本発明の実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する例えば炭素から構成された回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により容器本体12の上端面に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。この凹部24は、直径がウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハWを凹部24に落とし込むと、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うことになる。ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
凹部24はウエハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、基板載置領域(ウエハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウエハWの周縁をガイドするガイド部材をウエハWの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウエハWを吸着する場合には、その吸着によりウエハWが載置される領域が基板載置領域となる。図2や図3などでは描画を省略しているが、上記の凹部24の周囲には、実際には図4に示すように、ウエハWを載置するための窪み202が各々の凹部24毎に複数箇所に形成されている。
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、活性化ガスインジェクター220と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に活性化ガスインジェクター220、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらの活性化ガスインジェクター220及びノズル31、32、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウエハWに対向して水平に伸びるようにライン状に取り付けられている。各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは、真空容器1の外周壁を貫通している。また、この例では、第1の反応ガスノズル31の長さ方向に沿って当該ノズル31を両側面側及び上面側から覆うように、ノズル31近傍へのN2ガスなどの侵入を抑えるため、また第1の反応ガスノズル31から吐出されるガス(BTBASガス)とウエハWとの接触時間を稼ぐため、後述のカバー体221と同様の構成のガス流規制部材250が設けられている。このガス流規制部材250については、このカバー体221の説明と併せて詳述する。これら反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段をなし、分離ガスノズル41、42は、分離ガス供給手段をなしている。
反応ガスノズル31、32、活性化インジェクター220、分離ガスノズル41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口に反応ガスノズル31(反応ガスノズル32、活性化インジェクター220、分離ガスノズル41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)及び後述のガス導入ポート34aを接続する構成を採用することができる。
第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32は、夫々図示しない流量調整バルブなどを介して、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも流量調整バルブなどを介して分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。
第1の反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向に亘って例えば10mmの間隔をおいて等間隔に配列されている。また分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔40が真下を向いて長さ方向に例えば10mm程度の間隔をおいて穿設されている。各反応ガスノズル31、32のガス吐出孔33とウエハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmであり、分離ガスノズル41、42のガス吐出孔40とウエハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは3mmである。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々BTBASガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハWに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2及び図3に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41、42の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。
なお、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
従って分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間への第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部4内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウエハWに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
この例では直径300mmのウエハWを被処理基板としており、この場合凸状部4は、回転テーブル2の回転中心から140mm外周側に離れた部位(後述の突出部5との境界部位)においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハWの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さでみれば、この長さは246mmである。
また凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面までの高さは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。そのため分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、このようなガスに限らず水素(H2)ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
一方天板11の下面には、図5、図6に示すように回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は図5に示すように凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
凸状部4及び分離ガスノズル41(42)の組み合わせ構造の作り方については、凸状部4をなす1枚の扇型プレートの中央に溝部43を形成してこの溝部43内に分離ガスノズル41(42)を配置する構造に限らず、2枚の扇型プレートを用い、分離ガスノズル41(42)の両側位置にて天板本体の下面にボルト締めなどにより固定する構成などであってもよい。
