本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて順次説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1の送液構造体110は、図1に示すように、液体を構造体内に導入する開放孔113を備えた第1流路115と、第1流路に連続する隘路である第2流路116と、前記第2流路に連続する第3流路117と、第3流路の終端に直接接する吸液体111と、を有している。第1流路115、第2流路(隘路)116、第3流路117のそれぞれの深さは略一定で、幅は各流路について一定である。各流路間では、第2流路(隘路)の流路幅がその上流側の第1流路115及び下流側の第3流路117の何れよりも狭くなっている。
この送液構造体は、流路用の溝が形成されているPDMS(ポリジメチルシロキサン)からなる主基板と、主基板を蓋するガラスからなる蓋基板とを貼りあわせることにより構成されている。ポリジメチルシロキサンよりなる基板は、疎水性(接触角100°〜120°)であり、ガラスよりなる基板は、親水性(接触角5°〜30°)であるので、流路の4つの壁面のうち、ガラスで構成された1つの壁面が親水性となり、他の3つの壁面が疎水性(PDMS)となる。
この構造においては、溝幅が狭くなるに従い流路を構成する4つの壁面全体に占める親水性壁面(ガラス)の割合が相対的に小さくなり、疎水性壁面(PDMS)の割合が相対的に大きくなるので、全体として毛細管力が小さくなる。他方、流路幅が広くなるに従い毛細管力が大きくなる。この原理を利用して、第3流路117に作用する毛細管力を第1流路115に作用する毛細管力と同等以上にする。すなわち、第1流路115において液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、隘路116(第2流路)において液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、前記第3流路117において液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、0<P2<P1≦P3が成立するように、各流路の溝幅が設定される。この原理の詳細を次に説明する。
流路の断面が円形で、その全壁面が親水性である典型的な流路の場合、圧力Pが液体の流れる方向へ働き、この圧力Pは、図12の式1で表される(σは気液界面の界面張力、θは接触角、rは流路の半径。)。
流路壁面の全面が疎水性の場合は、液体を流さない圧力Pが発生する。よって親水性と疎水性の両方を存在させることによって、毛細管現象が生じる状態と毛細管現象が生じない状態を設計することが可能となる。流路高さをh、幅をwとする4つの壁面を有する流路形状において、疎水性の主基板の接触角θ1、親水性の蓋基板の接触角をθ2、気液界面の界面張力をσ、としたとき、流路の上面で働く界面張力をF1、下面で働く界面張力をF2、左右両側面で働く界面張力をF3とするとき、これらはそれぞれ、図12の式2、式3、式4で示される。流路に働く圧力Pは、F1、F2、F3の和を断面積whで割ったものであるので、この場合の流路に働く圧力Pは図12の式5で示すことができる。圧力Pが正の値になるとき、毛細管現象が生じて液体が進み、圧力Pが負の値になる場合は毛細管現象が生じず、液体の動きが停止する。
式1から流路の全体が親水性の壁面で構成されている場合、毛細管力は流路が細くなるにつれ強くなるが、流路径の大小のみで液体の移動を制御することは容易でないので、実施の形態1では流路壁面の一部を疎水性とすることにより、合目的的に流れを制御する。
すなわち、疎水性の主基板に流路用の溝を設け、親水性の蓋基板で前記溝の蓋をして流路を構成する。そして溝深さを略均一とし、図4に示すように、第1流路115における流路幅をL1とし、第2流路(隘路)116における流路幅をL2とし、第3流路117における流路幅をL3とするとき、L2<L1≦L3となるようにし、0<P2<P1≦P3を成立させる。この構造が0<P2<P1≦P3を成立させる最も簡単な構造の1つである。
なお、各流路間における溝深さは、溝幅で規制する各流路間の毛細管力の大小関係を逆転させない範囲内において異なっていてもよい。
図2に、実施の形態1にかかる送液構造体の断面図を示す。図2に示すように、実施の形態1にかかる送液構造体は、外部に開放された開放孔113が設けられると共に、流路114、第1流路115、第2流路(隘路)116、第3流路117用の溝が形成された主基板201と、これらの流路を下方から蓋し、かつ第3流路117の下流側に吸液体111を載置する蓋基板202と、で送液構造体が形成されている。
主基板201の厚みは0.1mm〜10mm程度であり、蓋基板202の厚みは0.01mm〜10mm程度である。開放孔113は直径が10μm以上の貫通孔とする。流路114、第1流路115、第2流路116(隘路)、および第3流路117部の流路高さ(溝深さ)は1μm〜5mmとし、例えば全て略一定(50μm程度)とする。溝深さは必ずしも一定とする必要はないが、一定であると作製が容易である。
溝幅はL2<L1≦L3が満たされればよい。ただし、毛細管力を利用するため、流路幅は1μm以上、10mm以下、好ましくは10μm以上、5mm以下、より好ましくは40μm以上、1mm以下とする。
