例えば、上述したバンドパスフィルタとしては、吸収型のカラーフィルタおよび干渉フィルタを用いることができる。吸収型のカラーフィルタは、波長依存性を有する光吸収特性を備える材料を用いて形成され得る。また、干渉フィルタは、光学多層膜から形成され得る。
干渉フィルタの設計自由度は、光利用効率および分光透過特性の点において高い。また、干渉フィルタには、特定波長の光のみを透過させる狭帯域フィルタとして機能するという利点がある。このような観点から、マルチバンドカメラ用のバンドパスフィルタとしては、吸収型のカラーフィルタよりも干渉フィルタが多く用いられている。
以下、本願発明者が考察した問題点を説明する。
干渉フィルタは、所定の波長域の光を透過する。一方、透過する波長域以外の光は、高い反射率で干渉フィルタに反射する。このような特性により、干渉フィルタを光路中に配置すると、ゴースト光が発生する大きな要因となり得る。具体的には、例えば、ある波長域Aの光は、バンドパスフィルタアレイの任意の領域におけるバンドパスフィルタaを透過する。しかし、その光は、他の領域のバンドパスフィルタbにおいては、高い反射率で反射してしまう。
このように、バンドパスフィルタbは、波長域Aの光に対しては、光路中に配置されている反射ミラーとして機能する。その結果、ゴースト光が発生しやすくなる。例えば、波長域Aの第1のバンドパスフィルタを透過し、マイクロレンズアレイを介して、光電変換素子に到達した光の一部は、光電変換素子の表面において正反射する。その反射光は、バンドパスフィルタアレイにおいて、入射瞳の中心軸を基準として第1のバンドパスフィルタと回転対称の位置に配置されている第2のバンドパスフィルタに戻り光として到達する。第2のバンドパスフィルタは、波長域Bの光を透過させる。戻り光は、第2のバンドパスフィルタにおいて再び反射して、光電変換素子に入射する。このように、戻り光は、ゴースト光となり、ゴースト像を発生する。本願明細書では、「ゴースト光」は、主としてこの戻り光を指す。また、「ゴースト像」は、「ゴースト光」に起因して発生する像を意味する。
光電変換素子に入射する戻り光は、被写体の二次元分光情報の基となる光に重畳する。その結果、測定結果にはその重畳した光がゴースト像として確認される。ゴースト像の発生は、特許文献1および2に開示されたマルチバンドカメラが有する本質的な課題である。しかしながら、特許文献1および2は、この課題に何ら言及していない。また、バンドパスフィルタ以外の反射率の高い光機能素子を瞳の位置に配置する場合においても、上記と同様に、ゴースト像が発生する。例えば、反射率の高い光機能素子として、反射型の偏光素子であるワイヤグリッド偏光子が挙げられる。なお、ゴースト像が発生するメカニズムの詳細については後述する。
このような従来技術の課題に鑑み、本願発明者は、新規な構造を備えた撮像装置に想到した。
本開示は、以下の項目に記載の撮像装置および撮像システムを含む。
〔項目1〕
レンズと、前記レンズの光軸に略垂直に配置された第1から第nの光学領域(nは2以上の整数)を含む光学領域と、を有するレンズ光学系と、
前記レンズ光学系を透過した光が入射する、各々が第1の画素から第nの画素のn個の画素を含む複数の画素群を有する撮像素子と、
前記レンズ光学系と前記撮像素子との間に位置し、複数の光学要素が配列されたアレイ状光学素子であって、各光学要素が、前記第1から第nの光学領域を透過した光を、各画素群の前記n個の画素にそれぞれ入射させるアレイ状光学素子と、
前記第1から第nの光学領域を透過する光の波長域において波長方向に略一様であり、かつ、空間方向に略一様である光吸収率を有する光吸収部材であって、前記撮像素子の撮像面で反射した光が入射する光吸収部材と、
を備える、撮像装置。
項目1に記載の撮像装置によると、ゴースト光を効果的に抑制でき、ゴースト像の少ない高精度な画像を取得することができる。
〔項目2〕
前記光吸収部材は、前記光学領域と前記撮像素子との間に配置され、前記第1の光学領域を透過した光の波長域と同じ第1の波長域の光および前記第2の光学領域を透過した光の波長域と同じ第2の波長域の光を少なくとも吸収する、項目1に記載の撮像装置。
項目2に記載の撮像装置によると、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。例えば、高精度な画像センシング用の撮像装置を提供することができる。
〔項目3〕
前記第1および第2の光学領域の少なくとも1つは、可視光を透過させる前記光学特性を有し、
前記光学素子は、少なくとも可視光を吸収する、項目2に記載の撮像装置。
項目3に記載の撮像装置によると、可視光を用いた撮影において、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目4〕
前記レンズ光学系は、絞りをさらに有し、
前記光学領域は、前記絞りまたは前記絞り近傍に配置されている、項目2または3に記載の撮像装置。
〔項目5〕
前記第1の光学領域は、前記第2の光学領域とは異なる分光透過率特性を有する、項目2から4のいずれかに記載の撮像装置。
項目5に記載の撮像装置によると、分光透過率特性が互いに異なる画像を一度の撮影で同時に取得でき、かつ、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目6〕
前記第1の光学領域は、前記第2の光学領域とは異なる偏光特性を有する、項目2から4のいずれかに記載の撮像装置。
項目6に記載の撮像装置によると、偏光特性が互いに異なる画像を一度の撮影で同時に取得でき、かつ、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目7〕
前記光学領域に配置された、透過波長域の異なる少なくとも2つの狭帯域波長フィルタをさらに備える、項目2から4のいずれかに記載の撮像装置。
項目7に記載の撮像装置によると、分光透過率特性が互いに異なり、狭帯域である画像を一度の撮影で同時に取得でき、かつ、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目8〕
前記アレイ状光学素子はレンチキュラレンズである、項目2から7のいずれかに記載の撮像装置。
項目8に記載の撮像装置によると、第1および第2の光学領域を通過した光を、第1および第2の複数の画素にそれぞれ1次元的に効率よく入射させることができる。
〔項目9〕
前記アレイ状光学素子はマイクロレンズアレイである、項目2から7のいずれかに記載の撮像装置。
項目9に記載の撮像装置によると、第1および第2の光学領域を通過した光を、第1および第2の複数の画素にそれぞれ2次元的に効率よく入射させることができる。
〔項目10〕
前記アレイ状光学素子は前記撮像素子上に一体的に形成されている、項目2から9のいずれかに記載の撮像装置。
項目10に記載の撮像装置によると、アレイ状光学素子と、撮像素子との位置調整が不要になり、また、素子間の経時的な位置変化を低減させることができる。
〔項目11〕
前記アレイ状光学素子と前記撮像素子との間には、マイクロレンズが設けられており、
前記アレイ状光学素子は、前記マイクロレンズを介して前記撮像素子上に一体的に形成されている、項目2から9のいずれかに記載の撮像装置。
項目11に記載の撮像装置によると、マイクロレンズにより、撮像素子への光入射効率が向上し、映像信号のSN比を向上させることができる。
〔項目12〕
前記光学素子は前記撮像素子上に一体的に形成されている、項目2から9のいずれかに記載の撮像装置。
項目12に記載の撮像装置によると、光学素子と、撮像素子との位置調整が不要になり、また、素子間の経時的な位置変化を低減させることができる。
〔項目13〕
前記光学素子は、吸収型のNDフィルタであり、前記NDフィルタに入射する光の量に対する前記NDフィルタから出射する光の量の割合は、30%以上50%以下である、項目2から12のいずれかに記載の撮像装置。
