【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラパマイシンまたは医
薬上許容されるラパマイシン塩を含有する製剤であっ
て、免疫抑制の誘導および移植拒絶反応、宿主対移植片
疾患、自己免疫疾患、炎症、固形腫瘍、真菌感染、成人
T細胞白血病/リンパ腫および過剰増殖性血管疾患の治
療のための経口投与に有用な製剤に関する。
【0002】ラパマイシンは、ストレプトマイセス・ヒ
グロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)により
生産されるマクロライド抗生物質であり、はじめは抗真
菌剤としてその特性が見いだされた。それは、カンジダ
・アルビカンス(Candida albicans)およびミクロスポ
リウム・ギプセウム(Microsporium gypseum)のごとき
真菌類の増殖に対して逆に作用する。ラパマイシン、そ
の調製物およびその抗生物質としての活性は、1975
年12月30日にスレンドラ・セーガル(Surendra Seh
gal)らに付与された米国特許第3,929,992号に
記載されている。1977年には、マーテル,アール・
アール(Martel,R.R.)らにより、カナディアン・ジャ
ーナル・オブ・フィジオロジカル・ファーマコロジー
(Canadian Journal of Physiological Pharmacolog
y),第55巻,48〜51頁(1977年)において、
実験的なアレルギー性脳炎およびアジュバント関節炎に
対するラパマイシンの免疫抑制特性が報告された。19
89年には、カルン,アール・ワイ(Calne,R.Y.)ら
(ランセト(Lancet)(1989年)第2号,227
頁)およびモリス,アール・イー(Morris,R.E.)および
マイスター,ビー・エム(Meister,B.M.)(メディカル
・サイエンス・リサーチ(Medical Science Researc
h),1989年、第17巻,609〜610頁)によ
り、別々に、インビボでの同種移植片の移植拒絶反応の
抑制に対するラパマイシンの有効性が報告された。以
降、多くの文献にラパマイシンの免疫抑制および拒絶反
応抑制特性が記載され、ヒトにおける移植拒絶反応の抑
制におけるラパマイシンの使用に関して臨床的研究が始
められた。
【0003】ラパマイシンは、単独(米国特許第4,8
85,171号)またはピシバニル(米国特許第4,40
1,653号)との併用により抗腫瘍活性が示された。
アール・マーテル(R.Martel)ら,カナディアン・ジャ
ーナル・オブ・フィジオロジー・アンド・ファーマコロ
ジー(Can.J.Physiol.PHarmacol.)第55巻,48頁
(1977年)には、ラパマイシンが実験的なアレルギ
ー脳脊髄炎モデル、多発性硬化症、アジュバント関節炎
モデル、リューマチ様関節炎に有効であり、IgE様抗
体の生成を有効に抑制することが記載されている。
【0004】ラパマイシンの免疫抑制効果は、FASE
B第3巻,3411頁(1989年)に記載されてい
る。シクロスポリンAおよびFK−506、他の巨大環
状分子もまた、免疫抑制剤として有効であることが示さ
れており、それゆえ、移植拒絶反応の予防に有用である
[FASEB第3巻,3411頁(1989年);FA
SEB第3巻,5256頁(1989年);アール・ワ
イ・カルネ(R.Y.Calne)ら,ランセト(Lancet)118
3頁(1978年);および米国特許第5,100,89
9号]。
【0005】さらにラパマイシンは、全身性の紅斑性狼
瘡[米国特許第5,078,999号]、肺炎[米国特許
第5,080,899号]、インスリン依存性糖尿病[フ
ィフス・インターナショナル・コンファレンス・インフ
ラメーション・リサーチ・アソシエーション(Fifth In
t.Conf.Inflamm.Res.Assoc.),121(アブストラク
ト),(1990年)]、および血管損傷後の平滑筋細
胞増殖ならびに血管内膜厚化症[モリス,アール・ジェ
ー(Morris,R.J.),ハート・ラング・トランスプラント
(Heart Lung Transplant)第11巻(pt.2):19
7頁(1992年)]の予防または治療に有用であるこ
とが示されている。
【0006】ラパマイシンのモノ−およびジアシル化誘
