これに対して、本発明の課題は、技術的に遙かに簡潔で廉価なシステムにおいて、コーティングされた基板に対して熱処理を実施できるようにすることである。
この課題及び別の課題は、本発明の提案に従い、独立請求項の特徴部分に記載の構成を備えている、コーティングされた基板を処理するためのシステム及び方法によって解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項の特徴部分に記載の構成から明らかになる。
本発明によれば、一つ又は複数のプロセスボックスを有している、コーティングされた基板を処理するためのシステムが提供される。各プロセスボックスは、少なくとも一つの基板を収容するために設けられており、且つ、中空部を形成する、気密に閉鎖可能な(真空化可能な)ケーシングを有している。ケーシングは、自身に入射する電磁熱放射によって基板を熱処理できるように形成されている、少なくとも一つのケーシングセクションを有している。更にケーシングは、中空部に開口している、閉鎖可能な少なくとも一つのガス流路を有しており、このガス流路は中空部を真空化するため、またガスを中空部に導入するために使用される。
システムは更に、プロセスボックスに基板を充填するため及び/又はプロセスボックスから基板を取り出すための少なくとも一つの充填/搬出ユニットと、プロセスボックス内の基板を加熱(熱処理)するための少なくとも一つの加熱ユニットと、プロセスボックス内の基板を冷却するための少なくとも一つの冷却ユニットと、プロセスボックスの中空部をポンピングするための少なくとも一つのポンプ装置と、少なくとも一種類のガス、特にパージガス及び/又はプロセスガスをプロセスボックスの中空部に供給するための少なくとも一つのガス供給装置とを有している。
システムは更に、プロセスボックスと、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットとの間の相対運動を行うように構成されている少なくとも一つの搬送機構を有している。その場合、搬送可能なプロセスボックスを、固定されている加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットに相対的に移動させるために、搬送機構を構成することができる。択一的に、プロセスボックスが固定されており、加熱ユニット及び/又は冷却ユニット及び/又は充填/搬出ユニットを固定されているプロセスボックスに相対的に移動させるために、搬送機構を構成することもできる。その場合、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットの各ユニットを、他の各ユニットに依存せずに、個別に移動させることができる。しかしながら、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを一緒に(同期させて)移動させることも可能である。
従って、本発明によるシステムにおいては、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを真空化可能なプロセスチャンバとして形成する必要はなく、システムを技術的に非常に簡潔に構成することができるので、設備投資費用及び保守費用は比較的少なくて済む。更に、気密に閉鎖可能なプロセスボックスによって、腐食性の物質による負荷を回避することができるので、各ユニットの摩耗が比較的少なくて済む。
従って、本発明によるシステムの一つの有利な構成においては、充填/搬出ユニット、加熱ユニット及び冷却ユニットの各ユニットは真空化されないユニットとして構成されている。加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを、特に排気装置に接続することができるが真空化可能なチャンバとしては構成されていない一つの共通の筐体によって包囲できること、又は、その種の筐体によって別個に各ユニットを包囲できることは除外されない。
本発明によるシステムの一つの有利な構成においては、ポンプ装置及びガス供給装置が充填/搬出ユニットに統合されており、このことは基板の熱処理に関してプロセス技術的に有利であると考えられる。
本発明によるシステムの別の有利な構成では、ケーシングを温度調整又は能動的に冷却するための温度調整乃至冷却装置と(熱技術的に)結合可能又は結合されている少なくとも一つの(第1の)ケーシングセクションと、特に温度調整不可能又は冷却不可能な、即ち冷却装置と熱的に結合されていない少なくとも一つの(第2の)ケーシングセクションとを備えているケーシングを有している、一つ又は複数のプロセスボックスが設けられている。第1のケーシングセクションは例えば冷却装置に(流体)接続されているか又は(流体)接続可能であり、従って第1のケーシングセクションを冷却することができる。これに対し、第2のケーシングセクションは冷却装置に接続されておらず、従って第2のケーシングセクションを冷却することはできない。第1のケーシングセクションは第2のケーシングセクションとは異なる。冷却されない第2のケーシングセクションは、特に、ケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって基板を熱処理できるように形成されているケーシングセクションである。第1のケーシングの温度調整又は冷却によって、プロセスボックスの真空対応コンポーネントの著しい摩耗を回避することができる。
更に、プロセスボックスの中空部は、少なくとも一つの離隔壁によって、基板を収容するためのプロセス空間と中間空間とに分けられている。離隔壁は、一つ又は複数の開口部を有しており、また、基板と、冷却装置によって温度調整可能な第1のケーシングセクションとの間に配置されている。離隔壁によって、熱処理中にプロセス空間において生じるガス状物質の、第1のケーシングセクションにおける凝縮を回避することができる。
本発明によるシステムは更に、プロセスボックスの第1のケーシングセクションを温度調整又は能動的に冷却するための温度調整乃至冷却装置を有している。
本発明によるシステムの一つの有利な構成においては、充填/搬出ユニット、加熱ユニット及び冷却ユニットの各ユニットが、プロセスボックスのための循環搬送区間に沿って固定されて配置されており、しかもその搬送区間においては、基板を処理するために、プロセスボックスを単方向で移動させることができる。この場合、搬送機構はプロセスボックスを単方向で搬送するために構成されている。
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、加熱ユニットと、その加熱ユニットの両側に設けられている二つの冷却ユニットと、加熱ユニット及び冷却ユニットを挟むように設けられている、プロセスボックスを充填及び/又は搬出するための二つの充填/搬出ユニットとを含む、固定されている一連の複数のユニットが列を成して配置されており、この場合には、プロセスボックスを搬送することができ、また搬送機構はプロセスボックスを双方向に搬送するために構成されている。システムをそのように構成する代わりに、上述のように配置されている複数のユニットを搬送できるようにし、且つ、プロセスボックスを固定することもでき、この場合には、搬送機構はユニットを双方向に搬送するために構成されている。
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、それぞれが、一つの冷却ユニットと、一つの加熱ユニットと、一つの冷却ユニットと、一つの充填/搬出ユニットとから成り、特に記載の順序で設けられている、固定されている複数のユニットグループが列を成して配置されており、この場合には、プロセスボックスを搬送することができ、また搬送機構はプロセスボックスを双方向に搬送するために構成されている。それとは異なり、各ユニットを搬送できるようにし、且つ、プロセスボックスを固定することもでき、この場合には、搬送機構はユニットを双方向に搬送するために構成されている。
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、それぞれが、一つの冷却ユニットと、一つの加熱ユニットと、一つの充填/搬出ユニットとから成り、特に記載の順序で設けられている、固定されている複数のユニットグループが列を成して配置されており、この場合には、プロセスボックスを搬送することができ、また搬送機構はプロセスボックスを双方向に搬送するために構成されている。それとは異なり、各ユニットを搬送できるようにし、且つ、プロセスボックスを固定することもでき、この場合には、搬送機構はユニットを双方向に搬送するために構成されている。
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、プロセスボックスと、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットとの間の相対運動が行われている間は、ポンプ装置及び/又はガス供給装置及び/又は温度調整乃至冷却装置がプロセスボックスに常時結合されている。
更に本発明は、コーティングされた基板を処理するための方法に関し、この方法は以下のステップを備えている:
−真空化可能なプロセスボックスの中空部に、少なくとも一つのコーティングされた基板を充填するステップ、
−プロセスボックスの中空部を気密に閉鎖するステップ、
−プロセスボックスの中空部をポンピングするステップ、
−特に中空部を少なくとも一種類の不活性ガスによってパージするために、及び/又は、中空部に少なくとも一種類のプロセスガスを充填するために、プロセスボックスの中空部に少なくとも一種類のガスを負圧又は正圧によって充填するステップ、
−プロセスボックスの外側に配置されている放射加熱器によって形成され、プロセスボックスの、熱処理に使用される少なくとも一つのケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって基板を熱処理するステップ、
−高温の基板を冷却するステップ、
−プロセスボックスから基板を取り出すステップ。
プロセスボックスが閉じられた搬送区間に沿って単方向に循環する、本発明による方法の一つの有利な構成では、プロセスボックスに基板を充填するための充填ユニットと、基板を熱処理するための少なくとも一つの加熱ユニットと、基板を冷却するための少なくとも一つの冷却ユニットと、プロセスボックスから基板を取り出すための搬出ユニットとにプロセスボックスが順次連続して搬送される。