項目13に記載の撮像装置によると、市販のNDフィルタを利用して、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目14〕
前記光学素子は、
特定の偏光軸の方向に振動する光を透過させる吸収型の直線偏光子と、
直線偏光を円偏光または楕円偏光に変換する位相板と、
を含み、
前記直線偏光子は、前記光学素子の前記光学領域側に配置され、前記位相板は、前記光学素子の前記撮像素子側に配置されている、項目2から11のいずれかに記載の撮像装置。
項目14に記載の撮像装置によると、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目15〕
前記位相板は、1/4波長板である、項目14に記載の撮像装置。
項目15に記載の撮像装置によると、市販の1/4波長板を利用して、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目16〕
前記位相板は、アクロマティック波長板である、項目14に記載の撮像装置。
項目16に記載の撮像装置によると、撮像する波長域が広帯域であっても、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目17〕
前記第1の光学領域は、近赤外領域における第1の波長域の第1の近赤外線を透過させる第1の分光透過率特性を有し、前記第2の光学領域は、前記第1の波長域とは異なる近赤外領域における第2の波長域の第2の近赤外線を透過させる第2の分光透過率特性を有し、
前記光学素子は、前記第1および第2の近赤外線を少なくとも吸収する、項目2に記載の撮像装置。
項目17に記載の撮像装置によると、近赤外線を用いた撮影において、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目18〕
前記光学領域は、第2の光学領域、第3の光学領域、第4の光学領域、第5の光学領域、第6の光学領域、第7の光学領域、第8の光学領域および第9の光学領域をさらに含み、
前記撮像素子は、前記第3の光学領域に対応した複数の第3の画素、前記第4の光学領域に対応した複数の第4の画素、前記第5の光学領域に対応した複数の第5の画素、前記第6の光学領域に対応した複数の第6の画素、前記第7の光学領域に対応した複数の第7の画素、前記第8の光学領域に対応した複数の第8の画素、および前記第9の光学領域に対応した複数の第9の画素をさらに有し、
前記複数の第1の画素の1つと、前記複数の第2の画素の1つと、前記複数の第3の画素の1つと、前記複数の第4の画素の1つと、前記複数の第5の画素の1つと、前記複数の第6の画素の1つと、前記複数の第7の画素の1つと、前記複数の第8の画素の1つと、前記複数の第9の画素の1つとは、3×3の行列状に配置された9つの画素を形成し、前記9つの画素は、前記撮像素子において行および列方向に繰り返し配置され、
前記アレイ状光学素子はマイクロレンズアレイであり、前記マイクロレンズアレイの各マイクロレンズは、前記9つの画素に対応し、
前記マイクロレンズアレイは、前記第1の光学領域、前記第2の光学領域、前記第3の光学領域、前記第4の光学領域、前記第5の光学領域、前記第6の光学領域、前記第7の光学領域、前記第8の光学領域および前記第9の光学領域を透過したそれぞれの光を、前記複数の第1の画素、前記複数の第2の画素、前記複数の第3の画素、前記複数の第4の画素、前記複数の第5の画素、前記複数の第6の画素、前記複数の第7の画素、前記複数の第8の画素および前記複数の第9の画素にそれぞれ入射させ、
前記光学素子は、前記第1の波長域の光、前記第2の波長域の光、前記第3の光学領域を透過した光の波長域と同じ第3の波長域の光、前記第4の光学領域を透過した光の波長域と同じ第4の波長域の光、前記第5の光学領域を透過した光の波長域と同じ第5の波長域の光、前記第6の光学領域を透過した光の波長域と同じ第6の波長域の光、前記第7の光学領域を透過した光の波長域と同じ第7の波長域の光、前記第8の光学領域を透過した光の波長域と同じ第8の波長域の光および前記第9の光学領域を透過した光の波長域と同じ第9の波長域の光を少なくとも吸収する、項目2に記載の撮像装置。
項目18に記載の撮像装置によると、複数の分光特性を有する画像を一度の撮影で取得でき、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目19〕
レンズ光学系と、
前記レンズ光学系によって集光された光を受光する撮像素子と、
前記レンズ光学系と前記撮像素子との間に配置されている光学素子であって、少なくとも可視光を吸収し、前記光学素子における光が透過する光透過領域において略同一の光吸収特性を有する光学素子と、
を備える、撮像装置。
項目19に記載の撮像装置によると、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を提供することができる。
〔項目20〕
項目1から19のいずれかに記載の撮像装置と、
前記撮像装置から出力される画素信号を処理して画像情報を生成する信号処理部と、
前記画像情報に基づいて画像を表示する表示装置と、
を備える、撮像システム。
項目20に記載の撮像システムによると、画像ノイズおよびゴースト像の少ない高精度な画像を取得することが可能な撮像装置を備える画像センシング用の撮像システムを提供することができる。
本開示の一態様に係る撮像装置によれば、例えば、光の偏光条件および撮影に用いる波長などの複数の撮影条件の下で、単一の撮像系を用いて複数の画像を同時に取得することができる。また、光学素子によりゴースト像を抑制できる。その結果、高精度な分光イメージングを行うことが可能な撮像装置を提供できる。
以下、図面を参照しながら、本開示のより具体的な実施の形態を説明する。以下の説明において、同一または類似する構成要素については同一の参照符号を付している。また、重複する説明は省略する場合がある。なお、本開示の実施の形態による撮像装置および撮像システムは、以下で例示するものに限られない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1による撮像装置100Aを示す模式図である。
以下、図1に示すように、撮像装置100Aの中心軸である光軸10の方向をz軸とし、z軸に垂直な平面をxy平面として撮像装置100Aの構成を説明する。なお、図1において、当業者の理解を容易にするために被写体1を示している。被写体1が撮像装置100Aの構成要素でないことは言うまでもない。
撮像装置100Aは、レンズ光学系Lと、光学素子6と、アレイ状光学素子7と、撮像素子9とを備えている。
レンズ光学系Lは、第1のレンズ2と、第2のレンズ5と、絞り3と、バンドパスフィルタアレイ4とを含む。第1のレンズ2は、被写体1からの光を集光して、絞り3に光を入射させる。第2のレンズ5は、バンドパスフィルタアレイ4を通過した光を集光する。本願明細書では、絞り3または絞り3の近傍の領域を「光学領域」と称する。
バンドパスフィルタアレイ4は、光学領域におけるxy平面内に配置されている。バンドパスフィルタアレイ4は、複数のバンドパスフィルタから形成され得る。光学領域は、互いに異なる光学特性を有する第1の光学領域および第2の光学領域を少なくとも含んでいる。
第1のレンズ2および第2のレンズ5はそれぞれ、一枚のレンズで構成されていてもよいし、複数枚のレンズで構成されていてもよい。また、絞り3の前後において複数のレンズを配置する構成を採用してもよい。また、撮影する画角の範囲が狭い場合には、第1のレンズ2を省略してもよい。
アレイ状光学素子7は、例えばマイクロレンズアレイである。アレイ状光学素子7は、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置され、レンズ光学系Lと撮像素子9との間に配置されている。
