【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、保持台に保持させ
た被切断材を、コンピュータから出力された図形情報に
基づいて動作が制御される切断機構によって切断する場
合に、その切断機構の動作位置に被切断材の切断予定位
置を確実に位置合わせすることのできる被切断材の位置
修正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】紳士服や婦人服といった服地に用いられ
るような柄模様を有する布地は、熟練工が手作業で裁断
している。一方、近時の熟練工の不足や工賃の高騰など
に鑑み、上記布地の裁断工程の自動化を図ることが試み
られている。また、布地の裁断の自動化を適切に行うた
めに、裁断箇所に対して布地が適正に配置されていない
ときにその布地の配置に適合するように裁断パターンを
補正し得るようにする提案が特開平5−2000697
号公報によってなされている。そして、裁断を自動化し
た装置として、コンピュータから出力された図形情報に
基づいて動作が制御される切断機構によって、保持台上
の被切断材を上記図形情報に基づく所定形状に切断する
ようにしたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、布地に
は、腰の強いものから弱いものまで様々な種類のものが
あるので、布地によっては、保持台に送り込まれてその
保持台上の予め定められた定位置に保持されたときに布
地自体にゆがみを生じていることがある。
【0004】ところが、コンピュータから出力された図
形情報に基づいて動作が制御される上記切断機構による
切断位置は、保持台上の定位置に送り込まれてきた布地
のゆがみにまでは対応していないことが多いので、その
布地が上記切断機構によって裁断されると、ゆがんだま
まの布地がその切断機構の動作によって定まる形状に裁
断されてしまう。そのため、布地が柄模様を有するもの
である場合には、裁断により得られた布片(以下「裁断
片」という)の柄模様がゆがんだり、位置ずれしたりす
ることになり、その裁断片についてあらかじめ予定され
ていた柄模様と一致しなくなる。また、たとえば布地か
らワイシャツの襟(裁断片の例示)を自動裁断する場合
などには、その襟の基準位置に切り目を付けておき、そ
の切り目をワイシャツの身頃の基準位置に合わせて縫製
することが多いので、裁断する襟の基準位置にその切り
目を正確に付けておく必要があるけれども、保持台上の
布地が適正位置からずれていると、自動裁断で切り目を
付けたときに切り目の位置が適正な位置にならない。さ
らに、上記した特開平5−2000697号公報による
提案は、コンピュータの図形情報自体を補正するもので
あるので、その補正データの入力などに関して煩わしさ
がある。
【0005】本発明は以上の状況のもとでなされたもの
であり、保持台上の布地などの被切断材の切断予定位置
が、コンピュータから出力された図形情報に基づいて動
作が制御される切断機構による動作位置(すなわち切断
位置)に一致しているか否かを、切断前に目視によって
正確に知ることができ、しかもそれが一致していないと
きには一致するように容易に修正することのできる被切
断材の位置修正方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明によ
る被切断材の位置修正方法は、コンピュータから出力さ
れた図形情報に基づいて動作が制御される切断機構によ
って、保持台上の被切断材を上記図形情報に基づく所定
形状に切断する前に、上記保持台上の被切断材の表面で
の上記切断機構の動作位置に上記所定形状と同一の形状
を映写機で実寸画像として投写し、その被切断材に投写
された実寸画像に基づいて上記被切断材の位置を修正す
る、というものである。ここで、「図形情報に基づく所
定形状」とは、演算によって求められた図形情報により
特定される形状のことである。
【0007】この発明による位置修正方法によれば、保
持台上の被切断材に投写された実寸画像を目視しなが
ら、その実寸画像の位置に被切断材の切断予定位置を合
わせるように被切断材を保持台上で動かすことによっ
て、切断機構による動作位置に被切断材の切断予定位置
を物理的に合わせることが可能になる。また、被切断材
として布地を選び、その布地からワイシャツの襟などの
切り目付きの裁断片を自動裁断する場合には、保持台上
の布地を適正位置に修正してその切り目を適正な位置に
付けることができるようになる。
【0008】請求項2に係る発明による被切断材の切断
材の位置合わせ方法は、請求項1に記載したものにおい
て、被切断材が柄模様を有する布地である、というもの
である。
【0009】この発明によれば、被切断材である布地を
裁断(切断)することによって得られる布片、すなわち
裁断片の柄模様がゆがんだり、位置ずれしたりすること
を防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係る被切断材の位
置合わせ装置を説明的に示したものであり、1は保持
台、2はコンピュータ、3はプロジェクタ、4はディス
プレイ、5はコンピュータ2から出力された図形情報に
基づいて動作が制御される切断機構である。
【0011】コンピュータ2は、あらかじめ入力してお
いた図形情報を出力するもので、そのコンピュータ2か
ら出力された図形情報がディスプレイ4とプロジェクタ
3とにより可視像として表示される。すなわち、ディス
プレイ4により上記図形情報に基づく可視画像aがその
図形情報に基づく位置に図示のように表示され、プロジ
ェクタ3により、上記保持台1上の被切断材Mの表面の
上記切断機構5の動作位置に、その切断機構5によって