本発明による方法の一つの別の有利な構成は以下のステップを備えている:
−固定されている充填/搬出ユニットによって、搬送可能なプロセスボックスに基板を充填するステップ、
−プロセスボックスを、特に一方向において、固定されている加熱ユニットに搬送し、基板を熱処理するステップ、
−プロセスボックスを、特に前述の一方向において、又はその方向の逆方向において、固定されている冷却ユニットに搬送し、基板を冷却するステップ、
−プロセスボックスを、特に前述の逆方向において、充填/搬出ユニットに搬送し、基板を取り出すステップ。
本発明による方法の一つの代替的な構成は以下のステップを備えている:
−搬送可能な充填/搬出ユニットによって、固定されているプロセスボックスに基板を充填するステップ、
−充填/搬出ユニットを、特に一方向において、プロセスボックスから離すステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の一方向において、プロセスボックスに搬送し、基板を熱処理するステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の方向とは異なる方向において、プロセスボックスから離すステップ、
−冷却ユニットを、特に前述の一方向において、又はその方向の逆方向において、プロセスボックスに搬送し、基板を冷却するステップ、
−冷却ユニットを、特に前述の一方向において、又は前述の逆方向において、プロセスボックスから離すステップ、
−充填/搬出ユニットを、特に前述の逆方向において、プロセスボックスに搬送し、基板を取り出すステップ。
本発明による方法の一つの別の有利な構成は以下のステップを備えている:
−固定されている第1の充填/搬出ユニットによって、搬送可能な第1のプロセスボックスに第1の基板を充填するステップ、
−固定されている第2の充填/搬出ユニットによって、搬送可能な第2のプロセスボックスに第2の基板を充填するステップ、
−第1のプロセスボックスを、特に一方向において、固定されている加熱ユニットに搬送し、第1の基板を熱処理するステップ、
−第1のプロセスボックスを、特に前述の方向の逆方向において、固定されている第1の冷却ユニットに搬送し、第1の基板を冷却するステップ、
−第2のプロセスボックスを、特に前述の逆方向において、加熱ユニットに搬送し、第2の基板を熱処理するステップ、
−第2のプロセスボックスを、特に前述の一方向において、固定されている第2の冷却ユニットに搬送し、第2の基板を冷却するステップ、
−第1のプロセスボックスを、特に前述の逆方向において、第1の充填/搬出ユニットに搬送し、第1の基板を取り出すステップ、
−第2のプロセスボックスを、特に前述の一方向において、第2の充填/搬出ユニットに搬送し、第2の基板を取り出すステップ。
本発明による方法の一つの代替的な構成は以下のステップを備えている:
−第1の充填/搬出ユニットによって、固定されている第1のプロセスボックスに第1の基板を充填するステップ、
−第1の充填/搬出ユニットを、特に一方向において、第1のプロセスボックスから離すステップ、
−第2の充填/搬出ユニットによって、固定されている第2のプロセスボックスに第2の基板を充填するステップ、
−第2の充填/搬出ユニットを、特に前述の方向の逆方向において、第2のプロセスボックスから離すステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の一方向において、第1のプロセスボックスに搬送し、第1の基板を熱処理するステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の逆方向において、第1のプロセスボックスから離すステップ、
−第1の冷却ユニットを、特に前述の一方向において、第1のプロセスボックスに搬送し、第1の基板を冷却するステップ、
−第1の冷却ユニットを、特に前述の逆方向において、第1のプロセスボックスから離すステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の逆方向において、第2のプロセスボックスに搬送し、第2の基板を熱処理するステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の一方向において、第2のプロセスボックスから離し、第2の基板を熱処理するステップ、
−第2の冷却ユニットを、特に前述の逆方向において、第2のプロセスボックスに搬送し、第2の基板を冷却するステップ、
−第2の冷却ユニットを、特に前述の一方向において、第2のプロセスボックスから離すステップ、
−第1の充填/搬出ユニットを、特に前述の逆方向において、第1のプロセスボックスに搬送し、第1の基板を取り出すステップ、
−第2の充填/搬出ユニットを、特に前述の一方向において、第2のプロセスボックスに搬送し、第2の基板を取り出すステップ。
基板の熱処理中に少なくとも一種類のガス状物質がコーティングされた基板から生じる、本発明による方法の一つの別の有利な構成は以下のステップを備えている:
−熱処理中に、また必要に応じて熱処理後に、プロセスボックスの少なくとも一つの(第1の)ケーシングセクションを温度調整又は能動的に冷却するステップ、
−基板の熱処理中に生じるガス状物質の、温度調整又は冷却された(第1の)ケーシングセクションへの拡散を、コーティングされた基板と温度調整又は冷却された(第1の)ケーシングセクションとの間に配置されており、且つ、一つ又は複数の開口部が設けられている離隔壁によって抑制するステップ。
本発明による方法においては、プロセスボックスの、熱放射が入射することによって熱処理に使用される少なくとも一つのケーシングセクションは温度調整又は冷却されない。
本発明による方法の一つの別の有利な実施の形態においては、離隔壁と温度調整又は冷却される(第1の)ケーシングセクションとの間に設けられている中間空間が少なくとも部分的に、又は完全に、電磁熱放射によって照射されない。
本発明による方法の一つの別の有利な実施の形態においては、離隔壁の一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積が熱処理中に、離隔壁の加熱によって、初期値(熱処理前の総開口部面積)の最大で50%まで、有利には最大で30%まで、更に有利には最大で10%まで減少する。
本発明による方法の一つの別の有利な実施の形態においては、プロセスボックスの中空部がコーティングされた基板の熱処理前に真空化される、及び/又は、プロセスボックスの中空部にプロセスガスが(負圧又は正圧を用いて)充填される。
プロセスボックスが固定されており、且つ、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットがその固定されているプロセスボックスに相対的に搬送される、本発明による方法の種々の構成においては、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットの各ユニットを、他の各ユニットに依存せずに、個別に移動させることができる。しかしながら、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを一緒に(同期させて)移動させることも可能である。
上記において述べたように、コーティングされた基板を処理するためのプロセスボックスを、選択的に搬送可能なプロセスボックス又は固定のプロセスボックスとして使用することができる。
本発明において、「基板」という用語は、相互に背中合わせの二つの表面を備えており、且つ、それら二つの表面の内の一方には一般的に複数の層から成る層構造が設けられている、平坦な物体を意味している。通常の場合、基板の他方の表面はコーティングされていない。例えば、そのような基板は、薄膜ソーラーモジュールを製造するための、RTP熱処理を実施する必要がある、化合物半導体(例えばカルコパイライト化合物又はケステライト化合物)の前駆体層でコーティングされた基板である。
プロセスボックスは、気密に閉鎖可能な(真空化可能な)中空部を形成又は画定しているケーシングを有している。中空部の内のりの高さは、有利には、可能な限り短時間でガスが排気され、且つ、RTP熱処理時の酸素含有量及び水分圧に関する高い要求を満たすことができるように決定されている。基本的には、ケーシングを意図する用途に適したあらゆる材料から、例えば金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、カーボンファイバで補強された炭素材料又はグラファイトから作成することができる。
その際、プロセスボックスのケーシングが一つ又は複数のケーシングセクションを有しており、各ケーシングセクションは、そのケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって熱処理することができるように構成されていることが重要である。このために、熱処理に使用されるケーシングセクションは、基板を処理するための電磁熱放射に対して透明、半透明、又は不透明で良い。例えば、熱処理に使用されるケーシングセクションはガラスセラミックから形成されている。熱処理に使用されるケーシングセクションは特に、放射加熱器の電磁熱放射を少なくとも部分的に、とりわけ完全に吸収することに適している材料(例えばグラファイト)も含有することができるか、又はその種の材料から形成することもできる。加熱されたケーシングセクションは、基板を加熱するための二次熱源として使用することができ、これによって特に熱分布を均一にすることができる。
プロセスボックスのケーシングは更に一つ又は複数の温度調整可能又は能動的に冷却可能な(第1の)ケーシングセクションを有しており、その(第1の)ケーシングセクションの温度を所定の温度値に調整することができるか、又は(第1の)ケーシングセクションを能動的に冷却することができる。このために、各ケーシングセクションは(外部の)温度調整乃至冷却装置と熱技術的に結合可能であるか又は結合されている。更に、ケーシングは一つ又は複数の、温度調整不可能な、即ち温度調整乃至冷却装置に結合不可能であるか又は結合されていない(第2の)ケーシングセクションを有しており、この(第2の)ケーシングセクションは特に、そのケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって熱処理することができる、つまり放射加熱器の放射場内に位置しているケーシングセクションである。
