JPH055106A - 合金系焼結体の製法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】【目的】 表面硬度が大きく、耐磨耗性に優れ、しか
も、欠けや割れが生じ難い合金系焼結体を得ることがで
きるとともに量産化適性を有する方法を提供する。【構成】 Ａｌを含むフェライト合金粉末を所定の形状
に成型した成形体を非酸化性雰囲気中で焼結し、酸化性
ガス雰囲気中で熱処理することにより表面にアルミナ成
分を析出させることを特徴とする合金系焼結体の製法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、刃物、あるいは、ギ
ア、シャフトなどの耐磨耗性を必要とする部品に適用出
来る合金系焼結体の製法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、このような用途には、セラミック
材料あるいは合金材料が用いられていた。 セラミック材料の使用 原料用セラミック粉末と有機バインダーとを混合し、射
出成形あるいは直圧成形により所定の形状に成形し、熱
処理でバインダーを飛ばした後、焼結させたセラミック
焼結品がある。このようにして製造された焼結品は、硬
度がＨｖ＝２０００以上と硬いが、靱性がないため、欠
けたり、割れたりし易いという欠点があった。

【０００３】 合金材料を使用する場合、一方、超硬
材料として賞用される金属材料は、靱性は優れている反
面、表面硬度（Ｈｖ＝１１００程度）がセラミック焼結
品の表面硬度（Ｈｖ＝２０００以上）と比べ相当に低
く、耐磨耗性が十分とは言い難い。そこで、金属の表面
に耐磨耗性を有する皮膜を形成し複合化によって、耐磨
耗性を向上させる試みもなされている。具体的に言う
と、例えばスパッタ法やＣＶＤ法などの方法で、金属表
面にＴｉＮやＺｒＮ等の膜を形成するのである。この場
合、金属の表面に形成された皮膜と金属の間には、異質
材料を複合化した場合に固有的に形成される境界面が存
在するために相互の密着強度が小さいという問題や、皮
膜の厚みを十分に厚くすることが現実的に難しく膜厚に
制限が加わるため十分な耐磨耗性を確保することができ
ないという問題がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の事
情に鑑み、表面硬度が大きく、耐磨耗性に優れ、しか
も、欠けや割れが生じ難い合金系焼結体を得ることがで
きるとともに量産化適性を有する方法を提供することを
課題とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、この発明の合金系焼結体の製法では、Ａｌを含むフ
ェライト合金粉末を所定の形状に成型した成形体を非酸
化性雰囲気中で焼結し、酸化性ガス雰囲気中で熱処理す
ることにより表面にアルミナ成分を析出させるようにす
る。

【０００６】非酸化性雰囲気としては、請求項２の如き
不活性ガス雰囲気、あるいは、請求項３の如き還元性ガ
ス雰囲気、さらには、請求項４の如き真空雰囲気が挙げ
られる。非酸化性雰囲気での焼結の際の熱処理温度は、
請求項４のように、１３００〜１４００℃の温度範囲が
好ましい。勿論、焼結の際の熱処理温度は、この範囲に
限らないが、１３００〜１４００℃の温度範囲を外れる
と適用できる成形圧力範囲が狭くなったりする等の制限
を受ける不都合がある。

【０００７】Ａｌを含むフェライト合金としては、Ｆｅ
−Ｃｒ−Ａｌ系合金やＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系合金等
がある。これらの合金の母材の硬度は、その合金を構成
する金属元素の種類や含有量の多少によりＨｖ＝２００
以下であったり、Ｈｖ＝３００以上であったり、その値
は異なる。Ｆｅ−Ｃｒ−Ａｌ系合金は概して靱性を満た
しても、硬度がＨｖ＝２００以下であるので、硬度が要
求される用途（例えば、ギアやシャフトの如き機構部
品）には適していない。

