詳細な記載
本発明の最初の態様は、
a)プロゲストゲン及び/又はエストロゲン、及び
b)魚油トリグリセリドであって、該魚油トリグリセリドは、脂肪酸でエステル化されたグリセロールからなり、該脂肪酸は、該脂肪酸の少なくとも45質量%の量で、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含む魚油トリグリセリド
を含む非経口投与のためのホルモン含有水中油エマルジョンである。
本発明の水中油エマルジョンは、油相及び水相を含む。
本発明の水中油エマルジョンは、医薬品有効成分(API)として、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンを含む。
ここで使用される“プロゲストゲン”は、天然のプロゲステロン及び合成プロゲストゲ
ンの両方を含む。一般に、プロゲストゲンは一般式Iを有し、ここで、X1及びX2は独立して、−COCH
3、−OCOC
5H
11、−OH、エチニル基、−OCOCH
3、−H、−CH
2CNから選択され;ここで、X3は、−H、−CH
3又は−Clから選択され;ここで、X4は、−H、−OH又は−CH
3、から選択され及び、ここで、X5は、CH
3又はCH
2CH
3から選択される。
プロゲストゲンは、例えば、炭素3及び4、4及び5、5及び6、6及び7、5及び10、10及び9及び/又は15及び16の間の1以上の二重結合を伴う環構造を含み得る。
そのようなプロゲストゲンは、例えば、5−α−ジヒドロプロゲステロン、6−デヒドロ−レトロプロゲステロン(ディドロゲステロン)、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン;ノルエチノドレル、ノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、クロルマジノン及びメゲストロールのようなプロゲステロンの誘導体を含む。“プロゲストゲン”はまた、プロゲステロンの17α−OHエステルを生成する修飾体並びにプロゲステロン及び/又は19−ノル−プロゲステロン上に6−α−メチル、6−メチル、6−エン及び6−クロロ置換基を導入する修飾体も含むが、これらに限定されるものではない。更に、合成プロゲストゲンの非限定の例は、ノルエチンドロン(Micronor(登録商標))、ノルゲストレル(Ovrette(登録商標))、レボノルゲストレル(Norplant(登録商標);エチニル
エストラジオールを伴う;Alesse(登録商標)、Nordette(登録商標))、ゲストデン、酢酸メドロキシプロゲステロン(Provera(登録商標))、プロメゲストン、酢酸ノメゲストロール、リネストレノール及びジエノゲストを含む。
1態様において、プロゲストゲンは、プロゲステロン、ノルエチノドレル、酢酸ノルエチドロン、メドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン17−アセテート、レボノルゲストレル、ディドロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ノルエチドロン、ゲストデン、酢酸ノメゲストロール、プロメゲストン、ジエノゲスト、クロルマジニオン、メゲストロール、酢酸メゲストロール及び/又はそれらの混合物からなる群より選択される。
特定の態様において、プロゲストゲンは、5−α−ジヒドロプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、ディドロゲステロン及びプロゲステロン及び/又はそれらの混合物からなる群より選択される。
更なる態様において、プロゲストゲンは、プレグネロノン、プロゲステロン、メドロキシプロゲステロン及びそれらの医薬的に許容された誘導体からなる群より選択される。
特定の態様において、プロゲストゲンは、プロゲステロンである。ここで使用される用語“プロゲステロン”は、以下の式II:
で表される構造を有するプロゲストゲンファミリーのメンバーを言及する。
プロゲステロンはまた、D4−プレグネン−3,20−ジオン;δ−4−プレグネン3,20−ジオン;又はプレグネ−4−エン−3,20−ジオンとしても知られている。非常に特殊な態様において、プロゲステロンは、微粒化される。Proquina(メキシコ)は、微粒化プロゲステロンの一つの供給会社である。
本発明に従う使用のために適したプロゲストゲン(例えば、プロゲステロンを含む、あらゆるプロゲストゲン)は、医薬的に許容される塩の形態にあり得る。
本発明の水中油エマルジョンは、少なくとも0.1g/L、好ましくは、少なくとも0.15g/L、より好ましくは、0.15g/Lないし12.0g/Lの範囲、更に好ましくは、0.8g/Lないし4.0g/L、特には、1.0g/Lないし2.5g/Lのプロゲストゲンの量を含み得る。
好ましい態様において、該水中油エマルジョンは、0.15g/Lないし12g/Lの範囲の量におけるプロゲステロンを含む。
本発明の水中油エマルジョンは、少なくとも0.3g/L、少なくとも0.5g/L、少なくとも1g/Lのプロゲストゲン(例えば、プロゲステロン)の量を含み得る。これらの態様の何れかに従って、エマルジョンは、3.0g/L以下、2.5g/L以下又は2.0g/L以下のプロゲストゲン(例えば、プロゲステロン)の量を含み得る。特定の態様において、本発明の水中油エマルジョンは、プロゲステロンの、約1.0g/Lないし2.0g/L、特に、約1.5g/Lのプロゲステロンを含む。
本発明の別の態様に従って、水中油エマルジョンは、1種以上のエストロゲンを含む。
好ましい態様において、該エマルジョンは、以下の式III:
において反映されるエストリオール(1,3,5(10)−エストラトリエン−3,16−α,17β−トリオール)を含む。
更なる態様において、該エマルジョンは、以下の式IV:
において反映されるエストラジオール(1,3,5(10)−エストラトリエン−3,17β−ジオール)を含む。
更なる態様において、該エマルジョンは、以下の式V:
において反映されるエストロンを含む。
本発明の好ましい態様に従って、水中油エマルジョンは、エストラジオール、エストロン、エストトリオール及びそれらの誘導体並びにそれらの混合物からなる群より選択されるエストロゲンを含む。
特に好ましいものは、エストラジオールである。
エストロゲンは、該エマルジョンに基づいて、好ましくは、0.015g/Lないし5g/L、より好ましくは、0.015g/Lないし1.5g/L及び最も好ましくは、0.05g/Lないし0.3g/L(リットル当たりのグラム)の範囲の量で水中油エマルジョン中に存在する。好ましい態様において、該エマルジョンは、0.015g/Lない
し1.5g/L、好ましくは、0.05g/Lないし1.0g/L、より好ましくは、0.08g/Lないし0.5g/L及び特には、0.1g/Lないし0.3g/Lの範囲の量でエストラジオールを含む。
本発明の更なる態様に従って、水中油エマルジョンは、プロゲストゲン及びエストロゲンの組み合わせを含む。該エマルジョンにおいて、エストロゲンに対するプロゲストゲンの質量比は、2:1ないし500:1、好ましくは、2:1ないし200:1、更に好ましくは、5:1ないし50:1及びより好ましくは、10:1ないし20:1であり得る。
好ましくは、水中油エマルジョンは、エストラジオール及び/又はプロゲステロンを含む。
本発明の1態様は、エストロンとプレグネロノン及び/又はプロゲステロンとの組み合わせ、他には、エストリオールとプレグネロノン及び/又はプロゲステロンとの組み合わせに関する。選択肢、特に好ましい態様は、エストラジオール及び/又はプレグネロノン及び/又はプロゲステロンの組み合わせ、特には、プロゲステロンとの組み合わせに関する。両選択肢において、メドロキシプロゲステロンは、付加的に含み得るか又はメドロキシプロゲステロンは、プレグネロノン及び/又はプロゲステロンと置き換えられ得る。よって、2種より多いホルモンがまた、本発明に従って組み合わせられ得る。
水中油エマルジョンのより良い投薬のために、親エマルジョンは、もし必要であれば、適当量の水、好ましくは、4倍量までの水で希釈され得る。
水中油エマルジョンの油相は、魚油トリグリセリドを含み、ここで、該魚油トリグリセリドは、脂肪酸でエステル化されたグリセロールからなり、該脂肪酸は、該脂肪酸の少なくとも45質量%の量で、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、好ましくは、ω−3−脂肪酸の総量が、該脂肪酸の少なくとも50質量%(wt.−%)、より好ましくは、少なくとも55質量%、より好ましくは、少なくとも60質量%及び最も好ましくは、少なくとも65質量%である。
欧州薬局方(EP)において、非経口エマルジョンにおける使用のために許容可能である魚油に関する2種のモノグラフ(即ち、表題“ω−3酸トリグリセリド”のEP 1352、及び、表題“ω−3酸が豊富な魚油”のEP 1912)が存在する(EP 1352、EP 1912、2008年)。EP 1352における生物活性n3−FAsのための組成及び必須要件がEP 1912においてよりも遥かに高いということにおいて、モノグラフEP 1352は、EP 1912から実質的に異なる(EP 1352:EPA+DHA≧45%;総n3−FAs≧60% 対 EP 1912:EPA:≧13%;DHA≧9%;総n3−FAs≧28%)。EP 1912におけるn3−FAsのレベルは、自然において見られるレベルと一致する。比較すると、EP 1352において、n3−FA濃度は、実質的により高いものであり、分子蒸留のような濃縮プロセスにより得られ得、それにより、存在する幾つかの望ましくない脂肪酸、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が除去される。その際、存在する全ての脂肪酸の、及び、特にω−3脂肪酸の濃度は、比例して高くなる。例示的な態様において、魚油トリグリセリドは、該魚油トリグリセリドの脂肪酸の総質量に基づいて、少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも65質量%の量でω−3脂肪酸を含む。魚油トリグリセリドは、該魚油トリグリセリドの脂肪酸の総質量に基づいて、少なくとも45質量%、好ましくは少なくとも50質量%のエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)の総量を含む。例えば、脂肪酸及びω−3脂肪酸(例えば、EPA及びDHA等)は、EP 1352に従って、魚油トリグリセリド中のそのような酸の構成要素を参照してここで議論された。例えば、議論された脂肪酸及びω−3脂肪酸(例えば、EPA及び