導体(28および43位がエステル化されている)が抗
真菌剤として有用(米国特許第4,316,885号)で
あり、ラパマイシンの水可溶性プロドラッグ(米国特許
第4,650,803号)の製造に用いられることが示さ
れている。最近、ラパマイシンに関する番号付けが変更
された。それゆえ、ケミカル・アブストラクツ(Chemic
al Abstracts)の命名法によれば、上記エステルは31
および42位がエステル化されていることになる。米国
特許第5,118,678号には、免疫抑制、抗炎症、抗
真菌および抗腫瘍剤として有用なラパマイシンのカルバ
マート類が開示されている。米国特許第5,100,88
3号には、ラパマイシンのフッ素化エステルが開示され
ている。米国特許第5,118,677号には、ラパマイ
シンのアミドエステル類が開示されている。米国特許第
5,130,307号には、ラパマイシンのアミノエステ
ル類が開示されている。米国特許第5,117,203号
には、ラパマイシンのスルホナート類およびスルファマ
ート類が開示されている。米国特許第5.194,447
号には、ラパマイシンのスルホニルカルバマート類が開
示されている。
【0007】米国特許第5,100,899号(カルネ
(Calne))には、ラパマイシンおよびその誘導体なら
びにプロドラッグを用いる哺乳動物における移植拒絶反
応の抑制方法が開示されている。ラパマイシンとともに
使用する他の化学療法剤としてはアザチオプリン、コル
チコステロイド類、シクロスポリン(およびシクロスポ
リンA)およびFK−506、またはそれらのあらゆる
組み合わせが挙げられる。
【0008】 ヒトにおける器管の同種移植片の移植に
おける拒絶反応を抑制するために実際に使用された1次
免疫抑制剤はシクロスポリン(サンドイミューンR(San
dimmuneR))である。シクロスポリンは11個のアミノ
酸からなる環状ポリペプチドである。サンドイミューン
R(IV)の静脈注射用の製剤は、滅菌アンプル中、ml
あたりシクロスポリン50mg、クレモフォールR(Cre
mophorR)EL650mgおよびスイス薬局方アルコー
ル(32.9体積%)(窒素下)を含有する。投与する
ために、この混合物を注射用0.9%塩化ナトリウムま
たは注射用5%デキストロースで使用前にさらに希釈す
る(フィジシャンズ・デスク・リファランス(Physicia
n's Desk Reference)第45版,1991年,1962〜
1964頁,メディカル・エコノミクス・カンパニー,イ
ンク(Medical Economics Company,Inc.))。ラパマイ
シンと同様のある種の構造を有するFK−506と命名
されたマクロライド分子もまた、ヒトおける器管の同種
移植片の移植における拒絶反応の抑制に関して現在臨床
試験されている。FK−506はストレプトミセス・ツ
スクバエンシス(Streptomyces tsuskubaensis)から単
離され、1990年1月16日にオクハラ(Okuhara)
らに付与された米国特許第4,894,366号に記載さ
れている。トランスプランテーション・プロシーディン
グス(Transplantation Proceedings),第22巻第1
号,補第1巻,52〜56頁(1990年2月)におい
て、アール・ベンカタラマナン(R.Venkataramanan)ら
により、FK−506の静脈注射用の製剤がポリオキシ
エチル化ヒマシ油(HCO−60,界面活性剤)および
アルコール中FK−506の10mg/ml溶液として
提供されることが記載されている。静脈注射調製物は、
セイラインまたはデキストロースで希釈し、1ないし2
時間輸液により投与しなければならない。
【0009】フィジシャンズ・デスク・リファランス
(第45版,1991年,2119頁,メディカル・エコ
ノミクス・カンパニー,インク)には、サンドイミュー
ンR(商品名)の存在下におけるシクロスポリンが、2
5mgおよび100m強度のカプセルおよび50mlビ
ン入り経口用溶液として掲載されている。25mg強度
のカプセルには米国薬局方シクロスポリン25mgおよ
び米国薬局方無水アルコール(最大12.7%体積%)
が含有されており、100mg強度のカプセルには米国
薬局方シクロスポリン100mgおよび米国薬局方無水
アルコール(最大12.7%体積%)が含有されてい