【０００８】したがって、用途に応じてＡｌを含むフェ
ライト合金の種類は選択される。Ｈｖ＝３００以上の硬
度が要求される用途にはＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系合金
が適し、特に、その組成がＣｒ：２０〜３５重量％：Ｎ
ｉ：２〜２５重量％、Ａｌ：２〜８重量％、Ｔｉ：０．
５重量％以下、Ｚｒ、Ｙ、Ｈｆ、Ｃｅ、Ｌａ、Ｎｄおよ
びＧｄのうちのいずれか１種又は２種以上：０．０５〜
１．０重量％、Ｆｅ：残部からなるＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−
Ａｌ系フェライト合金が最適である。刃物、あるいは、
ギア、シャフトなどの耐磨耗性を必要とする機械部品用
として適した焼結品が得やすい。もちろん、この発明の
Ａｌを含むフェライト合金は、このＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−
Ａｌ系フェライト合金に限定されるものではない。

【０００９】以下、この発明を、より具体的に説明す
る。まず、例えば、Ｃｒ：２０〜３５重量％：Ｎｉ：２
〜２５重量％、Ａｌ：２〜８重量％、Ｔｉ：０．５重量
％以下、Ｚｒ、Ｙ、Ｈｆ、Ｃｅ、Ｌａ、ＮｄおよびＧｄ
のうちのいずれか１種又は２種以上：０．０５〜１．０
重量％、残部が実質的にＦｅという配合割合で全成分を
溶解し、例えば、アトマイズ法により微粉化したり、機
械的粉砕法で合金を微粉化したりすることで、Ａｌを含
むフェライト合金粉末を得る。

【００１０】このようにして得たＡｌを含むフェライト
合金粉末を有機のバインダーと混合し、射出成形あるい
は直圧成形などの方法で金型によって所定形状に成型
（賦形）して成形体とする。この成形体は用途に応じた
製品、部品の形状に賦形された物であり、次工程で研削
の如き加工が施されるインゴットの如き母材とは異なる
ものである。有機のバインダーの一例を示しておくと、
ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、エチレングリコール
等の有機化合物が挙げられる。

【００１１】成型時の圧力は、この発明の場合、４００
ＭＰａ程度の低い圧力の適用もあり、通常、４００〜１
０００ＭＰａ程度、あるいは、４５０〜６００ＭＰａ程
度の範囲から選ばれる。ただ、成型時の圧力が４００Ｍ
Ｐａ未満だと寸法精度等が出難い等の傾向がみられる。
つぎに、この成形体を、非酸化性雰囲気において熱処理
することにより焼結させる。熱処理は、１２５０〜１４
００℃（好ましくは１３００〜１４００℃）で行う。こ
の熱処理温度範囲であれば、液相を生じることなく十分
な硬度（Ｈｖ＝３００程度）や抗張力１００ｋｇ／ｍｍ
以上とすることができ、機構部品としても十分な強度の
母材たりえるものが得られる。

【００１２】非酸化性雰囲気で熱処理を行う理由は、酸
化が生じると焼結が進まず合金としての靱性を確保する
ことができないからである。不活性ガス雰囲気の場合、
例えば、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが用いら
れる。還元性ガス雰囲気の場合、例えば、水素ガスなど
が用いられる。このようにして得られた焼結体は、母材
がセラミックとは異なり、フェライト合金粉末の焼結体
であるから、アルミナ析出前では、割れや欠けを生ずる
ことなく、研削、研磨などの機械加工あるいは放電加工
が容易に出来るという利点がある。したがって、要すれ
ばアルミナ析出前に機械加工や放電加工を施すことがで
きる。

【００１３】従来のセラミック材料の場合、焼結に伴う
２０％前後の収縮のため、寸法精度が出難くいのである
が、加工は困難であるため、後加工で寸法精度を上げる
ことが難しい。超硬材料の場合も、切削、研削などの後
加工が容易ではなく、やはり寸法精度が出難い。いずれ
の場合も、精度を要求されるところに用いるには適して
いないのである。

