【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アグロバクテリウ
ム法によるイネの形質転換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】イネの形質転換方法には、プロトプラス
トを介したエレクトロポレーション法やPEG 法が開発さ
れ、培養が容易なジャポニカイネで、用いられてきた。
しかしながら、この方法は、プロトプラストからの再分
化系が確立されている品種のみに、適用可能であり、培
養が困難なインディカイネへの適用例は少ない。
【0003】パーティクルガン法はプロトプラスト培養
系を必要としないため、広範な品種に適用できる新たな
形質転換方法として、多くの研究機関で、用いられるよ
うになってきている。一般的に、インディカイネ品種
は、培養が困難とされているが、なかでも、インディカ
イネの大部分を占め、GroupIと呼ばれる品種群(Glaszm
ann J. C. (1987) Isozymes and classification of As
ian rice varieties. Theor Appl. Genet. 74:21-30 )
は培養が困難とされている。しかしながら、Christouら
が報告したパーティクルガン法(Christou P., Ford,
T. L. and Kofron,M. (1992) The development of a va
riety-independent gene-transfer methodfor rice. TI
B TECH 10: 239-246)によるGroup I 品種の形質転換効
率は、未熟胚あたり2-3 %と低く、他の研究グループに
よる近年の報告においても、インディカイネでは、効率
の高い形質転換系は得られていない(Li L., Rongda,
Q.,Kochko, A., Fauquet, C. and Beachy, R. N. (199
3) An improved rice transformation system using th
e biolistic method. Plant Cell Report 12: 250-25
5)。
【0004】他方、アグロバクテリウム法は、双子葉植
物において、簡便かつ安定的な形質転換方法として、広
く用いられてきた。これに対し、これまで、イネ科など
の単子葉植物には、アグロバクテリウム法は適用できな
いと考えられてきた(Potrykus I., (1990) Gene trans
fer to cereals: an assessment Bio/technology 8:535
-542)。近年になって、単子葉植物であるイネにおい
て、形質転換が可能であることが明らかにされ(WO94/0
0977; WO95/06722; Hiei Y., Ohta, S., Komari,T. and
 Kumashiro, T. (1994) Efficient transformation of
rice (Oryza Sativa L.) mediated by transformation
by Agrobacterium and sequence analysis of the boun
daries of the T-DNA. The Plant Journal 6:271-282
 )、有用な形質転換方法として、今後の研究の進展が
期待されている。
【0005】一方、Ranc らは、インディカイネの完熟
種子から再分化能を有するカルスを誘導するのに有効な
NB培地を開示している(Iann M. Rance,I.M. et al.,
 Partial desiccation of mature embryo-derived call
i, a simple treatment thatdramatically enhcnaces t
he regeneration ability of indica rice, Plant Cell
 Reports (1994) 13:647-651)。しかしながら、NB培
地の形質転換細胞の選抜に対する効果については、調査
していない。パーティクルガン法では、Liらが、NBに類
似する培地(NAA, BA およびL-glutamine を含まない)
を用いて、ジャポニカイネにおける、効率の高い形質転
換を報告している(Li L. et al., (1993) An improved
 rice transformation system using the biolistic me
thod. Plant Cell Report 12: 250-255 )。しかしなが
ら、インディカイネについては、効率よく形質転換体を
得ることができなかったことを、報告している。また、
Liらは、この培地のアグロバクテリウム法への適用につ
いては、調査していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、プロ
トプラストを介する方法では、プロトプラストからの再
分化系が確立されていない品種には、適用ができないと
いう問題点がある。パーティクルガン法においても、こ
れまでに報告されている方法では、インディカイネのよ
うな培養困難な品種での形質転換効率は低い。
【0007】そこで、インディカイネの形質転換方法と
して、アグロバクテリウム法を適用することが考えられ
る。上記のように、アグロバクテリウム法でジャポニカ
イネを形質転換する方法は公知である。本願発明者ら
は、ジャポニカイネに適用される方法をインディカイネ
にも適用できないか検討した。
【0008】アグロバクテリウムによるイネの形質転換
方法には、WO94/00977およびHiei et al. (1994)で報
告されているように、脱分化組織を用いる方法が、まず
考えられる。そこで、Group I に分類される数種類のイ
ンディカイネを用いて、カルスへのアグロバクテリウム
による遺伝子導入を試みた。その結果、わずかながら、
形質転換体が得られることがわかった。しかしながら、
再現性を有する形質転換系を確立するには至らなかっ
た。カルスを用いて形質転換を行う場合、細胞分裂活性
が高く、再分化能を持つカルスを材料として用いる必要
がある。しかしながら、培養が困難なイネ品種では、遺
伝子導入に適した細胞分裂活性の高いカルスを誘導する
ことは、容易ではない。このため、カルスを供試組織と
した場合には、適用できる品種の幅が限られて、培養が
困難な品種では、容易に形質転換体を得ることはできな
いものと考えられた。
【0009】カルス以外の組織としては、未熟胚を材料
にする方法(WO95/06722)も適用可能であると考えられ
る。ところが、ジャポニカイネに対しては有効なWO95/0
6722に記載された方法をインディカイネにそのまま適用
すると、やはり、形質転換効率が低く、実用的な形質転
換系を確立することはできなかった。
【0010】従って、本発明の目的は、インディカイネ
を高効率で形質転換することができる方法を提供するこ
とである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、鋭意研
究の結果、WO95/06722に記載された、イネの未熟胚細胞
をアグロバクテリウム属細菌により形質転換する方法に
おいて、形質転換細胞の選抜工程において用いる培地と
して、上記Rance らのNB培地を基本とした培地を用い
ることにより、インディカイネにおいても高い形質転換
効率を達成することができることを見出し、本発明を完
成した。
【0012】すなわち、本発明は、インディカイネ未熟
胚細胞をアグロバクテリウム法により形質転換し、形質
転換された細胞を選抜する、イネの形質転換方法におい
て、形質転換された細胞を選抜する培地として、KNO3 2
000 〜4000 mg/l 、MgSO4 60〜200 mg/l、KH2PO4 200〜
600 mg/l、CaCl2 100 〜450 mg/l、(NH4)2・SO4 200〜60
0 mg/l、H3BO3 1 〜7 mg/l、MnSO4 2 〜20 mg/l 、EDTA
又はその塩20〜50mg/l、Fe 3〜8 mg/l、ミオイノシトー
ル50〜200 mg/l、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸0.5 〜10
 mg/l 、サイトカイニン類0.01〜5 mg/l及び糖類5000〜
80000 mg/l並びにゲル化剤を含み、pHが4.5 〜6.5 で
ある培地を用いることを特徴とする、インディカイネの
形質転換方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の形質転換方法に供される
細胞は、インディカイネの未熟胚細胞である。インディ
カイネとしては、特に限定されないが、従来技術におい
て形質転換が特に困難なGroup I (Glaszmann 、上掲)