温度調整可能又は冷却可能なケーシングセクションを、基板の温度に関連させて、また、入射する電磁熱放射によって熱処理することができ、且つ、放射加熱器の放射場内に位置しているケーシングセクションの温度に関連させて能動的に冷却することができる。プロセスボックスの温度調整可能又は冷却可能なケーシングセクションを、コーティングされた基板の熱処理前、熱処理中及び/又は熱処理後に温度調整する(能動的に冷却する)ことができる。
上記において使用したように、また下記においても使用するように、「冷却可能」という用語は、熱処理時の基板の温度、又は、入射する電磁熱放射によって熱処理することができ、且つ、放射加熱器の放射場内に位置しているケーシングセクションの温度よりも低い温度に(第1の)ケーシングセクションの温度を調整すること、又は、(第1の)ケーシングセクションを冷却することを意味している。例えば、ケーシングセクションは20℃から200℃までの範囲の温度に調整される又は冷却される。この温度調整によって、真空技術においては一般的に使用されているが、200℃を超える温度には長時間耐えることができない、プラスチック製シール(エラストマ、フルオロエラストマ)及び他の比較的廉価な標準的な構成要素をプロセスボックスの真空密閉に使用することができる。
更にプロセスボックスのケーシングは、中空部に開口している、(例えば弁によって)閉鎖可能な少なくとも一つのガス流路を有しており、このガス流路は中空部を真空化するため、またプロセスガスを中空部に導入するために使用される。このためにガス流路を特に中間空間に開口させることができる。プロセスガスは例えば、反応性ガス、例えばH2S、H2Se、S蒸気、Se蒸気又はH2、並びに、不活性ガス、例えばN2、He又はArを含むことができる。
プロセスボックスにおいては、ケーシングによって形成されている中空部が、少なくとも一つの離隔壁によって、コーティングされた基板を収容するためのプロセス空間と中間空間とに分けられている。離隔壁は、コーティングされた基板と、温度調整(能動的に冷却)される、即ち冷却装置に結合可能な又は結合されているケーシングセクションとの間に配置されている。プロセス空間は、少なくとも一つの離隔壁と、温度調整不可能な、即ち冷却装置と結合されていない、プロセスボックスの一つ又は複数のケーシングセクションとだけによって画定される。
離隔壁は、熱処理中にはプロセス空間と中間空間との間のガス交換に関する拡散バリア(蒸気バリア)として使用されるが、しかしながら熱処理前及び熱処理後には少なくとも一時的にプロセス空間と中間空間との間のガス交換を実現し、それによって、離隔壁を介したプロセス空間からのガス状物質の排気、パージガスによるパージ並びにプロセスガスの充填が行われることが重要である。このために、離隔壁は一つ又は複数の開口部又は貫通部を有しており、それらによって、プロセス空間及び中間空間は相互に流体接続されている。一般的に、開口部はあらゆる任意の形状、例えばスリット又は円孔の形状を有することができ、また周縁部に配置することもできる。
一つの有利な実施の形態においては、離隔壁がケーシング壁までは達していないので、離隔壁とケーシング壁との間には開口部、特に間隙が残存している。
特に、離隔壁を多孔性の材料から形成することができるか、又は複数の筒状部(直線状、斜め又は角度付きの複数の筒状部)が設けられている材料から形成することができるか、若しくは、離隔壁はその種の材料を含有することができる。
例えば、離隔壁の各開口部の最小寸法、例えば半径又は直径はプロセス空間における気体粒子の平均自由行程の長さよりも大きいが、これは必ずしも必要ではない。
従って、コーティングされた基板を処理するためのプロセス空間は離隔壁によって形成され、またプロセス空間はその離隔壁によって中間空間から準気密に仕切られている。プロセス空間と外部環境との間で自由にガス交換を行うことができる開放型のプロセス空間とは異なり、また、プロセス空間と外部環境との間のその種のガス交換が完全に阻止されている気密なプロセス空間とは異なり、プロセス空間と中間空間との間のガス交換が離隔壁によって抑制される。この蒸気バリアは、自由行程の長さの圧力依存性を基礎としている。つまり、ほぼ常圧(700mbarから1000mbar)では、比較的小さい開口部を介して拡散が抑制される。これに対して、中間空間がプレ真空領域の圧力(10μbarから1000μbar)にポンピングされると、自由行程の長さは大きく上昇し、離隔壁はガス交換に対して弱い拡散バリアでしかなくなる。離隔壁を介してプロセス空間をポンピングすることができ、またポンピング後にプロセスガスをプロセスボックスに流入させ、更にプロセス空間にも流入させることができる。特に、準気密な離隔壁によって、易揮発性のカルコゲン成分、例えばセレン又は硫黄の分圧を、熱処理中にプロセス空間において少なくとも十分に一定に維持することができる。
一般的に、プロセスボックスは、コーティングされた基板を充填し、また処理された基板を取り出すために開放又は閉鎖することができるように、若しくは組み立て及び(非破壊的に)再び解体することができるように構成されている。
プロセスボックスによって多くの利点を達成することができる。つまり、中空部に開口している少なくとも一つの閉鎖可能なガス流路を用いて中空部を気密に形成することによって、特に腐食性のプロセスガスを排気し、且つ、酸素含有量及び水分圧を低減するためのプロセス空間の真空化、並びに、不活性ガスによるパージ及びプロセスガスの充填が実現される。従って、基板を熱処理するためにロック室及びプロセスユニットを気密に又は真空化可能に構成する必要はないので、システムを技術的に非常に簡略化することができ、またシステムの製造及びメンテナンスに関する費用を大幅に低減することができる。しかしながらまた、充填/搬出ユニット、加熱ユニット及び冷却ユニットを、特に排気装置に接続されているが真空化可能なチャンバとしては構成されていない一つの共通の筐体によって包囲できること、又は、その種の筐体によって別個に各ユニットを包囲できることは除外されない。腐食性のプロセスガスはプロセスボックスの中空部にしか存在しないので、システムのコンポーネント、例えばプロセスボックスを搬送するための搬送ローラ又はコーティングされた基板を熱処理するための放射加熱器の摩耗が高まることを回避することができる。更に有利には、システムの真空対応領域(プロセスボックス)において可動部を省略することができる。プロセスボックスの中空部の真空化を高速且つ効果的に達成することができる。このことはプロセスガスの充填にも同様に当てはまり、プロセスガスを費用効果的に最小量で使用することができる。プロセスボックスの少なくとも一つのケーシングセクションの温度調整(能動的な冷却)によって、熱処理中のプロセスボックスの特に真空対応コンポーネントの摩耗を低減することができ、また必要に応じて、熱処理後のコーティングされた基板の能動的な冷却を支援することができる。拡散バリア又は蒸気バリアとして機能する離隔壁によって、熱処理中に生じる揮発性の成分、例えばカルコゲン元素である硫黄及びセレンの、温度調整された(能動的に冷却された)ケーシングセクションにおける凝集を阻止することができ、それによってプロセス雰囲気における揮発性の成分の損失は最小になり、またプロセス雰囲気における揮発性の成分の分圧は少なくとも十分に一定に維持される。従って、揮発性のカルコゲン元素の消費量を最小にすることができ、また、作成される化合物半導体の品質も改善することができる。更に、離隔壁によって、プロセス空間をプロセスボックスの中空部に比べてより一層縮小することができる。気密なプロセスボックスによって、プロセスボックスに充填された基板は周囲の影響から適切に保護されている。製造システムにおいて、コーティングされた基板が充填されたプロセスボックスを、そのコーティングされた基板をプロセスボックスから取り出すことなく、種々のプロセスユニット間で移動させることができる。プロセスボックスには選択的に一つ又は複数のコーティングされた基板を充填することができる。
上記において既に述べたように、離隔壁によって中空部がプロセス空間と中間空間に準気密に分けられ、そのために離隔壁には一つ又は複数の開口部が設けられている。有利には、コーティングされた基板の熱処理中に、その熱処理によって生じるガス状物質のプロセス空間からの質量損失が、その熱処理中に生じるガス状物質の質量の50%未満、有利には20%未満、特に有利には10%未満であるように、離隔壁は形成されている。このために有利には、一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積を、プロセス空間の内側の表面(内面)の面積で除算することにより得られる面積比が5×10-5から5×10-4までの範囲にあるように、離隔壁は形成されている。これによって有利には、離隔壁の一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積は、一方では、プロセス空間の高速な真空化並びにパージガス又はプロセスガスの充填を実現するためには十分に大きいこと、他方では、熱処理中にプロセス空間において生じる揮発性の成分に対する効果的な蒸気バリア又は拡散バリアとして離隔壁を使用するためには十分に小さいことが達成される。