る。経口用カプセル中の不活性成分は、トウモロコシ
油、ゼラチン、グリセロール、ラブラフィルM2125
CS(ポリオキシエチル化されているグリコライズされ
たグリセリド)、赤色酸化鉄、ソルビトール、二酸化チ
タンおよび他の成分である。その経口用溶液は、米国薬
局方シクロスポリン100mgおよびスイス薬局方オリ
ーブ油/ラブラフィル(Labrafil)M1944CS(ポ
リオキシエチル化オレイン酸グリセリド)担体中に溶解
した12.5体積%のスイス薬局方アルコールを含有し
ており、牛乳、チョコレートミルクまたはオレンジジュ
ースでさらに希釈してから投与する50ml入りのビン
に入ったものが市販されている。
【0010】アザチオプリン(商品名イムランR(Imura
nR)として、ノースキャロライナ州トライアングル・パ
ーク(Triangle Park)のバロウズ・ウェルカム・カン
パニー(Burroughs Wellcome Co.)から市販されてい
る)は、単独または他の免疫抑制剤と併用して製剤され
る別の経口投与用免疫抑制剤である。フィジシャンズ・
デスク・リファランス(第45版,1991年,785〜
787頁,メディカル・エコノミクス・カンパニー,イン
ク)には、アザチオプリンが6−[1−メチル−4−ニ
トロイミダゾール−5−イル)チオ]プリンとして挙げら
れており、アザチオプリン50mgおよび不活性成分
(ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、ジャガイモ
澱粉、ポビドンおよびステアリン酸)を含有する刻み目
入り錠剤として経口投与用に提供される。
【0011】ラパマイシンは、インビボにおいて免疫抑
制、抗真菌および抗炎症活性を有し、インビトロにおい
て胸腺細胞の増殖を抑制することが示されている。それ
ゆえ、これらの製剤は、カンジダ・アルビカンス(Cand
ida albicans)感染、炎症疾患、および狼瘡、リューマ
チ様関節炎、糖尿病、多発性硬化症等を含む移植拒絶反
応による自己免疫疾患に有用である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】許容量の薬剤を患者に
送達するために薬剤送達法が開発されている。経口用製
剤の場合、この基準に合致し、臨床的または非臨床的い
ずれの状況においても有効に投与(好ましくは自分で投
与)できる服用形態を提供するのが極めて望ましい。本
発明は、かかる目的に合致したラパマイシンの経口投与
に有用な製剤を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、意外にも、ラパマ
イシン、ジメチルアセトアミド、界面活性剤およびポリ
エチレングリコール400からなる製剤がラパマイシン
の経口投与において有用であることを見いだし本発明を
完成するに至った。
【0014】すなわち本発明は、(1) 組成物100
mlあたり約0.05ないし約10.0グラムのラパマイ
シン、約0.1ないし約25mlのN,N−ジメチルアセ
トアミド、約0.1ないし約10mlの界面活性剤、お
よび約65ないし約99.8mlのポリエチレングリコ
ールからなる組成物、(2) 組成物100mlあたり
約0.10ないし約8.0グラムのラパマイシン、約0.
5ないし約20mlのN,N−ジメチルアセトアミド、
約0.5ないし約20mlの界面活性剤、および約72
ないし約99mlのポリエチレングリコールを含有する
(1)記載の組成物、(3) 組成物100mlあたり
約0.5ないし約5.0グラムのラパマイシン、約1.0
ないし約20mlのN,N−ジメチルアセトアミド、約
1.0ないし約5.0mlの界面活性剤、および約75な
いし約98mlのポリエチレングリコールを含有する
(1)記載の組成物、(4) 組成物100mlあたり
5.0グラムのラパマイシン、20mlのN,N−ジメチ
ルアセトアミド、10mlの界面活性剤、および100
mlとするに十分量のポリエチレングリコール400を
含有する(1)記載の組成物、および、(5) 少なく
とも、第1の成分中の5.0グラムのラパマイシン、な
らびに第2の成分中の20.0mlのN,N−ジメチルア
セトアミド、10.0mlの界面活性剤および100m
lとするに十分量のポリエチレングリコール400から
なる多成分経口用ラパマイシン製剤、(6) 少なくと
も、第1の成分中の10mlとするに十分量のN,N−