撮像素子9には、複数の画素8が配置されている。撮像素子9は、複数の第1の画素および複数の第2の画素を少なくとも有している。
アレイ状光学素子7は、第1の光学領域を透過した光を複数の第1の画素に入射させ、第2の光学領域を透過した光を複数の第2の画素に入射させる。
光学素子6は、光を吸収する材料から形成され得る部材(以下、「光吸収部材」と称する。)であり、主として撮像素子9の撮像面からの反射光を吸収する。具体的には、光学素子6は、第1の光学領域を透過した光の波長域と同じ第1の波長域(例えば赤色の波長域)の光および第2の光学領域を透過した光の波長域と同じ第2の波長域(例えば青色の波長域)の光を少なくとも吸収する。光学素子6は、光が透過する光透過領域において(すなわち、空間方向において)略同一の光吸収特性(すなわち、光吸収率)を有する。また、光学素子6は、第1および第2の光学領域を透過する光の波長域において波長方向に略一様の光吸収率を有する。
「空間方向に略同一の光吸収特性」とは、光透過領域において光吸収率が略同一であることを意味する。ここで、「略同一」とは、単位面積当たりの光吸収率が、光透過領域内において均一であるか、または、その吸収率の誤差が、光透過領域内において10%以内であることを意味する。各波長域の光に対して、光学素子6は、光透過領域全体において略同一の光吸収率を有している。また、「波長方向に略一様の光吸収率」とは、光吸収率が第1および第2の光学領域を透過する光の波長域全体にわたって均一であるか、または、その誤差が、その波長域において10%以内であることを意味する。
光学素子6は、レンズ光学系Lとアレイ状光学素子7との間に配置されている。ただし、これに限定されず、光学素子6は、例えば、バンドパスフィルタアレイ4と第2のレンズ5との間に配置され得る。光学素子6は、バンドパスフィルタアレイ4と撮像素子9との間に配置されていればよい。
次に、図2を参照しながら、バンドパスフィルタアレイ4の構成を詳細に説明する。
図2は、バンドパスフィルタアレイ4の斜視図である。
本実施の形態では、光学領域を9つに分割する例を説明する。分割する光学領域の数は、9つに限定されず、2以上の任意の整数にすることができる。
バンドパスフィルタアレイ4は、絞り3の近傍の光学領域に配置されている。バンドパスフィルタアレイ4は、9つの矩形バンドパスフィルタ4a〜4iにより構成されている。矩形バンドパスフィルタ4a〜4iは、xy平面上に3×3の行列状に配置されている。矩形バンドパスフィルタ4a〜4iの各々は、9つの光学領域の各々に配置されている。矩形バンドパスフィルタ4a〜4iの各々は、互いに異なる光の透過波長域を有している。
例えば、被写体1の撮影に用いる波長域を可視光である380nm〜750nmの範囲とした場合、矩形バンドパスフィルタ4a〜4iに、透過波長域の幅を均等に割り当てることができる。具体的には、矩形バンドパスフィルタ4aに透過波長域390nm〜430nmを割り当て、バンドパスフィルタ4bに透過波長域430nm〜470nmを割り当てることができる。以下、同様にバンドパスフィルタ4cに透過波長域470nm〜510nmを割り当てることができる。バンドパスフィルタ4dに透過波長域510nm〜550nmを割り当てることができる。バンドパスフィルタ4eに透過波長域550nm〜590nmを割り当てることができる。バンドパスフィルタ4fに透過波長域590nm〜630nmを割り当てることができる。バンドパスフィルタ4gに透過波長域630nm〜670nmを割り当てることができる。バンドパスフィルタ4hに透過波長域670nm〜710nmを割り当てることができる。バンドパスフィルタ4iに透過波長域710nm〜750nmを割り当てることができる。
図示される構成例では、矩形バンドパスフィルタ4a〜4iの境界部は、隣り合うように配置されている。ただし、例えば、回折および境界部のエッジでの散乱に起因して、各バンドパスフィルタの透過光によるクロストークが発生し得る。これを考慮して、クロストークを低減するために、境界部に遮光領域を設けても良い。
次に、図3を参照して、アレイ状光学素子7および撮像素子9の構成を詳細に説明する。
図3は、アレイ状光学素子7および撮像素子9の構成を示す斜視図である。図示されるように、本実施の形態では、アレイ状光学素子7はマイクロレンズアレイである。マイクロレンズアレイを構成する各マイクロレンズ11は、撮像素子9の表面付近に、x方向およびy方向に2次元的に配置されている。
数万〜数百万個のマイクロレンズ11がxy平面に形成されている。マイクロレンズ11の形状は、例えば、円形、四角形、または六角形である。その焦点距離は、数十〜数百ミクロン程度である。
マイクロレンズ11は、レンズ光学系Lの焦点の近傍に配置されている。被写体1の実像は、マイクロレンズ11上に形成される。複数の画素8は、マイクロレンズ11の焦点位置の近傍に配置されている。
撮像素子9は、光電変換素子である数十万〜数千万個の画素8をxy平面上に配置することにより構成されている。撮像素子9は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、または、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。
図4は、アレイ状光学素子7(マイクロレンズアレイ)における任意の1つのマイクロレンズ11と、それに対応する複数の画素8との関係を説明するための斜視図である。
1つのマイクロレンズ11は、9つの画素8a〜8iに対応している。同時に取得される複数の画像の各々における1ピクセル分の情報が、図4に示す構成単位で得られる。
マイクロレンズ11は、屈折率、撮像面との距離、および曲率半径等のパラメータを適切に設定して形成されている。図2におけるバンドパスフィルタ4a〜4iの9つの光学領域を通過した光は、マイクロレンズ11によって分離され、9つの画素8a〜8iにそれぞれ独立して入射する。なお、光学領域の分割数に応じて、1つのマイクロレンズ11に対応する画素数も変化する。
複数の画素8の各々は、入射した光をその光の強度に応じた画素信号に光電変換によって変換する。取得される画像の輝度信号は、この画素信号に基づいている。信号処理部(不図示)は、撮像素子9から出力される、各画素8に対応した画素信号を受け取る。信号処理部は、アレイ状光学素子7内の各マイクロレンズ11における、図4に示す画素8aに対応する画素群の輝度情報を取得する。信号処理部は、取得した画素群の輝度情報から第1の波長域における2次元画像の情報を生成する。信号処理部は、図4に示す画素8b〜8iの画素群も同様に処理する。信号処理部は、9種類の波長域における2次元画像情報を出力する。このように、撮像装置100を用いることにより、波長域の異なる光の情報に基づく複数の画像を同時に取得できる。
信号処理部は、半導体素子などのハードウェアにより構成され得る。信号処理部は、典型的にはイメージシグナルプロセッサ(ISP)によって実現され得る。信号処理部は、演算装置(例えば、MPU)、メモリおよびソフトウェアにより実現してもよい。
なお、マイクロレンズ11からの信号光が、所定の画素以外の周辺の画素に入射しないように、例えば、画素8a〜8iの境界部においては、遮光領域または不感帯が設けられていてもよい。
図5は、各画素8の表面にマイクロレンズ13を配置した撮像素子9を示す斜視図である。図示されるように、各画素8の表面にマイクロレンズ13を配置してもよい。これにより、各画素8への光の入射効率を高めることができる。マイクロレンズ13としては、例えば、ディジタルマイクロレンズ(DML)を用いることができる。DMLは、光の波長よりも小さな同心リング構造を粗密に配置することにより形成される。DMLは、実効的な屈折率分布の変化で光を集光する。