プロセスボックスの特に有利な一つの実施の形態において、離隔壁は、一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積を熱処理中の離隔壁の加熱によって、初期値(熱処理前の総開口部面積)の最大で50%まで、有利には最大で30%まで、更に有利には最大で10%まで減少させる熱膨張率を有する材料を含有しているか、又はその種の材料から形成されている。このために有利には、離隔壁は5×10-6K-1よりも高い熱膨張率を有する材料を含有しているか、又はその種の材料から形成されている。このようにして、一方では、比較的温度が低い状態においては比較的大きい(総)開口部面積によって、プロセス空間の非常に効率的な排気並びにプロセス空間へのパージガス又はプロセスガスの充填が達成され、他方では、熱処理中の比較的温度が高い状態での熱膨張により生じる比較的小さい(総)開口部面積によって、熱処理中に生じるガス状物質のプロセス空間から中間空間への拡散の非常に効果的な抑制が達成される、温度制御型の離隔壁が得られる。特に、熱処理中に(総)開口部面積が少なくともほぼゼロに低減され、その結果、熱処理中のプロセス空間と中間空間との間のガス交換が実質的に完全に阻止されるように、離隔壁を形成することができる。
プロセスボックスの一つの有利な実施の形態においては、プロセスボックスのケーシングが底面、カバー、並びに、それらの底面とカバーを相互に接続するフレームを有している。底面及びカバーは例えばそれぞれがプレートとして実現されており、その場合、底面及び/又はカバーは、底面の下面及び/又はカバーの上面に供給された熱放射の放射エネルギによって、コーティングされた基板を熱処理できる材料(例えばガラスセラミック)から形成されている。温度調整可能な(能動的に冷却可能な)ケーシングセクションは、少なくとも一つのフレームセクションによって形成される。同様に、中空部に開口している閉鎖可能な少なくとも一つのガス流路をフレームに設け、中空部を真空化し、所定のプロセスステップ中に、プロセス空間に所期のように所定のガス雰囲気を設定することができる。
プロセスボックスが組み立てられた状態では中空部が気密に形成されているが、例えばカバーをフレームから取り外し可能に形成することができるので、コーティングされた基板をプロセス空間に充填すること、又は処理された基板をプロセス空間から取り出すことを容易に実現することができる。プロセスボックスの特に有利な一つの実施の形態においては、フレームが、底部に固定されている第1のフレーム部と、カバーに固定されている第2のフレーム部とを有しており、中空部を形成するためにそれら二つのフレーム部を相互に気密に接合させることができる。
これに代わる一つの実施の形態では、プロセスボックスが、有利には温度調整可能な(能動的に冷却可能な)閉鎖部によって例えば側面において気密に閉鎖することができる一つのケーシング開口部が設けられているワンピースのケーシングセクションを備えたケーシングを有している。離隔壁は例えば閉鎖部に平行に設けられている。
更に本発明は、上述のように構成されているプロセスボックスと、そのプロセスボックスの熱処理に使用される少なくとも一つのケーシングセクションに隣接して配置されている、電磁熱放射を形成するための一つ又は複数の放射加熱器と、少なくとも一つの温度調整可能な(能動的に冷却可能な)ケーシングセクションを温度調整するために(能動的に冷却するために)、ケーシングセクションに熱技術的に結合されている、温度調整乃至冷却装置とを備えている、コーティングされた基板を処理するための装置に関する。
上述の装置において特に有利には、放射加熱器は、中間空間が少なくとも部分的に、特に完全に、放射加熱器の共通の放射場外に位置するように配置されている。この措置によって、離隔壁とプロセスボックスの温度調整可能な(能動的に冷却される)ケーシングセクションとの間に温度勾配(温度バリア)を生じさせることができる。コーティングされた基板を熱処理するためのプロセス温度が離隔壁において達成されている温度勾配が有利である。このために、放射加熱器を例えばプロセス空間の上方及び/又は下方にのみ配置することができる。
本発明の種々の構成は単独で、又は任意の組み合わせで実現できるものと解される。特に、上述の種々の特徴及び下記において説明する種々の特徴は、記述した組み合わせでのみ使用できるのではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、別の組み合わせでも使用することができるか、又は単独で使用することができる。
以下では、添付の図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図面は簡略化されたものであり、縮尺通りに描かれたものではない。
図1から図5A−5Fには、典型的な作業ポジションにおいて水平方向に配向されているプロセスボックスが図示されている。プロセスボックスを別の方向に配向させることもでき、また下記における位置及び方向についての記述は図面におけるプロセスボックスの描写についてのみ該当するのであって、従ってそれらの記述を限定的なものとして解するべきではない。
先ず図1及び図2を参照する。各図には、コーティングされた基板2を処理するためのプロセスボックス1の一般化された断面図(図1)、並びに、端面側の閉鎖部9を備えている、その種のプロセスボックス1の斜視図(図2)が示されている。
プロセスボックス1は、片面がコーティングされた基板2を処理するため、例えば前駆体層を熱処理して化合物半導体、特にカルコパイライト化合物に変換するために使用される。ここでは基板2を一つだけしか図示していないが、二つ以上の基板2を処理するためにもこのプロセスボックス1をやはり使用することができる。
プロセスボックス1は、ここでは例えば平行六面体状のケーシング3を有しており、またケーシング3は、底面壁5、カバー壁6及び周縁を成す側壁7から構成されているケーシング壁4を備えている。ケーシング壁4は気密な又は真空化可能な中空部11を画定する。この中空部11を取り外し可能な閉鎖部9によって気密に閉鎖することができる。図2に示されているように、ケーシング3は例えば端面側のケーシング開口部8を有しており、このケーシング開口部8を、側壁7の一部をなす、ドアのように取り付け可能な閉鎖部9によって閉鎖することができる。一般的に、ケーシング壁4の任意の壁セクションを自由に選択して、そこにケーシング開口部8及び所属の閉鎖部9を配置することができる。底面壁5は、中央の領域において、基板2の支持面として使用され、また底面壁5に相応のスペーサ又は支持エレメントを設けることもできる。
プロセスボックス1のケーシング壁4を、同一の一つの材料から形成することができるか、相互に異なる材料から形成することができる。典型的な材料として、金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、カーボンファイバで補強された炭素材料又はグラファイトが挙げられる。コーティングされた基板2の熱処理が、外部から電磁熱放射として供給される熱エネルギによって実現されるようにカバー壁6及び底面壁5がそれぞれ形成されていることが重要である。図1に概略的に示唆した装置10においては、カバー壁6の上方並びに底面壁5の下方に例えば列を成して配置されている放射加熱器12によって、熱エネルギを供給することができる。例えば、カバー壁6及び底面壁5はこのために、入射する電磁放射に対して透明又は少なくとも半透明である材料、例えばガラスセラミックから形成されている。カバー壁6及び底面壁5の一部だけをその種の材料から形成することも可能である。同様に、カバー壁6及び底面壁5を、電磁ビームを少なくとも部分的に、特に完全に吸収することによってそれ自体が加熱されることに適している材料、例えばグラファイトから形成することも可能である。その場合、カバー壁6及び底面壁5は受動的に加熱された二次熱源として使用される。
図2から見て取るように、ケーシング壁4、ここでは閉鎖部9には二つの冷却剤ポート13,13’が設けられており、それら二つの冷却剤ポート13,13’は、ここでは詳細に図示していない、周縁を成す側壁7の少なくとも一部に延びている、特に全体に延びている冷却剤管路系への冷却剤の流入部又は冷却剤管路系からの流出部として使用される。導入された冷却剤によって、側壁7を少なくとも部分的に、特に完全に、事前設定可能な温度に調整することができるか、又は、熱処理時の基板温度に関連させて能動的に冷却することができる。このために、冷却剤を供給及び冷却するための温度調整乃至冷却装置14に両冷却剤ポート13,13’を流体接続することができる。一般的に、プロセスボックス1においては、外部から電磁熱放射として供給される熱エネルギによる、コーティングされた基板2の熱処理に使用されないケーシングセクション、ここでは例えば周縁を成す側壁7又はその少なくとも一部のみが温度調整されるか、又は能動的に冷却される。この実施例においては、閉鎖部9のみが温度調整又は冷却される。冷却剤として、例えば油又は水を使用することができる。択一的に、温度調整又は能動的な冷却を、ヒートシンク(例えば冷却板)との接触による接触冷却(熱伝導)によって、若しくは送風(対流冷却)によって、又は、間隔を空けて設けられているヒートシンクを用いる非接触式の冷却(放射冷却)によって達成することができる。
ケーシング3は更に、弁15が設けられているガス流路16を有しており、このガス流路16は中空部11に開口している。ここでは例えば、ガス流路16が端面側の閉鎖部9に配置されている。ガスポート17を介してポンプ装置18(真空ポンプ)に接続されることによって、中空部11を真空化することができる。更に、ガスポート17をガス供給装置19に接続し、不活性パージガスを導入することによって中空部11をパージすることができる、及び/又は、中空部11に反応性プロセスガスを充填することができる。プロセスガスの充填は負圧又は正圧を用いて行うことができる。弁15(例えば多路弁)によって、ガス流路16を自由選択的に開放することができるか、又は気密に閉鎖することができる。中空部11は、例えば7mmから12mmまでの範囲の比較的低い内のりの高さを有しており、これによって、高速な真空化及びプロセスガスの効率的な充填を実現することができる。
中空部11は条片状の離隔壁20によって、プロセス空間21と中間空間22とに準気密に分けられている。コーティングされた基板2はプロセス空間21にのみ収容される。ガス流路16は中間空間22に開口している。離隔壁20には一つ又は複数の開口部又は貫通部が設けられており、それらによって、プロセス空間21及び中間空間22が流体接続される。
