以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。また、機能構成の図において、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。また、処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
(電子マネーウォレット)
図1は、本発明の実施形態に係る電子マネーウォレット(電子財布)のイメージを表す図である。本発明の実施形態における電子マネーシステム(以下、本システムと言う)が扱う電子マネーは、基本的には、利用者間で流通可能なオープン・ループ型の電子マネーであるが、本システムの電子マネーデータには、発行時にその電子マネーデータ自体の固有の識別子が付与され、その識別子ごとに、その電子マネーのバリュー情報(貨幣価値)及び取引の履歴情報が付加される。すなわち、電子マネー自体の貨幣価値と共に、電子マネーが発行された後の電子マネーの取引情報(流通経路)が電子マネーデータに履歴情報として記録されていく。この記録は電子マネーが流通している限り、続いてゆく。したがって、本システムの電子マネーは、使途が追跡可能という意味では、クローズド・ループ的な性格も持っているとも言えるが、流通するという意味ではオープン・ループ型の性格を持っていると言える。
以下、本システムの電子マネーについて説明する。本システムが扱う電子マネーには、固定価値型と可変価値型がある。固定価値型電子マネーは、現実の紙幣や硬貨のように、発行時に定められたバリュー(価値)がその電子マネーが消滅するまで変わらないまま他人に譲渡可能なタイプのものである。すなわち、バリューが固定であるタイプである。「価値」を有する電子マネーデータを支払者から受取人に移動するだけで取引が完了するが、「お釣り」が必要な場合は、現金又はお釣りに相当するバリューの電子マネーを受け取ることになる。また、固定価値型の電子マネーの貨幣価値は、現実の通貨の単位に合わせ、最小単位を1円としてもよい。すなわち、本システムでは、1円単位で取引情報を追跡することができる。
一方、可変価値型電子マネーは、発行時に定められたバリュー(残高)が、取引の過程で変動していくタイプのもので、現在普及しているチャージ可能なICカード型の電子マネーに近いものである。可変価値型の電子マネーのバリューは、0円から所定の上限額まで変動する。すなわち、電子マネーを使って出金するとその支払った分だけバリューが減り、逆に支払を受けたり、チャージ(入金)をしたりすると、そのバリューが増えることになる。したがって、「お釣り」を受け取ることはない。
電子マネーウォレットには、利用者が保有する電子マネーデータが1以上格納されており、格納する電子マネーによって、固定価値型電子マネーウォレットと可変価値型電子マネーウォレットがある。例えば、図1で例示する固定価値型電子マネーウォレットには、10,000円と5,000円が「2枚」、「5枚」の1,000円、及び500円と100円が「2枚」、50円、10円、5円、1円がそれぞれ「3枚」がウォレットに格納されているので、このウォレットの所有者は、合計36,398円を所持していることになる。また、可変価値型電子マネーウォレットには、原則1つの可変価値型電子マネーだけを格納するものする。図の例では、このウォレットの所有者は、電子マネーの残高である12,345円を所持していることになる。一人の人間が複数のウォレットを持つことが可能なので、一方を固定価値型、他方を可変価値型として使い分けることができる。現実の財布と違って、いくらでもウォレットを持つことができるのは当然である。
なお、固定価値型の電子マネーのバリューは、現実の貨幣単位に必ずしも一致している必要はなく、例えば、高額取引のための「10万円札」や「5万円札」、及び、自動販売機等で頻繁に使うような少額固定取引のための「150円玉」や「130円玉」のような「硬貨」も自由に生成が可能である。
また、本明細書では立ち入らないが、電子マネーウォレットは、強固なセキュリティが施されたシステム上に保管され、所定の個人認証を受けた利用者のみが、電子マネーの支出、受取、バリュー残高の閲覧を行うことができる。また、電子マネーデータ自体も暗号化され、改竄や偽造防止が施されていることは言うまでもない。
図2は、固定価値型及び可変型電子マネーの違いを説明するための図である。図2(a)に固定価値型の電子マネーデータの具体例を示し、図2(b)に可変価値型の電子マネーデータの具体例を示している。両者とも、電子マネーデータには、識別子として世界で唯一の「電子マネーID」を有し、「電子マネータイプ」、「バリュー情報」、及び「履歴情報」を含んでいる。「電子マネータイプ」は、固定価値型か可変価値型かを示す情報であり、「バリュー情報」は、この電子マネーの貨幣価値を示す情報であり、固定価値型では一定で、可変価値型では現在の残高である(図2(b)参照)。なお、可変価値型電子マネーは、1つのウォレット内に1つしか存在できないものとしているので、可変価値型電子マネーの電子マネーIDは、ウォレットIDと一致する。したがって、電子マネーデータの履歴情報もウォレットの履歴情報と一致する。
「履歴情報」は、電子マネーが生成した時点から記録され、両電子マネータイプとも、「取引日時」、「取引行為」、「取引内容」、「支払者の識別子」、及び「受取者の識別子」が取引ごとに記録される(図2(a)参照)。可変価値型の履歴情報には、上記の項目に加え、「取引金額」と取引後にバリューである「残高」が追加される(図2(b)参照)。「取引日時」は、電子マネーによる取引が行われた日時であり、「取引行為」は、電子マネーの使用用途(使用目的)である。「取引行為」には、主なもので、「発行」、「譲渡」、「交換」、「支払」、「入金」、「無効化」があるので、以下順に説明する。
