[第1の実施形態]
以下に、本発明の第1の実施形態について説明する。
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態に係る基板処理装置10の構成について、図面を参照しながら説明する。
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る基板処理装置10の斜視図である。図1に示すように、基板処理装置10はバッチ式縦型熱処理装置として構成されている。基板処理装置10は、内部に処理炉40などの主要部が設けられる筐体12を備えている。筐体12内への基板搬送容器(ウエハキャリア)としては、ポッド16が用いられる。ポッド16内には、例えばシリコン(Si)又は炭化珪素(SiC)等で構成された基板としてのウエハ14が、例えば25枚収納されるように構成されている。筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されている。ポッド16は、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18上に載置されるように構成されている。
筐体12内の正面側(図1の右側)であってポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が設けられている。ポッド搬送装置20の近傍には、ポッド載置棚22、ポッドオープナ24及びウエハ枚数検出器26が設けられている。ポッド載置棚22は、ポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。ウエハ枚数検出器26は、ポッドオープナ24に隣接して設けられる。ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18とポッド載置棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送するように構成されている。ポッドオープナ24は、ポッド16の蓋を開けるように構成されている。ウエハ枚数検出器26は、蓋を開けられたポッド16内のウエハ14の枚数を検知するように構成されている。
筐体12内には、ウエハ移載機28、基板支持具としてのボート30が設けられている。ウエハ移載機28は、アーム(ツィーザ)32を有し、図示しない駆動手段により、上下動作及び回転動作が可能な構造になっている。アーム32は、例えば5枚のウエハ14を同時に取り出すことができるように構成されている。アーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にて、ウエハ14が搬送されるように構成されている。
ボート30は、例えば1500℃〜1800℃の温度に耐えうるカーボングラファイトや炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ14を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持するように構成されている。
筐体12内の背面側上部には、処理炉40が設けられている。処理炉40内には、複数枚のウエハ14を装填したボート30が下方から搬入されるように構成されている。
<処理炉の構成>
次に、本発明の第1の実施形態に係る処理炉40について、主に図2から図4を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る処理炉40の側面断面図である。図3は、本実施形態に係る処理炉40が備えるガス供給系を例示する構成図である。図4は、本実施形態に係る処理炉40の上面断面図である。
(反応容器)
図2に示すように、処理炉40は反応管42を備えている。反応管42は、例えば石英
(SiO2)またはSiC等の耐熱材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管42内の筒中空部には、後述する被誘導体48で囲われた処理室43が形成されている。処理室43は、例えばSi又はSiC等で構成された基板としてのウエハ14を、ボート30によって水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持した状態で収納可能に構成されている。ボート30の下部には、例えばグラファイトやSiC等の耐熱性材料で構成された円盤形状の断熱部材としてのボート断熱部34が配置されている。ボート断熱部34は、後述する被誘導体48からの熱を処理炉40の下方側に伝え難くするように構成されている。
反応管42の下方には、支持部としてのマニホールド46が反応管42と同心円状に設けられている。マニホールド46は例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成され、ボート30が搬入及び搬出できるようになっている。マニホールド46は反応管42を下方から支持するように設けられている。マニホールド46と反応管42との間には、シール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。マニホールド46が図示しない保持体に支持されることにより、反応管42は垂直に据えつけられた状態になっている。主に、反応管42とマニホールド46とにより気密に密閉された反応容器が形成されている。
(加熱部)
処理炉40は、誘導加熱により加熱される被誘導体48及び磁場を発生させて誘導加熱を行なう誘導体としての誘導コイル50を備えている。被誘導体48は、例えばグラファイト等からなり、処理室43を囲うように設けられている。被誘導体48は例えば図示しない金具等の連結部材によりマニホールド46に据え付けられており、被誘導体48の下端がマニホールド46によって支持された状態となっている。このとき、被誘導体48の下端の一部とマニホールド46の上端の一部との間に隙間が生じる場合があるほか、被誘導体48は必ずしも処理室43内を密閉に閉塞するようには構成されておらず、後述するように、処理室43内に供給した処理ガスが内側断熱材54側へと進入する場合がある。誘導コイル50は、反応管42の外部に、反応管42の外周を囲うように設けられている。誘導コイル50には、図示しない交流電源から、例えば10kHz〜100kHz、10kW〜200kWの交流電力が供給されるように構成されている。誘導コイル50に交流電流を流すことで、被誘導体48に交流磁場が印加されて誘導電流が流れ、被誘導体48が発熱するように構成されている。被誘導体48が発熱することで、被誘導体48から発せられる輻射等のエネルギーにより、ボート30に保持されたウエハ14や処理室43内が例えば1500℃〜1800℃の温度に加熱されるように構成されている。
被誘導体48の温度は、例えば誘導コイル50の外側に設置された温度検出体としての放射温度計11により検出される。誘導コイル50及び放射温度計11には、後述する制御部としてのコントローラ152が備える温度制御部53が電気的に接続されている(図7参照)。温度制御部53は、放射温度計11により検出された温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合を調節することにより、処理室43内の温度が所定のタイミングにて所定の温度分布となるよう制御するように構成されている。
被誘導体48と反応管42との間には、例えば被誘導体48からの輻射等のエネルギー、特に赤外線等が外側へ伝達するのを抑制する断熱体としての内側断熱材54が設けられている。内側断熱材54は例えばフェルト状カーボン又は炭化タンタル(TaC)等の耐食材料によりコーティングされたフェルト状カーボン等で構成されている。内側断熱材54は、例えば図示しない金具等の連結部材によりマニホールド46に据え付けられ、内側断熱材54の下端がマニホールド46によって支持された状態となっている。内側断熱材54を設けることにより、被誘導体48からのエネルギーが反応管42あるいは反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができ、処理室43内を所定の温度に維持すること
ができる。また、誘導コイル50の外側には反応管42を囲むようにして、例えば水冷構造体である外側断熱材56が設けられている。外側断熱材56は反応管42内のエネルギーが外側に伝達するのを抑制するように構成されている。さらに外側断熱材56の外側には、誘導コイル50により発生した磁場が外側に漏れるのを防止する磁場シール58が設けられている。図2及び図4に示すように、被誘導体48と内側断熱材54との間には第1間隙44が設けられ、内側断熱材54と反応管42との間には第2間隙45が設けられている。また、本実施形態では、内側断熱材54は、内側断熱材54の下端の一部とマニホールド46の上端の一部との間に隙間ができるように、図示しない連結部材で保持されており、後述するように第2間隙45に供給された不活性ガスが内側断熱材54とマニホールド46との間の隙間を介して第1間隙44に進入できるようになっている。
主に、被誘導体48、誘導コイル50、図示しない交流電源、放射温度計11及び内側断熱材54により、本実施形態に係る加熱部が構成されている。
(第1ガス供給部、第2ガス供給部)
マニホールド46の側壁には、複数のガス供給ノズルが設けられている。具体的には、原料ガスとしてのSi(シリコン)原子含有ガスを供給するSi原子含有ガス供給ノズル260と、原料ガスとしてのC(炭素)原子含有ガスを供給するC(炭素)原子含有ガス供給ノズル270と、ドーパントガスを供給するドーパントガス供給ノズル280と、複数本のノズルから構成されパージガスとしての不活性ガスを供給するガスノズルとしての不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cと、が設けられている。なお、Si原子含有ガスとしては例えばトリクロロシラン(SiHCl3)ガスを、C原子含有ガスとしては例えばプロパン(C3H8)ガスを、それぞれ用いることができる。また、Si原子含有ガス及びC原子含有ガスにはキャリアガスとしてのH(水素)原子含有ガスが混合されており、H原子含有ガスとしては例えば水素(H2)ガスを用いることができる。さらに、ドーパントガスとしては例えばn型ドープ層を形成する窒素(N2)ガス、不活性ガスとしては例えば窒素(N2)ガス、をそれぞれ用いることができる。