図1の垂直断面図から見て取れるように、垂直方向において底面壁5からカバー壁6の方向へと延びている離隔壁20は完全にはカバー壁6(の内側面)までは達していないので、離隔壁20の開口部として間隙23が残存している。図2には、離隔壁20がカバー壁6に達するまで延在しており、また離隔壁20のほぼ中央に、水平方向に一列に配置されている複数のスリット24が設けられているヴァリエーションが示されている。間隙23又はスリット24によってプロセス空間21は中間空間22と流体接続されているので、それによって相互的なガス交換が実現されるが、しかしながら、間隙23又はスリット24の垂直方向の寸法又は高さは小さいのでガス交換が抑制される。従って、離隔壁20はプロセス空間21と中間空間22との間の拡散バリア又は蒸気バリアとして機能する。
拡散バリア又は蒸気バリアとして機能する離隔壁20の特性は、自由行程の長さの圧力依存性を基礎としている。つまり、ほぼ常圧(700mbarから1000mbar)では、離隔壁20の比較的小さい(一つ又は複数の)開口部によって拡散が抑制される。これに対して、中間空間22がプレ真空領域の圧力(10μbarから1000μbar)にポンピングされると、自由行程の長さは大きく上昇し、離隔壁20はガス交換に対して弱い拡散バリアでしかなくなる。従って、離隔壁20を介してプロセス空間21をポンピングすることができ、またポンピング後にプロセスガスを中間空間22に流入させることによって、プロセス空間21にもプロセスガスを流すことができる。他方では離隔壁20によって、熱処理中にコーティングされた基板2から拡散/蒸発する、易揮発性のカルコゲン成分、例えばセレン又は硫黄のプロセス空間21における分圧を、基板2の熱処理中に少なくとも十分に一定に維持することができる。従って、離隔壁20は例えば、基板2の熱処理時のセレンバリアとして機能する。
一般的に、間隙23又はスリット24の(一つの共通の)開口部面積25は、コーティングされた基板2の熱処理中に、その基板2の熱処理によって生じるガス状物質のプロセス空間21からの質量損失が、その熱処理中にプロセス空間21において生じるガス状物質の質量の50%未満、有利には20%未満、特に有利には10%未満であるように決定されている。このために、開口部面積25を、プロセス空間21の内側の表面又は内面26の面積で除算することにより得られる面積比が5×10-5から5×10-4までの範囲にあるように、離隔壁20は形成されている。
例えば、プロセス空間21の内面26は約1.2m2の大きさを有している。間隙23の平均間隙高さは、2cm2から5cm2までの範囲の開口部面積25に応じて、例えば50μmから100μmまでの範囲にある。離隔壁20は例えば9mmの高さを有している。これらの値から、1.5×10-4の面積比が生じる。
蒸気バリア又は拡散バリアとして使用される離隔壁20によって、熱処理中にプロセス空間21において生じる揮発性の成分の中間空間22への拡散を少なくとも十分に阻止することができ、それによって、温度調整された(能動的に冷却された)側壁7における、ここでは特に閉鎖部9における揮発性の成分の凝縮が防止される。従って、プロセス空間21におけるプロセス雰囲気を少なくともほぼ一定に維持することができる。
図2に示されているように、中間空間22は少なくとも部分的に、特に完全に、放射加熱器12の(一つの共通の)放射場外に設けられているので、その結果、熱処理中に中間空間22においては、離隔壁20から温度調整される(能動的に冷却される)側壁7までの、ここで特に閉鎖部9までの温度勾配が生じる。この温度勾配は、プロセスボックス1の真空対応コンポーネントを高い熱負荷から保護するための「温度バリア」として使用される。このために、放射加熱器12は、離隔壁20の手前まで又は離隔壁20に達するまでの範囲において、プロセス空間21の上方又は下方にのみ配置されている。各放射加熱器12は少なくとも、中間空間22又は離隔壁20の数cm手前で終端している。他方では、基板2の前駆体層が化合物半導体に十分に変換されることを保証するために、コーティングされた基板2を熱処理するための所望のプロセス温度が、側壁7を起点にして、特に閉鎖部9を起点にして離隔壁20に達するまでの範囲、且つ、離隔壁20の高さよりも少し低い位置まで又は少なくとも離隔壁20の高さまでの範囲で達成される上昇温度勾配が生じるように放射加熱器12は配置されている。
図1に示した一般的な実施の形態においては、離隔壁20と、中間空間22と、側壁7の(一つ又は複数の)温度調整可能又は冷却可能なセクションとを、横方向において一つの方向にのみ、又は二つの方向に、又は周縁を成すように(フレーム状に)構成することができる。図2の実施の形態においては、離隔壁20と、中間空間22と、側壁7(閉鎖部9)の温度調整可能な又は冷却可能なセクションが一つの方向にのみ実施されている。
基板2は例えば、1mmから4mmまでの範囲、特に2mmから3mmまでの範囲の厚さを有するガラスから形成されている。基板2には、詳細には図示していない層状構造が設けられており、この層状構造は例えば、RTP熱処理を施さなければならない、吸収体(例えばカルコパイライト化合物又はケステライト化合物)の前駆体層から形成されている。例えば層状構造は、窒化ケイ素/モリブデン/銅−インジウム−ガリウム/セレンから成る一連の層である。例えば窒化ケイ素層は50nmから300nmまでの範囲の厚さを有しており、モリブデン層は200nmから700nmまでの範囲の厚さを有しており、銅−インジウム−ガリウム層は300nmから1000nmまでの範囲の厚さを有しており、また、セレン層は500nmから2000nmまでの範囲の厚さを有している。
オートメーション技術を用いることによってプロセスボックス1を簡単に組み立てることができ、またケーシング開口部8を介して充填又は搬出を行うことができる。その場合、基板2を内部に搬入することができるように、開閉時に離隔壁20を移動させる必要がある。
図3Aから図3Cを参照しながら、それらの種々の図に基づき、図1に一般的な形態で示したプロセスボックス1の別の実施例を説明する。
この実施例によれば、プロセスボックス1は底面プレート27を有しており、この底面プレート27の縁部領域には、周縁を成す閉じられたフレーム28が、固定はされていないが密閉可能に載置されている。フレーム28を底面プレート27に固定することも可能である。図3A及び図3Bの垂直断面図からもはっきりと見て取れるように、底面プレート27の中央の領域は基板2の支持部として使用され、また底面プレート27には相応のスペーサ又は支持エレメントを設けることもできる。フレーム28には平坦なカバープレート29が固定されずに載置されている。フレーム28からカバープレート29を取り外すことによって、特にオートメーション技術を用いることによって、プロセスボックス1にコーティングされた基板2を簡単に装填することができるか、又はプロセスボックス1から処理された基板2を取り出すことができる。図3Aには、カバープレート29が取り外された状態の開かれたプロセスボックス1が示されており、これに対し図3Bには、カバープレート29がフレーム28に載置されている状態の閉じられたプロセスボックス1が示されている。
プロセスボックス1においては、底面プレート27、フレーム28及びカバープレート29が相互に上下に積み重ねられるように配置されており、また一緒になって気密な又は真空化可能な中空部11を取り囲んでいる。中空部11は、フレーム28と同様に周縁を成すように閉じられている条片状の離隔壁20によって、(内側の)プロセス空間21と、そのプロセス空間21を包囲する(外側の)中間空間22とに準気密に分けられている。中間空間22はプロセス空間21を取り囲んでいる。図1と同様に、条片状の離隔壁20は、垂直方向において底面プレート27からカバープレート29の方向へと延びており、離隔壁20とカバープレート29との間には狭い間隙23が残存している。この間隙23を介してプロセス空間21は中間空間22と流体接続されているので、相互的なガス交換が実現されるが、しかしながら離隔壁20は拡散バリア又は蒸気バリアとして機能する。これについては図1の説明を参照されたい。
図3Cから見て取れるように、弁15が設けられているガス流路16はフレーム28を貫通して中間空間22に開口しており、これにより、中空部11を真空にし、不活性パージガス(例えばN2)によってパージし、また中空部11にプロセスガスを充填することができる。ガス流路16を介して導入されるプロセスガスは例えば、反応性ガス、例えばH2S、H2Se、S蒸気、Se蒸気又はH2、並びに、不活性ガス、例えばN2、He又はArを含有することができる。
更に図3Cから見て取れるように、フレーム28には二つの冷却剤ポート13,13’が設けられており、それら二つの冷却剤ポート13,13’は、フレーム28の広範囲に延びている、詳細には図示していない冷却剤管路系への冷却剤の流入部又は冷却剤管路系からの冷却剤の流出部として使用される。フレーム28に導入される冷却剤によって、基板2の熱処理中に、また必要に応じて基板2の熱処理後に、フレーム28を温度調整(能動的に冷却)することができる。このために、二つの冷却剤ポート13,13’は、冷却剤を供給及び冷却するための冷却装置14と流体接続されている。フレーム28は有利には、熱伝導率が高い材料、例えば金属材料、特に特殊鋼から形成されている。
底面プレート27及びカバープレート29はそれぞれ、コーティングされた基板2の熱処理が、プロセスボックス1の上側又は下側から電磁熱放射として供給される熱エネルギによって実現されるように形成されている。これについては図1の説明を参照されたい。例えば、このために底面プレート27及びカバープレート29はガラスセラミックから形成されている。
蒸気バリア又は拡散バリアとして使用される離隔壁20によって、熱処理中にプロセス空間21において生じる揮発性の成分の中間空間22への拡散を少なくとも十分に阻止することができ、それによって、温度調整された(能動的に冷却された)フレーム28における揮発性の成分の凝縮が防止される。従って、プロセス空間21におけるプロセス雰囲気を少なくともほぼ一定に維持することができる。
