圧
以下の電圧印加状態の領域)53に於いては、上記フィ
ルムと液晶層の境界面に於いては屈折率の差が殆どな
く、波長λ0の入射光55はほぼ透過する。
【0094】ここでも前述したように入射光55に対す
る液晶層46、47、48、49の各層の層内にわたる
平均屈折率≪nLC2’’≫とフィルムの屈折率とを一致
させる事が、最も強い透過光を得るために有効である。
【0095】更に入射光波長λ0に対して、表示装置の
中心部C点では、垂直入射光56に対して、 nLC1’’・dLC’’=(1/4+m/2)・λ0・・・(11) nF1’’・dFc’’=(1/4+k/2)・λ0 ・・・(11)’ (ここで、dLCC’’とdFC’’ はそれぞれ、液晶層4
6、47、48、49及びフィルム50、51、52の
C点での厚み、k、mは0又は任意の整数)の条件を充
たすように設定されている。
【0096】一方、周辺領域に於いては中心点Cより
も、液晶層46、47、48、49及びフィルム50、
51、52の厚みが厚く設定されている。中心点Cから
LH離れた点Hでは、 dLCH’’=dLCC’’/cos(θi) ・・・(12) dFH’’=dFC’’/cos(θi) ・・・(12)’ (dLH’ ’は液晶層46、47、48、49のH点で
の厚み、θi=arctan(LH/LE)、dFH/’’
はフィルム50、51、52のH点での厚み)を充たす
ように設定されており、このような設定では、液晶層
厚、フィルム層厚を設定すれば、電圧印加領域54にて
波長λ0の入射光56、56’は、複合多層膜57によ
り強く干渉反射される。以上の様に、電圧印加の有無に
より、入射光の反射/透過のスイッチングが可能とな
り、垂直入射光、斜入射光とにかかわらず、均一な反射
光強度となって、良好な表示装置として機能する事が判
る。
【0097】尚、本実施の形態を反射型表示装置として
用いる場合、下基板42の外側に光吸収層を設けてもよ
い。そうすると、電圧無印加領域では透過光が吸収され
て黒色表示となり、電圧印加領域では波長λ0の光の表
示となり、偏光板が不要でコントラストの高い表示装置
を実現できる。
【0098】以上、3つの実施の形態を示したが、表示
装置としては干渉反射波長(λ0)の波長領域を広げた
明るい表示装置が望ましい。
【0099】最も望ましい白色反射光を得るためには、
赤、緑、青色等各色の波長域で、前記干渉反射条件を充
たす各複合多層膜を用意し、それらを重ね合わせた多層
複合多層膜を使用すれば良い。電圧印加領域では、表示
領域中心部と周辺部とでは、同一の波長の入射光に対し
て反射条件を満たすから、予め設定した赤、緑、青色等
各色波長域で良好なカラー表示が得られる。又、前記液
晶層、フィルムの各々厚みを連続的に変え、好ましくは
100層以上とした複号多層膜を使用しても、明るい表
示装置の実現は可能となる。更に、上記実施の形態に用
いたネマチック液晶の変わりに、特にディスコティック
液晶を用いれば、フィルムにほぼ水平に配向した状態
で、ほぼ均一な光の屈折率(入射光の各偏光に対して屈
折率がほぼ均一)をもつため、より光反射率が高く明る
い表示装置となる。又、前述した(2)、(2)’、
(7)、(7)’、(10)式では波長λ0に対して、
液晶層の一方の屈折率とフィルムの屈折率とを一致さ
せ、入射光が透過するようにさせたが、可視光波長域で
全て上述した各式を充たす様な屈折率を実現する事が好
ましいが、そのためには、フィルム材料の屈折率の波長
分散と液晶材料の屈折率の波長分散とをできるだけ合わ
せる事も、各材料の選定にあたっては重要である。しか
し、一般的には液晶とフィルムの波長分散を一致させる
事は困難で、その場合、フィルム材を固定し、干渉反射
波長毎に(2)、(2)’、(7)、(7)’、(1
0)式を充たす様に液晶材の屈折率を成分調合比により
調整する方法が現実的である。
【0100】(第4の実施の形態)次に、本発明に係わ
る明るい反射型表示装置の第4の実施の形態を図4を用
いて説明する。148、149、150、151は液晶
層、145、146、147はフィルム層で、それらは
交互に重なり合って複合多層膜159を形成している。
