【考案の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】 本願は、工作機械のワークテーブルやワーク搬送用のパレット等に取付けるベ ースにチャック本体を固着し、チャック本体内にチャック軸線方向のシリンダを 設け、シリンダの作動により把持爪をチャック本体中心に対して半径方向に移動 させワークの把持解放を行うステーショナリーチャックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】 従来のステーショナリーチャック1は、図3に示すように把持爪9を移動させ るためのシリンダ19のピストンロッド16をチャック本体2の後端よりベース 4の取付空間37まで延長させ、このピストンロッド16の後端部外周に検出ド ッグ51を取付け、ベース4の取付空間37にはベース4に取付けたブラケット 52を介して検出ドッグ51の移動軌跡と対応する上下位置に、把持爪9のクラ ンプ、アンクランプ検出用の一対の近接スイッチ53を並設し、シリンダ作動時 にピストンロッド16とともに上下動する検出ドッグ51をどちらかの近接スイ ッチ53が検出することにより把持爪9のクランプ、アンクランプを検出するよ うにしていた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】 ところで、このようなステーショナリーチャック1では、ワークの高さ及び工 作機械の主軸工具の突出長などの関係から工作機械のワークテーブルや搬送用の パレット等への取付面からの高さ寸法をできる限り小さくしたいという場合が生 じる。しかし、前記従来のステーショナリーチャック1では、ベース4の取付空 間37に一対の近接スイッチ53を上下方向に並設しているためベースの高さ寸 法が比較的大きくなり、前記要望を十分満足させるものではなかった。しかも、 ワークの大きさ変更により把持径が変わり、検出ドッグ51の把持、解放位置が 変更される場合、この検出ドッグ51の停止位置に対応して近接スイッチ53の 取付位置を変更するという煩雑な調整作業を必要としていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】 前記問題点を解決するため本願では、工作機械のワークテーブルやワーク搬送 用のパレット等に取付けるベースにチャック本体を固着し、チャック本体内にチ ャック軸線方向のシリンダを設け、シリンダの作動により把持爪をチャック本体 中心に対して半径方向に移動させてワークの把持解放を行うステーショナリーチ ャックにおいて、シリンダのピストンロッドの後端面に可動金属スリーブをチャ ック軸線方向に埋設し、ベースにはピストンロッドの後端面に対向する位置にセ ンサ取付空間を設け、そのセンサ取付空間にベースに取付けたセンサケースを配 設し、そのセンサケースには可動金属スリーブ内に挿入されて自己インダクタン スが変化するセンサ体を突設し、ベースとチャック本体の何れかの外周にそのセ ンサ体の自己インダクタンス変化を検出制御する制御装置を設けて成ることを特 徴とする。
【0005】
【作用】 ステーショナリーチャックのベースに設けたセンサ取付空間には、比較的高さ 寸法を小さくできるセンサケースを取付けるだけで良いので、ベースの高さ寸法 を十分小さくでき、工作機械への取付面からの高さ寸法を小さくできる。また、 ピストンロッドに埋設した金属スリーブの軸方向移動により高周波励磁を利用し てセンサ体の自己インダクタンスを変化させ、その自己インダクタンスの変化を 外部の制御装置により検出するようにしたので、ワークによりピストンロッドの ストローク範囲がかわる場合でもこのセンサ出力を外部の制御装置で処理するこ とにより、制御装置に予め設定する把持、解放位置データの変更だけで簡単に対 応できる。
【0006】
【実施例】 次に図1においてステーショナリーチャック1の実施例について説明する。こ のステーショナリーチャック1のチャック本体2の下端部には、ボルト3を介し てベース4がねじ止めされ、このベース4は工作機械のワークテーブルや搬送用 のパレット等に適宜の方法により固定されるようになっている。また、チャック 本体2の上部には、半径方向のマスタジョウ案内溝5が複数設けられ、このマス タジョウ案内溝5には、マスタジョウ6が一体に取付けられている。また、マス タジョウ1の半径方向内端には断面T字状の傾斜フック11が形成され、この傾 斜フック11は、チャック本体2中心に上下方向に摺動自在に嵌装されたウエッ ジブランジャ12に形成した傾斜溝13に摺動自在に楔係合している。このウエ ッジブランジャ12はボルト14により連結部材15に連結され、この連結部材 15の外周には導電性の高い非磁性金属材料(銅、黄銅、アルミなど)から成る ピストンロッド16の上部に形成した筒部16aが一体螺合されている。また、 ピストンロッド16の筒部16a外周には、ピストン17の取付筒部17aが螺 合され、このピストン17はチャック本体2に形成したピストン室18内に上下 動自在に嵌装されてシリンダ19を構成している。従って給排ボート21,22 より流体を給排させることにより、ピストン17とともに、ウエッジプランジャ 12がチャック本体2の軸線方向へ上下動し、その結果マスタジョウ6とともに 把持爪9が半径方向に移動し、ワークをクランプ、アンクランプするようになっ ている。