ジメチルアセトアミドを伴った2.5グラムのラパマイ
シン、ならびに第2の成分中の5mlの界面活性剤およ
び40mlとするに十分量のポリエチレングリコール4
00からなる多成分経口用ラパマイシン製剤を提供する
ものである。
【0015】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
製剤はラパマイシン、ラパマイシンの医薬上許容される
塩、またはそれらの混合物を含有しているため、抗腫
瘍、抗真菌および抗増殖活性を有すると考えられる。本
発明製剤はそれ自体、心臓、腎臓、肝臓、骨髄および皮
膚の移植のごとき移植の拒絶反応;狼瘡、リューマチ様
関節炎、糖尿病、筋無力症および多発性硬化症のごとき
自己免疫疾患;乾癬、皮膚炎、湿疹、脂漏、炎症性腸疾
患および目のぶどう膜炎のごとき炎症疾患;固形腫瘍;
真菌類の感染;および再発性狭窄症のごとき過剰増殖性
血管疾患の治療に有用である。それゆえ、本発明はま
た、免疫抑制を必要とする哺乳動物における免疫抑制を
誘導するのに有用な製剤を提供する。かかる誘導は、該
哺乳動物に免疫抑制量の1種またはそれ以上の本明細書
記載の製剤を投与することからなる。
【0016】溶媒、界面活性剤およびポリエチレングリ
コールからなる非水系中のラパマイシン溶液を使用して
抗腫瘍、抗真菌および抗増殖活性のみならず免疫抑制治
療にも関連した慢性症状に用いる許容される服用形態を
容易に製造できる1成分として本発明製剤を製造するこ
とができる。薬剤濃縮物が残りの成分中に可溶化しうる
場合、溶媒を使用しないように1成分系を調節してもよ
い。別法として、本発明を、100ラパマイシンで満た
された乾燥成分および希釈剤あるいは薬剤濃縮物および
希釈剤のいずれかからなる2成分系を製造してもよい。
【0017】一般的には、本発明製剤には、以下の濃度
(製剤100mlあたり)のa)ラパマイシン、b)
N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、c)界面活
性剤、およびd)ポリエチレングリコール(PEG)4
00からなる製剤が含まれる。 a)100mlあたり約0.05ないし約10.0gの濃
度のラパマイシン; b)100mlあたり約0.1ないし約25mlの濃度
のDMA; c)100mlあたり約0.1ないし約10mlの濃度
の界面活性剤;および d)100mlあたり約65ないし約99.8mlの濃
度のPEG400
【0018】本発明のより好ましい製剤には、成分が以
下の濃度範囲(製剤100mlあたり)である製剤が含
まれる。 a)100mlあたり約0.10ないし8.0gの濃度の
ラパマイシン; b)100mlあたり約0.5ないし約20mlの濃度
のDMA; c)100mlあたり約0.5ないし約8mlの濃度の
界面活性剤;および d)100mlあたり約72ないし約99mlの濃度の
PEG400
【0019】本発明の最も好ましい製剤には、成分が以
下の濃度範囲(製剤100mlあたり)である製剤が含
まれる。 a)100mlあたり約0.5ないし5.0gの濃度のラ
パマイシン; b)100mlあたり約1ないし約20mlの濃度のD
MA; c)100mlあたり約1ないし約5mlの濃度の界面
活性剤;および d)100mlあたり約75ないし約98mlの濃度の
PEG400
【0020】本発明製剤に使用しうる界面活性剤として
はポリソルベート20(ポリオキシエチレン20ソルビ
タンモノオレエート)、ポリソルベート60、スパン8
0R(Span80R)ソルビタンオレエート(ウィルミントン
(Wilmington),DEのアイシーアイ・アメリカズ(ICI
Americas)の製品)、クレモフォアR界面活性剤(ニュ
ージャージー州パーシッパニー(Parsippany)のビーエ
イエスエフ・コーポレーション(BASF Corporation)
製)、およびポリソルベート80(メルク・インデック
ス(Merck Index),第11版,メルク・アンド・カンパ
ニー・インク(Merck & Co.,Inc.),1989年著作権,
1254ページに、ソルビタンモノ−9−オクタデカノ
エートポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)誘導体と