「発行」は、電子マネーを現金やクレジットカード等で「購入」する行為であり、電子マネーの生成(誕生)を意味する。電子マネーが発行されると電子マネーIDが付与される。
「譲渡」は、他の利用者に電子マネーを譲り渡す行為である。「寄付」、「募金」、「贈与」がこれに相当する。ただし、固定価値型電子マネーでは、購入行為が電子マネーの譲渡を伴うが、これは売買行為であるので、商品やサービス(以下、商品等と呼ぶ)の購入は、後述の「支払」に含めるものとする。
「交換」は、電子マネーを他の同価値の電子マネーと交換する行為である。固定価値型の電子マネーでは、現実の貨幣の「両替」と同じ概念である。すなわち、大きい額のお金を小さい額のお金に崩す行為又はその逆の行為である。また、他の国の通貨の電子マネーとも交換できるようにすると望ましい。固定価値型から可変単位型に交換すること、またはその逆も「交換」に含まれる。ただし、可変価値型の電子マネーでは、バリューが常に変動するため、「お金を崩す」というような概念は存在しない。
「支払」は、商品等の代価として、電子マネーを譲渡する行為である。「支払」には、「取引内容」として、購入した商品等の名称やその他の付随情報が可能な限り記録されるようにする。「支払」には、一般的な商品等の「購入」以外にも、使用目的によって特別に扱うべきものとして、「税金」、「贈与」、「有価証券の売買」、「借金」、「返済」等にさらに分類することができる。
履歴情報の「支払者」と「受取者」には、電子マネーで支払った者と電子マネーを受け取った者の識別子(正確には、受取者のウォレットのID又は受取者のウォレットのID)が記録される。ウォレットIDから、その所有者が特定できるため、以降の図では、分かりやすいように、「支払者」、「受取者」はその名称(略称)で示している。ここで、ウォレットの所有者が個人の場合は、名称は、通常は開示されないようにするが、その個人の希望により開示することもできる。図2(a)では、ウォレットを非公開にした利用者が「■■■■」で表示されている。
また、ウォレットの所有者が法人の場合は、通常は、名称が開示されるものとするが、その法人の希望により、非開示とすることもできる。すなわち、ウォレットの所有者は、個人、法人を問わず、自らのウォレットを開示するか非開示とするかを選択できるが、そのデフォルト値が個人は非公開、法人は公開となっているだけである。また、個人、法人とも、ウォレットを公開するか否か、開示する場合は、その条件を定めた開示条件を設定することができる。例えば、所定金額以下又は以上の場合は開示しない、特定の商品等の取引は開示しない、等が設定できる。
なお、電子マネーの履歴情報には、原則としてすべての取引の情報が記録されるが、履歴情報をすべて閲覧できるわけではない。個人の名称やその他プライバシーに関わる履歴は、基本的には非公開である。
「入金」は、電子マネーによって支払を受けたことを示す行為であり、「受取者」からみた「支払」の行為に対応する。なお、可変価値型の電子マネーでは、「入金」には、自動チャージ機等からの入金、すなわち「チャージ」も含まれる。
「無効化」は、電子マネーを現実の貨幣に戻す行為(現金化)であり、同時に電子マネーデータを無効にし、電子マネーを消滅させる行為である。ただし、電子マネーが無効化されると貨幣価値はゼロとなるが、履歴情報は少なくとも一定の期間は残すものとする。
また、後述するように、履歴情報そのものに価値がある場合があるので、本システムでは、このような場合は、電子マネーを「保全」し、その電子マネーに記録された履歴情報を半永久的に保管することができる。この保全する処置のために、電子マネーの発行主体(発行機関)は、保全を要求した者から手数料を徴収するようにしてもよい。また、保全されるような価値ある履歴情報を含んだ電子マネー自体を取引の対象とすることもできるようにする。すなわち、本来なら消滅し、無効化されて、無価値の電子マネーに新たな価値を付与することができる。
さらに本システムのユニークな処理として、電子マネーの「分割」、「統合」という概念を設ける。「分割」とは、1つの電子マネーを他の2以上の電子マネーと交換することである。また、「統合」は、2以上の電子マネーを1つの電子マネーと交換することである。固定価値型電子マネーでは、「分割」、「統合」は、「交換」(両替)と同義であるが、可変型電子マネーについては、後述する。
図3は、可変価値型の電子マネーデータの履歴情報の受け継ぎを説明するための図である。この例では、「太郎」が電子マネーシステムに加入し、新たに発行された自身のウォレット80Aに1,000円をチャージしたとする。その後、「Dコンビニ」でタバコ1個を500円で購入したとすると、ウォレット80Aの残高は500円となる。この時点では、ウォレット80Aには、履歴情報801が記録されている。「太郎」は、同じウォレットを使って購入を続けることができるので、履歴情報はその後も増え続ける。これは図2(b)のように残高全部をタバコ2個の支払に使った場合とは異なる。図2(b)の場合は、ウォレットをすべて譲渡したものと考えられるが、図3(a)の場合は、残高を残し、ウォレットの一部だけを譲渡したものと考える。
一方、支払を受けた側の「Dコンビニ」のウォレットを80Dとすると、「太郎」のウォレット80Aにおける生成から募金までの履歴情報801がウォレット80Cに受け継がれる。ただし、ウォレット80Aの残高、タバコ購入後の履歴情報は受け継がれない。