DHA等)は、該魚油トリグリセリド中に存在する場合、それらのエステル化形態にある。
本発明に従って、魚油トリグリセリドは、総ω−3脂肪酸含有量の質量に基づいて、30%以上の量におけるエイコサペンタエン酸、30%以下の量におけるドコサヘキサエン酸及び約40%以下の量におけるドコサペンタエン酸からなるω−3脂肪酸を含む。。
魚油トリグリセリドは、少なくとも1種のω−6脂肪酸、例えば、複数のω−6脂肪酸を含み得る。該少なくとも1種のω−6脂肪酸は、例えば、アラキドン酸又はAA(20:4n6)、リノレン酸又はLA(18:2n6)、γ−リノレン酸又はALA(18:3n6)又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、前記少なくとも1種のω−6脂肪酸の総含有量は、グリセロールとエステル化されて魚油トリグリセリドを形成する脂肪酸の質量に基づいて、約0.1%ないし約1.0%、又は約0.2%ないし約0.9%、又は約0.3%ないし約0.8%、又は約0.4%ないし約0.7%、又は約0.5%ないし約0.6%であり得る。
ω−3脂肪酸(n3−FAs)の含有量の決定は、欧州薬局方“ω−3酸が豊富な魚油”中に記載されているようにしてなされ得る。n3−FAsの含有量は、あらゆる単一のn3−FA又はそれらのあらゆる組み合わせからのものであり得る。例示的な態様において、組成物は、EPA、DHA、DPA又はそれらの組み合わせ、例えば、EPA、DHA及びDPAのそれぞれを含み得る。エイコサペンタエン酸(EPA)の個人の用量、例えば、総1日用量は、体重に基づいて、製剤の0ないし300mg/kg、例えば、50ないし250mg/kg、例えば、100ないし200mg/kgで変わり得る。ドコサヘキサエン酸(DHA)の個人の用量、例えば、総1日用量は、体重に基づいて、製剤の0ないし300mg/kg、例えば、50ないし250mg/kg、例えば、100ないし200mg/kgで変わり得る。ドコサペンタエン酸(DPA)の個人の用量、例えば、総1日用量は、体重に基づいて、製剤の0ないし300mg/kg、例えば、50ないし250mg/kg、例えば、100ないし200mg/kgで変わり得る。例えば、EPA、DHA及び/又はDPAは、重要臓器への神経保護作用を提供するのに有効な量で存在し得る。
魚油トリグリセリドは、それぞれ油成分の総質量に基づいて、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも35質量%、更に好ましくは少なくとも50質量%、特には少なくとも75質量%及びとりわけ少なくとも85質量%の量で存在し得る。
好ましい態様に従って、魚油トリグリセリドは、油成分の総質量に基づいて、55ないし95質量%、より好ましくは60ないし92質量%、特には70ないし90質量%の範囲の量で存在する。
本発明の好ましい態様に従って、水中油エマルジョンは、更に、中鎖トリグリセリド(MCT)を含む。
該エマルジョンの油成分の例示的な第二成分は、少なくとも1種の中鎖トリグリセリド(MCT)、例えば、複数のMCTsを含み得る。例えば、前記少なくとも1種のMCTは、該エマルジョンの油成分の総質量に基づいて、約10%ないし約69%、又は約10%ないし約40%、又は約10%ないし約30%、又は約10%ないし約20%、又は約10%ないし約15%、又は約20%ないし約60%、又は約30%ないし約50%、又は約40%ないし約45%存在し得る。例えば、MCTの例示的な範囲を採用することにより、人体へ送達されるエステル化されたω−3脂肪酸の量は、増加し得る。例えば、例示的なMCT範囲を採用することにより、人体へ送達されるエステル化されたω−3脂肪酸の量は、該エマルジョンの有利な代謝クリアランス及び物理化学的安定性の特性を依然
として達成しながら、比較的少ない量のMCTで増加され得る。
例えば、MCTは、飽和中鎖脂肪酸、例えば、複数の飽和中鎖脂肪酸を含み得る。例示的な態様において、MCTは6ないし12個の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリドである。野菜のような植物、例えば、複数の植物から導かれ得る。MCTは、カプリル酸(例えば、MCTの約50質量%ないし約80質量%の量において)、8−炭素飽和FA(8:0)を含み得る。MCTはカプリン酸(例えば、MCTの約20質量%ないし約50質量%の量において)、10−炭素飽和FA(10:0)を含み得る。例えば、中鎖トリグリセリドは、該中鎖トリグリセリドの少なくとも90質量%の量で、カプリル酸及びカプリン酸のトリグリセリドを含み得る。この開示における使用のためのMCTの記載は、例えば、表題“トリグリセリド中鎖”(トリグリセリド飽和媒体)のEPモノグラフ0868の要求を満たし得る(EP 0868、2008年)。
ここに記載される水中油エマルジョン組成物の油は、更に、中鎖トリグリセリドを含み得る。“中鎖トリグリセリド”(MCTs)は、天然由来又は合成の何れかであり得るトリグリセリド油の別の種類である。MCTsは長さにおいて、6ないし14個の炭素、好ましくは6ないし12個の炭素、特には、8ないし10個の炭素の脂肪酸から形成される。水中油エマルジョンと共に投与された中鎖トリグリセリド(MCT)は、殆どがエネルギー源としての機能を果たす。MCTは、例えば、Miglyol 812(SASOL
GmbH、ドイツ)又はCRODAMOL GTCC−PN(Croda Inc,ニュージャージー州)として市販で入手可能である。
本発明の好ましい態様に従って、該エマルジョンは、7、9及び11個の炭素原子を有する脂肪酸の群から選択される脂肪酸の少なくとも50質量%を含む脂肪酸でエステル化されたグリセロールからなるMCTを含む。
上記で定義されたようなMCTと魚油グリセリドとの組み合わせは、本発明の水中油エマルジョンのために有利である。
本発明の好ましい態様に従って、水中油エマルジョンは、それぞれ油成分の総質量に基づいて、5ないし75質量%、好ましくは、10ないし55質量%及び特には、15ないし45質量%の範囲の量において、中鎖トリグリセリドを含む。
本発明の好ましい態様において、水中油エマルジョンは、1:1ないし9:1、より好ましくは1.5:1ないし8:1、特には2:1ないし7:1の範囲の質量比で、魚油トリグリセリドと中鎖トリグリセリドを含む。
特に好ましい態様に従って、油相中の魚油トリグリセリド及びMCTの量は、油成分の総質量に基づいて、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、特には少なくとも99質量%である。
油成分は、付加的に更なる油を含み得るが、それは好ましくは30℃未満、より特には20℃未満及び10℃未満を含む融点を有する。
好ましくは、油成分は、油成分の総質量に基づいて、少なくとも75質量%のトリグリセリド又は少なくとも85質量%のトリグリセリドを含む油を含む。特異的な態様において、油成分は、少なくとも90質量%のトリグリセリド又は少なくとも95質量%のトリグリセリドを含む。
更なる異的な態様において、油相は更に、“長鎖トリグリセリド”(LCT)を含む。
ある態様において、油は野菜油を含み得る。“野菜油”は、植物種子又は木の実由来の油を言及する。野菜油は典型的には、3つの脂肪酸(通常、長さにおいて14ないし22個の炭素であって、油の原料に依存して、個数と位置が変わる不飽和結合を伴う)がグリ
セロール上の3つのヒドロキシ基とエステル結合を形成する場合に形成される、“長鎖トリグリセリド”(LCTs)である。ある態様において、高純度等級の野菜油(“超精製品(super refined)”とも呼ばれる)が、水中油エマルジョンの安全性及び安定性を確かなものとするために使用される。ある態様において、野菜油の制御された水素化により製造された水素化植物油が使用され得る。
例示的な野菜油は、アーモンド油、ババス油、クロフサスグリ種油、ボリジ油、キャノーラ油、ヒマシ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ヤシ油、パーム核油、菜種油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油及びゴマ油を含むが、これらに限定されるものではない。これらの油の水素化された及び/又は部分的に水素化された形態もまた使用され得る。特定の態様において、油は、更に、サフラワー油、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油及び/又は大豆油を含む。更なる特定の態様において、油は、更に、サフラワー油及び/又は大豆油を含む。
油が更に大豆油を含む特定の態様において、該大豆油は、9ないし13%のパルミチン酸含有量(wt./wt)、2.5%ないし5%のステアリン酸含有量、17%ないし30%のオレイン酸含有量、48%ないし58%のリノール酸含有量及び5%ないし11%のリノレン酸含有量を有し得る。
更に、特定の態様において、水中油エマルジョン組成物は、構造化トリグリセリドを含み得る。ここで使用される“構造化トリグリセリド”は、6ないし12の炭素原子の炭素鎖長を有する少なくとも1つの脂肪酸基及び12の炭素単位を超える炭素鎖長を有する少なくとも1つの脂肪酸基を有するトリグリセリド又はトリグリセリドの混合物を含むトリグリセリドである。