第1ガスは主に、Si原子含有ガス、C原子含有ガス、H原子含有ガス、ドーパントガス等、処理室43内のウエハ14を処理する処理ガスを指し、第2ガスは主に、第1間隙44等をパージする不活性ガスを指す。
Si原子含有ガス供給ノズル260、C原子含有ガス供給ノズル270、ドーパントガス供給ノズル280及び不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cは、例えばカーボングラファイト等の耐熱材料を用いてL字型に構成されている。Si原子含有ガス供給ノズル260、C原子含有ガス供給ノズル270、ドーパントガス供給ノズル280及び不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの上流側はそれぞれマニホールド46の側壁を水平に貫通している。
Si原子含有ガス供給ノズル260、C原子含有ガス供給ノズル270の下流側は、処理室43内に配設されている。つまりSi原子含有ガス供給ノズル260の下流側、C原子含有ガス供給ノズル270の下流側は、被誘導体48の内壁に沿って立ち上がり、ボート30の上端付近まで延在するように配設されている。Si原子含有ガス供給ノズル260、C原子含有ガス供給ノズル270の側部には、積層されたウエハ14間にガスを供給するSi原子含有ガス供給口268、C原子含有ガス供給口278が複数開設されている。
ドーパントガス供給ノズル280の下流側は、処理室43内に配設されている。つまりドーパントガス供給ノズル280の下流側は、ボート30の基部側面に沿って立ち上がり、処理室43内のボート30の下部構造付近まで延在するように配設されている。ドーパ
ントガス供給ノズル280の下流端には、ドーパントガス供給口288が開設されている。
不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの下流側は、反応管42と内側断熱材54との間に設けられる第2間隙45に配設されている。つまり不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの下流側は、反応管42の内壁に沿って立ち上がり、内側断熱材54の上端よりも高い位置まで延在するように配設されている。図4に示すように、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cは内側断熱材54を挟んで、後述する第2排気口230a、230b、230cと対向する位置に配設されている。不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cは、反応管42の内周方向に均等に配置されている。すなわち、不活性ガス供給ノズル220aと不活性ガス供給ノズル220bとの距離、不活性ガス供給ノズル220bと不活性ガス供給ノズル220cとの距離が互いに等しくなるよう構成されている。不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの下流端には、不活性ガス供給口228a、228b、228cが、内側断熱材54の上端よりも高い位置に開設されている。
Si原子含有ガス供給ノズル260の上流端には、Si原子含有ガス供給管262aの下流端が接続されている。図3に示すように、Si原子含有ガス供給管262aには上流側から順に、SiHCl3ガス供給源265a、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)266a、バルブ264aが設けられている。Si原子含有ガス供給管262aのバルブ264aより下流側には、H原子含有ガス供給管262bの下流端が接続されている。H原子含有ガス供給管262bには上流側から順に、H2ガス供給源265b、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)266b、バルブ264bが設けられている。
C原子含有ガス供給ノズル270の上流端には、C原子含有ガス供給管272aの下流端が接続されている。図3に示すように、C原子含有ガス供給管272aには上流側から順に、C3H8ガス供給源275a、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)276a、バルブ274aが設けられている。C原子含有ガス供給管272aのバルブ274aより下流側には、H原子含有ガス供給管272bの下流端が接続されている。H原子含有ガス供給管272bには上流側から順に、H2ガス供給源275b、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)276b、バルブ274bが設けられている。
ドーパントガス供給ノズル280の上流端には、ドーパントガス供給管282の下流端が接続されている。図3に示すように、ドーパントガス供給管282には上流側から順に、N2ガス供給源285、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)286、バルブ284が設けられている。
不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの上流端には、不活性ガス供給管222の下流端がそれぞれ分岐して接続されている。図3に示すように、不活性ガス供給管222には上流側から順に、N2ガス供給源225、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)226、バルブ224が設けられている。
バルブ224、264a、264b、274a、274b、284、MFC226、266a、266b、276a、276b、286には、後述するコントローラ152が備えるガス流量制御部73が電気的に接続されている(図7参照)。ガス流量制御部73は、処理室43内に供給されるSi原子含有ガス、C原子含有ガス、H原子含有ガス、ドーパントガス及び後述するように第1間隙44等に供給される不活性ガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるよう、バルブ224、264a、264b、27
4a、274b、284及びMFC226、266a、266b、276a、276b、286を制御するように構成されている。
主に、Si原子含有ガス供給ノズル260、Si原子含有ガス供給口268、Si原子含有ガス供給管262a、H原子含有ガス供給管262b、C原子含有ガス供給ノズル270、C原子含有ガス供給口278、C原子含有ガス供給管272a、H原子含有ガス供給管272b、ドーパントガス供給ノズル280、ドーパントガス供給口288、ドーパントガス供給管282、バルブ224、264a、264b、274a、274b、284、MFC226、266a、266b、276a、276b、286、SiHCl3ガス供給源265a、H2ガス供給源265b、C3H8ガス供給源275a、H2ガス供給源275b及びN2ガス供給源285により、本実施形態に係る第1ガス供給部が構成されている。
また主に、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220c、不活性ガス供給口228a、228b、228c、不活性ガス供給管222、バルブ224、MFC226及びN2ガス供給源225により、本実施形態に係る第2ガス供給部が構成されている。
(排気部)
処理室43を挟んで、第2間隙45に配設される不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cと対向する側には、マニホールド46の側壁に処理室43内の雰囲気を排気する排気口98が設けられている。排気口98には排気管92の上流端が接続されている。排気管92には上流側から順に、図示しない圧力センサ、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ94、真空ポンプ96が設けられている。図示しない圧力センサ、APCバルブ94及び真空ポンプ96には、後述するコントローラ152が備える圧力制御部93が電気的に接続されている(図7参照)。圧力制御部93は、処理室43内の圧力が所定のタイミングで所定の圧力となるよう、APCバルブ94の開度を制御するように構成されている。処理室43内に供給された処理ガスは、主にマニホールド46に設けられた開口部290を通って、排気口98から排気される。
内側断熱材54と反応管42とで仕切られた空間に位置するマニホールド46の上端部には、第2間隙45とマニホールド46内の空間との間を反応管42の管軸に対して排気口98の半径方向と同方向に連通させる連通孔としての第2排気口230a、230b、230cが設けられ、第2間隙45及び第1間隙44に供給された不活性ガスは、主に第2排気口230a、230b、230cを通って、処理ガスと共通の排気口98から排気される。複数の開口から構成される第2排気口230a、230b、230cは、例えば図4に示すように、内側断熱材54を挟んで不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cと対向する位置に配設されている。第2排気口230a、230b、230cは、反応管42の内周方向に均等に配置されている。すなわち、第2排気口230aと第2排気口230bとの距離、第2排気口230bと第2排気口230cとの距離が互いに等しくなるよう構成されている。また、第2排気口230a、230b、230cの総断面積、すなわち各排気口の開口面積を合計した総開口面積は、マニホールド46の開口部290の反応管42の軸心と直交する方向の断面積より小さくなるよう構成されている。
主に、第2排気口230a、230b、230c、排気口98、排気管92、図示しない圧力センサ、APCバルブ94及び真空ポンプ96により、本実施形態に係る排気部が構成されている。
なお、上述のように不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cと、第2排気口230a、230b、230cとが、内側断熱材54を挟んで互いに対向する位置に設