本実施の形態では、レンズ光学系Lと、アレイ状光学素子7との間に、光学素子6が配置されている。光学素子6として光吸収フィルタを用いることができる。例えば、光吸収フィルタとは、吸収型のND(Neutral Density)フィルタである。
図6は、光吸収フィルタと撮像装置9とを一体的に形成した構成例を示す斜視図である。図示されるように、光吸収層14が光吸収フィルタとして機能している。光吸収層14と撮像装置9とを一体的に形成してもよい。これにより、光学系を簡素化でき、光学系の組み立てや、調整が容易になる。
以下、光吸収フィルタを用いたゴースト光の低減の効果を詳細に説明する。
図7は、光吸収フィルタを備えていない撮像装置において、ゴーストが発生するメカニズムを説明するための図である。図7においては、被写体1のある1点からの光に着目し、簡略化の観点から、主光線のみ示している。以下、その主光線を用いて、ゴーストが発生するメカニズムを説明する。
被写体1からの光は、例えば、第1のレンズ2、バンドパスフィルタアレイ4内のバンドパスフィルタ4A、第2のレンズ5、およびアレイ状光学素子7をこの順番で透過し、撮像素子9の所定の画素8に到達する。所定の画素とは、バンドパスフィルタ4Aに対応する画素8Aである。
画素8Aに向かう光線の一部は、例えばアレイ状光学素子7および/または画素8Aの表面で反射される。その反射光がゴースト光15となる。例えば、ゴースト光15は第2のレンズ5を透過してバンドパスフィルタアレイ4に入射する。この場合、例えばゴースト光15の一部は、バンドパスフィルタ4Aとは異なるバンドパスフィルタ4Bに到達する。
バンドパスフィルタ4Aとバンドパスフィルタ4Bとでは透過する光の波長域が異なる。例えば、上述した干渉フィルタのようなバンドパスフィルタの特性から、バンドパスフィルタ4Bに到達するゴースト光15は、バンドパスフィルタ4Bを殆ど透過しない。その殆どはバンドパスフィルタ4Bで正反射する。
その後、バンドパスフィルタ4Bにおいて反射したゴースト光15は、第2のレンズ5を再び透過する。例えば、透過したゴースト光15は、アレイ状光学素子7を介して画素Aとは異なる位置に配置されている画素8Bに入射する。画素8Bは、バンドパスフィルタ4Bに対応する画素である。画素8Bはゴースト光15を受光する。その結果、撮影する画像にはゴースト像が確認される。
図8は、本実施の形態による撮像装置100Aにおいて、ゴースト光15が除去されるメカニズムを説明するための図である。図8を用いて、光吸収フィルタ(光学素子6)の効果を説明する。上述したように、光吸収フィルタとして、吸収型のNDフィルタを用いることができる。
被写体1からの光は、例えば、第1のレンズ2、バンドパスフィルタアレイ4内のバンドパスフィルタ4A、第2のレンズ5を透過した後、さらに光吸収フィルタ(光学素子6)を透過する。透過した光は、アレイ状光学素子7を介して、バンドパスフィルタ4Aに対応する画素8Aに到達する。
上述したとおり、画素8Aに到達した光線の一部は、画素8Aの表面で反射する。その反射光がゴースト光15となり得る。ゴースト光15は、光吸収フィルタを透過することにより、その光の光量は減衰する。光吸収フィルタを透過したゴースト光15の一部は、第2のレンズ5を透過し、バンドパスフィルタアレイ4Aとは異なるバンドパスフィルタアレイ4Bに到達する。ゴースト光15の一部は、バンドパスフィルタアレイ4Bで反射し、第2のレンズ5を再び透過する。第2のレンズ5を透過したゴースト光15は、光吸収フィルタを再び通過する。その結果、ゴースト光15の光量はさらに減衰する。最終的に、例えば、ゴースト光15は画素8Aとは異なる位置に配置されている画素8Bに到達する。
このように、ゴースト光15は光吸収フィルタを2度透過する。本願明細書では、撮像画像に寄与する光の光量に相当する信号強度を「撮像画像の信号光量」と称し、ゴースト像に寄与する光の光量に相当する信号強度を「ゴースト像の信号光量」と称する。光吸収フィルタの透過率をT(<1)とすると、図8の構成では、撮像画像の信号光量に対するゴースト像の信号光量の割合は、図7の構成と比較して、Tの2乗倍となる。
具体的に、例えば、図7の構成では、撮像画像の信号光量に対するゴースト像の信号光量の割合が3%であるとする。これに対して、図8に示すように光吸収フィルタを配置し、その透過率Tが50%である場合、撮像画像の信号光量に対するゴースト像の信号光量の割合は、0.03×0.5×0.5=0.0075となる。このように、信号光量の割合を0.75%まで低減させることができる。
また、光吸収フィルタの透過率Tが30%である場合、撮像画像の信号光量に対するゴースト像の信号光量の割合は、0.03×0.3×0.3=0.0027となる。このように、信号光量の割合を0.27%までさらに低減させることができる。これらを考慮すると、信号光量の割合は30%以上50%以下となることが好ましいと考えられる。
本実施の形態では、光吸収フィルタは、少なくとも可視光を吸収する光吸収特性を有している。ゴースト光を効率よく低減するためには、光吸収特性の波長域はバンドパスフィルタアレイ4が有する透過波長域(390nm〜750nm)と整合させておくとよい。例えば、本実施の形態のように、可視光を用いて異なる透過波長域の光に基づく複数の画像を同時に取得する場合、光吸収フィルタを配置することにより、画像形成に寄与する可視光のゴースト光による影響を低減できる。
一方で、コンパクトデジタルカメラなどでは、可視光を透過させて近赤外線をカットする近赤外(IR)カットフィルタが一般的に用いられている。IRカットフィルタは、画像形成に寄与しない不要な光(近赤外線)をカットする。この点において、本開示の光吸収フィルタの使用目的は、IRカットフィルタのそれとは異なる。
本開示によれば、例えば、可視光の代わりに近赤外線を用いて複数の画像を同時に撮影できる。近赤外線は、概ね700nmから2.5μmの範囲内の波長を有する光(電磁波)である。近赤外線を用いる場合、矩形バンドパスフィルタ4a〜4iには、その波長帯域において透過波長域の幅を均等に割り当てることができる。また、光学素子6として、近赤外線を少なくとも吸収する光吸収特性を有する光吸収フィルタを用いればよい。これにより、画像形成に寄与する近赤外線のゴースト光による影響を効率よく低減できる。
本実施の形態によれば、簡単な構成で、ゴースト光による影響が少ない画像情報を取得することができる。
以下、本実施の形態の変形例を説明する。
本実施の形態においては、バンドパスフィルタアレイ4の、各バンドパスフィルタ4a〜4iの透過波長域の幅を均等に40nmとした。本開示は、これに限定されず、製品仕様等に応じて各バンドパスフィルタ4a〜4iの透過波長域を設定すればよい。例えば、各バンドパスフィルタ4a〜4iにおいて、透過波長域の幅は一律でなくてもよい。数nmの透過波長域の幅を設定して、狭帯域干渉フィルタをバンドパスフィルタとして利用してもよい。これにより、各波長の成分を有した光の情報をピンポイントで取得できる。
また、本実施の形態においては、9つの矩形バンドパスフィルタを3×3の行列状に配置する例を示した。これ以外に、例えば、複数の矩形バンドパスフィルタを2行2列、4行4列、または5行5列状に配置してもよい。その場合には、複数の画素8は、バンドパスフィルタアレイ4の形状に合わせて配置すればよい。また、各バンドパスフィルタの形状は同一でなくてもよく、例えば、円形、長方形または多角形であってもよい。
さらに、波長域の分割方向を1次元方向のみとすることができる。例えば、複数のバンドパスフィルタを、1行2列、1行3列、および1行4列状に配置してもよい。その場合には、アレイ状光学素子7として、マイクロレンズアレイの代わりにレンチキュラレンズを利用する。レンチキュラレンズは、波長域の分割方向にシリンドリカルレンズを配置することにより構成される。
また、バンドパスフィルタアレイ4の撮像波長領域を、可視光の380nm〜750nmの範囲とした。本開示はこれに限定されず、紫外線領域および/または赤外線領域を撮像波長領域に含めてもよい。