大量のω−3−脂肪酸残基が患者の治療において、ホルモンの効果を改善することが見出された。従って、本発明の特定の態様に従って、水中油エマルジョンは、植物油及び/又は魚油及びMCT以外の油が基本的に存在しない。本発明の意味の範囲内において基本的に存在しないとは、量が、該エマルジョンの総質量に基づいて、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは2質量%未満、特には1質量%未満、例えば、0.1質量%未満であることを意味する。
特定の態様において、該エマルジョンは、モノグリセリド、ジグリセリド、アセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド及び/又はそれらの混合物からなる群より選択される極性改良剤の、0.8% wt/wt以下又は0.5% wt/wt以下を含む、0.9% wt/wt以下を含む。別の特定の態様において、該エマルジョンは、0.5% wt/wt以下のような、0.8% wt/wt以下を含む、0.9% wt/wt以下のモノグリセリドを含む。
別に表現すると、特定の態様において、該エマルジョンは、モノグリセリド、ジグリセリド、アセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド及び/又はそれらの混合物からなる群より選択される極性改良剤の、20質量%以下、10質量%以下又は5質量%を含む、30質量%以下のリン脂質を含む。該エマルジョンのリン脂質含有量と比較して、高い濃度での極性改良剤の使用は、該リン脂質の安定化特性において悪影響を有し得る。
特定の態様において、水中油エマルジョンは、100g/Lないし300g/L、好ましくは120g/Lないし280g/L及び特に150g/Lないし250g/L、例えば、200g/Lの油を含む。ある態様において、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンの実質的な割合は、水中油エマルジョンの油滴内に含まれる。ある態様において、80%を超えるプロゲストゲン及び/又はエストロゲンが油滴内に溶解し且つ維持される。あ
る態様において、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンの85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%又は99.5%より多くが、油相中に溶解している(20℃で決定された)。
本発明の水中油エマルジョンは、好ましくは、乳化剤を含むが、それは特に、50g/Lまで又は20g/Lまで、好ましくは2ないし15g/Lの量で存在する。
本発明の水中油エマルジョンは、更に、リン脂質を含む、1種以上の乳化剤/界面活性剤を含み得る。幾つかの態様において、該乳化剤は、天然由来である。天然由来の乳化剤は、大豆レシチン、卵レシチン、ヒマワリ油レシチン、スフィンゴシン、ガングリオシド、フィトスフィンゴシン及びそれらの組み合わせを含む。水素化レシチン、即ち、レシチンの制御水素化の生成物もまた、本発明において使用され得る。
特定の態様において、本組成物は、界面活性剤としてリン脂質を含む。本発明において有用な例示的なリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。これらは典型的に、10ないし18個の炭素原子のような、4ないし22個の炭素原子及び種々の飽和度を有する。該組成物のリン脂質成分は、単一のリン脂質又は幾つかのリン脂質の混合物の何れかであり得る。使用されるリン脂質は、天然又は合成のものであり得るが、非経口投与、特に静脈内投与として許容されるべきものである。
好適なリン脂質の包括的でないリストを以下に列挙する:
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DMPA、Na)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DPPA、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DSPA、Na)を含むホスファチジン酸;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)を含むホスホコリン;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DMPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)を含むホスホエタノールアミン;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DLPG、Na)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DMPG、Na)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、アンモニウム塩(DMP−sn−1−G、NH4)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DPPG、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DSPG、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、ナトリウム塩(DSP−sn−1G、Na)を含むホスホグリセロール;1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン、ナトリウム塩(DPPS、Na)を含むホスホセリン;1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(POPG、Na)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、アンモニウム塩(POPG、NH4)を含む混合鎖リン脂質;1−パルミトイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(P−リソ−PC)、1−ステアロイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホ
コリン(S−リソ−PC)を含むリゾリン脂質;N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 2000)−MPEG−2000−DPPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 5000)−MPEG−5000−DSPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 5000)−MPEG−5000−DPPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 750)−MPEG−750−DSPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 2000)−MPEG−2000−DSPE、ナトリウム塩を含むペグリン脂質。
1態様において、本発明に従う組成物中のリン脂質の量は、該組成物の総容積における質量に基づいて、0.5ないし25g/Lの範囲内である。ある態様において、リン脂質は、1ないし15g/Lのような、0.8ないし18g/Lを含む、0.7ないし20g/Lの範囲内で存在し得る。
他の特定の態様において、リン脂質乳化剤の原料は、卵レシチンのような、レシチンである。米国薬局方(USP)に従って、レシチンは、アセトン−不溶性リン脂質の複合混合物を記載する一般名であり、それは主に、トリグリセリド、脂肪酸及び炭水化物のような他の物質の種々の量と組み合わされた、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールからなる。
大豆レシチン及び卵レシチン(これらの化合物の水素化型を含む)は、生体系において安全性の長い歴史を有し、複合された乳化特性及び可溶化特性を有し及び生体内において殆どの合成界面活性剤よりも迅速に無害な物質へ代謝される傾向がある。市販で入手可能な大豆リン脂質/レシチンは、Centrophase及びCentrolex製品(Central Soya)、Phospholipon(Phospholipid GmbH、ドイツ)、Lipoid(Lipoid GmbH、ドイツ)、EPIKURON(Degussa)及びPL90(Fresenius Kabi、スウェーデン)である。特定の態様において、リン脂質の原料は卵レシチンである。
ある態様において、組成物におけるリン脂質を含む乳化剤の総量は、該組成物の総体積における質量に基づいて、0.5g/Lないし48g/L、特に0.8g/Lないし42g/Lの範囲内である。ある態様において、例えば、乳化剤が卵レシチンである場合、乳化剤の量は、4g/Lないし26g/L、特に10ないし20g/L、例えば、11ないし15g/Lを含む、3.5g/Lないし27g/Lを含む、例えば、3g/Lないし29g/Lのような1g/Lないし39g/Lの範囲内である。
好ましくは、該エマルジョンは、ω−3−脂肪酸部分を含むリン脂質、好ましくは、オキアミ(オキアミ目)から得られるリン脂質を含む。
1態様において、乳化剤は、60ないし80% wt/wt、例えば、67% wt/wtのホスファチジルコリン;10−20% wt/wt、例えば、15% wt./wtのホスファチジルエタノールアミン;≦3% wt/wt、例えば、2% wt./wtのスフィンゴミエリン;及び≦3% wt/wt、例えば、1% wt/wtのリゾホスファチジルコリンを含む卵レシチンである。
“Egg lecithin PL90”(Fresenius Kabi AB)は、そのようなリン脂質含有量を有する卵レシチンの1例である。
