【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 本発明は自己停止機能を有した分子層単位の超格子を有
する半導体装置の製造方法に関する。
〔先行技術と問題点〕 半導体単体では得られない特性の実現のために、異なる
半導体を周期的に形成したものとして超格子構造の半導
体装置が知られている。しかし、この超格子構造の半導
体装置は、結晶の一次元方向に、母結晶の格子定数に比
べて十分長く、電子の平均自由行程よりは短かい周期的
ポテンシャルを設けた構造としなければならないことか
ら、製造が難かしく、現在までのところ製造は実験段階
に止り工業化に至っていない。というのは、半導体の製
造法として従来より分子線エピタキシャル法(以下、MB
E法と略す)、有機金属による結晶成長法(以下、MO−C
VD法と略す)原子層エピタキシャル法(以下、ALEと略
す)等が知られているが、いずれも膜厚制御性や結晶性
が悪く超格子構造とするのは容易ではないもしくは形成
できないからである。即ち、MBE法の場合は、分子線ソ
ースを基板に当てて成長を行なうために化学量論的組成
(ストイキオメトリー)を完全には満しにくいこと、基
板に吸着した原子が液相成長のようには結晶表面を自由
に動きまわらないことから良好な結晶構造が得られない
欠点があった。
MO−CVD法では、Japan.J.Appl.Phys.19,(1980)L551〜
L554等に超格子構造の形成例が示されているが、異なる
半導体相互の境界層(遷移層)の厚みが60Å(約29分子
層)と示されているように分子層単位の精度での成長膜
厚の制御が困難なこと、600℃といった高温の基板温度
が要求されること、熱分解反応によることからもともと
結晶性が悪いという欠点があった。ALE法は特開昭55−1
30896号公報に示されるように化合物半導体の成分元素
を含む蒸気をガラス基板表面に交互に導入し、交換表面
反応により薄膜を形成するものであるが、多結晶やアモ
ルファスであるため格子定数が定義されず、超格子構造
を形成できない欠点があった。またALE法では蒸気交互
導入1サイクルで1/3分子層以下しか成長できない欠点
があった。さらにALE法ではIII−V族化合物半導体やSi
が成長できないというような欠点を有していた。
〔発明の目的〕 本発明は上記の点に鑑み、新規な方法により超格子構造
の半導体装置を工業的に分子層単位で精密に製造できる
方法を提供することを目的とする。
〔発明の概要〕 本発明は真空に排気する成長槽内に外部より結晶成分元
素を含むガスを所定の条件で交互に導入することによ
り、ガス導入1サイクルで少なくとも1分子層形成し成
長膜厚を分子層単位で制御し、化学量論的組成を満たす
結晶を成長させることにより、分子層数で設計可能な超
格子半導体装置が得られるようにしたことを特徴として
いる。
〔発明の実施例〕 以下、本発明の実施例をGaAs−Ga1-xAlxAs1-yPyの超格
子半導体装置を製造する場合を例にとり説明する。
第1図は本発明の一実施例に係る結晶成長装置の構成図
を示したものである。図において、1は成長槽で材質は
ステンレス等の金属、2はゲートバルブ、3は成長槽1
を超高真空に排気するための排気装置、4はGaCl3また
はTMG(トリメチルガリウム)等のGaを含む化合物ガス
を導入するノズル、5はAsH3等のAsを含む化合物ガスを
導入するノズル、6はTMA(トリメチルアルミニウム)
等のAlを含む化合物ガスを導入するノズル、7はPH3、P
Cl3等のPを含む化合物ガスを導入するノズル、8,9,10,
11は前記ノズルを開閉するバルブで、ガス源12(GaCl3
等)、13(AsH3)、14(TMA等)、15(PH3等)との間に
設けられたもの、16は基板加熱用のヒーターで石英ガラ
スに封入したタングステン(W)線で配線は図示省略し
ているもの、17は測温用の熱電対、18はGaAs基板で、ノ
ズル4,5,6,7の先端開孔部はGaAs基板表面方向を向き、
しかも基板表面にできるだけ近づけて配置されている。
19は成長槽内の圧力を測定するための圧力計である。
この構成で、GaAs基板18上にGaAsをエピタキシャル成長
させる場合は、先ず、ゲートバルブ2を開け、超高真空
排気装置3により成長槽1内を10-7〜10-8Pascal(以
下、Paと略す)程度に排気する。次に、GaAs基板18を30
0〜800℃望ましくは300〜500℃にヒーター16により加熱
した後に、TMG12を成長槽1内の圧力が10-1〜107Paとな
る範囲で1分子層形成に必要な分子数よりも十分多く0.