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図5では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図5に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図5に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分における既述の第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1及び図3に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように各々排気管63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段である。
排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、図3に示すように平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられている。詳しく言えば、回転テーブル2の回転中心から見て第1の処理領域P1とこの第1の処理領域P1に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第1の排気口61が形成され、回転テーブル2の回転中心から見て第2の処理領域P2とこの第2の処理領域P2に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第2の排気口62が形成されている。この排気口61はBTBASガスの排気を専用に行うように、また排気口62はO3ガスの排気を専用に行うようにその位置が設定されている。この例では一方の排気口61は、第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第1の反応ガスノズル31側の縁の延長線との間に設けられ、また他方の排気口62は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第2の反応ガスノズル32側の縁の延長線との間に設けられている。即ち、第1の排気口61は、図3中に一点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第1の処理領域P1とを通る直線L1と、回転テーブル2の中心と前記第1の処理領域P1の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L2との間に設けられ、第2の排気口62は、この図3に二点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第2の処理領域P2とを通る直線L3と、回転テーブル2の中心と前記第2の処理領域P2の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L4との間に位置している。
排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば第2の反応ガスノズル32と活性化ガスインジェクター220との間に更に設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1、図5及び図6に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWをプロセスレシピで決められた温度、例えば300℃に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図6にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域E1、E2を介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方側にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、図6に示すように前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と天板11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
更に真空容器1の側壁には図2、図3に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
次に、既述の活性化ガスインジェクター220について詳述する。活性化ガスインジェクター220は、例えば成膜サイクルを行う(回転テーブル2が回転する)度に、BTBASガスとO3ガスとの反応によってウエハW上に成膜されたシリコン酸化膜(SiO2膜)をプラズマにより改質するためのものであり、図7(a)に示すように、プラズマ発生用の処理ガスを真空容器1内に供給するための例えば石英からなるガス供給部をなすガス導入ノズル34と、このガス導入ノズル34から導入される処理ガスをプラズマ化するための各々石英からなる互いに平行な1対のシース管35a、35bと、を備えている。図7中37は、シース管35a、35bの基端側に接続された保護管である。
このシース管35a、35bの表面には、プラズマエッチング耐性に優れた例えばイットリア(酸化イットリウム、Y2O3)膜が例えば100μm程度の膜厚となるようにコーティングされている。また、これらのシース管35a、35b内には、図示しない例えばニッケル合金からなる電極が各々貫挿されており、これらの電極には、図3に示すように、例えば13.56MHz、例えば500W以下の高周波電力が真空容器1の外部の高周波電源224から整合器225を介して供給されるように構成されている。即ち、これら電極は、ウエハWの基板載置領域におけるテーブル2中心側の内縁部と、テーブル2外縁側の外縁部と、の間に亘って平行に伸び、平行電極を構成している。尚、「基板載置領域」とは、ウエハWが成膜処理される時にウエハWがテーブル2に載置される領域である。これらのシース管35a、35bは、夫々の内部に貫挿された電極間の離間距離が10mm以下例えば4.0mmとなるように配置されている。
図7(b)中221は、ガス導入ノズル34及びシース管35a、35bが配置された領域をその長さ方向に亘って両側面(長さ方向に伸びる側面)側及び上方側から覆うために設けられた例えば石英からなるカバー体であり、このカバー体221は、図8に示すように支持部材223により真空容器1の天板11の複数箇所において固定されている。また、図7(b)及び図8中222は、活性化ガスインジェクター220の長さ方向に沿ってカバー体221の両側面の下端部から外側に向かってフランジ状に水平に伸び出す気流規制部材である気流規制面部であり、図9に示すようにO3ガスやN2ガスのカバー体221の内部領域への侵入を抑えるために、当該気流規制面部222の下端面と回転テーブル2の上面との間の隙間が小さくなるように、また回転テーブル2の中心部側からガス流の速くなる回転テーブル2の外周側に向かうほど、その幅寸法uが広くなるように形成されている。尚、図7(a)はカバー体221を取った状態、図7(b)はカバー体221を配置した外観を示している。
上記の気流規制面部222の下端面と回転テーブル2の上面との間の隙間寸法tは、例えば1mm程度に設定されている。また、気流規制面部222の幅寸法uについて一例を挙げると、カバー体221の下方位置にウエハWが位置した時に、回転テーブル2の回転中心側のウエハWの外縁に対向する部位の幅寸法uは例えば80mm、真空容器1の内周壁側のウエハWの外縁に対向する部位の幅寸法uは例えば130mmとなっている。一方、ガス導入ノズル34及びシース管35a、35bが収納された部位におけるカバー体221の上端面と、真空容器1の天板11の下面と、の間の寸法は上記の隙間tよりも大きくなるように20mm以上例えば30mmに設定されている。また、既述のように、第1の反応ガスノズル31の周囲にも、このカバー体221とほぼ同じ構成のガス流規制部材250が配置されている。
