以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるプラズマ処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。なお、本実施の形態のプラズマ処理装置1では、基板としてのウェハWの表面に対してプラズマCVD(Chemical Vapor Deposiotion)処理を行い、当該ウェハWの表面にSiN膜(シリコン窒化膜)を形成する場合を一例にして説明する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
プラズマ処理装置1は、内部を気密に保持する処理容器2と、プラズマ生成用のマイクロ波を処理容器2内に供給するラジアルラインスロットアンテナ(radial line slot antenna)3を有している。処理容器2は上面が開口した略円筒状の本体部2aと、本体部2aの開口を気密に塞ぐ略円盤状の蓋体2bを有している。本体部2a及び蓋体2bは、例えばアルミニウム等の金属から形成されている。
処理容器2の本体部2a底面には、ウェハWを載置するサセプタ10が設けられている。サセプタ10は、例えば円盤形状を有し、アルミニウム等の金属から形成されている。サセプタ10には、電極11が内蔵され、電極11にはウェハWを吸着保持するための電圧を印加する電源12が接続されている。また、電源12は、電極11に例えば±1kVの高電圧を交互に印加可能に構成されている。そのため、電源12により高電圧を断続的に印加し、処理容器2内に電磁応力を発生させることで、処理容器2内に付着するパーティクルを飛散させることができる可能性がある。また、サセプタ10には、図示しない整合器を介してバイアス用の高周波電源(図示せず)が接続されている。高周波電源は、ウェハWに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば13.56MHzの高周波を出力する。なお、図示していないが、サセプタ10の内部にはヒータ(図示せず)が設けられ、ウェハWを所定の温度に加熱することができる。
なおサセプタ10の下方には、ウェハWを下方から支持し昇降させるための昇降ピン(図示せず)が設けられている。昇降ピンは、サセプタ10に形成された貫通孔(図示せず)を挿通し、サセプタ10の上面から突出可能になっている。
サセプタ10の上面には、ウェハWを囲むように環状のフォーカスリング13が設けられている。フォーカスリング13には例えばセラミックスあるいは石英などの絶縁性材料が用いられる。
処理容器2の本体部2aの底部には、例えば本体部2aの側方に突出している排気室20が形成されている。排気室20の底面には、処理容器2内を排気する排気機構21が、排気管22を介して接続されている。排気管22には、排気機構21による排気量を調整する調整弁23が設けられている。
排気室20の上方には、処理容器2内を均一に排気するための円環状のバッフル板24が、サセプタ10の外側面と本体部2aの側壁2cとの間に設けられている。バッフル板24には、当該バッフル板24を厚み方向に貫通する開口が全周にわたって形成されている。
処理容器2の本体部2aの側壁2cにおけるバッフル板24の上方には、ウェハWの搬入出口25が形成されている。搬入出口25には、開閉自在に構成されたゲートバルブ26が設けられ、ゲートバルブ26を閉止することで、処理容器2の内部は気密に閉鎖される。
処理容器2の天井面開口部には、処理容器2内にプラズマ生成用のマイクロ波を供給する、ラジアルラインスロットアンテナ3が設けられている。ラジアルラインスロットアンテナ3は、マイクロ波透過板31、スロット板32、遅波板33を有している。マイクロ波透過板31、スロット板32、遅波板33は、この順に下から積層して設けられ、マイクロ波透過板31は、処理容器2の本体部2aの開口部近傍から内側に突出して設けられた円環状の支持部材34により支持されている。マイクロ波透過板31と支持部材34との間は、例えばOリング等のシール材(図示せず)により気密に保たれている。マイクロ波透過板31には誘電体、例えば石英、Al2O3、AlN等が用いられ、マイクロ波を透過させる機能を有する。遅波板33の上面は、蓋体2bによって覆われている。
マイクロ波透過板31の上面に設けられたスロット板32には複数のスロットが形成され、スロット板32はアンテナとして機能する。スロット板32には、導電性を有する材料、たとえば銅、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。
