【考案の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】  本考案は、燃料タンク等の密閉容器内の圧力変化に応じて開閉弁して、密閉容器内の圧力を調節するブリーザバルブに関する。
【0002】
【従来の技術】  従来より、自動二輪車や船外機に用いられる燃料タンク等の密閉容器は、燃料の消費や温度の変化による燃料蒸気分圧の増加により、密閉容器内の圧力が変化する。この圧力変化による密閉容器の変形、損傷を防止するために、実開昭61−108573号公報にあるように、小孔を介して大気と連通するものが知られている。
【0003】  また、燃料タンク内のガソリン蒸気をそのまま大気に放出するのを防止するために、実公昭60−34850号公報にあるように、燃料タンクとガソリン蒸気を吸着する活性炭等が封入された吸着容器とをブリーザ通路で連通し、このブリーザ通路にブリーザバルブを介装したものが知られている。このブリーザバルブは、燃料タンク内が負圧になると、バルブ体が第1のばねに抗して移動して、燃料タンクと吸着容器とを連通し、吸着容器を介して大気を燃料タンク内に吸入する。そして、燃料タンク内の燃料蒸気圧が上昇すると、ダイヤフラムが第2のばねに抗して移動して、レバーがバルブ体に接触し、バルブ体を押圧して、ショルダ部から離間させ、燃料タンクと吸着容器を連通し、燃料タンク内のガソリン蒸気を吸着容器に排出するものである。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】  しかしながら、こうした従来のものでは、複数のばねを必要とし、またダイヤフラム、バルブ体、レバー等が必要であり、部品点数が多く、構造が複雑であった。また、ダイヤフラムを用いているために、バルブ全体の形状が大きく、自動二輪車や船外機等に用いる場合には、取付が容易でないという問題があった。
【0005】  そこで本考案は上記の課題を解決することを目的とし、構造が簡単で、小型のブリーザバルブを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】  かかる目的を達成すべく、本考案は課題を解決するための手段として次の構成を取った。即ち、  密閉容器に連通したブリーザ通路に接続され、前記密閉容器内の圧力変化に応じて開閉弁して、前記密閉容器内の圧力を調節するブリーザバルブにおいて、  前記ブリーザ通路に接続した摺動孔に、弁体を摺動可能に嵌挿すると共に、前記弁体を前記密閉容器側に付勢するばねを設け、  かつ、該弁体に、前記密閉容器に向かってすぼめた弾性部を形成し、該弾性部の先端に、前記密閉容器内の圧力低下に基づく弾性変形により開口可能な給排口を形成して前記ブリーザ通路を開閉可能とすると共に、  反密閉容器側から前記給排口に向かって突出され、前記密閉容器内の圧力上昇により前記ばねの付勢力に抗して摺動した前記弁体の前記給排口に挿入されて開口させる針部材を備えたことを特徴とするブリーザバルブの構成がそれである。
【0007】
【作用】  前記構成を有するブリーザバルブにおいては、密閉容器内と外部との圧力差が小さいと、弾性部先端の給排口は閉じた状態で、ブリーザ通路と外部との連通を遮断する。そして、密閉容器内の圧力が低下し、外部との圧力差が大きくなると、弁体の弾性部が、弾性変形して、給排口が開口し、ブリーザ通路を介して密閉容器内と外部とを連通し、密閉容器内との圧力差が大きくならないように調節する。
【0008】  また、密閉容器内の圧力が上昇し、圧力差が大きくなると、弁体が、ばねの付勢力に抗して、圧力差に応じて針部材に向かって摺動する。所定圧力差以上になると、針部材が給排口に進入し、給排口を開口させて、密閉容器と外部とを連通し、密閉容器内との圧力差が大きくならないように調節する。
【0009】
【実施例】  以下本考案の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。  図1は本考案の一実施例であるブリーザバルブの断面図である。1は、燃料タンク等の密閉容器であり、この密閉容器1に、ブリーザ通路2の一端が連通されており、ブリーザ通路2の他端には、円筒状の弁本体4に形成された連通孔6が接続されている。この弁本体4は、本実施例では、自動二輪車の燃料切換コックの本体の一部として、コック本体と一体的に形成されている。