主基板201としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)基板などの疎水性基板を用る。蓋基板202としては、ガラス基板などの親水性基板を用いる。ただし、これらに限定されるものではない。送液構造体の利用用途に応じて適切な素材を選択するのがよく、例えば送液構造体に光学的検出を行う検出部を組み込む場合には、主基板201および蓋基板202の何れか一方または双方の材料として、励起光による発光が少ない透明または半透明の材質を用いることが望ましい。
このような透明または半透明な材料としては、ガラス、石英、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フィルム等が挙げられる。なかでも、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂は、透明性、成型性の観点から好ましい。励起光による発光が少ないプラスチック材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレートの水素原子をフッ素原子に置換したフッ化ポリメチルメタクリレート等のフッ素系のプラスチック材料や、触媒や安定剤等の添加剤に蛍光を発しない部材を用いたポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
他方、送液構造体の流路内で電気的な制御や電気的な測定を行う場合には、主基板201または蓋基板202の表面に電極を形成する必要があるので、主基板201または蓋基板202の一方または両方を電極形成可能な材料とする。電極形成可能な材料としては、平坦性、加工性の観点からガラス、石英、シリコンが好ましい。また、電極は、作製が容易である点で、溝を形成しない蓋基板に形成するのが好ましい。
流路の形成方法としては、例えば、機械加工による方法、レーザー加工による方法、薬品やガスによるエッチングによる方法、金型を用いた射出成型法、プレス成型法、鋳造による方法等があるが、形状寸法の再現性が高い点で、金型を用いる方法、エッチングを用いる方法が好ましい。
図3、図4に、実施の形態1にかかる送液構造体の液の流れを示す。図3(a)〜(e)までは、従来構造の場合と同様の流れ(通常の液の流れ)であるが、従来構造の送液構造体では、図3(e)と図3(d)の間において毛細管力によって第2流路(隘路)116から第1流路115に液の逆流が発生し、第3流路117に気液界面が生じる(図19(e)、図20(b)〜(c)参照)。実施の形態1にかかる送液構造体ではそのような気液界面は生じない
すなわち、実施の形態1にかかる送液構造体では、図4に示すように、第3流路117の流路幅L3は、第1流路115の流路幅L1以上としてあるので、第3流路117に働く毛細管力502が、第1流路115に働く毛細管力501と同等か、または下流方向への毛細管力502が勝る。それゆえ第3流路と吸液体界面で液体が逆流し空気の流入を生じることがない。これにより図3(f)に示すように、液体が完全に吸液体111に吸収される。
なお、各流路の内壁面の「親水性」や「疎水性」は、基板材料が親水性の基板又は疎水性の基板を用いることにより容易に実現できるが、本発明でいう親水性や疎水性は基板材料自身の持つ性質に由来するものに限定されない。例えば、疎水性である流路の一部に親水性処理を施すことにより、「流路の内壁面の一部が疎水性」を実現することができる。また、親水性材料からなる基板表面の一部に疎水膜の形成等の疎水処理を施すことにより「流路の内壁面の一部が疎水性」としてもよい。親水化処理としては、例えば酸素プラズマ処理やUV処理などを用いることができる。また、界面活性剤や親水性の官能基を持つ試薬を表面に塗布することによっても親水性を高めてもよい。他方、疎水化処理としては、フッ酸処理や、テトラフルオロエチレン被膜の形成する等の方法がある。
また、上記では流れ方向に直交する流路断面の形状が矩形である場合について説明したが、流路形状はこれに限定されるものではない。円形状、楕円形状、半円状、逆三角形状等であってもよい。流路断面形状が矩形以外の場合であっても、断面の特定の領域ごとの界面張力を求め、構成比率に応じて界面張力積算して流路全体に働く圧力Pを求めればよい(図12の式5参照)。
また、上記した流路114は、本発明の必須の構成要素ではない。
(実施の形態2)
実施の形態2は、第2流路内にエレクトロウエッティング技術を用いた開閉バルブを設けた点に特徴を有する送液構造体に関する。この送液構造体を図7に示す。図7(a)は送液構造体の全容を示す図であり、図7(b)は主基板、図7(c)は蓋基板を示す概念図である。
図7(a)に示すように、実施の形態2の送液構造体は、液体を送液構造体に注液するための開放孔113と、開放孔113に続く第4流路134と、第4流路に続く隘路である第5流路144(以下、隘路ともいう)と、第5流路144に続く第1流路115と、第1流路に続く第2流路116(隘路)と、これに続く第3流路117と、第3流路の終端に直接接する吸液体111と、を有する。
この送液構造体110は、主基板201と蓋基板202とが重ね合わされた構造である。図7(b)が主基板であり、図7(b)に示すように、主基板201には、開放孔113と各流路用の溝が形成されている。また、図7(c)が蓋基板202であり、図7(c)に示すように、蓋基板202には、エレクトロウエッティング用の参照電極171、作用電極172、引き出し線、引き出し電極173・174、検出用電極203aが形成されている。更に、蓋基板202には、検出部203用の電極が形成されている。