【００１４】しかし、この発明の場合、上のように、ア
ルミナ析出前では、割れや欠けを生ずることなく、研
削、研磨などの機械加工あるいは放電加工で寸法精度を
上げることができる。そのため、この発明は、寸法精度
を要求されるところにも十分に適用できる。次に、この
焼結体を、例えば、大気又は酸素ガス等の酸化性ガス雰
囲気中において、例えば、１０００℃を超す温度で熱処
理を行い、表面にアルミナ（酸化アルミニウム）成分を
析出させる。この熱処理で、例えば、アルミナを主成分
とする表面層（アルミナ皮膜）付のＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−
Ａｌ合金系焼結品が出来上がる。

【００１５】ここで、焼結体を構成する合金の表面に析
出される成分をアルミナに限定するのは、酸化性ガス雰
囲気中で熱処理すると、容易にＡｌ元素が酸化され硬度
の高いアルミナからなるセラミックを生成することがで
きるからである。このようにして得られた合金系焼結体
は、アルミナを主成分とする表面層を有するため表面硬
度は大きくなり、かつ焼結体の内部を充たす母材が合金
であるため靱性に優れる。その上、金属表面にスパッタ
法やＣＶＤ法などによりセラミックの皮膜を形成した場
合には、皮膜と金属の母材とに境界面が形成されるので
皮膜と母材との密着強度が小さく、更に皮膜層の膜厚が
制限されるため充分な耐磨耗性が得られないのに対し、
この発明によるアルミナを主成分とする表面層は母材中
にアルミナの根が張っているため母材との密着強度が大
きく、しかも、この表面層の厚さは１０〜５０μｍに高
めることも出来る。さらには、成型、焼結の工程により
目的とする形状に賦形し、効率の悪い切削などの加工を
要さずに製造することが可能であり、この場合には、工
業的生産に要求される経済性、大量生産効果も顕著であ
ると言える。つまり、量産適性があるのである。

【００１６】この発明の方法が適用できる物品として
は、以下のようなものが挙げられる。 〔家庭用に使われる刃物〕電気カミソリの刃、バリカン
（特に小石などの噛み込みの可能性のあるペット用バリ
カンや庭園用の庭木バリカン）の刃、草刈機や料理用ミ
キサー、カッターなどの刃、小刀、ハサミ、日曜大工用
ノコギリ刃など。

【００１７】〔業務用に使われる刃物〕各種帯ノコ刃、
回転刃、バイト、ダイスなどの工具類、混練機のスクリ
ューなど。 〔耐磨耗性部品〕電動ドリルの刃、ドリルチャック部
品、ギア、回転軸、軸受けなど。

【００１８】

【作用】この発明の製法で得られた合金系焼結体におい
ては、表面層を形成するアルミナ成分が内部を充たす合
金の中に根を張って形成されるため表面層と合金との密
着力を大きくする作用をし、表面にアルミナが析出する
ことは表面硬度を高くする作用をし、また焼結体の内部
を充たす合金は焼結体の靱性を高くする作用をする。

【００１９】そして、目的とする形状に成型、焼結工程
によることは、工業的生産に要求される経済性、大量生
産性を向上させるため、量産適性が出てくる。また、焼
結後であってアルミナ析出前の合金焼結体には、欠けや
割れなどを生じずに所定形状に正確に見合うように加工
が施せるため、寸法精度の向上を図ることができるた
め、精度を要求される場合にも適用可能である。

【００２０】

【実施例】以下、この発明の実施例を説明する。この発
明は、下記の実施例に限らない。 −実施例１− Ｃｒ：２４重量％、Ｎｉ：４重量％、Ａｌ：３．５重量
％、Ｚｒ：０．０５重量％、残部：Ｆｅの組成の合金を
高周波溶解炉で溶解した。出来たインゴットを１〜２ｍ
ｍの厚みに圧延し、得られた板を２〜３ｍｍ角のチップ
状に切断した後、粉砕し５０メッシュ以下のフェライト
合金粉末にした。