して定義され、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン
モノ−オレエート、ソルビタンモノ−オレエートポリオ
キシエチレン、ソルレート、ツイン80とも記載され、
特にソルビトール1モルに対して約20モルのエチレン
オキシドおよび無水ソルビトールとともにコポリマー化
させたオレイン酸エステルおよびその無水物として示さ
れている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】これらの製剤に必要なラパマイシン用量
は、現れた症状の重さおよび治療すべき個々の対象に依
存する。本発明化合物の計画的な1日の経口用量は、患
者体重キログラムあたり0.005〜75mg/kg、
好ましくは0.01ないし50mg/kgの間、より好
ましくは0.05〜10mg/kgの間である。一般的
には、化合物の最適用量より少ない用量から治療を開始
する。その後、順調に最適効果が得られるまで用量を増
加させる。治療すべき個々の対象に関して医師が経験に
より投与することにより正確な用量が決定される。一般
的には、本発明製剤を、有害あるいは有毒な副作用を起
こさずに有効な結果が得られる濃度で投与するのが望ま
しい。
【0022】本発明製剤を、一般的には経口液剤として
患者に投与することができる。患者は自分で服用する
か、あるいは水やジュースのごとき液体中に分散させる
こともできる。本発明製剤を、澱粉カプセルまたは軟ゼ
ラチンカプセルごときカプセルに充填することもでき
る。経口用ラパマイシンを、水約9部中製剤約1部ない
し水約499部中製剤約1部の範囲で最短で約60秒混
合することにより、服用のために水中に分散させること
ができる。この分散物を、服用前に撹拌しながら約1時
間以上間隔をおいて、服用前に撹拌して用いる。
【0023】本発明製剤を免疫抑制または抗炎症剤とし
て用いる場合、それらを1種またはそれ以上の免疫調節
剤と混合して投与しうることが考えられる。かかる他の
抗拒絶反応化学療法剤としては、アザチオプリン、プレ
ドニソンおよびメチルプレドニソロンのごときコルチコ
ステロイド類、シクロホスファミド、シクロスポリン
A、FK−506、OKT−3およびATGが挙げられ
るが、これらに限定されない。1種またはそれ以上の本
発明製剤を免疫抑制を誘導あるいは炎症を治療するかか
る他の薬剤と混合することにより、より少量のそれぞれ
の薬剤で所望の効果を得ることができる。かかる混合治
療の基礎は、ステプコフスキ(Stepkowski)により確立
され、その結果により、治療量以下のラパマイシンとシ
クロスポリンAの混合によって心臓同種移植片の生存時
間が延長されたことが示された[トランスプランテーシ
ョン・プロシーディングス(Transplantation Proc.)
第23巻:507頁(1991年)]。
【0024】さらに本発明製剤を、慣用的な経口用製剤
に使用する香料、着色料、アジュバント、抗真菌剤、抗
バクテリア剤等のごとき他の成分(これらに限定されな
い)とともに使用してもよいことが理解される。
【0025】
【実施例】本発明製剤を、下記の好ましい製剤および製
造方法により例示説明するが、これらに限定されない。
【0026】実施例1 経口用ラパマイシン(製剤I)の製造は、ラパマイシン
をDMAに添加し、溶液が得られるまで混合し、ポリソ
ルベート80を混合しながら添加し、透明にまるまで混
合し、ついで、試料をポリエチレングリコール(PE
G)400で所定の体積とし、均一になるまで混合する
ことからなる。ついで、試料を濾過して粒子を除去し、
包装し、冷蔵保存し、遮光する。
【0027】製剤I:成分量 ラパマイシン@100% 5.0g N,N−ジメチルアセトアミド 20.0mlまたは18.7ml 国民医薬品集ポリソルベート80 10.0mlまたは10.8ml 国民医薬品集ポリエチレングリコール400 十分量添加して100mlとする
【0028】製造指針:−1成分 1.ラパマイシンを適当なコンテナ中に計り取る。 2.ステップ1のコンテナにN,N−ジメチルアセトアミ
ドを添加する。溶液が得られるまで混合する。 3.ステップ2の溶液にポリソルベート80を添加す
る。均一になるまで混合する。 4.ポリエチレングリコール(PEG)400を十分量
添加して100mlとする。均一になるまで混合する。 5.試料を0.2ミクロンのポリテトラフルオロエチレン