ω−3−脂肪酸残基が、治療及び予防の間にホルモンの効果を改善することが見出された。従って、特に好ましい態様に従って、水中油エマルジョンは、ω−3−脂肪酸部分を有するリン脂質、好ましくは、オキアミ(オキアミ目)から得られるリン脂質を含む。
ω−3−脂肪酸残基を含むリン脂質は、オキアミから得ることができる。例えば、オキアミ油は、ω−3−脂肪酸−含有リン脂質を、オキアミ油の質量に基づいて、約20ないし約60%、例えば、約30ないし約50%の量で含み得る。例示的な態様において、オキアミ油は、ω−3−脂肪酸−含有トリグリセリドを、オキアミ油の質量に基づいて、約30%未満、例えば、約5%未満の量で含み得る。例示的な態様において、オキアミ油は、実質的にω−3−脂肪酸−含有トリグリセリドが存在しないものであり得る。例えば、リン脂質(PLs)とトリグリセリド(TGs)の双方は、特定の官能基が、それぞれsn1、sn2及びsn3として言及される位置−1、位置−2及び位置−3で、それぞれの炭素に結合される3−炭素骨格(トリアシルグリセロール)を有する。PLsとTGsの双方におけるsn1位及びsn2位は、18−炭素化合物(例えば、リノール酸、α−リノレン酸、オレイン酸及びステアリン酸)のような長鎖脂肪酸及び/又は20個以上の炭素を含む超長鎖脂肪酸(例えば、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸)を含み得る。TGsにおいて、sn3位がまた、上記の長鎖脂肪酸により占有され、そしてそのようなこれらの化合物は、“中性脂肪”として既知であるが、一方、PLsにおいて、sn3位はその分子を、親水性と疎水性の両方が付与される、両親媒性化合物として既知の分子に顕著に変化させる、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール等のようなアルコールに結合されたリン酸により占有される。生体膜及び両親媒性特性を有することの構造的組成の部分として、PLsは多くの代謝工程において極めて重要な役割を演じる。
例示的な態様において、ω−3−脂肪酸−含有リン脂質の所定量は、リン脂質の1位及び2位に結合されているが、リン脂質の3位に結合されていないω−3−脂肪酸を含む。即ち、ω−3−脂肪酸−含有リン脂質の所定量は、リン脂質の2位(即ち、中間位置)においてω−3−脂肪酸を含み得る。例えば、リン脂質の1位及び2位に結合されているが、リン脂質の3位に結合されていないω−3−脂肪酸を含むω−3−脂肪酸−含有リン脂質は、該ω−3−脂肪酸−含有リン脂質の総質量に基づいて、約70%ないし約80%、例えば、約80%ないし約95%の量で存在し得る。
別の例示的な観点に従って、水中油エマルジョンを非経口的に投与する方法が提供され、該方法は、存在する不飽和ω−3−脂肪酸の化学分解及び酸化に対抗する天然由来の抗酸化剤であるアスタキサンチンの保護濃度を含む非経口水中油エマルジョン中に、海産甲殻類から得られたリン脂質を含む組成物を、ヒトに非経口投与することを含む。ポリ不飽和ω−3−脂肪酸の酸化は、静脈内投与において有害であり得る活性酸素種の形成を引き起こす。よって、特定のω−3−脂肪酸が豊富な水中油エマルジョンは、化学分解に対する保護を必要とする。オキアミ油中に見られるアスタキサンチンは、ω−6−脂肪酸の酸化に対して保護する大豆油中のα−トコフェロールの存在に類似する、ω−3−脂肪酸の酸化に対する独特の保護を提供し得る。それ自体は、オキアミ油中に見られる海洋ベースのリン脂質と同様に、該エマルジョンの物理的安定性を独自に促進し得るn3−FAsの高濃度を含み、それによりオキアミ油中のアスタキサンチンの存在もまた水中油エマルジョンの化学安定性を独自に促進し得る。主要な界面活性剤又は卵リン脂質を伴う共−界面活性剤としてのオキアミ油の例示的な観点のように、アスタキサンチンは主要な抗酸化剤又はα−トコフェロールを伴う共−抗酸化剤であり得るだろう。
本発明の更なる代替の態様は、
a)上記で規定されるようなプロゲストゲン及び/又はエストロゲン、及び
b)上記で規定されるような海産甲殻類から得られたリン脂質
を含む非経口投与のためのホルモン含有水中油エマルジョンである。
1態様において、該エマルジョンは、ポリエチレングリコール15−ヒドロキシステアレートの、1.5% wt/wt以下、1.2% wt/wt以下又は0.4% wt/
wt以下を含む0.8% wt/wt以下を含む。別の態様において、組成物は、1.5% wt/wt以下、1.2% wt/wt以下又は0.4% wt/wt以下を含む0.8% wt/wt以下のポリエチレングリコールエステル及び/又はポリエチレン−プロピレングリコールを含む。
幾つかの態様に従って、本発明は、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンを含む医薬組成物であって、前記組成物は水相、油相及び界面活性剤を含むエマルジョンの形態にある組成物を提供する。
水媒体
上記されるように、本発明の水中油エマルジョンは、更に、水媒体を含む。“水媒体”又は“水相”は、水−含有液体を言及する。幾つかの態様において、水媒体は、水及び/又は水性緩衝溶液である。
本発明の水中油エマルジョンは、70ないし98質量%、好ましくは70ないし90質量%を含み得る。
幾つかの態様において、該エマルジョンは生理的に相溶性の緩衝剤の0ないし4mMを含み得る。
幾つかの態様において、本発明に従う水中油エマルジョンは、共−界面活性剤を任意に含む。本発明のエマルジョンにおける使用のために好適な共−界面活性剤は、脂質エマルジョンの凝集及び/又は合体を防ぐものである。例示的な共−界面活性剤は、コレステロール、オレイン酸、オレエート、ツィーン80(PEG−ソルビタン モノオレエート)、HCO−60、Solutol H15(ポリオキシエチレン−660−ヒドロキシステアレート)、PEG−400(ポリエチレングリコール)、Pluronic F68(BASF)、Cremophor EL(ポリオキシエチレン−35−リシノレエート)又はデオキシコール酸のような胆汁酸の塩を含むが、これらに限定されない。他の態様において、共−界面活性剤は、例えば、C16−C20脂肪酸、それらの塩及び/又はそれらの混合物或いはC18脂肪酸、それらの塩及び/又はそれらの混合物のような、C12−C22脂肪酸、それらの塩及び/又はそれらの混合物からなる群より選択される。特定の態様において、該脂肪酸は、単不飽和である。
幾つかの態様において、共−界面活性剤は、0.005%以上又は0.01%以上又は0.02%以上の量(wt/vol)で組成物中に存在し得る。これらの態様の何れかに従って、共−界面活性剤は、4%以下又は1%以下又は0.04%以下の量(wt/vol)で存在し得る。
特定の態様において、共−界面活性剤は、パルミチン酸、オレイン酸又はステアリン酸のような長鎖脂肪酸或いはそれらのアルカリ塩からなる群より選択される。オレエート及び/又はオレイン酸、特にオレイン酸ナトリウムが、特に好適な共−界面活性剤である。
共−界面活性剤がオレエート及び/又はオレイン酸である、ある態様において、該共−界面活性剤は、0.005%以上又は0.01%以上又は0.02%以上の量(wt/vol)で存在し得る。これらの態様の何れかに従って、共−界面活性剤は、0.5%以下、0.2%以下、0.1%以下又は0.05%以下の量(wt/vol)で存在し得る。特定の態様において、共−界面活性剤は、オレイン酸ナトリウムであり且つ0.03% wt/vol(0.3g/L)の量で存在する。ここに記載されるエマルジョンは、長期に亘って、静脈内注射又は静脈内点滴のような、非経口注入のために好適であり得る。典型的な治療期間は、例えば、3−7日間であり得る。特定の態様において、ある共−界面活性剤の濃度は、従って、炎症、チトクロームP450阻害等のような副作用を防ぐため
に最小限に保たれる。特定の態様において、Pluronic F68(ポリ(エチレングリコール)−13−ポリ(プロピレングリコール コ−プロピレングリコール)が、0.7%(wt/wt)未満又は0.5%(wt/wt)未満の量で存在する。他の特定の態様において、Solutol−HS(マクロゴール−15−ヒドロキシステアレート)が、1.2%(wt/wt)未満又は1%(wt/wt)未満の量で存在する。
浸透圧性薬剤
本発明に従う水中油エマルジョンは、浸透圧性薬剤及び/又は等張調節剤を含み得る。そのような組成物は、200ないし1000mOsm/kgの範囲における浸透圧を有し得る。
本発明の特定の態様に従って、該エマルジョンは、等張で、等浸透圧であり得る。該組成物は、220ないし600mOsm/kg又は230ないし360mOsm/kgの浸透圧を有し得る。
好適な浸透圧性薬剤及び/又は等張調節剤は、塩化カリウム又は塩化ナトリウム、トリハロース、スクロース、ソルビトール、グリセロール、グルコース、キシリトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、アルブミン、アミノ酸及びこれらの混合物を含む。ある態様において、280ないし300mOsm/kgのような、270ないし330mOsm/kgの浸透圧は、グリセロール、デキストロース、ラクトース、ソルビトール又はスクロースのような、同様に浸透圧を増加する薬剤を用いて達成される。
1態様において、浸透圧性薬剤は、グリセロール、ソルビトール又はキシリトールのような、生理的に許容されるポリオールである。特定の態様において、浸透圧性薬剤は、グリセロールである。
浸透圧性薬剤及び/又は等張調節剤は、一般に、有害な生物学的効果を有さないが、等浸透圧性の及び/又は等張の組成物を提供するのに十分な量で使用される。グリセロールが浸透圧性薬剤である場合、グリセロールは、2.3%ないし2.7%を含む、2.1%ないし2.9%(wt/vol)のような、2ないし5%(wt/vol)の範囲内で存在し得る。特定の態様において、本発明のエマルジョンは2.5%のグリセロール(25g/L)を含む。
pH調節剤