【００２１】この粉末にバインダーとしてＰＶＡを混合
しスラリー状にした後、周りに突条を平行に並べたギア
を成型するキャビティにこれを充填し直圧成型で焼結前
のギアを成型した。成形体であるこの生のギアをアルゴ
ンガス雰囲気中で１２５０℃、５時間の焼結をし、焼結
体を得た。次に大気中で１１５０℃、１０時間の加熱を
して、表面にアルミナを析出させた結果、表面が灰色を
した目的物であるギアを得た。

【００２２】表１に、このアルミナを析出させた焼結体
の表面硬度および内部の合金の硬度（母材硬度として示
す）並びに表面のアルミナ成分の含有率を示す。なお、
電子顕微鏡で表面層の断面を観察したところ、アルミナ
は表面から内部に進行するにしたがって針条の突起が内
部の合金に突き刺さったような状態であることを確認し
た。

【００２３】−実施例２− Ｃｒ：３０重量％、Ｎｉ：２１重量％、Ａｌ：６重量
％、Ｔｉ：０．５重量％、Ｚｒ：０．２重量％、残部：
Ｆｅの組成の合金を高周波溶解炉で溶解し、出来たイン
ゴットをアトマイズ法によりフェライト合金粉末にした
後、実施例１と同じ方法で成型、焼結、熱処理を行っ
た。

【００２４】表１に得られた焼結体の表面硬度および合
金の硬度（母材硬度として示す）並びに表面のアルミナ
成分の含有率を示す。なお、電子顕微鏡で表面層の断面
を観察したところ、アルミナは表面から内部に進行する
にしたがって針状の突起が内部の合金に突き刺さったよ
うな状態であることを確認した。 −実施例３− Ｃｒ：２６重量％、Ｎｉ：２１重量％、Ａｌ：６．５重
量％、Ｚｒ：０．２重量％、残部：Ｆｅの組成の合金を
高周波溶解炉で溶解し、出来たインゴットをアトマイズ
法によりフェライト合金粉末にした後、実施例１と同じ
方法で焼結前のギアを成型した。成形体であるこの生の
ギアを水素ガス雰囲気中で１３５０℃、５時間の焼結を
し、焼結体を得た。次に大気中で１１５０℃、１０時間
の加熱をして、表面にアルミナを析出させた結果、表面
が灰色をした目的物であるギアを得た。

【００２５】表１に、このアルミナを析出させた焼結体
の表面硬度および内部の合金の硬度（母材硬度として示
す）並びに表面のアルミナ成分の含有率を示す。なお、
電子顕微鏡で表面層の断面を観察したところ、アルミナ
は表面から内部に進行するにしたがって針条の突起が内
部の合金に突き刺さったような状態であることを確認し
た。

【００２６】−参考例１、２− 超硬金属材料であるＳＫＨ５とセラミック材料であるア
ルミナについての硬度（この場合は表面硬度と母材硬度
は等しい）を表１にそれぞれ参考例１、２として併記す
る。

【００２７】

【表１】

【００２８】−実施例４− Ｃｒ：３２重量％、Ｎｉ：２１重量％、Ａｌ：６．５重
量％、Ｚｒ：０．８重量％、残部：Ｆｅという割合で溶
解し、アトマイズ法により微粉化しＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−
Ａｌ系フェライト合金粉末を得た。このようにして得た
合金粉末とバインダー用のＰＶＡとを混ぜ合わせ、４５
０ＭＰａの圧力で成型した。ついで、成形体を真空中に
おいて、１３５０℃、３時間の熱処理をすることにより
焼結させた後、研削加工し所定の形状に正確に合わせ
た。次に、大気中において、１１５０℃、２０時間の熱
処理および１２５０℃、３０分の熱処理を施しアルミナ
皮膜の形成を行い、空冷してＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系
焼結品（合金系焼結体）を得た。