に分類されるものに適用した場合に特に威力を発揮す
る。Group I のインディカイネに属する品種としては、
IR8、IR24、IR26、IR36、IR54、I
R64、IR72、新青矮1、南京11、水原258等
を挙げることができるがこれらに限定されるものではな
い。
【0014】本発明において、未熟胚とは、受粉後の登
熟過程にある未熟種子の胚を言う。また、本発明の方法
に供される未熟胚のステージ(熟期)は特に限定される
ものではなく、受粉後いかなる時期に採取されたもので
あってもよい。もっとも、受精後2日以降のものが好ま
しい。また、未熟胚はインブレッド、インブレッド間の
F1、インブレッドと自然受粉品種間のF1、市販F1
品種の未熟胚であることが好ましい。さらに、胚の中で
も胚盤細胞が好ましい。また、未熟胚は、アグロバクテ
リウム属細菌と接触させる前に脱分化処理を施す必要は
ない。ここで、脱分化処理とは、植物組織の分化した細
胞を脱分化培地において培養し、無秩序に増殖するカル
ス等の未分化状態の細胞塊を得るための処理である。
【0015】形質転換に用いられるアグロバクテリウム
属細菌は、Tiプラスミド又はRiプラスミドを持つ、
従来より双子葉植物の形質転換に用いられているものを
用いることができる。これらのものの多くはAgrobacter
iumtumefaciens 由来のTiプラスミドのヴィルレンス
領域(vir 領域)由来のDNA領域を含むベクターを有
しており、植物に付与しようとする形質を担う遺伝子は
このベクター中に挿入されるか、またはこのベクターと
は別のプラスミド中に存在し、相同組換え等によりTi
プラスミド中にinvivo で挿入されるものである。ま
た、小鞠らは、Agrobacteriumtumefaciens A281と
いう強病原性の、形質転換効率が極めて高い株(Hood,
E. E. et al., 1984; Biotech. 2:702-709、Hood, E.
E. et al.,1986; J. Bacteriol. 168:1283-1290 、Koma
ri, T. et al., 1986; J. Bacteriol. 166:88-94、Jin,
 S. et al., 1987; J. Bacteriol. 169:4417-4425 、Ko
mari, T., 1989; Plant Science 60:223-229、ATCC
37349)に含まれるTiプラスミドpTiBo542のヴィ
ルレンス領域(vir 領域)由来のDNA領域を含むベク
ターを開発した(特開平4−222527号)。本発明
では、Agrobacteriumtumefaciens A281中に含まれ
るTiプラスミドpTiBo542のヴィルレンス領域、アグロ
バクテリウム属細菌のTiプラスミドまたはRiプラス
ミドのT−DNAの左ボーダー及び右ボーダー配列、並
びにこれら左ボーダーと右ボーダーとの間に位置する所
望の遺伝子を有するベクターを「スーパーバイナリーベ
クター」と呼ぶ。本発明では、このようなスーパーバイ
ナリベクターを好ましく用いることができる。
【0016】このようなスーパーバイナリーベクターの
例としてpTOK162 (特開平4−222527号)を挙げ
ることができる。その構造を図1に示す。このプラスミ
ドは、大腸菌およびAgrobacteriumtumefaciens 中で増
殖可能であるpTOK154 と呼ばれるプラスミド(Tiプラ
スミドから誘導された公知のpGA472プラスミドとpVCK10
1 と呼ばれる公知の広宿主域プラスミドから後述の方法
により構築された、T領域を含むプラスミド)にpTiBo5
42のヴィルレンス領域由来の既にクローン化されていた
上記15.2キロベースのKpnI断片(virB, virG, VirC
各遺伝子を含む)を組み込んだものである。このpTOK15
4 には、T領域の2つの境界配列とその間にインディカ
イネに導入しようとする遺伝子としてカナマイシン耐性
遺伝子が配列されており、この例は、インディカイネに
導入しようとする遺伝子がpTiBo542のヴィルレンス領域
由来のクローン化されたDNA断片を含有するプラスミ
ド上に配置されている例である。また、pTOK162 とpGL2
-IG (WO95/06722) から誘導された、ハイグロマイシン
抵抗性遺伝子(hpt)およびヒマのイントロン付きGUS 遺
伝子を、pTOK162 のT-DNA 領域中に相同組換えにより組
み込んだpTOK233 (Hiei et al., 上掲)も好ましいスー
パーバイナリーベクターの1例である。pTOK233 の構造
を同じく図1に示す。