更に、蓋基板の端部には、吸液体111が第3流路117の下流端に接するところに位置決めされて載置されている。引き出し電極173・174は、外部電源と接続できるように主基板が重ならない蓋基板部分に形成されている。検出部を形成する方法については下記する。
実施の形態2の送液構造体110においても、上記実施の形態1と同様、各流路の深さは略均一であり、各流路の幅は、第1流路115において液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、第2流路116(隘路)において液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、第3流路117において液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、0<P2<P1≦P3が成立するように設定されている。
更にこの送液構造体110においては、第4流路及び第5流路の幅が、第4流路134において液体に発生する表面張力による圧力をP4とし、第5流路144(隘路)において液体に発生する表面張力による圧力をP5とするとき、P5<P4≦P3が成立するように設定されている。
この構造の送液構造体では、第3流路117に作用する毛細管力が、第1流路115に作用する毛細管力と同等以上となり、且つ第3流路117に作用する毛細管力は、第4流路134に作用する毛細管力と同等以上となるので、上記実施の形態1と同様に、送液の停止が起こらず、各流路からスムースに液を流しきることができる。
更にこの構造の送液構造体では、エレクトロウエッティング用作用電極172と参照電極171とが協働して、液体の流れを停止させ又は液体の流入を可能にする開閉バルブとして機能する。よって、第1流路側への液体の流入を任意に制御することができる。なお、開閉バルブとして直接作用するのは作用電極172である。
この実施の形態2にかかる送液構造体用の主基板には、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)などの疎水性の樹脂材料を用いることができる。また、蓋基板には、ガラスなどの親水性材料からなるものを用いることができる。また、溝幅としては、第4流路134の溝幅を例えば200μm、第5流路144(隘路)の溝幅を例えば50μm、第1流路115の溝幅を例えば600μm、第2流路116(隘路)の溝幅を例えば50μm、第3流路117の溝幅を例えば600μmに設定し、主基板201に形する各流路の溝深さを例えば50μm均一とする。開放孔113は、例えばポンチ加工によって形成する。吸液体としては、例えばコットンを用いる。
なお、吸液体は、蓋基板に載置することなく、主基板の下流側端部に直接固定してもよい。また、図7(a)、(c)では、模式的に直流電源と接続されている状態を示しているが、これに限らず、交流電源やスイッチ回路などを組み合わせた電圧印加装置を接続することができる。更に、第1流路115に、検出用電極203aが設けられており、検出用電極203aにも当然引き出し電極が形成されるが、ここでは説明を省略している。
(検出用電極の形成方法)
検出部203の一部である電極153(図6参照)の作製は、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によって銀層を1μm形成し、リフトオフ法によってパターニングされた電極153を形成した。電極153作成後、Agの表面の塩化処理を行い、Ag/AgCl層の電極153を作成した。塩化処理には0.1M塩酸中で電極153に+100mV、50秒の電圧印加を行った。
(各種電極の形成方法)
エレクトロウエッティングバルブ用電極、引き出し電極等の作成方法について説明する。エレクトロウエッティングバルブ用の参照電極171、作用電極172、引き出し電極173・174及び引き出し線は、フォトリソ法によりレジストをパターニングした後、スパッタ法によってチタン層(またはクロム層)50nm、金層100nmを形成し、リフトオフ法によってレジストとレジスト上に形成されたチタン層および金層を除去し、所望の形にパターニングする方法により形成した。
その後、作用電極については、電極表面をテトラフルオロエチレンで覆い、テトラフルオロエチレン被膜により表面を絶縁すると共に疎水性とした。この参照電極172部分がエレクトロウエッティングバルブ本体となる。
エレクトロウエッティングバルブ用参照電極の表面は、テトラフルオロエチレン以外の疎水性の表面コート剤で覆ってもよい。また、作用電極を形成した蓋基板を空気中(自然大気中)に24時間以上放置することによって金表面に形成される自然酸化膜(接触角60°〜85°)をテトラフルオロエチレンなどからなる疎水膜に代わる近疎水性膜(親水性の低い膜)として用いることもできる。なお、エレクトロウエッティングバルブを低電圧で駆動させるためには、疎水性の膜または上記近疎水性膜は可能な限り薄いことが望ましく、好ましくは膜厚みを1nm以下とする。
(エレクトロウエッティングバルブの動作原理)
図7(a)、(c)に示されるように、作用電極172は流路壁面の1面を構成する親水性の蓋基板202の流路部分を覆うように形成されており、作用電極172の表面は疎水性膜で被覆されている。よって、作用電極172が配置された部分の流路全壁面(4面)が疎水性となり、作用電極172が設けられた第5流路(隘路)144の溝幅および溝深さはそれぞれ50μmと狭いので、液体はエレクトロウエッティングバルブ用作用電極172が設けられた箇所を通過することができない。他方、作用電極172と参照電極171との間に電圧が印加(0.8V〜1.5V程度)されると、作用電極172上を液体が通過することができるようになる。