【００２９】−実施例５− 成形圧力が６００ＭＰａである他は、実施例４と同様に
して、Ｆｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品を得た。 −実施例６− Ｃｒ：２４重量％、Ｎｉ：４重量％、Ａｌ：３．５重量
％、Ｚｒ：０．０５重量％、残部が実質的にＦｅという
割合で高周波溶解炉で溶解するようにして、合金インゴ
ットを得た。このインゴットを１〜２ｍｍの厚みまで圧
延し、この板を２〜３ｍｍ角のチップ状に細断した後、
機械的に粉砕し、５０メッシュ以下のＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ
−Ａｌ系フェライト合金粉末を得た。

【００３０】このようにして得た合金粉末とバインダー
用のＰＶＡとを混ぜ合わせ、１０００ＭＰａの範囲の適
当な圧力で成形した。ついで、成形体をアルゴンガス雰
囲気において、１３００℃、５時間の熱処理をすること
により焼結させた後、研削加工し所定の形状に正確に合
わせた。次に、大気中において、１１５０℃、２０時間
の熱処理および１２５０℃、３０分の熱処理を施しアル
ミナ皮膜の形成を行い、空冷してＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａ
ｌ系焼結品を得た。

【００３１】−実施例７− Ｃｒ：３５重量％、Ｎｉ：２１重量％、Ａｌ：７重量
％、Ｚｒ：０．４重量％、残部が実質的にＦｅという割
合で高周波溶解炉で溶解し、アトマイズ法により微粉化
しＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系フェライト合金粉末を得
た。このようにして得た合金粉末とバインダー用のＰＶ
Ａとを混ぜ合わせ、７００ＭＰａの範囲の適当な圧力で
成形した。ついで、成形体を真空中において、１３５０
℃、４時間の熱処理をすることにより焼結させた後、研
削加工し所定の形状に合わせた。次に、大気中におい
て、１１５０℃、２０時間の熱処理および１２５０℃、
３０分の熱処理を施しアルミナ皮膜の形成を行い、空冷
してＦｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品を得た。

【００３２】−実施例８− 成形圧力が９００ＭＰａであり、焼結のための熱処理温
度が１３００℃である他は、実施例７と同様にして、Ｆ
ｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品を得た。 −実施例９− 実施例４で使用した合金粉末を分級し、３０μｍ以下と
した合金粉末と、約１０重量％のパラフィンワックス、
ステアリン酸を主成分としたバインダーとを混練し、１
５０℃で所定の形状に射出成形した。得られた成形体
を、真空中、４００℃で５０時間保持して脱脂した。脱
脂した成形体を、真空中、１３５０℃に３時間保持して
焼結させた後、炉中に酸素ガスを送給て、１２５０℃で
３０分保持して、表面にアルミナ皮膜を析出させ、Ｆｅ
−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品を得た。

【００３３】−実施例１０− 実施例９と同様にして得た射出成形体を、アルゴンガス
雰囲気中、５００℃で５０時間保持して脱脂した。脱脂
した成形体を、アルゴンガス雰囲気中、１３５０℃に３
時間保持して焼結させた後、炉内ガスを酸素ガスに置換
し、１２５０℃で３０分保持して、表面にアルミナ皮膜
を析出させ、Ｆｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品を得た。

【００３４】−実施例１１− 実施例７で使用した合金粉末を分級し、３０μｍ以下と
した合金粉末を用いた他は、実施例９と同様にして、Ｆ
ｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品を得た。実施例４〜１１
の焼結品のアルミナ皮膜状態、母材硬度および寸法精度
を調べた。調べた結果を、表２に示す。表２において、
寸法精度のデータ欄の○は５％未満の寸法誤差に収まっ
ていることを示す。