スロット板32の上面に設けられた遅波板33は、低損失誘電体材料、例えば石英、Al2O3、AlN等により構成されており、マイクロ波の波長を短縮する機能を有する。
遅波板33の上面を覆う蓋体2bは、その内部に例えば冷却媒体を流通させる円環状の流路35が複数設けられている。流路35を流れる冷却媒体によって、蓋体2b、マイクロ波透過板31、スロット板32及び遅波板33が所定の温度に調節される。
蓋体2bの中央部には同軸導波管40が接続されている。同軸導波管40の上端部には、矩形導波管41およびモード変換器42を介して、マイクロ波発生源43が接続されている。マイクロ波発生源43は、処理容器2の外部に設置されており、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生させることができる。
同軸導波管40は、内部導体44と外管45を有している。内部導体44は、スロット板32と接続されている。内部導体44のスロット板32側は円錐形に形成されて、スロット板32に対してマイクロ波を効率よく伝播するようになっている。
かかる構成により、マイクロ波発生源43から発生したマイクロ波は、矩形導波管41、モード変換器42、同軸導波管40内を順次伝播し、遅波板33で圧縮され短波長化される。そして、スロット板32から円偏波状のマイクロ波が、マイクロ波透過板31を透過して処理容器2内に照射される。このマイクロ波により処理容器2内では処理ガスがプラズマ化し、このプラズマによりウェハWのプラズマ処理が行われる。
処理容器2の天井面中央部、すなわちラジアルラインスロットアンテナ3の中央部には、第1のガス供給管50が設けられている。第1のガス供給管50はラジアルラインスロットアンテナ3を上下方向に貫通し、当該第1のガス供給管50の一端部はマイクロ波透過板31の下面において開口している。また、第1のガス供給管50は同軸導波管40の内部導体44の内部を貫通し、さらにモード変換器42内を挿通している。当該第1のガス供給管50の他端部は第1のガス供給源51に接続されている。
第1のガス供給源51の内部には、処理ガス、パージガス及びクリーニングガスがそれぞれ個別に貯留されている。処理ガスとしては、例えばTSA(トリシリルアミン)、N2ガス、H2ガス、Arガスがそれぞれ個別に貯留されている。このうち、TSA、N2ガス、H2ガスはSiN膜の成膜用の原料ガスであり、Arガスはプラズマ励起用ガスである。クリーニングガスとしては、例えばCF4ガスが貯留されている。
第1のガス供給管50には、当該第1のガス供給管50内のガスの流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群52が設けられている。第1のガス供給源51から供給された処理ガスまたはクリーニングガスは、第1のガス供給管50を介して処理容器2内に供給され、サセプタ10に載置されたウェハWに向かって鉛直下方に流れる。
また、図1に示すように、処理容器2の上部の内周面には、第2のガス供給管60が設けられている。第2のガス供給管60は、処理容器2の内周面に沿って等間隔に複数設けられている。第2のガス供給管60には、第2のガス供給源61が接続されている。第2のガス供給源61の内部には、処理ガスとして、例えばTSA(トリシリルアミン)、N2ガス、H2ガス、Arガスがそれぞれ個別に貯留されている。パージガスとしては、例えば窒素ガスが貯留されている。クリーニングガスとしては、例えばCl、CF4ガスが貯留されている。
第2のガス供給管60には、当該第2のガス供給管60内のガスの流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群62が設けられている。第2のガス供給源61から供給された処理ガスまたはクリーニングガスは、第2のガス供給管60を介して処理容器2内に供給され、サセプタ10に載置されたウェハWの外周部に向かって流れる。このように、第1のガス供給管50からのガスはウェハWの中心部に向けて供給され、第2のガス供給管60からのガスはウェハWの外周部に向けて供給される。
そして本実施の形態の形態においては、図2に示したように、天板部のマイクロ波透過板31を直接支持する支持部材34の表面、すなわちプラズマに曝される表面には、プラズマ耐性に優れた材料によってコーティングされてなる被膜C1が形成されている。本実施の形態の形態では、被膜C1の材料には耐プラズマ性の高いイットリア(酸化イットリウム:Y2O3)が採用されている。一方、支持部材34から続く本体部2aの側壁2cの表面、すなわちプラズマに曝される表面には、プラズマ耐性に優れた材料によってコーティングされてなる被膜C2が形成されている。本実施の形態の形態では、被膜C2の材料には耐プラズマ性の高いAl2O3が採用されている。このように本実施の形態においては、天板部を支持する支持部材34と支持部材34から続く側壁2cの表面には、各々異なった材料であるY2O3とAl2O3とによってコーティングされている。