真空容器1の内部には、図10に示すように、保護管37(シース管35a、35b)を下方側から支持するための傾き調整機構240が設けられている。この傾き調整機構240は、例えば真空容器1の内周壁に沿うように形成された板状の部材であり、例えば図示しないボルトなどの調整ネジにより上端面の高さ位置を調整して真空容器1の内周壁に固定できるように構成されている。従って、この傾き調整機構240の上端面の高さ位置を調整することにより、保護管37は基端側(真空容器1の側壁側)が図示しないO−リングにより気密に圧着されたまま回転テーブル2の回転中心側の端部が上下するので、回転テーブル2の半径方向において保護管37(シース管35a、35b)が傾斜することになる。そのため、傾き調整機構240により例えば回転テーブル2の半径方向における改質の度合いを調整できるようになっている。このようにシース管35a、35bを傾斜させる例としては、上記の図10に示すように、例えば回転テーブル2の回転速度の速い外周部側では中心側よりもウエハWとシース管35a、35bとの間の距離が短くなるように設定される。
既述の図3に示すように、ガス導入ノズル34の基端側には、真空容器1の外側に設けられたガス導入ポート34aを介してプラズマ発生用の処理ガスを供給するプラズマガス導入路251の一端側が接続されており、このプラズマガス導入路251の他端側は、2本に分岐して各々バルブ252及び流量調整部253を介してプラズマを発生させるためのプラズマ生成ガス(放電ガス)が貯留されたプラズマ生成ガス源254と、プラズマの発生(連鎖)を抑制するための局所放電抑制用ガス(添加ガス)が貯留された添加ガス源255と、に夫々接続されている。プラズマ生成ガスは、例えばAr(アルゴン)ガス、He(ヘリウム)ガス、NH3(アンモニア)ガス、H2(水素)ガス、Ne(ネオン)ガス、Kr(クリプトン)ガス、Xe(キセノン)ガス、N2(窒素)ガスあるいはN元素を有するガスのうちいずれか1種あるいは複数種のガスであり、この例ではArガスである。また、プラズマ抑制ガスは、例えばO2ガス、またはO元素、H元素、F元素やCl元素などを有するガスなど、上記プラズマ生成ガスよりも電子親和力が大きく、放電し難いガスの少なくとも1種であり、この例ではO2ガスである。そして、ウエハWに対して改質処理を行う時には、後述するように、局所的なプラズマの発生を抑えるために、O2ガスはArガスに対して例えば0.5体積%〜20体積%程度添加されることになる。尚、図9中341は、ガス導入ノズル34からシース管35a、35bに向けてプラズマ発生用の処理ガスを吐出するために当該ガス導入ノズル34の長さ方向に沿って形成されたガス吐出口例えば複数箇所に配置されたガス孔である。
ここで、上記のようにプラズマ発生用の処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを用いる理由について、以下に説明する。既述のように、活性化ガスインジェクター220は成膜サイクル毎にプラズマによってシリコン酸化膜の改質処理を行うためのものであるが、活性化ガスインジェクター220の長さ方向において、あるいは時間の経過(回転テーブル2の回転)と共に、当該活性化ガスインジェクター220のとウエハWとの間におけるプラズマ(放電)の発生が局所的に乱れてしまう場合がある。このプラズマの乱れは、例えば真空容器1の側壁に石英からなる透過窓を設けて、石英からなる透明のカバー体221を介して目視によりプラズマの発光状態を観測することにより確認される。
このようなプラズマの乱れは、例えば既述の図4に示した回転テーブル2の窪み202や凹部24の側壁面とウエハWの外縁との間の隙間あるいは真空容器1内の部材を固定するための図示しないボルトなどといった真空容器1内の凹凸の影響により、真空容器1(活性化ガスインジェクター220)内のガス流れが乱れることによって生じると考えられる。
また、既述のように回転テーブル2が導電性の炭素により構成され、シース管35a、35bと回転テーブル2との間の距離が短いため、シース管35a、35bと回転テーブル2との間において放電が生じやすいと考えられる。そのため、活性化ガスインジェクター220の長さ方向において、あるいは回転テーブル2の回転によって、窪み202や凹部24の影響によりシース管35a、35bと回転テーブル2との間の距離が変化すると、放電の状態が変化してプラズマの発生が乱れてしまう場合もある。また、カバー体221の気流規制面部222と回転テーブル2との間の隙間tについても既述のように極めて狭いので、当該隙間tにおいて局部的なプラズマが発生する場合もある。特に、上記のArガスなどの希ガスは、狭いギャップ部において集中して局所的なプラズマが発生しやすい傾向がある。
ここで、既述のように、シース管35a、35bと高周波電源224との間に整合器225を設けて、プラズマを均一に発生させる(マッチングする)ようにしているが、回転テーブル2が例えば数百rpmもの高速で回転している時には、プラズマの変化に整合器225のマッチングが追随できず、プラズマの発生を均一化することは困難である。また、シース管35a、35bとウエハWとの間の距離が近いため、上記のようにプラズマの発生が乱れると、プラズマが均一に拡散する前にウエハWにプラズマが到達するので、ウエハWはプラズマの乱れの影響を強く受けてしまう。そのため、改質処理の度合いが活性化ガスインジェクター220の長さ方向(回転テーブル2の径方向)及び回転テーブル2の回転方向においてばらつき、後述の実施例に示すように膜厚や膜質がウエハWの面内において不均一となってしまう場合がある。
そこで、この実施の形態では、プラズマ化しやすい上記のArガスと共に、Arガスのプラズマ化の連鎖を抑制する作用を持つO2ガスを用いることによって、Arガスによる局所的な放電(プラズマ化)を抑えるようにしている。
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整すると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。ウエハWの温度が図示しない温度センサにより設定温度になったことを確認した後、反応ガスノズル31、32から夫々BTBASガス及びO3ガスを吐出すると共に、ガス導入ノズル34からArガス及びO3ガスを夫々9.0slm、20slmで吐出し、シース管35a、35b間に13.56MHz、電力が500Wの高周波を印加する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。
この時、活性化ガスインジェクター220においては、ガス供給ポート34aから導入されたArガス及びO3ガスがガス導入ノズル34に供給され、その側周壁に設けられた各ガス孔341からシース管35a、35bに向かって吐出される。そして、シース管35a、35b間の領域でこれらのプラズマ発生用の処理ガスがプラズマ化されるが、回転テーブル2の回転によりカバー体221内の気流が乱れる場合がある。また、シース管35a、35bと回転テーブル2との間の距離がシース管35a、35bの長さ方向において差が生じたり、あるいは時間の経過(回転テーブル2の回転)と共に変化したりすることにより、プラズマ(放電)がシース管35a(35b)と回転テーブル2との間で発生する場合がある。そのため、プラズマが局所的に発生しようとするが、プラズマ発生用の処理ガスにO3ガスを混合しているので、Arガスのプラズマ化の連鎖が抑制され、プラズマの状態が安定化することになる。この安定して生成するプラズマは、活性化ガスインジェクター220の下方を回転テーブル2と共に移動(回転)するウエハWに向かって下降していく。
