以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
〔成膜方法〕
一実施形態の成膜方法について説明する。図1は、一実施形態の成膜方法を示すフローチャートである。図2は、一実施形態の成膜方法におけるガス供給シーケンスを示す図である。
図1に示されるように、一実施形態の成膜方法は、ハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11、ハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12、ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13を含む。そして、これらのステップS11~S13をこの順に連続して行うサイクルを繰り返す(ステップS14)。以下、各ステップについて説明する。
最初に、処理容器内に基板を収容し、処理容器内を減圧すると共に基板を加熱した状態で、処理容器内にハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給する(ステップS11)。基板としては、表面が平滑な基板であってもよく、表面にトレンチ、ホール等の凹部が形成されている基板であってもよい。基板は、例えばシリコン基板等の半導体基板であってよい。また、基板の表面には、例えばシリコン酸化膜(SiO2膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)等の絶縁膜が形成されていてもよい。
ハロゲン非含有シリコン原料ガスとしては、例えばアミノシラン系ガス、水素化シリコンガスを利用できる。アミノシラン系ガスとしては、例えばDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)が挙げられる。水素化シリコンガスとしては、例えばSiH4(MS)、Si2H6(DS)、Si3H8、Si4H10が挙げられる。
続いて、基板を加熱した状態で、処理容器内にハロゲン含有シリコン原料ガスを供給する(ステップS12)。ハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12は、ハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の後、処理容器内の真空引き及びパージ(ガス置換)を行うことなく連続して行われる。ハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12は、例えばハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の後、処理容器内の圧力を略一定に維持した状態で連続して行われてもよい。また、ハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12は、例えばハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の後、処理容器内の圧力設定を変更した上で連続して行われてもよい。いずれにせよ、処理容器内にハロゲン非含有シリコン原料ガスが残留している状態でハロゲン含有シリコン原料ガスを供給する。
ハロゲン含有シリコン原料ガスとしては、例えばフッ素含有シリコンガス、塩素含有シリコンガス、臭素含有シリコンガスを利用できる。フッ素含有シリコンガスとしては、例えばSiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3Fが挙げられる。塩素含有シリコンガスとしては、例えばSiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2(DCS)、SiH3Cl、Si2Cl6が挙げられる。臭素含有シリコンガスとしては、例えばSiBr4、SiHBr3、SiH2Br2、SiH3Brが挙げられる。
続いて、基板を加熱した状態で、処理容器内のハロゲン含有シリコン原料ガスを除去する(ステップS13)。ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13では、例えば処理容器内に処理ガス及びパージガスを供給することなく、真空ポンプ等の排気装置により処理容器内を排気する。ただし、ガス供給部、ボート回転軸等への逆流防止を目的に処理容器内に微量のパージガスを供給してもよい。微量のパージガスとは、例えばステップS11及びステップS12においてそれぞれ処理容器内に供給されるハロゲン非含有シリコン原料ガス及びハロゲン含有シリコン原料ガスの流量よりも少ない流量である。
また、ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13では、例えば処理容器内に置換ガスを供給しながら真空ポンプ等の排気装置により処理容器内を排気するガス置換を行ってもよい。置換ガスとしては、例えば不活性ガス、H2(水素ガス)、D2(重水素ガス)を利用できる。不活性ガスとしては、例えばN2や希ガスであるHe、Ne、Arが挙げられる。
ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13の目的は、続いて行われるハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の開始時に処理容器内、厳密に言えば基板の表面に存在するハロゲン含有シリコン原料ガスを除去することである。したがって、基板の表面に存在するハロゲン含有シリコン原料ガスを除去できれば、ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13は上記方法に限定されるものではない。例えば、ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13は、処理容器内の真空引きと処理容器内への置換ガスの供給との組み合わせであってもよい。なお、ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13では、基板の表面に存在するハロゲン含有シリコン原料ガスが完全に除去されていることが好ましいが、該ハロゲン含有シリコン原料ガスの大部分が除去されていればよい。
続いて、ステップS11~S13が所定回数実行されたか否かを判定する(ステップS14)。ステップS11~S13が所定回数実行されたと判定された場合、処理を終了する。一方、ステップS11~S13が所定回数実行されていないと判定された場合、ステップS11へ戻る。すなわち、ステップS11~S13を所定回数に達するまで繰り返し行う。所定回数は、形成したいシリコン膜の設計膜厚に応じて定められる。
〔効果〕
次に、一実施形態の成膜方法により奏される効果について、ハロゲン非含有シリコン原料ガスとしてMSガスを利用し、ハロゲン含有シリコン原料ガスとしてDCSガスを利用する場合を例に挙げて説明する。図3は、一実施形態の成膜方法の効果を説明するための図である。
例えば、MSガス及びDCSガスを基板の周囲から基板の主面と略平行に供給する場合、基板中央部の膜厚が基板周縁部の膜厚よりも薄くなりやすい。MSガス及びDCSガスを用いる場合、成膜に大きく寄与するのはMSガスであり、DCSガスは成膜を抑制する役割を果たしていることに起因すると考えられる。
そこで、一実施形態の成膜方法では、基板を収容した処理容器内にハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の後、処理容器内にハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12を連続して行う。言い換えると、基板を収容した処理容器内にハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の後、処理容器内の真空引き及びパージを行うことなく、処理容器内にハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12を行う。これにより、図3に示されるように、ステップS11によって処理容器内に供給されたMSガスが基板の表面に滞留している状態で、ステップS12によって処理容器内にDCSガスが供給される。そのため、DCSガスは基板中央部に滞留するMSガスを取り囲むように基板周縁部に供給されるので、基板中央部への塩素(Cl)終端が減少し、基板中央部の膜厚が小さくなることを抑制できる。その結果、膜厚の面内均一性が改善する。
また、一実施形態の成膜方法では、処理容器内にハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12の後、ハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13を行った後、処理容器内にハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11を行う。これにより、ステップS12によって処理容器内に供給されたDCSガスが基板の表面から排出された状態で、ステップS11によって処理容器内にMSガスが供給される。DCSガスが基板中央部に滞留していると、MSガスによる基板中央部への成膜が減少してしまうが、それを抑制できる。その結果、膜厚の面内均一性が改善する。
〔成膜装置〕
上記の成膜方法を実施できる成膜装置について、多数枚の基板に対して一括で熱処理を行うバッチ式の縦型熱処理装置を例に挙げて説明する。ただし、成膜装置は、バッチ式の装置に限定されるものではなく、例えば基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。
図4は、縦型熱処理装置の構成例を示す縦断面図である。図5は、図4の縦型熱処理装置の処理容器を説明するための図である。
図4に示されるように、縦型熱処理装置1は、処理容器34と、蓋体36と、ウエハボート38と、ガス供給部40と、排気部41と、加熱部42と、を有する。