上記液晶層148、149、150、151とフィルム
145、146、147の各層の屈折率と厚みは前述し
た第1の実施の形態に示した様に、式(1)、(2)、
(2)’、(3)、(4)、(5)、(6)をほぼ充た
す様に設定された複合多層膜159である。152は上
基板142の上部に形成された光吸収層又は光吸収板か
らなる光吸収部である。153は下基板141の下部に
形成された光吸収層又は光吸収板からなる光吸収部であ
る。本実施の形態の動作は、まず電圧無印加領域154
に入射した光156、156’は第1の実施の形態に示
した様に干渉反射され、該反射光は光散乱部152で散
乱光158、158’となり、外部に放出される。従っ
て鏡面のような反射光ではなく、紙面による反射光のよ
うな見易い散乱反射光となる。一方、電圧印加領域15
5では、入射した光157は前述の第1の実施の形態に
示した様に、そのまま透過し、光吸収部153迄到達し
て吸収される。従って、電圧印加領域155では光吸収
部153の色が観察される。式(5)、(6)の条件を
満足するため、垂直入射光と斜入射光とにかかわらず、
良好な表示が得られる。
【0101】本実施の形態では、各液晶層148、14
9、150、151の厚みは全て等しく、更に各フィル
ム145、146、147の厚みも全て等しく設定して
あるため、限られた波長λ0の光でしか透過/反射の電
圧制御が出来なかったが、可視光波長域全ての波長域
で、上記干渉反射条件を充たすためには、上記広い可視
光波長域を構成する個々の狭い波長域(λ0、λ1、λ
2、・・・、λn)毎に、各々干渉反射条件を充たすよ
う上記した実施の形態の複合多層膜を設け、干渉反射す
る波長の異なるn個の複合多層膜を積層して、各液晶層
とフィルムの厚みの組み合わせを光の進行方向に沿って
変え、トータルの総数を増やせば良い。つまり、前述し
た様に、赤、緑、青色等の各色の波長域で、前記干渉反
射条件を充たす各複合多層膜を用意して、それらを重ね
合わせた多重複合多層膜を複合多層膜159として使用
すれば、白色背景に黒表示を表示する(又は黒色背景に
白表示をすること)事も可能である。この場合、勿論、
光吸収部153は黒色にしておく事が必要である。
【0102】以上第4の実施の形態によれば、可視光の
各波長域に対応した干渉反射の条件を充たす複数の複合
多層膜により、従来例のように偏光板による光吸収がな
く、又、従来例1、2と違い液晶層とフィルム層の境界
面はフラットのため、干渉反射強度の高い、明るい白/
黒表示外観をもった反射型表示装置が提供できる。更に
上述した干渉ピッチの異なる複数の複合多層膜を重ねた
多重複合多層膜も、前述した方法により、容易に得られ
る。
【0103】(第5の実施例)図5は、第5の実施の形
態で、白色の背景地上に黒、赤、青等、多数の色の文
字、図形等を表示させる例である。
【0104】61、62は内面に透明電極を有する上、
下基板、63は前述した様に液晶層とフィルム層とを交
互に積み重ねた複合多層膜であり、第4の実施の形態に
て説明したように、液晶層及びフィルムの厚みの組み合
わせは複合多層膜63の上下方向で異ならせ、可視光領
域全体の波長光に対して干渉反射条件を充たす様に設定
されている。また、複合多層膜63は第1の実施の形態
で述べた式(1)、(2)、(2)’、(3)、
(4)、(5)、(6)をほぼ満たす。図5に於いて
は、紙面の制約から液晶層とフィルム層とを合せて7層
しか描かれていないが、可視光波長領域全てで充分な干
渉反射を行うためには、可視光領域内の複数の波長を干
渉反射する複合多層膜を反射すべき波長毎に設け、これ
を積層することになるので、液晶層とフィルム層とを合
わせた全層数を少なくとも100層以上とすることが好
ましい。64、65、66は光吸収部でそれぞれ黒、
赤、緑色の色違いの光吸収層又は光吸収板からなる。6
4、65、66を黒、赤、緑色のフィルタとし、その下
に光反射層68を形成してもよい。67は光散乱部であ
る。本実施の形態では、電圧無印加領域に於いては、上
記複合多層膜63は可視光波長域の光を干渉反射し、ほ
ぼ白色Wを呈する。一方、電圧印加領域に於いては、入
射光はそのまま透過し、下部に配された異なった色調を