また、一方、「花子」が、ウォレット80Bを生成し、「次郎」に1,000円をランチ代として支払い、その「次郎」が同じ「Dコンビニ」でケーキを700円で購入したとすると、「花子」のウォレット80Bにおける生成から、「次郎」への1,000円の支払いまでの履歴情報802がいったん「次郎」のウォレットに受け継がれ、その後、「次郎」が募金した時点で、「Dコンビニ」のウォレットに受け継がれる。また、「次郎」の最新のチャージからケーキ購入までの履歴情報803が「Dコンビニ」のウォレット80Dに受け継がれる。この例では、「次郎」がケーキに支払った700円は、その前のチャージの2,000円から支払ったのか、花子からの1,000円の入金から支払ったのか区別できないので、便宜上、古いほうの入金から支払ったものと考える。なお、この古い方の入金以前の履歴は受け継ぐ必要はない。「花子」からの入金とは関連がないと考えられるからである。
なお、ここでは図示していないが、ウォレットは非公開としている利用者のウォレットの履歴情報も引き継がれる。ただしその場合の利用者の名称は表示されない。
ウォレットの公開、非公開に関わらず、履歴情報は受取者のウォレットに受け継がれるものとする。実際には履歴情報が受取者のウォレットにコピーされるわけではなく、履歴情報IDの紐付がされるだけである。もっとも、公開されていないウォレットであっても、その履歴情報のデータ自体は存在するので、不正利用や犯罪の場合は、捜査当局には開示可能である。
このようにすることで、可変価値型の電子マネーの場合でもウォレットの履歴情報によって電子マネーの履歴を記録することができる。なお、履歴情報804に示した状態のように残高がゼロとなっても電子マネーが消滅することはないが、所有者の求めがあれば、その電子マネーを無効化(消滅)することができる。もちろん、残高が残っていても無効化は可能である。そのときの残高は現金で清算するものとする。ただし、無効化されても履歴情報が直ちに消去されるわけではなく、価値ある履歴情報は、前述のように保全処置をすれば、新たな価値を生み出すことが可能である。
図4は、電子マネーの流通をイメージした図である。この図では、個人Aが個人Bに「支払った」500円の固定価値型の電子マネーが、廻りまわって、いつの日か個人Aの手元(個人Aのウォレット)に戻ってくる可能性があることを示している。過去に自分が使った電子マネーが何年もたって戻ってくれば不思議な気持ちになるかもしれない。電子マネーが自分のウォレットに戻ってきた場合は、その電子マネーの発行機関が、記念としてポイントを付与する等しても面白い。
電子マネーの履歴情報には、原則としてすべての取引の情報が記録されるが、前述したように履歴情報すべてを閲覧できるわけではない。また、個人の名称やその他プライバシーに関わる履歴は、基本的には非公開である。しかし、個人であっても、芸能人等の有名人のような場合、自身の名前を宣伝するために、電子マネーの履歴情報を公開とすることにメリットを感じる場合もある。すなわち、前述したように、利用者の求めに応じて履歴情報の開示条件を設定可能とする。法人においても同様で、広告等のために電子マネーの履歴情報の中の自社に関する情報を積極的に開示することが可能である。
図4の電子マネーの履歴情報の例は、個人を特定可能な名称等は非公開であるが、法人名等は一部を除いて公開されている場合を示したものである。本電子マネーシステムの加入者は、専用の閲覧ソフトまたは電子マネーシステムの公式ホームページ等で、電子マネーの履歴情報を閲覧することができる。この閲覧においては、通常の場合、個人は、「個人」又は「■■■■」等と表示される。ただし、図4の例では、個人Cは、芸能人であるため、自らの意志で氏名(芸名)を公表したことを示している。また、自己の情報を公開する場合であっても、公開する情報は、フルネームでなくともよく、例えば「駄菓子屋」等、業種だけを公開してもよい。また、ロゴマーク等の簡易図形を宣伝のために付加してもよいものとする。電子マネーの発行主体はここから広告料を徴収できるものとする。閲覧数に応じて広告料を決めてもよい。もちろん、履歴情報には、個人を特定できる識別子が記録されているが、公的機関による犯罪捜査等の場合を除き一般に公開されることはない。
電子マネーの履歴情報については、このように、電子マネーが使用されるたびに、すなわち、支払者から受取者に電子マネー移動するたびに、誰から、誰に、いつ、どこで、なんのために渡ったかの取引情報を記録する。もちろん、すべての取引情報が必ず記録できるとは限らないが、このような取引情報は、その電子マネーが流通している限り増え続けることになる。このような膨大なデータの取り扱いには、ビッグデータの技術を最大限活用する。ただし、データの無限の増大を避けるため、履歴を保持する取引のバリュー(取引額)に下限を設けたり(例えば、1,000円未満のような少額の取引の履歴は保持しない等)、所定期間(例えば、2〜3年)を過ぎた履歴情報は、犯罪捜査に関わるような場合を除き、消去又は別のデータベースに保管したりするようにしてもよい。またデータ量が膨大になり過ぎた電子マネーは「寿命」になったものとして取扱い、寿命がきた電子マネーは、いったん「回収」するようにしてもよい。
なお、本システムには、電子マネーの偽造防止や履歴情報のプライバシー保護の技術が必要であるが、それらは、本システムの実装時に最適な公知技術を利用するものとし、本明細書では立ち入らないこととする。
(第一の実施形態の機能構成)