このことを図7、8を参照しつつ説明する。開放孔113から注液された液体はエレクトロウエッティングバルブ用参照電極171上に接しながら第4流路134を流れ、第5流路(隘路)144の流路に設けられたエレクトロウエッティングバルブ用作用電極172部分に達する。エレクトロウエッティングバルブ用作用電極172は疎水性膜または親水性の低い近疎水性膜で被覆されており、電圧を印加していない場合は、液体との接触角が60°以上になる。その結果、表面張力により発生する圧力Pが0又はマイナスとなり、液体の流れが停止させられる(図8及び図12参照)。すなわち、電圧印加がOFFのとき、開閉バルブは閉じた状態となる。
他方、引き出し電極171・174に電圧が印加されると、参照電極171上を通過した液体は負に帯電して、作用電極172と液体の間で仮想的なキャパシタが形成され、液体が作用電極172に引き寄せられる。この結果、液体の作用電極に対する接触角が小さくなる。例えば接触角が40°程度となる。つまり、見掛け上、作用電極表面の親水性が強くなり、親水性の影響が大きくなるので、表面張力により発生する圧力(毛細管力)が正となる。これにより、液体が当該隘路を通過することができることになる。すなわち、電圧印加ONのとき、開閉バルブは開放された状態となる。
ここにおいて、上記原理からして、エレクトロウエッティングバルブで液体の流れを的確にON,OFFさせるためには、親水性部分と疎水性部分の影響が全体として打ち消しあうように調整しておく必要があるので、流路壁面の少なくとも一部を疎水性にする必要がある。蓋基板に親水性基板を用い、各流路用溝を形成する主基板に疎水性基板を用いる場合においては、流路幅を狭くすることにより疎水性の影響を大きくできるので(毛細管力が小さくなる方向に働く)、これと作用電極172表面の接触角の変化をバランスさせることにより、液体の流れを的確に制御できるようにする。このためには、好ましくは第4流路の流路幅、流路高さをそれぞれ100〜500μmとし、第1流路115の流路幅、流路高さを、それぞれ500μm〜1mmとし、第5流路(隘路)144の流路幅、流路高さを、それぞれ10以上〜300μm未満とする。
さらに、作用電極172表面の疎水性膜の疎水性を適正なものとし、電圧を印加し作用電極172表面の接触角が減少したときに、疎水性壁面の効果より親水性壁面の効果が大きくなるように設計する。疎水性の程度としては、例えば接触角90°〜145°、好ましくは
100°〜120°である。
ところで、第5流路(隘路)144以外の流路は、親水性の影響を大きくして液体の流れを良くするのがよく、このためには、流路幅を大きくすることが有効である。しかし、各流路に流路幅の広狭があると、吸液体方向に液体が前進する過程で連続する流体の末尾(気液界面)が幅の広い流路に入ったときに当該流路における毛細管力が逆方向(逆流する方向)の力を生じる。つまり、連続する流体の後側と前側とで逆方向の毛細管力が作用する。このため、強い毛細管力が作用している吸液体と、これに接続されている第三流路の境界に気泡が入りで流体が分断される。これにより吸液体がもはや流路内の液体を吸い出しできなくなる。実施の形態2では、流路終端部である第3流路117を、全流路中で最も毛細管力の強い部分(同等を含む)とする条件を満たしつつ、各流路幅を好適に設定している。それゆえ、流路内に液体が残留するということがない。
(実施の形態3)
実施の形態3は本発明送液構造体を利用したマイクロ分析チップに関する。実施の形態3にかかるマイクロ分析チップは、図9に示すように、開放孔113と、第4流路118と、第5流路(隘路)114と、第1流路115と、第1流路に連続する第2流路(隘路)116と、前記第2流路に連続する第3流路117と、第3流路の終端に直接接する吸液体111と、を有している(図9参照)。なお、流路119は、本発明の必須の構成要素ではない。
ここで、各流路は、第1流路115における液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、第2流路116における液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、第3流路117における液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、0<P2<P1≦P3が成立する構造としてある。また、第4流路118における液体に発生する表面張力による圧力をP4とし、第5流路(隘路)114における液体に発生する表面張力による圧力をP5とするとき、0<P5<P4≦P3が成立する構造としてある。それゆえ、第3流路117に作用する毛細管力は、第1流路115に作用する毛細管力と同等以上となり、且つ第3流路117に作用する毛細管力は、第4流路118に作用する毛細管力と同等以上となる。このため、上記実施の形態2と同様に、送液の停止が起こらず、スムースに液を流しきることができる。