幾つかの態様において、本発明に従うエマルジョンは、pH7.0ないし8.0を含む、pH6.5ないしpH8.5のような、pH6.0ないしpH9.0の範囲内のpHを有する。組成物のpHは、該技術分野における既知の方法、例えば、脂肪酸上の負電荷を中和する適当な塩基の使用を介して、適当な緩衝剤の使用を介して又はそれらの組み合わせにより調整され得る。種々の塩基及び緩衝剤が、本発明のエマルジョンとの使用のために好適である。当業者は、該エマルジョンへの緩衝剤の添加が、該エマルジョンの最終pHだけでなく、イオン強度にも影響することを理解するだろう。高イオン強度緩衝剤は、該エマルジョンのゼータ電位に悪影響を及ぼし得るため、望ましくない。特定の態様において、pHは、1N水酸化ナトリウムの添加により所望の値に調整される。
任意の添加物
本発明に従うエマルジョンは、任意に、結合剤、キレート剤、錯化剤、防腐剤(抗菌剤及び抗酸化剤を含む)、粘度調整剤及び他の生体適合性材料又は治療剤のような、医薬的に許容される添加剤の1種以上を含む。
組成物成分の比率
本発明の組成物中に含まれ得る異なる成分の量は上記で示される一方、本発明の他の観点は、以下で議論されるように、特定の成分の比率に関する。
乳化剤(リン脂質):油
水中油エマルジョンにおけるリン脂質の過剰量が、オートクレーブ処理及び/又は貯蔵の後に、pHの低下を引き起こす、リン脂質の分解生成物における増加を誘導し得、それは次にエマルジョンの安定性に悪影響を及ぼすことが見出された。
好ましい態様において、例えば、乳化剤がリン脂質である場合、該エマルジョンは、12ないし26%を含む8.4ないし42.5%のような、15ないし22%を含む14ないし25%のような、6.8ないし43%の範囲内の量(総油成分の% wt./wtとして表される)における乳化剤を含む。特定の態様において、乳化剤は、リン脂質であり、油の16ないし18%(wt/wt)の量で存在する。
更なる好ましい態様において、水中油エマルジョンは、6.8%以上、8.4%以上、12%以上、14%以上又は15%以上の、油の% wt/wtとして表される量でリン脂質を含む。幾つかの態様において、組成物は43%以下、42.5%以下、26%以下、25%以下又は22%以下の、油の% wt/wtとして表される量でリン脂質を含む。
本発明の別の好ましい態様において、例えば、リン脂質の原料がレシチンである場合、組成物は油の6ないし16%(wt/wt)を含む、油の4ないし18%(wt/wt)のような、油の8ないし14%(wt/wt)のような、油の3ないし20%(wt/wt)の範囲内の量でレシチンを含む。特定の態様において、乳化剤は卵レシチンであり、油の19ないし21%(wt/wt)の量で存在する。
幾つかの態様において、本発明のエマルジョンは、8%以上、10%以上、13%以上、15%以上又は18%以上の、油の% wt/wtとして表される量で、卵レシチンのようなレシチンを含む。幾つかの態様において、組成物は50%以下、48%以下、40%以下、33%以下又は31%以下の、油の% wt/wtとして表される量で、卵レシチンのようなレシチンを含む。
共−界面活性剤:油
上記のように、本発明のある態様において、組成物は、オレエート又はオレイン酸のような共−界面活性剤を含む。特定の態様において、共−界面活性剤は、0.3ないし0.7%を含む0.1ないし0.9%のような、0.08ないし2%の範囲内の、油成分の%
wt/wtとして表される量で存在し得る。別の態様において、共−界面活性剤は、前記油の0.02% wt/wtより多い量で存在する。特定の態様において、共−界面活性剤は、オレエート又はオレイン酸であり、油の0.5%(wt/wt)の量で存在する。
幾つかの態様において、共−界面活性剤は、0.02以上、0.08%以上、0.1%以上又は0.3%以上の、油の% wt/wtとして表される量で存在し得る。他の態様において、油の% wt/wtとして表される量における、共−界面活性剤の濃度は、2%以下、0.9%以下又は0.7%以下である。
共−界面活性剤:乳化剤(リン脂質)
本発明の好ましい態様において、組成物は、乳化剤としてのリン脂質及びオレエートのような共−界面活性剤を含む。これらの態様の特定の観点において、共−界面活性剤及び
乳化剤は、1:68ないし1:20を含む1:82ないし1:17のような、2:85ないし1:34を含む1:51ないし1:26のような、1:85ないし1:12の範囲内の、リン脂質に対する共−界面活性剤の比率(wt/wt)で存在し得る。
好ましい態様において、共−界面活性剤及びリン脂質は、1:85以上、1:82以上、1:68以上、1:51以上又は2:85以上の、リン脂質に対する共−界面活性剤の比率(wt/wt)で存在する。幾つかの態様において、共−界面活性剤及びリン脂質は、1:12以下、1:17以下、1:20以下、1:26以下又は1:34以下の、リン脂質に対する共−界面活性剤の比率(wt/wt)で存在する。
本発明の別の好ましい態様において、組成物は、乳化剤としての卵レシチン及びオレエートのような共−界面活性剤を含む。これらの態様の特定の態様において、共−界面活性剤及び乳化剤は、1:70ないし3:70を含む1:80ないし1:20のような、1:50ないし1:40を含む1:60ないし1:30のような、1:100ないし1:15の範囲内の、レシチンに対する共−界面活性剤の比率(wt/wt)で存在し得る。
特定の態様において、共−界面活性剤及びレシチンは、1:100以上、1:80以上、1:70以上、1:60以上又は1:50以上の、レシチンに対する共−界面活性剤の比率(wt/wt)で存在する。幾つかの態様において、共−界面活性剤及びレシチンは、1:15以下、1:20以下、3:70以下、1:30以下又は1:40以下の比率(wt/wt)で存在する。
共−界面活性剤がオレエートであり且つ乳化剤が卵レシチンである特定の態様において、乳化剤に対する共−界面活性剤の比率(wt/wt)は、1:40ないし1:25のような、1:45ないし1:20の範囲内である。
包装
本発明の水中油エマルジョンは、すぐに使える(ready−to−use)組成物として提供され得る。ここで使用される“すぐに使える”は、希釈又は複数の成分との混合のような更なる処方が必要でないことを意味する。
本発明の水中油エマルジョンは、密封包装で提供され得る。該包装は、脂質配合物並びにプロゲストゲン及び/又はエストロゲンとの使用のために共通であるべきである。油性配合物の包装のためにあまり好適でない材料の例は、PVC及びDEHPを含む。油性配合物と共通である好適な包装は、ポリプロピレンベースの袋及びガラス瓶を含むが、これらに限定されるものではない。慣用のガラスは、本発明の組成物のための好適な包装材料である。特定の態様において、該エマルジョンは、密封された容器中に包装される。該容器は、物理的環境からの保護を提供するためにオーバーラップされ得る。1態様において、組成物は、250mLの体積を有する密封容器中に包装される。1態様において、水中油エマルジョンは、不活性ガスのヘッドスペース下で密封容器中に包装される。
幾つかの態様において、組成物は、不活性容器内に包装される。幾つかの態様において、不活性容器は光遮蔽される。他の態様において、該容器は二層壁を含み、及び、より特定の態様において、該二層の間の領域は、酸化を妨げるために不活性ガスで充填される。長期貯蔵のために、包装材料は、組成物内の酸素分解物の形成を妨げるために、環境大気から本発明の組成物の方への酸素の拡散を有利に妨げる。
幾つかの態様において、組成物は、単位用量で包装される。単位用量は、対象者へのプロゲストゲン及び/又はエストロゲンの大量用量の投与のために又は治療の最初の1時間、最初の2時間、最初の4時間等のような、時間の所定期間に亘る組成物の投与のために十分な組成物を提供し得る。単位用量は、緊急事態において、例えば、救急車における救
急医療隊員による又は損傷/事故が発生した場所で応急手当を行う人又は医師による、組成物の迅速で簡便な投与を可能とする。単位用量形態の非限定的な例は、注射、事前充填注射器(pre−filled syringes)、ガラスバイアル瓶及び/又は密封バッグである。
幾つかの態様において、組成物は、持続点滴療法で投与するために使用される、インスリンポンプデバイスと類似のデバイス内に、又は、そのようなデバイスと共に使用するために設計されたカートリッジ内に包装される。例示的なインスリンポンプは、MiniMed又はDisetronicにより市販されているものである。そのようなポンプは、例えば、カニューレ、組成物が貯蔵されるポンプ貯蔵器又はカートリッジ、電池で操作され得るポンプ及び、例えば、コンピューターチップのような、使用者が送達される活性物の実際の量を制御することを可能とする手段を含み得る。
特定の例
一つの特定の態様において、本発明のエマルジョンは、
a)1.0ないし2.0g/Lの範囲の量のプロゲステロン;
b)油性分の総量に基づいて、
i)魚油トリグリセリド 少なくとも50質量%(ここで、該魚油トリグリセリドは、脂肪酸でエステル化されたグリセロールからなり、該脂肪酸は、該脂肪酸の少なくとも45質量%の量で、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、好ましくは、ω−3−脂肪酸の総量は、該脂肪酸の少なくとも50質量%である。);及び
ii)MCT 10ないし50質量%
を含む油成分を、前記水中油エマルジョンに基づき、100ないし300g/L;
c)リン脂質 4ないし20g/L、好ましくは、リン脂質 8ないし20g/L及び
d)グリセロール 10ないし50g/L
を含む。
一つの特定の態様において、本発明のエマルジョンは、
a)0.05ないし1.0g/Lの範囲の量のエストラジオール及び1.0ないし2.0g/Lの範囲の量のプロゲステロン;
b)油性分の総量に基づいて、
i)魚油トリグリセリド 少なくとも50質量%(ここで、該魚油トリグリセリドは、脂肪酸でエステル化されたグリセロールからなり、該脂肪酸は、該脂肪酸の少なくとも45質量%の量で、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、好ましくは、ω−3−脂肪酸の総量は、該脂肪酸の少なくとも50質量%である。);及び