図5は、本発明の第一の実施形態に係る電子マネーシステムの機能構成を示す図である。本実施形態の電子マネーシステムは、上記の電子マネーデータを取り扱うシステムであって、図示するように、電子マネーサーバ100に、利用者ごとに、電子マネーウォレット80及び電子マネーデータ90を格納する電子マネーウォレットDB101を備えている。電子マネーサーバ100は、電子マネーの利用者間の取引情報を取得する取引情報取得手段102と、電子マネーの購入や現金に戻す際(現金化)に金融機関システム40との決済を行う決済手段103と、電子マネーの各種の取引や処理を実行する取引実行手段110と、電子マネーウォレットDB101に格納された電子マネーの履歴情報を検索する履歴情報検索手段104と、検索された履歴情報を利用者の求めに応じて通知する履歴情報通知手段105と、履歴情報を半永久的に保全する履歴情報保全手段106とで構成される。
取引実行手段110は、さらに、電子マネー発行手段111と、バリュー移動手段112と、バリュー分割手段113と、バリュー統合手段と、バリュー交換手段115と、電子マネー無効化手段116とで構成される。
図2や図3では、電子マネーデータ90は、模式的に一つのデータ構造で示しているが、電子マネーIDとバリュー又はバリュー残高以外の情報(バリュー情報の変化の記録や取引の履歴情報)は、電子マネーIDと紐付けられた別のデータベースに格納されていてもよい。なお、本システムは、電子マネーの発行主体の他、政府や地方自治体の機関、金融機関、提携業者等で構成される業界団体で運営されるものとする。
取引情報取得手段102は、電子マネー取引装置30及び/又は利用者の電子マネー携帯端末20を介して、電子マネーの利用者間の取引情報を取得する。電子マネー取引装置30は、典型的には店舗のPOS端末等に設置された装置であり端末で電子マネーカード10や電子マネー携帯端末20と電子マネーに関する必要な情報を読み書きするカードリーダ/ライタである。
利用者が電子マネーを使用するときには、電子マネーカード10(以下、単に「カード」ということがある)や電子マネー機能を備えた電子マネー携帯端末20(以下、単に「携帯端末」ということがある)を使って行う。例えば、電子マネーカード10を使って買い物をする場合は、レジの電子マネー取引装置30(以下、単に「取引装置」ということがある)にカードを翳して、商品の代金を支払う。
このとき、電子マネー取引装置30は、電子マネーカード10、電子マネー携帯端末20、電子マネーサーバ100との通信手段を有し、カード若しくは携帯端末からカード情報を読み取り、カードの識別子,携帯端末の識別子、支払者識別子、受取者識別子、取引金額、取引装置の識別子を含んだ取引情報を取引情報取得手段102に送信する。利用者が携帯端末を使って商品やサービス(以下、商品等)を購入する場合も基本的には同様である。また、個人対個人の取引の場合、双方の携帯端末間で電子マネーでの支払と受取、すなわち、バリューの移動が可能である。この場合は、支払者と受取者の携帯端末が共にインターネットを介して、取引情報取得手段102と直接通信することで電子マネーサーバ100に取引情報を送信する。いずれの場合も取引情報取得手段102は、支払者と受取者の識別子(ユーザID)とその認証情報を確認し、本システムの登録ユーザであることが確認されれば、電子マネーの受渡やその他の処理を実行させるため、取引実行手段110に処理を引き渡す。なお、カードが通信機能とユーザインターフェース機能を備えていれば、カード間でも一部の取引が可能である。
履歴情報検索手段104は、利用者側の求めに応じて、電子マネーウォレットデータベース101を検索し、利用者側に検索結果データを送信する。このとき、利用者側では各種の検索条件を用いて履歴情報を検索することができる。
履歴情報通知手段105は、利用者の求めに応じて、電子マネーの履歴情報を「所定の条件」の下で、「所定の範囲」でその利用者に通知する機能を提供する。通知する履歴情報の特定には、上記の履歴情報検索手段104が使われる。
履歴情報保全手段106は、履歴情報を半永久的に保全したい場合に、利用者又は第三者の求めに応じて呼び出される処理である。電子マネーの履歴情報は、データ量の無限の増加を避けるために一定の期間(寿命)(例えば、5〜10年)を設け、寿命を過ぎた履歴儒情報は順次消去するが、「保全」された履歴情報は、別の保全用のデータベースに移され、半永久的に保管が可能である。また、履歴情報保全手段106は、犯罪の証拠保全の際にも利用できる。
取引実行手段110は、取引行為及び取引内容に応じて、電子マネー発行手段111、バリュー移動手段112、バリュー分割手段113、バリュー統合手段114、バリュー交換手段115、電子マネー無効化手段116に処理が分かれる。
利用者が電子マネーを新たに購入する場合は、電子マネー発行手段111が呼び出され、その時の購入代金の支払手続きを決済手段103が金融機関システム40と交信し、決済する。電子マネーの購入は、現金(取引装置が取扱可能な場合)の他、デビットカード、クレジットカード、又はネットバンキング等によって行われる。
電子マネー発行手段111は、利用者が電子マネーを初めて購入する場合は、ユーザ登録を求め、登録が終われば、ウォレットIDを新規に生成する。既存ユーザの場合は、既に生成されているウォレットIDを読み出す。そして、新たな電子マネーの購入の決済が正常に行われたことが確認されたときに、電子マネーIDを生成し、購入金額に相当する額をバリュー情報に記録した電子マネーを発行し、利用者のウォレットに格納する。
電子マネーの購入時に、利用者は、購入する電子マネーのタイプを指定することができる。可変価値型の電子マネーでは、購入金額と同一の電子マネーIDが一つ発行されるが、固定価値型の電子マネーでは、電子マネーの「金種」を指定することも可能である。例えば、購入金額が50,000円とすると、50,000円の電子マネーを1「枚」指定してもよいし、10,000円の電子マネーを5「枚」、又は、1,000円の電子マネーを50「枚」等と指定してもよい。