【0007】 次に可動金属スリーブ31、固定金属スリーブ32、可変インダクタンスコイ ル33及び固定インダクタンス34より成る例えば特開平2−116712号で 公知のスリーブセンサ(製品名)35について説明する。可動金属スリーブ31 は前記ピストンロッド16下端面にチャック軸線方向へ形成した取付孔36内に 埋設されている。また、チャック本体2後端にねじ止めしたベース4にはピスト ンロッド16の後端面と対向する部分にセンサ取付空間37が設けられている。 そのセンサ取付空間37には、ベース4に取付けられた取付板38を介してセン サケース39が取付けられている。センサケース39には図2に示すように上方 に伸びるセンサ体40が突設されている。このセンサ体40において、コア43 は基部がセンサケース39に固定されている。このコア43には固定インダクタ ンスコイル(ダミーコイル)34及び可変インダクタンスコイル(主コイル)3 3が基部側から順に巻回されている。固定インダクタンスコイル34にはセンサ ケース39に固着された固定金属スリーブ32が被されている。コア43に可変 インダクタンスコイル33が巻回された部分は前記可動金属スリーブ31内に挿 入されている。前記両コイル33,34はコイル内が同じ方向になるように発信 器や整流器を含むセンサケース39内の検波回路(図示せず)に接続されている 。また、ベース4には、取付空間37とベース4上面とを通過させる連通路41 が穿設され、この連通路41を介してセンサケース39とベース4上面に固着さ れた制御装置42とが配線接続されている。この制御装置42は設定器把持爪9 によるワークのクランプ、アンクランプ位置に対応した可動金属スリーブ31の 可変インダクタンスコイル33の変位置に相当する出力電圧が設定入力される。 制御装置42はチャック本体2に取付けても良い。
【0008】 このように構成されたスリーブセンサ35ではピストン17の移動とともに可 動金属スリーブ31が可変インダクタンスコイル33に対して長手方向に移動す ると、可変インダクタンスコイル33のインピーダンス変化と固定インダクタン スコイル34の固定インピーダンスの値とから検波整流回路を介して変位量に相 当する出力電圧が制御装置42に出力され、この出力電圧から制御装置42は可 動金属スリーブ31の上下方向位置即ちピストン17の位置を検出し、この検出 値が予め設定されたクランプ、アンクランプと対応した軸方向位置と一致したと 判別すると、工作機械の運転制御装置にクランプ又はアンクランプ確認信号を出 力するようになっている。
【0009】 次に、以上のように構成されたステーショナリーチャック1の作用について説 明する。先ず、このステーショナリーチャック1のベース4を工作機械の例えば ワークテーブルに対して固定しておき、また制御装置42の設定器には今から加 工するワーク把持径に基づくクランプ、アンクランプ位置と対応した可動金属ス リーブ31の軸方向位置を予め設定しておく。そして図1に示すようにアンクラ ンプ状態より給排ポート21に流体を供給しピストン17をチャック本体2に対 して下降させると、ウエッジブランジャ12とマスタジョウ6との楔係合により 把持爪9はワークのクランプ方向に移動し、このピストン17の移動とともにピ ストンロッド16に埋設された可動金属スリーブ31はコア43に対して下方に 移動する。すると、スリーブセンサ35はこの変位に相当する出力電圧を制御装 置42に出力し、この出力電圧によって制御装置42は、可動金属スリーブ31 の上下方向位置を検出することになる。そして把持爪9によりワークがクランプ されると制御装置42は、可動金属スリーブ31の上下方向位置が予め設定され たクランプ位置と対応した軸方向位置と一致したことを判別し、工作機械の運転 制御装置にクランプ確認信号を出力する。
【0010】 尚、加工するワークの把持径が変更される場合は、制御装置42に設定される クランプ位置、アンクランプ位置と対応する可動金属スリーブ31の軸方向位置 を設定しなおすのみでよく、煩雑な調整作業が無い。
【0011】
【考案の効果】 以上のように本願のステーショナリーチャックでは、金属スリーブを前記シリ ンダのピストンロッド後端面に埋設し、ステーショナリーチャックのベースに設 けたセンサ取付空間に、自己インダクタンス変化を検出するセンサ体を金属スリ ーブ内に挿入するように配設したので、従来のようにベースの取付空間に一対の 近接スイッチを並設するものに比べてステーショナリーチャックの高さ寸法を低 くすることができ、また、ワーク変更時には制御装置の設定値をクランプ、アン クランプ位置と対応する値に変更するだけでよく、調整作業を容易にできる。
【図面の簡単な説明】【図1】本願のステーショナリーチャックの縦断面図で
ある。
【図2】スリーブセンサの説明図である。
【図3】従来のステーショナリーチャックの縦断面図で
ある。
【符号の説明】 1 ステーショナリーチャック、 4 ベース、 19
 シリンダ、31 可動金属スリーブ、 32 固定金
属スリーブ、33 可変インダクタンスコイル、 34
 固定インダクタンスコイル、35 スリーブセンサ、
 39 センサケース、 40 センサ体、42 制御
装置