【0017】インディカイネに組み込もうとする所望の
遺伝子は、上記プラスミドのT−DNA領域中の制限酵
素部位に常法により組み込むことができ、プラスミドが
有する薬剤耐性等の適当な選択マ−カ−に基づいて選択
することができる。もっとも、図1に示すpTOK162 のよ
うに、大型で多数の制限部位を持つものは、通常のサブ
クローンニングの手法では所望のDNAをT領域内に導
入することが必ずしも容易でないことがある。このよう
な場合にはAgrobacteriumtumefaciens 細胞内のinviv
o 系での相同組換え(Herrera-Estrella, L. et al., 1
983; EMBO J. 2:987-995、Horsch, R. H. et al., 198
4; Science 223:496-498 )を利用することにより、目
的のDNAをpTOK162 に導入することが可能になる。す
なわち、例えば、先ず、pTOK162 をAgrobacteriumtume
faciens に導入しておいて、この菌をさらに所望DNA
を導入したpBR322と呼ばれるプラスミド(類似のプラス
ミドを含む)を導入する。pTOK162 のDNAにはpBR322
と相同な部分があるので、pBR322誘導体は相同配列を介
した組換えによりpTOK162 に組み込まれることになる。
pBR322はpTOK162 と異なりAgrobacteriumtumefaciens
中では複製できないので、このような組み込まれた状態
(pTOK162::pBR322 誘導体という)でなければAgrobact
eriumtumefaciens 中で生存することができない。そし
て、pTOK162 とpBR322誘導体の各々に特異的な特性(薬
剤耐性等)について選抜すれば、pTOK162::pBR322 誘導
体を有するAgrobacteriumtumefaciens を得ることがで
きる。さらに、pTOK162 を有するAgrobacteriumtumefa
ciens に各種のプラスミドを導入して研究したところ、
pBR322誘導体の選抜マ−カ−としては、トランスポゾン
Tn7(De Greve, H. H. et al., 1981; Plasmid 6:23
5-248 )由来のスペクチノマイシン耐性遺伝子(SP)
が優れていることが判明した。従って、すでに所望の遺
伝子がpBR322にクローン化されている場合には、SP遺
伝子をそのプラスミドに挿入すれば、Agrobacteriumtu
mefaciens 内の相同組換えにより、pTOK162のT領域に
所望の遺伝子を導入することができる。またその他の場
合には、pBR322由来のDNAとSP遺伝子から構成され
るプラスミドを用意しておいて、これに所望の遺伝子を
挿入する方法も考えられる。この際、T領域の境界配列
を活用すれば、最終的に、pTOK162 上において、カナマ
イシン耐性遺伝子と所望の遺伝子を別々のT領域中に配
置することも可能である。カナマイシン耐性をマ−カ−
として植物を形質転換した場合、両T領域とも導入され
る場合も相当の比率で生じるわけであるので、目的遺伝
子の導入は十分達成できる。また、両T領域が別々の染
色体に組み込まれる場合もあり得るので、後に目的の遺
伝子をカナマイシン耐性遺伝子から分離することも可能
となる。
【0018】寄主となるアグロバクテリウム属細菌とし
ては、特に限定されないが、Agrobacteriumtumefacien
s を好ましく用いることができる。プラスミドをAgroba
cteriumtumefaciens 等のアグロバクテリウム属細菌に
導入する操作は従来法により行うことができ、例えば、
細菌の三系交雑手法(Ditta, G. et al., 1980; Pro. N
atl. Acad.Sci. USA 77:7347-7351 )により行うことが
できる。
【0019】このようにして調製されるアグロバクテリ
ウム属細菌には、pTOK162 由来のヴィルレンス能力の高
いDNAが含まれるので、高い効率でインディカイネの
形質転換を行うことが可能である。
【0020】尚、本発明においては、インディカイネに
導入しようとする遺伝子は、従来の技術と同様にT領域
の境界配列の間に配置されるものであるが、アグロバク
テリウム属細菌中で、Tiプラスミド上に配置されても
よく、または他のプラスミド上に配置されてもよい。
【0021】アグロバクテリウム属細菌でインディカイ
ネの未熟胚を形質転換する方法は、未熟胚をアグロバク
テリウム属細菌と単に接触させることにより行うことが
できる。例えば、106 〜1011細胞/ml程度の細胞