図4に示す各画素8a〜8iの画素領域は、撮像素子9の1画素に対応している。本開示は、これに限定されず、例えば、各画素8a〜8iの画素領域を、撮像素子9の2×2の画素に対応させてもよい。つまり、1つのマイクロレンズに対応する画素数を光学領域の分割数の整数倍としてもよい。
本実施の形態では、上述したように、各バンドパスフィルタ4a〜4iにおいて、透過波長域は互いに異なる。本開示は、これに限定されず、一部のバンドパスフィルタでは、それぞれの透過波長域(光学特性)が同じであってもよい。例えば、撮像素子の受光感度が低い波長域においては、複数のバンドパスフィルタの光学特性を同じにしてもよい。これら複数のバンドパスフィルタに対応する画素の出力信号を積算することで、SN比を改善できる。
光学領域の光学特性としては、分光特性に限られない。バンドパスフィルタアレイ4の代わりに、偏光方向の異なる偏光子を光学領域に配置すれば、異なる偏光成分を有する光に基づく画像情報を同時に取得することが可能となる。この場合も、偏光子として、例えば、反射型のワイヤグリッド偏光子を用いると、本開示の課題と同様に、ゴースト像が発生し得る。本実施の形態と同等な構成により、複数の偏光条件下で単一の撮像系を用いて互いに偏光特性が異なる複数の画像を同時に取得することができる。ゴースト像の少ない、高精度な画像センシング用撮像装置を実現できる。
本実施の形態においては、レンズ光学系Lと、アレイ状光学素子7との間に、光吸収フィルタ(光学素子6)を配置した。本開示はこれに限定されず、光吸収フィルタとアレイ状光学素子7とを一体的に形成してもよい。または、図6に示すように、光吸収フィルタと撮像素子9とを集積化し、一体的に形成してもよい。
また、アレイ状光学素子7は、撮像素子9上に一体的に形成されていてもよい。または、アレイ状光学素子7と撮像素子9との間にマクロレンズ13(図5)が設けられており、アレイ状光学素子7は、マクロレンズ13(図5)を介して撮像素子9上に一体的に形成されていてもよい。これにより、ウエハプロセスにおいて位置合せが可能になるので、位置合せが容易となり、位置合せ精度を高めることができる。
本開示は、光機能素子を有する光学系とアレイ状光学素子とを備えた撮像装置以外の撮像装置にも適用され得る。例えば、通常のデジタルカメラのように、光機能素子およびアレイ状光学素子がない場合においても、ゴースト光を低減できる。例えば、撮像素子からの反射光、つまりゴースト光は、レンズ光学系および鏡筒内部で反射する。それらの反射光によって、ゴースト像は発生し得る。レンズ光学系と、撮像素子とを少なくとも備える撮像装置において、レンズ光学系と撮像素子との間に、光学素子6を配置することにより、ゴースト像の少ない、高精度な撮像装置を提供することができる。
(実施の形態2)
図9は、本実施の形態による撮像装置100Bを示す模式図である。
本実施の形態による撮像装置100Bは、光学素子6として光吸収フィルタの代わりに偏光子16および1/4波長板17を備えている点で、実施の形態1による撮像装置100Aとは異なる。以下、実施の形態1と異なる点を中心に説明し、同様の内容についての詳細な説明は省略する。
図示されるように、撮像装置100Bは、第2のレンズ5とアレイ状光学素子7との間に配置された偏光子16および1/4波長板17を光学素子6として備えている。
偏光子16は、特定の偏光軸の方向に振動する光を透過させる吸収型の直線偏光子である。1/4波長板17は、直線偏光を円偏光または楕円偏光に変換する位相板である。偏光子16は、光学素子6のバンドパスフィルタアレイ4側に配置され、1/4波長板17は、光学素子6の撮像素子9側に配置されている。
なお、偏光子16および1/4波長板17は、図9に示すような位置に配置されていなくてもよい。例えば、偏光子16および1/4波長板17は、バンドパスフィルタアレイ4と第2のレンズ5との間に配置されていてもよい。または、偏光子16は、バンドパスフィルタアレイ4と第2のレンズ5との間に配置され、1/4波長板17は、第2のレンズ5とアレイ状光学素子7との間に配置されていてもよい。
実施の形態1による撮像装置100Aには、簡単な構成でゴースト光を低減できるという利点がある。ただし、ゴースト光を完全に除去することはできない。ゴースト光を除去する効果(以下、「ゴースト光除去効果」と称する。)を高めるためには、光吸収フィルタの透過率を低くすることが求められる。しかし、光吸収フィルタの透過率を低くすると、撮像画像の信号に寄与する光自体の光量が減衰してしまう。このように、ゴースト光除去効果と、撮像感度の向上とはトレードオフの関係にある。
本実施の形態による撮像装置100Bによれば、光の偏光特性を利用することにより、原理的にはゴースト光を100%除去することが可能となる。
以下、図10を参照しながら、光の偏光特性を利用してゴースト光を除去する原理を説明する。
図10は、図9における撮像系の一部を拡大して示した模式図である。図10は、具体的には、バンドパスフィルタアレイ4から撮像素子9の付近までの光学系の構成を示している。なお、一部の光学素子は省略している。
バンドパスフィルタアレイ4および第2のレンズ5を透過した信号光は、光軸上に配置された偏光子16を透過する。偏光子16は、図10に示すy軸方向に振動する光のみを透過させる。光が偏光子を透過する際は、偏光子の透過軸方向(y軸方向)における直線偏光成分が取り出され、透過軸方向とは垂直な方向(x軸方向)における偏光成分はカットされる。例えば、信号光が、可視光であるとする。その光が、非偏光または円偏光である場合、偏光子16での透過光の光量は入射光の光量に対して35〜45%程度に減衰する。
被写体1からの光が、非偏光または円偏光である場合、偏光子16の透過軸方向はx方向またはy方向でよい。一方で、被写体1からの光が、直線偏光である場合には、被写体1からの光の偏光方向と偏光子16の透過軸方向とを平行にしておく。図10においては、偏光子16を透過した信号光18の偏光方向をy軸方向とする。その場合、信号光18の電場が振動する方向は、図10(a)のようにy軸方向である。
次に、信号光18を1/4波長板17に透過させる。これにより、信号光は、直線偏光から円偏光に変化する。1/4波長板17の結晶軸22が、y軸に対し+45度または−45度の方向と一致するように1/4波長板17を光軸上に配置する。1/4波長板17を透過した信号光19の電場の振動は、図10(b)のようにxy平面において回転しながらz軸方向に伝播する。
円偏光となった信号光19は、撮像素子9により受光される。実施の形態1と同様に、撮像素子9に到達した光線の一部は、撮像素子9の表面で反射される。その反射光がゴースト光20となり得る。
ゴースト光20は、1/4波長板17を再び透過し、円偏光から直線偏光に変換される。ゴースト光21の偏光方向は、信号光18の偏光方向と直交する。ゴースト光21の電場は、図10(c)のようにx軸方向に振動する。ゴースト光21は偏光子16に再び入射する。しかし、ゴースト光21の偏光方向と、偏光子16の透過軸方向とは直交するので、ゴースト光21は偏光子16を透過せずに、吸収される。その結果、ゴースト光21は、反射面となり得るバンドパスフィルタアレイ4に到達しないので、ゴースト像は発生しない。
撮像装置100Bによれば、被写体1からの光のうち、直線偏光の光のみが受光される。このため、一般のカメラに偏光フィルタを取り付けたときに得られるような効果を得ることができるという利点が得られる。例えば、被写体1において光の表面反射が生じている場合、その光の表面反射を低減することができる。また、水面およびガラス面からの反射光による写りこみを除去することができる。ガラス越しの撮影においても被写体1を鮮明に撮影することが可能となる。
また、空気中の水蒸気による反射光を除去できるので、例えば青空の色調、山肌および建物を高いコントラストで撮影できる。