一方、回転テーブル2の回転により、ウエハWの表面には第1の処理領域P1においてBTBASガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したBTBASガスが酸化されてシリコン酸化膜の分子層が1層あるいは複数層形成される。このシリコン酸化膜中には、例えばBTBASの残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。そして、このウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域に到達すると、上記のプラズマによりシリコン酸化膜の改質処理が行われることになる。具体的には、例えばArイオンがウエハWの表面に衝突し、シリコン酸化膜から上記の不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。従って、改質処理後のシリコン酸化膜は、後述の実施例に示すように、緻密化してウェットエッチングに対する耐性が向上することになる。この改質処理は、上記のようにプラズマの状態が安定化していることから、ウエハWの面内に亘って均一に行われることになり、そのためシリコン酸化膜の膜厚(収縮量)及びウェットエッチングレートがウエハWの面内に亘って揃うことになる。こうして回転テーブル2の回転によりBTBASガスの吸着、BTBASガスの酸化及び改質処理が成膜サイクル毎に行われてシリコン酸化膜が順次積層されていき、膜厚方向において緻密で且つウェットエッチングに対する耐性が高く、更には膜厚及び上記耐性などの膜質が面内及び面間に亘って均一な薄膜が形成されることになる。
また、この真空容器1内には、活性化ガスインジェクター220と第2の反応ガスノズル32との間に分離領域Dを設けていないので、回転テーブル2の回転に引き連れられて、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側からO3ガスやN2ガスが通流してくる。しかし、既述のように電極36a、36bとガス導入ノズル34とを覆うようにカバー体221を設けているので、カバー体221の下方側(気流規制面部222と回転テーブル2との間の隙間t)よりもカバー体221の上方側の領域が広くなっており、上流側から通流してくるガスは、カバー体221の下方側に入り込みにくくなっている。また、活性化ガスインジェクター220に向かって通流するガスは、回転テーブル2の回転によって上流側から引き連れられて来るので、回転テーブル2の半径方向内周側から外周側に向かうほど流速が速くなるが、回転テーブル2の内周側よりも外周側の気流規制面部222の幅寸法uを大きく取っていることから、活性化ガスインジェクター220の長さ方向に亘ってカバー体221の内部へのガスの侵入が抑えられる。従って、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側から流れてくるガスは、既述の図9に示すように、カバー体221の上方領域を介して下流側の排気口62に通流していく。そのため、これらのO3ガスやN2ガスは、高周波によって活性化などの影響をほとんど受けないので、例えばNOxなどの発生が抑えられ、またウエハWもこれらのガスの影響をほとんど受けない。尚、改質処理によりシリコン酸化膜から排出された不純物は、その後ガス化してArガスやN2ガスなどと共に排気口62に向かって排気されていく。
この時、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図11に示すようにBTBASガスとO3ガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、分離領域Dにおいては、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっているので、BTBASガスとO3ガスとは、回転テーブル2の外側を介しても混合しない。従って、第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガスは排気口62に夫々排気される。この結果、BTBASガスとO3ガスとが雰囲気中においてもウエハW上においても混じり合うことがない。
また、この例では反応ガスノズル31、32及び活性化ガスインジェクター220が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、ウエハWの加熱温度は例えば350℃、BTBASガス及びO3ガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハWに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハWが処理領域P1、P2の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、例えば1000回である。
上述の実施の形態によれば、回転テーブル2を回転させてウエハW上にBTBASガスを吸着させ、次いでウエハWの表面にO3ガスを供給してウエハWの表面に吸着したBTBASガスを反応させてシリコン酸化膜を成膜するにあたって、シリコン酸化膜を成膜した後、活性化ガスインジェクター220からウエハW上のシリコン酸化膜に対してArガスのプラズマを供給して、成膜サイクル毎に改質処理を行っている。そのため、膜厚方向に亘って緻密で不純物の少なく、更にはウェットエッチングに対する耐性が大きい薄膜を得ることができる。この時、Arガスと共にO2ガスを供給してArガスのプラズマ化の連鎖を抑制することにより、活性化ガスインジェクター220の長さ方向において、また改質処理(成膜処理)を行う時間に亘って、プラズマの局所的な発生を抑えるようにしている。そのため、改質処理をウエハWの面内及び面間において均一に行うことができる。従って、回転テーブル2の回転によって既述のようにカバー体221の内部領域においてガス流が乱れたり、シース管35a、35bと回転テーブル2との間の距離が活性化ガスインジェクター220の長さ方向や時間の経過と共に変化したりすることによってプラズマが局所的に発生しやすい場合であっても、更にはプラズマ源(シース管35a、35b)とウエハWとの間の距離が短くてウエハWがプラズマのばらつき(局所的な発生)の影響を受けやすい場合であっても、面内及び面間において膜質及び膜厚について高い均一性を得ることができる。
また、上記のように成膜温度が650℃以下といった低温でシリコン酸化膜を成膜する場合には、改質処理前においては膜中に不純物が残りやすく、高温で成膜した場合よりも改質処理による収縮量が大きいため、プラズマの局所的な発生を抑えることによって、上記の面内及び面間における膜質及び膜厚の均一性を大きく改善することができる。また、シリコン酸化膜を成膜するにあたり、プラズマ発生用のArガスに添加するガスとしては既述のようにO2ガスを用いているので、薄膜に不純物が取り込まれたり副生成物が生成したりする悪影響を抑えることができる。
また、ウエハW(回転テーブル2)に近接する位置に例えばカバー体221(気流規制面部222)などの部材を設けることができるので、装置の設計上の自由度を高めることができる。この場合においては、カバー体221により上流側から通流してくるガスの当該カバー体221の内部への侵入を抑えることができ、これらのガスの影響を抑えて成膜サイクルの途中で改質処理を行うことができる。そのため、例えば第2の反応ガスノズル32と活性化ガスインジェクター220との間に専用の分離領域Dを設けなくても良いので、成膜装置のコストを抑えて改質処理を行うことができるし、またNOxなどの副生成ガスの発生を抑えることができる。
また、活性化ガスインジェクター220によりシリコン酸化膜の改質処理を行うにあたって、シース管35a、35bを傾斜できるようにしているので、シース管35a、35bの長さ方向においてウエハWとの間の距離を調整でき、従って例えば回転テーブル2の半径方向において改質の度合いを揃えることができる。
更に、真空容器1の内部において成膜サイクルを行う度に改質処理を行っており、いわば回転テーブル2の周方向においてウエハWが各処理領域P1、P2を通過する経路の途中において成膜処理に干渉しないように改質処理を行っているので、例えば薄膜の成膜が完了した後で改質処理を行うよりも短時間で改質処理を行うことができる。
また、電極36a、36bの離間距離を上記のように狭く設定していることから、ガスのイオン化に最適ではない高い圧力範囲(成膜処理の圧力範囲)であっても、低出力で改質処理に必要な程度にArガスを活性化(イオン化)することができる。尚、真空容器1内の真空度を高くする程、Arガスのイオン化が速やかに進行する一方、例えばBTBASガスの吸着効率が低下するため、真空容器1内の真空度は、成膜効率と改質の効率とを勘案して設定される。また、電極36a、36bに供給する高周波の電力値についても、成膜処理に悪影響を及ぼさないように、また改質処理が速やかに進行するように上記のように適宜設定される。