更に、本実施の形態では、第5流路(隘路)114に抗体等の反応物質が固定化された反応部を備える。また、第2流路(隘路)116には、検出部が設けられ、例えば第2流路の壁面に検出部の一部を構成する検出用電極が設けられている。なお、反応部は反応させる機能を有する部分であればよい。また、検出部は目的物質を検出できる機能を有する部分であればよい。そして両者ともに特段の制約はないので、図9には反応部及び検出部を図示していない。
実施の形態3のマイクロ分析チップでは、第5流路(隘路)114に反応部が設けられ、抗体などが固定されているが、第5流路は幅が狭いので液体(被検液)に含まれる抗原等の検出目的物質は少ない拡散距離でもって抗体等の反応物質と接触することができる。それゆえ、素通りしてしまう検出目的物質が少ないので、反応効率が高い。
また、検出部が幅の狭い第2流路(隘路)116に設けられている。この構造であると、第1流路より幅が狭い第2流路に入った液体は流れを速め、渋滞なく均一に流れるので、検出精度が高まる。また、第5流路の場合と同様、検出目的物質の素通りが減少するので、この側面からも検出精度が高まる。
なお、検出部における検出方法は、電極を用いて電気量を測定する方法(電気化学的方法)や、外部より光を照射しその反射光や透過光を測定する光学的方法などがあるが、いずれの方式であっても、液の流れが渋滞することがない効果(検出精度や検出再現性の向上効果)が得られる。
更に、開放孔113から例えば複数の液体を注入した場合、液体は先ず第4流路118に入るが、第4流路118の容積は抗原が固定された第5流路114よりも容積が大きいので、ここで拡散混合されて、容積の小さい幅狭の第5流路114内に入ることになる。
また、第5流路114に続く第1流路115は、第5流路114及び第2流路よりも容積が大きいので、例えば酵素基質反応により第5流路114で生成された物質は容積の大きい第1流路115内で拡散混合され均一な溶液となり(又は例えば他の溶液と反応し電極活性物質となり)、容積の小さい幅狭の第2流路(隘路)116に入り、ここで検出されることになる。つまり、第4流路や第1流路は、拡散混合領域として機能する。これは、マイクロ分析チップとして好都合である。
以上から、実施の形態3によると、簡単な構造でもって簡便かつ迅速に目的物質の検出が行え、しかも検出精度に優れたマイクロ分析チップを実現することができる。
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態3にかかるマイクロ分析チップを更に発展させたものである。実施の形態4にかかるマイクロ分析チップの具体的構成の詳細を順次説明する。
(全体構成)
実施の形態にかかるマイクロ分析チップの全体構成図を、図10に示す。図10に示すように、実施の形態4のマイクロ分析チップは、第1の液体用の第1開放孔2001と、第2の液体用の第2開放孔2002と、これらの開放孔に連続する第1液溜め部2003、第2液溜め部2004と、ミキサー部2007と、第1隘路2009と、第4流路2008と、第5流路(第2隘路)2011と、第1流路2010と、第2流路(第3隘路)2013と、第3流路2016と、第3流路の終端に直接接する吸液体2014と、を有し、第4流路2008には、反応部2017が設けられ、第1流路2010には、検出部2012が設けられている。
更に、チップの端部に、外部接続端子2015が設けられている。
第1開放孔2001から第1の液体が注入されると第1液溜め部2003に第1の液体が注入される。第2開放孔2002も同様に、第2の液体が注入されると第2液溜め部2004に第2の液体が注入される。
上記第1液溜め部および第2液溜め部の下流側には、注入された液体のミキサー部2007への流入を停止または開始することのできる第1開閉バルブ2005および第2開閉バルブ2006がそれぞれ設けられている。ミキサー部2007は第1の液体と第2の液体を混合できる構造としてある。
ミキサー部2007には、第4流路2008が第1隘路2009を介して接続されている。第4流路2008に設けられた反応部2017には、溶液に含まれる被検出物質と反応する物質が配置されている。
なお、図10の例では、ミキサー部と反応部は第1隘路2009を介して接続されているが、第1隘路2009を介すことなく直接接続されていてもよい。
第1流路2010は、第5流路(第2隘路)2011を介して第4流路2008と接続されており、第1流路2010には検出部2012が設けられている。検出部は被検出物質を直接または間接的に検出することができるよう構成されている。なお、被検出物質を直接検出できる構成である場合には、第1流路2010を有さない構成とすることができる。この場合には、上記第4流路が第1流路の機能を果すことになる。
次に、吸液体2014が第3流路2016及び第2流路(第3隘路)2013を介して第1流路2010に接続されている。流路を流れて来た液体は吸液体2014により吸収される。
このマイクロ分析チップは、外部接続端子2015を要しており、当該端子を介して外部電源への接続、電気的制御信号の入力、検出信号の出力などを行えるようになっている。これにより、電源やICなどの制御回路を外付けとすることができるので、その分、チップのコンパクト化を図れる。
なお、このマイクロ分析チップにおいても、上記実施の形態2と同様、最下流に位置する第3流路2016の毛細管力が前記第1流路2010および第4流路2008の毛細管力より大きくなるように、各流路サイズが調整されているので、第1および第4流路に液体が残留することなく全ての液体が吸液体2014に排出される。
実施の形態4にかかるマイクロ分析チップについて更に説明する。
〈液体の注入〉