ii)MCT 10ないし50質量%
を含む油成分を、前記水中油エマルジョンに基づき、100ないし300g/L;
c)リン脂質 4ないし20g/L、好ましくは、リン脂質 8ないし20g/L及び
d)グリセロール 10ないし50g/L
を含む。
一つの特定の態様において、本発明のエマルジョンは、
a)0.05ないし1.0g/Lの範囲の量のエストラジオール;
b)油性分の総量に基づいて、
i)魚油トリグリセリド 少なくとも50質量%(ここで、該魚油トリグリセリドは、脂肪酸でエステル化されたグリセロールからなり、該脂肪酸は、該脂肪酸の少なくとも45質量%の量で、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、好ましくは、ω−3−脂肪酸の総量は、該脂肪酸の少なくとも50質量%である。
);及び
ii)MCT 10ないし50質量%
を含む油成分を、前記水中油エマルジョンに基づき、100ないし300g/L;
c)リン脂質 4ないし20g/L、好ましくは、リン脂質 8ないし20g/L及び
d)グリセロール 10ないし50g/L
を含む。
エマルジョンの特性
本発明に従う組成物は、典型的には、外観において乳白色であり、視覚的に均一なエマルジョンとして存在する。
エマルジョン液滴の粒度分布
PFAT5値
米国薬局方(USP)は、脂質注射用エマルジョンにおける小球粒度分布のための制限を設定している(USP 729−Pharm.Forum.2005;3:1448−1453)。脂肪>5μmの体積加重パーセントとして表される、注射用エマルジョン中の直径>5μmの脂肪小球のための制限は、0.05%を超えないか又はPFAT5が0.05%を超えないことである(USP 729−Pharm.Forum.2005;3:1448−1453)。値が0.05%を超えるPFAT5を有する組成物は、静脈内投与のために安全でないと考えられる。エマルジョンのPFAT5値は、該エマルジョンの総油含有量、リン脂質の種類及び量、共−界面活性剤の選択、油に対する共−界面活性剤の比率及び凝集及び/又は合体に対するエマルジョン液滴の安定性を含む幾つかの要因により影響され得る。
特定の態様において、本発明に従う組成物は、0.02%以下を含む0.04%以下のような、0.01%以下を含むような、0.05%以下のPFAT5値を有する。
1態様において、本発明の組成物の100%のエマルジョン液滴は、直径において5μm以下であり、液滴の99%を含む、少なくとも液滴の98%が、1.5μm以下の直径である。直径において1μmを超える液滴の粒度分布は、コールター カウンター(Coulter counter)(Coulter Multisizer III)により決定される。
PCS
1態様において、直径において1μm以下の液滴は、350nmの最大PCS z−平均及び/又は0.25以下のPCS多分散値を有する。特定の態様において、直径において1μm以下の液滴は、250nmの最大z−平均及び/又は0.20以下の多分散値を有する。更に特定の態様において、径において1μm以下の液滴は、220nmの最大z−平均及び/又は0.15以下の多分散値を有する。
中央(median)液滴径
該エマルジョン液滴径は、液滴径が、凝集、クリーム状化、合体、オストワルド熟成及び最終的な相分離のような現象の速度に直接影響するため、エマルジョン不安定化の反応速度論を決定する主要パラメーターである。エマルジョン液滴径は、従って、エマルジョン安定性の指標である。例えば、油の種類、界面活性剤及び共−界面活性剤の種類、活性成分の存在、油の量、界面活性剤に対する油の比率及び共−界面活性剤に対する油の比率を含む複数のパラメーターが、エマルジョン液滴径に影響する。特定の態様において、本発明に従う組成物は、体積ベースの中央径、又は、121℃で15分間のオートクレーブ処理後及び/又は4週間を含む少なくとも3週間の60℃での貯蔵後に、約≦200nmを含む≦230nmのような、約≦180nmを含む≦185nmのような、≦300n
mのD[4,3]を維持する。
平均液滴径
1態様において、本発明に従う組成物のエマルジョン液滴粒子は、体積ベースの平均直径、又は、≦200nmを含む≦250nmのような、≦180nmを含む≦185nmのような、≦320nmのd(0,5)を有する。好ましくは、該液滴粒子は、240ないし320nmの範囲である。
特定の態様において、本発明に従う組成物は、体積ベースの平均直径、又は、121℃で15分間のオートクレーブ処理後及び/又は4週間を含む少なくとも3週間の60℃での貯蔵後に、≦200nmを含む≦250nmのような、≦180nmを含む≦185nmのような、≦300nmのd(0,5)を維持する。
ゼータ電位
ゼータ電位はエマルジョンの安定性に関係する。高いゼータ電位を有するエマルジョンは、電気的に安定化される一方、低いゼータ電位を有するものは、凝固又は凝集する傾向がある。エマルジョンのゼータ電位は、例えば、界面活性剤及び共−界面活性剤の選択及び量、エマルジョンのpH並びに水溶液のイオン強度により影響される。
1態様において、本発明の組成物は、−51mVないし−60mVを含む−40mVないし−65mVのような、−30mVないし−70mVの範囲内のゼータ電位を有する。加えて、本発明のエマルジョン組成物のゼータ電位は、−30mV、−35mV、−40mV、−45mV、−50mV、−55mV、−60mV、−65mV又は−70mV又はそれ以上であり得る。
粒子状物質
ある態様において、本発明のエマルジョンは、周囲温度(例えば、4℃、2℃ないし8℃又は20℃ないし25℃から選択される1以上の温度)で、結晶固体が存在しない。特定の態様において、本発明のエマルジョン組成物は、注射液中の粒子径及び数のための標準に適合する(USP 788、方法2−顕微鏡粒子計数試験)。例えば、該組成物は、1mL当り0−12個の10μm以上の粒子及び1mL当り0−2個の25μm以上の粒子を含み得る。
エマルジョンの安定性
無菌状態
特定の態様において、本発明に従うエマルジョンは、無菌状態である。ここで使用される“無菌状態”とは、USP章<71>の要求を満たす組成物を言及する。特定の態様において、組成物はUSP章<85>“細菌エンドトキシン試験”の要求を満たし、任意に更に、USP章<151>“発熱性物質試験”の要求を満たす。特定の態様において、本発明のエマルジョンは、該エマルジョンの化学安定性及び/又は物理安定性を維持又は改善しながら、改善されたプロゲステロン及び/又はエストロゲンの溶解性を達成する。特定の態様において、組成物は、該組成物の物理的又は化学的な完全性を障害すること無しに、121℃で15分間のオートクレーブ処理により加熱滅菌され得る。オートクレーブ処理による滅菌は、例えば、ろ過滅菌と比較して、微生物学的安全性の観点からだけでなく、経済的によりコスト効率が良いことからも有利である。
更に、特定の態様において、該エマルジョンは、例えば、(a)組成物が、注射液における粒子径及び粒子数のための基準(USP 788、方法2)を満たし及び/又はプロゲストゲン及び/又はエストロゲン結晶のより少ないレベルを含み、(b)組成物が、低いPFAT5値を有し(上記でより詳細に議論されているように)、(c)組成物が、化
学的不純物のより低いレベルを含み、(d)組成物が、微生物学的安全性のための最適な標準方法を使用してオートクレーブ処理され得、及び/又は組成物がアルコール又は潜在的に毒性の有機溶媒を含まないような、先行技術を超える安全性の優位性を示す。
ここに記載される組成物の上述の優位性の1つ以上の結果として、該エマルジョンは、その中に含まれるプロゲストゲンの改善された利用可能性(例えば、血清ホルモンレベル及び/又は血漿濃度に反映され得るような、良好な薬物動態及び生物学的利用能)を提供し、及び、該エマルジョンの投与は、先行技術の組成物と比較して、患者の投薬において、改善された一貫性を提供する。
使用するのに簡便で安全であることに加えて、最終的に、本発明に従うエマルジョン組成物は、室温で1又は2年の保存可能期間を有する、無菌の、すぐに使える(ready−to−use)形態で有利に提供される。
製造方法
本発明の更なる態様は、本発明の水中油エマルジョンの製造方法である。
該方法は、
a)魚油トリグリセリドを含む油相中のプロゲストゲン及び/又はエストロゲンを溶解すること(ここで、該魚油トリグリセリドは、脂肪酸でエステル化されたグリセロールからなり、該脂肪酸は、該脂肪酸の少なくとも45質量%の量で、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、好ましくは、ω−3−脂肪酸の総量は、該脂肪酸の少なくとも60質量%である。);
b)水相中の油相を、好ましくは乳化剤の存在下で、乳化すること
の工程を含む。
別の観点において、本発明は、前にここで規定したような水中油エマルジョンの製造方法であって、該方法が、
a)水及びリン脂質及び任意の浸透圧性薬剤を混合して水性組成物を製造すること;
b)プロゲストゲン及び/又はエストロゲン並びに油を混合して油性組成物を製造すること;
c)前記水性組成物及び前記油性組成物を混合し、続いて均一化して均一の水中油エマルジョンを形成すること
の工程を含む方法に関する。
特定の態様に従って、水性組成物は、該水性組成物が油性組成物と混合される前に、均一の懸濁液を製造するように均一化される。別の有利な態様において、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンは、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンの希釈を促進するために、少なくとも40℃の温度を有する油に添加される。他の特定の態様において、油性組成物は、それが水性組成物と混合される前に、ろ過される。