処理容器34は、ウエハボート38を収容する処理容器である。ウエハボート38は、多数枚の半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を上下方向に所定間隔を有して棚状に保持する基板保持具である。処理容器34は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管44と、下端が開放されて内管44の外側を覆う有天井の円筒形状の外管46とを有する。内管44及び外管46は、石英等の耐熱性材料により形成されており、同軸状に配置されて二重管構造となっている。
内管44の天井部44Aは、例えば平坦になっている。内管44の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガス供給管を収容するノズル収容部48が形成されている。例えば図5に示されるように、内管44の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部50を形成し、凸部50内をノズル収容部48として形成している。ノズル収容部48に対向させて内管44の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って幅L1の矩形状の開口52が形成されている。
開口52は、内管44内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口52の長さは、ウエハボート38の長さと同じであるか、又は、ウエハボート38の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成されている。即ち、開口52の上端は、ウエハボート38の上端に対応する位置以上の高さに延びて位置され、開口52の下端は、ウエハボート38の下端に対応する位置以下の高さに延びて位置されている。具体的には、図4に示されるように、ウエハボート38の上端と開口52の上端との間の高さ方向の距離L2は0mm~5mm程度の範囲内である。また、ウエハボート38の下端と開口52の下端との間の高さ方向の距離L3は0mm~350mm程度の範囲内である。
処理容器34の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド54によって支持されている。マニホールド54の上端にはフランジ部56が形成されており、フランジ部56上に外管46の下端を設置して支持するようになっている。フランジ部56と外管46との下端との間にはOリング等のシール部材58を介在させて外管46内を気密状態にしている。
マニホールド54の上部の内壁には、円環状の支持部60が設けられており、支持部60上に内管44の下端を設置してこれを支持するようになっている。マニホールド54の下端の開口には、蓋体36がOリング等のシール部材62を介して気密に取り付けられており、処理容器34の下端の開口、即ち、マニホールド54の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体36は、例えばステンレス鋼により形成される。
蓋体36の中央部には、磁性流体シール部64を介して回転軸66が貫通させて設けられている。回転軸66の下部は、ボートエレベータよりなる昇降部68のアーム68Aに回転自在に支持されている。
回転軸66の上端には回転プレート70が設けられており、回転プレート70上に石英製の保温台72を介してウエハWを保持するウエハボート38が載置されるようになっている。従って、昇降部68を昇降させることによって蓋体36とウエハボート38とは一体として上下動し、ウエハボート38を処理容器34内に対して挿脱できるようになっている。
ガス供給部40は、マニホールド54に設けられており、内管44内へ成膜ガス、置換ガス、パージガス等のガスを導入する。ガス供給部40は、複数(例えば3本)の石英製のガス供給管76,78,80を有している。各ガス供給管76,78,80は、内管44内にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド54を貫通するようにして支持されている。
ガス供給管76,78,80は、図5に示されるように、内管44のノズル収容部48内に周方向に沿って一列になるように設置されている。各ガス供給管76,78,80には、その長手方向に沿って所定間隔で複数のガス孔76A,78A,80Aが形成されている。各ガス孔76A,78A,80Aは、水平方向に向けて各ガスを放出する。これにより、ウエハWの周囲からウエハWの主面と略平行に各ガスが供給される。所定間隔は、例えばウエハボート38に支持されるウエハWの間隔と同じになるように設定される。また、高さ方向の位置は、各ガス孔76A,78A,80Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、各ガスをウエハW間の空間部に効率的に供給できるようになっている。ガスの種類としては、成膜ガス、置換ガス、及びパージガスが用いられ、各ガスを流量制御しながら必要に応じて各ガス供給管76,78,80を介して供給できるようになっている。成膜ガスは、例えば前述のハロゲン非含有シリコン原料ガス及びハロゲン含有シリコン原料ガスを含む。置換ガスは、例えば前述の不活性ガス、H2、D2を含む。