また、被写体1からの光が非偏光または円偏光の場合、偏光子16の透過軸方向は何れの方向でも構わない。そのため、偏光子16と1/4波長板17とを一体的に形成してもよい。一体化した素子を所定の角度に回転させる機構を設けることにより、所望の偏光状態の光に基づく画像を撮影することが可能となる。
本実施の形態では、1/4波長板17を用いる例を示した。ただし、一般的な波長板の性能は、使用する光の波長に大きく依存する。このため、例えば、可視光の範囲においては一定の位相差を一律に得ることはできない。
波長板として、アクロマティック波長板を用いることにより、広範な波長域においてフラットな位相特性を得ることができる。アクロマティック波長板は、異なる分散特性を有する2つの結晶を組み合わせることにより得られる。アクロマティック波長板には、公知のものを広く用いることができる。アクロマティック波長板を用いることにより、ゴースト光除去効果を得ることができる。なお、波長範囲が狭い場合またはゴースト像がある程度許容される場合には、通常の波長板を使用してもよい。
(実施の形態3)
本実施の形態による撮像装置100Cは、光学領域Lに遮光領域を備えている点で、実施の形態1による撮像装置100Aとは異なる。
図11Aは、実施の形態3の撮像装置100Cを示す模式図である。本実施形態の撮像装置100Cは、光軸Vを有するレンズ光学系Lと、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されたアレイ状光学素子Kと、撮像素子Nと、信号処理部Cとを備える。
レンズ光学系Lは、複数の光学面領域を有する光学領域L1と、複数の開口部を有する絞りSと、絞りSを通過した光を集光するレンズL2とを備えている。光学領域L1は、絞りSよりも被写体側に配置されている。レンズL2は、絞りSよりも撮像素子側に配置されている。光学領域L1は、絞りSの近傍に配置されている。ここで「近傍」とは、例えば絞り径の半分以下の距離の範囲を意味し、接触している場合を含む。本実施形態におけるレンズ光学系Lは、像側テレセントリック光学系である。
図11Bは、図11Aに示す光学領域L1における複数の光学面領域と、絞りSにおける複数の開口部との位置関係を示す図である。図11Bは、光学領域L1および絞りSを被写体側から見たときの正面図である。図11Aは、図11BにおけるQ−Q’線断面を示している。
光学領域L1は、3行×3列に正方配列された9つの分光フィルタを有する。第1、第2、第3、第4の分光フィルタが設けられた領域は、それぞれ、光学系Lの光軸Vに対して、第9、第8、第7、第6の分光フィルタが設けられた領域と対称に位置している。各分光フィルタの形状は、いずれも正方形であり、面積はいずれも同じである。しかし、各光学領域の形状および面積は異なっていてもよい。9つの分光フィルタは、互いに異なる第1から第9の波長帯域の光をそれぞれ透過させる分光特性を有する。第1から第9の波長帯域は、可視光領域または近赤外領域に含まれる波長帯域であり得る。
このような分光フィルタは、片面もしくは両面に誘電体多層膜を形成することによって実現できる。光学領域L1の像側には9つの開口部を有する絞りSが配置されている。9つの開口部は、9つの分光フィルタにそれぞれ対向している。ここで「対向する」とは、光軸方向において近接して向き合って配置されていることを意味する。以下、9つの分光フィルタにおいて、開口部に対向する領域を、それぞれ、第1から第9の光学面領域(D1からD9)と称する。光学面領域を「透光領域」と称する場合もある。また、9つの分光フィルタにおいて、開口部に対向する領域以外の領域を、それぞれ、第1から第9の遮光領域と称する場合もある。この遮光領域に対向する絞りSの領域は、光吸収部材で形成され得る。その遮光領域は、第1から第9の分光フィルタを透過する光の波長域において波長方向に略一様であり、かつ、空間方向に略一様である光吸収率を有する。なお、「空間方向に略一様である」とは実施の形態1において説明したとおりである。また、「波長方向に略一様である」とは、光吸収率が第1および第9の分光フィルタを透過する光の波長域全体にわたって均一であるか、または、その誤差が、その波長域において10%以内であることを意味する。
光学面領域D1からD4、およびD6からD9に対向する開口の形状は、いずれも半円形状である。第5の光学面領域D5に対向する開口の形状は円形状である。光学面領域D1からD4、およびD6からD9は、これらの領域を、光軸Vを中心に180°回転させた場合に、他の光学面領域と重ならないように配置されている。
撮像素子Nにおける複数の画素は、各々が3行3列に配列された9つの画素P1からP9を含む複数の画素グループに分割されている。
信号処理部Cは、撮像素子Nに電気的に接続された信号処理回路である。信号処理部Cは、撮像素子Nから出力された電気信号を処理して画像情報を生成・記録する。
本実施形態では、光学領域L1の各光学面領域を通過した光は、絞りS、レンズL2の順に通過した後、アレイ状光学素子Kに入射する。アレイ状光学素子Kは、光学面領域D1からD9を通過した光を、それぞれ、撮像素子Nにおける各グループの画素P1からP9に入射させる。信号処理部Cは、画素P1からP9において得られる画素値から、第1から第9の波長帯域に対応する画像情報をそれぞれ生成し、出力する。
図11Aにおいて、光束B2、B5、およびB8は、それぞれ、光学領域L1上の光学面領域D2、D5、およびB8を通過する光束である。これらの光束は、光学領域L1、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子N上の撮像面Niに到達する。なお、図11Aは、図11Bに示すQ−Q’線断面図であるため、他の光学面領域を通過する光束については図示されていない。
図11Aに示すように、アレイ状光学素子Kは、レンズ光学系Lの焦点近傍であって、撮像面Niから所定の距離だけ離れた位置に配置されている。
図12Aは、図11Aに示すアレイ状光学素子Kおよび撮像素子Nを拡大して示す図である。図12Bは、アレイ状光学素子Kと撮像素子N上の画素との位置関係を示す図である。アレイ状光学素子Kは、複数の光学要素M1(マイクロレンズ)が光軸に垂直な面に配列された構造を有する。アレイ状光学素子Kは、光学要素M1が形成された面が撮像面Ni側に向かうように配置されている。撮像面Niには、画素Pが行列状に配置されている。前述のように、画素Pは、画素P1から画素P9に区別できる。
画素P1から画素P9は、3行3列で1組となるように配置されている。アレイ状光学素子Kは、その光学要素であるマイクロレンズM1の1つが、撮像面Ni上における3行3列の画素P1から画素P9に対応する(覆う)ように配置されている。撮像面Ni上には、各画素の表面を覆うようにマイクロレンズMsが設けられている。
アレイ状光学素子Kは、光学領域L1上の光学面領域D1からD9を通過したそれぞれの光束の大部分が、それぞれ撮像面Ni上の画素P1からP9に到達するように設計されている。具体的には、アレイ状光学素子Kの屈折率、撮像面Niからの距離およびマイクロレンズM1表面の曲率半径等のパラメータを適切に設定することで、上記構成が実現する。
以上の構成により、画素P1からP9は、互いに異なる波長帯域の光に対応する複数の画像情報をそれぞれ生成する。つまり、撮像装置100Cは、互いに異なる波長帯域の光によって形成される複数の画像情報を、単一の撮像光学系で、かつ1回の撮像で取得することができる。
本実施形態では、絞りSにおける中央の開口部を除く各開口部が、光軸Vを中心に回転したときに他の開口部と重ならないように配置されている。このため、ゴースト光の発生を抑制することができる。以下、この効果を説明する。