けられており、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの備える不活性ガス供給口228a、228b、228cが内側断熱材54の上端よりも高い位置に設けられているので、不活性ガスは第2間隙45の第2排気口230a、230b、230cから可能な限り遠い位置に供給され、第2間隙45に拡散しながらほぼ最長の経路を通り、第2排気口230a、230b、230cから排気口98へと排気される。これにより、不活性ガスの第2間隙45での滞在時間を長くすることができる。
また、第2排気口230a、230b、230cの総開口面積がマニホールド46の開口部290の断面積より小さくなるよう形成されているので、処理ガスと比較して不活性ガスの排気速度が制限される。このようにガスのコンダクタンスが小さく抑えられているので、これによっても不活性ガスの第2間隙45での滞在時間を長くすることができる。
上記のような構成により不活性ガスの滞在時間を長くしているので、不活性ガスが第2間隙45のほぼ全域に行き渡り、第2間隙45を不活性ガスでパージすることができる。また、第2間隙45に供給された不活性ガスを、例えば金具等で支持される内側断熱材54の下端とマニホールド46の上端との隙間等から、被誘導体48と内側断熱材54との間に設けられる第1間隙44にも拡散させることができる。これにより、処理室43内に供給した処理ガスが第1間隙44や第2間隙45に進入するのを抑制することができる。
また、ウエハ14を処理中の処理室43内の圧力より第1間隙44や第2間隙45の圧力を高く維持するようにコントローラ152が備える圧力制御部93によって不活性ガスの供給量を調整すると、処理室43内に供給した処理ガスが第1間隙44や第2間隙45に進入するのを更に抑制することができる。特に、上述のように第2排気口230a、230b、230cの総開口面積がマニホールド46の開口部290の断面積より小さくなるように形成することで、不活性ガスの滞在時間を処理ガスに対して長くすることができ、コントローラ152が備える圧力制御部93によって第2間隙45の圧力を所定値に維持しやすく、第2間隙45の圧力に応じて第1間隙44の圧力もある程度まで高めることができる。
また、第1間隙44や第2間隙45に供給された不活性ガスは、主に第2排気口230a、230b、230cから排気されるので、例えば内側断熱材54から発生したパーティクルが第1間隙44や第2間隙45に存在する場合であっても、不活性ガスとともにパーティクルを排出することができる。
(処理炉の周辺構成)
図6は、本発明の第1の実施形態に係る処理炉40及びその周辺構成の概略図である。図6に示すように、処理炉40の下方には、予備室としてのロードロック室110が設けられている。ロードロック室110を構成する側壁の外面には、ボートエレベータ115が設けられている。ボートエレベータ115は、下基板112、ガイドシャフト116、ボール螺子118、上基板120、昇降モータ122、昇降基板130及びベローズ128を備えている。下基板112は、ロードロック室110を構成する側壁の外面に水平姿勢で固定されている。下基板112には、昇降台114と嵌合するガイドシャフト116及び昇降台114と螺合するボール螺子118がそれぞれ鉛直姿勢で設けられている。ガイドシャフト116及びボール螺子118の上端には、上基板120が水平姿勢で固定されている。ボール螺子118は、上基板120に設けられた昇降モータ122により回転させられるように構成されている。ガイドシャフト116は、昇降台114の上下動を許容しつつ水平方向の回転を抑制するように構成されている。ボール螺子118を回転させることにより、昇降台114が昇降するように構成されている。
昇降台114には、中空の昇降シャフト124が垂直姿勢で固定されている。昇降台1
14と昇降シャフト124との連結部は、気密に構成されている。昇降シャフト124は、昇降台114と共に昇降するように構成されている。昇降シャフト124の下方側端部は、ロードロック室110を構成する天板126を貫通している。ロードロック室110の天板126に設けられる貫通穴の内径は、昇降シャフト124と天板126とが接触することのない様に、昇降シャフト124の外径よりも大きく構成されている。ロードロック室110と昇降台114との間には、昇降シャフト124の周囲を覆うように、伸縮性を有する中空伸縮体としてのベローズ128が設けられている。昇降台114とベローズ128との連結部及び天板126とベローズ128との連結部はそれぞれ気密に構成されており、ロードロック室110内の気密が保持されるように構成されている。ベローズ128は、昇降台114の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有している。ベローズ128の内径は、昇降シャフト124とベローズ128とが接触することのないように、昇降シャフト124の外径よりも充分に大きく構成されている。
ロードロック室110内に突出した昇降シャフト124の下端には、昇降基板130が水平姿勢で固定されている。昇降シャフト124と昇降基板130との連結部は、気密に構成されている。昇降基板130の上面には、Oリング等のシール部材を介してシールキャップ102が気密に取付けられている。シールキャップ102は、例えばステンレス等の金属よりなり、円盤状に形成されている。昇降モータ122を駆動してボール螺子118を回転させ、昇降台114、昇降シャフト124、昇降基板130及びシールキャップ102を上昇させることにより、処理炉40内にボート30が搬入(ボートローディング)されると共に、処理炉40の開口部(炉口)144がOリングを介してシールキャップ102により閉塞されるよう構成されている。また、昇降モータ122を駆動してボール螺子118を回転させ、昇降台114、昇降シャフト124、昇降基板130及びシールキャップ102を下降させることにより、処理炉40内からボート30が搬出(ボートアンローディング)されるよう構成されている。昇降モータ122には、後述する制御部としてのコントローラ152が備える駆動制御部103が電気的に接続されている(図7参照)。駆動制御部103は、ボートエレベータ115が所望のタイミングにて所望の動作をするよう制御する。
昇降基板130の下面には、Oリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取付けられている。昇降基板130と駆動部カバー132とにより駆動部収納ケース134が構成されている。駆動部収納ケース134の内部は、ロードロック室110内の雰囲気と隔離されている。駆動部収納ケース134の内部には、回転機構104が設けられている。回転機構104には電力供給ケーブル138が接続されている。電力供給ケーブル138は、昇降シャフト124の上端から昇降シャフト124内を通って回転機構104まで導かれており、回転機構104に電力を供給するように構成されている。回転機構104が備える回転軸106の上端部は、シールキャップ102を貫通して、基板保持具としてのボート30を下方から支持するように構成されている。回転機構104を作動させることにより、ボート30に保持されたウエハ14を処理炉40内で回転させることが可能なように構成されている。回転機構104には、駆動制御部103が電気的に接続されている。駆動制御部103は、回転機構104が所望のタイミングにて所望の動作をするよう制御する。
また、駆動部収納ケース134の内部であって回転機構104の周囲には、冷却機構136が設けられている。冷却機構136及びシールキャップ102には冷却流路140が形成されている。冷却流路140には冷却水を供給する冷却水配管142が接続されている。冷却水配管142は、昇降シャフト124の上端から昇降シャフト124内を通って冷却流路140まで導かれ、冷却流路140にそれぞれ冷却水を供給するように構成されている。
(コントローラ)
図7は、本実施形態に係る基板処理装置10を構成する各部の制御構成を例示するブロック図である。図7に示すように、基板処理装置10は、基板処理装置10の各部の動作を制御する制御部としてのコントローラ152を備えている。コントローラ152は、主制御部150と、主制御部150に電気的に接続された温度制御部53、ガス流量制御部73、圧力制御部93、駆動制御部103とを備えている。主制御部150は、図示しない操作部及び入出力部を備えている。
(2)基板処理工程
次に、上述のように構成された基板処理装置10を用いて、例えばSiやSiC等で構成される基板としてのウエハ14上に、例えばSiC膜をエピタキシャル成長させる方法について説明する。当該基板処理工程は、半導体装置の製造工程の一工程として実施される。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
(ウエハ搬入工程)
まず、ポッドステージ18上に複数枚のウエハ14を収容したポッド16を載置する。ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18上からポッド載置棚22上に移載する。ポッド搬送装置20により、ポッド載置棚22上に載置されたポッド16をポッドオープナ24に搬送する。ポッドオープナ24により、ポッド16の蓋を開き、ウエハ枚数検出器26によりポッド16に収容されているウエハ14の枚数を検知する。次に、ウエハ移載機28により、ポッド16からウエハ14を取り出し、ボート30に移載する。
複数枚のウエハ14をボート30に装填(ウエハチャージ)した後、複数枚のウエハ14を保持したボート30を、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により処理室43内に搬入(ボートローディング)する。この状態で、シールキャップ102はOリングを介してマニホールド46の下端をシールした状態となる。なお、ボート30を処理室43内に搬入する際には、図示しない不活性ガス供給源から被誘導体48の内側に不活性ガスを供給し、処理室43内が酸素雰囲気に晒されるのを防ぐことが好ましい。
(減圧工程及び昇温工程)