幾つかの非常に特定の態様において、該製造方法は、以下の工程:
A)水性媒体中に任意の浸透圧性薬剤を溶解し及び攪拌すること;
B)卵レシチンのような乳化剤を添加し及び攪拌すること;
C)任意に共−界面活性剤及び任意のpH調節剤を添加し及び混合すること;
D)油中にプロゲストゲン及び/又はエストロゲンを溶解して油相を形成すること;
E)油相をろ過し、続いて水相にろ過された油相を添加し及び混合すること;
F)均一化して均一なエマルジョンを形成すること;
G)水を任意に添加すること;
H)pHをpH8.0ないし8.8に調整するのに十分な1N NaOHを任意に添加すること;
I)最終体積に達するのに十分な水性媒体を任意に添加すること
を含む。
特定の態様において、均一化は、350気圧以上又は370気圧以上で達成される。
特定の態様において、該エマルジョンの製造方法は、水性媒体中(油中よりも)に卵レシチンを溶解する工程、油相を水相に添加する工程(逆よりも)及び350気圧以上で均一化する工程を含む。これらの工程は、結果として粒子径及びエマルジョン安定性に関して有利な特性を伴うエマルジョンが生じると考えられる。
別の特定の態様において、該エマルジョンは、密封容器中に包装され、例えば少なくとも121℃で最低限15分間の保持時間で加熱することにより滅菌される。オートクレーブプログラムは、回転循環(rotary cycle)であり得る。
他の非常に特定の態様において、該製造方法は、以下の工程:
A)水性媒体中に浸透圧性薬剤を溶解し及び攪拌すること;
B)具体的には卵レシチンであるリン脂質を添加し及び攪拌すること;
C)任意に共−界面活性剤及び任意のpH調節剤を添加し及び混合すること;
D)魚油トリグリセリド中にプロゲステロン及び/又はエストロゲンを溶解して油相を形成すること;
E)油相をろ過し、続いて水相にろ過された油相を添加し及び混合すること;
F)均一化して均一なエマルジョンを形成すること;
G)水を任意に添加すること;
H)pHをpH8.0ないし8.8に調整するのに十分な1N NaOHを任意に添加すること;
I)最終体積に達するのに十分な水性媒体を任意に添加すること
を含む。
以下に製造方法の例を提供する。当業者は種々の修飾物及び変化物が作られ得、及び依然として本発明の範囲内となることを容易に理解するだろう。
治療方法
本発明の更なる態様は、本発明の水中油エマルジョンを含むか又は本発明の水中油エマルジョンからなる医薬組成物である。
好ましくは、本発明の医薬組成物は、脳卒中及び/又はトラウマ後の神経障害の治療又は予防における使用のためのものである。
更なる好ましい態様に従って、本発明の医薬組成物は、脳震とう後の神経傷害の治療又は予防における使用のための又はトラウマ的な出来事の治療又は予防における使用のためのものである。
ここに記載されるエマルジョンは、治療的又は予防的使用のために、対象者に経静脈的又は経動脈的のような、非経口的に投与され得る。特定の態様において、対象者はヒトのような哺乳類である。
ここに記載されるエマルジョンは、神経保護及び/又は神経再生特性を有する。組成物は、従って、神経系障害又は疾患の治療又は予防において有用である。例示的な障害及び疾患は、中枢神経系(CNS)障害又は疾患、脊髄損傷、外傷性脳損傷、脳機能の一時的な喪失により特徴付けられる震盪を含む軽度の頭部外傷、小児脳損傷、パーキンソン病のようなCNSの変性疾患、アルツハイマー病を含む認知症、多発性硬化症及び慢性の糖尿病性神経障害のような脱髄疾患を含むが、これらに限定されない。
他の例示的な障害及び疾患は、虚血性CNS損傷のような虚血性神経障害、虚血性脳卒中、出血性脳卒中及び一過性脳虚血性発作を含む卒中並びに心臓手術の間の心肺バイパス
方に起因する神経認知障害、例えば、かん流後症候群を含む。更なる例は、失語症、睡眠、睡眠障害及び外傷後ストレス障害のような不安障害を含む。
組成物はまた、認識機能の復元、睡眠様式の復元、気分障害の復元等のような上で列記した障害と関連する症状の軽減を提供することにも有用である。医薬組成物はまた、外傷後ストレス障害を治療することにも有用である。
1態様に従って、本発明は外傷性脳損傷のような外傷性CNS損傷を有する哺乳類対象者の治療法方を提供する。例示的な方法は、それを必要とする対象者に、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンの治療有効濃度が送達されるように、本発明に従う医薬組成物を投与することによる、哺乳類対象者におけるTBIの治療を含む。特定の態様において、哺乳類対象者は、ヒトである。例えば、本発明の方法は、TBIのような外傷性CNS損傷を有する対象者に、本発明のプロゲストゲン及び/又はエストロゲン含有医薬組成物を非経口投与することを含み得る。本発明の方法に従って、医薬組成物は、外傷性中枢神経系損傷に関係する有益な治療応答を推進するために使用される。
外傷性脳損傷は、脳機能を一時的に又は永久的に損なう、脳組織に対する物理的な損傷である。診断は、臨床的に疑われ、画像化(主としてCT)により確認され得る。臨床症状は、重症度及び結果において大きく異なる。損傷は通常、開放性又は非開放性として分類される。開放性損傷は、頭皮及び頭蓋骨の貫通を含む。非開放性損傷は、典型的には、迅速な脳の加速及び減速を生じる、頭が打たれた、物を打ちつけた又は激しく振られた場合に発生する。
本発明の医薬組成物は、鈍的外傷(例えば、非開放的損傷)並びに貫通損傷を含むTBIを治療するために使用され得る。“治療”により、改善された形態回復(即ち、促進された組織生存能力)及び/又は行動回復の両方を含む、外傷性CNS損傷を有する対象者におけるあらゆる改善が意図される。該改善は、外傷性CNS損傷に続く、行動及び解剖の回復の速度及び/又は程度の何れかにおける増加として特徴付けられ得る。従って、“有益な治療応答”は、完全寛解及び部分寛解の両方を含む。完全な又は部分的な治療応答が生じているか否かを決定するための種々の方法が、特許出願、国際公開第2006/102644号パンフレット、国際公開第2006/102596号パンフレット及び国際公開第2008/039898号公報中において詳細に議論されている。
“治療有効量”により、治療効果を引き出すために十分であるプロゲストゲン及び/又はエストロゲンの量が意図される。よって、幾つかの態様において、本発明に従う投与された用量単位におけるプロゲストゲン及び/又はエストロゲンの量は、CNSに対する外傷性損傷に続く神経損傷の治療又は予防に有効であり、従って、神経保護効果を引き出す。神経変性は中枢神経系におけるニューロンの進行性消失である。ここで使用される“神経保護”とは、外傷性CNS損傷に続く神経変性の進行の停止及び/又は逆転である。治療有効量は、例えば、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンの特異的活性、外傷性損傷の重症度及びパターン、結果として生じる神経損傷、患者の反応性、患者の体重、他の個人内の多様性と共に、投与の様式及び/又は方法及び使用される医薬組成物を含む多くの因子に依存するだろう。
本発明の医薬組成物は、静脈内(IV)注射、筋肉内(IM)注射又は皮下(SC)注射を含む、本技術分野において既知のあらゆる許容可能な方法を使用して投与され得る。本発明の特定の態様において、組成物は、IV注射によるような、静脈内投与される。静脈内投与される場合、組成物は1ないし144時間の期間に亘る点滴により投与され得る。
プロゲストゲン及び/又はエストロゲンは、1日に1回又は数回投与され得る。処置の期間は、1、2、3、4、5、6、7日又はそれ以上の期間、1日1回であり得る。1日用量は、個別の用量単位若しくは幾つかのより少ない用量単位の形態における単回投与又は特定の間隔での細分された用量の複数回投与の何れかにより投与され得る。それに続く用量単位は、治療効果が達成されるように、初回投与後何時でも投与され得る。例えば、更なる用量単位は、損傷後の最初の数日間に亘って生じ得る浮腫の第二波から対象者を保護するために投与され得る。特定の態様において、最初の用量単位は、損傷後8時間よりも遅れることなく投与される。
本発明の特定の態様において、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンは、一定の投与計画において投与される。“一定の投与計画”により、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンが、処置の経過に亘って、プロゲストゲン及び/又はエストロゲンの一定の1時間ごとの総注入用量で投与されることが意図される。
本発明の更なる態様において、少なくとも1種の更なる神経保護薬が、外傷性CNS損傷後の神経保護を促進するために、プロゲストゲン及び/又はエストロゲン(同じ組成物の1部として又は別の組成物中の何れか)との組み合わせにおいて投与され得る。
今や、この発明が一般的に記載されたので、説明のみの目的でここに含まれ、そして本発明を制限することを意図しない特定の特異的な実施例を参照することにより、同様のことがより良く理解されるだろう。
ホルモン含有油性エマルジョンの調製のための基本手順
グリセロール及び水の一部を混合した後、乳化剤(卵レシチン)及び共−乳化剤であるオレイン酸ナトリウムをUltra Turrax(登録商標)セルホモジナイザーで分散させた(溶液I)。並行して、任意にトコフェロールを伴う油相を調製し、エストラジオール及びプロゲステロンを窒素不活性雰囲気下、70℃で溶解した(溶液II)。Ultra Turrax セルホモジナイザーを使用して溶液IIを溶液Iに添加し、続いて30℃ないし70℃による少なくとも400気圧ないし800気圧下、高圧ホモジナイザー中において4ないし5回均質化サイクルを行った。その後残りの水を添加し、結果として生じた水中油エマルジョンのpH値を、溶液として可能な水酸化ナトリウムを用いて7.5ないし9.0に調整した。
好適な品質の容器中に満たした後、該エマルジョンを既知の方法により加熱滅菌した。少なくとも0.5μmの平均油滴径及び少なくとも18ヶ月の貯蔵安定性を有する脂質液滴を伴う無菌で安定なo/wエマルジョンが結果として得られた。