図13Aおよび図13Bは、ゴースト光の抑制効果を説明するための図である。まず、光学面領域D1からD9に対応(対向)する絞りSの開口部が全て円形状である場合のゴースト光の発生について説明する。図13Aは、光学面領域D1からD9が全て円形形状である場合のゴースト光の発生原理を示している。図13Aでは、物体(被写体)から光学面領域D2およびD5に入射する2つの光束に着目して図示されている。
光束B5は、光学領域L1の光学面領域D2、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子Nの撮像面Niに到達する。各画素に入射した光の一部は画像信号として検出され、他の一部は正反射されて反射光B5’が発生する。レンズ光学系Lは、像側テレセントリック光学系であるため、反射光B5’は撮像面の法線方向に反射する。反射光B5’は、アレイ状光学素子K、レンズL2、絞りSをこの順に通過し、光学領域L1の光学面領域D5に到達する。反射光B5’の分光分布(波長帯域)は、光学面領域D5の透過波長帯域と同じであるため、反射光B5’は光学面領域D5でほとんど透過し、物体側へ戻る。
光束B2は、光学領域L1の光学面領域D2、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子Nの撮像面Niに到達する。各画素に入射した光の一部は画像信号として検出され、他の一部は正反射されて反射光B2’が発生する。レンズ光学系Lは、像側テレセントリック光学系であるため、反射光B5’は入射光と同じ角度の大きさで反射する。反射光B5’は、アレイ状光学素子K、レンズL2、絞りSをこの順に通過し、光学領域L1の光学面領域D8に到達する。ここで、光学面領域D8の透過波長帯域と光学面領域D2の透過波長帯域が異なる場合、光学面領域D2の透過波長帯域以外の波長の光は光学面領域D8でほとんど反射される。このため、光学面領域D8に入射した光の大部分は正反射され、反射光B2”が発生する。反射光B2”は、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子Nの撮像面Niに到達する。レンズ光学系Lが像側テレセントリック光学系であるため、光学面領域D2を通過した光束は、上記のような経路を辿り、撮像面に到達した光はゴースト光となる。ここでは、光学面領域D2のみに着目して説明したが、実際にはD5以外の他の光学面領域を透過する光についてもゴースト光が発生する。
このようなゴースト光が発生すると、画素の情報の中に、本来必要な分光情報に加えて不要な分光情報が混ざることになる。このため、高精度な分光情報の取得の妨げとなる。
次に、光学面領域D1からD4、D6からD9が、図11Bに示すように、光軸Vに対して対称的に配置されていない場合におけるゴースト光抑制の効果を説明する。図13Bは、光学面領域D1からD9が図11Bに示す形状を有している場合の光路を示している。ここでは、光学面領域D2およびD5の2つの光束に着目して図示されている。光束B5は、図13Aの場合と同じ光路を辿り、反射光B5’は物体側へ戻る。一方、光束B2は、図13Aの場合と同じ光路を辿り、図11Bに示す領域D2’に向かって戻される。このため、光学領域L1に到達する前に絞りSによって光束B2’のほとんどが遮光される。同様に、光束B5以外の全ての光束(図示せず)についても、撮像面からの反射光のほとんどが絞りSによって遮光される。従って、図13Aを参照しながら説明したゴースト光はほとんど発生しない。すなわち、図13Bの構成ではゴースト光を抑制することができる。
このように、光学面領域を図11Bのような構成にすることにより、ゴースト光を低減することができる。光学面領域D1からD9にそれぞれ対向する絞りSの9つの開口部が全て円形形状である場合と比べて、高精度な分光画像の取得が可能となる。
(実施の形態4)
本実施の形態による撮像装置100Dは、実施の形態3と同様に光学領域Lに遮光領域を備えている点で、実施の形態1による撮像装置100Aとは異なる。
図14Aは、本実施形態の撮像装置100Dを示す模式断面図である。本実施形態の撮像装置100Dは、光軸Vを有するレンズ光学系Lと、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されたアレイ状光学素子Kと、撮像素子Nと、信号処理部Cとを備える。以下、実施の形態3と共通する部分の説明は省略し、異なる点を主に説明する。
図14Bは、図14Aに示す光学領域L1の各光学領域と絞りSの開口部との位置関係を示す図である。図14Bは、光学領域L1および絞りSを被写体側から見たときの正面図である。図14Aは、図14BにおけるQ−Q’線断面を示している。
光学領域L1は、第1から第4の波長帯域の光をそれぞれ透過させる第1から第4の光学領域(D1〜D4)と、光を波長帯域に関わらず透過させる第5の光学領域(D5)と、第6から第9の波長帯域の光をそれぞれ透過させる第6から第9の光学領域(D6〜D9)とを有する。第1から第9の光学領域は、3行3列に一定の間隔で配列されている。各光学領域の形状は、いずれも正方形であり、面積はいずれも同じである。しかし、各光学領域の形状および面積は異なっていてもよい。
第1から第4、および第6から第9の光学領域は、例えば、一方または両方の面に誘電体多層膜を用いたフィルタを形成することによって実現され得る。第5の光学領域は、例えば透明ガラスによって形成され得る。第5の光学領域D5には、何も設けられていなくてもよい。すなわち、第5の光学領域D5は、開口であってもよい。後述するように、第5の光学領域D5に対向する絞りSの部分は遮光部(すなわち、遮光領域)である。このため、第5の光学領域D5は透光性を有しない部材、例えば光吸収部材で構成されていてもよい。第1から第4、および第6から第9の波長帯域は、全て異なっていてもよいし、これらの一部が同じであってもよい。第1から第4、および第6から第9の波長帯域は、例えば、可視光領域または近赤外領域に含まれる波長帯域であってもよい。
絞りSの遮光領域は、実施の形態3と同様に第1から第9の光学領域を透過する光の波長域において波長方向に略一様であり、かつ、空間方向に略一様である光吸収率を有する。なお、「空間方向に略一様である」とは実施の形態1において説明したとおりである。また、「波長方向に略一様である」とは、光吸収率が第1および第9の光学領域を透過する光の波長域全体にわたって均一であるか、または、その誤差が、その波長域において10%以内であることを意味する。
絞りSは、光学領域D1からD4、およびD6からD9に対向する位置に開口部を有する。光学領域D5に対向する部分は光を透過させない遮光部である。このため、光学領域D5を透過した光は撮像素子Nにおける画素に入射しない。図14Bに示す例では、1つの開口部の面積は、対向する光学領域の面積の70%程度であるが、これに限定されない。
本実施形態では、光学領域L1の各光学領域を通過した光は、絞りS、レンズL2の順に通過し、アレイ状光学素子Kに入射する。アレイ状光学素子Kは、光学領域D1からD4、およびD6からD9を通過した光を、撮像素子Nの各グループにおける画素P1からP4、およびP6からP9にそれぞれ入射させる。信号処理部Cは、画素P1からP4、およびP6からP9において得られる画素値から、それぞれ第1から第4および第6から第9の波長帯域に対応する画像情報を生成し、出力する。但し、光学領域D5に対応する絞りSの部分は遮光部であるため、光学領域D5を透過した光束は画素P5には到達しない。従って、画素P5からは画素値は得られない。
図14Aにおいて、光束B2は、光学領域L1上の光学領域D2を通過する光束であり、光束B8は、光学領域L1上の光学領域D8を通過する光束である。光束B2、B8は、光学領域L1、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子N上の撮像面Niに到達する。図14Aは、図14BにおけるQ−Q’線断面図であるため、他の光学領域を通過する光束については図示されていない。