上記の例においては、成膜処理を行う度に改質処理を行ったが、複数回例えば20回の成膜処理(サイクル)を行う度に改質処理を行っても良い。この場合において改質処理を行う時には、具体的にはBTBASガス、O3ガス及びN2ガスの供給を停止して、ガス導入ノズル34から活性化ガスインジェクター220にArガスを供給すると共に、シース管35a、35bに高周波を供給する。そして、5枚のウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域を順番に通過するように回転テーブル2を例えば200回回転させる。こうして改質処理を行った後、再度各ガスの供給を再開して成膜処理を行い、改質処理と成膜処理とを順番に繰り返す。この例においても、上記の例と同様に緻密で不純物濃度の低い薄膜が得られる。この場合には、改質処理を行うときにはO3ガスやN2ガスの供給を停止しているので、既述の図7(a)に示すように、カバー体221を設けなくても良い。
更に本実施の形態に係わる成膜装置は、回転テーブル2の回転方向に複数のウエハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。また、上記の例において、Arガスと共にO2ガスを供給するにあたり、O2ガスについては少なくとも1部がArガスと共にプラズマ化(活性化)していれば良い。
上記のシリコン酸化膜を成膜するための処理ガスとしては、第1の反応ガスとしてBTBAS[ビスターシャルブチルアミノシラン]、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを採用し、これらの原料ガスを酸化する酸化ガスである第2の反応ガスとして水蒸気などを採用しても良い。
そして前記分離ガス供給ノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、図12(a)、図12(b)に前記分離ガス供給ノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウエハWを被処理基板とする場合、ウエハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離も小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離をある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウエハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離をかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウエハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウエハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。なお、図12(a)においては図示の便宜上、凹部24の記載を省略してある。
また本発明は、分離ガスノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成するために低い天井面(第1の天井面)44を設けることが必要であるが、反応ガスノズル31、32及び活性化ガスインジェクター220の両側にも同様の低い天井面を設け、これら天井面を連続させる構成、つまり分離ガスノズル41(42)、反応ガスノズル31(32)及び活性化ガスインジェクター220が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても同様の効果が得られる。この構成は別の見方をすれば、分離ガスノズル41(42)の両側の第1の天井面44が反応ガスノズル31、32及び活性化ガスインジェクター220にまで広がった例である。この場合には、分離ガスノズル41(42)の両側に分離ガスが拡散し、反応ガスノズル31、32及び活性化ガスインジェクター220の両側に反応ガスが拡散し、両ガスが凸状部4の下方側(狭隘な空間)にて合流するが、これらのガスは排気口61(62)から排気されることになる。
以上の実施の形態では、回転テーブル2の回転軸22が真空容器1の中心部に位置し、回転テーブル2の中心部と真空容器1の上面部との間の空間に分離ガスをパージしているが、本発明は図13に示すように構成してもよい。図13の成膜装置においては、真空容器1の中央領域の底面部14が下方側に突出していて駆動部の収容空間80を形成していると共に、真空容器1の中央領域の上面に凹部80aが形成され、真空容器1の中心部において収容空間80の底部と真空容器1の前記凹部80aの上面との間に支柱81を介在させて、第1の反応ガスノズル31からのBTBASガスガスと第2の反応ガスノズル32からのO3ガスとが前記中心部を介して混ざり合うことを防止している。
回転テーブル2を回転させる機構については、支柱81を囲むように回転スリーブ82を設けてこの回転スリーブ81に沿ってリング状の回転テーブル2を設けている。そして前記収容空間80にモーター83により駆動される駆動ギヤ部84を設け、この駆動ギヤ部84により、回転スリーブ82の下部の外周に形成されたギヤ部85を介して当該回転スリーブ82を回転させるようにしている。86、87及び88は軸受け部である。また前記収容空間80の底部にパージガス供給管74を接続すると共に、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するためのパージガス供給管75を真空容器1の上部に接続している。図13では、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するための開口部は左右2箇所に記載してあるが、回転スリーブ82の近傍領域を介してBTBASガスとO3ガスとが混じり合わないようにするために、開口部(パージガス供給口)の配列数を設計することが好ましい。
図13の実施の形態では、回転テーブル2側から見ると、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は分離ガス吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心部領域が構成される。
更にまた、実施の形態に係わる各種の反応ガスノズルを適用可能な成膜装置は、図1、図2等に示した回転テーブル型の成膜装置に限定されるものではない。例えば回転テーブル2に替えてベルトコンベア上にウエハWを載置し、互いに区画された処理室内にウエハWを搬送して成膜処理を行うタイプの成膜装置に本発明の各反応ガスノズルを適用してもよいし、また固定された載置台上にウエハWを1枚ずつ載置して成膜を行う枚葉式の成膜装置に適用してもよい。
また、上記の各実施の形態の成膜装置としては、ガス供給系(ノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220)に対して回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させる構成としたが、ガス供給系が回転テーブル2に対して鉛直軸回りに回転する構成としても良い。つまり、ガス供給系と回転テーブル2とが相対的に回転する構成であれば良い。このような具体的な装置構成について、図14〜図17を参照して説明する。尚、既述の成膜装置と同じ部位については、同じ符号を付して説明を省略する。
真空容器1内には、既述の回転テーブル2に代えて、テーブルであるサセプタ300が配置されている。このサセプタ300の底面中央には、回転軸22の上端側が接続されており、ウエハWの搬入出を行うときにはサセプタ300を回転できるように構成されている。このサセプタ300上には、既述の凹部24が周方向に亘って複数箇所例えば5箇所に形成されている。