第1の液体用の開放孔2001および第2の液体用の開放孔2002より、それぞれ第1の液体および第2の液体を注入する。これにより、液溜め部2003、2004にそれぞれの液体を注入できる。
開放孔2001・2002は、外部(大気)に開放された孔であって毛細管力が働かない程度の大きさ(例えば2mmΦ)としてある。毛細管力が働かない大きさである場合には、開放孔が疎水性であっても液体を円滑に注入することができる。開放孔2001・2002は、毛細管力の働く大きさであってもよいが、この場合には液体を円滑に注入できるように、開放孔に親水性処理を施す等する必要がある。
なお、開放孔に液体を充填したカートリッジを接続する方法で液体を注入させることもできる。この場合にはカートリッジ内の液体が流路系に充分に流れ込むよう、開放孔に空気抜き用の隙間が確保できるようにするか、または別途空気抜き孔を設けるのが好ましい。
図10の例は、2つの開放孔を有する構造であるが、開放孔は2つに限られず、3つ以上とすることもできる。例えば、第1の液体用の開放孔に被検出物質を含む試料を、第2の液体用の開放孔に試薬を、第3の液体用の開放孔に標準試料を、第4の液体用の開放孔に洗浄液を注入する等とすることができる。
洗浄液を注入する第4開放孔を設けた構造であると、チップ内を洗浄し繰り返し使用することによって、チップのコストパフォーマンスを高めることができる。なお、検出処理前後に第1の液体用の開放孔等から洗浄液を注入して流路内を洗浄することにより、試料等の汚染を低減することもできる。これにより検出誤差を少なくすることができる。
〈開閉バルブ〉
開閉バルブを設ける流路は、液体を適切に停止または流入させるための空間容積を必要とするが、この容積は開閉バルブの種類によって異なる。開閉バブルとしては、エレクトロウエッティングバルブや、ダイアフラム型バルブを用いることができる。エレクトロウエッティングバルブは設置に多くの空間容積を必要としないので好ましい。
〈ミキサー部〉
ミキサー部は第1の液体と第2の液体を充分混合できるように構成する。例えば、ミキサー部に、第1開閉バルブおよび第2開閉バルブから流入して来た液体が自然混合されるように、マイクロピラー構造設けるのもよい。また、T字型ミキサー、Manzミキサー、3次元蛇行流路を用いたミキサーなどを設けることもできる。
図10の例は2液を混合する場合であるが、3液以上の液体を混合するように構成してもよい。この場合、第3の液体の注入と、流入タイミングを制御するために流路内の適切な位置に第3の液体用の開放孔及び第3開閉バルブを設けるのが好ましい。
〈第4流路〉
第4流路2008は、反応を行う反応領域として機能する。第4流路2008に設けられる反応部2017は第4流路2008の全部であってもよいし、その一部であってもよい。反応部2017には、例えばサンプル溶液に含まれる被検出物質を特異的に認識し反応する分子が配置される。被検出物質が抗原である場合は、抗体を反応部に固定化するとよい。被検出物質を検出するためには、酵素免疫反応のサンドイッチ法を用いることができ、この場合、抗原を酵素標識抗体(二次抗体)と反応させ、抗原と酵素標識抗体が結合した複合体とする。この複合体を反応部に予め固定化しておき抗体(一次抗体)と反応させる。次に基質を導入し、二次抗体に標識されている酵素と反応させ、反応により生成された電気化学的に活性のある物質を検出部の電極上で電気化学的に検出を行う。反応部では、検出部にて検出できる物質が被検出物質の量に応じて生成される。なお、反応部における検出手段が光学的な手段であってもよい。
〈第3流路〉
第3流路2016は、ここで発生する表面張力による圧力が注入側の他の流路における表面張力による圧力と同等以上となるように構成されている。これ以外の事項、例えば材質、形状など条件に特段の制約はない。例えば主基板としてポリジメチルシロキサン(PDMS)基板が使用されている場合には、第3流路部分に酸素プラズマ処理を施して部分的に親水性を高めることにより、第3流路で発生する毛細管力を大きくすることができる。
〈吸液体〉
吸液体2014は、液体を吸収することのできるものであれば特段の制約がない。液体を吸収することのできる材質としては、多孔性物質、親水性のメッシュ、海綿体、綿、濾紙、水分保持力の強い高分子網状体などが挙げられる。
なお、吸液体が円滑に液体を吸収することができるように、液体を注液するための開放孔以外の大気開放孔を設けるのもよい。また、吸液体の一部が第3流路に入り込んでいてもよい。ただし、その分、第3流路の容積が減少する。
〈外部接続端子〉
外部接続端子2015は、外部よりチップに駆動電源や駆動情報を入力し、また外部に検出結果等を出力するためのものである。この端子の形成に金薄膜を用いると、外部接続端子の形成をエレクトロウエッティングバルブや検出電極などと同様に行うことができるので生産効率がよい。なお、金に代えて、銅や鉄またはアルミニウムなどの他の導電性材料を用いてもよいことは勿論である。
〈2層構造体〉
実施の形態4にかかるマイクロ分析チップは第1基板(主基板)2101と第2基板(蓋基板)2102を重ね合わせた2層構造になっている。2層構造の各々の層構造について図11を用いて説明する。
第1基板(主基板)2101は、透明性および加工性が高いものが良く、また液体の移動の制御を行うために疎水性を有するものがよい。このような基板としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるものがよい。他方、第2基板(蓋基板)は、電極が形成し易い材料が良く、第1基板を疎水性とした場合においては親水性とする必要がある。このような基板として、ガラス、石英、シリコン等からなる基板が好適である。