バリュー移動手段112は、電子マネーで支払いを行う場合、すなわち支払者の電子マネーウォレット内の電子マネーから、支払金額に相当するバリューを受取者のウォレットに移動させる際に呼び出される処理である。固定価値型では、電子マネーデータそのものが、現実の貨幣のように、支払者から受取者のウォレットに移動される。可変価値型では、支払者の電子マネーのバリュー残高から支払金額分を減額し、受取者の電子マネーのバリュー残高に支払金額分を加算する。
バリュー分割手段113は、1つの電子マネーを、2以上に「分割」するときに呼び出される処理である。固定単位型マネーでは、「分割」は、現実の貨幣の両替に相当するが、可変単位型ではやや複雑である。例えば、利用者が50,000円の可変価値型の電子マネーを所持しているとし、そのうち47,000円を電化製品の購入に充て、残り3,000円を募金したいとする。この場合は、50,000円の電子マネーを47,000円と3,000円に予め分割しておくことができる。この分割は、先に購入する商品等の支払の際にも行うことができる。例えば、47,000円で電化製品を先に購入したとすると、50,000円から47,000円分の電子マネーが分割されて家電販売店に移動し、残り3,000円分の電子マネーが分割され、手元に残ることになる。分割された電子マネーは、それぞれ新たな識別子が付与され、分割の履歴が記録され、分割前の履歴情報が原則として引き継がれる。分割するかしないかは利用者の求めに応じて判断する。
もちろん、受取者(この場合、家電販売店と募金収集者)が可変価値型の電子マネーを所持している場合は、このような分割などせずに購入を行うこともできる(このほうが一般的である)。可変価値型の場合は、前述のように、支払者の電子マネーのバリュー残高から支払金額分を減額し、受取者の電子マネーのバリュー残高に支払金額分を加算するだけである。
分割をしない場合、上記の場合、3,000円分の募金を完了した時点で、支払者のウォレットには、バリューがゼロの可変価値型の電子マネーが残ることになるが、新たにチャージすることでその電子マネーは再び使用可能となる。なお、分割した場合は、分割前の電子マネーは無効化(消滅)させるものとする。データの無制限の増大を避けるためである。なお、分割をするかしないかは利用者の判断に委ねられる。
バリュー統合手段114は、既に述べたように、2以上の電子マネーを一つに「統合」するときに呼び出される処理である。固定価値型電子マネーの場合は、現実の貨幣の両替に相当するが、可変単位型ではやや複雑である。例えば、複数の電子マネーで支払を受けた受取者が、受け取った電子マネーを使って、別の受取者に支払を行う場合、また、複数の電子マネーで支払をするのを避けたい場合には、事前にその複数の電子マネーを一つに統合しておくことで支払手続きを簡素化することができる。統合された電子マネーは、それぞれ新たな識別子が付与され、統合の履歴が記録される。また、統合前の電子マネーの履歴情報は、統合後の電子マネーに原則として引き継がれ、統合前の電子マネーは、無効化(消滅)される。このように統合手段を設けることで、特に固定単位型では、ウォレット内に格納する電子マネーが増え過ぎたとき等に、その数を減少させることができるので、電子マネーの管理が容易になる。統合するかしないかは利用者の判断に委ねられる。
バリュー交換手段115は、電子マネーのバリューを他の電子マネーのバリューと交換したいときに呼び出される処理である。例えば、電子マネーの通貨を別の国の通貨に所定の為替レートで両替することや、固定価値型電子マネーを可変価値型の電子マネーに変換又はその逆の変換をすることができる。バリュー交換手段には、利用者に特典としてポイントを付与するポイント付与手段や、付与されたポイントを所定のレートで電子マネーと交換するポイント交換手段を備えてもよい。
また、図示は省略するが、電子マネーが自分のウォレットに戻ってきた場合、すなわち、自分のウォレット内の電子マネーの履歴情報を検索した結果、自分が過去に使用した電子マネーの履歴情報が存在した場合は、そのウォレットに電子マネーの発行機関から記念としてポイントを付与する手段を備えていてもよい。この場合、ポイントは、その電子マネーが戻ってくるまでに要した期間に応じて決定されるようにしてもよい。
電子マネー無効化手段116は、電子マネーを無効化(消滅)させたいときに呼び出される処理である。電子マネーのバリューを現金化すると電子マネー無効化手段116が呼び出され、その電子マネーは自動的に無効化されるものとする。また、電子マネー無効化手段116は、今後使う予定のない電子マネーを整理したい場合にも利用される。ただし、電子マネーの履歴情報は、無効化されても直ちに消去されるのではなく、犯罪や不正使用等の追跡に備えて、所定の期間は保持するようにすることが望ましい。
なお、履歴情報検索手段104、履歴情報通知手段105、履歴情報保全手段106は、取引情報取得手段102を介さずとも公式ホームページ等からアクセス可能である。
(第二の実施形態の機能構成)
図6は、本発明の第二の実施形態に係る電子マネーシステムの機能構成を示す図である。第一の実施形態に係る電子マネーシステムでは、電子マネーサーバ100に利用者のウォレット及び電子マネーデータを格納するようにしたが、第二の実施形態の電子マネーシステムでは、データの一極集中を避けるため、電子マネーカード10A(以下、単にカードと呼ぶ)側、又は電子マネー携帯端末20A(以下、単に端末と呼ぶ)側に、ウォレット及び電子マネーデータを格納するようにした形態である。以下では、図2の第一の実施形態の機能構成と異なる部分についてのみ説明する。