マニホールド54の上部の側壁であって、支持部60の上方には、ガス出口82が形成されており、内管44と外管46との間の空間部84を介して開口52より排出される内管44内のガスを排気できるようになっている。ガス出口82には、排気部41が設けられる。排気部41は、ガス出口82に接続された排気通路86を有しており、排気通路86には、圧力調整弁88及び真空ポンプ90が順次介設されて、処理容器34内を真空引きできるようになっている。
外管46の外周側には、外管46を覆うように円筒形状の加熱部42が設けられている。加熱部42は、処理容器34内に収容されるウエハWを加熱する。
縦型熱処理装置1の全体の動作は、制御部95により制御される。制御部95は、例えばコンピュータ等であってよい。また、縦型熱処理装置1の全体の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体96に記憶されている。記憶媒体96は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
係る縦型熱処理装置1により、ウエハWに非晶質シリコン膜を形成する成膜方法の一例を説明する。まず、昇降部68により多数枚のウエハWを保持したウエハボート38を処理容器34内に搬入し、蓋体36により処理容器34の下端の開口を気密に塞ぎ密閉する。続いて、制御部95により、前述の成膜方法を実行するように、ガス供給部40、排気部41、加熱部42等の動作が制御される。これにより、ウエハWの上に非晶質シリコン膜が形成される。
ところで、ハロゲン非含有シリコン原料ガス及びハロゲン含有シリコン原料ガスがウエハWの周囲からウエハWの主面と略平行に供給される場合、ウエハ中央部とウエハ周縁部との間で膜厚差が生じやすい。特に、多数枚のウエハWが上下方向に所定間隔を有して棚状に保持されている場合、該間隔が狭くなるほどウエハ中央部とウエハ周縁部との間に生じる膜厚差が大きくなる。そのため、ウエハ中央部とウエハ周縁部との間に生じる膜厚差を小さくするため、該間隔を拡げる方法が考えられる。しかしながら、該間隔を拡げると、処理容器内に収容可能なウエハWの枚数が少なくなるため、生産性が低下する。
そこで、一実施形態の成膜方法では、ウエハWを収容した処理容器34内にハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の後、処理容器34内にハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12を連続して行う。言い換えると、ウエハWを収容した処理容器34内にハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11の後、処理容器34内の真空引き及びパージを行うことなく、処理容器34内にハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12を行う。
また、処理容器34内にハロゲン含有シリコン原料ガスを供給するステップS12の後、処理容器34内のハロゲン含有シリコン原料ガスを除去するステップS13を行った後、処理容器34内にハロゲン非含有シリコン原料ガスを供給するステップS11を行う。これにより、ステップS12によって処理容器内に供給されたハロゲン含有シリコン原料ガスが基板の表面から排出された状態で、ステップS11によって処理容器34内にハロゲン非含有シリコン原料ガスが供給される。これにより、ウエハWの上に形成されるシリコン膜の膜厚の面内均一性が改善するので、該間隔を拡げることなく、シリコン膜の膜厚の面内均一性を改善できる。言い換えると、生産性を悪化させることなく、シリコン膜の膜厚の面内均一性を改善できる。
〔実施例〕
次に、一実施形態の成膜方法の効果を確認するために行った実施例について説明する。
まず、表面積比が50倍又は30倍の微細な凹凸パターンが形成されたウエハ(以下「パターンウエハ」ともいう。)を準備した。なお、表面積比とは、同径のウエハにおいて、パターンウエハの表面積A1を、凹凸パターンが形成されていないウエハ(以下「ブランケットウエハ」ともいう。)の表面積A2で除した値(A1/A2)である。
続いて、パターンウエハを前述の縦型熱処理装置1の処理容器34内に収容し、後述するガス供給シーケンスにより処理容器34内に所定のガスを供給し、シリコン膜を形成した。
図6は、実施例及び比較例のガス供給シーケンスを説明するための図である。図6中、「MS」は処理容器内へのMSガスの供給を表し、「DCS」は処理容器内へのDCSガスの供給を表し、「VAC」は処理容器内の真空引きを表し、「N2」は処理容器内へのN2ガスの供給を表し、「H2」は処理容器内へのH2ガスの供給を表す。また、図6(a)~図6(c)は実施例1~3のガス供給シーケンスを示し、図6(d)~図6(h)はそれぞれ比較例1~5のガス供給シーケンスを示す。
実施例1では、図6(a)に示されるように、MSガスの供給、DCSガスの供給及び真空引きをこの順に繰り返し行うことにより、表面積比が50倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。なお、実施例1の処理条件は以下である。