もつ光吸収部(フィルタ部)64、65、66で吸収さ
れ、このフィルタ部を透過し、反射層68により反射さ
れた波長帯域が、異なった色の表示として現れる(図中
では赤色光と緑色光が反射されている)。なお、黒の光
吸収部64は多層膜層を透過した光を吸収するため、こ
の部分に於いては電圧印加時には黒表示となる。従って
同一表示面上で白色地の背景は、黒色、赤色、緑色等を
表示し図形/文字表現する事が可能である。更に前記光
吸収部64、65、66を画素毎に赤、青、緑の光吸収
部に置き換えれば、フルカラーの反射型表示装置にもな
る事は明白である。
【0105】尚、光吸収部を赤、青、緑のカラーフィル
タとして下基板の内面に配置しても構わない。この場
合、反射層は下基板62の電極を反射電極としてもよ
く、また反射層を下基板の外側に配置しても構わない。
【0106】(第6の実施の形態)図6は、本発明の第
6の実施の形態で、71、72は内面に透明電極を有す
る上、下基板、74は光吸収部、73は光散乱部であ
る。80、81は、それぞれ液晶層とフィルム層とが交
互に積層してなる複合多層膜で、前述した様に、電圧無
印加時に於いて所望の波長域で干渉反射条件を充たす様
に、各層の反射率及び膜厚が設定されている。77はフ
ィルム層で、上記複合多層膜80、81を構成するフィ
ルムと同じ材質、厚みでも、違う材質、厚みでも構わな
い。上記フィルム層77の上、下面にはそれぞれ透明電
極層78、79が形成されている。これにより、上下2
つの複合多層膜80と81とを別々に電圧印加出来るた
め、駆動電圧が約半分に低減できる。上述した例では、
透明電極層を有するフィルム層77を中間部に1層挟ん
だが、複数層挟めば、更に駆動電圧が低減でき、耐圧の
低い半導体ICドライバーによる表示駆動も可能となる
事は明らかである。図中、電極75と78に接続された
構成、電極76と79に接続された構成は駆動回路を示
す(後述の実施の形態でも同様)。この2つの駆動回路
は2つの複合多層膜を別々に駆動してもよい。別々に駆
動すれば、反射強度が2段階に制御できる。また、別々
に駆動される複合多層膜をより多く設けてもよく、この
場合には反射強度がより多レベルとなり階調表示が可能
となる。本実施の形態のように、複合多層膜の間に電極
を有する中間フィルムを介在する構成は、前述の全ての
実施の形態と組み合わせることができる。
【0107】このように、本発明では、フィルム層を表
示機能材の一つとして用いるため、容易に中間部に電極
層が挿入でき、低電圧制御が可能となるとともに、以下
の実施の形態に示すように、反射型カラー表示装置も容
易に実現できる。
【0108】(第7の実施の形態)図7は、本発明によ
る第7の実施の形態で、明るい反射型カラー表示装置の
具体例である。91、92は上、下基板で互に対向する
面上に透明電極膜108、109をそれぞれ有してい
る。93は黒色の光吸収部、94は光散乱部である。
【0109】95は複合多層膜で、前述した様に液晶層
とフィルム層との複合多層膜からなる。又、該液晶層及
び該フィルム層の各々の屈折率と膜厚は、前述した方法
に従い、電圧無印加時に赤色光を選択的に干渉反射し、
電圧印加時には透過するように設定されている。図7に
於いては、該複合多層膜95は3層構造のものとして図
示されているが、実際は、10層以上の複合多層膜95
が良好な干渉反射を得るために好ましい。同様に、複合
多層膜96、97は各々緑色、青色を電圧無印加時に選
択的に干渉反射するように、そして電圧印加時には透過
するように、各々の液晶層とフィルム層の屈折率及び膜
厚が設定されている。98、99は各々上下面に透明電
極100と101及び102と103を有する中間フィ
ルム基板である。本実施の形態においては、上述した通
り、赤色光選択反射層95、緑色光選択反射層96、青
色光選択反射層97の3つの複合多層膜からなる多重複
合多層膜を有し、中間フィルム基板98、99を各色の
複合多層膜間に挿入する事により、各々の複合多層膜9
5、96、97を独立して電圧を印加する事が可能にな
り、赤色、緑色、青色を自由に表示制御できる。図7に
示す様に、表示領域110では、赤色光選択反射層9