濃度のアグロバクテリウム属細菌懸濁液を調製し、この
懸濁液中に未熟胚を3〜10分間程度浸漬後、固体培地
上で数日間共存培養することにより行うことができる。
形質転換に供する未熟胚は、2,4−D存在下での培養
等の脱分化処理を行う必要はない。
【0022】形質転換した未熟胚は、その後、脱分化状
態で形質転換細胞の選抜、増殖を行うことが好ましい。
選抜は、前記所望の遺伝子の発現及びマーカー(薬剤耐
性等)に基づいて行うことができる。脱分化状態の細胞
は、正常個体再生能力を有するカルスであることが好ま
しい。
【0023】本発明の方法では、形質転換細胞の選抜
を、上記の組成及びpHを有する培地上で行う。上記組
成におけるサイトカイニン類の好ましい例として6 −ベ
ンジルアミノプリンを挙げることができる。また、上記
組成における糖の好ましい例としてマルトース、ショ糖
及びグルコース並びにこれらの混合物を挙げることがで
きる。ゲル化剤としては、寒天、アガロース、ゲランガ
ム等を挙げることができる。これらは培地をゲル化させ
るためのものであり、その配合量はゲル化を行うのに適
当な量であれば特に限定されず、通常2〜10g/l程
度である。前記組成に加え、少なくともKI 0.5〜2 mg/
l、ZnSO4 0.7 〜5 mg/l、Na2MoO4 0.1 〜0.3 mg/l、CuS
O4 0.01〜0.02 mg/l 、CoCl2 0.01〜0.02 mg/l 、ニコ
チン酸0.25〜10 mg/l 、ピリドキシン0.25〜5 mg/l及び
チアミン0.05〜20 mg/l をさらに含む培地も好ましく用
いることができる。この組成に加え、少なくともカザミ
ノ酸100 〜3000 mg/l 、プロリン100 〜3000 mg/l 、グ
ルタミン100 〜3000 mg/l 及びα−ナフタレン酢酸0.01
〜5 mg/lをさらに含む培地も好ましく用いることができ
る。さらに、上記の各組成に加え、1000〜60000 mg/lの
糖アルコールをさらに含むものも好ましく用いることが
できる。ここで、糖アルコールの好ましい例としてマニ
トール及びソルビトールを挙げることができる。なお、
薬剤耐性により選抜を行う場合には上記の組成に加えて
当該薬剤を含むことは言うまでもない。なお、選抜は2
〜5回程度行うことが好ましい。この場合、一次選抜の
期間は2〜3週間程度が好ましく、2次選抜の期間は2
週間程度が好ましい。選抜を複数回行う場合、いずれの
選抜も上記培地上で行うが、成分の含量が上記範囲内で
異なる培地を異なる選抜工程で用いてもよい。
【0024】形質転換細胞からの植物体の再生は公知の
方法(Rance et al., 1994(上掲))により行うことが
できる。この場合、再分化培地にも選抜薬剤を加えるこ
とが好ましい。これにより所望の形質を獲得した植物
体、好ましくは、所望の形質を獲得し、正常稔性を有す
る形質転換植物体を再生することができる。なお、これ
らの具体的操作の一例が下記実施例に詳述されている。
【0025】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づきより具体的に
説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定される
ものではない。
【0026】実施例1、比較例1〜3 (1) アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド 宿主バクテリアにはLBA4404 (ATCC 37349)を用い、ベク
ターとして上記pTOK233 (図1参照)を用いた。
【0027】(2) 供試品種および組織 供試品種として、IR8, IR24, IR26, IR36, IR54, IR64,
 IR72,新青矮1,南京11, 水原258 を用いた。開花後10-1
4 日目の未熟種子の穎を除去し、70%エタノールで数
秒、ツィーン20を含む1 %次亜塩素酸ナトリウム水溶液
で15分間滅菌処理を行った。滅菌水で数回洗浄後、実体
顕微鏡下で、長さ1.5-2 mmの未熟胚を摘出した。
【0028】(3) 接種および共存培養 50 mg/l ハイグロマイシンおよび50 mg/l カナマイシン
を含むAB培地(Chilton M-D. et al. (1974) Agrobacte
rium tumefaciens DNA and PS8 bacteriophageDNA not
detected in crown gall tumors. Proc. Natl. Acad. S
ci. USA, 71:3672-3676) 上で3-7 日間培養したアグロ
バクテリウムのコロニーを白金耳でかきとり、AAM 培地