【0010】  前記連通孔6に連接して摺動孔8が穿設されており、段部9を介して、摺動孔8に連接して摺動孔8より大径の貫通孔10が形成されている。この摺動孔8には、弁体12の円筒部14が摺動可能に嵌挿されており、弁体12の円筒部14は、中空状にされている。この円筒部14の貫通孔10側には、貫通孔10に挿入可能な鍔部16が一体的に形成されている。
【0011】  また、鍔部16と反対側の円筒部14の端から、密閉容器1側に向かって弾性部18が延出されている。この弾性部18は、その内部が中空で、本実施例では、円筒部14に連接した上平坦壁18aと、下平坦壁18bとが、密閉容器1側に向かって、次第にすぼめられて、その先端18cで直線状に合わされている。この上下平坦壁18a,18bが合わされて、先端18cに給排口20が形成されている。尚、本実施例では、弁体12が、一体として、合成ゴム等の弾性体で構成されている。
【0012】  前記上下平坦壁18a,18bは、上下平坦壁18a,18bの内外両側の圧力が、ほぼ等しいときには、給排口20が閉じるように形成されている。また、密閉容器1側の圧力が低く、その内外圧力差が500mmAqになると、上下平坦壁18a,18bが弾性変形して離れ、給排口20が開口するように形成されている。
【0013】  更に、貫通孔10には、鍔部16に続いて、ワッシャ22が挿入され、このワッシャ22に続いて、コイル状のばね24が貫通孔10に挿入されている。そして、貫通孔10には、針部材26の円筒部28が嵌着されて、弁本体4に固定されている。弁体12は、ばね24により付勢されて、鍔部16が段部9に押し付けられている。
【0014】  円筒部28には、その内周から中心に向かって、4個のリブ30(図2では3個のみ図示する。)が十字状に突出形成されており、そのリブ30の先端に針部32が円筒部28の中心と一致する位置で支承されている。  この針部32は、反密閉容器1側から弁体12に向かって延出され、弁体12の円筒部14内を挿通され、上下平坦壁18a,18bの間を通り、針部32の先端32aが、給排口20の近傍まで延出されている。また、針部32は、先端32aに向かって次第に細くなるようにされている。
【0015】  そして、密閉容器1側の圧力が高く、弁体12の両側に圧力差が生じると、この圧力の作用を受けて、弁体12が摺動し、所定圧力差になったときに、本実施例では、0.2Kg/cm2 の圧力差が生じたときには、針部32の先端32aが給排口20に挿入されて、上下平坦壁18a,18bを押し広げ、給排口20を開口するように、ばね24の強さが設定されている。
【0016】  尚、弁本体4に図示しないホース等を挿着して、活性炭等が封入された吸着容器に接続し、ガソリン蒸気を吸着させるようにしてもよい。密閉容器1内の内容物が、大気に放出しても支障のないものであれば、ホース等を接続することなく、針部材26の円筒部28内部が大気中に直接開放されていてもよい。
【0017】  次に、本実施例のブリーザバルブの作動について説明する。  まず、密閉容器1内の圧力が、外部の大気圧とほぼ等しい場合には、弾性部18の上下平坦壁18a,18bの内外両側の圧力差はなく、給排口20は、閉じた状態を維持する。従って、弁体12により摺動孔8が閉塞されるので、ブリーザ通路2は、閉じられ、密閉容器1の密閉状態が保たれる。
【0018】  そして、例えば、密閉容器1内の燃料が消費されて、圧力が低下すると、ブリーザ通路2、連通孔6、摺動孔8を介して、上下平坦壁18a,18bの外側にその圧力が作用する。一方、上下平坦壁18a,18bの内側には、針部材26の円筒部28内部、貫通孔10、弁体12内部を介して、外部の圧力が、作用する。
【0019】  上下平坦壁18a,18bの内外両側に圧力差が生じると、上下平坦壁18a,18bは、密閉容器1側に向かってすぼめられているので、その圧力差に応じて、弁体12の弾性力に抗して、上下平坦壁18a,18bの間隔を広げるような作用力を受ける。上下平坦壁18a,18bの両側の圧力差が、所定圧力差、本実施例では、500mmAq以上となると、間隔が広がって、給排口20が開口する。
