【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体デバイスを製造す
るプラズマエッチング装置に係り、特に、エッチング状
況を監視して、そのエッチング特性を所定範囲に維持さ
せ、エッチングの特性変動による不良発生を未然に防止
するのに好適なエッチングのモニタ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】LSIの高集積化に伴い、その加工には
高い精度が要求される。高精度の加工を行うには各処理
装置の性能を向上させることはもちろんであるが、生産
性向上のためには各処理装置の性能を長時間安定に維持
し不良を出さないことが重要である。処理装置の中で、
真空容器内で処理ガスをプラズマ化しウェハ表面にパタ
ーンを形成するエッチング装置についてみると、エッチ
ング処理中にパターンのマスクであるレジストが分解し
て有機物が発生しこれが処理室の内壁に付着したり、ま
た被エッチング材である金属(アルミニウム,モリブデ
ンやタングステン)あるいは基板材質のシリコン、及び
その反応生成物などが処理室内壁に膜となって付着した
りする。これらの付着物はプラズマに接するとプラズマ
中のイオンの作用や処理室壁面の温度上昇によりガスを
発生したり、またマイクロ波の処理室への入射状態(整
合状態)が変化したりして、処理室内のプラズマの状態
が変化する。エッチング処理はプラズマにより行われる
ためプラズマの状態変化により、エッチング速度に代表
されるエッチング特性も変化してくる。さらにエッチン
グガスにより真空封じのためのOリングが劣化して微少
なリークが発生しプラズマ状態が変化したりもする。こ
のようにエッチング装置を長時間連続運転しているとエ
ッチング特性が次第に変わっていくといういわゆる経時
変化が起こり、やがて検査の合格条件を満たさなくなっ
て不良の発生につながる。また処理室内壁の付着物はあ
る厚みになると剥がれ落ちて異物となる。これは他のプ
ラズマ処理装置(CVD装置やスパッタ装置等)でも同
様であり、その性能を長時間安定に維持するうえで障害
となっている。
【0003】これまでは、例えば特開昭63-42124号公報
に示されているプラズマエッチング装置のように、エッ
チング処理中にプラズマの状態をその発光によりモニタ
してはいるがこのモニタ結果はエッチングの終了を検知
するためのみ利用されている。すなわち、エッチング中
は被エッチング材(Al,Poly-Si等)がエッチング反
応によりプラズマ中に現れるので、これが発する光(そ
の物質特有の波長)の強度を監視し、その光の強度がゼ
ロになった時点でエッチングが終了したことを検出して
いる。したがって1枚のウェハにおけるエッチング時間
やエッチング速度が得られるが、エッチング特性が経時
変化をおこすことに対してはなんら考慮されておらず、
従って不良発生を未然に防止するようなことは行われて
いなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術ではエッ
チング処理が終了したことをモニタしているのみであ
り、エッチング処理の結果(パターン断面の寸法,形状
や処理のウェハ面内均一性等)が検査の合格条件を満た
していることを確認しているわけではない。本来エッチ
ング処理装置の処理特性は処理を重ねるにつれ徐々に変
化していくので、処理を行う毎にいちいち言い替えれば
処理したウェハの全数にわたっていちいち処理結果を逐
次検査することが必要である。しかし、通常検査は処理
装置とは別の検査装置で行われるため、検査の結果不合
格であることが判明した時点では次のウェハまたはロッ
トに対してエッチング処理が続行されており、不良品を
出す結果となる。かといって検査装置で全数検査を実施
しながらエッチング処理をしていたのでは工程における
スループットの問題がある。
【0005】処理特性の経時変化はプラズマ状態の経時
変化と関係があり、プラズマの変化を詳しく調べてみる
と、経時変化の原因は次のように考えられる。まず処理
室内壁に付着した反応生成物の膜から新たにガスが放出
されることにより放電ガスの組成が変化し、その結果、
プラズマが変化する。また反応生成物の膜が供給した放
電電力の一部を吸収(例えば誘電損失)することにより
プラズマが吸収する電力(実効的な放電電力)が変化す
る。あるいはAl等の金属配線膜をエッチングする場合
であれば、反応生成物の膜として金属の薄膜が処理室内
壁に付着することになり、このため電力の一部が反射さ
れてプラズマに吸収されないことになる。この場合も実
効的な放電電力が変化する。放電により処理室内壁の温
度が上昇し付着膜からのガス放出量や2次電子放出量が
変化しプラズマが変化する。こうしたプラズマの変化は
発光スペクトルの変化として観察できる。そこで毎回の
エッチング処理において、エッチング特性の経時変化の
原因となる固有の発光スペクトルをモニタし、その変化
の様子をエッチング処理と並行して検知・処理すること
によってエッチング特性の簡易検査を行い、結果によっ
ては以後のエッチング処理を中止することで不良発生を
未然に防止することができる。ただしそのときの最大の
課題は、エッチング処理を続けるにつれ付着物が増加・
変化して発光スペクトルの採光状況が悪化するなかで、
発光スペクトルをいかに安定して計測するかである。
【0006】
【課題を解決するための手段】処理を重ねるにつれ、処
理室内壁はプラズマによってたたかれ、石英のベルジャ
チャンバはすりガラス状になる。さらに、処理室内壁へ
は反応生成物が付着していくが、付着の仕方が薄膜の縞
状になることからすりガラス状態と同様散乱が支配的で
ある。全体の発光スペクトルがある割合で光量低下して
いくことがわかった。そこで上記課題は、今回処理中の
発光スペクトルを基準となるウェハ処理中の発光スペク
トルで除すことにより解決できる。基準はオーバエッチ
ング時の放電のように本来のエッチング反応が終了した
穏やかなプラズマ状態をとることになる。実際上は発光
信号処理部を設け、基準となるウェハでのオーバエッチ