(Hiei et al. 1994、上掲)中に懸濁し、接種液とし
た。菌密度は2〜3x108/mlに調整した。
【0029】摘出した未熟胚に、1ml のバクテリア懸濁
液を加え、約30秒間ボルテックスをかけた。5-10分間静
置した後、バクテリア懸濁液が付着した未熟胚を、共存
培養用のNB-AS 培地上に、胚盤を上向きにして置床し、
25℃暗黒化で4-5 日間共存培養を行った。なお、ここで
用いたNB−AS培地の組成は、Rance et al (1994)
(上掲)に記載のNB培地からL−グルタミンを除き、
アセトシリンゴン 100μM、ショ糖 20g/l、D-グルコース
 10 g/l 、シープラーク(Sea Plaque)アガロース12.5 g
/l を加えたものである。すなわち、その組成は、KNO3
 2830 mg/l 、MgSO4・7H2O 185 mg/l 、KH2PO4 400 mg/l
 、CaCl2・2H2O 166 mg/l 、(NH4)2・SO4 463 mg/l 、KI
0.7 mg/l 、H3BO3 3.0 mg/l、MnSO4・H2O 10 mg/l 、ZnS
O4・7H2O 2.0 mg/l 、Na2MoO4・2H2O 0.25 mg/l、CuSO4・5
H2O 0.025 mg/l 、CoCl2・6H2O 0.025 mg/l 、Na2・EDTA
37.3 mg/l、Fe2SO4・7H2O 27.8 mg/l 、ミオイノシトー
ル100 mg/l、ニコチン酸1.0 mg/l、塩酸ピリドキシン
1.0 mg/l 、塩酸チアミン 10mg/l、カザミノ酸 300 mg/
l 、L−プロリン 300 mg/l 、2,4-ジクロロフェノキシ
酢酸 2 mg/l 、α−ナフタレン酢酸 1 mg/l 、6-ベンジ
ルアミノプリン1 mg/l、アセトシリンゴン 100μM、ショ
糖 20g/l、D-グルコース 10 g/l 、シープラーク(Sea P
laque)アガロース 12.5 g/l, pH5.2であった。
【0030】(4) 形質転換細胞の選抜 共存培養後、伸長した苗条をメスで除去し、3 mg/lハイ
グロマイシンを含むNBM 培地上に移植し、30℃暗黒下で
3-4 日間培養した。次に未熟胚を20-50 mg/lハイグロマ
イシンを含むNBM(実施例1)、2N6M(比較例
1)、CCM(比較例2)、MSM(比較例3)の各1
次選抜培地に移植し、30℃明条件下で2-3週間培養し
た。未熟胚の胚盤上に形成されたハイグロマイシン耐性
カルスを、20mg/l ハイグロマイシンを含むNB2 培地も
しくは30 mg/l ハイグロマイシンを含むCCM 培地に移植
し、2 週間30℃明条件下で2 次選抜を行った。同NB2 培
地もしくはハイグロマイシン濃度を50 mg/l としたCCM
培地を用いて、さらに、10-14日間隔で1-3 回(3-5 次
選抜)にわたって、コンパクトで球状のエンブリオジェ
ニックなカルスの選抜および増殖を行った。なお、ここ
で用いたNBM、2N6M、CCM、MSM、NB2培
地の組成を以下に示す。なお、これらの選抜培地には、
下記組成にさらに250 mg/lのセフォタキシムを添加し
た。
【0031】NBM培地 KNO3 2830 mg/l 、MgSO4・7H2O 185 mg/l 、KH2PO4 400
 mg/l 、CaCl2・2H2O 166mg/l 、(NH4)2・SO4 463 mg/l
 、KI 0.75 mg/l、H3BO3 3.0 mg/l、MnSO4・H2O 10mg/l
 、ZnSO4・7H2O 2.0 mg/l 、Na2MoO4・2H2O 0.25 mg/l、C
uSO4・5H2O 0.025 mg/l 、CoCl2・6H2O 0.025 mg/l 、Na2
・EDTA 37.3 mg/l、Fe2SO4・7H2O 27.8 mg/l、ミオイノシ
トール100 mg/l、ニコチン酸1.0 mg/l、塩酸ピリドキシ
ン 1.0 mg/l 、塩酸チアミン 10 mg/l、カザミノ酸 300
 mg/l 、L−プロリン 300 mg/l 、L−グルタミン 300
 mg/l 、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg/l 、α−ナ
フタレン酢酸 1 mg/l 、6-ベンジルアミノプリン1 mg/
l、D−マルトース 30 g/l 、ゲランガム(商品名Gelri
te, Sigma社製)2.5 g/l 、pH5.8
【0032】2N6M培地 N6無機塩類、N6ビタミン(Chu C.-C. (1978) The N
6 medium and its applications to anther culture of