5〜10秒間バルブ8を開けて導入し、1分子吸着層を形
成する。次に、1分子吸着層形成に余った余分のTMGを
成長槽1内より排気後、AsH313を成長槽1内の圧力が10
-1〜107Paとなる範囲で1分子吸着層形成に必要な分子
数よりも十分多く2〜200秒間バルブ5を開けて導入す
る。1分子吸着層形成に余った余分のAsH313はその後排
気する。このガス導入1サイクルに伴う交換表面反応で
GaAs1分子層が自己停止機能を有して成長できる。この
ガス導入サイクルを所望の回数繰り返せば、所望の分子
層数のGaAsが、特別な膜厚モニタを使わなくても形成で
きる。
続いて、このようにして成長させたGaAs分子層の上にGa
-xAlxAs1-yPyをヘテロエピタキシャル成長させる場合
は、GaAsの成長と同じようにIII族のGaとAlを導入した
後に、V族のAsとPを導入することによって1分子層が
成長でき、これを繰り返せば所望の分子層数が得られ
る。
第2図は、上記分子層エピタキシャル成長乃至ヘテロエ
ピタキシャル成長によるGa-xAlxAs1-yPy超格子半導体装
置の製造過程を示したもので、先ず、同図(a)に示す
ように、GaAs基板20上にGaAs層21を分子層単位で所定の
分子層数たとえば30分子層にエピタキシャル成長させ
る。続いて、同図(b)に示すように、そのGaAs層21上
にGa-xAlxAs1-yPy層22をやはり分子単位で所定の分子層
数たとえば40分子層を制御してヘテロエピタキシャル成
長させる。更に、以上の操作を所定の周期たとえば100
サイクル繰り返すことにより、超格子構造が形成され
る。同図(c)に示したのは3層のGaAs層21とGa1-xAlx
As1-yPy層22とを交互に分子層単位で成長させた例であ
る。このとき、GaAsに格子整合させるためのGa1-xAlxAs
1-yPyの混晶の組成はx=0.3,y=0.01とする。このよう
にして形成した超格子構造に、同図(d)に示すよう
に、Au−Ge合金を数100Å真空蒸着して電極23,24を形成
する。これは、例えば450℃、H2気流中で1分間熱処理
して形成する。これにより、超格子ダイオード25が製造
できる。第2図(c)、(d)に示したようにGaAs層21
とGa1-xAlxAs1-yPy層22との間の遷移層は全く無く、正
確に分子層単位で超格子構造が製造できる。
ところで、上述のようにして超格子半導体を製造する
際、成長中に基板へ紫外線を照射することによって、成
長温度を300℃以下といった低温に低下させることがで
き、結晶品質を良くすることができる。この紫外線源と
しては、水銀ランプ、Xeランプ、エキシマレーザ、アル
ゴンイオンレーザ等を用いることができ、成長槽1に窓
を設け外部より基板18上に照射するようにすれば良い。
尚、以上の実施例においては、Ga1-xAlxAs1-yPyの超格
子半導体装置について説明してきたが、成長層糟へ更に
不純物を含むガスを導入することによって、GaAs、Ga
1-xAlxAs1-yPyへ不純物添加できることは言う迄もな
い。この場合、GaAs、Ga1-xAlxAs1-yPy共に、n形の不
純物を含むガスとして、H2SのVI族のTe,Se等の水素化
物、フッ化物を用いることができる。また、p形の不純
物としてはZnCl3、デイメチル亜鉛等のガスをIII族乃至
はV族のガスと一緒に導入すれば良い。
また、超格子となる半導体の組合せは、上記の実施例を
ほかに、InAs−GaSb、GaSb−AlSb、 InAs−AlSb、InP-In1-xGaxP1-zAsz、 InP−In1-xGaxAs、GaAs−GaAs1-xPx、 GaP−GaP1-xAsx、GaAs−Ga1-xInxAs、 GaP−AlP、GaSb−InSb、Ge−GaAs、Si−GaP、 Si−Si1-xGex、CdTe−HgTe、PbTe−Pb-xSnxTe、 PbTe−Pb1-xGexTe等の組合せ、p形とn形半導体の組合
せ、3つの半導体の組合せ、例えばInAs−GaSb−AlSb等
に適用できる。
〔発明の効果〕 以上のように本発明によれば、半導体の結晶膜を自己停
止機能を有して分子層単位で結晶性良く低温で成長させ
ることができることから、従来のMO−CVD法等の気相成
長法で形成した超格子構造の場合に存在する異なる半導
体相互間の遷移層の全くない超格子半導体装置を工業的
に生産できるようになる。本発明によれば通常の気相成
長におけるキャリアガス、あるいはALE法におけるガス
相拡散バリアのような原料ガス以外の不活性なガスを用
いる必要もなく装置の構成が簡単となる。さらに本発明
によれば、自己停止機能による成長なのでガス導入サイ
クルを数えるのみで、膜厚モニタを必要としないため、
装置の構成や操作が容易で、分子層単位の制御ができ工
業的利点は大きい。さらに、本発明によればGaAsとGa
1-xAlxAs1-yPyとが1分子層ずつ交互に形成されるよう
な新たな超格子構造の形成も可能である。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の一実施例に係る結晶成長装置の構成
図、第2図(a)〜(d)は第1図の装置により製造さ
れる超格子半導体装置の製造過程説明図である。 1……成長槽、2……ゲートバルブ、3……排気装置、
4〜7……ノズル、8〜11……バルブ、12〜15……ガス
源、16……ヒーター、17……熱電対、18,20……GaAs基
板、19……圧力計、21……GaAs層、22……Ga1-xAlxAs
1-yPy層、23,24……電極、25……超格子ダイオード。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−130896(JP,A) 特開 昭58−98917(JP,A) Japan.J.Appl.Phy s.,19[9],(1980−9),L551〜 L554 第43回応物学会予稿集,(1982−9− 28),P.539,28P−Z−16 「応用物理」vol.53,No.6, 1984−6,P.516−520