切断される所定形状と同一の形状が実寸画像a1で図示
のように投写される。このときの実寸画像a1の位置
は、被切断材Mの位置に関係なく、切断機構5の動作位
置となる。
【0012】ここで、「切断機構5によって切断される
所定形状と同一の形状」とは、上記図形情報により特定
される形状のことであり、被切断材Mが服地用の布地M
1である場合には、たとえば、その布地を裁断して得ら
れる襟やポケット片などの裁断片の形状が相当する。
【0013】切断機構5には、レーザービームによる被
切断材Mの切断が可能な切断機構、カッターによる被切
断材Mの切断が可能な切断機構、ウォータージェットに
よる被切断材Mの切断が可能な切断機構、ロボットによ
る被切断材Mの切断が可能な切断機構、などが含まれ
る。この切断機構5は、コンピュータ2から出力された
図形情報に基づいてその動作が制御される必要があり、
そのような切断機構5には、コンピュータ2から出力さ
れるY軸方向に対応する移動信号によりY軸方向での移
動量や移動速度が制御される縦行部材51に、コンピュ
ータ2から出力されるX軸方向に対応する移動信号によ
りX軸方向での移動量や移動速度が制御される横行部材
52を取り付けた機構を好適に用いることができ、この
切断機構5によると、保持台1上の被切断材Mを、コン
ピュータから出力された図形情報に基づく所定形状に正
確に切断することが可能である。この切断機構5を上記
したレーザ切断機構として用いる場合には、上記横行部
材52に設けたホルダーにレーザビームを照射するため
のノズルを取り付ける。また、切断機構5として、上記
したレーザ切断機構を採用するときには、保持台1をた
とえば吸煙装置を備えたハニカム構造のアルミニウム台
とし、切断中に発生する煙や熱の奪取作用を高めておく
ことが望ましい。
【0014】プロジェクタ3によって保持台1上の上記
被切断材Mに投写される実寸画像a1の大きさは、被切
断材Mを切断することによって得られる切断片の大きさ
と同じ大きさである。また、プロジェクタ3は映写機の
一例である。
【0015】以上において、保持台1上の被切断材Mの
位置修正は、上記切断機構5を用いてその被切断材Mを
切断する前に、次の手順で行われる。すなわち、プロジ
ェクタ3によって上記図形情報に基づく所定形状を保持
台1上の被切断材Mの表面に実寸画像a1として投写
し、その被切断材Mに投写された実寸画像a1の位置に
基づいてその被切断材Mを保持台1上で動かすことによ
り、その被切断材Mの切断予定位置を上記切断機構5の
動作位置に合わせる、という手順で行われる。
【0016】この点を図1や図2を参照してさらに具体
的に説明する。図2において、仮想線イは保持台の上の
被切断材Mの実際の位置、仮想線ロはその被切断材Mの
切断予定位置と切断により得たい切断片の形状とを示し
ており、また、実線ハは、プロジェクタ3により保持台
1上の被切断材Mに投写された実寸画像a1とその投写
位置とを示している。図示の状態では、プロジェクタ3
により投写された実寸画像a1の位置と被切断材Mの切
断予定位置(仮想線ロ)とがずれている。したがって、
この場合は、プロジェクタ3により実寸画像a1を投写
したままの状態で、被切断材Mを作業者が保持台の上で
動かし、その被切断材Mの仮想線ロで表された切断予定
位置を上記実寸画像a1の位置に物理的に合わせる。
【0017】このような位置合わせを行った後、切断機
構5を動作させて切断を行うと、切断予定位置と切断機
構5の動作位置である実際の切断位置とが一致する。
【0018】ところで、上記被切断材Mが柄模様を有す
る布地M1であると、保持台1上の布地M1に、図1に
示したX方向やY方向に部分的なゆがみを生じているこ
とがある。このような場合、ゆがみを生じている布地M
1を、上記切断機構5によりその動作位置で図形情報に
基づく所定形状に切断してしまうと、ゆがみを生じてい
る箇所での実際の切断位置が切断予定位置からずれてし
まうので、得られた裁断片(切断片)の柄模様がゆがん
でいたり、適正な位置に対して位置ずれしていたりす
る。しかし、上述したような位置修正方法を適用し、プ
ロジェクタ3により投写された実寸画像a1を目視しな
がら、その柄模様が上記実寸画像a1に対して適正な位
置にくるように、作業者が保持台1上の布地M1の位置
ずれやゆがみを修正しておけば、その後の切断機構5に
よる切断(裁断)によって得られる裁断片の柄模様がゆ
がんでいたり位置ずれしていたりするといった事態は起
こり得ない。裁断片に切り目を付ける場合にも同様のこ
とがいえる。
【0019】本発明によって位置修正が行われる被切断
材Mとしては、上述した布地M1のほか、合成樹脂シー
ト、紙、木板、合板、レザーといった種々のものを選択
できる。
【0020】
【発明の効果】本発明に係る被切断材の位置修正方法に
よれば、保持台上の被切断材に投写された実寸画像を目
視しながら、コンピュータから出力された図形情報に基
づいて動作が制御される切断機構による被切断材の切断
予定位置を物理的に合わせることができるので、たとえ
切断前の被切断材が保持台上で位置ずれしていても、そ
の位置ずれを修正した上で予定通りの切断を行えるよう
になるという効果がある。そのため、被切断材が柄模様
を有する布地である場合や、裁断片の縫製時の基準位置
に切り目を付けるような場合に、それらの位置ずれを無
くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被切断材の位置合わせ装置の説明
図である。
【図2】本発明に係る被切断材の位置合わせ方法の説明
図である。
【符号の説明】 1 保持台 2 コンピュータ 5 切断機構 a1 実寸画像 M 被切断材 M1 布地