(PTFE)フィルターで滅菌濾過する。 6.試料を冷蔵保存し、遮光する。
【0029】シノモルグス(Cynomolgus)属のサルに、
製剤Iを、ラパマイシン50mg/kgの用量で経口投
与し、ついで、服用後、表示した時間においてその血清
中の濃度を測定した。 50mg/kgを経口的に服用したサルの血清中のラパマイシン濃度ラパマイシン濃度(μg/ml)サルの番号時間 A B C D E 0 BDL BDL BDL BDL BDL 1時間 0.063 0.025 0.014 0.020 0.150 2時間 0.078 0.030 0.006 0.040 0.061 3時間 0.078 0.047 0.005 0.016 0.077 4時間 0.022 0.048 0.006 BDL 0.105 6時間 0.025 0.109 0.006 0.028 0.015 9時間 0.019 0.020 BDL 0.006 0.017 12時間 0.014 0.032 BDL BDL 0.020 BDL=検出限界以下(検出限界は0.006μg/m
lに等しいかまたはそれ以下)
【0030】実施例2 2成分系としての経口用ラパマイシンの製造を、製剤II
のごとく行うことができる。製剤IIは、1つのコンテナ
中の1盛の乾燥粉末ラパマイシンと、ポリソルベート8
0を適当なコンテナ中に入れ、DMAを混合しながら添
加し、均一になるまで混合し、十分量のPEG400を
添加することにより製造される希釈剤とを示す。または
別法として、製剤IIIのように、DMA中の薬剤濃縮物
(その中でDMAおよび十分量のPEG400を伴った
ポリソルベート80の希釈系によりラパマイシンを溶解
させる)を製造してもよい。
【0031】製剤II:パートA成分量 ラパマイシン@100% 5.00gパートB N,N−ジメチルアセトアミド 20.0mlまたは18.7g ポリソルベート80 10.0mlまたは10.8g ポリエチレングリコール400 十分量添加して100mlとする
【0032】製造指針パートA 1.ラパマイシンを適当なコンテナに入れる。パートB 1.ポリソルベート80を適当なコンテナに入れる。 2.ポリソルベート80にDMAを添加し、均一になる
まで混合する。 3.十分量のPEG400を添加し、均一になるまで混
合する。
【0033】構成方法: 1.パートBからの希釈剤をパートAからのラパマイシ
ン粉末に添加する。 2.溶液が得られるまで混合する。 3.試料を濾過する。 4.冷蔵保存し、遮光する。
【0034】製剤III:パートA成分量 ラパマイシン@100% 2.5g N,N−ジメチルアセトアミド 十分量添加して10mlとするパートB ポリソルベート80 5ml ポリエチレングリコール400 十分量添加して40mlとする
【0035】製造指針:パートA 1.ラパマイシンを適当なコンテナに計り取る。 2.十分量のDMAを添加し、透明になるまで混合す
る。 3.得られたた濃縮物を適当に洗浄したコンテナに入
れ、密封する。パートB 1.ポリソルベート80を適当なコンテナに入れる。 2.十分量のPEG400を添加し、透明になるまで混
合する。 3.試料を冷蔵保存し、遮光する。
【0036】比較例 一般的には、ラパマイシンは水にも油にも殆ど溶解しな
い。ラパマイシンはPEG200および300にわずか
に溶解し、20%エタノール/水、10%DMA/水、
20%クレモフォールELR/水および20%ポリソル
ベート80/水のごとき通常使用される水性共溶媒系に
は不溶またはごく僅かに溶解する。ラパマイシンは通常
経口系に使用されるヒマシ油に不溶である。これらの理
由により、ラパマイシンを、上記経口用サンドイミュー
ンおよびFK−506製剤のごとき従来の系に用いるこ
とは容易ではない。
【0037】経口用サンドイミューン シクロスポリン 100mg/ml エタノール 23.5% V/V オリーブ油/ラブラフィルM1944CS経口用FK−506 FK−506 20% メトセルロース 水 試料を水に分散させるか、または軟ゼラチンカプセルに
充填する。
【0038】本発明経口用製剤は、以前は水に可溶でな
い薬剤に使用されていた従来からの溶液、懸濁液または
エマルジョンよりも経口投与後、高い血中ラパマイシン
レベルを提供することが分かった。ラパマイシンに適用
されたこれらの従来からの服用形態の他の例、およびそ