続いて不活性ガスの処理室43内への供給を止め、処理室43内を真空ポンプ96により排気する。また、図示しない交流電源から誘導コイル50に、例えば10kHz〜100kHz、10kW〜200kWの交流電力を供給し、被誘導体48に交流磁場を掛けて誘導電流を流し、被誘導体48を発熱させる。そして、被誘導体48から発せられるエネルギー(輻射熱)により、ボート30に保持されたウエハ14や処理室43内を例えば1500℃〜1800℃の温度範囲に加熱する。この際、処理室43内が所定の温度分布となるように、放射温度計11が検出した温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構104により、ボート30及びウエハ14を回転させる。
(不活性ガス供給工程)
次にバルブ224を開き、MFC226により流量制御された第2ガスとしての不活性ガス、具体的にはN2ガスを、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの不活性ガス供給口228a、228b、228cから第2間隙45へと供給開始する。第2間隙45に供給されたN2ガスは、第2間隙45内に拡散するほか、一部が、内側断熱材54とマニホールド46との隙間等を通じて第1間隙44へと拡散していく。そして、不活性ガス供給口228a、228b、228cから第2排気口230a、230b、23
0cまでのほぼ最長の経路を通り、真空ポンプ96へと繋がる排気口98から排気される。またこのとき、第2排気口230a、230b、230cの総開口面積はマニホールド46の開口部290の断面積より小さくなるよう形成されているので、不活性ガスの排気速度が制限された状態となっている。
これにより、N2ガスを第1間隙44のほぼ全域に行き渡らせて第1間隙44をパージすることができ、N2ガスの供給量をコントローラ152により調整することで、予め、第2間隙45の圧力を所定値、例えば後述するようにウエハ14を処理中の処理室43内の圧力より高く保持しておくことができる。また、第2間隙45に供給されたN2ガスが第1間隙44にも間接的に供給されることで、第1間隙44の圧力もある程度まで高めることが可能であり、例えばウエハ14を処理中の処理室43内の圧力より、予め高く保持しておくことができる。さらにこのとき、第1間隙44や第2間隙45に供給された不活性ガスは、主に第2排気口230a、230b、230cから排気されるので、例えば内側断熱材54から発生したパーティクルが第1間隙44等に存在する場合であっても、予めN2ガスとともにパーティクルも排出することができる。
なお、N2ガスの第1間隙44、第2間隙45への供給は、後述するウエハ14の処理が終了するまで、つまり処理室43内へ処理ガスを供給している間、継続すると良い。これにより、ウエハ14の処理継続中、第1間隙44、第2間隙45の圧力保持効果、パーティクル排出効果が継続する。
(処理ガス供給工程)
続いてバルブ264a、264bを開き、MFC266a、266bにより流量制御されたSi原子含有ガスとしてのSiHCl3ガスとH原子含有ガスとしてのH2ガスとの混合ガスを、Si原子含有ガス供給ノズル260のSi原子含有ガス供給口268から処理室43内へと供給開始する。また、このときバルブ274a、274bを開き、MFC276a、276bにより流量制御されたC原子含有ガスとしてのC3H8ガスとH原子含有ガスとしてのH2ガスとの混合ガスを、C原子含有ガス供給ノズル270のC原子含有ガス供給口278から処理室43内へと供給開始する。さらに、このときバルブ284を開き、MFC286により流量制御されたドーパントガスとしてのN2ガスを、ドーパントガス供給ノズル280のドーパントガス供給口288から処理室43内へと供給開始する。処理室43内に供給された第1ガスとしてのSiH4ガス、C3H8ガス、H2ガス及びN2ガスは、処理室43内、つまり被誘導体48の内側を通り、ウエハ14に対して平行に流れ、排気管92から排気される。そして、ウエハ14全体が効率的にかつ均一に処理ガスに晒され、ウエハ14の表面にSiC膜がエピタキシャル成長される。このとき、処理室43内の圧力は圧力センサで測定され、この測定された圧力に基づき排気管92を介して真空ポンプ96に接続されるAPCバルブ94がフィードバック制御され、処理室43内が所定の圧力(真空度)となるよう制御される。
またこのとき、第1ガスとしての処理ガスの供給流量及び第2ガスとしての不活性ガスの供給流量をコントローラ152により制御することにより、反応管42の内部の圧力は、処理室43内の圧力、第1間隙44の圧力、第2間隙45の圧力、の順に高くなるよう維持されている。図5は、ウエハ14を処理中の反応管42の内部の圧力差を示す説明図である。図5に示すように、ウエハ14を処理中の反応管42の内部の圧力は、第2間隙45の圧力P45が最も高く、処理室43内の圧力P43が最も低くなるよう調整されている。それに応じて第1間隙44の圧力P44は、第2間隙45の圧力P45より低く、処理室43内の圧力P43より高くなっている。例えば合計供給量が150SLMとなるよう処理ガスを処理室43内に供給し、処理室43内の圧力P43を100Torrに保持したとき、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cから5SLMのN2ガスを供給すると、第2間隙45の圧力P45及び第1間隙44の圧力P44を、それぞれ
110Torr及び105Torrとすることができる。これにより、処理室43内に供給した処理ガスが第1間隙44や第2間隙45に進入するのを抑制することができる。
このように、ウエハ14の処理中に継続して不活性ガスを第2間隙45及び第1間隙44へと供給することによって、処理室43内に供給した処理ガスが、第2間隙45や第1間隙44へと進入していくのを抑制することができる。これにより、例えば内側断熱材54とH2ガス等の処理ガスとの接触による内側断熱材54の劣化が抑えられ、パーティクルが発生するのを抑制することができる。また、例えば反応管42の内壁や内側断熱材54の外壁に不要な生成物が付着するのを抑制することができる。反応管42の内壁に生成物が付着すると、例えば誘導コイル50の外側に設けられた放射温度計11による被誘導体48の温度検出が妨げられる場合がある。本実施形態によれば、反応管42の内壁等への生成物付着を抑えることができ、被誘導体48の温度を精度よく検出することが可能となり、基板処理の歩留まりを向上させることができる。
なお一例まで、本実施形態におけるウエハ14の処理条件を以下に示す。以下のそれぞれの処理条件を、それぞれの範囲内の所定値で一定に維持することで、ウエハ14にSiC膜がエピタキシャル成長される。
(a)処理室43内
温度:1500℃〜1800℃
圧力P43:10Torr〜200Torr(1333Pa〜26666Pa)
第1ガス供給量:
SiHCl3ガス供給流量:0.1SLM〜1.0SLM
C3H8ガス供給流量:0.1SLM〜1.0SLM
H2ガス供給流量(合計):100SLM〜200SLM
N2ガス供給流量:0.001SLM〜0.01SLM
(b)第1間隙44
圧力P44:15Torr〜205Torr
(c)第2間隙45
圧力P45:20Torr〜210Torr
第2ガス供給量:
N2ガス供給量:5SLM〜10SLM
(降温工程及び常圧復帰工程)
所定の時間が経過し、所望の膜厚のSiC膜がエピタキシャル成長されたら、バルブ264a、264b、274a、274b、284を閉めてSiH4ガス、C3H8ガス、N2ガス及びH2ガスの処理室43内への供給を停止する。また、誘導コイル50への交流電力の供給を停止し、被誘導体48、ボート30及びウエハ14の温度を所定の温度(例えば600℃程度)にまで降下させる。そして温度を降下させる間、図示しない不活性ガス供給源から被誘導体48の内側に不活性ガスを供給し、被誘導体48の内側を不活性ガスで置換すると共に、処理室43内の圧力を常圧に復帰させる。その後、バルブ224を閉めてN2ガスの第2間隙45及び第1間隙44への供給を停止する。このように、処理室43内を不活性ガスで置換している間、第2間隙45及び第1間隙44への不活性ガスの供給を続けるように制御すると、処理室43内の処理ガスの第1間隙44、第2間隙45への進入を抑制することが可能となり、内側断熱材54の劣化を抑制することが可能となる。
(ウエハ搬出工程)
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102を下降させて、処理炉40の炉口144を開口させ、処理済のウエハ14を保持したボート30を炉口144から処理炉40の外部に搬出(ボートアンローディング)する。そして、ボート30に支持された全
てのウエハ14が冷えるまで、ボート30を所定位置で待機させる。待機させたボート30のウエハ14が所定温度まで冷却されたら、ウエハ移載機28により、ボート30からウエハ14を取り出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収容する。その後、ポッド搬送装置20により、ウエハ14が収容されたポッド16をポッド載置棚22、またはポッドステージ18上に搬送する。このようにして、処理後のウエハ14を格納したポッド16が筐体12の外部へと搬出される。
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたはそれ以上の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、処理室43内に処理ガス等の第1ガスを供給する第1ガス供給部と、第1間隙44に不活性ガス等の第2ガスを供給する第2ガス供給部と、を備える。また第2ガス供給部は、第2間隙45にも不活性ガスを供給するように構成されている。これにより、処理室43内に供給した処理ガスの第1間隙44や第2間隙45への進入が抑制される。