図4には、図3Aから図3Cに示したプロセスボックス1の一つのヴァリエーションが示されている。再説は行わず、ここでは図3Aから図3Cとの相異のみを説明する。同一の点については図3Aから図3Cの説明を参照されたい。この図4に示した実施例によれば、フレーム28が二つのフレームパーツ30,31から構成されており、それら二つのフレームパーツ30,31を相互に気密に接合できるという点において、プロセスボックス1が相異している。つまり、下側には第1のフレームパーツ30が設けられており、この第1のフレームパーツ30は第1の支持面32を有しており、この第1の支持面32に対して底面プレート27が第1のクランプエレメント34を用いたクランプによって固定されている。相応に、上側には第2のフレームパーツ31が設けられており、この第2のフレームパーツ31は第2の支持面33を有しており、この第2の支持面33に対してカバープレート29が第2のクランプエレメント35を用いたクランプによって固定されている。両向きの矢印によって示唆されているように、第2のフレームパーツ31を第1のフレームパーツ30から引き上げ、それによりプロセスボックス1に基板2を装填することができるか、又は、処理された基板2をプロセスボックス1から取り出すことができる。その一方で、二つのフレームパーツ30,31を気密に接合することもでき、その場合には、必要とされる気密性がシーリングエレメント36によって保証されている。プロセスボックス1は、充填及び搬出を非常に簡単にオートメーション技術化可能である点で優れている。
次に図5Aから図5Fを参照する。各図には、プロセスボックス1の離隔壁20の種々のヴァリエーションが示されている。それらの図に示されている各離隔壁は温度制御型の離隔壁20であって、その温度制御のために離隔壁20は、各開口部又は各貫通部の総開口部面積25を熱処理中の離隔壁20の加熱によって、初期値(熱処理前の総開口部面積25)の最大で50%まで、有利には最大で30%まで、更に有利には最大で10%まで減少させる熱膨張率を有する材料から形成されている。このために、離隔壁20は5×10-6K-1よりも高い熱膨張率を有する材料から形成されている。その種の材料の例として、9×10-6K-1の熱膨張率を有する所定のガラスセラミック、6.5×10-6K-1から9×10-6K-1までの範囲の熱膨張率を有する酸化アルミニウム(Al2O3)、10×10-6K-1から13×10-6K-1までの範囲の熱膨張率を有する酸化マグネシウム及び酸化ジルコンが挙げられる。また離隔壁20の材料は耐熱性且つ耐食性でなければならない。
図5A及び図5Bには、垂直に延びる条片として形成されている、プロセスボックス1の離隔壁20が垂直断面図でそれぞれ示されている。それらの図から見て取れるように、離隔壁20はカバー壁6又はカバープレート29までは達しておらず、従ってプロセス空間21と中間空間22の流体接続のための開口部としての間隙23が残存している。図5Aには、側壁7又はフレーム28がT=150℃の温度に温度調整されており、その一方で離隔壁20はT=50℃の温度を有している状況が示されている。離隔壁20の材料の温度は比較的低いので、間隙23は大きく開かれている。間隙23の垂直方向の寸法又は平均間隙高さ(内のりの幅)は、離隔壁20の高さが約10mmの場合には、50μmから100μmの範囲である。加熱時に離隔壁20の材料は比較的大きく膨張し、その際に、平均間隙高さは減少する(図5Bを参照されたい)。例えば、離隔壁をT=450℃の温度に加熱すると(400℃の温度差)、離隔壁20の垂直方向の寸法の約40μmの変化が生じ、その結果、間隙23の平均間隙高さは10μmから50μmの範囲の値まで、即ち初期値の最大で50%まで減少する。
図5C及び図5Dには、離隔壁20の一つのヴァリエーションが平面図で示されている。再説は行わず、ここでは図5A及び図5Bとの相異のみを説明する。同一の点については図5A及び図5Bの説明を参照されたい。図5C及び図5Dから見て取れるように、条片状の離隔壁20は底面壁5又は底面プレート27からカバー壁6又はカバープレート29まで延在しており、離隔壁20の貫通部として、垂直に延びる一つ又は複数の間隙23が形成されている。水平方向に規定されている間隙幅は50μmから100μmまでの範囲にある(図5Cを参照されたい)。10mmの高さとの比較において、二つの間隙23間の離隔壁領域の寸法が大きいことによって、離隔壁20を例えばT=450℃の温度に加熱した際には、例えば数100μmの値にもなる比較的大きいストロークを達成することができる。特にその場合には、間隙23の総開口部面積を、例えば初期値の最大で50%まで減少させることができる。
図5E及び図5Fには、離隔壁20の別のヴァリエーションが平面図で示されている。再説は行わず、ここでもまた図5A及び図5Bとの相異のみを説明する。同一の点については図5A及び図5Bの説明を参照されたい。図5E及び図5Fから見て取れるように、ここでは、間隙23が一つだけ設けられる代わりに、複数の円孔37が設けられており、各円孔37は離隔壁20の貫通部として形成されている。離隔壁20の温度が例えばT=150℃である状況(図5Eを参照されたい)から出発して、離隔壁20が例えばT=450℃の温度に加熱されることによって、円孔37の開口部直径が低減される(図5Fを参照されたい)。特に、円孔37の総開口部面積を、例えば初期値の最大で50%まで減少させることができる。
次に図6を参照する。この図6には、コーティングされた基板2を図1から図5A−5Fによるプロセスボックス1において処理するためのシステム100の一つの実施例が概略的な平面図で示されている。このシステム100は薄膜ソーラーモジュールを製造するために、コーティングされた基板2のRTP熱処理を実施するように設計されている。各基板2は、吸収体として使用される化合物半導体、特にカルコパイライト化合物又はケステライト化合物のタイプの前駆体層でコーティングされている。
図6から見て取れるように、システム100はコーティングされた基板2をプロセスボックス1において処理するための種々のユニット101−104を有しており、それらのユニット101−104はここでは一種のインラインシステムとして相前後して配置されている。それらの種々のユニット101−104は、真空化可能なプロセスチャンバとしては構成されておらず、機能的且つ構造的に個別化可能な処理ユニットとして、システムケーシング107によって画定されている一つの共通のシステムチャンバ106内に配置されている。各ユニット101−104をシステムチャンバ106において開かれた状態で配置することができるが、しかしながら各ユニット101−104は真空化できない別個のデバイスケーシングによって包囲されている。有利には、各ユニットのケーシングは排気口に接続されている。ここでは、システム100においてプロセスボックス1のみが真空化可能なシステムコンポーネントとして使用されることが重要である。システム100はプロセスボックス1以外に真空化可能なコンポーネントを有していないので、コーティングされた基板をRTP熱処理するための従来のインラインシステムに比べて、技術的に遙かに簡単に実現することができ、またシステム100の設備投資費用も大幅に削減されている。
図6から見て取れるように、システム100は列を成して配置されている複数のユニット101−104を有しており、それらの複数のユニット101−104には、充填ユニット103、加熱ユニット101、冷却ユニット102及び搬出ユニット104が含まれており、また記載の順序で、プロセスボックス1のための循環搬送区間(閉じられた搬送区間)に沿って配置されている。
充填ユニット103は、オートメーション技術を用いて、プロセスボックス1にコーティングされた基板2を充填するために使用される。このために、充填ユニット103は、プロセスボックス1を開閉するための、ロジック制御又はプログラム制御されるグリップ機関を有しており、このグリップ機関は、プロセスボックス1への搬入に関するコーティングされた基板2の運搬に使用される。基板2を運搬するために、別個のグリップ機関を設けることもできる。更に、充填ユニット103には、プロセスボックス1の中空部11を真空化するためのポンプ装置18と、パージガス及び/又はプロセスガスをプロセスボックス1に供給するためのガス供給装置19とが統合されており、各装置をプロセスボックス1のガスポート17に接続することができる。
加熱ユニット101は、プロセスボックス1に搬入された基板2を加熱及び熱処理し、それによって前駆体層を化合物半導体に変換するために使用される。加熱ユニット101はこのために複数の放射加熱器12を有しており、それらの放射加熱器12は例えばプロセスボックス1の上方及び下方にそれぞれ一列ずつ配置されている。放射加熱器12の相応の配置構成は図3Bに示されている。更に、加熱ユニット101には、基板2の熱処理の間にプロセスボックス1のケーシングセクションを温度調整又は能動的に冷却するための温度調整乃至冷却装置14が統合されている。
冷却ユニット102は、熱処理後の高温の基板2を能動的に冷却するために使用され、またそのために、プロセスボックス1に設置されているヒートシンク、例えば冷却板による接触冷却(熱伝導)、及び/若しくは、例えば循環する空気流、アルゴン流又は窒素流の送風による冷却(対流冷却)、及び/若しくは、プロセスボックス1の上方並びに/又は下方に配置されているヒートシンク、例えば冷却板を用いる非接触式の冷却(放射冷却)を実現するように構成されている。
搬出ユニット104は、オートメーション技術を用いて、処理された基板2をプロセスボックス1から取り出すために使用される。このために、搬出ユニット104は充填ユニット103と同様に、プロセスボックス1を開閉するための、ロジック制御又はプログラム制御されるグリップ機関を有している。
図6のシステム100においては、コーティングされた各基板2を複数のプロセスボックス1において同時に処理することができ、また種々のユニット101−104に順次連続して引き渡すことができ、このために、搬送区間に沿ってプロセスボックス1を搬送するための、詳細には図示していない単方向搬送機構108が設けられている。プロセスボックス1の搬送は例えば、プロセスボックス1の底部の下面を支持する駆動型の搬送ローラ(例えばスタブローラ)上で行われる。ユニット101−104外での搬送速度は例えば最大で1m/sである。
システム100の運転を具体的な例を用いて説明するが、処理の経過をより分かり易く説明するために、図6に示したユニット101−104の幾何学的な配置構成を参照する。