5、緑色光選択反射層96、は電圧が印加されていない
ため、それぞれ色光を干渉反射し、青色光選択反射層9
7には電圧が印加されていることにより、青色光はその
まま透過し、下部の黒色光吸収部93で吸収される。よ
って、赤色、緑色光が反射し、反射光106は黄色とな
る事を示している。一方、表示領域111では、赤色光
選択反射層95、緑色光選択反射層96は共に電圧印加
され、それぞれ、赤及び緑色光が透過し、黒色光吸収部
93で光吸収され、青色光選択反射層97では電圧無印
加で青色光が干渉反射される。よって表示領域111で
は青色を呈する。
【0110】上述した様に、本実施の形態に於いては、
赤色光を選択反射する赤色複合多層膜95、緑色光を選
択反射する緑色複合多層膜96、青色を選択反射する青
色複合多層膜97を各々積層し、各々の複合多層膜を挾
んで、透明電極層98、99を配するため、各色毎独立
に光透過率/反射率を制御できる。本実施の形態にて白
色表示する場合は、3つの複合多層膜95、96、97
を共に電圧印加しない場合であり、赤、青、緑色光が共
に反射して白色表示となる。また、黒色表示の場合は、
3つの複合反射膜95、96、97に電圧印加した状態
であり、この場合入射光は透過して光吸収部93に吸収
されて黒色表示となる。従って、白色地に黒は勿論、白
色地に赤、青、緑色又はそれらの混合色が自由に表現で
きる明るいフルカラー反射型表示装置が可能となる。上
述した例では、赤、緑、青色に対応した複合多層膜を用
いたが、勿論、色の組み合わせは、シアン、マゼンダ、
イエロー等自由に選択できる。
【0111】(第8の実施の形態)図8は本発明の第8
の実施の形態で、112、126は内面の透明電極を有
する上、下基板、113は黒色の光吸収部、114は光
散乱部、115は複合多層膜でネマチック液晶層123
とフィルム層124とが交互に積層された構造から構成
される。ここでは液晶層123は、電圧無印加時に於い
て、液晶分子の長軸方向を揃え、しかもフィルム層12
4の面にほぼ水平に分子軸が揃った(ホモジニヤス配
向)液晶層を使用している。上述した、液晶分子の長軸
を揃え、基板面に水平に配向させる方法としては、既存
の液晶表示装置の製造方法として一般的なポリイミド樹
脂とラビング工程の組み合わせでも、簡単に達成できる
が、本実施の形態では後述する様にフィルム層124を
延伸した膜にすれば、その面上の液晶分子は長軸を延伸
方向に揃えて並ぶ性質があり、特別な配向処理をしなく
とも、上記配向をもった液晶層を実現できる。上記ネマ
チック液晶層では、液晶分子の長軸方向と短軸方向とで
は屈折率が異なる。今、電圧無印加領域117に於い
て、液晶分子の長軸が紙面に平行に向くように配向させ
た場合、紙面に平行の入射偏光成分と、紙面に垂直の入
射偏光成分とでは、液晶層の屈折率が異なってくる。本
実施の形態では、液晶分子長軸方向の屈折率(nLC1)
とフィルムの屈折率(nF)とが一致する様に液晶材料
とフィルム材料を選定する。そのため、電圧無印加時に
おいては、入射光118のうち、紙面に平行な偏光成分
119は複合多層膜115を透過して下部の黒色吸収部
113にて吸収される。一方、紙面に垂直な偏光成分1
20に対しては、液晶層123の屈折率はnLC2(nLC1
>nLC2)となり、フィルム層の屈折率(nF)とは異
なる。ここで、フィルム層の厚み(dF)と液晶層との
厚み(dLC)を以下のように設定する。
【0112】入射光波長λ0に対して、表示装置の中心
部C点では、垂直入射光に対して、 nLC2・dLC=(1/4+m/2)・λ0・・・(13) nF・dFC=(1/4+k/2)・λ0 ・・・(13)’ (ここで、dLCは液晶層のC点での厚み、dFCはフィル
ムのC点での厚み、k、mは0又は任意の整数)の条件
を充たすように設定されている。
【0113】一方、周辺領域に於いては中心点Cより
も、液晶層及びフィルムの厚みが厚く設定されている。
中心点CからLH離れた点Hでは、 dLCH=dLC/cos(θi) ・・・(14) dFH=dFC/cos(θi) ・・・(14)’ (dLHは液晶層のH点での厚み、θi=arctan
(LH/LE)、dFHはフィルムのH点での厚み)を充た