第一の実施形態と同様に、電子マネーの発行や無効化等、サーバでしかできない処理は、電子マネーサーバ100A(以下、単にサーバと呼ぶ)で行うが、電子マネーの日常の支払/受取処理(バリュー移動)は、カード若しくは端末と、電子マネー取引装置30A(以下、単に取引装置と呼ぶ)間で、或いは、端末間で行うことができる。そのため、第二の実施形態では、取引装置側と端末側に、バリュー移動手段を備えている。カード又は端末のウォレット内のデータを閲覧するウォレット閲覧手段118も取引装置側と端末側に、備えている。しかがってその履歴情報も見ることができる。
カードには、通常、ユーザインターフェース機能やネットワークへの接続機能がないので、カード間のバリュー移動、又はカードと端末間のバリュー移動は、取引装置を介して行うものとする。取引装置は、必要が生じたときのみサーバにアクセスする。第二の実施形態では、このようにすることで電子マネーの取引におけるサーバ側の介在を最小限にすることができる。
また、カード側には、1つのウォレットのみを格納できるものとする。したがって、ウォレットIDはカードIDに一致する。一方、端末側には、複数のウォレットを格納可能とする。そのため目的に応じてウォレットを使い分けることもできる。カード若しくは端末のウォレットには、固定価値型の電子マネー又は可変価値型の電子マネーをどちらも格納可能であるが、カードや端末の記憶容量の制約から、1つのウォレットに格納できる電子マネーの数や量に制限を設けてもよい。また、カード側又は端末側に記憶する電子マネーの履歴情報は、同じ制約から、保存する期間を制限したり、記憶量を制限したりする。例えば、カード側に履歴情報を保存する場合は、保存期間は最大6ヶ月、記憶量は最大1GB等とする。ただし、端末側に保存する場合は、制限をもっと緩やかにしてもよい。
制限を超えた履歴情報は、順次消去するのではなく、好ましくは、サーバ側の大容量のデータベースに自動的若しくは半自動的に転送して、少なくとも一定期間は保管するようにする。もちろん、サーバに保管した履歴情報を閲覧することも可能とする。なお、一定期間を過ぎた場合であっても前述した保全処置をすればその電子マネーの情報は半永久的に保管される。
このように、第二の実施形態では、カードや端末や取引装置だけで処理できないものは、サーバに処理要求を送信してサーバ側で処理してもらうことができる。そのため、端末と取引装置には、サーバに対する処理要求送信手段119が設けられる。サーバ側で処理する機能としては、電子マネーの発行、無効化、カードや端末側の制限を超えた履歴情報の保管、履歴情報の保全処置、電子マネーの分割、統合、交換などがある。なお、固定価値型の電子マネーの場合は、端末や取引装置側で上記の処理のうち一部ができる場合もある。
また、サーバ側には、端末や取引装置からの処理要求に応えるため、サーバで行う処理の要求を受信する処理要求受信手段202と、その処理要求に基づいて必要な処理を実行する処理要求実行手段210を有する。処理要求実行手段210には、カードや端末の制限を超えた履歴情報を、電子マネー履歴情報データベース201に保管する履歴情報保管手段211と、その他図示するような手段が含まれる。なお、履歴情報検索手段104、履歴情報通知手段105、履歴情報保全手段106は、処理要求受信手段202を介さずとも公式ホームページ等からもアクセス可能である。
なお、電子マネーの分類の方法として、コンピュータ側に専用ソフトをインストールし、決済をインターネット経由で行うネットワーク型と、カード側の記録された電子マネーのバリューを足し引きするICカード型と分けることがあるが、本発明の第一、第二の実施形態のシステムは、このような分類方法には適さず、いわばハイブリッド型である。
上記の電子マネーシステムの機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
(処理フロー)
以下では、電子マネーシステム内の処理についてさらに詳しく説明する。処理フローは、第一、第二の実施形態においてほぼ共通であるので、以下では特にことわらない限り第一の実施形態について説明する。
図7は、電子マネー取扱処理のメインフローを示す図である。電子マネーサーバ100は、まずステップS11において、利用者間の電子マネーの取引情報(両者のウォレットID,電子マネーID、取引内容、取引金額等の情報)を取得する。電子マネーの取引は、電子マネーカード10や電子マネー携帯端末20を電子マネー取引装置30に翳して支払を行なう場合の他、個人間でお互いの電子マネー携帯端末20同士を、電子マネー取引装置30を介さずに、端末の近距離無線通信で交信させることでも成立する。
電子マネーサーバ100は、次にステップS12において、取得した取引情報に含まれる取引行為が電子マネーの新規発行であるかどうかをチェックする。新規発行であれば、ステップS13に移り、バリュー決済処理、すなわち、電子マネーのバリューに相当する現金等での支払を受けて電子マネーの購入決済をする処理を行う。決済が完了すれば(ステップS14:Y)、電子マネーIDが生成され、その電子マネーデータが利用者のウォレットに格納される。決済が正常に完了しなければ(ステップS14:N)、そのまま処理を終了する。
電子マネーの新規発行でない場合は(ステップS12:N)、ステップS16において、既存の電子マネーを無効化するかどうかがチェックされる。無効化する場合には、電子マネーを現金化する場合や、複数の電子マネーを統合し元の電子マネーを消滅させる場合や、その他何らかの理由で電子マネーをこれ以上流通させたくない場合等が考えられる。無効化する場合は(ステップS16:Y)、ステップS17に移り、電子マネーのバリュー残高を現金化し、現金化が完了すれば(ステップS18:Y)、ステップS19において、電子マネーデータを無効化する。具体的には、電子マネーIDに無効フラグを立て、無効化した日時を記録する。