先ず、コーティングされた基板2が充填ユニット103へと運ばれ、その充填ユニット103においてプロセスボックス1に基板2が充填される。その際に、グリップ機関を用いてプロセスボックス1が開かれ、基板2がプロセスボックス1内に搬入され、続いてプロセスボックス1が再び閉じられる。更に、基板2が充填されたプロセスボックス1の中空部11がポンプ装置18の駆動によってポンピング又は真空化され、酸素及び水が中空部11から除去される。このために、ポンプ装置18がプロセスボックス1のガスポート17に自動的に接続される。ガスポート17は続いてガス供給装置19に接続され、基板2が充填されている中空部11が不活性パージガス(例えばN2,He又はAr)によってパージされる。ポンピングプロセス及びパージプロセスを必要に応じて反復的に何度も行うことができる。続いて、プロセスボックス1の中空部11にはプロセスガス(例えば、反応性ガス、例えばH2S、H2Se、S蒸気、Se蒸気、並びに、不活性ガス、例えばN2、He又はAr)が充填される。例えば、プロセスガスとしてH2Sが(200mbarから400mbarまでの圧力で)供給される。プロセスボックス1へのガス供給は負圧又は正圧を用いて行うことができる。
ポンプ装置18及びガス供給装置19を、例えば多路弁15を介して、共通してガスポート17に接続することもできる。プロセスボックス1はこの時点で、コーティングされた基板2を熱処理する準備が整っている。
プロセスボックス1からポンプ装置18及びガス供給装置19を分離させた後に、プロセスボックス1は充填ユニット103から加熱ユニット101へと搬送され、プロセスボックス1の二つの冷却材ポート13,13’が冷却装置14に接続される。続いて、前駆体層のRTP熱処理が実施され、コーティングされた基板2が放射加熱器12によって、例えば1℃/sから50℃/sまでの加熱速度で、例えば350℃から800℃までの温度、特に400℃から600℃までの温度に加熱される。例えば、銅、インジウム、ガリウム及びセレンから成る前駆体層が、硫黄及び/又はセレンを含む雰囲気で、化合物Cu(In,Ga)(S,Se)2の半導体層に変換される。例えば、プロセスボックス1における純粋なH2Sの800mbar未満の圧力でセレン化及び硫化が行われる。
加熱ユニット101による熱処理の間に、プロセスボックス1のフレーム28が、循環している冷却剤によって例えば150℃の温度に温度調整されるか、又は冷却される。熱処理後に、冷却装置14はプロセスボックス1から取り外される。択一的に、フレーム28の温度調整又は冷却のために、例えば、ヒートシンクを用いた熱伝導による接触冷却、ヒートシンクを用いた放射冷却、又は、対流冷却が行われても良い。
続いて、プロセスボックス1が加熱ユニット101から冷却ユニット102へと搬送され、高温の基板2が冷却ユニット102によって冷却される。高温の基板2は例えば最大で50℃/sの加熱速度で、プロセス技術的に必要とされる温度、例えば10℃から380℃までの温度に冷却される。付加的に、二つの冷却剤ポート13,13’において流入又は流出する循環冷却剤によって冷却を行うこともできる。このために、相応に設計された冷却ユニット102が二つの冷却剤ポート13,13’に接続される。
基板2が所望の温度に達すると、プロセスボックス1は冷却ユニット102から搬出ユニット104へと搬送され、この搬出ユニット104においては、グリップ機関によってプロセスボックス1が開かれ、処理された基板2がプロセスボックス1から取り出され、この処理された基板2を、薄膜ソーラーモジュールの製造のために更なる処理部に引き渡すことができる。続いて、プロセスボックス1は再び閉じられ、搬送区間に沿って充填ユニット103に引き渡され、その充填ユニット103によって、プロセスボックス1に処理すべき基板2を再び充填することができる。充填又は搬出の行われたプロセスボックス1は搬送区間を周回する。
図6に基づき説明したインラインシステム100にはバッチ方式で充填を行うことができ、種々のユニット101−104において、充填されたプロセスボックス1を同時に処理することができる。特に、高温の基板2を冷却ユニット102において能動的に冷却することができ、その一方で、別の基板2には加熱ユニット101においてRTP熱処理が実施される。それと同時に、充填ユニット103においてプロセスボックス1の充填を行うことができ、また搬出ユニット104においてプロセスボックス1からの搬出を行なうことができる。各プロセスボックス1を、所定のタイミング又は周期時間に従い、各ユニットから後続のユニットに送り出すことができる。
図6には示されていないが、システム100が複数の加熱ユニット101、及び/若しくは、複数の冷却ユニット102、及び/若しくは、一つ又は複数の冷却区間を有することもできる。
システム100においては、真空化可能なプロセスボックス1が使用されることによって、且つ、(従来のインラインシステムとは異なり)ユニット101−104の真空化、又は、それらのユニット101−104に対する制御されたプロセス雰囲気の設定を必要としないことによって、基本的には、プロセスボックス1を固定したままで、各ユニットだけを、即ち充填ユニット103、搬出ユニット104、加熱ユニット101及び冷却ユニット102だけを、固定されているプロセスボックス1に相対的にそれぞれ移動させることが可能である。つまり、所定の位置に搬送されてきた充填ユニット103によって、固定されているプロセスボックス1を開き、プロセスボックス1にコーティングされた基板2を充填し、続いて再びプロセスボックス1を閉じることも可能である。プロセスボックス1の中空部11のポンピング、パージ及びプロセスガスの充填が行われた後、且つ、充填ユニット103が離された後に、加熱ユニット101の放射加熱器12が所定の位置に搬送され、コーティングされた基板2の熱処理が実施される。続いて放射加熱器12が離され、高温の基板2を冷却するために冷却ユニット102が所定の位置に搬送される。最後に、冷却ユニット102が離され、基板が充填されているプロセスボックス1が搬出ユニット104によって開かれ、処理された基板2がプロセスボックス1から取り出される。このために、種々のユニット101−104を例えば一緒に(同期させて)、搬送機構108によって、循環プロセス経路に沿って移動させることができる。しかしながらまた、種々のユニット101−104を個別に移動させることも可能である。固定されている複数の各プロセスボックス1において基板2を同時に処理することも容易に実現できる。それらの固定されているプロセスボックス1には、ポンプ装置18、ガス供給装置19及び冷却装置14の各装置を常時結合したままにすることができる。
つまり種々のユニット101−104を真空化可能なプロセスチャンバとして実施する必要がないので、コーティングされた基板2を処理するためのシステム100は、コーティングされた基板をRTP熱処理するための従来のインラインシステムとは根本的に異なる。更に、システム100は真空化可能な流入ロック室及び流出ロック室を必要とせず、またシステム100の真空対応領域には可動コンポーネントは存在しないので、放射加熱器、搬送ローラのようなシステムコンポーネント及び他のコンポーネントを廉価に実現することができ、またそれらのコンポーネントに容易にアクセスすることができる。プロセスボックス1だけが唯一の真空対応コンポーネントである。プロセスボックス1が故障した際、またプロセスボックス1に漏れが発生した際には、個々のプロセスボックス1を交換するだけでよく、それによってシステム100を再び運転させることができる。固定されているプロセスボックス1内の基板2の熱処理も問題なく実現される。
図7を参照しながら、概略的な平面図に基づき、図1から図5A−5Fによるプロセスボックスにおいて基板を処理するためのシステム100に関する別の実施例を説明する。再説は行わず、ここでは図6のシステム100との相異のみを説明する。同一の点については図6の説明を参照されたい。
図7から見て取れるように、システム100は列を成して配置されている複数のユニットを有しており、それら複数のユニットには、加熱ユニット101、二つの冷却ユニット及び二つの充填/搬出ユニット105が含まれ、ここでは、二つの冷却ユニット102が加熱ユニット101の両側に設けられており、また、二つの充填/搬出ユニット105の間には、他のユニット101,102が設けられている。
二つの充填/搬出ユニット105は相互に同じ構造を有しており、オートメーション技術を用いてプロセスボックス1にコーティングされた基板2を充填するため、また、オートメーション技術を用いてプロセスボックス1から熱処理された基板2を取り出すためにそれぞれ使用される。このためにグリップ機関が設けられている。更に、各充填/搬出ユニット105は、プロセスボックス1の中空部11の真空化のためのポンプ装置18と、パージガス及び/又はプロセスガスをプロセスボックス1に導入するためのガス供給装置19とを有しており、各装置をプロセスボックス1のガスポート17に接続することができる。加熱ユニット101及び冷却ユニット102は図6に示したシステム100におけるものと同じ構造を有している。
図7のシステム100においては、コーティングされた基板2を搬送可能な二つのプロセスボックス1において同時に処理することができ、またこのシステム100においては、それらのプロセスボックス1に種々のユニットを順次連続して引き渡すことができ、このために、詳細には図示していない双方向搬送機構108が設けられている。
システム100の運転を具体的な例を用いて説明するが、処理の経過をより分かり易く説明するために、図7に示したユニット101,102,105の幾何学的な配置構成を参照する。
先ず、第1の基板2が右側の充填/搬出ユニット105へと運ばれ、そこにおいて第1のプロセスボックス1に基板2が充填され、続いてプロセスボックス1の中空部11が真空化され、パージガスによってパージされ、またプロセスガスが充填される。それに続いて、第1のプロセスボックス1が加熱ユニット101へと搬送され、RTP熱処理が実施される。RTP熱処理の終了後に、第1のプロセスボックス1が右側の冷却ユニット102へと搬送され、高温の第1の基板2が冷却ユニット102によって冷却される。