処理ガスが第1間隙44等に進入し、内側断熱材54に処理ガス、特にH2ガス等のH原子含有ガスが接触すると、例えば水素侵食(高温・高圧のH2ガスに接する金属材料にH2が侵入して金属材料の機械的性質が劣化する現象)等が起こり、例えば内側断熱材54を劣化させてパーティクルを発生させる場合がある。内側断熱材54は上述のように、例えばフェルト状カーボン等の繊維材で構成されており、繊維材内部の隙間にH2ガスが侵入しやすい。本実施形態のようにH2ガス等の処理ガスが第1間隙44等へ進入していくのを抑制することで、内側断熱材54の劣化が抑制されてパーティクルの発生が抑えられ、例えばウエハ14へのパーティクル付着を低減させることができる。これにより、基板処理の歩留まりが向上し、生産性を向上させることができる。なお、例えば繊維材の表面に炭化タンタル(TaC)等の耐食材料をコーティングすることにより、内側断熱材54の劣化をある程度、抑制することも可能であるが、本実施形態のようにH2ガスが内側断熱材54に接触すること自体を抑制することで、より確実に内側断熱材54の劣化を抑えることができる。
また、処理ガスの第1間隙44や第2間隙45への進入が抑制されることで、反応管42の内壁に不要な生成物が付着するのを抑制することができる。これにより、例えば誘導コイル50の外側に設けた放射温度計11によって被誘導体48の温度を精度よく検出し、基板処理の歩留まりを向上させて高い生産性を得ることができる。
(b)また本実施形態によれば、反応管42、被誘導体48及び断熱体としての内側断熱材54の下端をそれぞれ支持する支持部としてのマニホールド46は、処理室43を挟んで不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cと対向する位置に処理室43内を排気する排気口98を有する。そして、第2間隙45に設置される不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cは、内側断熱材54の上端よりも高い位置まで延在され、不活性ガス供給口228a、228b、228cは内側断熱材54の上端よりも高い位置に設けられる。さらに、マニホールド46は、被誘導体48と反応管42との間に、被誘導体48と反応管42との間に設けられる間隙と、マニホールド46内の空間と、の間を連通させる第2排気口230a、230b、230cと、を有し、第2排気口230a、230b、230cの開口面積は、マニホールド46の開口部290の反応管42の軸心と直交する方向の断面積より小さくなるよう構成されている。これにより、不活性ガスの第2間隙45での滞在時間を長くすることができる。
上記のような構成により不活性ガスの滞在時間を長くしているので、第2間隙45及び第1間隙44のほぼ全域に不活性ガスを行き渡らせることができ、また、第1間隙44や
第2間隙45の圧力を容易に高めることができる。これにより、いっそう効果的に処理ガスの進入を抑制することができる。
(c)また本実施形態によれば、処理室43内の圧力P43よりも第1間隙44の圧力P44が高くなるように、少なくとも第1ガス供給部及び第2ガス供給部を制御する制御部としてのコントローラ152を備える。そしてコントローラ152はまた、処理室43内の圧力P43及び第1間隙44の圧力P44よりも第2間隙45の圧力P45が高くなるように、少なくとも第1ガス供給部及び第2ガス供給部を制御する。これにより、反応管42の内部の圧力制御がより確実なものとなり、より効果的に処理ガスの進入を抑制することができる。
(d)また本実施形態によれば、第1間隙44及び第2間隙45に供給された不活性ガスは、主に第2排気口230a、230b、230cから排気される。これにより、例えば内側断熱材54から発生したパーティクルが第1間隙44等に存在する場合であっても、不活性ガスとともにパーティクルを排出することができる。
(e)また本実施形態によれば、第1間隙44に不活性ガスを供給した後、処理室43内に処理ガスを供給するように、少なくとも第1ガス供給部及び第2ガス供給部を制御するコントローラ152を備える。これにより、処理室43内への処理ガスの供給に先駆けて第1間隙44及び第2間隙45の圧力を所定圧力に高めておくことができ、より効果的に処理ガスの進入を抑制することができる。
(f)また本実施形態によれば、上記構成のコントローラ152を備えるので、ウエハ14の処理に先駆けて第1間隙44及び第2間隙45のパーティクルを排出することができ、例えばウエハ14にパーティクルが付着するのをより効果的に抑制することができる。
[本発明の第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態にかかる基板処理装置について、図8及び図9を用いて説明する。本実施形態に係る基板処理装置においては、内側断熱材54に複数の流通孔54a、54bが設けられている点が、上述の実施形態とは異なる。それ以外の構成は上述の実施形態と同様であるので、同様の構成についての詳細な説明は、上述の基板処理装置10と同様の機能を有する構成要件に同一の符号を付して省略する。
図8は、本実施形態に係る処理炉40に設けられた内側断熱材54の流通孔54a、54bを示す断面図である。図8に示すように、内側断熱材54の上端面には流通孔54aが設けられている。流通孔54aは、例えば内側断熱材54の上端面中央にひとつだけ設
けられていてもよい。また複数設けられた流通孔54aが、例えば内側断熱材54の上端面全体に均等又は不均等に点在していてもよい。内側断熱材54の側面には流通孔54bが設けられている。流通孔54bは、例えば内側断熱材54の側面の任意の箇所にひとつだけ設けられていてもよい。また複数設けられた流通孔54bが、例えば内側断熱材54の側面全体に均等又は不均等に点在していてもよい。また内側断熱材54を例えば反応管42の軸心と直交する方向に複数に分割されたドーナツ型の部材から構成し、これらドーナツ型の部材を金具等の連結部材により互いに連結して内側断熱材54とすることも可能である。この場合、各ドーナツ型部材の連結部に内側断熱材54の外周を巡る溝状の隙間を生じさせて流通孔54bとすることができる。
係る流通孔54a、54bにより、第2間隙45に配設される不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cから供給される不活性ガスを、第1間隙44と第2間隙45との間で流通させることができる。図8には一例として、第2間隙45に供給された不活性ガスが流通する様子を矢印で示してある。不活性ガス供給口228a、228b、22
8cから供給された不活性ガスは、例えばその一部が内側断熱材54の上端面に設けられる流通孔54aを通って第1間隙44へと進入していく。第1間隙44の上部から進入した不活性ガスは、反応管42の下方に設けられた排気口98へ向かって第1間隙45を下方へと流れていき、一部が内側断熱材54の側面に設けられる流通孔54bを通って、再び第2間隙45へと進入していく。このように、流通孔54aと流通孔54bとがそれぞれ不活性ガスを吸入・排出する役割を果たすので、第1間隙44へと進入した不活性ガスが滞留し難くなり、第1間隙44と第2間隙45との間で不活性ガスを流通させることができる。なお、本実施形態では、流通孔54a、54bを介して第2間隙45に供給された不活性ガスが第1間隙44に進入するため、マニホールド46と内側断熱材54との間に隙間がない場合にも適用できる。
また、このような流通孔54a、54bにはラビリンス構造を設けることが好ましい。図9は、流通孔54bにラビリンス構造を設けた様子を示す図であって、(a)はラビリンス構造の一例を示す断面図であり、(b)はラビリンス構造の他の例を示す断面図である。図9(a)の例では、内側断熱材54の外壁に設けられた流通孔54bが、クランク状に屈曲して被誘導体46側へと抜けている。図9(b)の例では、内側断熱材54の外壁に設けられたひとつの流通孔54bがクランク状に屈曲し、さらに二つに分岐して被誘導体48側へと抜けている。このように流通孔54bの流通路にラビリンス構造、つまり屈曲部を設けることによって、図9中、矢印で示す、被誘導体48からの輻射等のエネルギー、特に赤外線等が、流通孔54bを通って外側へ漏洩するのを抑制することができる。これにより、反応管42等へのエネルギーによるダメージを低減することが可能となる。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
(a)また本実施形態によれば、内側断熱材54には、第1間隙44と第2間隙45とを流通させる流通孔54a、54bが設けられている。これにより、不活性ガスはより素早く第1間隙44へと拡散し、上述の実施形態よりも速く第1間隙44の圧力を高めることができる。そして、第1間隙44の圧力P44を、上述の実施形態よりもさらに高く保持することが可能である。よって、処理室43内に供給した処理ガス等の第1間隙44への進入をより確実に抑制することができる。
例えば上述の実施形態で例示した条件と同様、合計供給量が150SLMとなるよう処理ガスを処理室43内に供給し、処理室43内の圧力P43を100Torrに保持したとき、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cから5SLMのN2ガスを供給すると、第2間隙45の圧力P45及び第1間隙44の圧力P44を、それぞれ110Torr及び110Torrとすることができる。
(b)また本実施形態によれば、流通孔54a、54bの流通路に、被誘導体48からのエネルギーが第2間隙45へ漏洩するのを抑制する屈曲部が設けられている。これにより、反応管42等が被誘導体48からの輻射等のエネルギーによりダメージを受けるのを抑制することができる。
(c)また本実施形態によれば、内側断熱材54は、反応管42の軸心と直交する方向に複数に分割されて形成されている。これにより、分割された各ドーナツ型部材の連結部を流通孔54bとすることができる。
[本発明の第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態にかかる基板処理装置について、図10から図13を用いて説明する。本実施形態に係る基板処理装置においては主に、第2間隙45に配設され
る不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cに加えて第1間隙44にも不活性ガス供給ノズルを有する点、処理室43内に不活性ガスを供給するラインを有する点が上述の実施形態とは異なる。それ以外の構成は上述の実施形態と同様であるので、同様の構成についての詳細な説明は、上述の基板処理装置10と同様の機能を有する構成要件に同一の符号を付して省略する。