 cereal crops. In proc. Symp. Plant Tissue Cultur
e. Peking: Science Press, pp. 43-50) に、カザミノ
酸 1 g/l、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg/l 、D−
マルトース 30 g/l 、ゲランガム(商品名Gelrite, Sig
ma社製)2.5 g/l を加えたものである。すなわち、KNO3
 2830 mg/l、MgSO4・7H2O 185 mg/l 、KH2PO4 400 mg/l
 、CaCl2・2H2O 166 mg/l 、(NH4)2・SO4 463 mg/l 、KI
0.8 mg/l 、H3BO3 1.6 mg/l、MnSO4・4H2O 3.3 mg/l 、Z
nSO4・7H2O 1.5 mg/l 、Na2MoO4・2H2O 0.25 mg/l、CuSO4
・5H2O 0.025 mg/l 、Na2・EDTA37.3 mg/l、Fe2SO4・7H2O
27.8 mg/l 、ニコチン酸0.5 mg/l、塩酸ピリドキシン0.
5 mg/l 、塩酸チアミン 1.0 mg/l 、カザミノ酸 1 g/
l、グリシン2 mg/l、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg
/l 、D−マルトース 30 g/l 、ゲランガム(商品名Gel
rite, Sigma社製)2.5 g/l 、pH5.8
【0033】CCM培地 CC培地(Potrykus I et al(1979) Callus formation
from cell culture protoplasts of corn (Zea mays
L.). Theor. Appl. Genet. 54:209-214; Hartke S. et
 al (1989) Somatic embryogenesis and plant regener
ation from variousindica rice (Oryza Sativa L.) ge
notypes. J. Genet & Breed. 43: 205-214)にD−マル
トース 30 g/l、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg/l
 、ゲランガム(商品名Gelrite, Sigma社製)2.5 g/l
を加えたものである。すなわち、KNO3 1212 mg/l、NH4N
O3 640 mg/l 、CaCl2・2H2O 588 mg/l 、MgSO4・7H2O 247
 mg/l 、KH2PO4 136 mg/l 、FeSO4・7H2O 27.8 mg/l、Na
2EDTA 37.3 mg/l 、H3BO3 3.1 mg/l、MnSO4・4H2O 11.15
 mg/l 、ZnSO4・7H2O 5.76 mg/l、KI 0.83 mg/l、Na2MoO
4・2H2O 0.24 mg/l、CuSO4・5H2O 0.025 mg/l 、CoSO4・7H
2O 0.028 mg/l 、ニコチン酸6 mg/l、塩酸チアミン8.5
mg/l、塩酸ピリドキシン1 mg/l、グリシン2 mg/l、ミオ
イノシトール90 mg/l 、ココナッツ水100 ml/l(Gibco社
製)、マニトール36.43 g/l、D−マルトース 30 g/l、
2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg/l 、ゲランガム(商
品名Gelrite, Sigma社製)2.5 g/l 、pH5.8
【0034】MSM培地 MS無機塩類、MSビタミン(Murashige, T. and Skoo
g, F. (1962) A revisedmedium for rapid growth and
bioassays with tobacco tissue cultures. Physiol. P
lant. 15: 473-497)に、カザミノ酸 1 g/l、D−マル
トース 30 g/l、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg/l
 、ゲランガム(商品名Gelrite, Sigma社製)2.5 g/l
を加えたものである。すなわち、NH4NO3 1650 mg/l、KN
O3 1900 mg/l 、MgSO4・7H2O 370 mg/l 、KH2PO4 170 m
g/l 、CaCl2・2H2O 440 mg/l 、KI 0.83 mg/l、H3BO3 6.