す。
【0114】(13)、(13)’、(14)、(1
4)’式を充たす様に設定すれば、波長λ0の光に対す
る干渉反射の条件を充たし、反射光127として反射す
る。この図8では示されていないが、斜入射光に対して
も同様の高反射率が得られる。
【0115】一方、電圧印加領域116に於いては、液
晶層123の液晶分子はフィルム層124の面に対して
略垂直に配向し、入射光125から見た液晶層124の
屈折率は、全ての入射偏光面に対して(nLC3)とな
る。ネマチック液晶の一般的な性質から、 nLC3≒nLC2・・・(15) が成り立ち、上記(15)式に従い、波長λ0の入射光
125は全て透過することになる。
【0116】上述した干渉反射の条件は、波長λ0の光
に対して作用するが、前述した様に、液晶層厚とフィル
ム層厚の組み合わせを変えた複数の複合多層膜を重ねた
多重複合多層膜を複合多層膜115の代わりに用いれ
ば、可視光波長域全てをカバーする干渉反射波長巾の広
い白色背景の明るい表示装置が実現できる。
【0117】以上、8つの実施の形態により本発明を説
明してきたが、本発明に用いたフィルム材料は、略透明
で薄膜化できるフィルム材料ならば、何でも良い。例え
ば、ポリエチレンナフサレート樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリカーボネイト樹脂、セルロース系樹脂、ポリエ
ーテルサルホン系樹脂等、種々の屈折率を持った樹脂か
ら選択できる。液晶材料は、前述した様に、ネマチック
液晶、スメクチック液晶、さらにはこれらの液晶分子を
含む高分子液晶、さらにはこれらの液晶の混合物等、電
圧印加により液晶分子軸の方向が変えられ、それにより
液晶層の屈折率が変化すれば、何でも良いが、前述した
通り、特にディスコティック液晶は層面に平行に配向し
た状態で干渉反射能力が高く、より好ましい(ディスコ
ティック液晶と前述の液晶とを混合してもよい)。
【0118】更に、前述した9つの実施の形態に於いて
は、そこで用いた液晶層を構成する液晶分子は上、下基
板間の電圧印加の有無により、該分子長軸は水平/垂直
とほぼ90の軸方向の変位で説明した。液晶層の電圧印
加の有無による屈折率差の絶対値が大きい程、干渉反射
の能力は高く、複合多層膜の層数が少なくとも、その表
示性能は高い。しかし、実際には、液晶分子全体の電圧
印加有無による90の分子軸変位は理想的で、印加電圧
にもよるが、平均的に80あるいはそれ以下の変位のケ
ースの方が多いと推測される。しかし、本発明の主旨
は、前記複合多層膜を構成する液晶層の屈折率が電圧印
加によって変化すれば、分子軸変位が80あるいはそれ
以下であっても、複合多層膜の層数を増やす事により干
渉反射光強度を補えるため、各実施の形態に示した表示
性能が得られる事は明らかである。
【0119】また、表示駆動の電圧については、前述し
た様に、複合多層膜の中間部に電極を有する複数の基板
を挿入し、結果的に分割された複合多層膜にそれぞれ電
圧を印加すれば、より低い電圧で表示駆動させる事は可
能であるが、もう一つの方法として、フィルム層に多少
なりとも導電性を付与させる事が、より低い電圧での表
示駆動という目的を達成する上で有効な手段となる。フ
ィルム層に導電性を付与する方法としては、ポリアセチ
レン系、ポリパラフェニリン系といって導電性を持つプ
ラスチックを前記フィルムに混入させる事により、上記
効果を実現できる。
【0120】以上、本発明の構成について、種々の実施
の形態を挙げてきたが、各実施の形態において説明され
た内容は、他の実施の形態に於いて適宜組み合わせて実
施できる事は言うまでもない。
【0121】上述した8つの実施の形態に於ける複合多
層膜は、フィルム上に液晶層をコーティング塗布したも
のを複合多層膜の単位複合膜とし、それらを10層以上
ローラーなどで重ね合わせる事により、極めて容易に上
記複合多層膜を実現しうる。フィルムと液晶面の界面が
フラットなため、干渉反射強度の高い反射型液晶装置が
提供出来る。
【0122】液晶材料を塗布したフィルムをローラーな
どで積層する際、所望の膜厚を得るためには、貼り合わ