本実施形態では、絞りSにおいて、光学領域D5に対向する位置が遮光されているため、クロストーク光を抑制することができる。以下、この効果を説明する。
図15Aおよび15Bは、クロストーク光の抑制効果を説明するための図である。まず、光学領域D5が第5の波長帯域の光を透過し、かつ絞りSにおいて光学領域D5に対応する位置が遮光されていない場合におけるクロストーク光の発生について説明する。図15Aは、絞りSにおいて光学領域D5に対応する位置が遮光されていない場合の隣接する画素間のクロストーク光を示している。各矢印は、クロストーク光が発生する方向を示している。画素P1では、3つの画素P2、P4、およびP5との間で相互にクロストーク光が発生する。画素P2では、5つの画素P1、P3、P4、P5、およびP6との間で相互にクロストーク光が発生する。画素P5では、8つの画素P1からP4、およびP6からP9との間で相互にクロストーク光が発生する。他の画素においても同様にクロストーク光が発生する。
このようなクロストーク光が発生すると、各画素の情報の中に、本来必要な分光情報に加えて不要な分光情報が混ざることになる。このため、高精度な分光情報取得の妨げとなる。
図15Bは、本実施形態のように、絞りSにおいて光学領域D5に対向する部分が遮光されている場合における、隣接する画素間のクロストーク光を示している。画素P1では、2つの画素P2、P4との間で相互にクロストーク光が発生する。画素P2では、4つの画素P1、P3、P4、およびP6との間で相互にクロストーク光が発生する。他の画素においても同様にクロストーク光が発生する。画素P5については、光学領域D5に対向する位置が遮光されているため、他の画素との間でクロストーク光が発生することはない。
このように、本実施形態では、絞りSにおいて光学領域D5に対向する位置が遮光されているため、クロストーク光を低減することができる。このため、絞りSにおいて光学領域D5に対向する位置が遮光されていない場合と比べて、高精度な分光情報の取得が可能である。
絞りSにおいて光学領域D5に対向する位置が遮光されると、取得できる分光画像の種類が9つから8つに減少する。しかし、必要な分光情報が8つ以下の用途においては、遮光部の導入は、クロストーク光を低減するための有効な手段となる。
本実施形態では、光学領域D5が遮光されているため、さらにゴースト光の発生も抑えることができる。以下、この効果を説明する。
図16Aおよび16Bは、ゴースト光の抑制効果を説明するための図である。まず、光学領域D5が第5の波長帯域の光を透過し、かつ絞りSにおいて光学領域D5に対応する位置が遮光されていない場合のゴースト光の発生について説明する。図16Aは、絞りSにおいて光学領域D5に対応する位置が遮光されていない場合のゴースト光の発生原理を示している。ここでは、光学領域D2を透過する光束B2のみに着目して説明する。光束B2は、光学領域L1の光学領域D2、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子Nの撮像面Niに到達する。ここで、各画素に入射した光の一部は画像信号として検出され、他の一部は正反射されて反射光B2’が発生する。反射光B2’は、アレイ状光学素子K、レンズL2、絞りSをこの順に通過し、光学領域L1の光学領域D5およびD8に到達する。ここで、各光学領域が誘電体多層膜によって形成され、光学領域D2で透過する光の波長帯域と光学領域D5およびD8で透過する光の波長帯域とが異なる場合、反射光B2”が発生する。これは、誘電体多層膜では、透過波長帯域以外の波長の光のほとんどが反射されることから、光学領域D5およびD8に入射した光の大部分が正反射されるからである。反射光B2”は、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子Nの撮像面Niに到達する。このような経路で撮像面に到達した光はゴースト像を形成する。ここでは、光学領域D2のみに着目して説明したが、実際には、光学領域D2以外を透過する光によってもゴースト像が発生する。
このようなゴースト像が発生すると、画素の情報の中に、本来必要な分光情報に加えて不要な分光情報が混ざることになる。このため、高精度な分光情報の取得の妨げとなる。
図16Bは、本実施形態のように、絞りSにおいて光学領域D5に対向する位置が遮光されている場合のゴースト光の発生原理を示している。図16Bでも、光学領域D2を透過する光束B2のみに着目して図示されている。光束B2は、図16Aの場合と同様に、撮像面Niで一部が正反射されて、反射光B2’が発生する。反射光B2’は、アレイ状光学素子K、レンズL2を通過し、その一部が絞りSにおいて光学領域D5に対向する遮光領域に到達して吸収され、他の一部が光学領域D8に到達する。図16Aの場合と同様に、光学領域D8に入射した光の大部分が正反射され、反射光B2”が発生する。反射光B2”は、図16Aの場合と同様に、撮像素子Nにおける撮像面Niに到達する。このような経路で撮像面に到達した光はゴースト像を形成する。
このようなゴースト像が発生すると、画素の情報の中に、本来必要な分光情報に加えて不要な分光情報が混ざることになる。しかし、その量は図16Aの場合と比べて抑制されている。
このように、本実施形態によれば、絞りSにおいて光学領域D5に対向する位置に遮光部があることにより、ゴースト像を低減することができる。このため、遮光部がない場合と比べて、高精度な分光情報の取得が可能である。
(実施の形態5)
図17は、撮像装置31を備える分光撮像システム30の全体構成を示す概略図である。
図示されるように、分光撮像システム30は、撮像装置31と、撮像装置31から出力される信号を処理する信号処理装置32とを備えている。なお、上述した信号処理部Cは信号処理装置32に相当する。
撮像装置31には、本開示の撮像装置100Aから100Dを用いることができる。これにより、信号処理装置32は、ゴースト光が低減された光の情報に基づく信号を処理することができる。信号処理装置32は、撮像装置31からの出力信号を処理して、映像信号を生成する。ディスプレイ37は、信号処理装置32により生成された映像信号に基づいて二次元分光画像を表示する。なお、例えば映像信号とは、各画素の輝度および色差信号である。
信号処理装置32は、画像演算部33と、画像メモリ34と、分光測定部35と、画像出力部36とを含む。
画像演算部33は、例えばバンドパスフィルタ処理、マイクロレンズアレイの感度の校正、撮像素子の画素間のクロストークの補正、および映像信号の演算処理などを行う。画像演算部33は、バンドパスフィルタの各波長に対応する2次元画像を生成する。
画像メモリ34は、バンドパスフィルタの各波長に対応する2次元画像をディジタルデータとして記録する。例えば、画像メモリ34はフレームメモリから構成される。
分光測定部35は、画像メモリ34から2次元画像データを読み出して処理する。分光測定部35は、各波長領域の2次元画像データを生成し、分析を行う。分析結果はグラフ化される。
画像出力部36は、グラフ化されたデータを映像信号に変換する。
信号処理部32は、半導体素子などにより構成され得る。信号処理部32は、典型的にはイメージシグナルプロセッサ(ISP)によって実現され得る。ISP内部のメモリには、各構成要素の機能を発揮するコンピュータプログラムが実装されている。ISP内部のプロセッサが逐次コンピュータプログラムを実行することにより、各構成要素の機能が実現されてもよい。このように、信号処理部32は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせることにより実現してもよい。
ディスプレイ37は、映像信号に基づいて二次元分光画像を表示する。
なお、信号処理装置32の代わりに、撮像装置31に直接接続することが可能な外部機器、例えばパソコンなどを用いて、撮像装置31からの出力信号を処理してもよい。