2 mg/l、MnSO4・4H2O 22.3 mg/l、ZnSO4・7H2O 8.6 mg/l
 、Na2MoO4・2H2O 0.25 mg/l、CuSO4・5H2O 0.025 mg/l
 、CoCl2・6H2O 0.025 mg/l 、Na2・EDTA 37.3 mg/l、Fe2
SO4・7H2O 27.8 mg/l 、ミオイノシトール100 mg/l、ニ
コチン酸0.5 mg/l、塩酸ピリドキシン 0.5 mg/l 、塩酸
チアミン 0.1 mg/l 、グリシン2.0 mg/l、カザミノ酸 1
 g/l、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg/l 、D−マル
トース 30 g/l 、ゲランガム(商品名Gelrite, Sigma社
製)2.5 g/l 、pH5.8
【0035】NB2培地 KNO3 2830 mg/l 、MgSO4・7H2O 185 mg/l 、KH2PO4 400
 mg/l 、CaCl2・2H2O 166mg/l 、(NH4)2・SO4 463 mg/l
 、KI 0.7 mg/l 、H3BO3 3.0 mg/l、MnSO4・H2O 10mg/l
 、ZnSO4・7H2O 2.0 mg/l 、Na2MoO4・2H2O 0.25 mg/l、C
uSO4・5H2O 0.025 mg/l 、CoCl2・6H2O 0.025 mg/l 、Na2
・EDTA 37.3 mg/l、Fe2SO4・7H2O 27.8 mg/l、ミオイノシ
トール100 mg/l、ニコチン酸1.0 mg/l、塩酸ピリドキシ
ン 1.0 mg/l 、塩酸チアミン 10 mg/l、カザミノ酸 300
 mg/l 、L−プロリン 300 mg/l 、L−グルタミン 300
 mg/l 、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2 mg/l 、α−ナ
フタレン酢酸 1 mg/l 、6-ベンジルアミノプリン0.2 mg
/l、D−マルトース 30 g/l、D−マニトール 30 g/l
 、ゲランガム(商品名Gelrite, Sigma社製)2.5 g/l、
pH5.8
【0036】次に、選抜されたカルスを40 mg/l ハイグ
ロマイシンを含むNBM 再分化前培養培地に移植、約10日
間30℃明条件下で培養した。
【0037】(5) 形質転換体の再分化およびGUS 発現の
調査 再分化前培養により得られた、hygromycin耐性のエンブ
リオジェニックなカルスを、濾紙をひいたシャーレ中で
乾燥処理を行った後(Rance et al. 1994 (上掲))、
RN培地(Rance et al. 1994 (上掲))の糖源を30 g/l
D−マルトースとしたRNM 再分化培地(30 mg/l ハイグ
ロマイシンを含む)上に置床した。2-3週間後、再分化
植物を30 mg/l ハイグロマイシンを含むMSI (1/2 濃度
MS主要無機塩、MS微量無機塩、MSビタミン、1 g/l カザ
ミノ酸、0.2 mg/lインドール酪酸、15 g/lショ糖、3 g/
lGelrite、pH5.8 )発根培地に移植し、25℃明条件下で
約3 週間培養した。得られたハイグロマイシン耐性の再
分化植物の葉片を、X-Gluc処理することにより、GUS 発
現を調査した(Hiei et al. 1994、上掲)。再分化個体
をさらに500 倍のHyponex 水溶液中に移植し、25℃明条
件下で10日間育苗した後、温室内のポットへ移植した。
【0038】(6) 形質転換体のサザン分析および後代に
おける導入遺伝子の発現 GUS 発現を示した再分化個体の葉より抽出したDNA を、
制限酵素HindIII またはKpnIで処理し、hpt またはGUS
遺伝子をプローブとしたサザン分析を行った。サザン分
析については、Sambrookら(1990)が記載している方法
によって行った(Sambrook, J. et al.,Molecular clon
ing: A Laboratory Manual, 2nd Edn. Cold Spring Har
bor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press) 。形
質転換体の自殖次世代の種子を、ホルモンフリーのMS
培地に播種し、発芽後、葉片のX-Gluc処理により、GUS
発現を調査した。さらに、同実生を50 mg/l ハイグロマ
イシンを含むホルモンフリーのMS培地に移植し、ハイ
グロマイシンに対する抵抗性を調査した。
【0039】結果を表1及び表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】以下、上記実験の結果についてさらに説明
する。
【0044】(1) 形質転換細胞の選抜 1次選抜培地において、2-3 週間培養した後、NBM 培地
ではCCM, MSMおよび2N6M培地に比べ、非常に高頻度でハ
イグロマイシン耐性カルスが得られた(表1、表2)。
1次選抜過程の未熟胚について、X-Gluc処理によるGUS
遺伝子の発現を調査したところ、NBM 培地で培養した未
熟胚の胚盤上に形成された複数の細胞塊が、各々、一様
なGUS 発現を示していることを確認した。CCM およびMS
M 培地では、胚盤全体が肥大しており、GUS 発現領域の
特異的な増殖は、ほとんど見られなかった。すなわち、
NBM 培地では、遺伝子導入領域が選択的な増殖を示すた
め、1 未熟胚あたり、複数の独立なハイグロマイシン耐
性の細胞塊を、得ることができた。これに対し、CCM お
よびMSM 培地では、遺伝子導入領域の選択的な増殖は見
られず、胚盤の表層細胞全体がカルス化する傾向があっ
た。このため、CCMおよびMSM 培地で1 次選抜を行った
場合、ハイグロマイシン耐性の細胞塊を見きわめ、選抜
することは、困難であった。
【0045】CCM およびMSM 培地のハイグロマイシンの
濃度を、20, 30 mg/l と低くした場合には、ハイグロマ
イシンを添加しない場合と同様に、胚盤全体が増殖を示
した。また、2N6M培地では、NBM 培地に比べ、未熟胚か
ら選抜されるカルスの数が少なく、生長が遅い傾向が見
られた。Christouらは、パーティクルガン法において、
MSおよびCC培地を形質転換細胞の選抜に用いているが(C
hristou P. et al.,(1991) Production of transgenic
rice (Oryza Sativa L.) plants from agronomically i
mportant indica and japonica varieties via electri
c discharge particle acceleration of exogenous DNA
 into immature zygotic embryos. Bio/technology 9:
957-962; Christou P., Ford, T. L. and Kofron, M.