図14〜図16に示すように、既述のノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220は、サセプタ300の中央部の直上に設けられた扁平な円盤状のコア部301に取り付けられており、基端部が当該コア部301の側壁を貫通している。コア部301は後述するように例えば鉛直軸回りに反時計方向に回転するように構成されており、当該コア部301を回転させることによって各ガス供給ノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220をサセプタ300の上方位置において回転させることができるようになっている。従って、例えばサセプタ300上のある1つのウエハWからガス供給系(ノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220)を見た時にこれらのノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220が向かってくる方向をサセプタ300の相対的回転方向下流側、ノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220が遠ざかっていく方向を相対的回転方向上流側と呼ぶと、この成膜装置では、既述の図1に示した成膜装置と同様に、各ウエハWに対してBTBASガス、O3ガスが分離領域Dを介してこの順番で供給されるように、またBTBASガスとO3ガスとによりシリコン酸化膜が形成されたウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域を通過するように、各ノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220が配置されている。尚、図15は、真空容器1(天板11及び容器本体12)並びに天板11の上面に固定された後述のスリーブ304を取り去った状態を示している。
既述の凸状部4は、上記のコア部301の側壁部に固定されており、各ガス供給ノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220と共にサセプタ300上を回転できるように構成されている。コア部301の側壁部には、図15、図16に示すように、各反応ガス供給ノズル31、32の回転方向上流側であって、当該上流側に設けられている凸状部4とコア部301との接合部の手前の位置に、2つの排気口61、62が設けられている。これら排気口61、62は各々後述の排気管302に接続されていて、反応ガス及び分離ガスを各処理領域P1、P2から排気する役割を果たす。排気口61、62は、既述の例と同様に、分離領域Dの前記回転方向両側に設けられ、各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。
図14に示すように、コア部301の上面中央部には円筒状の回転筒303の下端部が接続されており、真空容器1の天板11上に固定されたスリーブ304内にて当該回転筒303を回転させることにより、真空容器1内でコア部301と共にノズル31、32、41、42、活性化ガスインジェクター220及び凸状部4を回転させる構成となっている。活性化ガスインジェクター220のカバー体221は、既述の支持部材223によりコア部301の側壁部に固定されている。コア部301内は下面側が開放された空間となっていて、コア部301の側壁を貫通した反応ガス供給ノズル31、32、34、分離ガス供給ノズル41、42は、当該空間において各々BTBASガスを供給する第1の反応ガス供給管305、O3ガスを供給する第2の反応ガス供給管306、プラズマ発生用の処理ガス(Arガス及びO2ガス)を供給する第3の反応ガス供給管401、分離ガスであるN2ガスを供給する分離ガス供給管307、308と接続されている(便宜上、図14には、分離ガス供給管307、308のみを図示してある)。
各供給管305〜308、401は、コア部301の回転中心近傍、詳細には後述の排気管302の周囲にてL字に屈曲されて上方に向けて伸び、コア部301の天井面を貫通して、垂直上方へ向けて円筒状の回転筒303内を延伸されている。また、高周波電源224からシース管35a、35bに高周波電力を給電する給電線500についても、コア部301の天井面を貫通して、垂直上方へ向けて回転筒303内を延伸されている。
図14、図15、図16に示すように、回転筒303は外径の異なる2つの円筒を上下2段に積み重ねた外観形状に構成されており、外径の大きな上段側の円筒の底面をスリーブ304の上端面にて係止させることにより、当該回転筒303を上面側から見て周方向に回転可能な状態でスリーブ304内に挿入する一方、回転筒303の下端側は天板11を貫通してコア部301の上面と接続されている。
天板11の上方位置における回転筒303の外周面側には、当該外周面の周方向の全面に亘って形成された環状流路であるガス拡散路が上下方向に間隔をおいて配置されている。本例においては、上段側から順番に分離ガス(N2ガス)を拡散させるための分離ガス拡散路309、BTBASガスを拡散させるための第1の反応ガス拡散路310、O3ガスを拡散させるための第2の反応ガス拡散路311、プラズマ発生用の処理ガスを拡散させるための第3の反応ガス拡散路402が配置されている。図中、312は回転筒303の蓋部であり、313は当該蓋部312と回転筒303とを密着させるOリングである。
各ガス拡散路309〜311、402には、回転筒303の全周に亘り、当該回転筒303の外面へ向けて開口するスリット320、321、322、403が設けられており、夫々のガス拡散路309〜311、402には、これらのスリット320、321、322、403を介して各種のガスが供給されるようになっている。一方、回転筒303を覆うスリーブ304には、各スリット320、321、322、403に対応する高さ位置に、ガス供給口であるガス供給ポート323、324、325、404が設けられており、不図示のガス供給源よりこれらのガス供給ポート323、324、325、404へと供給されたガスは、当該各ポート323、324、325、404に向けて開口するスリット320、321、322、403を介して各ガス拡散路309、310、311、402内に供給されることとなる。
ここでスリーブ304内に挿入された回転筒303の外径は、当該回転筒303が回転可能な範囲で、可能な限りスリーブ304の内径と近い大きさに形成されており、前記各ポート323、324、325、404の開口部以外の領域においては、各スリット320、321、322、403はスリーブ304の内周面によって塞がれた状態となっている。この結果、各ガス拡散路309、310、311、402に導入されたガスは、当該ガス拡散路309、310、311、402内のみを拡散して、例えば他のガス拡散路309、310、311、402や真空容器1内、成膜装置の外部などに漏れ出さないようになっている。図14中、326は回転筒303とスリーブ304との隙間からのガス漏れを防止するための磁気シールであり、これら磁気シール326は各ガス拡散路309、310、311、402の上下にも設けられていて、各種ガスをガス拡散路309、310、311、402内に確実に封止する構成となっているが同図では便宜上省略してある。また、図17においても磁気シール326の記載は省略してある。
図17に示すように、回転筒303の内周面側において、ガス拡散路309にはガス供給管307、308が接続され、各ガス拡散路310、311には既述の各ガス供給管305、306が夫々接続されている。また、ガス拡散路402にはガス供給管401に接続されている。これによりガス供給ポート323から供給された分離ガスは、ガス拡散路309内を拡散してガス供給管307、308を介してノズル41、42へと流れ、また各ガス供給ポート324、325から供給された各種反応ガスは、夫々ガス拡散路310、311内を拡散し、ガス供給管305、306を介して各ノズル31、32へと流れ、真空容器1内に供給されるようになっている。また、ガス供給ポート404から供給されたプラズマ発生用の処理ガスは、ガス拡散路402及びガス供給管401を介してノズル34から真空容器1内に供給される。なお、図17においては図示の便宜上、後述の排気管302の記載は省略してある。