(1)処理炉の構成
図10は、本実施形態に係る処理炉40の側面断面図である。図10に示すように、被誘導体48と内側断熱材54との間に設けられる第1間隙44には、複数本のノズルから構成されパージガスとしての不活性ガスを供給する第2のガスノズルとしての不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cが設けられている。不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cは、例えばカーボングラファイト等の耐熱材料を用いてL字型に構成されている。不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cの上流側はそれぞれマニホールド46の側壁を水平に貫通している。不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cの下流側は、内側断熱材54の内壁に沿って立ち上がり、被誘導体48の上端よりも高い位置まで延在するように配設されている。
なお、本実施形態では、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cを設け、後述のように不活性ガスを直接、第1間隙44に供給するようにしたため、マニホールド46と内側断熱材54との間に隙間がない場合にも適用できる。図10には、係る隙間を有さない場合について示した。
図12に示すように、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cは被誘導体48を挟んで、後述する第1排気口250a、250b、250cと対向する位置に配設されている。不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cは、内側断熱材54の内周方向に均等に配置されている。すなわち不活性ガス供給ノズル240aと不活性ガス供給ノズル240bとの距離、不活性ガス供給ノズル240bと不活性ガス供給ノズル240cとの距離が互いに等しくなるよう構成されている。不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cの下流端には、不活性ガス供給口248a、248b、248cが、被誘導体48の上端よりも高い位置に開設されている。
不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cの上流端には、不活性ガス供給管242の下流端がそれぞれ分岐して接続されている。図11に示すように、不活性ガス供給管242には上流側から順に、N2ガス供給源245、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)246、バルブ244が設けられている。
また、Si原子含有ガス供給ノズル260の上流端に接続されるSi原子含有ガス供給管262aの上流側には、不活性ガス供給管262cの下流端が接続されている。不活性ガス供給管262cには上流側から順に、N2ガス供給源265c、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)266c、バルブ264cが設けられている。
さらに、C原子含有ガス供給ノズル270の上流端に接続されるC原子含有ガス供給管272aの上流側には、不活性ガス供給管272cの下流端が接続されている。不活性ガス供給管272cには上流側から順に、N2ガス供給源275c、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(MFC)276c、バルブ274cが設けられている。
バルブ244、264c、274c、MFC246、266c、276cには、図7に示すコントローラ152が備えるガス流量制御部73が電気的に接続されている。ガス流
量制御部73は、第1間隙44及び処理室43内に供給される不活性ガスの流量が所定のタイミングで所定の流量となるよう、バルブ244、264c、274c及びMFC246、266c、276cを制御するように構成されている。
上述の実施形態の構成を含め、主に、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220c、240a、240b、240c、不活性ガス供給口228a、228b、228c、248a248b、248c、不活性ガス供給管222、242、バルブ224、244、MFC226、246及びN2ガス供給源225、245により、本実施形態に係る第2ガス供給部が構成されている。
反応管42の管軸に対して排気口98の半径方向と同方向の、内側断熱材54と被誘導体48とで仕切られたマニホールド46の上端部には、第1間隙44とマニホールド46内の空間との間を連通させる連通孔としての第1排気口250a、250b、250cが設けられている。複数の開口から構成される第1排気口250a、250b、250cは、例えば図12に示すように、被誘導体48を挟んで不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cと対向する位置に配設されている。第1排気口250a、250b、250cは、内側断熱材54の内周方向に均等に配置されている。すなわち、第1排気口250aと第1排気口250bとの距離、第1排気口250bと第1排気口250cとの距離が互いに等しくなるよう構成されている。また、第1排気口250a、250b、250cの総断面積、すなわち各排気口の開口面積を合計した総開口面積は、マニホールド46の開口部290の反応管42の軸心と直交する方向の断面積より小さくなるよう構成されている。さらに、第1排気口250a、250b、250cの総開口面積は、第2間隙45に設けられる第2排気口230a、230b、230cの総開口面積よりも大きくなるよう構成されている。
上述の実施形態の構成を含め、主に、第2排気口230a、230b、230c、第1排気口250a、250b、250c、排気口98、排気管92、図示しない圧力センサ、APCバルブ94及び真空ポンプ96により、本実施形態に係る排気部が構成されている。
なお上述のように、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cと、第1排気口250a、250b、250cとが、被誘導体48を挟んで互いに対向する位置に設けられており、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cの備える不活性ガス供給口248a、248b、248cが被誘導体48の上端よりも高い位置に設けられているので、不活性ガスはほぼ最長の経路を通って排気される。また、第1排気口250a、250b、250cの総開口面積を調整してガスコンダクタンスが小さく抑えられているので、処理ガスと比較して不活性ガスの排気速度が制限される。これにより、不活性ガスの第1間隙44での滞在時間を長くすることができ、不活性ガスが第1間隙44のほぼ全域に行き渡り、第1間隙44を不活性ガスでパージすることができる。また、不活性ガスの供給量を調整することにより、第1間隙44の圧力を所定値に維持しやすい。また、第1間隙44に供給された不活性ガスは主に第1排気口250a、250b、250cから排気されるので、不活性ガスとともに第1間隙44のパーティクルを排出することができる。
さらに、第1間隙44が有する第1排気口250a、250b、250cの総開口面積は、マニホールド46の開口部290の断面積より小さく、第2間隙45が有する第2排気口230a、230b、230cの総開口面積より大きくなるよう構成されている。したがって、例えば第1間隙44の圧力P44を、処理室43内の圧力P43より高く、第2間隙45の圧力P45より低く保つことがさらに容易となる。このとき第1間隙44には、独立のガス供給系、つまり、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240c、
不活性ガス供給口248a、248b、248c、不活性ガス供給管242、バルブ244、MFC246及びN2ガス供給源245によりN2ガスが供給されるため、第1間隙44の圧力P44をより正確に制御することができる。なお本実施形態によれば、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220c、240a、240b、240cからそれぞれ第1間隙44及び第2間隙45に供給するN2ガスの流量を制御することにより、第1間隙44の圧力P44を、第2間隙45の圧力P45より高めることも可能である。
(2)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理装置を用いてウエハ14にSiC膜のエピタキシャル成長等を行う場合について説明する。
図13は、本実施形態に係る基板処理工程におけるガス供給タイミング図である。図13に示すガス供給タイミングは、先述のコントローラ152により制御される。図13に示すように、ウエハ14を処理室43内へ搬入し、減圧工程及び昇温工程を経た後、まずはバルブ224を開き、MFC226により流量制御された第2ガスとしての不活性ガス、具体的にはN2ガスを、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cの不活性ガス供給口228a、228b、228cから第2間隙45へと供給開始する。続いて、バルブ244を開き、MFC246により流量制御された第2ガスとしての不活性ガス、具体的にはN2ガスを、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cの不活性ガス供給口248a、248b、248cから第1間隙44へと供給開始する。
次に、バルブ264cを開き、MFC266cにより流量制御された不活性ガスとしてのN2ガスを、Si原子含有ガス供給ノズル260のSi原子含有ガス供給口268から処理室43内に供給する。また、バルブ274cを開き、MFC276cにより流量制御された不活性ガスとしてのN2ガスを、C原子含有ガス供給ノズル270のC原子含有ガス供給口278から処理室43内に供給する。