ング中の発光スペクトルで現時点処理しているウェハの
エッチング中のスペクトルを割算していく。これをロッ
ト内や全掃周期という長期にわたって継続してモニタし
ていけば真に変化するスペクトルがわかり、電力の変化
やガス組成の変化があきらかになってプラズマの変化の
原因を特定することができる。変化の原因が放電電力や
圧力など制御可能なものであれば、これを修正すること
によってプラズマを元の状態に戻すことができる。すな
わち、処理条件(電力,圧力等)にフィードバックする
ことによってプラズマを安定に維持できエッチング特性
も安定化できる。また変化の原因が内壁の付着物からの
ガス放出など制御不可能なものであれば、警報を発して
処理を中止することにより不良の発生を防止できる。さ
らにプラズマエッチング装置の適正なメンテナンス時期
を示すこともできる。
【0007】
【作用】エッチング反応が終了したプラズマではスペク
トルの変化は起こらず、従って前回処理終了時のスペク
トルと比較すると、ベルジャチャンバの曇りと汚れによ
って全体的に光量低下だけが起きている。一方でエッチ
ング中のスペクトルはエッチャントとし消費されるも
の、反応によって生成されるものが多数存在している。
これらスペクトルのうちのいくつかの変化がエッチング
特性の変化と相関がある。その変化を正確に得るのに、
ベルジャチャンバの曇りと汚れの影響を除去することが
必要であり、先に説明した発光信号処理部が基準スペク
トルで補正した現在処理中の発光スペクトルを算出する
よう作用する。よってこの補正スペクトルを監視するこ
とによりエッチングの変化を検知できる。
【0008】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。図1は本発明
をエッチング装置に適用した場合のモニタ装置のブロッ
ク図を示す。また図2にモニタ信号処理のフローチャー
トを示す。図1においてエッチング装置101はベルジャ
チャンバ100a採光部100bを有している。エッチングモニ
タ装置はプラズマ発光検出部102,発光信号処理部103,
エッチング状態監視部104,出力表示部105から構成され
る。次に各ユニットの動作を簡単に説明する。プラズマ
発光検出部102はエッチング装置101のプラズマ発光107
から発光スペクトルデータを得、発光信号処理部103及
びエッチング状態監視部104に送る。また、発光信号処
理部103は発光スペクトルデータを基準となる発光スペ
クトルデータで補正し、この補正後の発光スペクトルデ
ータ108をエッチング状態監視部104へ送る。この補正の
方法については後述する。エッチング状態監視部104は
発光スペクトルデータ108を用いてエッチング装置101の
処理室内部の反応生成物の量や状態、部品の劣化状態等
を推定し、装置の保守、エッチング処理の異常警報等の
情報として出力表示部105に送りデータを表示する。ま
た所定のエッチング処理特性からのずれを補正するため
の処理圧力,ガス流量,プラズマ発生用電力等の設定条
件を求め、これらをフィードバック信号としてエッチン
グ装置101に送る。エッチング装置101は得られたフィー
ドバック信号により設定条件を変更し所定のエッチング
特性からのずれを修正する。
【0009】次に前述の発光スペクトルデータの補正に
ついて図3,図4を用いて説明する。図3はエッチング
における発光スペクトルを示し、201はエッチング中、2
02はオーバエッチ中を示す。エッチング中は、スペクト
ルピーク211,212,213が変化するが、オーバエッチ中
はほとんど変化しない。この理由はオーバエッチの段階
ではエッチング反応がほとんど進行しないからである。
その一方で、エッチング中は反応生成物が多く発生し、
これがベルジャチャンバの内壁に付着していくことか
ら、発光スペクトルの強度は全体的に低下していく。付
着物は処理枚数を重ねるにつれ増加し、そのときの発光
スペクトルの強度変化は図4の301の様になる。即ち、
図4の301の3本のラインは、図3におけるスペクトル
ピーク211,212,213の最大値の処理枚数に対する変化
を発光強度(相対値)で示したものである。この図では3
本のスペクトルピークは処理枚数を増やすと全て減少し
ている様に見える。ここで各ウェハでのオーバエッチ中
の発光スペクトルをとり、1枚目のウェハで強度を基準
に2から4枚目のスペクトル強度を割算すると302に示
す様になる。図中の1から4までの数字はウェハの処理
枚数に対応する。そこで302の波長特性で301の発光強度
を補正することにより、ベルジャチャンバの付着による
光量低下の影響を除くことができる。図4の302は301を
補正した結果を示す。301で全て減少している様に見え
たスペクトルピーク211,212,213は,303に示す様に211
のみ減少し、他の二つは変化していないのである。
【0010】この様に、ベルジャチャンバの付着による
光量低下の影響を図1の信号処理部において上記補正を
加えることで排除し、安定したモニタデータを得ること
ができる。
【0011】更にこれらのスペクトルデータを継続して
モニタすることでプラズマの状態を知り、処理特性を一
定に維持するよう制御を行うことができる。
【0012】以上の説明はエッチングで説明したが、プ
ラズマ処理を利用したプロセスに全く同様に適用可能で
ある。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、プラズマエッチング装
置のウェハのエッチング処理状態をインプロセスで監視
してその処理特性を一定に維持できるので、不良の発生
を防止できる。
【図面の簡単な説明】【図1】本発明の一実施例のブロック図。
【図2】本発明の信号処理のフローチャート。
【図3】発光スペクトルの説明図。
【図4】発光強度の変化の説明図。
【符号の説明】 100a…ベルジャチャンバ、100b…採光部、10
1…エッチング装置、102…プラズマ発光検出部、1
03…発光信号検出部、104…エッチング状態監視
部、105…出力表示部、107…プラズマ発光、10
8…補正発光スペクトルデータ。