れらの個々の血中レベルを以下に示す。
【0039】比較例1 12.5mg/mlの経口用ラパマイシン懸濁液製剤 :成分量 ラパマイシン@100% 1.25g エタノール 10.0g PEG400 15.0g 純水 十分量添加して100mlとする
【0040】製法: 1.ラパマイシンを適当に調整したコンテナに入れる。 2.エタノールを添加し、溶液が得られるまで混合す
る。 3.PEG400を添加し、透明になるまで混合する。 4.ステップ3の試料を撹拌する間に十分量の水を添加
して100mlとする。
【0041】以下にA、BおよびCと記載した3匹のシ
ノモルグス属のサルに50mg/kgのラパマイシンの
経口用懸濁液を投与し、投与後、示された時間において
血清濃度を測定した。50mg/kgの経口用ラパマイシン懸濁液を経口投与したサルの血清中のラパマイシン濃度ラパマイシン濃度(μg/ml)サルの番号時間ABC 0 BDL BDL BDL 20分 BDL BDL BDL 40分 BDL BDL BDL 80分 BDL BDL BDL 3時間 BDL BDL BDL 6時間 BDL BDL 0.006 12時間 BDL BDL 0.013 24時間 BDL BDL 0.039 BDL=検出限界以下(検出限界は0.006μg/m
lに等しいかまたはそれ以下)
【0042】比較例225mg/mlの経口用ラパマイシン溶液製剤 :成分量 ラパマイシン@100% 2.5g ポリソルベート80 10.0g 無水エタノール 10.0g トリアセチン 十分量添加して100mlとする
【0043】製法: 1.ポリソルベート80およびエタノールを適当なコン
テナに入れる。 2.トリアセチンを十分添加して100mlとする。 3.ステップ2のコンテナにラパマイシンを添加し、溶
液が得られるまで混合する。
【0044】以下にA、BおよびCと記載した3匹のシ
ノモルグス属のサルに50mg/kgのラパマイシンの
経口用溶液を投与し、投与後、示された時間において血
清濃度を測定した。50mg/kgの経口用ラパマイシン溶液を経口投与したサルの血清中のラパマイシン濃度ラパマイシン濃度(μg/ml)サルの番号時間ABC 0 BDL BDL BDL 20分 BDL BDL BDL 40分 BDL BDL BDL 80分 BDL BDL BDL 3時間 BDL BDL BDL 6時間 BDL BDL BDL 12時間 BDL BDL BDL 24時間 BDL BDL BDL BDL=検出限界以下(検出限界は0.006μg/m
lに等しいかまたはそれ以下)
【0045】比較例350mg/mlの経口用ラパマイシンエマルジョン製剤 :成分量 ラパマイシン@100% 5.0g ジメチルアセトアミド 10ml オリーブ油 十分量添加して100mlとする
【0046】製法: 1.ラパマイシンを適当なコンテナに入れる。 2.ステップ1のコンテナにジメチルアセトアミドを添
加し、透明になるまで混合する。 3.オリーブ油を十分量添加して均一になるまで混合す
る。
【0047】以下にA、BおよびCと記載した3匹のシ
ノモルグス属のサルに50mg/kgの経口用ラパマイ
シンエマルジョンを投与し、投与後、示された時間にお
いて血清濃度を測定した。50mg/kgの経口用ラパマイシンエマルジョンを経口投与したサルの血清中のラパマイシン濃度ラパマイシン濃度(μg/ml)サルの番号時間ABC 0 BDL BDL BDL 20分 BDL BDL BDL 40分 BDL BDL BDL 80分 BDL BDL BDL 3時間 BDL BDL BDL 6時間 BDL 0.110* BDL 12時間 BDL BDL BDL 24時間 BDL BDL BDL BDL=検出限界以下(検出限界は0.006μg/m
lに等しいかまたはそれ以下) *試験室で得られた結果は正常でないと考えられる。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、臨床的または非臨床的
いずれの状況においても有効に投与(好ましくは自分で
投与)できるラパマイシンの経口投与に有用な製剤服用
形態が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 トーマス・ウェイモンド・レオナード アメリカ合衆国28403ノース・カロライナ 州ウィルミントン、サウス・ライブ・オー ク・パークウェイ2201番