ウエハ温度:470℃
処理圧力:3Torr(400Pa)
MSガス流量:1500sccm
DCSガス流量:1000sccm
MSガス供給時間/DCSガス供給時間/真空引き時間:25秒/30秒/60秒
所定回数:170回
実施例2では、実施例1における真空引きに代えてN2ガスによるガス置換を行った点以外は実施例1と同じ条件で、表面積比が30倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。すなわち、実施例2では、図6(b)に示されるように、MSガスの供給、DCSガスの供給及びN2ガスの供給をこの順に繰り返し行うことにより、表面積比が30倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。
実施例3では、実施例1における真空引きに代えてH2ガスによるガス置換を行った点以外は実施例1と同じ条件で、表面積比が30倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。すなわち、実施例3では、図6(c)に示されるように、MSガスの供給、DCSガスの供給及びH2ガスの供給をこの順に繰り返し行うことにより、表面積比が30倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。
比較例1では、図6(d)に示されるように、MSガスとDCSガスを同時に供給することにより、表面積比が50倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。
比較例2では、図6(e)に示されるように、MSガスの供給とDCSガスの供給を交互に繰り返し行うことにより、表面積比が50倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。
比較例3では、図6(f)に示されるように、MSガスの供給、真空引き及びDCSガスの供給をこの順に繰り返し行うことにより、表面積比が50倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。
比較例4では、図6(g)に示されるように、MSガスの供給、真空引き、DCSガスの供給及び真空引きをこの順に繰り返し行うことにより、表面積比が50倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。
比較例5では、図6(h)に示されるように、MSガスの供給、N2ガスの供給、DCSガスの供給及び真空引きをこの順に繰り返し行うことにより、表面積比が50倍のパターンウエハの上にシリコン膜を形成した。
続いて、実施例1~3、比較例1~5により形成したシリコン膜のそれぞれについて、ウエハの面内における複数箇所の膜厚を測定することにより、シリコン膜の膜厚の面内均一性を算出した。
図7は、パターンウエハの上に形成したシリコン膜の膜厚の面内均一性を示す図である。図7中、横軸は実施例1~3、比較例1~5を示し、縦軸は膜厚の面内均一性[±%]を示す。
図7に示されるように、実施例1、2、3の膜厚の面内均一性は±4.87%、±4.89%、±4.37%であった。一方、比較例1~5の膜厚の面内均一性はそれぞれ±11.25%、±15.15%、±13.63%、±10.24%、±14.76%であった。これらの結果から、実施例1~3に係るガス供給シーケンスによれば、比較例1~5に係るガス供給シーケンスと比較して、膜厚の面内均一性を改善できることが分かる。すなわち、MSガスの供給の後DCSガスの供給前に真空引き及びガス置換を行わず、かつDCSガスの供給の後MSガスの供給前にDCSガスを除去することにより、パターンウエハの上に形成されるシリコン膜の膜厚の面内均一性を改善できると言える。つまり、MSガスの供給、DCSガスの供給及びDCSガスの除去をこの順に繰り返し行うことにより、パターンウエハの上に形成されるシリコン膜の膜厚の面内均一性を改善できると言える。
図8は、パターンウエハの上に形成したシリコン膜の膜厚分布を示す図である。図8中、横軸はウエハ中心からの距離[mm]を示し、縦軸はシリコン膜の膜厚[Å]を示す。また、図8中、丸(●)印は実施例1の測定結果を示し、三角(▲)印は比較例1の測定結果を示す。
図8に示されるように、実施例1におけるウエハ中央部とウエハ周縁部との間の膜厚差は、比較例1におけるウエハ中央部とウエハ周縁部との間の膜厚差よりも小さいことが分かる。すなわち、MSガスの供給、DCSガスの供給及び真空引きをこの順に繰り返し行うことにより、パターンウエハの上に形成されるシリコン膜のウエハ中央部とウエハ周縁部との間の膜厚差を小さくできると言える。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
上記の実施形態では、基板が半導体基板である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、基板はフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)用の大型基板、EL素子又は太陽電池用の基板であってもよい。