第1基板及び/又は第2基板は上記親水性または疎水性の特性を有することに加え、蛍光やUV光を用いて検出目的物質を測定するために、励起光による発光が少ない透明または半透明の材質を用いることが望ましい。このような材質としては、実施の形態1に記載したものや、特開2003−149252号公報で提案される材質を用いることができる。
各基板に対し次のような加工を行なう。第1基板(主基板)に対しては、上部に第1の液体用の開放孔2001および第2の液体用の開放孔2002を上向きに開口する。また、液溜め部2003・2004、第1開閉バルブ2005・第2開閉バルブ2006を設ける流路、ミキサー部2007・第4流路2008・第1隘路2009・第1流路2010・第5流路(第2隘路)2011・第2流路2013、第3流路2016用の凹状溝を形成する。また吸液体2014を収納する凹状空間を下向きに形成する。この凹状空間に吸液体2014が配置される。
第2基板(蓋基板)2102に対しては、その表面に第1開閉バルブ用の電極2105・第2開閉のバルブ用電極2106、検出用電極2112を形成し、また第2基板の端部に外部接続端子2015を形成する。更に各電極を外部接続端子2015に接続する引き出し線を形成する。各電極の形成は、公知の方法を用いればよい。なお、開閉バルブとしてエレクトロウエッティング方式を用いる場合には、第1開閉バルブ用電極2105および第2開閉バルブ用電極2106は作用電極と参照電極を含むものとなり、接続は各々2端子または3端子で行なうことになる。
上記のように加工した両基板2101・2102を加工面を内側にして張り合わせる。これにより実施の形態4にかかるマイクロ分析チップが完成する。
(実施の形態5)
実施の形態5は、携帯可能なハンディ型のマイクロ分析装置に関する。実施の形態5の内容を図13に基づいて説明する。図13は、実施の形態5にかかる携帯可能なハンディ型のマイクロ分析装置の概要を説明するための概念図である。
このハンディ型マイクロ分析装置は、マイクロ分析チップ2302と、このマイクロ分析チップを駆動制御する制御用ハンディ機器2301とで構成されている。マイクロ分析チップ2302は、上記実施の形態4で説明したと同じマイクロ分析チップである。よって、ここではマイクロ分析チップの詳細な説明は省略する。
図13に示すように、制御用ハンディ機器2301の下部には、実施の形態4で説明したと同様なマイクロ分析チップ2302の外部接続端子2015を挿入するチップ接続口2303が設けられており、このチップ接続口の奥には、外部接続端子2015と電気的に接続する外部入出力端子(図示せず)が設けられている。マイクロ分析チップの外部接続端子2015をチップ接続口2303に挿入すると、制御用ハンディ機器2301内の外部入出力端子とマイクロ分析チップ2302の外部接続端子とが電気的に接続される。
制御用ハンディ機器2301には、分析チップの測定結果(被検出物質の量など)を表示することができる表示部2304、および、測定の開始、停止や、測定パラメータを特定するための様々なデータを入力することのできる入力部2305が設けられている。入力部2305としては、例えばタッチパネル構造が採用できる。
更に制御用ハンディ機器2301には、図示しないが、データを処理することのできるCPUや入力情報および出力情報を処理するI/O論理回路などの情報処理システムが組み込まれている。
マイクロ分析チップ2302を制御用ハンディ機器2301に接続し、各種データを入力し、測定開始ボタンを押す。これにより、予めマイクロ分析チップに備えられ、且つ開閉バルブにより流路内への流入が停止されていた試薬液や試料液(被検液)などの溶液が流路内内に順次進入する。これにより各流路内で所定の反応が行われて検出可能物質になり検出部に至り、ここで被検出物質の量に応じた電気信号が発せられる。この電気信号は外部接続端子2015から外部に出力される。
外部接続端子2015から出力された信号は、外部接続端子2015と電気的に接続された制御用ハンディ機器の外部入力端子が受け取り、この信号を制御用ハンディ機器に予め格納されたソフト情報に基づいて分析する。これにより、被検出物質の量または種類などを特定することができる。
上記制御用ハンディ機器しては、例えば携帯電話やPDAなどの携帯電子機器を活用することができる。ここでは携帯電話を例に挙げて説明する。例えばコンピュータ機能を備えた携帯電話に、上記したチップ接続口を設け、この携帯電話にマイクロ分析チップから発信されたデータを処理する分析ソフトを格納する。この携帯電話は通常は携帯電話として機能し、必要に応じて制御用ハンディ機器として機能させることができる。
操作方法を例示する。携帯電話にマイクロ分析チップを接続し、携帯電話のボタンにより各種データを入力した後、測定開始ボタンとして設定されたボタンを押す。これにより、あらかじめマイクロ分析チップに準備され、かつ開閉バルブにより流路内への流入が停止されていた試薬液や被検液などが流路内へ進行する。この後、分析チップが順次動作して検出部において検出された被検出物質量に応じた電気信号を携帯電話に出力する。携帯電話のコンピュータがこの信号をソフト的に解析し被検出物質の量や種類などを特定する。これを携帯電話のディスプレイに表示する。また、オペレータの指示を受け、その電送機能を利用して解析情報を離れた場所にまで電送する。