1)EPA及びDHAの量は、魚油トリグリセリド中の脂肪酸の総量に基づいて、55.5質量%(wt.−%)である。DHAに対するEPAの質量比は3:2である。
1)EPA及びDHAの量は、魚油トリグリセリド中の脂肪酸の総量に基づいて、55.5質量%(wt.−%)である。DHAに対するEPAの質量比は3:2である。
1)EPA及びDHAの量は、魚油トリグリセリド中の脂肪酸の総量に基づいて、55.5質量%(wt.−%)である。DHAに対するEPAの質量比は3:2である。
脳卒中モデルを用いた実験
脳卒中後の神経障害の治療における本発明のエマルジョンの効果を決定するために、表4にある通りのエマルジョンが解析された。
1)中鎖トリグリセリド
2)EPA及びDHAの量は、魚油トリグリセリド中の脂肪酸の総量に基づいて、55質量%(wt.−%)である。DHAに対するEPAの質量比は3:2である。
本発明のエマルジョンの効果を決定するために使用される脳卒中モデルは、J.Don
g、B.Mitkari、M.Kipp及びC.Beyer Brain,Behavior,and Immunity 25(2011)715−726中に記載されている。
方法
動物及び正常雄性ウィスターラットにおける実験的な一過性の中大脳動脈閉塞(+MCAO)の手順
雄性ウィスターラット(約300g、3月齢、Charles River、ドイツ国)を無菌雰囲気中でした。動物は、1週間に1回ルーチンケージ管理(routine cage maintenance)及び欧州実験動物学会連合の推奨に従う微生物学的モニタリングを受けた。
食餌及び水を不断(ad libitum)で与えた。調査及び動物の世話の手順は、地区政府の動物被検体の世話のための審査委員会(Review Board for the Care of Animal Subject of the distinct government)(ノルトライン−ヴェストファーレン、ドイツ国)により承認されたものである。動物を5%イソフルラン(Abbott、ルードヴィヒスハーフェン、ドイツ国)で麻酔し、フェイスマスクを用いて1.5−2.5%イソフルラン(個々の動物及び手術工程に依存する)で維持した。正中頸部切開の後、左総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)及び外頸動脈(ECA)を露出した。次に、基部に近いECA及びCCAを結紮した。迷走神経をできる限り注意深く保存した。次に、市販で入手可能なカテーテル(Asahi PTCA Guide Wire Soft、Abbott Vascular、ドイツ国)を、抵抗が手作業で観察されるところまで、ICAへの分岐の直前に末梢CCAのルーメンから誘導した。よって、中大脳動脈(MCA)の起点はカテーテルの先端により閉塞されて、基礎値と比較して>50%の脳血流量(CBF)の低下が得られた(以下参照)。体温は、全ての手術手順の間、加温パッド及びランプで37-37.5℃に維持された。1時間後、カテーテルを撤収し、再潅流期間を開始した。次に、出血を防ぐために露出された血管を注意深く結紮し、切開部を無菌で閉じ及び動物をそれらのケージへ戻した。23時間後、ラットを5%イソフルランで深く麻酔し、組織染色、分子解析及び動物行動試験を実施した。
ホルモン及び油性エマルジョン配合物並びにその適用
エマルジョンの適用及び血液試料採取
表4中に記載されるエマルジョンが、tMCAOの開始後1及び12時間に、パーマネント頸静脈カテーテルを介して適用された。
静脈血の試料採取及びエマルジョンの適用のために、右外頸静脈が、頸部腹側領域における全ての結合組織及び筋膜から調製されることにより外面化された。
血管内への小さな切開の後、頸静脈カテーテル(Alzet,ラット頸静脈カテーテル、Cupertina、カルフォルニア州、米国)の先端を約1−1.5mm遠位に導入した。血管を、カテーテル上の切開部付近の遠位で、恒久的に2mmくちばし状で且つゆるく結紮した。カテーテルは、実験の終了まで位置が維持された(24時間後犠牲にする)。
全ての注射は、マイクロポンプシステム(Aesculap、ドイツ国)を使用する3分間のゆっくりとした500μLの体積で実施された。頸静脈内のカテーテル先端の凝固を回避するために、チューブを高希釈ヘパリン(生理学的NaClにおいて、1:1000)で冠水した。
全ての使用された溶液は、適用前に体温(38℃)に加温された。
ホルモン(17β−エストラジオール及びプロゲステロン)は、ストック溶液として1
00%エタノール中に溶解され、更に与えられたエマルジョン中で希釈されて調製された(実施例1ないし3)。
結果として生じる適用当りのステロイドの用量は:
プロゲステロン(P、シグマ−アルドリッチ、ドイツ国)10mg/kg体重
17β−エストラジオール(E、シグマ−アルドリッチ、ドイツ国)25μg/kg体重であった。
ホルモンを伴うか又は伴わないエマルジョンを、tMCAOの開始後1時間及び12時間に適用した。
エマルジョンに加えて、塩化ナトリウム/エタノール溶液を含む脂質の無いホルモンを調製した(NaCl/EtOH E/P)。再度、ストック溶液を、エタノール中にホルモンを溶解することにより調製した。生理食塩水(NaCl)におけるストック溶液の更なる希釈は、エマルジョンのために上に示したのと同一の適用体積(500μL)及び投与計画を結果として生じた。
局所脳血流(rCBF)の評価
適当なMCA閉塞を確実にするために、局所的脳虚血の間MCA上の局所脳灌流を測定するためのレーザードップラー流量計を使用した。
従って、各動物は、ブレグマの約3−5mm後方で且つ正中線の4mm横で、無傷の硬膜上の2mmレーザードップラープローブ(PeriFlux System 5000、Type PF 5001、Perimed、スウェーデン)の配置のために開頭術を受けた。基線測定が、ICA中へカテーテルを挿入する前に直接なされた。MCA上のrCBFが10分間の間隔で記録され、平均値が計算された。基線と比較して、少なくとも50%(平均値)rCBFの減少を伴う動物のみが更に研究に加えられた。適当な酸素供給不足/閉塞が保障され得ないため、他の動物は研究から除外された。
動物の分析
一般に、全ての分析は、単盲検方法で行われた。これに関連して、単盲検とは、適用されたエマルジョンの調製、tMCAO手術及び全てのエマルジョンの適用を行った最初の実験者が、試験された薬剤を知っていることを意味する。この者はその後、動物を番号でコード化した。行動試験、1回拍出量分析の解析を取り扱う2番目の実験者は、完全に予備知識無しであり、単にコード番号で標識された動物を取り扱った。この者はその後、分析及び数学的/統計的評価を行い、データ・セットを、該データを対応する動物/処置に割り当てる最初の実験者へ戻した。
梗塞体積の測定
梗塞体積のデータは、常に100%に設定される、保護されていないtMCAO動物における総梗塞体積と比較したパーセント変化として表された。このことは、一目で保護のレベルをより良く比較することを可能とする。
梗塞体積の正確な評価のために、塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色法が適用された。脳は迅速に解剖され、ラット脳マトリクス(rat brain matrix)(Alto Brain Matrix stainless steel 1mm rat coronal 300−600 GM,Havard−Apparatus)を用いて2−mm厚の冠状断面に切断された。断面はその後37℃で15分間2%TTC溶液(生理食塩水で調製)中で培養された。生きている組織は赤に染色され、一方、梗塞された組織は染色されず、淡さが維持された。TCC染色後、断面は冷凍保存された。TTC染色された断面の画像が、キャノン デジタル IXUS 9015カメラを用いて獲得された。総皮質梗塞体積が、各断面の平均面積を加え及び2mm(
断面の厚さ)を乗じることにより計算された。梗塞体積の浮腫補正が、等式、体積補正(皮質梗塞体積×全部の対側体積)/全部の同側体積を用いて行われた。浮腫体積が、対側大脳半球からの同側障害部の体積を減算することにより計算された(Garcia等、stroke 26:627−634,1995)。測定は、無料でアクセス可能なソフトウェアデバイス(ImageJ 1.41、米国)を用いて達成された。
行動試験
動物を犠牲にする少し前に、行動試験(Garcia、ニューロスコアリング)が、小規模の変更を伴うGarcia等(Stroke 26:627−634、1995)に従う研究において含まれる全てのラットで達成された。結果として最大18スコアを生じる1−3で採点される6つの独立した行動試験が行われた。以下の行動が評価された:自発運動、前足の差し出し、及び登る能力、ブラントスティック(blunt stick)を伴う身体の固有受容感覚、身体の固有受容感覚(洞毛接触)、自発歩行。典型的には、無傷の又は偽手術された動物は、常に18Pに採点された。対照的に、tMCAO動物は平均約6Pに採点された。
脳卒中モデルを伴う試験の結果は、図1及び2に反映されている。該図中において、以下の略語が使用された:
NaCl/EtOH E/P i.v.:静脈内に投与される上述のようなホルモン含有塩化ナトリウム/エタノール溶液
Lipofundin MCT E/P i.v.:上述のようなホルモンが添加され及び静脈内に投与された表4中の実施例1に従うエマルジョン
5/5 エマルジョン i.v.:ホルモンを伴わず及び静脈内に投与された実施例2に従うエマルジョン
5:5 エマルジョン E/P i.v.:上述のようなホルモンが添加され及び静脈内に投与された表4中の実施例2に従うエマルジョン
9:1 エマルジョン i.v.:ホルモンを伴わず及び静脈内に投与された実施例3に従うエマルジョン
9:1 エマルジョン E/P i.v.:ホルモンが添加され及び静脈内に投与された表4中の実施例3に従うエマルジョン