新規発行でも無効化でもない場合は、ステップS20に移り、電子マネーのバリュー移動処理を行う。すなわち、取引金額に該当する電子マネーのバリューが支払元から受取先へ移動される。バリュー移動処理については、図8でさらに詳しく説明する。
バリュー移動処理が完了すると、最後に、ステップS21において、支払者及び受取者のそれぞれの電子マネーの履歴情報に、支払元情報、受取先情報、取引行為、取引内容を取引日時と共に記録し、処理を終了する。このとき履歴の引き継が必要なときはその情報をコピーする。なお、第二の実施形態では、バリュー移動処理及び履歴情報記録処理は、カード又は端末の利用者側又は取引装置側で行うことができる。
図8は、電子マネーのバリュー移動処理を示す図である。この図は、前図のステップS20の処理を細分化したものである。
電子マネーのバリュー移動処理では、まずステップS201において、取引情報から支払元と受取先のウォレットを抽出する。次に、ステップS202において、電子マネーが可変価値型であるかどうかをチェックする。固定価値型であれば、ステップS203に移り、電子マネーデータを支払元のウォレットから受取先ウォレットにすべて移動する。可変価値型であれば、ステップS204に移り、取引情報から支払バリュー(取引額)を抽出する。そして、ステップS205において、支払元の電子マネーを分割又は統合が必要かどうかを確認する。分割又は統合が必要か否かは、その旨の情報を取引情報に含めておくものとする。分割又は統合が不要な場合は(ステップS205:N)、ステップS206のバリュー移動処理、すなわち、支払元の電子マネーのバリューから支払バリュー分を減額し、受取先の電子マネーのバリュー残高に支払バリュー分を加算する処理を行う。
分割又は統合が必要な場合は(ステップS205:Y)、ステップS207に移り、支払バリューが支払元の電子マネーのバリュー(ウォレットの残高)を超えているかどうかをさらにチェックする。バリューを超えていれば(ステップS207:Y)、統合処理の対象とし、ステップS220のバリュー統合処理に移る。統合処理については、図9で説明する。
支払バリューが支払元の電子マネーの残高バリューを超えていなければ(ステップS207:N)、ステップS208において、支払元の電子マネーの分割処理を行う。例えば、電子マネーのバリューが50,000円で、支払バリューが47,000円であるとすると、47,000円と残りの3,000円の2つに、元の電子マネーを分割する。そして、ステップS209において、分割後の電子マネーの一つを支払元として、S206の処理と同様に、バリュー移動処理を行う。残りの3,000円の電子マネーも、この後別の支払に充てることができる。
ステップS206又はステップS209のバリュー移動処理が終了すると、ステップS210に移り、支払元の電子マネーの履歴情報を受取先の電子マネーの履歴情報に引き継ぐ。
図9は、電子マネーのバリュー統合処理を示す図である。この図は、前図のステップS220の処理を細分化したものである。バリュー統合処理においては、最初に、ステップS221において、統合前の電子マネーが固定価値型か可変価値型かをチェックする。固定価値型の場合は、ステップS222に移り、ウォレット内の選択された電子マネーデータを統合(両替)する。可変価値型の場合は、ステップS223に移り、支払者の他のウォレットと統合を行うかどうかを確認する。この確認のための情報は、取引情報に含まれているものとする。統合を行うことが確認できない場合は(ステップS223:N)、なにもせず、呼出し元へ戻る。この場合は、電子マネーの処理は何も行われないため履歴情報の記録(図7のステップS21)は行われない。なお、固定価値型電子マネーと可変価値型電子マネーを統合することはできないのは言うまでもない。
統合を行う場合は(ステップS223:Y)、ステップS224において、支払者の他のウォレットから電子マネーデータを抽出し、統合を試みる。そして、統合後のウォレットの合計バリューが支払バリュー以上となるかを確認する。支払バリュー以上とならない場合は(ステップS225:N)、S223に戻り、さらに別のウォレットと統合するかを確認する。このステップを繰り返し、統合後のウォレットの合計バリューが支払バリュー以上となる場合は(ステップS223:Y)、ステップS226において、実際に統合を実行し、統合後のウォレットを支払元とするバリューの移動処理を行う。バリュー移動処理が終了後は、ステップS227の履歴引き継ぎ処理を行いメイン処理に戻る。
なお、電子マネーサーバ100が行うメイン処理には、その他の処理(履歴情報の保管、履歴情報の検索、履歴情報の保全等)もあるが、既に述べた説明から自明であるため、ここでは説明を省略する。
(履歴情報検索画面例)
図10は、電子マネー履歴情の報検索画面の一例を示す図である。本電子マネーシステムの利用者は、自分のウォレット内にある電子マネーの履歴情報をいつでも閲覧することができる。このためには、電子マネー携帯端末20や自身が所有するPC等において専用アプリケーションを起動し、カード情報の読み取り手段によって、電子マネーカード10又は電子マネー携帯端末20内のウォレットの電子マネーデータを読出す。