【0020】  すると、針部材26の円筒部28内部、貫通孔10、弁体12内部、給排口20、摺動孔8、連通孔6、ブリーザ通路2を介して、密閉容器1と外部とが連通され、外部から密閉容器1内に流体が導入される。これにより、密閉容器1内の圧力が、外部よりも500mmAq以上低くならないように、調節される。
【0021】  尚、本実施例では、弾性部18を合成ゴムで形成しているので、その弾性力を小さなものとすることができるので、僅かな圧力差で給排口20が開口するようにできる。  また、密閉容器1内の圧力が上昇すると、例えば、密閉容器1の温度が上昇して、ガソリン蒸気圧が上昇すると、ブリーザ通路2、連通孔6を介して、上下平坦壁18a,18bの外側に、その圧力が作用する。従って、上下平坦壁18a,18bの両側に圧力差が生じ、給排口20は、圧力の作用を受けて、閉じる。
【0022】  しかし、上下平坦壁18a,18bの内外両側の圧力差に応じて、弁体12には、摺動孔8の軸方向の作用力が働き、弁体12は、ばね24の付勢力に抗して、給排口20が針部32の先端32aに接近するように摺動する。そして、その圧力差が、所定圧力差、本実施例では、0.2Kg/cm2 となると、針部32の先端32aが、給排口20に挿入され、上下平坦壁18a,18bが押し広げられ、強制的に開口させる。
【0023】  これにより、密閉容器1内と、外部とが、連通されて、密閉容器1内のガソリン蒸気が、ブリーザ通路2、連通孔6、摺動孔8、弁体12内部、貫通孔10、針部材26の円筒部28内部を通り、外部に排出される。吸着容器と接続されているときには、ガソリン蒸気が活性炭等に吸着され、ガソリン蒸気は大気中に放出されることがない。
【0024】  尚、本実施例では、密閉容器1が燃料タンクの場合を例としたが、密閉容器1は、この場合に限らず、歯車が内蔵され、潤滑油が入れられた密閉を要するギヤボックスの場合でも、同様に実施可能である。  前述した如く、本実施例のブリーザバルブは、弾性を有する弾性部18の先端18cに形成した給排口20が、圧力が低下したときに、圧力差により開口して、圧力を調節する。また、圧力が上昇すると、弁体12がばね24の付勢力に抗して摺動し、針部材26の針部32が給排口20に挿入されて、開口され、圧力を調節する。
【0025】  従って、密閉容器1側にすぼめた弾性部18の先端18cに給排口20を形成した簡単な構成で、密閉容器1の圧力が低くならないように調整できる。また、弁体12をばね24の付勢力に抗して摺動して、針部32により給排口20を開口する簡単な構成で、密閉容器1の圧力が高くなり過ぎないように調節する。よって、簡単な構成で、かつ小型であって、密閉容器1内の圧力を適性に調節できる。
【0026】  このように、簡単な構成で、かつ小型であり、しかも、摺動孔8、貫通孔10内に一直線上に弁体12、ばね24、針部材26を収納できるので、通路の途中に介装する構成とすることも容易であり、自動二輪車や船外機等の燃料タンクにも容易に取り付けることができる。
【0027】  以上本考案はこの様な実施例に何等限定されるものではなく、本考案の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【0028】
【考案の効果】  以上詳述したように本考案のブリーザバルブは、密閉容器側にすぼめた弾性部の先端に給排口を有し、また、弁体をばねの付勢力に抗して摺動して、針部材により給排口を開口するので、簡単な構成にでき、かつ小型にできると共に、通路に介装する構成とすることも容易であり、取り付けが容易にできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】【図1】本考案の一実施例としてのブリーザバルブの断
面図である。
【図2】本実施例のブリーザバルブの弁体、ばね、針部
材の斜視図である。
【符号の説明】1…密閉容器        2…ブリーザ通路        8…摺
動孔12…弁体        18…弾性部            20…給
排口24…ばね        26…針部材            32…針
部