せ時のローラーの圧力の制御が重要である。液晶の膜厚
のコントロールには、液晶層の温度管理、又は液晶材料
と用材の混合系による粘度管理も有望である。特に、熱
源によって液晶の粘度に勾配を持たせる工夫も可能であ
る。フィルムは予め延伸して所望の膜厚分布を持たせた
ものを使用しても良いし、あるいは均一膜厚のものを利
用して、液晶層を塗布して複合多層膜の貼り合わせを行
った後に、ローラーなどで延伸して、所望の膜厚に成形
しても良い。ローラーの延伸方向は一定方向だけでな
く、複数方向に対して行う事が望ましい。
【0123】上記、フィルム層、液晶層の厚みの管理さ
れた複合多層膜は、膜単位で厚みを変化させる事も容易
で、広い波長域に於いて干渉反射条件を充たす事が可能
になり、任意の色、そして白色の背景色を持った明るい
反射型表示装置が容易に実現出来る。
【0124】又、上記複合多層膜が可視光波長域で干渉
反射条件を充たすためには、フィルム、液晶層の各膜厚
とも0.2μm以下の極めて薄い膜厚が要求されるが、
製造方法として、比較的厚い(1μm以上)フィルムを
用い、その上にロールコート法等により液晶材料をコー
ティング塗布した後、該液晶材料がコーティング塗布さ
れたフィルムを多層、ローラー等で重ね合わせ、比較的
厚い複合多層膜を形成した後に、該複合多層膜を圧延ロ
ーラーで多段回、延伸処理を施せば、極めて容易に所望
の厚みを有する複合多層膜が実現できるとともに、精密
な膜厚コントロールが可能になる。更にこの延伸処理
は、フィルム高分子ポリマーの分子軸方向を揃え、それ
がこのフィルムの上にコーティングされた液晶層の液晶
分子の配向方向を揃える効果もあり、液晶分子長軸の揃
った屈折率の均一な液晶層が得られるため、干渉反射光
の波長を、精密にそして容易に制御でき、均一で明るい
反射型表示装置が得られる。勿論、あらかじめ、フィル
ム上にポリイミド等の配向材を塗布そして乾燥し、従来
の液晶表示体製造で、一般的な回転ブラシラビング法に
よっても、液晶分子を所望の方向に均一に配向させる事
は可能である。
【0125】更に、上記複合多層膜の一方のベース材料
としてフィルムを用いているため、透明電極も容易にフ
ィルム上に形成でき、該複合多層膜の中間部に電極層を
持つフィルムを挿入すれば、より低電圧の駆動が可能に
なる。又、赤、緑、青色等の選択干渉反射を示す各複合
多層膜のブロックの上下に、それぞれ該電極層を持つフ
ィルムを挾み、上記各ブロックを重ねて一体化すれば、
各々独立に表示駆動ができ、反射型のフルカラー表示装
置が表現できる。
【0126】
【発明の効果】以上、説明した様に、本発明にかかわる
表示装置に於いては、偏光板を使わず、明るい表示装置
が可能となり、特に反射型表示装置として従来の液晶表
示装置では得られなかった明るい白/黒表示、更には、
明るい反射型カラー表示装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】【図1】本発明に係る表示装置の第1の実施の形態を説
明する図である。
【図2】本発明に係る表示装置の第3の実施の形態を説
明する図である。
【図3】本発明に係る表示装置の第2の実施の形態を説
明する図である。
【図4】本発明に係る表示装置の第4の実施の形態を説
明する図である。
【図5】本発明に係る表示装置の第5の実施の形態を説
明する図である。
【図6】本発明に係る表示装置の第6の実施の形態を説
明する図である。
【図7】本発明に係る表示装置の第7の実施の形態を説
明する図である。
【図8】本発明に係る表示装置の第8の実施の形態を説
明する図である。
【符号の説明】 1.上基板 2.下基板 5、6、7.プラシチックフィルム 8、9、10、11.液晶層 13.電圧無印加領域 14.電圧印加領域 15、16.入射光 17.干渉反射光 23、24、25、26.液晶層 27、28、29.プラシチックフィルム 31.上基板 32.下基板 36、37.入射光 38.干渉反射光 39.電圧印加領域 40.電圧無印加領域 41.上基板 42.下基板 46、47、48、49.液晶層 50、51、52.プラシチックフィルム 53.電圧無印加領域 54.電圧印加領域 55、56.入射光