以上の操作により、ウエハ14の処理を始める前に第2間隙45及び第1間隙44の圧力を所定値、例えばウエハ14を処理中の処理室43内の圧力より高い圧力に調整しておくことができ、処理ガスが第1間隙44等へ進入するのを抑制することができる。また、第1間隙44等に内側断熱材54等から発生したパーティクルが存在しても、ウエハ14の処理を開始する前に、第1間隙44等に供給した不活性ガスと一緒に排出することができ、例えばウエハ14にパーティクルが付着するのを抑制することができる。
また、不活性ガスを処理室43内に供給することで、処理室43内にパーティクルが存在する場合であっても、ウエハ14の処理開始前にパーティクルを排除でき、例えばウエハ14の処理中、ウエハ14にパーティクルが付着するのを抑制することができる。
次に、バルブ264c、274cを閉めてN2ガスの処理室43内への供給を停止する。処理室43内を真空ポンプ96により排気して減圧したら、上述の実施形態と同様、第1ガスとしての処理ガスを処理室43内に供給し、SiC膜のエピタキシャル成長を行う。このとき上述の実施形態と同様、ウエハ14を処理中の反応管42の内部の圧力を、例えば処理室43内の圧力P43、第1間隙44の圧力P44、第2間隙45の圧力P45、の順に高くなるよう調整する。このとき、第1間隙44が有する第1排気口250a、250b、250cの総開口面積は、マニホールド46の開口部290の断面積より小さく、第2間隙45が有する第2排気口230a、230b、230cの総開口面積より大きくなるよう構成されているので、第1間隙44の圧力P44を処理室43内の圧力P43より高く、第2間隙45の圧力P45より低く保つことが容易である。また、第1間隙44には独立のガス供給系によりN2ガスが供給されるため、第1間隙44の圧力P44をより正確に制御することができる。例えば上述の実施形態で例示した条件と同様、合計
供給量が150SLMとなるよう処理ガスを処理室43内に供給し、処理室43内の圧力P43を100Torrに保持したとき、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cから2.5SLMのN2ガスを供給し、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cから2.5SLMのN2ガスを供給すると、第2間隙45の圧力P45及び第1間隙44の圧力P44を、それぞれ110Torr及び105Torrとすることができる。これにより、処理室43内に供給された処理ガスが第1間隙44等へと進入するのをさらに確実に抑制することができる。
所定の時間が経過し、所望の膜厚のSiC膜がエピタキシャル成長されたら、処理ガスの処理室43内への供給を停止する。その後、バルブ264cを開き、MFC266cにより流量制御された不活性ガスとしてのN2ガスを、Si原子含有ガス供給ノズル260のSi原子含有ガス供給口268から処理室43内に供給する。また、バルブ274cを開き、MFC276cにより流量制御された不活性ガスとしてのN2ガスを、C原子含有ガス供給ノズル270のC原子含有ガス供給口278から処理室43内に供給する。そして所定時間が経過した後、バルブ264c、274cを閉めてN2ガスの処理室43内への供給を停止する。その後、バルブ244を閉めてN2ガスの第1間隙44への供給を停止する。更にその後、バルブ224を閉めてN2ガスの第2間隙45への供給を停止する。
以上の操作により、ウエハ14の処理終了後、処理室43内に残留する処理ガスを不活性ガスにより置換することができる。また、第1間隙44、第2間隙45、と、処理室43に近い側から順次、不活性ガスの供給を停止していくことで、処理ガスが第1間隙44や第2間隙45へと進入するのを抑制することができる。
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
また本実施形態によれば、第2ガス供給部は、被誘導体48と内側断熱材54との間に設けられる第1間隙44に第2ガスを供給する不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cをさらに備える。これにより、より確実に第1間隙44の圧力P44を制御することができ、第1間隙44への処理ガスの進入を抑制することができる。
[本発明の他の実施形態]
上述の実施形態では、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cや、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cを、それぞれ3本使用する場合について説明したが、不活性ガス供給ノズルの本数はこれに限定されるものではなく、3本より少なくても多くてもよく、また1本のみでもよい。更に、複数の不活性ガス供給ノズルが上述のように独立して配設される場合のみならず、1本の上流端から、第1間隙44や第2間隙45に配設される下流側のみが複数本に分岐した不活性ガス供給ノズルであってもよい。
また、不活性ガス供給ノズル220a、220b、220cと、不活性ガス供給ノズル240a、240b、240cとは、それぞれ別個に不活性ガス供給管222、242、バルブ224、244、MFC226、246、N2ガス供給源225、245を有するものとしたが、不活性ガス供給管、バルブ、MFC、N2ガス供給源はひと組のものを共有するようにしてもよい。
また、Si原子含有ガス供給ノズル260と、C原子含有ガス供給ノズル270とは、それぞれ別個に不活性ガス供給管262c、272c、バルブ264c、274c、MF
C266c、276c、N2ガス供給源265c、275cを有するものとしたが、不活性ガス供給管、バルブ、MFC、N2ガス供給源はひと組のものを共有するようにしてもよい。
上述の実施形態では、第1排気口250a、250b、250cや、第2排気口230a、230b、230cを、それぞれ3個ずつ有する場合について説明したが、第1排気口、第2排気口の数はこれに限定されるものではなく、3個より少なくても多くてもよく、また1個のみでもよい。
また、第1排気口250a、250b、250c及び第2排気口230a、230b、230cを、第1間隙44及び第2間隙45とマニホールド46内の空間とが連通するように設けているが、第1間隙44及び第2間隙45と処理中にウエハ14が載置される基板載置領域の下方の領域とを連通させ、第1間隙44及び第2間隙45に供給された不活性ガスを基板載置領域の下方の領域を介し、処理ガスと共に排気口98から排気しても良い。この手法は、被誘導体48や内側断熱材54の一部に連通孔を設けることで実現できる。なお、第1及び第2の実施形態と比較して処理ガスがより内側断熱材54側に侵入し易い経路ができるが、ガスの流れが第2間隙45、第1間隙44から処理室43内に向かうことによって、また、望ましくは第2間隙45、第1間隙44の圧力を処理室43内より高くすることによって、処理ガスの第1間隙44、第2間隙45への進入を防止できる。
ここで、処理室43内において、処理中にウエハ14が載置される基板載置領域の下方の領域は、処理ガスが排気される排気領域と考えることができる。また、マニホールド46内の空間も処理ガスが排気される排気領域と考えることができる。従って、本発明については、第1排気口250a、250b、250c及び第2排気口230a、230b、230cを、第1間隙44及び第2間隙45と排気領域とを連通させるように構成し、当該排気領域を介して、処理ガス及び不活性ガスを排気するものであると考えることもできる。
上述の実施形態では、処理室43内への処理ガスの供給に先駆けて第1間隙44又は第2間隙に不活性ガスを供給し、処理室43内への処理ガスの供給停止後に不活性ガスの供給を停止する場合について説明したが、少なくとも処理室43内へ処理ガスが供給されている間、不活性ガスが供給されていればよい。したがって、不活性ガス供給のタイミングは、処理室43内への処理ガスの供給・停止のタイミングと同時でもよい。
また上述の実施形態では、第2間隙45への不活性ガスの供給を第1間隙44への供給に先駆けて行うものとしたが、逆であってもよく、第1間隙44及び第2間隙45への供給が同時であってもよい。第1間隙44及び第2間隙45への不活性ガスの供給停止のタイミングについても、第2間隙45への不活性ガスの供給停止と第1間隙44への供給停止の順序は逆であってもよく、同時であってもよい。
上述の実施形態では、パージガスとして不活性ガスを、より具体的にはN2ガスを供給する場合について説明したが、パージガスとして使用可能なガスはこれに限られるものではない。例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスや、その他、化学的に不活性なガスを用いることが可能である。また不活性ガス以外にも、アンモニア(NH3)ガス等の処理ガスや、塩化水素(HCl)ガス等のエッチングガスを用いることもできる。パージガスとして処理ガスを用いる場合には、例えばウエハ14の処理に先駆けて反応管42の内壁等にコーティングを施し、反応管42等のダメージを抑えパーティクルを低減させることができる。パージガスとしてエッチングガスを用いる場合には、例えばウエハ14
の処理に先駆けて反応管42等に付着した生成物をエッチング除去することができる。
また上述の実施形態では、Si原子含有ガスとしてSiHCl3ガスを用いたが、Si原子含有ガスとしては、テトラクロロシラン(SiCl4)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)等のシリコン塩化物やシリコン水素塩化物を用いることができるほか、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H3)等のシリコン水素化物と、HCl、Cl2等のハロゲン系ガスと、を組み合わせて使用することが可能である。
また上述の実施形態では、C原子含有ガスとしてC3H8ガスを用いたが、C原子含有ガスとしては、エチレン(C2H4)やアセチレン(C2H2)等も用いることができる。