このように、携帯機器を利用することにより、コストパフォーマンスに優れ、かつ利便性・使い勝って性に優れたマイクロ分析装置を実現することができる。
なお、分析チップと携帯電子機器との間の信号伝達方式は、両者間で電気信号がやり取りできる限りどのような方式・形態でもよく、必ずしも上記のようなチップ接続口を介する方式である必要はない。
(実施の形態6)
実施の形態6のマイクロ分析装置は、試料(被検液)の採取、検出データの分析、分析結果の出力等、の各機能が複数の基板にそれぞれ形成され、これが積層され一体化された一体型マイクロ分析装置に関する。
図14に一体型マイクロ分析装置の平面見取り図を示す。図14に示すように、この一体型マイクロ分析装置は、サンプル採取部2401、液体流路部2402、駆動分析処理部2403、入出力論理処理部2404および出入力部2405が、それぞれ1つの基板に形成されている。ただし、全ての要素を一つの基板に形成してもよいし、関連する要素ごとを1つの基板に形成する等してもよい。
サンプル採取部2401には、内部に毛細管が有する針が配置されており、この針を人体又は試料体に針を刺す等することにより血液や試料を採取する。針は、低侵襲のマイクロプローブとすると人体等に針を刺し血液等の体液を抽出する際に痛みが緩和されるので好ましい。また、サンプル採取部2401に、針と共に、又は針の代わりに、非侵襲型の採取器具、例えば皮膚表面の汗、口腔内の唾液、涙や尿等を採取する吸液体を設けるのもよい。
また、液体流路部2402としては、実施の形態1〜4の送液構造体およびマイクロ分析チップと同様な流路構造を使用する。このうち、好ましくは実施の形態4で説明した流路構造を用いる。サンプル採取部2401に配置されている針の毛細管は液体流路部2402の液溜め部2414と接続されており、針に設けられている毛細管の毛管現象によりサンプルが液溜め部に流入するように構成されている。
また、液体流路部2402は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニル等の基板を用いて作製される。液体流路部2402に、複数の検出部を配置してもよい。また、複数の流路系(マイクロ分析用送液構造体)が並存する構造としてもよい。
駆動分析処理部2403は、CPU、メモリ、バッテリー(図示せず)等が設けられており、液体流路部2042の検出部や、後で説明するI/O論理回路などと接続されている。この実施の形態は、全ての要素を含む一体型であるので、各種測定に対応した開閉バルブコントロールや、測定データの処理等が可能となるように、駆動分析処理部2403にCPUやメモリが設けられており、メモリには、各種測定に対応したバルブコントロールシークエンス情報や、測定データの処理情報が格納されている。
駆動分析処理部2403は、予め格納された上記情報に基づいて、測定開始時に開閉バルブを開き試薬液や試料液(被検液)などを流路内に流入させ、検出部が検出された電気信号を処理して、被検出物質の量または種類を特定する。このように、駆動分析処理部2403は、マイクロ分析チップを制御し、かつマイクロ分析チップで得た測定データをI/O論理回路(下記)に出力できる構成になっている。なお、駆動分析処理部2403は、上記実施の形態4における図11の蓋基板2102と同様に構成することができ、また実施の形態5で記載した駆動制御要素を盛り込むことができる。
入出力論理処理部2404は、I/O論理回路を有し、このI/O論理回路は駆動分析処理部2403のCPUに接続されると共に、電気接続線を介して出入力部の各ボタン及び表示部に接続されている。入出力論理処理部2404は、駆動分析処理部2403のCPUと協働して、I/Oデータを処理し、出入力部のディスプレイ(LCD)に測定結果を表示すると共に、出入力部2405の入力ボタンで入力された電気信号に基づいてマイクロ分析チップを制御する。なお、この制御には、少なくとも開閉バルブの制御と検出部電極の制御が含まれる。
出入力部2405には、CPUに指示を与える入力ボタンとディスプレイ(LCD)が設けられている。なお、ディスプレイはLCD(液晶ディスプレイ)に限られるものではなく、有機EL表示モジュール等であってもよい。
ディスプレイは、駆動ドライバー回路をI/O論理回路とCPUが協働し駆動することにより表示動作を行なう。表示形式としては、例えば数値表示、グラフ表示、「ある・なし」表示、更には経時変化表示など、多様な表示形式を採用することができる。
さらに出入力部には、図14に図示しないが、外部との入出力を処理する端子、または、無線送受信機を設けることができる。そうすることにより、パソコンやPDA端末などと接続でき、またネットワーク接続が可能になり、利便性が高まる。
実施の形態6のマイクロ分析チップ装置は、サンプルの採取からその測定と出力を一つの装置で行なうことができる。特に外部との双方向の情報のやり取りを可能にする無線送受信機を組み込んだ実施の形態6のマイクロ分析チップ装置によると、例えば自宅で測定した人の健康に関する測定結果を直ちにネットワークを介して病院や健康管理センターなどに電送することができる。これにより、迅速かつ的確な診断や治療に関するアドバイスを受けることが可能になる。
すなわち、実施の形態6によると、いつでも、どこでも、だれでも、が利用可能な、小型で利便性に優れたマイクロ分析チップ装置を提供することができる。