以上のプラズマ処理装置1には、図1に示すように制御部100が設けられている。制御部100は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、上述の超音波振動発生機構70やマイクロ波発生源43、各ガス供給源51、61といった機器の動作を制御して、プラズマ処理装置1における後述のプラズマ処理やクリーニング方法を実現させるためのプログラムが格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
本実施の形態にかかるプラズマ処理装置1は以上のように構成されている。次に、本実施の形態にかかるプラズマ処理装置1の部材の交換判断方法について説明する。
まず製品ウェハWに対する通常のプラズマ処理を行う。たとえば成膜処理を行う場合、処理容器2内に第1の処理ガス、第2の処理ガスを供給すると共に、マイクロ波発生源43を作動させ、当該マイクロ波発生源43において、例えば2.45GHzの周波数で所定の電力のマイクロ波を発生させる。マイクロ波は、矩形導波管41、モード変換器42、同軸導波管40、ラジアルラインスロットアンテナ3を介して、処理容器2内に照射される。このマイクロ波によって処理容器2内では処理ガスがプラズマ化し、プラズマ中で処理ガスの解離が進み、その際に発生したラジカル(活性種)によってウェハWの表面に所定の膜が形成される。
なお、ウェハWにプラズマ処理を行っている間、図示しない高周波電源により例えば13.56MHzの周波数で所定の電力の高周波がサセプタ10に印加される。適切な範囲でのRFバイアスの印加により、プラズマ中のイオンをウェハWへ引き込むように作用させることができる。
このようなプラズマ処理が繰り返し行われると、処理容器2内に徐々に反応生成物の膜が付着する。そのため、例えば所定枚数のウェハW処理が完了する毎に、処理容器2内に第1のクリーニングガス及び第2のクリーニングガスを供給して、クリーニングを実施する。
そしてそのような定期的なクリーニング作業を行った際、例えば処理枚数が、あらかじめ定めていた所定の枚数(例えば数千枚)、あるいは所定のロット数に達していた場合には、以下に説明する交換判断作業を行う。
まず模擬基板であるダミーウェハDWを処理容器2内にサセプタ10上に載置し、通常の製品ウェハWの処理の場合と同様、所定のガスを処理容器2内に導入し、また一方所定のパワーによってプラズマを生成する。そして通常の製品ウェハWの処理と同じ時間、プラズマ処理を実施する。
次いでダミーウェハDWを処理容器2から搬出し、図2に示したようにパーティクルカウンター71に搬送し、ダミーウェハDW表面のパーティクル数を計測する。計測の結果、パーティクル数が、あらかじめ定めていたしきい値Nに達していない場合には、処理容器2内の各部材の交換は不要と判断する。
一方、計測の結果、パーティクル数が、あらかじめ定めていたしきい値N以上の場合には、ダミーウェハDWをパーティクルカウンター71から搬出して、成分分析装置81に搬送し、ダミーウェハDW表面のパーティクルの成分を分析する。そして分析の結果、最も多いパーティクル数をもたらしているパーティクルの成分が処理容器2内のどの部材の被膜に由来するかを特定する。本実施の形態では、前記したように、支持部材34の表面の被膜C1はY2O3からなっており、一方支持部材34から続く側壁2cの表面の被膜C2には、Al2O3からなっているので、たとえば分析した結果、最も多いパーティクルの成分がY2O3の場合には、支持部材34の表面が劣化、腐食していると判断し、最も多いパーティクルの成分がAl2O3の場合には、側壁2cの表面が劣化、腐食していると判断する。これによって、前者の場合には、支持部材34を交換すべき部材と判断し、後者の場合には、側壁2cが交換すべき部材と判断できるのである。
これによって、劣化、腐食が発生している部材を特定し、交換すべき部材のみを交換することができる。したがって従来よりも短時間で、かつ無駄なコストをかけずに当該部材を交換して、プラズマ処理装置1を再稼働させることができる。
なお成分分析装置81としては、たとえば電子顕微鏡と併用されるエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いることができる。