また上述の実施形態では、キャリアガスとしてH原子含有ガスを、より具体的にはH2ガスを使用する場合について説明したが、キャリアガスとしてはこれ以外にも、N2ガスや、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス等の希ガスを用いることが可能である。その場合、還元ガスとしてのH原子含有ガスを別途、添加する。
また上述の実施形態では、ドーパントガスとしてn型ドープ層を形成するN2ガスを供給する場合について説明したが、p型ドープ層を形成する場合、ドーパントガスとしてはトリメチルアルミニウム(TMA)、ジボラン(B2H6)、三塩化ホウ素(BCl3)等を使用することができる。
上述の実施形態では、内側断熱材54をフェルト状カーボンを主要構成とする例えば繊維材としたが、内側断熱材54の材質・形態は、これに限られるものではない。処理室43内の温度をそれほど高くする必要がない場合等には、例えば石英(SiO2)等の部材を用いることもできる。
上述の実施形態では、基板処理装置10が縦型熱処理装置として構成されている場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、横型熱処理装置、枚葉型熱処理装置など、減圧下でウエハ等を処理する処理室を備える基板処理装置にも本発明は好適に適用可能である。
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
本発明の第1の態様は、
反応管と、
該反応管の内部に設けられ基板を処理する処理室と、
前記反応管の内部に設けられ前記処理室を囲い前記基板を加熱する被誘導体と、
前記反応管の内部に設けられ前記被誘導体を囲う断熱体と、
前記反応管の外部に設けられ少なくとも前記被誘導体を誘導加熱する誘導体と、
前記処理室内に第1ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記被誘導体と前記断熱体との間に設けられる第1間隙に第2ガスを供給する第2ガス供給部と、を備える
基板処理装置である。
本発明の第2の態様は、
前記第1ガスが、前記基板を処理する処理ガスである
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第3の態様は、
前記第2ガスが、少なくとも前記第1間隙をパージする不活性ガスである
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第4の態様は、
前記第2ガス供給部は、前記反応管と前記断熱体との間の第2間隙にも前記第2ガスを供給するように構成されている
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第5の態様は、
前記第2ガス供給部は、前記第2間隙に設置されるガスノズルを少なくとも有し、該ガスノズルに設けられたガス供給口から前記第2ガスを供給するよう構成されている
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第6の態様は、
前記ガスノズルは、前記断熱体の上端よりも高い位置まで延在されており、
前記ガス供給口は、前記断熱体の上端よりも高い位置に設けられている
第5の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第7の態様は、
前記ガスノズルは、複数本設けられ、前記反応管の内周方向に均等に配置されている
第5の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第8の態様は、
前記反応管、前記被誘導体及び前記断熱体を支持し、前記処理室内を排気する排気口を有する支持部と、
前記第1間隙と前記第1ガスを排気するための排気領域とを連通させて、前記第2ガスを前記排気領域に流す連通孔とをさらに有する
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第9の態様は、
前記連通孔は、前記被誘導体と前記反応管との間に位置する前記支持部の上面に、前記第1間隙と前記支持部内の空間とを連通させるように設けられる
第8の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第10の態様は、
前記処理室内の圧力よりも前記第1間隙の圧力が高くなるように、少なくとも前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部を制御する制御部を備える
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第11の態様は、
前記処理室内の圧力及び前記第1間隙の圧力よりも前記第2間隙の圧力が高くなるように、少なくとも前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部を制御する制御部を備える
第4の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第12の態様は、
前記断熱体には、前記第1間隙と前記第2間隙とを流通させる流通孔が設けられている第4の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第13の態様は、
前記流通孔の流通路に、前記被誘導体からのエネルギーが前記第2間隙へ漏洩するのを抑制する屈曲部が設けられている
第12の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第14の態様は、
前記断熱体が、繊維材で形成されている
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第15の態様は、
前記断熱体が、炭素材又は炭素含有材で形成されており、
前記第1ガス供給部は、前記第1ガスとして、水素ガス又は水素含有ガスを少なくとも供給する
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第16の態様は、
前記断熱体が、耐食材料により表面がコーティングされた炭素繊維材で形成されている第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第17の態様は、
前記断熱体は、前記反応管の軸心と直交する方向に複数に分割されて形成されている
第16の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第18の態様は、
前記第2ガスが、窒素ガス又は希ガスである
第3の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第19の態様は、
前記第2ガス供給部は、前記被誘導体と前記断熱体との間に設けられる第1間隙に前記第2ガスを供給する第2のガスノズルをさらに備える
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第20の態様は、
反応管の外側に設けられた誘導体により前記反応管の内部に設けられ処理室を囲う被誘導体を誘導加熱しつつ、前記反応管の内部に設けられ前記被誘導体を囲う断熱体により前記被誘導体からのエネルギーを遮断し、前記処理室内を所定の温度に維持する工程と、
第1ガス供給部から前記処理室内に第1ガスを供給しつつ、第2ガス供給部から前記被誘導体と前記断熱体との間に設けられる第1間隙に第2ガスを供給し、前記処理室内の基板を処理する工程と、を有する
半導体装置の製造方法である。
本発明の第21の態様は、
反応管の外側に設けられた誘導体により前記反応管の内部に設けられ処理室を囲う被誘導体を誘導加熱しつつ、前記反応管の内部に設けられ前記被誘導体を囲う断熱体により前記被誘導体からのエネルギーを遮断し、前記処理室内を所定の温度に維持する工程と、
第1ガス供給部から前記処理室内に第1ガスを供給しつつ、第2ガス供給部から前記被誘導体と前記断熱体との間に設けられる第1間隙に第2ガスを供給し、前記処理室内の基
板を処理する工程と、を有する
基板の製造方法である。
本発明の第22の態様は、
反応管の外側に設けられた誘導体により前記反応管の内部に設けられ処理室を囲う被誘導体を誘導加熱しつつ、前記反応管の内部に設けられ前記被誘導体を囲う断熱体により前記被誘導体からのエネルギーを遮断し、前記処理室内を所定の温度に維持する工程と、
第1ガス供給部から前記処理室内に第1ガスを供給しつつ、第2ガス供給部から前記被誘導体と前記断熱体との間に設けられる第1間隙に第2ガスを供給し、前記処理室内の基板を処理する工程と、を有する
基板の処理方法である。
本発明の第23の態様は、
前記反応管、前記被誘導体及び前記断熱体の下端をそれぞれ支持する支持部を備え、
前記支持部は、
前記処理室を挟んで前記ガスノズルと対向する位置に前記処理室内を排気する排気口を有し、
前記ガスノズルは、
前記断熱体の上端よりも高い位置まで延在され、
前記ガス供給口は前記断熱体の上端よりも高い位置に設けられる
第5の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第24の態様は、
前記反応管、前記被誘導体及び前記断熱体をそれぞれ支持し、前記処理室内を排気する排気口を有する支持部と、
前記第1間隙と前記第1ガスを排気するための排気領域とを連通させて、前記第2ガスを前記排気領域に流す連通孔とをさらに備え、
前記連通孔の開口面積は、
前記第1ガスを前記排気口へ排気する経路となる前記支持部の開口部の前記反応管の軸心と直交する方向の断面積より小さい
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第25の態様は、
前記第2ガス供給部は、前記第1間隙に設置される第2のガスノズルを有し、前記第2のガスノズルに設けられた第2ガス供給口から前記第2ガスを供給するよう構成されている
第1の態様に記載の基板処理装置である。
本発明の第26の態様は、
前記第1間隙に前記第2ガスを供給した後、前記処理室内に前記第1ガスを供給するように、少なくとも前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部を制御する制御部を備える第1の態様に記載の基板処理装置である。