ここで図17に示すように、分離ガス拡散路309にはさらにパージガス供給管330が接続されており、当該パージガス供給管330は回転筒303内を下方側に延伸されて図16に示すようにコア部301内の空間に開口しており、当該空間内にN2ガスを供給することができる。ここで例えば図14に示すようにコア部301は、サセプタ300の表面から僅かな隙間を空けて浮いた状態となるように回転筒303に支持されており、サセプタ300に対してコア部301が固定されていないことにより自由に回転させることができる。しかしながらこのようにサセプタ300とコア部301との間に隙間が開いていると、例えば既述の処理領域P1、P2の一方からコア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むおそれがある。
そこでコア部301の内側を空洞とし、当該空洞の下面側をサセプタ300に向けて開放すると共に、当該空洞内にパージガス供給管330からパージガス(N2ガス)を供給して、前記隙間を介して各処理領域P1、P2へ向けてパージガスを吹き出させることにより、前述の反応ガスの回り込みを防止することができる。即ち、この成膜装置は、処理領域P1、P2の雰囲気を分離するためにサセプタ300の中心部と真空容器1とにより区画され、当該サセプタ300の表面にパージガスを吐出する吐出口がコア部301の回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。この場合にパージガスは、コア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことを防止するための分離ガスの役割を果たしている。なおここでいう吐出口はコア部301の側壁とサセプタ300との間の隙間に相当する。
図14に示すように、回転筒303の上段側の外径の大きな円筒部の側周面には、駆動ベルト335が巻き掛けられており、この駆動ベルト335は、真空容器1の上方に配置された回転機構である駆動部336により、この駆動ベルト335を介して当該駆動部336の駆動力をコア部301に伝達し、これによりスリーブ304内の回転筒303を回転させることができる。尚、図14中337は、真空容器1の上方位置において駆動部336を保持するための保持部である。
回転筒303内には、その回転中心に沿って排気管302が配設されている。排気管302の下端部は、コア部301の上面を貫通してコア部301内の空間に伸びだしていて、その下端面は封止されている。一方、当該コア部301内に伸びだした排気管302の側周面には、例えば図16に示すように、各排気口61、62と接続された排気引込管341、342が設けられていて、パージガスで満たされたコア部301内の雰囲気とは隔離して各処理領域P1、P2からの排ガスを排気管302内へと引き込むことができるようになっている。なお、既述のように図17においては排気管302の記載は省略してあるが、当該図17に記載された各ガス供給管305、306、307、308、401並びにパージガス供給管330は、この排気管302の周囲に配置されている。
図14に示すように排気管302の上端部は回転筒303の蓋部312を貫通し、真空排気手段である例えば真空ポンプ343に接続されている。なお図14中、344は下流側の配管に対して排気管302を回転可能に接続するロータリージョイントである。また、図示を省略するが、既述の給電線500についても、この排気管302と同様に、ロータリージョイント344の周囲にリング状に形成された給電路により回転時においても高周波電源224から給電できるように構成されている。
この装置を用いた成膜処理の流れについて、既述の実施の形態の作用と異なる点について、以下に簡単に説明する。先ず、真空容器1内にウエハWを搬入する時には、サセプタ300を間欠的に回転させて、搬送アーム10と昇降ピン16との協働作業により5つの凹部24にウエハWを各々載置する。
そして、成膜装置に対してシリコン酸化膜の成膜処理を行う時には、回転筒303を反時計回りに回転させる。すると、図17に示すように回転筒303に設けられた各ガス拡散路309〜311、402は回転筒303の回転に伴って回転するが、これらのガス拡散路309〜311、402に設けられたスリット320〜322、403の一部が各々対応するガス供給ポート323〜325、404の開口部へ向けて常時開口していることにより、ガス拡散路309〜311、402には各種のガスが連続的に供給される。
ガス拡散路309〜311、402に供給された各種のガスは、各々のガス拡散路309〜311、402に接続されたガス供給管305〜308、401を介して反応ガス供給ノズル31、32、34、分離ガス供給ノズル41、42より各処理領域P1、P2、活性化ガスインジェクター220、分離領域Dへと供給される。これらのガス供給管305〜308、401は回転筒303に固定され、また、反応ガス供給ノズル31、32、34、分離ガス供給ノズル41、42についてはコア部301を介して回転筒303に固定されていることから、回転筒303の回転に伴ってこれらのガス供給管305〜308、401及び各ガス供給ノズル31、32、41、42及び活性化ガスインジェクター220(ガス導入ノズル34)も回転しながら各種のガスを真空容器1内に供給している。また、シース管35a、35bについても同様に回転し、このシース管35a、35b間においてプラズマ化されたプラズマ発生用の処理ガスが下方側のウエハWのシリコン酸化膜に対して既述の例と同様に供給される。
このとき、回転筒303と一体となって回転しているパージガス供給管330からも分離ガスであるN2ガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ちコア部301の側壁部とサセプタ300の中心部との間からサセプタ300の表面に沿ってN2ガスが吐出する。またこの例では反応ガス供給ノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿ったコア部301の側壁部に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなっている。そのため、BTBASガスとO3ガスとは、既述の成膜装置と同様に互いに混じり合うことなしに独立して排気されていくことになる。
従って、サセプタ300上で停止している各々のウエハWから見ると、各処理領域P1、P2及び活性化ガスインジェクター220が順番に通過することになり、既述のようにBTBASガスの吸着、O3ガスによる酸化処理及び改質処理がこの順番で行われる。
この実施の形態においても、同様にウエハWの面内及び面間において膜厚及び膜質が均一となるように改質処理が行われて、同様の効果が得られる。
以上述べた成膜装置を備えた基板処理装置について図18に示しておく。図18中、101は例えば25枚のウエハWを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、102は搬送アーム103が配置された大気搬送室、104、105は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、106は、2基の搬送アーム107が配置された真空搬送室、108、109は本発明の成膜装置である。搬送容器101は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室102に接続された後、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム103により当該搬送容器101内からウエハWが取り出される。次いでロードロック室104(105)内にウエハWが搬入された後、当該室内を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替え、その後搬送アーム107によりウエハWが取り出されて成膜装置108、109の一方に搬入され、既述の成膜処理がされる。このように例えば5枚処理用の本発明の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
上記の例では、ガス導入ノズル34からArガスとO2ガスとを混合して供給するようにしたが、カバー体221内に2本のノズルを独立して設けて、これらのノズルから夫々Arガス及びO2ガスを個別に供給しても良い。