【００３５】

【表２】

【００３６】表２の結果から、実施例４〜１１の焼結品
は、寸法精度がよくて表面硬度が大きく、丈夫であるこ
とがよく分かる。なお、図１は実施例４のアルミナ皮膜
付Ｆｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品の表面付近の金属組
織をあらわす光学顕微鏡写真（倍率７００倍）である。
図１の写真では、略下半を占める黒の斑点のある白地部
分が母材であり、その上方の黒地の層がアルミナ皮膜で
あり、さらにその上方の黒地層は保護Ｎｉ膜である。図
２は実施例４のアルミナ皮膜付Ｆｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ
系焼結品の内部の金属組織をあらわす光学顕微鏡写真
（倍率７００倍）である。図３は、実施例４の焼結品の
表面付近の金属組織の大略を模式的にあらわしたもので
ある。そして、図１、２の母材部分では、図２にみるよ
うに、黒色部は空洞、灰色部はＮｉＡｌ相、白色部はフ
ェライト相である。また、図３は、母材３の表面にアル
ミナ皮膜２が形成され、アルミナ皮膜２の上には保護Ｎ
ｉ膜３のある構成を図示するものである。

【００３７】また、実施例４において、焼結のための処
理温度を１２００℃とした場合は、母材硬度が十分なも
のになり難い傾向がみられた。そして、実施例６におい
て、成形圧力を３５０ＭＰａとした他は全く同様にして
Ｆｅ−Ｃｒ−Ｎｉ−Ａｌ系焼結品を得たが、寸法精度
（誤差が５％を越える）、母材硬度およびアルミナ皮膜
状態は、いずれも実施例６よりもかなり劣る傾向がみら
れた。

【００３８】

【発明の効果】以上に述べたように、この発明は、表面
の硬度が高く、かつ欠けや割れが生じにくい耐磨耗性に
優れる有用な合金系焼結体を得ることができ、しかも、
量産適性があるため、非常に有用である。また、請求項
６に示す組成のＡｌを含むフェライト合金粉末を用いた
場合は、機構部品などのように表面硬度と母材硬度が共
に必要な用途に適する合金系焼結体が確実に得られると
いう利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例４の焼結品の表面付近の金属組織をあら
わす光学顕微鏡写真（倍率７００倍）である。

【図２】実施例４の焼結品の内部の金属組織をあらわす
光学顕微鏡写真（倍率７００倍）である。

【図３】実施例４の焼結品の表面付近の金属組織の概略
をあらわす説明図である。

【符号の説明】

１ 保護Ｎｉ膜 ２ アルミナ皮膜 ３ 母材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 児島 肇 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 棚橋 正雄 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】【請求項１】 Ａｌを含むフェライト合金粉末を所定の
   形状に成型した成形体を非酸化性雰囲気中で焼結し、酸
   化性ガス雰囲気中で熱処理することにより表面にアルミ
   ナ成分を析出させることを特徴とする合金系焼結体の製
   法。【請求項２】 非酸化性雰囲気が不活性ガス雰囲気であ
   る請求項１記載の合金系焼結体の製法。【請求項３】 非酸化性雰囲気が還元性ガス雰囲気であ
   る請求項１記載の合金系焼結体の製法。【請求項４】 非酸化性雰囲気が真空雰囲気である請求
   項１記載の合金系焼結体の製法。【請求項５】 非酸化性雰囲気中、１３００〜１４００
   ℃の温度で加熱することにより焼結がなされる請求項１
   から４までのいずれかに記載の合金系焼結体の製法。【請求項６】 Ａｌを含むフェライト合金粉末の組成
   が、Ｃｒ：２０〜３５重量％：Ｎｉ：２〜２５重量％、
   Ａｌ：２〜８重量％、Ｔｉ：０．５重量％以下、Ｚｒ、
   Ｙ、Ｈｆ、Ｃｅ、Ｌａ、ＮｄおよびＧｄのうちのいずれ
   か１種又は２種以上：０．０５〜１．０重量％、Ｆｅ：
   残部からなる請求項１から５までのいずれかに記載の合
   金系焼結体の製法。