そして、専用アプリケーションが、電子マネーカード10又は電子マネー携帯端末20内のウォレット内の電子マネーデータの履歴情報をすべて読み出して、端末やPCの画面に表示してくれる。表示されるデータが膨大にある場合には、検索条件や表示条件等を端末から入力してもよい。検索の結果、自分のウォレット内の電子マネーデータに思わぬ履歴情報を発見して驚くこともある。
もちろん、電子マネーの履歴情報の検索対象は、自分のウォレット内に限らない。友人等の電子マネーカード10を自分の携帯端末に翳し、ログイン等の認定作業をすれば、その履歴情報も検索するようにもできる。また、先に述べた電子マネーサーバ100の履歴情報検索手段104を用いて、電子マネー履歴情報DB201に格納されているすべての電子マネーの履歴を検索対象とすることもできる。この検索は膨大なものとなるためビッグデータの検索技術を活用する。
サーバ側の履歴情報を検索する場合は、図示するような検索条件入力画面500から、検索キーワードを入力し、電子マネータイプ、電子マネーのバリュー(固定価値型電子マネーの場合)、及び履歴情報を検索する期間等の検索条件を入力して、検索ボタンを押下するだけでよい。そうすると、図示するような検索結果画面510に検索結果が表示される。図の例では、2人の有名なアイドルが共に使用した電子マネーの履歴情報が検索結果として表示されてこの有名人のファンが驚いている様子が示されている。
ここで表示されているのはあくまで電子マネーのデータに過ぎず、本来は無価値のものであるが、電子マネーデータの偽造や改竄は絶対に不可能とする技術が採用されていれば、この電子マネーは、世界にたった一つのデータであることが保証される。これは上記のようなファンにとっては大変貴重なものである。
この電子マネーが現在どこにあるかは、履歴情報の最下段に表示された現在の所有者が公開されていないため分からないが、もし、この電子マネーが自分のウォレット内にあった場合は、まず、この電子マネーを無効化(流通化を停止)し、さらに、先に述べた保全処理を行い(有料)、この電子マネーの履歴情報を半永久的に残すことが可能である。万一、所有者が見つかれば、あるいは履歴情報を公開している所有者の手にこの電子マネーが渡れば、その所有者と交渉して譲ってもらうことも不可能ではない。そして、このような電子マネーのデータがファンの間で取引され、プレミアが付く可能性もある。また、履歴情報を検索して稀有な情報を採掘するといった楽しみ方も生じる。すなわち、電子マネー履歴情報によって、電子マネーの新たな付加価値、すなわち、人を楽しませる価値、経済的な価値を創造することができる。
(待ち受け通知画面例)
図11は、本発明の実施形態に係る電子マネーの待ち受け通知画面の一例を示す図である。「待ち受け通知」とは、利用者が自己のウォレットに「特定電子マネー」が入ったときに、その入金の通知を受ける機能のことをいう。「特定電子マネー」とは、電子マネーの履歴情報又は電子マネーの種類が、予め指定した条件に合致し自己のウォレットに入金したときに利用者に通知するように指定された電子マネーを言う。例えば、有名人の使用した履歴情報を持つ電子マネー、特定の記念日に生成された電子マネー、キャンペーンとして発行され有効期限内に特定の場所又は目的で使用すると何らかの特典(ポイントやバリューの割増等)が付く電子マネー等がある。特定電子マネーも、現実の貨幣の記念紙幣や記念硬貨のように、取引の対象になることは言うまでもない。また、待ち受け通知画面とは、特定電子マネーの条件を利用者が予め指定しておき、その電子マネーが自己のウォレットに入ったときに通知を受けるための画面である。この画面は、図10のように電子マネーの履歴情報の検索を積極的に行うものではなく、あくまで特定電子マネーの入金を自然に待ち受け、入金があったときに通知を受けるためのものである。
図11は、特定電子マネーがキャンペーン付の電子マネーであり、その電子マネーが自己のウォレットに入ったことを通知した待ち受け通知画面の例を示している。利用者は、待ち受け条件(通知条件)として、キャンペー付の特定電子マネーを指定しているものとする。特定電子マネーは、単に通知されるだけでなく、ウォレット内の別の場所(保存用ウォレット)に保存される。したがって、せっかく手に入れた特定電子マネーが、明示的に指示しないのに支払に用いられて、自己のウォレットから出ていくことはない。
(実施形態の効果)
以上、本発明の実施形態によれば、利用者間で流通可能な電子マネーにおいて、現金やカードと同等な機能を持たせつつ、電子マネーに新たな付加価値を創造する電子マネーシステムを提供することができる。電子マネーは現実の貨幣と同じ感覚で使用できる固定価値型、又は既に普及しているICカードの電子マネーと同じ感覚で使用できる可変価値型を選択することができる。
本システムでは、電子マネーデータ自体に履歴情報を持たせたので、利用者は、その電子マネーを含んだウォレットが格納されているカードや携帯端末にアクセスして、その履歴情報をいつでも閲覧することができる。また、自分のウォレットにない電子マネーもサーバ側の履歴情報検索手段を使って検索することができる。さらに、利用者は、自分のウォレットの履歴情報を開示する条件を自らの意志で定めることができるので、プライバシー保護もできる。ただし、犯罪捜査の場合は、関係する履歴情報はすべて追跡可能とする。
また、企業等は、履歴情報にロゴマーク等の宣伝価値のある情報を付加し、電子マネーの発行機関は、その広告料等を徴収することもできる。また、履歴情報に有名人の情報が含まれる等、その有名人のファンにとっては価値ある履歴情報等は、利用者の求めに応じて保全処置することで半永久的に保存できる。また、その価値ある履歴情報を含んだ電子マネー自体を取引の対象とすることもできる。
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。