更に、加熱ユニット101による第1の基板2の熱処理の間に、第2の基板2が左側の充填/搬出ユニット105へと搬送され、第2のプロセスボックス1に充填され、第2の基板2が充填された第2のプロセスボックス1の中空部11が真空化され、パージガスによってパージされ、またプロセスガスが充填される。加熱ユニット101から右側の冷却ユニット102への第1のプロセスボックス1の搬送に続いて、第2のプロセスボックス1が加熱ユニット101へと運ばれ、第2の基板2が熱処理される。
更に、第2の基板2の熱処理の間に、冷却された第1の基板2が右側の充填/搬出ユニット105へと搬送され、第1のプロセスボックスから取り出される。続いて、右側の充填/搬出ユニット105によって、第1のプロセスボックス1には別の基板2が充填され、プロセスボックスの真空化、パージガスによるパージ及びプロセスガスの充填が行われ、それによって熱処理の準備がなされる。
加熱ユニット101内に存在する第2の基板2の熱処理が終了すると、第2のプロセスボックスが左側の冷却ユニット102へと搬送され、高温の第2の基板2が冷却される。それに続いて、別の基板が充填されている第1のプロセスボックス1が加熱ユニット101へと搬送され、その別の基板が熱処理される。
従って、図7のシステム100においては、二つのプロセスボックス1が加熱ユニット101と左側の充填/搬出ユニット105又は右側の充填/搬出ユニット105との間を往復運動する。その際、各プロセスボックス1は比較的短い搬送路しか移動しないので、ポンプ装置18、ガス供給装置19及び冷却装置14の各装置を、例えば可撓性の管路(例えばゴム管)を介して、二つのプロセスボックス1に常時結合したままにすることができる。
従って、図7のシステム100においては、二つの充填/搬出ユニット105及び二つの冷却ユニット102によって、一方の基板2を一方の加熱ユニット101によって熱処理し、その間に、二つの冷却ユニット102の内の一方によって、別の基板2をその熱処理後に冷却できることから、コーティングされた二つの基板2を同時に処理することができる。高温の基板2を冷却するための時間は一般的に、その基板を熱処理するための時間よりも長いので、加熱ユニット101に冷却ユニット102が一つだけ対応付けられている場合に比べて、加熱ユニット101の利用時間を拡大することができる。加熱ユニット101をより集中的に最大限利用することによって、処理される基板2のスループットを高めることができ、また薄膜ソーラーモジュール当たりの製造コストを低減することができる。
ユニット101,102,105はインラインシステムとは異なり、単方向でプロセスボックス1を通過するものではないので、それらのユニット101,102,105を一列に配置せずに、例えば相互にずらして、又はスター型に配置しても良い。
図7のシステム100に対しては、各ユニット101,102,105を固定されているプロセスボックス1に関して比較的短い搬送路上で往復運動させることのみが必要とされるので、この図7のシステム100によっても、図6のシステム100に関連させて既に説明したように各基板2を固定されているプロセスボックス1において処理することを非常に簡単に実現することができる。各ユニット101,102,105を例えば一緒に(同期させて)搬送することも可能であり、その場合、右側の充填/搬出ユニット105は、ユニット101,102,105を一緒に移動させる際に、1ポジション分右側にスライドされ、また左側の充填/搬出ユニット105は、ユニット101,102,105を一緒に移動させる際に、1ポジション分左側にスライドされる。ユニット101,102,105を例えば、プロセスボックス1の上方の二つの作業レベルにおいて搬送することも可能である。その場合には、例えば、右側のプロセスボックス1に基板2を充填した後に加熱ユニット101をプロセスボックス1へと搬送するために、右側の充填/搬出ユニット105を上方に運ぶことができる。また、加熱ユニット101を右側の冷却ユニット102の向こう側へと運ぶ必要があるが、このことは冷却ユニット102を同様に上方の作業レベルに待避させることによって行うことができる。このことは左側の充填/搬出ユニット105及び左側の冷却ユニット102に関しても当てはまる。
具体的には、例えば、第1の基板2が右側の充填/搬出ユニット105によって第1のプロセスボックス1に充填され、続いて、右側の充填/搬出ユニット105が上方に移動されて第2の作業面へと運ばれ、続いて、加熱ユニット101が第1のプロセスボックス1へと運ばれる。第1の基板2を熱処理している間に、第2の基板2が左側の充填/搬出ユニット105によって第2のプロセスボックス1に充填される。続いて、第2の基板2を熱処理するために、加熱ユニット101が第1のプロセスボックス1から第2のプロセスボックス1へと運ばれる。続いて、第1の基板2を冷却するために第1の冷却ユニット102が第1のプロセスボックス1へと運ばれ、第1の基板2の冷却後に、第1の基板2を第1のプロセスボックス1から取り出すために、右側の充填/搬出ユニット105が所定の位置へと運ばれる。相応に、第2の基板2の熱処理後には、第2の基板2を冷却するために、第2の冷却ユニット102が第2のプロセスボックス1へと移動され、第2の基板2の冷却後に、第2の基板2を第2のプロセスボックス1から取り出すために、左側の充填/搬出ユニット105が所定の位置へと運ばれる。
薄膜ソーラーモジュールを製造する工場においては、複数のその種のシステム100を、例えば複数のシステム100が積み重ねられて並べて配置されている装置において、並行して稼働させることができる。
図8を参照しながら、概略的な平面図に基づき、図1から図5A−5Fによるプロセスボックスにおいて基板を処理するためのシステム100に関する一つの別の実施例を説明する。再説は行わず、ここでもまた図6のシステム100との相異のみを説明する。同一の点については図6の説明を参照されたい。
この図8から見て取れるように、システム100は、それぞれが、一つの冷却ユニット102と、一つの加熱ユニット101と、一つの冷却ユニット102と、一つの充填/搬出ユニット105とから成る、複数のユニットグループ109又はユニットシリーズが列を成すように配置された構成を有している。つまり、このシステム100は図7に示したシステム100を複数個シリアルに配置したものから成ると解することができる。充填/搬出ユニット105は図7に示したシステム100におけるものと同じ構造を有している。基板は、プロセス経路に並行して延びる二つの搬送ライン110を介して一方の側においてのみ運ばれ、一方の搬送ライン110は処理すべき基板2を搬入するために使用され、他方の搬送ライン110は処理された基板2を搬出するために使用される。各基板2は、プロセス経路を横断する方向において、充填/搬出ユニット105に運ばれるか、又は充填/搬出ユニット105から取り出される。図8のシステム100において重要であることは、各充填/搬出ユニット105が両側に隣接して設けられている加熱ユニット101及び冷却ユニット102に機能的に対応付けられていることである。通常の場合、基板2を処理するための経過は、図7に関連させて既に説明した処理の経過に対応している。従って、処理の経過に関しては図7の説明を参照されたい。
図9を参照しながら、概略的な平面図に基づき、図1から図5A−5Fによるプロセスボックス1において基板2を処理するためのシステム100に関する一つの別の実施例を説明する。再説は行わず、ここでもまた図6のシステム100との相異のみを説明する。同一の点については図6の説明を参照されたい。
この図9から見て取れるように、システム100は、それぞれが、一つの冷却ユニット102と、一つの加熱ユニット101と、一つの充填/搬出ユニット105とから成る、複数のユニットグループ109又はユニットシリーズが列を成すように配置された構成を有している。充填/搬出ユニット105は図7に示したシステム100におけるものと同じ構造を有している。このシステム100では、各充填/搬出ユニット105が、一方の側において接している加熱ユニット101及び冷却ユニット102にのみ、ここでは例えば左側の二つのユニットにのみ機能的に対応付けられている。基板は、二つの搬送ライン110を介して一方の側においてのみ運ばれ、一方の搬送ライン110は処理すべき基板2を搬入するために使用され、他方の搬送ライン110は処理された基板2を搬出するために使用される。各基板2は、プロセス経路を横断する方向において、充填/搬出ユニット105に運ばれるか、又は充填/搬出ユニット105から取り出される。
図9のシステム100においては、例えば複数のプロセスボックス1が同期して、固定されているプロセスユニット101,102,105に相対的に往復運動するので、加熱フェーズ及び冷却フェーズを正確に調整する必要がある。第1のステップにおいては、各充填/搬出ユニット105内に存在する、基板2の充填された複数のプロセスボックス1が同期して、加熱ユニット101に向かって1ポジション分左側に搬送される(択一的に、複数のプロセスボックス1を同期させて、2ポジション分右側にスライドさせることも可能である)。熱処理後に、第2のステップにおいては、全てのプロセスボックス1が同期して、冷却ユニット102に向かって更に1ポジション分左側に搬送される(択一的に、複数のプロセスボックス1を同期させて、2ポジション分右側にスライドさせることも可能である)。高温の基板2の冷却後に、第3のステップにおいては、全てのプロセスボックス1が同期して、充填/搬出ユニット105に向かって2ポジション分右側に搬送される(択一的に、複数のプロセスボックス1を同期させて、1ポジション分左側にスライドさせることも可能である)。ここでプロセスボックス1の搬出が行われ、続いてこの周期(3/3サイクル)を最初から開始することができる。
図9のシステム100に対しては、各ユニット101,102,105を固定されているプロセスボックス1に関して比較的短い搬送路上で、同期させて(一緒に)3/3サイクルで往復運動させることのみが必要とされるので、この図9のシステム100によっても、各基板2を固定されている各プロセスボックス1において処理することを非常に簡単に実現することができる。ポンプ装置18、ガス供給装置19及び冷却装置14の各装置を、例えば可撓性のゴム管を介して、各プロセスボックス1に常時結合したままにすることができる。