また、上記の例では、BTBASガスなどとO3ガスとを用いてシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、例えば第1の反応ガス及び第2の反応ガスとして夫々TiCl2(塩化チタン)ガスなどとNH3(アンモニア)ガスとを用いて窒化シリコン膜を成膜する場合に改質処理を行うようにしても良い。この場合には、プラズマを発生させるためのプラズマ生成ガスとしては、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどが用いられ、プラズマの発生を抑制するためのプラズマ抑制ガスとしては、NH3ガス、N2H4(窒化水素)ガス及びアミン系ガスなどが用いられる。この場合においても、上記の例と同様に改質処理により面内に亘って膜厚及び膜質が均一な薄膜が得られる。
更に、上記の例では活性化ガスインジェクター220として、シース管35a、35bやガス導入ノズル34の下方が広く開口するカバー体221を配置したが、これらのシース管35a、35b及びガス導入ノズル34を箱状のプラズマボックス内に収納し、真空容器1内の各処理領域P1、P2と連通する雰囲気とこれらのシース管35a、35b及びガス導入ノズル34が設置される雰囲気とを区画するようにしても良い。この場合には、例えばプラズマボックスの下方に既述のガス孔341が形成される。
(実施例1:ウェットエッチングレート)
成膜サイクル(回転テーブル2の回転)毎にシリコン酸化膜の改質処理を行うにあたり、プラズマ発生用の処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを用いることにより、ウェットエッチングに対する耐性がウエハWの面内においてどの程度均一となるか確認する実験を行った。この実験では、改質処理によりシリコン酸化膜中から不純物が排出されてシリコン酸化膜の純度が向上し、ウェットエッチングに対する耐性が向上することから、ウェットエッチングレートを測定することにより、改質処理がどの程度行われたかを確認した。
以下の成膜条件でシリコン酸化膜を成膜した後、ウエハWを沸酸水溶液に浸漬し、その後シリコン酸化膜の膜厚を測定してウェットエッチングレートを計算した。この時、シリコン酸化膜の膜厚を測定するにあたり、回転テーブル2にウエハWが載置されていた時に当該回転テーブル2の中心側から外周側に向かう方向に対応するように、ウエハWの一端側から他端側に向かって直線的に複数箇所において測定した。また、活性化ガスインジェクター220の長さ方向と直交する方向(回転テーブル2の周縁の接線方向)においても、このウェットエッチングレートを同様に計算した。
(成膜条件)
回転テーブル2の中心側から外周側に向かってウェットエッチングレートを測定した実験結果を図19に示す。この図19から分かるように、改質処理を行わない場合にはウェットエッチングレートが大きくなっていたが、改質処理を行うことによりウェットエッチングに対する耐性が向上していた。また、プラズマ発生用の処理ガスとしてArガスだけを用いた場合には、ウェットエッチングレートがウエハWの面内に亘って波状にばらついていたが、このArガスと共にO2ガスを用いることにより、ウェットエッチングレートが均一化していた。そのため、O2ガスの添加により、局所的なプラズマの発生が抑えられることが分かった。この時、O2ガスの添加量を増やすほど、ウェットエッチングレートが均一化することが分かった。また、ウェットエッチングレートは、回転テーブル2の中心部側に向かうほどばらつく傾向の大きいことが分かった。尚、この図19では、950℃にて得られた熱酸化膜のウェットエッチングレートを1として規格化した値を示している。
また、図20に活性化ガスインジェクター220の長さ方向と直交する方向においてウェットエッチングレートを測定した結果を示すと、上記の結果と同様の結果が得られた。この時、活性化ガスインジェクター220の下方位置にウエハWが到達した時(図20中左側)よりも、当該活性化ガスインジェクター220の下方位置を通過する時(同右側)の方がウェットエッチングレートがばらつく傾向のあることが分かった。
(実施例2:成膜速度)
次に、上記の実施例と同様にプラズマ発生用の処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを用いることにより、ウエハWの面内において成膜速度がどの程度均一化するか確認する実験を行った。つまり、改質処理によりシリコン酸化膜中の不純物などが排出され、シリコン酸化膜が収縮することから、この成膜速度を測定することにより、上記のウェットエッチングレートと同様に、改質処理の均一性を確認した。実験は、以下の条件において成膜したシリコン酸化膜について、回転テーブル2の中心部側から外側に向かって膜厚を測定して成膜速度を計算した。
(実験条件)
尚、この実験においては、第1の反応ガスとして既述のBTBASガスよりも蒸気圧が高く、分子が小さく、分子中の有機物がシリコン原子から脱離しやすいジイソプロピルアミノシランガスを用いた。また、第2の反応ガスであるO3ガスについては、濃度及び流量を夫々300g/Nm
3及び10slm(O2ガスとしての流量)とした。
この実験の結果、図21に示すように、プラズマ発生用の処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを用いることにより、成膜速度についてもウエハWの面内における均一性が向上し、更にO2ガスの添加量を増やすほど均一性が良好になることが分かった。尚、ウエハWの直径方向(図21中の左右方向)において成膜速度に差があるが、既述の傾き調整機構240により活性化ガスインジェクター220の長さ方向における傾きを調整することにより、面内に亘って成膜速度を揃えることができると考えられる。
(実施例3:成膜速度のばらつき)
次に、上記の実施例2と同様の実験を行い、成膜速度について面内において得られた平均値からのばらつきを計算した。この時、第1の反応ガスの流量、成膜温度、処理圧力及び回転テーブル2の回転数は、夫々275sccm、350℃、1.07kPa(8Torr)及び240rpmとした。この実験における他の処理条件や成膜速度の測定位置については、上記の実施例2と同様とした。
その結果、図22に示すように、実施例2と同様に、プラズマ発生用の処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを用いることによって成膜速度のばらつきが小さくなっていた。
(実施例4:収縮量)
この実施例では、シリコン酸化膜を成膜した後、窒素ガス雰囲気中で850℃のアニール処理を行った時に、改質処理時にArガスに添加するO2ガスによってシリコン酸化膜の収縮量がウエハW全体ではどのように変化するか確認する実験を行った。以下に示す以外の成膜条件は、実施例2と同様とした。
(成膜条件)
また、第1の反応ガスとしては、比較例4ではBTBASガスを用い、その他の実験では既述のジイソプロピルアミノシランガスを用いた。
その結果、改質処理を行うことによりその後のアニール処理時におけるシリコン酸化膜の収縮量が減少していた。そのため、改質処理によりシリコン酸化膜が緻密化していることが分かる。この時、ArガスへのO2ガスの添加の有無によっては、収縮量がほとんど変わらなかったことから、O2ガスは改質処理を阻害するなどといった悪影響を及ぼさないことが分かった。また、成膜サイクル毎に改質処理を行ったシリコン酸化膜の全面について膜厚を49点測定し、成膜速度の平均を算出したところ、同様にO2ガスの添加によって成膜速度には大きな差が生じないことが分かった。尚、この図23では、アニール処理前の膜厚を1としてシリコン酸化膜の収縮量を計算している。
また、図示を省略するが、既述のように、真空容器1の側壁に石英からなる透過窓を設けて、石英からなる透明のカバー体221を介して目視によりプラズマの発光状態を観測したところ、プラズマ発生用の処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを用いることにより、Arガスだけを用いた場合よりもプラズマの発光状態が安定化することが分かった。