(1992) The development of a variety-independent ge
ne-transfer method for rice. TIB TECH 10: 239-246)
 、本比較例における場合と同様に、得られた形質転換
体の数は少なかった。
【0046】NBM 培地からNAA およびBAを除去した2,4-
D 単独の培地では、再分化能を有するエンブリオジェニ
ックな耐性カルスを得ることは、困難であった。このこ
とから、BAなどのサイトカイニン類は、再分化能を有す
る、エンブリオジェニックなカルスを誘導するために、
必要であると考えられた。Liら(1993)(上掲)は、NB
培地のNAA, BA およびL-glutamine を含まない培地で、
形質転換細胞の選抜を行ったが、インディカイネでは、
わずかな再生個体が得られたのみであることを報告して
おり、本比較例における結果と一致している。
【0047】1次選抜の培養期間は、2-3 週間が好適で
あり、それ以上培養を続けると、未熟胚の胚盤上に形成
されたカルスが必要以上に増殖し、未熟胚あたり複数の
独立な選抜カルスを得ることが困難となるほか、カルス
の形態が不良となる傾向があった。
【0048】(2) 2次選抜以降の培養 供試した10品種のうち8 品種については、NB2 培地上で
カルスがエンブリオジェニックな状態で増殖した。IR3
6, IR72の2 品種については、比較の結果、NB2培地より
CCM 培地(30-50 mg/lハイグロマイシン、250 mg/lセフ
ォタキシム)の方で、形態の良好なカルスが維持でき
た。
【0049】NBM 培地で1次選抜を行った試験区では、
他の培地に比べ、2, 3次選抜においても非常に多くのカ
ルスが耐性を維持していた(表1、2)。2次選抜以降
の培養はほぼ2 週間毎に行ったが、3 週間以上培養を継
続すると、カルスが褐変し、形態が不良になる傾向があ
った。選抜は、3 次選抜もしくは4, 5次選抜まで行った
後、再分化前培養を行った。
【0050】(3) 再分化培養 10品種すべてで効率よく再分化個体が得られ、再分化が
困難な品種等は、特に認められなかった。また、発根培
地にはIBA(0.2 mg / l) を添加したMSI 培地が、ホルモ
ンフリーの培地より、発根を明らかに促進し、好適であ
った。また、発根培地へのハイグロマイシンの添加(30
mg/l)は、植物体の段階でのハイグロマイシン耐性個体
の選抜に有効であった。
【0051】(4) 形質転換効率 再分化した個体の大部分は、葉において一様なGUS 発現
を示した(表3)。NBM培地で1 次選抜を行う培養系を
用いた場合、供試した10品種すべてから、未熟胚あたり
30%以上の非常に高い効率で、ハイグロマイシン耐性か
つGUS 発現を示す形質転換体が得られた(表1、2、
3)。
【0052】(5) サザン分析および後代への遺伝 GUS 発現を示した再生個体は、サザン分析の結果、調査
した全個体で導入遺伝子が確認されたとともに、T-DNA
は、各個体ごとに、イネゲノムのランダムな部位に導入
されていることを確認した。また、後代のGUS 発現およ
びハイグロマイシン耐性の調査の結果、メンデルの法則
に適合する遺伝的分離が観察された。
【0053】
【発明の効果】以上より明らかなように、本発明によ
り、従来方法では形質転換効率が低く、再現性のある形
質転換を行うことができなかったインディカイネについ
て、高効率で形質転換を行うことができるようになっ
た。
【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の方法に好ましく用いることができる
スーパーバイナリーベクターpTOK162 及びpTOK233 の構
造を示す図である。
 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:01)