なお前記した実施の形態では、支持部材34と側壁2cの表面の被膜C1、C2を異なった材料を用いてコーティングで形成した例であったが、それはこの2つの部材が、この種のプラズマ処理装置の処理容器内でプラズマ密度が高い領域に位置する部材であり、最も腐食、劣化が進む部材であったからである。しかしながら本発明は、もちろんこれに限らず、処理容器2の他の部材に対して適用することができ、その場合、当該他の部材の表面には、被膜C1、C2の材料とは異なった他の材料でコーティングして形成された被膜を形成すればよい。
そのような他の材料の被膜を形成する部材としては、処理容器2内へのガス供給口となる第2のガス供給管60の処理容器2内でプラズマに曝される部材、サセプタ10周辺部に位置し、ウェハW載置時の基板外周部に露出する、すなわちプラズマに曝されるフォーカスリング13、バッフル板24などが挙げられる。かかる場合、コーティングの材料は、前記したY2O3とAl2O3とはそれぞれかつ相互に異なった材料を用いる必要があり、たとえばAlN、YF、PrOなどを使用することができる。もちろんこれらは一例であって、支持部材34と側壁2cの表面の被膜C1、C2の材料は、Y2O3とAl2O3に限られず、支持部材34と側壁2cの表面の被膜C1、C2、フォーカスリング13、バッフル板24の各コーティング材料は相互に異なっていれば、使用するコーティング材料の種類は各々任意のものを使用できる。
なお前記実施の形態では、ダミーウェハDWに対して、通常の製品ウェハWの処理の場合と同様のプラズマ処理を行っていたが、それに限らず、不活性ガス(たとえばAr、He、N2など)を処理容器2内に導入してプラズマを生成し、その後前記した実施の形態と同様に、パーティクルカウンター71に搬送し、以後同様な手順を行って、しきい値Nに基づく判断、さらにその結果による成分分析装置81への搬送、成分分析に基づく判断を行うようにしてもよい。こうすることで、通常の製品ウェハWの処理の場合と同様のプラズマ処理を行う場合よりも、処理容器2内での時間を短縮することができ、判断に至るまでの時間を短くすることができる。
さらにまたプラズマを生成せず、処理容器2内に不活性ガス(たとえばAr、He、N2など)を供給することに留め、以後、前記した実施の形態と同様に、パーティクルカウンター71への搬送、しきい値Nに基づく判断、さらにその結果による成分分析装置81への搬送、成分分析に基づく判断を行うようにしてもよい。こうすることで、さらに判断に至るまでの時間を短くすることができる。このようにガスの供給のみでも、部材表面からコーティング材料が剥げ落ちる場合もあり、かかる場合には、ガスの供給のみで以後の必要な判断を行なえることがある。
なおダミーウェハDWに対して上記したように、通常の製品ウェハWと同様なプラズマ処理を行うか、処理容器2内に単にプラズマを生成するか、あるいはガスのみを供給して夫々以後の判断を行うかは、任意に選択することができ、コーティング材料の種類、積算処理枚数、積算処理時間、プラズマ処理の種類などによって、適切なものを選択すればよい。ただし、通常の製品ウェハWと同様なプラズマ処理を行う場合、単にプラズマを生成するだけの場合、そしてガスのみを供給する場合では、各々パーティクルの発生量が異なっているので、しきい値Nも、後述のしきい値Mについては各々の場合に応じて、個別に適切なものを設定しておくとよい。
さらにまた前記した実施の形態においては、成分分析装置81での分析の結果、最も多いパーティクル数をもたらしているパーティクルの成分が処理容器2内のどの部材の被膜に由来するかを特定するようにしていたが、これに限らず、パーティクル数が所定のしきい値Mを超えている成分を有するコーティング材料によってコーティングされた部材を、すべて交換すべき部材と判断するようにしてもよい。これによって、たとえばパーティクル数が最も多くはないものの、実態は交換すべき状態にある部材も特定することができる。すなわち1の部材だけではなく、複数の部材の交換の判断を同時に行うことができる。
以上の実施の形態では、マイクロ波によってプラズマを生成する成膜装置を例として挙げたが、もちろん成膜装置に限らず、エッチング装置、スパッタリング装置であってもよく、またマイクロ波に限らず、平行平板プラズマや、ICPプラズマ等、他の手段によりプラズマを生成するプラズマ処理装置であってもよい。また基板もウェハに限らず、ガラス基板、有機EL基板、FPD(フラットパネルディスプレイ)用の基板等であってもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。